説明

双沈頭クリンチ植込みボルト

【課題】 2つの金属シートを対向して締着させるための留め金具を提供する。
【解決手段】 この留め金具は、異なる径の平坦端面を有する隣接するクリンチ手段を設けた双沈頭クリンチ植込みボルトからなる。この植込みボルトは2つの金属シートを互いに対向させて接合させてなるアッセンブリーを形成するのに用いられる。このアッセンブリーは、植込みボルトの長さをこれらシートを一緒にしたときの厚みに等しくすることにより、これらシートの外側表面がそれぞれ面一となる接合をもたらすものである。別の例として、上方アンダーカット溝を上方シートの材料で完全に満たされていない状態とすることができ、その場合、上方シートを第2のシートとの関連で枢着させた状態で、留め金具の頭部と、第2のシートとの間に効果的に挟持させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は2004年10月21日付出願の仮特許出願第60/620,345「双沈頭クリンチ植込みボルト」に関連し、これに関する優先権を主張するものである。
本発明は2つの金属シートを対向して締着させるための留め金具に関する。更に、本発明はシート材料の変形によりシートへの面一的取着を提供する留め金具に関する。
【背景技術】
【0002】
殆どの場合、金属シートは互いにリベット又はスポット溶接を用いて締着される。しかし、この締着法は、スポット溶接では、これらシートの表面に溶接スケール(垢)並びに焼けを残すという欠点を有する。スポット溶接は更に、金属シートが非常に薄い場合あるいは互いに異なる材質からなるものである場合など、容易に溶接が可能でないシート材料において効果的ではない。更に、この焼けたシートは醜い外観を生じさせることになる。リベットも溶接と同様の機能を果たすものであるが、或る種の用途で必要とされるシートの表面と面一の仕上がりを残すことができない。その他の方法として、接着剤又は他の結合剤、例えばエポキシを使用することもできるが、それらはしばしば非常に汚らしく、かつ、非常に高価である。その他の方法、例えば、シート相互を二次成形するTog−L−Loc(登録商標)およびHenrobスタイル留め金具は取着されるシートを変形させることになる。回転させることもできる。上述の技法の内、回転という別の特徴は、面一に設けることができないリベットによってのみ達成される。
【0003】
米国特許No.3,242,962号明細書(Dupree)(文献1)には、両面締着型インサートが開示されており、これは締着されるべきシート相互間に挿入されるようになっている。しかし、このDupreeの留め金具は多くの問題および欠点を有している。例えば、わずか1つの留め金具しか設置することができない。なぜならば、これらシートがいったん接合されると、更なるものをこれらシート間に挿入することができないという事実によるからである。このことは更に、より効率的、近代的な技法でDupreeの留め金具を自動供給、設置するという利点を無効にするものである。更に、Dupreeの留め金具は、組合されたシートの厚みと同じ厚みのものでなければならない。最後に、アンダーカットの1つの中の刻みを除去することにより回転するようにDupreeの留め金具を変更させることができるが、回転サイクルを何回も繰り返すことにより、この回転締着がかなり弱くなり損傷することになる。
【0004】
【特許文献1】米国特許No.3,242,962号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、2つの金属シートを固定し、かつ、双方の金属シートに対し面一仕上げを達成することを可能にし、更に回転のための枢着点を提供することを可能にし、かつ、従来の締着法での溶接スケール又はエポキシの汚れを回避することにする手段の開発の必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明は、2つの金属シートを互いに対向させて固定させる締着法についての上述の必要性に対し極めて簡単な解決を提供するものである。本願発明の装置は、異なる直径の隣接する締着手段を有する締着鋲(クリンチボルト)であって、整合させたシートの適当な寸法の孔内に1回のプレス操作により圧入させるようにしたものである。以下に更に詳述するように、両面面一の取着を、溶接のための熱を必要とすることなく、接着剤の汚れおよび費用を生じさせることなく、あるいは接合されるべきシートの表面の変形を生じさせることなく、提供することができる
【0007】
より具体的には、本発明は、互いに整合する孔を有する平行シートを接合させるためのクリンチ(clinch)型留め金具を提供するものであって、一端に頭部を有し、他端にエンドキャップを有する軸部を具備してなり、この頭部が第1のディスプレイサー(押し退け部)であり、上面となっていて更に留め金具の最大径のものであることを特徴とする。上記軸部の第1のアンダーカット溝が、第1の直径を有する第1のディスプレイサーの直下に形成されていて、上記軸部の第2のディスプレイサーが前記第1のアンダーカット溝の直下に形成されていて、前記第1のアンダーカット溝が前記第1の直径よりも小さい第2の直径を有することを特徴とする。上記軸部の第2のアンダーカット溝が第2のディスプレイサーの直下に形成されていて、前記エンドキャップが前記アンダーカット溝の直下に形成され、かつ、前記第2のディスプレイサーよりも小さい直径を有することを特徴とする。好ましくは、この留め金具が、対向する平坦円形上面と下面とを有するものとする。
【0008】
本発明の留め金具は、2つの金属シートを対面関係で接合させてアッセンブリーを形成させるのに有利に使用される。この場合、第1のシートは第1の孔を有しその側壁が留め金具の第1のアンダーカット溝を実質的に全て占めると共に、第2の平坦シートがこの第1のシートと対面関係で接合される。第2のシートは第1のシートの第1の孔よりも小さな径で、かつ、この第1の孔と同軸の第2の孔を有する。すなわち、この第2の孔は前記第1の孔よりも小さな径のもので、その側壁が留め金具の第2のアンダーカット溝を実質的に全て占めるようになっている。このアッセンブリーは、面一取着を提供するものであり、第1のシートの上面が留め金具の頭部の上面と同一平面を形成し、留め金具のエンドキャップの端面が第2のシートの下面と同一面又は第2の同一面(sub−flush)を形成している。これは、高い押出し強度を維持させた状態で、上部アンダーカット溝が上部シートの材料で完全に満たされていない状態の別のアッセンブリーを形成させるものとなる。この別のアッセンブリーにおいて、上部シートは留め金具の頭部と、第2のシートとの間で効果的に押え付けられた状態で、強力な枢着を可能にしている。この大きい径、従って上部シートの大きい移動量およびディスプレイサーとアンダーカットのため、上述の高い押出し性能が維持されることになる。
【0009】
上述のDupreeの留め金具のような従来技術の幾つかと比較して、本発明はこれらシートの上面から配置させることができるという利点を有し、従って、多数の留め金具を任意のパターンで配設させることができる。更に、本発明では、第2のシートの厚みは小さくてよく、留め金具を第2のシートの盲穴に配置させる場合は、留め金具の下方軸部よりも厚ければよい。更に、本発明では以下に詳述するように、上方シートは留め金具の頭部と、第2のシートとの間に保持される。これにより、高押出し強度および面一配置を維持させつつアンダーカットに上部シートを不完全に充填させることにより、上部シートの自由な回転が可能となる。
【0010】
以下の図面および好ましい実施例の記載から、本発明の上記目的が達成し得ることが当業者により理解されるであろう。なお、本発明を特定の実施例を参照して説明するが、以下の記載は単に本発明の説明のためのものであり、本発明を制限するものと理解されるべきではない。これら好ましい実施例に対し、本発明の趣旨および範囲を逸脱することなく種々の変形が可能であることが当業者により理解されるであろう。なお、理解を容易にするため、以下の種々の図面を通して、同種部材については同一符号が付されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1を参照すると、これは本発明のクリンチ(clinch;係合)タイプの留め金具を示すものであり、2対のディスプレイサー(押し退け部)13,15と、これに関連するアンダーカット14,16とを有し、これらは互いに同軸的に隣接して設けられている。第1の対13,14は他方の対15,16よりも径が大きくなっている。この留め金具は底部に設けられたエンドキャップ17により終わっている。これらの構造は、上面18と、エンドキャップ17の底面19との間の留め金具の軸部に沿って配置されている。
【0012】
図2に示すように、この2つのシート1および2は、上方から強制的に適用される本発明のクリンチコネクターと整合させて保持されている。これらシート1および2は説明の便宜上、本図では分離して示されている。上方シートと、第2のシートとには、整合させた互いに異なる径の孔3,4を有し、これらの孔3,4の大きさは、このコネクターの各ディスプレイサーの径およびアンダーカットの径とそれぞれ対応している。上方シートの孔3の径は、第2のシート内の孔4の径よりも大きくなっていて、コネクターの先行クリンチ部が上方シートの孔3を通過可能となっている。
【0013】
図3に示すように、配設のための力がパンチ21に加えられ、本発明のクリンチコネクター11が配設用アンビル23に対抗してシート1,2内に圧入される。本図に示す矢線は、第1および第2のシートに適用されるクリンチコネクターに対する力の印加方向を示している。このコネクター11は、アンビル23に対するプレス操作の際の単一の力の適用によって力が加えられ、それにより図4に示すような配設が達成される。この場合、上方ディスプレイサーおよびアンダーカットが、接合されるべき2つのシート1の上部に係合し、同時に下方ディスプレイサーおよびアンダーカットは第2のシート2と係合することになる。
【0014】
図4を参照すると、プレス操作が完了することにより、これらシートは、上方シートの金属25の常温流れを強制する上方頭部/ディスプレイサー13による金属25の上方アンダーカットへの常温流れにより相互にロックされることになる。同様に、第2のシート内で、金属26の下方アンダーカットへの常温流れがディスプレイサー15により行われる。これにより、本発明のクリンチ植込みボルトの双方のシートとのロックがなされ、これら相互を接合することになる。図5に示すように、第2のシート2は盲孔を有するものであってもよい。本発明の有意な利点として、第1および第2のアンダーカット溝が十分な径のものであって、これらアンダーカットが各シートの材料により不完全に満たされるようにした場合、締付け枢着が本発明により提供され、この場合、これらシート相互間の相対的回転を許容しつつ、制御された様式で面一でこれらシートが締着されることになる。
【0015】
以上の説明から、明らかに、当業者が本発明に対し、その他の改良、変形を行うことも可能であり、従って、本発明は特許請求の範囲およびその均等物によってのみ限定されるべきものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】ディスプレイサーおよびアンダーカットを有する本発明のクリンチ植込みボルトの側面図。
【図2】締着すべき2つのシートの受理孔と整合させたクリンチコネクターのアッセンブリーを右側上方から見た分解斜視図。
【図3】本発明の留め金具をプレスにより配置させるときの状態を示す縦断面図。
【図4】本発明の留め金具を完全に配置させたときの状態を示す縦断面図。
【図5】本発明の他の実施例を示す縦断面図であって、クリンチ植込みボルトが第2のシート内の盲孔内に配置された状態を示す図。
【符号の説明】
【0017】
1,2 シート
3,4 孔
11 クリンチコネクター
13,15 ディスプレイサー
14,16 アンダーカット
17 エンドキャップ
18 上面
19 底面
23 アンビル
25、26 金属

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに整合する孔を有する平行シートを接合させるためのクリンチ型留め金具であって:
一端に頭部を有し、他端にエンドキャップを有する軸部と;
前記頭部が上面を有する第1のディスプレイサーであり、更に留め金具の最大径のものとなっているものと;
前記第1のディスプレイサーが第1の直径を有し、その直下に形成された前記軸部の第1のアンダーカット溝と;
前記第1の直径よりも小さい第2の直径を有する前記第1のアンダーカット溝の直下に形成された上記軸部の第2のディスプレイサーと;
前記第2のディスプレイサーの直下に形成された軸部の第2のアンダーカット溝と;
前記第2のアンダーカット溝の直下に形成されエンドキャップであって、前記第2のディスプレイサーよりも小さい直径を有するものと;
を具備してなることを特徴とする留め金具。
【請求項2】
対向する平坦上面と平坦下面とを含む請求項1記載の留め金具。
【請求項3】
前記平坦上面と平坦下面が円形である請求項2記載の留め金具。
【請求項4】
2つの金属シートを互いに対向させて接合させる請求項1記載の留め金具と;
第1の孔を有しその側壁が留め金具の第1のアンダーカット溝を実質的に全て占めるようにした第1の平坦シートと;
前記第1のシートと対面関係で接合され、第1のシートの第1の孔よりも小さな径で、かつ、この第1の孔と同軸の第2の孔を有する第2の平坦シートと;
を具備してなり;
前記第2の孔が前記第1の孔よりも小さな径のもので、その側壁が留め金具の第2のアンダーカット溝を実質的に全て占めるようになっていることを特徴とするアッセンブリー。
【請求項5】
留め金具の上面が前記第1のシートの上面と同一平面を形成し、留め金具のエンドキャップの端面が前記第2のシートの下面と同一平面を形成している請求項4記載のアッセンブリー。
【請求項6】
前記第1の孔および第2の孔が円形である請求項5記載のアッセンブリー。
【請求項7】
前記第2の孔が第2のシート中の盲穴である請求項4記載のアッセンブリー。
【請求項8】
前記留め金具の第1のアンダーカット溝が十分な径のものであり、それが第1のシートの材料で完全に満たされていない状態であり、それにより該留め金具と、該シートとの間の相対的回転動作を提供している請求項4記載のアッセンブリー。
【請求項9】
前記第1および第2のアンダーカット溝の双方が十分な径のものであり、それがそれぞれ、前記第1および第2のシートの材料で完全に満たされていない状態にある請求項8記載のアッセンブリー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2008−516173(P2008−516173A)
【公表日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−536776(P2007−536776)
【出願日】平成17年10月12日(2005.10.12)
【国際出願番号】PCT/US2005/036366
【国際公開番号】WO2006/047077
【国際公開日】平成18年5月4日(2006.5.4)
【出願人】(501030625)ピーイーエム マネージメント,インコーポレイテッド (15)
【氏名又は名称原語表記】PEM MANAGEMENT,INC.
【住所又は居所原語表記】103 Foulk Road,Suite 108,Wilmington,DE 19803 U.S.A.
【Fターム(参考)】