説明

反射ポリマー分散型コレステリック液晶ディスプレイ

可視光スペクトルの範囲内の第一の高反射状態および前記スペクトル内での第二のより低い反射状態を有するポリマー分散型コレステリック液晶層、前記反射状態は、電場が無い状態で維持される前記二つの状態間の電場によって変わることができる;
前記ポリマー分散型コレステリック液晶層の上に配置された第1の透明導体;
前記ポリマー分散型コレステリック液晶層の高反射状態のスペクトルの範囲内に相対的に高い光吸収を有し、そして前記ポリマー分散型コレステリック液晶層の高反射状態のスペクトルの範囲に対して相補のスペクトルに相対的により低い光吸収を有する、前記ポリマー分散型コレステリック液晶層の下にある相補光吸収層;および
前記相補光吸収層から受けた光を、前記相補光吸収層を通して反射する、前記相補光吸収層の下にある反射第2導体
を含めた材料の層の載せた基板を含んで成るディスプレイシート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、相対的により明るい(より輝く)状態および相対的により暗い状態の状態を変えて目で見ることができる画像を提供するコレステリック液晶層を有するディスプレイ・シートに関する。具体的には、本発明は、相対的に明るい状態がより中性な外観を示すディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、情報は、パーマネント・インクを担持する集成紙シートを使用して表示されるか、或いは、電子的に変調される表面、例えば陰極線ディスプレイ又は液晶ディスプレイ上に表示される。プリント情報は、変更を加えることができない。例えば電気的に更新されるディスプレイはしばしば重く、そして高価である。別のシートは、チケット情報又は金融情報を担持する磁気書込み領域を有することができるが、しかし、磁気的に書込まれたこのようなデータは、目には見えない。
【0003】
電力なしに、電子的に変化可能なデータを維持するメディア・システムが存在する。このようなシステムは電気泳動材料(Eink)、Gyricon、又はポリマー分散型コレステリック材料であることが可能である。電子的に更新可能なこのようなディスプレイの一例は、米国特許第3,600,060号明細書(Churchillに対し1971年8月17日発行)に見いだすことができる。この明細書に示されたデバイスは、場に対して応答性の双安定ディスプレイを形成するための、コーティングされ、次いで乾燥させられた水性ゼラチン中のコレステリック液晶エマルジョンを有する。また、米国特許第3,816,786号明細書には、電場に対して応答性のカプセル化コレステリック液晶層が開示されている。この明細書に記載された電極は透明又は不透明であってよく、種々の金属又はグラファイトから形成することができる。一つの電極は光吸収性でなければならないことが開示されており、そして光吸収性電極は、導電性材料、例えば炭素を含有するペイントから調製されることが示唆されている。
【0004】
電子書込み型の可撓性を有するディスプレイ・シートの製作が米国特許第4,435,047号明細書(Fergasonに対し1984年3月6日発行)に開示されている。基板は、第1の導電性電極と、一つ又は二つ以上のカプセル化液晶層と、導電性インクの第2の電極とを担持する。導電性インクは、光を吸収するための背景を形成するので、ディスプレイ領域は、非ディスプレイ領域とは対照的に暗く見える。対向する導電性領域に加えられた電位は、液晶材料に作用することにより、ディスプレイ領域を暴露する。液晶材料はネマチック液晶なので、ディスプレイは、エネルギーを断たれたときに、画像を提供することを止める。
【0005】
Fergasonの特許明細書には、光を吸収し、場の不在においては画像を維持しないネマチック液晶の使用が開示されている。ポリマー・カプセル材料中又は液晶中の色素を使用することにより、入射光を吸収する。色素は溶液の一部であり、固形のサブミクロン粒子ではない。この特許明細書にはさらに、例2においてキラル・ドーパントの使用が開示されている。このドーパントはネマチック液晶の応答時間を改善するが、しかし光反射状態では動作しない。
【0006】
米国特許第5,251,048号明細書に開示された光変調セルは、ポリマー分散型キラル・ネマチック液晶を有する。キラル・ネマチック液晶は、光の特定のスペクトルの可視波長を反射するプレーナー(planar)状態と、光散乱フォーカル・コニック状態との間で、電子的に駆動されるという特性を有する。コレステリック液晶としても知られるキラル・ネマチック液晶は、電場の不在時に、多数の所与の状態のうちの一つを(安定状態で)維持する能力を有する。セル内の背面基板の外面に黒色ペイントを塗布することにより、セグメント線及び走査線の交差によって定義された領域の外側に光吸収層を提供する。
【0007】
コレステリック液晶は、反射状態にある時に、可視スペクトルの一部を反射する。反射状態は中性色バランスを有することが好ましい。反射状態において中性濃度を示すコレステリック・ディスプレイを提供することが有用である。このようなディスプレイが、シンプルで低廉なプロセスを用いて製作されることが有用である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そのようなディスプレイの液晶が明状態であるときに、実質的に色中性である光反射を生成するディスプレイを提供することが本発明の目的である。
【0009】
反射表面、好ましくは電極の反射表面と一緒に動作して、ディスプレイの色中性反射画像領域を生成する相補着色層を提供することが本発明のさらなる目的である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
これらの目的は、
a)材料の層を載せるための基板;
b)ポリマー分散型コレステリック液晶材料を含む画像形成層、当該画像形成層は、動作スペクトルを規定する可視光スペクトルの部分の範囲内で第1の相対的に高い反射状態と、前記動作スペクトル内の第2の相対的に低い反射状態とを有しており、前記状態は電場によって当該2つの状態の間で変わることができ、そしてこれらの状態は電場が無くても安定状態として維持されることができる;
c)前記画像形成層の一方の側に配置された第1の透明導体
d)前記画像形成層のもう一方の側にある、前記画像形成層の動作スペクトルの範囲内で相対的に低い透過率を有し、そして前記動作スペクトルの範囲外の光に相対的に高い透過率を有する相補光吸収層;および
e)前記相補光吸収層を通って透過した光を前記相補光吸収層を通して反射させることができる、随意選択的に第2電極の一部となる反射表面;並びに
f)第2電極
を含んで成るディスプレイ・シートにおいて達成される。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、画像領域がプレーナー状態にあるときに、明るい、色中性の画像領域を提供する。本発明のディスプレイは、単なる、室温工程を用いて作製することができる。バインダー中のサブマイクロメーター粒子の顔料により、駆動電圧にほとんど影響を与えない薄層として電気化学的に安定な光吸収材料が提供される。顔料および/又は色素を含むこの相補光吸収材料を、ポリマー分散型コレステリック液晶、好ましくは水性バインダー分散型コレステリック液晶と同時にコートすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1は、本発明による第1のポリマー分散型コレステリック液晶ディスプレイの一つの態様の斜視図である。ディスプレイ10として表されたシートは、ディスプレイ基板15を含み、一つの態様では、この基板は薄い透明ポリマー材料となることができる。そのような材料の一つは、ポリエステル・プラスチックから形成されたKodak Estarフィルムベースであり、その厚さ20〜200μmを有する。例えばディスプレイ基板15は、ポリエステルフィルムベース125μm厚シートとなることができる。他のポリマー、例えば透明ポリカーボネートを使用することもできる。
【0013】
ディスプレイ基板15上には一つ又は二つ以上の第1の導体20が形成されている。第1の導体20は酸化錫、インジウム錫酸化物(ITO)又はポリチオフェンであってよく、ITOが好ましい材料である。典型的には、第1の導体20の材料は、ディスプレイ基板15上の層としてスパッタリング又はコーティングされ、スクエア当たり1000オーム未満の抵抗を有する。第1の導体20は、例えばコンベンショナルなリソグラフィ手段又はレーザー・エッチング手段によって、導電性層内に形成することができる。透明有機導体20、例えばPEDT/PSS、PEDOT/PSSポリマー(これらの材料はBayer AG Electronic ChemicalsによってBaytron(RTM)として販売されている)を印刷することにより、透明な第1の導体20を形成することもできる。
【0014】
コレステリック液晶層30が第1の導体20に被さる。コレステリック液晶層30は、1997年12月9日にDoane他に発行された米国特許第5,695,682号明細書(その開示内容を引用することにより本明細書中に組み入れる)に開示されているようなコレステリック液晶材料を含有することができる。このような材料は、高異方性ネマチック液晶混合物を使用して形成され、キラル・ドーピング剤を添加することにより、入射光を反射する干渉パターンが形成されるまで、液晶平面内に螺旋ねじれが提供される。種々の強度及び継続時間を有する場を印加することにより、キラル・ネマチック(コレステリック)液晶材料を反射状態、近透明/透過状態、又は中間状態に駆動することができる。これらの材料の利点は、電場の不在において両方とも安定な第1及び第2の光学状態を維持できることである。材料は、場が除去されたあと、所与の状態を無期限に維持する。コレステリック液晶材料は、2種の成分系、例えばHawthorne, N.Y.在、EM Industriesから入手可能なMDA-00-1444(ドープされていないネマチック)及びMDA-00-4042(高キラル・ドーパント濃度を有するネマチック)を使用して、形成することができる。
【0015】
好ましい実施態様の場合、コレステリック液晶層30は、ゼラチン、好ましくは脱イオンされた写真等級ゼラチン中に分散されたコレステリック液晶材料である。例えば液晶材料は、5 %ゼラチン水溶液中の8 %コレステリック液晶で混合される。混合物を分散させることにより、水性懸濁液中8〜10μm直径の液晶ドメインを有するエマルジョンを形成する。これらのドメインは、2000年1月6日付けでStephenson他によって出願された同時係属中の米国特許第09/478,683号明細書に記載された限定凝集技術を用いて形成することができる。エマルジョンを、ポリエステル・ディスプレイ基板15上の第1の導体20上にコーティングし、そして乾燥させることにより、約9μm厚のポリマー分散型コレステリック・コーティングを提供することができる。ゼラチンの代わりに、その他の有機バインダー、例えばポリビニルアルコール(PVA)又はポリエチレンオキシド(PEO)を使用することができる。このようなエマルジョンは写真フィルムの製造時に採用されるタイプのコーティング設備を使用して、機械コーティングすることができる。Stephenson他による米国特許第6,423,368号明細書に開示されているように、コレステリック層30を塗布する前に、第1の導体20上にゲル下層を塗布することができる。
【0016】
図2は、従来の知識に基づく、それぞれ入射光に応答するプレーナー状態及びフォーカル・コニック状態におけるキラル・ネマチック液晶材料を示す。左側の図面では、高電圧場が印加され、素早くゼロ電位に切換えられたあと、液晶分子はプレーナー液晶72として整列する。プレーナー液晶は、プレーナー反射光62として入射光60の一部を反射する。キラル・ドーパント濃度はピーク反射を規定する。ピーク反射の周りの帯域幅は、ネマチック液晶の光複屈折に対して比例する。図2の右側では、より低い電圧場を印加することにより、キラル・ネマチック液晶材料の分子が分解して、フォーカル・コニック液晶74として知られる傾斜セルになる。フォーカル・コニック材料の配向は、反射性ではなく、ほぼ透明であるか又は散乱/透過性である。低電圧時間を変化させることにより、分子が反射プレーナー状態72と光散乱フォーカル・コニック状態74との間の配向を成すことを可能にする。
【0017】
完全に展開させられたフォーカル・コニック状態74において、コレステリック液晶は光散乱性であり、入射光60は前方に散乱させられ、そして光吸収体42によって吸収されることにより、黒色(又は黒みを帯びた暗色)画像領域の外見を形成することができる。プレーナー状態からフォーカル・コニック状態へ徐々に展開することにより、コレステリック材料が反射プレーナー状態72から、完全に展開させられた光散乱フォーカル・コニック状態74に変化するのにつれて、観察者は、明るいプレーナー反射光62が黒色に遷移するのを知覚することになる。場が除去されると、コレステリック液晶層30は、所与の光学状態を無期限に維持する。この状態は、1995年8月1日にDoane他に発行された米国特許第5,437,811号明細書により十分に論議されている。
【0018】
図3は、コレステリック液晶材料を含有するドメインを示す断面図である。コレステリック液晶材料は、弓状表面に固定される。入射光60は、斜角60'を成して、又は相対的に直角60を成してドメインに衝突することができる。斜角を成して光が衝突するコレステリック材料は、より短い波長の光を反射する。ピーク反射波長及び光の帯域幅は、コレステリック液晶材料特性、並びにドメインのサイズ及び形状の双方の関数である。
【0019】
図4は、変化するドメイン・サイズに伴うポリマー分散型コレステリック液晶のスペクトル分布を、分光光度計によって測定したプロットである。測定されたコレステリック液晶は、二つの平らなガラス・スライド間で測定して550ナノメーターのピーク反射を有するMerck BL-118であった。コレステリック液晶材料をゼラチン含有水浴内で分散し、そして一定の量をITO導体上にコーティングして乾燥させた。乾燥させたコレステリック・コーティング上に、第2の導体を印刷し、材料をプレーナー(反射)状態に切換えることにより、反射率を測定した。エマルジョンとして2.9、5.0、8.2及び10.0μmの直径を有するドメインに対して、スペクトル分布を測定した。ドメインは乾燥させられると平らになり、種々の傾斜の表面を有する。ドメイン・サイズが増大すると、プレーナー反射光も増大する。図4によって明らかなように、平面液晶が固定されている弓状表面が、光のより短い波長を反射することにより、スペクトル分布は、より短い波長に向かって5 ナノメーターのピーク反射率シフトを有した。このことはディスプレイを設計するときに考慮に入れることができる。好ましくは、ディスプレイ・シートは、ピーク反射波長が570〜590ナノメーターのポリマー分散型コレステリック液晶材料を含む。
【0020】
図1に戻ると、相補光吸収層35が、コレステリック液晶材料30に被さっている。好ましい実施態様の場合、相補光吸収層35は、1μm未満に粉砕された顔料から成っており、これによりバインダー中に「ナノ顔料」を形成する。このような顔料は、極めて薄い層(サブマイクロメーター)層内に組み込まれると、光の波長を吸収する上で極めて効果的である。このような顔料を電気的に不活性であるように選択することにより、ディスプレイ10に印加されたディスプレイ電場を分解して妨害することを防止することができる。このような顔料は、2002年8月16日付けで出願された同時係属中の米国特許出願第10/222,396号明細書に開示されている。この明細書を引用することにより本明細書中に組み入れる。フィルター層は異なる色相を有する2種又は3種以上の顔料を含むことができる。
【0021】
好ましい実施態様の場合、相補光吸収層35は、プレーナー状態における液晶によって法線反射された光の大部分を吸収し、そしてコレステリック液晶層30によって反射されない光部分を透過する。駆動電圧を最小限に抑える一方で、許容できる光吸収度を提供するために、相補光吸収層35はできるだけ薄くするべきである。顔料は極めて効率的な光吸収体であり、この目的に理想的に適している。好ましい実施態様の場合、コレステリック液晶層30の厚さは4〜10μmである。コレステリック液晶材料のための、状態を変化させる場は、典型的にはコーティング厚1μm当たり10ボルトである。相補光吸収層35は、場を担持する二つの導体間に配置されているので、層はコレステリック液晶層30よりも著しく薄くあるべきである。実際には相補光吸収層35の厚さは、約1μm未満、好ましくは0.5μm以下であるべきである。相補光吸収層35内のバインダーの量も、駆動電圧の増大を最小限に抑えるために低くあるべきである。顔料との比が1:1のゼラチン・バインダーが、次に塗布される層に対する良好な結合強度を有する層を提供し、駆動電圧の増大を最小限に抑えることができることが判った。
【0022】
本発明において、相補光吸収層35をコレステリック液晶層30上にコーティングすることにより、光吸収層35を提供する。光吸収層35は、プレーナー反射光に対してフォーカル・コニック状態において高コントラストの暗画像領域を提供する。相補光吸収層35はさらにプレーナー状態において、(下側の反射面によって反射することができる光を選択的に透過することを介して)コレステリック液晶によって作業されない波長における所定の光量を提供する。相補光吸収層35は、コレステリック液晶層30のデポジションと同時に、又は別個の工程でコーティングすることができる。好ましい実施態様の場合、写真画像形成要素を形成する際に使用されるような多層コーティング設備が、コレステリック液晶層30と相補光吸収層35とを、二つの同時デポジット層として提供する。相補光吸収層35はコレステリック層30よりも著しく薄く、従って上述のように、製造されたディスプレイにおけるコレステリック液晶材料の状態を変化させるのに必要な電場強度に及ぼす相補光吸収層35の影響は最小限である。
【0023】
図1の実施態様の参照を続けると、第2の導体40が相補光吸収層35に被さっている。第2の導体40は、コレステリック液晶層30を横切って電場を誘発するのに十分な導電性を有している。この場は、ポリマー分散型液晶材料の光学状態を変化させるのに十分に強い。この態様の第2の導体40は、例えば、アルミニウム、銀、クロム又はニッケル等の導電性かつ反射性の材料を真空蒸着することによる反射性金属から形成去れる。真空コートされた第二の導体40の場合、アルミニウム又は銀は非常に高い反射率と伝導率を提供する。導電材料の層を、リソグラフィ、レーザー・エッチング又はマスクを介した適用を用いた周知の技法を用いてパターン形成することができる。あるいは、材料の薄い反射層を、より反射性の小さい導体材料の適用前に適用して反射を最大にすることができる。
【0024】
別の態様では、第2の導体40は、反射性で導電性の配合物、例えばAllied Photochemical(Kimball, Michigan)製のUVAG(RTM)0010材料をスクリーン印刷することにより形成される。このようなスクリーン印刷可能な導電性材料は、紫外線硬化性樹脂中に微粉砕された銀を含む。印刷後、材料を0.40ジュール/cm2を上回る紫外線に当てると、樹脂は約2秒で重合して、耐久性のある表面を形成することになる。ディスプレイの製造コストを最小限にするためには、スクリーン印刷が好ましい。相補光吸収層35内の顔料に十分な量のポリマーを提供することにより、第2の導体40上に印刷可能な表面を形成する。或いは、熱硬化型銀担持樹脂をスクリーン印刷することにより、第2の導体40を形成することもできる。このような材料の一例は、熱硬化型銀インクであるAcheson Electrodaga 461SSである。第1及び第2の導体は、アドレス可能なマトリックスを製造するためにパターン形成することができる。
【0025】
図5は、本発明によるディスプレイの光学状態を概略的に示す断面図である。左側のダイヤグラムは、コレステリック液晶材料がプレーナー状態にあるときの光路を示す。入射光60はプレーナー液晶72に衝突し、プレーナー液晶72は、プレーナー反射光62として入射光60の一部を反射する。残りの光は相補光吸収層32を通る。相補光吸収層32を通る光の一部は吸収され、そして残りの光は反射性の第2の導体40に衝突する。光は第2の導体40から反射され、相補光吸収層32を2度目に通り、次いでプレーナー液晶材料72を通ることにより、相補光64になる。図5の右側では、液晶材料はフォーカル・コニック状態にあり、相補光吸収層32はプレーナー状態72で反射された光の波長を吸収する。液晶材料がフォーカル・コニック状態74にある場合、コレステリック液晶の実質的に反射波長外の光は、相補光64を提供し続ける。
【0026】
図6は、人間の目の3色「チャネル」(赤、緑及び青)の応答を示すプロットである。「チャネル」とは、人間の目の網膜内に含有される種々異なるタイプの光受容体(円錐体)を意味する。このプロットは、1931 CIE Standard Colorimetric オブザーバーから採用されている。本発明によるディスプレイから反射された光は、三つの全ての色チャネルのほぼ等しい刺激(曲線下面積)を有し、従って中性色(白/グレイ)に見える。コレステリック液晶の帯域幅は約100ナノメーターである。明るさを最大化するためにこの領域内でピーク波長を選択することが好ましい。このような帯域幅に対応して最大刺激を有するピーク波長は、ほぼ580ナノメーターである。この波長において、緑(G)及び赤(R)の受容体の刺激はオーバーラップし、530〜630ナノメーターの波長の光によって共通して刺激される。
【0027】
図7は、582ナノメーターのピーク反射と100ナノメーターの帯域幅を有するコレステリック液晶に対する人間の目の応答を示すプロットである。緑(G)及び赤(R)の曲線下面積によって表される、緑及び赤のチャネルの刺激はほぼ等しい。等しい面積の青色光が観察者に提供されると、光全体が中性色(白/グレイ)を有することになる。
【0028】
図8は、本発明の1実施態様によるプレーナー状態におけるディスプレイ・シートの1実施態様の光応答である。液晶のプレーナー状態のピーク反射は、可視光スペクトルの緑(G)部分及び赤(R)部分の両方を刺激させる光が刺激されるように設定される。相補光吸収層35は、青(B)色光の一部を反射して、実質的に中性色又は白みを帯びた色(W)をもたらす光を形成するように構成された1種又は2種以上の顔料/色素を含むコーティングであってよい。従って、液晶材料がプレーナー状態にある場合、全ての反射光は、(1)液晶に由来する反射光及び(2)光吸収層によって透過され、そして反射面によって反射された光、の両方を含む。後者の反射光は、カラー・フィルター処理された第2の反射光と呼ぶこともできる。それというのも光吸収層はカラー・フィルターとして機能するからである。
【0029】
図9は、液晶がフォーカル・コニック状態にあるときの、図8のディスプレイ・シートの光応答である。相補光吸収層35は、赤(R)及び緑(G)の場合、プレーナー状態で反射される光の波長の実質的な光量を吸収する。青(B)色光の一部が、青又は青みを帯びた画像層を形成するために反射される。ディスプレイはこれにより、コレステリック液晶材料をプレーナー状態とフォーカル・コニック状態との間で電気的に切換えることにより、中性色状態と暗青色状態との間で切換わることができる。
【0030】
図8に戻ると、短波長光の成分、又は青(B)色光が、相補光吸収層35と反射性の第2導体40との組み合わせによって加えられる。図6に戻ると、この図から見られるように、短波長青(B)色光を加えることにより、さらに赤(R')受容体が刺激され、見掛け赤(R)色チャネル刺激が増大する。従って、コレステリック液晶材料のピーク波長を、より短い波長に調節することにより、緑色光を増大させ、そして赤色光を減少させることができるので、青色光の付加と共に、プレーナー状態で効果的に中性色のディスプレイが形成される。青色光成分は、光の緑及び赤成分の知覚された強度とほぼ又は実質的にマッチングし、そして優位の緑強度に対して赤のバランスをとるために少量の刺激を提供するべきである。この用途に適した顔料は不完全であり、種々の成分の最終配合物は、試行及び数学モデルの使用によって確立される。
【0031】
好ましい実施態様の場合、画像形成層が第1の比較的高い反射状態にあるときには、ディスプレイ・シートからの反射光のCIE三刺激値X、Y及びZは、互いから20%以内にある。液晶材料がプレーナー状態にあるとき、ディスプレイ・シートからの総反射光のCIE三刺激値X、Y及びZは、カラー・フィルター処理された第2反射光なしの、液晶に由来する光だけのCIE三刺激値よりも、互いに20パーセント接近する。X、Y及びZ値は、当業者には明らかなように三刺激測色計R、G、B測定値に基づいて概算することができる。
【実施例】
【0032】
本発明によるシートを形成するための試験を行った。シートは、150μm厚のポリエステルシート上に、ITO(スクエア当たり300オーム)を用いて、シートを構成した。上記配合に基づくポリマー分散型液晶コレステリック材料をブレンドして、575ナノメーターのピーク波長を有するようにした。コレステリック液晶材料を8.3 μm・ドメインに分散し、ITO導体上にコーティングした。
【0033】
1.74 %の溶解ゼラチン、平均直径110ナノメーターまで粉砕された0.74 %のSunfast Blue 15:4、及び平均直径210ナノメーターまで粉砕された0.1.55%のPigment Violet 29を有する相補色素溶液を形成した。溶液を、1 m2当たり10.76グラムでポリマー分散型コレステリック液晶上にコーティングして乾燥させることにより、相補光吸収層を形成した。乾燥させた層は0.5μm厚未満であった。相補光吸収層上に、Allied Photochemical(Kimball, Michigan)製のUVAG(RTM)0010樹脂材料で、第2の導体を印刷した。印刷後、樹脂材料を0.40ジュール/cm2を上回る紫外線に当てることにより、耐久性のある表面を形成した。
【0034】
以前の試験で、試験配合物中のポリマー分散型コレステリック液晶材料が、この材料がプレーナー状態にある場合には、575ナノメーターで光の約25 %を反射することが見極められた。印刷された銀の有効反射率は、可視スペクトル全体にわたって均一に65 %であることが見いだされた。色素濃度は、相補光吸収層を通り、印刷された第2の銀導体によって反射され、そして相補光吸収層を通って戻る光の通過が、450ナノメーターのピーク反射波長で測定して、約25 %の反射青色光を有するように選択された。
【0035】
図10は、本発明によるディスプレイのための試験シートからの光の反射を示すプロットである。プレーナー状態(P)において、575ナノメーターにおけるピークプレーナー反射光は、相補光吸収層からの反射青色光にマッチングした。フォーカル・コニック(FC)状態中に試験シートが書込まれるときには、コレステリック液晶材料は近透明/透過性であり、FCスペクトルは、印刷された銀反射体との組み合わせで作業する相補光吸収層の関数プロットである。相補光吸収層は、シアン顔料とマゼンタ顔料とから成る。これらの顔料は一緒に、コレステリック液晶材料がプレーナー状態にあるときに反射されるスペクトルにおいて高い光吸収率を有する。マゼンタ顔料、Pigment Violet 29は、約540ナノメーターでピーク吸収を有し、シアン顔料、Sunfast Blue 15:4は、約620ナノメーターでピーク吸収を有する。図10に見られるように、2種の顔料の組み合わせは、525ナノメーター及び635ナノメーターの波長から95%光吸収率を提供する。これらの顔料は、オーバーラップする領域で極めて高い吸収率を有し、そして約575ナノメーターでピークを有する。反射光25 %のピークが約450ナノメーターの青色域内で発生することにより、可視スペクトルの緑部分及び赤部分において反射された光のバランスをとる。コレステリック液晶材料によって作業されない可視スペクトル部分(この場合は青部分)は、コレステリック液晶材料の状態とは無関係に一定の反射率である。
【0036】
図11は、人間の目によって知覚された、プレーナー状態における図10のシートの赤、緑及び青成分のプロットである。各色の曲線下面積は、三つ全ての色チャネルに関してほぼ等しかった。従って、シートは中性色の明るいグレーの外観を有した。試験シートがフォーカル・コニック状態中に書込まれると、材料は明るい青であるように見えた。二つの状態間の視覚的な差異は申し分のないものであった。
【0037】
本発明は、試験シートを形成するために使用されたものとは異なる材料及び方法で置き換えて実施することができる。印刷された銀の代わりに蒸着金属を使用することができる。反射性がより高い材料、例えばアルミニウムを使用することにより、ディスプレイが改善される。試験シートに使用された相補顔料の代わりに、顔料又は色素の一つ又は二つ以上の組み合わせを使用することにより、プレーナー反射波長における光の吸収率をより高くする一方、一定の青色反射を維持することができる。
【0038】
当業者には明らかなように、本発明に基づいてディスプレイを形成することにより、青−中性色、又は青−白みを帯びた色以外の対比色を含むことができる。例えば、マゼンタ−白、赤−白、及び黄−白の組み合わせを得ることができる。高反射率状態は「白」又は「白みを帯びた色」であり、これは明るく、実質的に中性色であることを意味する。そして白以外の色は、より暗い色合いの色を意味する。コレステリック液晶材料のピーク波長を変化させることにより、他の可視スペクトル域における選択的な反射及び透過を可能にすることができる。例えば、青、緑又はこれら2色間の中間の波長においてだけ反射するように、ピーク波長を調節することができる。コレステリック液晶材料は、主として赤色光を反射するように設定することができる。それぞれの事例において、プレーナー状態で反射された波長において高吸収率を提供し、そして他の波長に対しては不変部分を提供するように、相補光吸収材料を選択することができる。或る特定の事例において、ディスプレイは、いずれも中性色ではない二つの対比色/状態を提供することができる。しかし通常実際には、できるだけ明るい中性色状態を有することが好ましい。相補的な青色顔料と反射性の第2の導体とを有する580 ナノメーターに近いコレステリック液晶材料は、比較的明るい中性色コントラストを提供する。
【0039】
剛性基板又は複数の基板を使用して、相補光吸収材料と反射性導体とを有するディスプレイを形成するための方法を用いることができる。本発明を利用して、基板が反射性の第2の導体の背後に移動された状態で、ディスプレイを形成することができる。
【0040】
特定の好ましい実施態様を具体的に参照しながら、本発明を詳細に説明してきたが、言うまでもなく、本発明の思想及び範囲内で変更形及び改変形をもたらすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】図1は、本発明による第1のポリマー分散型コレステリック液晶ディスプレイを示す斜視図である。
【図2】図2は、従来のディスプレイと一致した、入射光に応答する面状態及びフォーカル・コニック状態におけるコレステリック(「キラル・ネマチック」液晶材料を示す概略断面図である。
【図3】図3は、コレステリック液晶材料を含有するドメインを示す断面図である。
【図4】図4は、変化するドメイン・サイズに伴うポリマー分散型コレステリック液晶のスペクトル分布を示すプロットである。
【図5】図5は、本発明によるディスプレイの光学状態を概略的に示す断面図である。
【図6】図6は、人間の目の1931 CIE色マッチング関数である。
【図7】図7は、582 ナノメーターのピーク反射を有する理論上のコレステリック液晶に対応する人間の目の応答を示すプロットである。
【図8】図8は、本発明によるプレーナー状態におけるディスプレイ・シートの光応答である。
【図9】図9は、フォーカル・コニック状態における、図8のディスプレイ・シートの光応答である。
【図10】図10は、本発明による、試験時のディスプレイ・シートの1実施態様からの光の反射を示すプロットである。
【図11】図11は、プレーナー状態における図10のディスプレイ・シートの赤、緑及び青成分のプロットである。
【符号の説明】
【0042】
10 ディスプレイ
15 ディスプレイ基板
20 第1の導体
30 コレステリック層
35 相補光吸収層
40 第2の導体
42 光吸収体
60 入射光
62 プレーナー反射光
64 相補光
72 プレーナー液晶
74 フォーカル・コニック液晶
P プレーナー状態
FC フォーカル・コニック状態
R 赤又は三刺激値X反射率
R’ 短波長による赤刺激
G 緑又は三刺激値Y反射率
B 青又は三刺激値Z反射率

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)材料の層を載せるための基板;
b)ポリマー分散型コレステリック液晶材料を含む画像形成層、当該画像形成層は、動作スペクトルを規定する可視光スペクトルの部分の範囲内で第1の相対的に高い反射状態と、前記動作スペクトル内の第2の相対的に低い反射状態とを有しており、前記状態は電場によって当該2つの状態の間で変わることができ、そしてこれらの状態は電場が無くても維持されることができる;
c)前記画像形成層の一方の側に配置された第1の透明導体
d)前記画像形成層のもう一方の側にある、前記画像形成層の動作スペクトルの範囲内で相対的に低い透過率を有し、そして前記動作スペクトルの範囲外の光に相対的に高い透過率を有する相補光吸収層;および
e)前記相補光吸収層を通って透過した光を前記相補光吸収層を通して反射させる、随意選択的に第2電極の一部となる反射表面;並びに
f)第2電極
を含んで成るディスプレイ・シート。
【請求項2】
前記画像形成層が前記第1の相対的に高い反射状態にあるときに、前記ディスプレイ・シートから反射された光が、互いに20%の範囲内にあるCIE三刺激値X、Y及びZを有する請求項1に記載のディスプレイ・シート。
【請求項3】
前記ディスプレイ・シートが、570〜590nmの間にピーク反射波長を有するポリマー分散型コレステリック液晶材料を含む請求項1記載のディスプレイ。
【請求項4】
前記相補光吸収層が、ポリマーバインダー内にサブマイクロメータの顔料粒子を含む請求項1記載のディスプレイ。
【請求項5】
前記反射表面が、印刷された銀インクから形成されている第2の導体の上にある請求項1記載のディスプレイ。
【請求項6】
前記反射表面が、真空蒸着金属から形成されている第2の導体の上にある請求項1記載のディスプレイ。
【請求項7】
ディスプレイの前面が観察者によって見ることができる前面から裏面に以下順に:
a)随意選択的な基板;
b)透明な第1の導体;
c)前記観察者に到達する液晶由来の第1の反射光を提供するために、フォーカル・コニック状態で光を透過し、プレーナー状態で光を反射するポリマー分散型コレステリック液晶材料を含む画像形成層;および
d)相補光吸収層;
e)前記画像形成層および前記相補光吸収層を通って透過した光を、前記相補光吸収層を通して反射し、それによって前記観察者に到達するカラー・フィルター処理された第2の反射光を提供する反射表面;ならびに
f)随意選択的に前記反射表面を形成している第2の導体;
を含んで成るディスプレイであって、
液晶材料がプレーナー状態にあるときに、前記液晶由来の第1の反射光およびカラー・フィルター処理された第2の反射光を含み、前記カラー・フィルター処理された第2の反射光無しの前記液晶由来の光単独よりも実質的に中性である総反射光が観察者に到達するような光吸収率を、前記相補光吸収層が有するディスプレイ。
【請求項8】
プレーナー状態にある前期画像形成層を有する前記ディスプレイ・シートからの総反射光が、カラー・フィルター処理された前記第2の反射光無しの前記液晶由来の光単独のCIE三刺激値よりも、互いに20パーセント接近するCIE三刺激値X、Y及びZを有する請求項7記載のディスプレイ。
【請求項9】
前記カラー・フィルター処理された第2の反射光が、前記液晶由来の第1の反射光に対して相補の関係にある請求項7記載のディスプレイ。
【請求項10】
前記実質的な中性光が、互いに20パーセントの範囲内にあるCIE三刺激値X、Y及びZを有する請求項9記載のディスプレイ。
【請求項11】
前記カラー・フィルター処理された第2の反射光を提供する前記反射表面が、前記相補光吸収層の直近に配置されている請求項7記載のディスプレイ。
【請求項12】
前記コレステリック液晶材料がプレーナー状態にあるときに、実質的な中性色が前記観察者によって認識され、前記コレステリック液晶材料がフォーカル・コニック状態にあるときに、青又は青みを帯びた色が前記観察者によって認識される請求項7記載のディスプレイ。
【請求項13】
前記相補光吸収層が1μm未満の厚みを有する請求項7記載のディスプレイ。
【請求項14】
前記反射表面がそこに到達する光の少なくとも50%を反射する請求項7に記載のディスプレイ。
【請求項15】
アドレス可能なマトリックスを生成するために前記第1および第2の導体がパターン形成される請求項7に記載のディスプレイ。
【請求項16】
前記画像形成層が、ゼラチン含有マトリックスに分散されているコレステリック液晶材料を含む請求項7記載のディスプレイ。
【請求項17】
前記相補光吸収層が、二つもしくはそれ以上の異なる色相の顔料を含む請求項7に記載のディスプレイ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2006−526810(P2006−526810A)
【公表日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−515114(P2006−515114)
【出願日】平成16年6月3日(2004.6.3)
【国際出願番号】PCT/US2004/017441
【国際公開番号】WO2004/109378
【国際公開日】平成16年12月16日(2004.12.16)
【出願人】(590000846)イーストマン コダック カンパニー (1,594)
【Fターム(参考)】