説明

反射保護シート及びこれを用いた半導体発電装置

【課題】発電効率を向上させることができるとともに、組立て時に変形が生じることなく一定の品質のものを製造することが可能な反射保護シート及び半導体発電装置を提供する。
【解決手段】半導体発電装置本体の背面から出射される光を透過させる透過性保護層17と、該透過性保護層17の背面側に配されて、透過性保護層17を透過した光を透過性保護層17に向けて反射する反射構造層16と、該反射構造層16の背面側に配されて、反射構造層16を保護する外層11とを備える反射保護シート10において、反射構造層16を、前面又は背面に凹凸形状を成形した光学構造層15と、凹凸形状に積層された反射膜14とから構成し、光学構造層15を、熱硬化性樹脂あるいはビカット軟化温度95℃以上の熱可塑性樹脂から形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光の回折、散乱、拡散、屈折、あるいは反射作用によって特定方向に光を偏向することで、本来は損失してしまう光を再利用することが可能な反射保護シート、及び、該反射保護シートを用いた半導体発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化問題に対する関心が高まる中、二酸化炭素の排出抑制のために、種々の努力が続けられている。化石燃料の消費量の増大は、大気中の二酸化炭素の増加をもたらし、その温室効果により地球の気温が上昇して地球環境に重大な影響を及ぼす。化石燃料に代替するエネルギーとしては、種々の自然エネルギーの中でも環境負担の少ない太陽光による発電に対する期待が高まっている。
【0003】
太陽光による発電に使用される半導体発電装置は、光のエネルギーを直接電気に換える光電変換部としてpn接合を有する半導体を用いており、このpn接合を構成する半導体として一般的にはシリコンが最もよく用いられている。このような半導体発電装置に用いられる上述のシリコンには結晶系のものと非結晶のものに分けられる。
また、上記光電変換部上には、空気や不純物から光電変換部を保護する封止基材として、一般に透明な強化ガラス等のガラス基板が設けられている。
【0004】
なお、以下では、上記光電変換部を含む少なくとも1つのセルを封止材料によって封止してパッケージ化したものを半導体発電装置と称する。
【0005】
この半導体発電装置は、小片サイズのセルが複数の電極によって接続させることで構成されている。シリコン結晶系の半導体発電装置の場合、複数のセルは間隔を空けて配置され隣り合うセル間にはある程度の間隙が形成されている。さらに、この半導体発電装置の端部には、雨水などの浸食を防ぐべく、セルを配していない余白部分が数ミリから数十ミリの範囲に設けてられている。
これらの間隙及び余白部分はセルが存在しないため、これら領域に光が照射されても発電には寄与せず、光の損失に繋がってしまう。
【0006】
そこで従来、上記のようなセルの間隙及び余白部分に注ぐ光の損失を改善するため、結晶系の半導体発電装置においては、裏面に配す反射保護シートを光反射材とし、光を再びセル側に戻し、前面板であるガラス板などにより全反射し、セルの受光面に再入射させ効率を上げる手法が採用されている。
【0007】
また、この他、裏面に配す反射保護シート上に凹凸構造をつけ、凹凸構造上で反射した光を散乱し易くしセルの受光面に導く確率を向上させ、光利用効率を上げる構造が提案されている(例えば、特許文献1及び2参照)。
さらに、裏面の反射保護シートに凹凸をつけることにより光を散乱させるとともに、セルの両方の面が受光面となるものを使用し効率を上げる構成が提案されている(例えば特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実開昭62−101247号公報
【特許文献2】特開平10−284747号公報
【特許文献3】特許第3670835号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、上述のような半導体発電装置は、エネルギー問題と環境問題とを同時に解決する技術としてより一層高い発電効率を実現することが必要とされている。本発明者らは、反射保護シートに付与する凹凸構造の形状を特定のものとし、さらに、凹凸構造上に反射膜を形成することにより、より一層高い発電効率を実現することが可能となることを発見した。しかし、組立て工程においてかかる熱により、凹凸構造の形状に変形が生じ、高い発電効率を安定して供給することができないという問題がある。
【0010】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであって、発電効率を向上させることができるとともに、組立て時に変形が生じることなく一定の品質を保持することが可能な反射保護シート及び半導体発電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために本発明は以下の手段を提案している。
即ち、本発明に係る反射保護シートは、前面から光を受光して発電する半導体発電装置本体の背面側に配される反射保護シートであって、少なくとも、前記半導体発電装置を透過して該半導体発電装置の背面から出射される光を透過させる透過性保護層と、該透過性保護層の背面側に配されて、前記透過性保護層を透過した光を前記前面側に向けて反射する反射構造層と、該反射構造層の背面側に配されて、前記反射構造層を保護する外層とを備え、前記反射構造層が、前面又は背面に凹凸形状を成形した光学構造層と、前記凹凸形状に沿って積層された反射膜とからなり、前記光学構造層が、熱硬化性樹脂あるいはビカット軟化温度95℃以上の熱可塑性樹脂から形成されていることを特徴としている。
【0012】
このような特徴の反射保護シートによれば、光学構造層の凹凸形状に反射膜を積層して反射構造層を構成することで、前面側に向かって高効率で光を反射することができる。この反射光を半導体発電装置本体の背面側から入射させることで、発電効率を向上させることが可能となる。また、上記光学構造層を形成する材料を、熱硬化性樹脂あるいはビカット軟化温度95℃以上の熱可塑性樹脂としているため、当該反射保護シートを搭載した半導体発電装置を組み立てる際に光学構造層の変形が少なく、一定の品質を維持することができる。
なお、ビカット軟化温度は、JIS−K7206におけるB50法によって測定したものである。
【0013】
さらに、本発明に係る反射保護シートは、前記凹凸形状が前記光学構造層の前面に形成されており、該凹凸形状に積層される前記反射膜と前記透過性保護層との間に、水蒸気透過度が0〜0.5g/mのバリア層が備えられていることを特徴としている。
【0014】
バリア層が形成されることにより、半導体発電装置本体内部への水蒸気の透過を防止し、半導体発電装置本体に用いられている電極の腐食や、封止樹脂の劣化を防ぐことが可能となる。
なお、水蒸気透過度が0.5g/mを超えてしまうと、電極の腐食や、封止樹脂の劣化が発生する場合がある為、望ましくない。この点、水蒸気透過密度を上記範囲に設定することで、電極の腐食及び封止樹脂の劣化を確実に回避することができる。
また、当該バリア層が、透過性保護層と反射膜との間に配置されることにより、充填層の架橋によって発生する酢酸による反射膜の劣化を抑えることができる。
【0015】
また、本発明に係る反射保護シートは、前記凹凸形状が前記光学構造層の背面に形成されており、前記反射膜と前記外層との間に、凹凸形状に積層される前記反射膜と前記外層との間に、水蒸気透過度が0〜0.5g/m2のバリア層が備えられていることを特徴としている。
【0016】
バリア層が形成されることにより、半導体発電装置本体内部への水蒸気の透過を防止し、半導体発電装置に用いられている電極の腐食や、封止樹脂の劣化を防ぐことが可能となる。
なお、水蒸気透過度が0.5g/mを超えてしまうと、電極の腐食や、封止樹脂の劣化が発生する場合がある為、望ましくない。この点、水蒸気透過密度を上記範囲に設定することで、電極の腐食及び封止樹脂の劣化を確実に回避することができる。
また、当該バリア層が反射構造層と外層の間に配置されることによって、外層からの水蒸気や酸素による反射膜の酸化を抑えることができる。
【0017】
さらに、本発明に係る反射保護シートは、前記バリア層が、無機酸化物を含んでなることを特徴としている。
これにより、酸素バリア性及び水蒸気バリア性を向上させることができ、さらに、耐熱性を向上させることが可能となる。
【0018】
また、本発明に係る反射保護シートにおいては、前記凹凸形状が、ファセット形状、円錐形状、ファセット形状の頂部が丸みを帯びた形状、円錐形状の頂部が丸みを帯びた形状、あるいは、これら形状の逆型のいずれかであることを特徴としている。
【0019】
凹凸形状を、ファセット形状、円錐形状といったプリズム形状とすることにより、反射率を向上させることができる。これに対し、凹凸形状を高アスペクト比の非球面レンズとした場合には、散乱性及び吸収の影響により反射率が低下するため、好ましくない。
また、ファセット形状の頂部が丸みを帯びた形状、円錐形状の頂部が丸みを帯びた形状は、良好な反射率を維持しながら、製造過程において凹凸形状に傷が生じてしまうのを防止することができる。
【0020】
さらに、本発明に係る反射保護シートにおいては、前記凹凸形状の頂角が、111°から137°の範囲に設定されていることを特徴としている。
【0021】
このような特徴の反射保護シートにおいては、頂角の角度を上記の角度範囲に設定することにより、半導体発電装置本体に用いられる封止樹脂およびガラスの屈折率を約1.5とした場合に、ガラスと空気との界面において全反射してしまうこと及び該反射光が反射構造層へ入射してしまうことを防ぐことが可能となる。
一方、上記頂角の角度が137°を超える場合、ガラスと空気との界面において、全反射が発生し難くなるため再集光効率が落ちる可能性が高くなり好ましくない。また、上記頂角の角度が111°を下回る場合、反射構造層で反射した光の一部が該反射構造層内で衝突する可能性が高くなり、再集光効率が落ちるため好ましくない。
【0022】
また、本発明に係る反射保護シートは、前記凹凸形状の頂角が、120°から135°の範囲に設定されていることが望ましい。
【0023】
このような特徴の反射保護シートにおいては、頂角の角度を上記の角度範囲に設定することにより、上記同様、半導体発電装置に用いられる封止樹脂およびガラスの屈折率を約1.5とした場合に、ガラスと空気との界面において全反射してしまうこと及び該反射光が光反射凹凸部へ入射しまうことを防ぐことが可能となる。
一方、上記頂角の角度を135°を超える角度に成型しようとすると、常に安定してガラスと空気との界面において全反射する範囲の角度に形成する事が困難となり好ましくない。また、120°を下回る角度の場合、反射構造で反射した光の一部が光反射凹凸部内で衝突し、反射率が僅かながら落ちるため、再集光効率が落ちる可能性が高くなり好ましくない。
【0024】
本発明に係る半導体発電装置は、光を入射する前面板と、該前面板を透過した光を透過する充填層と、該充填層内部に封止されるとともに、前記充填層を透過した光を受光面から受光して電気に変換するセルとを備える半導体発電装置本体の背面側に、上記いずれかの反射保護シートが積層されていることを特徴とする。
【0025】
このような特徴の半導体発電装置においては、上記いずれかの反射保護シートを半導体発電装置本体の背面側に配して半導体発電装置を構成することにより、発電効率を向上させることができるととに、組立て時に変形が生じない一定の品質の半導体発電装置を実現することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の反射保護シート及び半導体発電装置によれば、光学構造層の凹凸形状に反射膜を積層して反射構造層を構成することで、発電効率を向上させることが可能となる。また、記光学構造層を形成する材料を、熱硬化性樹脂あるいはビカット軟化温度95℃以上の熱可塑性樹脂としているため、当該反射保護シートを搭載した半導体発電装置を組み立てる際に光学構造層の変形が少なく、一定の品質を保持することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】実施形態の半導体発電装置の概略構成を示す縦断面図である。
【図2】第1実施形態の反射保護シートの概略構成を示す縦断面図である。
【図3】光学構造層の凹凸形状の一例を示す斜視図である。
【図4】光学構造層の凹凸形状の頂部の角度を示す断面図である。
【図5】第2実施形態の反射保護シートの概略構成を示す縦断面図である。
【図6】第3実施形態の反射保護シートの概略構成を示す縦断面図である。
【図7】実施例における再集光効率の測定方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の反射保護シート及び半導体発電装置の実施の形態について添付図面に基づいて詳細に説明する。
【0029】
図1は、実施形態の半導体発電装置の概略構成を示す縦断面図である。図1に示すように、半導体発電装置100は、半導体発電装置本体1の背面側に反射保護シート10が積層されることで構成されている。
【0030】
半導体発電装置本体1は、前面板2と、充填層3と、セル4とから構成されており、光線を受光することにより発電を行なう装置である。なお、光線としては、通常、太陽光や室内灯等の人工照明の光が採用される。
【0031】
前面板2は、半導体発電装置本体1の最前面に配置されて、表面に光線が直接的に入射するものである。この前面板2は、光線透過率が高い透明な材料が用いられ、具体的には強化ガラス、PEN(ポリエチレンナフタレート)などの樹脂シートが使用されている。また、前面板2の厚みは、強化ガラスであれば約5mm、樹脂シートであれば数十〜数百μmに設定されている。
【0032】
前面板2に入射した光は充填層3へと入射する。充填層3は、前面板2の裏面側に積層されており、セル4を封止する役割を有している。この充填層3は、前面板2から入射した光線を透過させるため光線透過率が高い材料が用いられ、例えば、難燃性を有するEVA(エチレン・ビニル・アセテート)から形成されている。
【0033】
充填層3を透過した光はセル4へと入射する。このセル4は、充填層3内部に複数埋設されており、光電効果より受光部に入射した光線を電力へと変換する機能を有している。このセル4としては、単結晶シリコン型、多結晶シリコン型、薄膜シリコン型、CIGS(Cu・In・Ga・Seの化合物)系薄膜型等のものが用いられる。このような複数のセル4は、互いに電極(図示省略)により接続され、該電極によって発電した電力が外部に取り出されるようになっている。
【0034】
充填層3及びセル4を透過した光は、半導体発電装置本体1の裏面に配された反射保護シート10へ入射する。この反射保護シート10は、入射した光を半導体発電装置本体1へと反射する機能を有している。
反射保護シート10で反射された光は、背面側からセル4の受光面に到達し、また、半導体発電装置本体1における前面板2と大気との界面等でさらに反射されてセル4の受光面に到達することで、該セル4の光電変換により電力へと変換される。これにより光利用効率の向上が図られている。
【0035】
図2は、第1実施形態の反射保護シート10の概略構成を示す縦断面図である。この反射保護シート10は、背面側から順に、外層11、中間層12、バリア層13、反射構造層16、透過性保護層17が積層されることで構成されている。
【0036】
外層11は、反射保護シート10における最背面側に設けられ、反射構造層16を背面側から保護する役割を有している。
この外層11は屋外に設置されることを鑑み、耐水性、紫外線に対する耐久性等の耐候性を有しているものが望ましく、例えばポリエチレンテレフタレート樹脂(PET樹脂)等のポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリメチルペンテン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル−(ポリ)スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリ塩化ビニル系樹脂、フッ素系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアリールフタレート系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、リエチレンナフタレート系樹脂、ポリエーテルイミド系樹脂、エポキシン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アセタール系樹脂、セルロース系樹脂等から形成されていることが好ましい。
【0037】
上述の樹脂の中でも、高い耐熱性、強度、耐候性、耐久性、水蒸気等に対するガスバリア性等を有したものとして、ポリイミド系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素系樹脂、ポリ乳酸系樹脂が好ましい。
【0038】
上述のポリエステル系樹脂としては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等が挙げられる。これらのポリエステル系樹脂の中でも、耐熱性、耐候性等の諸機能面及び価格面のバランスが良好なポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
【0039】
上述のフッ素系樹脂としては、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレンとペルフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体からなるペルフルオロアルコキシ樹脂(PFA)、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとのコポリマー(FEP)、テトラフルオロエチレンとペルフルオロアルキルビニルエーテルとヘキサフルオロプロピレンとのコポリマー(EPE)、テトラフルオロエチレンとエチレン又はプロピレンとのコポリマー(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン樹脂(PCTFE)、エチレンとクロロトリフルオロエチレンとのコポリマー(ECTFE)、フッ化ビニリデン系樹脂(PVDF)、フッ化ビニル系樹脂(PVF)等が挙げられる。これらのフッ素系樹脂の中でも、強度、耐熱性、耐候性等に優れるポリフッ化ビニル系樹脂(PVF)やテトラフルオロエチレンとエチレン又はプロピレンとのコポリマー(ETFE)が特に好ましい。
【0040】
上述の環状ポリオレフィン系樹脂としては、例えばa)シクロペンタジエン(及びその誘導体)、ジシクロペンタジエン(及びその誘導体)、シクロヘキサジエン(及びその誘導体)、ノルボルナジエン(及びその誘導体)等の環状ジエンを重合させてなるポリマー、b)当該環状ジエンとエチレン、プロピレン、4−メチル−1−ペンテン、スチレン、ブタジエン、イソプレン等のオレフィン系モノマーの1種又は2種以上とを共重合させてなるコポリマー等が挙げられる。これらの環状ポリオレフィン系樹脂の中でも、強度、耐熱性、耐候性等に優れるシクロペンタジエン(及びその誘導体)、ジシクロペンタジエン(及びその誘導体)又はノルボルナジエン(及びその誘導体)等の環状ジエンのポリマーが特に好ましい。
【0041】
なお、外層11の形成材料としては、上述の合成樹脂を1種又は2種以上混合して使用することができる。また、外層11の形成材料中には、加工性、耐熱性、耐候性、機械的性質、寸法安定性等を改良、改質する目的で、種々の添加剤等を混合することができる。この添加剤としては、例えば滑剤、架橋剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、充填剤、強化繊維、補強剤、帯電防止剤、難燃剤、耐炎剤、発泡剤、防カビ剤、顔料等が挙げられる。上述の外層11の成形方法としては、特に限定されず、例えば押出し法、キャスト成形法、Tダイ法、切削法、インフレーション法等の公知の方法が採用される。
【0042】
外層11中に紫外線安定剤又は分子鎖に紫外線安定基が結合したポリマーを含有することも可能である。この紫外線安定剤又は紫外線安定基により、紫外線で発生するラジカル、活性酸素等が不活性化され、反射保護シート10の紫外線安定性、耐候性等を向上させることができる。この紫外線安定剤又は紫外線安定基としては、紫外線に対する安定性が高いヒンダードアミン系紫外線安定剤又はヒンダードアミン系紫外線安定基が好適に用いられる。
【0043】
なお、外層11の形成材料としては、上述の合成樹脂を1種又は2種以上混合したものを使用することができる。また、外層11の形成材料中に、加工性、耐熱性、耐候性、機械的性質、寸法安定性等を改良、改質する目的で、種々の添加剤等を混合することも可能である。この添加剤としては、例えば滑剤、架橋剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、充填剤、強化繊維、補強剤、帯電防止剤、難燃剤、耐炎剤、発泡剤、防カビ剤、顔料等が挙げられる。上述の外層11の成形方法は、特に限定されず、例えば押出し法、キャスト成形法、Tダイ法、切削法、インフレーション法等の公知の方法が採用される。
【0044】
中間層12は、該中間層12が接する2つの層、即ち、外層11及びバリア層13との密着性が良好であることが望ましく、耐久性、クッション性などの諸特性を補うために用いられ、材料としては例えば、ポリウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリイミド系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリメチルペンテン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、アクリロニトリル−(ポリ)スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)等のポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアリールフタレート系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、リエチレンナフタレート系樹脂、ポリエーテルイミド系樹脂、アセタール系樹脂、セルロース系樹脂等が挙げられ、これらのポリマーを1種又は2種以上混合したものが用いられる。
【0045】
この中間層12を設けることで、その他の層のみでは不足する性能を補うことができる。例えば、耐久性、クッション性などを高めるためにはシリコーン系樹脂を用いる。特に屋外使用の半導体発電装置の場合、日照時の半導体発電装置100の熱上昇は著しく、樹脂材料から作製した反射保護シート10に反りが発生し、半導体発電装置100の故障を招く恐れもある。また、高い発電効率を維持するために重要な高バリア性を付与することを目的として金属層を中間層12として用いることもある。
この中間層12の厚みとしては、密着力及びコスト面より、3〜10μmであることが望ましい。
【0046】
バリア層13は、水蒸気バリア性に優れた材料であることが望ましい。具体的には、水蒸気透過度が0〜0.5g/mの範囲であることが望ましく、無機酸化物である酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化スズ、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化タングステン或いはそれらの混合物等から成形されている。
特に酸化珪素は、酸素、水蒸気バリア性に優れているだけではなく、酸に対する耐性も高いため、EVAの架橋によって発生する酢酸によって侵食されないため望ましい。
【0047】
反射構造層16は、光学構造層15の背面側に形成された凹凸形状の表面に反射膜14が該凹凸形状に沿って積層されることで構成されている。
【0048】
光学構造層15を形成する材料は、半導体発電装置100組み立ての際にかけられる熱圧を考慮して、熱硬化性樹脂、あるいはビカット軟化温度95℃以上の熱可塑性樹脂が用いられる。
なお、ビカット軟化温度は、JIS−K7206におけるB50法によって測定したものである。
また、本実施形態のように、光学構造層15が反射膜14よりも透過性保護層17側に位置している場合には、光学構造層15の透過性が高いことが望まれる。光学構造層15に用いられる材料としては、ポリマー組成物等が挙げられる。また、光学構造層15にポリマー組成物を用いる場合、ポリマー組成物の他に、例えば硬化剤、可塑剤、分散剤、各種レベリング剤、紫外線吸収剤、抗酸化剤、粘性改質剤、潤滑剤、光安定化剤等が適宜配合されてもよい。
【0049】
上述のポリマー組成物としては、熱硬化性樹脂、あるいはビカット軟化温度95℃以上の熱可塑性樹脂であれば、特に限定されるものではなく、例えばエポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、ユリア系樹脂、ポリウレタン系樹脂、メラミン系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、アルキド系樹脂、ポリイミド系樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリメチルペンテン系樹脂、感情ポリオレフィン系樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアリールフタレート系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂、ポリエチレンナフタレート系樹脂、ポリエーテルイミド系樹脂、アセタール系樹脂等が挙げられ、これらのポリマーを1種又は2種以上混合して使用することができる。
【0050】
上述のポリウレタン系樹脂の原料であるポリオールとしては、例えば水酸基含有不飽和単量体を含む単量体成分を重合して得られるポリオールや、水酸基過剰の条件で得られるポリエステルポリオールなどが挙げられ、これらを単体で又は2種以上混合して使用することができる。
【0051】
水酸基含有不飽和単量体としては、(a)例えばアクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アリルアルコール、ホモアリルアルコール、ケイヒアルコール、クロトニルアルコール等の水酸基含有不飽和単量体、(b)例えばエチレングリコール、エチレンオキサイド、プロピレングリコール、プロピレンオキサイド、ブチレングリコール、ブチレンオキサイド、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、フェニルグリシジルエーテル、グリシジルデカノエート、プラクセルFM−1(ダイセル化学工業株式会社製)等の2価アルコール又はエポキシ化合物と、例えばアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸との反応で得られる水酸基含有不飽和単量体などが挙げられる。これらの水酸基含有不飽和単量体から選択される1種又は2種以上を重合してポリオールを製造することができる。
【0052】
また上述のポリオールは、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸tert−ブチル、アクリル酸エチルヘキシル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸tert−ブチル、メタクリル酸エチルヘキシル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸シクロヘキシル、スチレン、ビニルトルエン、1−メチルスチレン、アクリル酸、メタクリル酸、アクリロニトリル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、酢酸アリル、アジピン酸ジアリル、イタコン酸ジアリル、マレイン酸ジエチル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、エチレン、プロピレン、イソプレン等から選択される1種又は2種以上のエチレン性不飽和単量体と、上述の(a)及び(b)から選択される水酸基含有不飽和単量体とを重合することで製造することもできる。
【0053】
水酸基含有不飽和単量体を含む単量体成分を重合して得られるポリオールの数平均分子量は1000以上500000以下であり、好ましくは5000以上100000以下である。また、その水酸基価は5以上300以下、好ましくは10以上200以下、さらに好ましくは20以上150以下である。
【0054】
水酸基過剰の条件で得られるポリエステルポリオールは、(c)例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサメチレングリコール、デカメチレングリコール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール、グリセリン、ペンタエリスリトール、シクロヘキサンジオール、水添ビスフェノルA、ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、ハイドロキノンビス(ヒドロキシエチルエーテル)、トリス(ヒドロキシエチル)イソシヌレート、キシリレングリコール等の多価アルコールと、(d)例えばマレイン酸、フマル酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸、トリメット酸、テレフタル酸、フタル酸、イソフタル酸等の多塩基酸とを、プロパンジオール、ヘキサンジオール、ポリエチレングリコール、トリメチロールプロパン等の多価アルコール中の水酸基数が前記多塩基酸のカルボキシル基数よりも多い条件で反応させて製造することができる。
【0055】
上述の水酸基過剰の条件で得られるポリエステルポリオールの数平均分子量は500以上300000以下であり、好ましくは2000以上100000以下である。また、その水酸基価は5以上300以下、好ましくは10以上200以下、さらに好ましくは20以上150以下である。
【0056】
当該ポリマー組成物のポリマー材料として用いられるポリオールとしては、上述のポリエステルポリオール、及び、上述の水酸基含有不飽和単量体を含む単量体成分を重合して得られ、かつ、(メタ)アクリル単位等を有するアクリルポリオールが好ましい。かかるポリエステルポリオール又はアクリルポリオールをポリマー材料とすれることにより耐候性を向上させることができ、光学構造層15の黄変等を抑制することができる。なお、このポリエステルポリオールとアクリルポリオールのいずれか一方を使用してもよく、両方を使用してもよい。
【0057】
なお、上述のポリエステルポリオール及びアクリルポリオール中の水酸基の個数は、1分子当たり2個以上であれば特に限定されないが、固形分中の水酸基価が10以下であると架橋点数が減少し、耐溶剤性、耐水性、耐熱性、表面硬度等の被膜物性が低下する傾向がある。
【0058】
また、光学構造層15を形成する材料にフィラーを含有させることによって散乱性を付与し、外光の入射角による再集光効率の影響を減少させることが可能となる。また、フィラーの含有によって耐熱性が向上させることが可能となる。
光学構造層15を形成する材料中にフィラーを混合する場合、光学構造層15の耐熱性を向上させることができ、かつ必要な散乱性に応じて適した屈折率の材料を選定することが望ましい。このフィラーを構成する無機物としては、特に限定されるものではなく、無機酸化物が好ましい。この無機酸化物は、酸化ケイ素等や、硫化亜鉛等の金属化合物を用いることもできるが特に、酸化チタン、酸化アルミニウム等の金属酸化物が望ましい。また酸化ケイ素の中空粒子を用いることもできる。このうち、酸化チタンは、屈折率が高く、分散性も得られやすいため好ましい。また、フィラーの形状は、球状、針状、板状、鱗片状、破砕状等の任意の粒子形状でよく、特に限定されない。
【0059】
フィラーの平均粒子径の下限としては、0.1μmが好ましく、上限としては30μmが好ましい。平均粒子径が0.1μmより小さいと光を十分に反射しない。また、平均粒子径が30μmより大きいと成型性が悪い。
【0060】
フィラーのポリマー組成物100部に対する配合量の下限としては固形分換算で30部が好ましい。一方、フィラーの上述の配合量の上限としては100部が好ましい。これは、フィラーの配合量が30部より少ないと光を十分に反射することができない為である。逆に、配合量が上述の範囲を越えると、成型性が悪い。
【0061】
上述のフィラーとしては、その表面に有機ポリマーが固定されたものを用いるとよい。このように有機ポリマー固定のフィラーを用いることで、ポリマー組成物での分散性やポリマー組成物との親和性の向上が図られる。この有機ポリマーについては、その分子量、形状、組成、官能基の有無等に関して特に限定はなく、任意の有機ポリマーを使用することができる。また有機ポリマーの形状については、直鎖状、分枝状、架橋構造等の任意の形状のものを使用することができる。
【0062】
上述の有機ポリマーを構成する具体的な樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル樹脂、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルおよびこれらの共重合体やアミノ基、エポキシ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基等の官能基で一部変性した樹脂等が挙げられる。中でも、(メタ)アクリル系樹脂、(メタ)アクリル−スチレン系樹脂、(メタ)アクリル−ポリエステル系樹脂等の(メタ)アクリル単位を含む有機ポリマーを必須成分とするものが被膜形成能を有し好適である。他方、上述のポリマー組成物と相溶性を有する樹脂が好ましく、従って光学構造層15を形成する材料と同じ組成であるものが最も好ましい。
【0063】
上述の光学構造層15を形成する材料としては、シクロアルキル基を有するポリオールを用いることが特に好ましい。ポリマー組成物としてのポリオール中にシクロアルキル基を導入することで、ポリマー組成物の撥水性、耐水性等の疎水性が高くなり、高温高湿条件下での耐撓み性、寸法安定性等が改善することができる。また、光学構造層15の耐候性、硬度、肉持感、耐溶剤性等の塗膜基本性能が向上する。さらに、表面に有機ポリマーが固定されたフィラーとの親和性及びフィラーの分散性がさらに良好になる。
【0064】
また、ポリマー組成物中には硬化剤としてイソシアネートを含有するとよい。このようにポリマー組成物中にイソシアネート硬化剤を含有することで、より一層強固な架橋構造となり、光学構造層15の被膜物性がさらに向上する。このイソシアネートとしては上述の多官能イソシアネート化合物と同様の物質が用いられる。中でも、被膜の黄変色を防止する脂肪族系イソシアネートが好ましい。
【0065】
なお、フィラーは、内部に有機ポリマーを包含していてもよい。このことにより、フィラーのコアである無機物に適度な軟度および靱性を付与することができる。
【0066】
上述の有機ポリマーにはアルコキシ基を含有するものを用いるとよく、その含有量は特に限定されないが、フィラー1g当たり0.01mmol以上50mmol以下が好ましい。アルコキシ基により、ポリマー組成物との親和性や、ポリマー組成物中での分散性を向上させることができる。
【0067】
上述のアルコキシ基は、微粒子骨格を形成する金属元素に結合したRO基を示す。このRは置換されていてもよいアルキル基であり、微粒子中のRO基は同一であっても異なっていてもよい。Rの具体例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル等が挙げられる。フィラーを構成する金属と同一の金属アルコキシ基を用いるのが好ましく、フィラーがコロイダルシリカである場合には、シリコンを金属とするアルコキシ基を用いるのが好ましい。
【0068】
有機ポリマーを固定したフィラーの有機ポリマーの含有率については、特に制限されないが、フィラーを基準にして0.5質量%以上50質量%以下が好ましい。
【0069】
この光学構造層15の背面側に一体に形成された凹凸形状は、入射した光を特定の方向へと反射することで調光することを目的として形成されており、好適に反射することが可能な形状として、V字溝、多角錘形状等のいわゆるファセット形状や円錐形状、あるいは、上記ファセット形状及び円錐形状の頂部が丸みを帯びた形状であってもよい。
なお、このような光学構造層15の凹凸形状は、該光学構造層15の背面全域にわたって形成されていてもよいし、半導体発電装置本体1におけるセル4の配置位置に対応するようにして、正面視において該隣り合うセル4同士の間の隙間を満たす配置位置にて形成されていてもよい。
【0070】
図3(a)〜(c)に光学構造層15の凹凸形状の例を示す。この光学構造層15の凹凸形状は半導体発電装置100の種類及び設置場所に応じて決定されるが、図3(a)に示すピラミッド形状、図5(b)に示すV溝形状、図5(c)に示す円錐形状にとすることが好ましい。
また、主に半導体発電装置100の光源となる太陽光は半導体発電装置100から無限遠に位置する光源に近似されるので、太陽光は、半導体発電装置100が設置されるような屋上、屋根などでは平行光として半導体発電装置100へ入射することになる。なお、全てが平行光ということではなく、周辺物に当たり反射する散乱光も存在するが、大部分が平行光として入射する。このような平行光の調光には、平面をもつプリズム形状が有効である。
【0071】
図4(a)(b)は、光学構造層15の凹凸形状の一例の頂角を示す側面図である。凹凸形状の頂角θは、該凹凸形状を形成する2つの対向する側面における直線状に形成された領域に対して平行な線L1及び線L2とがなす角度を示している。図4(b)に示すように頂部が丸みを帯びた形状でも同様である。
即ち、上記凹凸形状は複数の凸部と凹部とが交互に連設されることで構成されており、上記頂角θは、111°から137°の範囲、好ましくは120°から135°の範囲に設定されている。
【0072】
光学構造層15の凹凸形状の形成方法としては、プラスチック原料をスクリュまたはプランジャで加熱シリンダ内で送り込み、加熱流動化させ、先端のダイを通過させて形を与え、これを水または空気で冷却固化させて、長尺品を作る押出成形法がある。
【0073】
また、凹凸形状の他の形成方法して、例えば樹脂等に電子ビームによってレリーフパターンを描画、或いはバイト切削等によりレリーフパターンを形成し、このように形成したレリーフパターンを、電鋳によって金属版に起こすなどして原版を作製し、その原版からエンボス成形法でパターンを転写することで、大量にレリーフパターンを複製できる。また、エンボス成形法で転写する代わりに、紫外線硬化樹脂を用いる成形法によってパターンを転写してもよい。
【0074】
反射膜14は、上記のような光学構造層15の凹凸形状の表面に、その形状に沿うようにして配設されており、これによって反射構造層16は、凹凸形状の形状に応じた波型状をなしている。
【0075】
この反射膜14は入射してきた光を反射する機能を有しており、該反射膜14の材料としては、反射性を有しかつ蒸着が可能であれば特に限定されるものではなく、例えばアルミニウム(Al)、金(Au)、銀(Ag)、プラチナ(Pt)、ニッケル(Ni)、スズ(Sn)、クロム(Cr)、ジルコニウム(Zr)等の金属や、これらの合金等が挙げられる。また、酸化亜鉛、硫化亜鉛等の高屈折率材料を含んでも良い。中でも、アルミニウムは紫外、可視、近赤外領域において、反射率が高く、表面に酸化皮膜を生成することにより、内部の侵食を防ぐことが可能となる。また、高い水蒸気バリア性を有するという利点がある。また、銀は可視、近赤外領域においてアルミニウムと比較しても反射率が高いという利点がある。また、金は可視領域の短波長側に吸収があるものの、600nm以上の波長においてはアルミニウムよりも反射率が高い。さらに、これら3種の金属は非常に侵食されにくいという利点があるため、反射膜14に用いる材料として望ましい。
【0076】
この反射膜14は、光学構造層15の凹凸形状に沿って上記金属を蒸着することで形成される。蒸着手段としては、上記凹凸形状に収縮、黄変等の劣化を招来することなく金属が蒸着できれば特に限定されるものではなく、(a)真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、イオンクラスタービーム法等の物理気相成長法(Physical Vapor Deposition法;PVD法)、(b)プラズマ化学気相成長法、熱化学気相成長法、光化学気相成長法等の化学気相成長法(Chemical Vapor Deposition法;CVD法)が採用される。これらの蒸着法の中でも、生産性が高く良質な反射膜14が形成できる真空蒸着法やイオンプレーティング法が好ましい。
【0077】
なお、反射膜14は、単層構造でもよく、2層以上の多層構造でもよい。このように反射膜14を多層構造とすることで、蒸着の際に懸かる熱負担の軽減により凹凸形状の劣化が低減され、さらに凹凸形状と反射膜14との密着性等を改善することができる。このとき、金属膜の上に酸化金属層を設けても良い。また、上述の物理気相成長法及び化学気相成長法における蒸着条件は、反射構造層16の樹脂種類、反射膜14の厚み等に応じて適宜設計される。
【0078】
反射膜14の厚みの下限としては、10nmが好ましく、20nmが特に好ましい。一方、反射膜14の厚みの上限としては、200nmが好ましく、100nmが特に好ましい。反射膜14の厚みが10nm下限より小さいと、反射膜14に入射する光を十分に反射することができない。また、20nm以上の厚みであっても、反射膜14で反射される光は増えないため、20nmであれば十分な厚みといえる。一方、反射膜14の厚みが200nmの上限を超えると、反射膜14に目視でも確認できるクラックが発生し、100nm以下であれば、目視で確認できないようなクラックも発生しない。
【0079】
また、反射膜14を形成する下地、即ち、該反射膜14が接する層の厚みとしては、最も薄い箇所の厚さが100μm以上であることが望ましい。100μm未満の場合、基材が撓みやすく、反射膜にクラックが入りやすい。本実施形態では透過性保護層17と光学構造層15とが反射膜14を形成する下地となるため、両者の厚みの合計が100μm以上である事が望ましい。
【0080】
また、反射膜14の外面には、トップコート処理が施されていることが好ましい。このように反射膜14の外面にトップコート処理を施すことで、該反射膜14が封止及び保護され、経年劣化を抑えることが可能となる。
【0081】
上述のトップコート処理に用いるトップコート剤としては、例えばポリエステル系トップコート剤、ポリアミド系トップコート剤、ポリウレタン系トップコート剤、エポキシ系トップコート剤、フェノール系トップコート剤、(メタ)アクリル系トップコート剤、ポリ酢酸ビニル系トップコート剤、ポリエチレンアルイハポリプロピレン等のポリオレフィン系トップコート剤、セルロース系トップコート剤などが挙げられる。かかるトップコート剤の中でも、反射膜14との接着強度が高く、反射膜14の表面保護、欠陥の封止等に寄与するポリエステル系トップコート剤が特に好ましい。
【0082】
上述のトップコート剤のコーティング量(固形分換算)は、3g/m以上、7g/m以下が好ましい。トップコート剤のコーティング量が3g/mより小さいと、反射膜14を封止及び保護する効果が小さくなるおそれがある。一方、当該トップコート剤のコーティング量が上7g/mを超えても、上述の反射膜14の封止及び保護効果があまり増大せず、かえって反射保護シート10の厚みが増大してしまう。
【0083】
なお、上述のトップコート剤中には、密接着性向上のためのシランカップリング剤、耐候性等を向上させるための紫外線吸収剤、耐熱性等を向上させるための無機フィラー等の各種添加剤を適宜混合することができる。かかる添加剤の混合量としては、添加剤の効果発現とトップコート剤の機能阻害とのバランスから0.1重量%以上10重量%以下が好ましい。上述の添加剤が、0.1重量%未満では、密接着性、耐候性、耐熱性が十分に得られず、10重量%より多いと、トップコート剤の機能を阻害してしまう。
【0084】
また、反射膜14と光学構造層15との密接着性等を向上させるため、反射膜14の蒸着対象面である光学構造層15の凹凸形状表面に表面処理を施すとよい。このような表面処理としては、例えば(a)コロナ放電処理、オゾン処理、酸素ガス若しくは窒素ガス等を用いた低温プラズマ処理、グロー放電処理、化学薬品等を用いた酸化処理、及び(b)プライマーコート処理、アンダーコート処理、アンカーコート処理、蒸着アンカーコート処理などが挙げられる。これらの表面処理の中でも、凹凸形状との接着強度が向上し、緻密かつ均一な反射膜14の形成に寄与するコロナ放電処理及びアンカーコート処理が好ましい。
【0085】
上述のアンカーコート処理に用いるアンカーコート剤としては、例えばポリエステル系アンカーコート剤、ポリアミド系アンカーコート剤、ポリウレタン系アンカーコート剤、エポキシ系アンカーコート剤、フェノール系アンカーコート剤、(メタ)アクリル系アンカーコート剤、ポリ酢酸ビニル系アンカーコート剤、ポリエチレンアルイハポリプロピレン等のポリオレフィン系アンカーコート剤、セルロース系アンカーコート剤などが挙げられる。これらのアンカーコート剤の中でも、反射膜14の接着強度をより向上することができるポリエステル系アンカーコート剤が特に好ましい。
【0086】
上述のアンカーコート剤のコーティング量(固形分換算)は、1g/m以上、3g/m以下が好ましい。アンカーコート剤のコーティング量が1g/mより少ないと、反射膜14の密着性向上効果が小さくなる。一方、当該アンカーコート剤のコーティング量が3g/mより多いと、反射保護シート10の強度、耐久性等が低下するおそれがある。
【0087】
なお、上述のアンカーコート剤中には、密接着性向上のためのシランカップリング剤、ブロッキングを防止するためのブロッキング防止剤、耐候性等を向上させるための紫外線吸収剤等の各種添加剤を適宜混合することができる。
【0088】
透過性保護層17は耐熱、耐湿性、電気的特性(特に全面耐電圧)機械的特性が優れていることが望ましい。具体的にはフッ素樹脂フィルム、フッ素樹脂塗膜、電気絶縁用PETなどが挙げられる。また、透過性保護層17の厚みに関しては、電気絶縁性とコストの観点から、180μmから350μmであることが望ましい。
【0089】
以上のような部材からなる反射保護シート10を作製する方法の例としては、まず、透過性保護層17上に、金属版を用いたUV成形法や押出成形法により凹凸形状を有する光学構造層15を作製し、その凹凸形状に反射膜14を蒸着等により形成する。そして、反射膜14上にバリア層13を蒸着等により形成し、バリア層13と外層11とを、中間層12を用いて接着する。
このような反射保護シート10においては、光学構造層15における凹凸形状上に反射膜14が形成された部分が、光反射凹凸部として半導体発電装置本体1から入射した光を該半導体発電装置本体1に反射することになる。
【0090】
このようにして、本実施の形態の反射保護シート10は、半導体発電装置本体1を透過して該半導体発電装置本体1の背面から出射される光を透過させる透過性保護層17と、該透過性保護層17の背面側に配されて、透過性保護層17を透過した光を透過性保護層17に向けて反射する反射構造層16と、該反射構造層16の背面側に配されて、反射構造層16を保護する外層11とを備えた構成をなしている。
【0091】
以上のような構成の反射保護シート10を有する半導体発電装置100においては半導体発電装置本体1の充填層3及びセル4を透過した光は、該半導体発電装置本体1の裏面に配された反射保護シート10へ入射する。そして、反射保護シート10に入射した光は、透過性保護層17を透過して、反射構造層16における凹凸形状と反射膜14とからなる光反射凹凸部によって半導体発電装置100側に反射される。そして、半導体発電装置本体1内に再帰させられた光はセル4に受光されることで発電に寄与し、光の利用効率の向上が図られる。
【0092】
本実施形態の上記反射保護シート10においては、光学構造層15の凹凸形状に反射膜14を積層して反射構造層16を構成することで、前面側に向かって高効率で光を反射することができる。この反射光を半導体発電装置本体1の背面側から入射させることで、発電効率を向上させることが可能となる。
また、上記光学構造層15を形成する材料を、熱硬化性樹脂あるいはビカット軟化温度95℃以上の熱可塑性樹脂としているため、当該反射保護シート10を搭載した半導体発電装置100を組み立てる際に光学構造層の変形が少なく、一定の品質を維持することができる。
【0093】
また、反射膜14と外層11との間に水蒸気透過度が0〜0.5g/mのバリア層13が設けられているため、反射保護シート10が背面側に配設される半導体発電装置本体1内部への水蒸気の透過を防止して、半導体発電装置本体1に用いられている電極の腐食や、封止樹脂の劣化を防ぐことが可能となる。
なお、水蒸気透過度が0.5g/mを超えてしまうと、電極の腐食や、封止樹脂の劣化が発生する場合がある為、望ましくない。この点、水蒸気透過密度を上記範囲に設定することで、電極の腐食及び封止樹脂の劣化を確実に回避することができる。
さらに、当該バリア層13が反射構造層16と外層11の間に配置されることによって、反射構造層16に入射光が到達するまでの光の吸収を極力抑えることが可能となる。
【0094】
さらにバリア層13が、無機酸化物を含んでいるため、酸素バリア性及び水蒸気バリア性を向上させることができ、さらに、耐熱性を向上させることが可能となる。
【0095】
また、光学構造層15の凹凸形状が、ファセット形状、円錐形状といったプリズム形状とした場合には、反射率を向上させることができる。これに対し、凹凸形状を高アスペクト比の非球面レンズとした場合には、散乱性はあるが光の吸収が大きく、再帰反射率の低下を招く可能性があるため好ましくない。
また、凹凸形状をファセット形状の頂部が丸みを帯びた形状とした場合、又は、円錐形状の頂部が丸みを帯びた形状とした場合には、良好な反射率を維持しながら、製造過程において凹凸形状に傷が生じてしまうのを防止することができる。
【0096】
また、反射保護シート10においては、凹凸形状の頂部の角度θが111°から137°の範囲に設定されている場合には、半導体発電装置100に用いられる封止樹脂およびガラスの屈折率を約1.5とした場合に、ガラスと空気との界面において全反射してしまうこと及び該反射光が光学構造層15へ入射してしまうことを防ぐことが可能となる。一方、上記頂角θが137°を超える場合、ガラスと空気との界面において、全反射が発生し難くなるため再集光効率が落ちる可能性が高くなり好ましくない。また、上記頂角θが111°を下回る場合、凹凸形状で反射した光の一部が光学構造層15内で衝突する可能性が高くなり、再集光効率が落ちる可能性が高くなり好ましくない。
【0097】
さらに、凹凸形状の頂部の角度θが120°から135°の範囲に設定されている場合には、安定してガラスと空気との界面において全反射する範囲の角度に形成することができるとともに、凹凸形状で反射した光の一部が光学構造層15内で衝突することがないため、反射率が落ちることがなく、再集光効率を高く維持することができる。
【0098】
そして、本実施形態の半導体発電装置100によれば、上記反射保護シート10を備えているため、効率よく半導体発電装置本体1のセル4に光を入射することができ、さらに半導体発電装置100を組み立てる際に光学構造層の変形が少なく、一定の品質を維持することが可能となる。
【0099】
次に、第2の実施形態の反射保護シート20について図5を用いて説明する。図5は第2実施形態の反射保護シート20の概略構成を示す縦断面図である。なお、図5においては図2と同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0100】
第1の実施形態の反射保護シート10ではバリア層13が中間層12と反射膜14との間のみに配置されているのに対し、この第5の実施形態の反射保護シート20は、該バリア層13が反射膜14と光学構造層15の凹凸形状との間にも配置されている。
即ち、第2実施形態の反射保護シート20は、反射膜14がバリア層13,13によって挟まれた構造をなし、該2つのバリア層13のうち反射膜14と光学構造層15との間のバリア層13が反射構造層16の一部となっている。換言すれば、第2実施形態においては、反射構造層26が光学構造層15と、バリア層13と、反射膜14とから構成されているのである。
【0101】
このように、反射膜14が一対のバリア層13で挟まれた構成にすることにより、反射膜14の水蒸気及び酸素との接触を極力抑えることができ、反射膜の酸化を確実に防止することが可能となる。
【0102】
次に、第3の実施形態の反射保護シート30について図6を用いて説明する。図6は、第3実施形態の反射保護シート30の概略構成を示す縦断面図である。なお、図6においては図2と同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0103】
第1の実施形態の反射保護シート10においては反射構造層16の光学構造層15の凹凸形状が背面側を向き、この背面側を向いた凹凸形状に反射膜14が積層されていたのに対し、第3の実施形態の反射保護シート30は、光学構造層15の凹凸形状が前面側を向いて、該前面側を向く凹凸形状に反射膜14が積層された反射構造層16を有している。そして、反射膜14上に、バリア層13及び透過性保護層17が積層されている。
【0104】
この第3実施形態の反射保護シート30においては、反射膜14が反射構造層16における前面側に配置されているため、光学構造層15に用いる材料に透過性を要することはない。これにより、透過性以外の他の要求特性を満たす材料を選定することが可能となる。
また、バリア層13が、透過性保護層17と反射膜14との間に配置されることにより、充填層の架橋によって発生する酢酸による反射膜の劣化を抑えることができる。
【0105】
このように反射膜14上にバリア層13を介して積層された透過性保護層17における前面は、概ね平滑になっていることが好ましく、かつ、反射保護シート30を断面から見た場合における最上面と最下面(本実施形態においては、透過性保護層17の前面と、外層11の背面)が、概ね平行になっていることが望ましい。
【0106】
透過性保護層17の前面が平滑となっていない場合、輸送、組み立て時において摩擦等により傷が付き易くなり、傷による透過率の低下を起因とする再集光効率が低下する可能性がある。また、組み立て時に気泡を巻き込む可能性が高くなり、巻き込まれた気泡を起点とした剥離の発生や、気泡と気泡が接する材料との屈折率差による、屈折、散乱、反射等の現象を起因として再集光効率が低下する可能性がある。また、輸送時に埃塵等の微細なゴミを巻き込み、剥離等が発生する可能性が高くなる
【0107】
また、反射保護シート30を断面から見た場合における最上面と最下面が、概ね平行になっていない場合、組み立て時に気泡を巻き込む可能性が高くなり、巻き込まれた気泡を起点とした剥離の発生や、気泡と気泡が接する材料との屈折率差による、屈折、散乱、反射等の現象を起因として再集光効率が低下する可能性がある。また、反射保護シート30が積層された状態で保管する場合、局所的に圧力の負荷高くなり、反射保護シート30の平滑性を保てなくなる可能性がある。
【0108】
上記の平滑性に関する具体的な数値としては、表面の粗さRaが20μm以下であることが望ましく、更に望ましくは5μm以下である事が望ましい。Raが5μmを超えると埃塵等が付着し易くなり、20μmを超えると摩擦等による傷が発生し易くなる。
【0109】
以上、本発明での実施形態について詳細に説明したが、本発明の技術的思想を逸脱しない限り、これらに限定されることはなく多少の設計変更等も可能である。
【実施例】
【0110】
(発電量の測定)
次に実施例について説明する。実施例の反射保護シート10及び比較例1〜3のシートを作製し、これらを半導体発電装置本体1の背面に配設して、発電量の測定を行なった。
【0111】
(実施例1の反射保護シート)
図2に示す第1の実施形態の反射保護シート20を作製した。この反射保護シートにおいて光学構造層15の凹凸形状を、頂角120°のV字プリズムとし、凸部の平均ピッチを200μmとし、凹凸形状の凹凸高さに反射膜14の厚みを加えた長さ、即ち、凹凸形状と反射膜14とからなる光反射凹凸部の高さを58μmとした。
透過性保護層17はPETフィルムから形成し、反射構造層16における光学構造層15の成形基材を同じくPETフィルムと、紫外線硬化型のアクリル系樹脂を用いて凹凸形状を作製した。また、反射膜14としてアルミ蒸着を施した。また、外層11にはPETフィルムを用いた。
【0112】
(比較例1のシート)
反射が全くない場合を想定し、黒紙を比較例1のシートとした。
【0113】
(比較例2のシート)
反射膜がない散乱パターンを想定し、白PETを比較例2のシートとした。
【0114】
(比較例3のシート)
実施例1の反射保護シート20から反射膜14を除去し、光学構造層15内に酸化チタンフィラーを40%混合したシートを作製し、比較例3とした。
【0115】
(測定方法)
図7に測定方法の模式図を示す。正午の太陽光を想定し、入射角度は約0度の平行光を測定光源として光源101を設置した。また、再集光効率の測定にはパワーメータ102を用いた。半導体発電装置100の構成を想定し、実施例の反射保護シート20あるいは比較例1〜3のシート、パワーメータ102、青板ガラス103を順に積層した。また、各層の間には、屈折率を一致させる為、グリセリン104を用いて液浸した。
【0116】
(測定結果)
測定結果を表1に示す。なお、上昇率は比較例1を基準とした発電量の上昇率を示している。
【表1】

【0117】
表1から、実施例1、比較例2及び比較例3とも黒紙である比較例1よりも発電量が向上していることが確認できる。
しかし、反射膜を除去して酸化チタンフィラーを添加した比較例3は白PETである比較例2とほぼ同じ値を示しているのに対し、第1実施形態の反射保護シート10の実施例1は、比較例2及び3に対して非常に高い発電量及び上昇率を示した。したがって、実施形態の反射保護シート10のように凹凸形状を形成して反射膜を設けることが半導体発電装置100の発電量を向上させる上で有効であることが確認された。
【0118】
(光反射凹凸部の形状による発電量の変化評価)
(実施例1の反射保護シート)
図2に示す実施形態の反射保護シート20を作製した。この反射保護シートにおいて光学構造層15の凹凸形状を、頂角120°のV字プリズムとし、凸部の平均ピッチを200μmとし、凹凸形状の凹凸高さに反射膜14の厚みを加えた長さ、即ち、凹凸形状と反射膜14とからなる光反射凹凸部の高さを58μmとした。
透過性保護層17は、PETフィルムから形成し、反射構造層16における光学構造層15の成形基材を透過性保護層17に用いたPETフィルムとし、紫外線硬化型のアクリル系樹脂を用いて凹凸形状を作製した。また、反射膜15としてアルミ蒸着を施した。さらに、外層11としてはPETフィルムを用いた。
【0119】
(比較例1のシート)
反射が全くない場合を想定し、黒紙を比較例1のシートとした。
【0120】
(比較例2のシート)
反射膜がない散乱パターンを想定し、白PETを比較例2のシートとした。
【0121】
(比較例3のシート)
実施例1の反射保護シートにおける光学構造層15の凹凸形状の頂点が潰れた場合を想定して、光学構造層15の凹凸形状の先端部が25%平坦となった形状のシートを作製し、比較例3とした。
【0122】
(比較例4のシート)
実施例1の反射保護シートにおける光学構造層15の凹凸形状の頂点が潰れた場合を想定して、光学構造層15の凹凸形状の先端部が50%平坦となった形状のシートを作製し、比較例4とした。
【0123】
(測定方法)
図7に測定方法の模式図を示す。正午の太陽光を想定し、入射角度は約0度の平行光を測定光源として光源101を設置した。また、再集光効率の測定にはパワーメータ102を用いた。半導体発電装置100の構成を想定し、実施例の反射保護シート20あるいは比較例1〜3のシート、パワーメータ102、青板ガラス103を順に積層した。また、各層の間には、屈折率を一致させる為、グリセリン104を用いて液浸した。
【0124】
(測定結果)
測定結果を表2に示す。なお、上昇率は比較例1を基準とした発電量の上昇率を示している。
【表2】

【0125】
表2から、比較例3及び4とも、比較例2までの劣化はないものの、実施例1よりも発電量が落ちていることがわかる。
したがって、光反射凹凸部の形状が変形することによって発電効率が劣化することが確認された。
【0126】
(形状変化評価)
第3実施形態の反射保護シート30に関して、頂角120°のV溝形状の凹凸形状を有する光学構造層15を作製した。
当該光学構造層15を形成する材料としては、(a)熱硬化性樹脂であるポリウレタン樹脂及びエポキシ樹脂、(b)熱可塑性樹脂であるビカット軟化温度79℃のポリスチレン、ビカット軟化温度85℃の塩化ビニル、ビカット軟化温度88℃のポリスチレン、ビカット軟化温度98℃のアクリル、ビカット軟化温度99℃のポリスチレン、ビカット軟化温度115℃のアクリル、ビカット軟化温度131℃のポリプロピレン、ビカット軟化温度148℃のポリカーボネートを用いた。
そして、これら各材料から形成された光学構造層15を用いて第3実施形態の反射保護シート30を作製し、150℃−30min−1atmの環境下に設置した。その後、透過性保護層17側から顕微鏡を用いて反射膜14の形状の変化の有無を評価した。
【0127】
表3に評価結果を示す。
【表3】

【0128】
表3から、ビカット軟化温度79℃のポリスチレン、ビカット軟化温度85℃の塩化ビニル、ビカット軟化温度88℃のポリスチレンに関してのみ、反射膜14の形状が潰れた形状が観察され、その他の樹脂に関しては、変形がないことが確認された。したがって、凹凸形状を有する光学構造層15と反射膜14とを積層する事によって形成される反射構造層16を有する反射保護シート30に関しては、光学構造層15を形成する材料が、熱硬化性樹脂あるいはビカット軟化温度が88℃を超える熱可塑性樹脂であることが必要であることが確認された。また、特にビカット軟化温度が98℃以上であれば、確実に変形を防止することができ、ビカット軟化温度が95℃以上場合ならば変形を防止可能であることが推認される。
【符号の説明】
【0129】
1 半導体発電装置本体
2 前面板
3 充填層
4 セル
10 反射保護シート
11 外層
12 中間層
13 バリア層
14 反射膜
15 光学構造層
16 反射構造層
17 透過性保護層
20 反射保護シート
26 反射構造層
30 反射保護シート
36 反射構造層
100 半導体発電装置
101 光源
102 パワーメータ
103 青板ガラス
104 グリセリン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面から光を受光して発電する半導体発電装置本体の背面側に配される反射保護シートであって、
少なくとも、前記半導体発電装置を透過して該半導体発電装置の背面から出射される光を透過させる透過性保護層と、
該透過性保護層の背面側に配されて、前記透過性保護層を透過した光を前記前面側に向けて反射する反射構造層と、
該反射構造層の背面側に配されて、前記反射構造層を保護する外層とを備え、
前記反射構造層が、前面又は背面に凹凸形状を成形した光学構造層と、前記凹凸形状に沿って積層された反射膜とからなり、
前記光学構造層が、熱硬化性樹脂あるいはビカット軟化温度95℃以上の熱可塑性樹脂から形成されていることを特徴とする反射保護シート。
【請求項2】
前記凹凸形状が前記光学構造層の前面に形成されており、該凹凸形状に積層される前記反射膜と前記透過性保護層との間に、水蒸気透過度が0〜0.5g/mのバリア層が備えられていることを特徴とする請求項1に記載の反射保護シート。
【請求項3】
前記凹凸形状が前記光学構造層の背面に形成されており、前記反射膜と前記外層との間に、凹凸形状に積層される前記反射膜と前記外層との間に、水蒸気透過度が0〜0.5g/mのバリア層が備えられていることを特徴とする請求項1に記載の反射保護シート。
【請求項4】
前記バリア層が、無機酸化物を含んでなることを特徴とする請求項2又は3に記載の反射保護シート。
【請求項5】
前記凹凸形状が、ファセット形状、円錐形状、ファセット形状の頂部が丸みを帯びた形状、円錐形状の頂部が丸みを帯びた形状、あるいは、これら形状の逆型のいずれかであることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の反射保護シート。
【請求項6】
前記凹凸形状の頂角が、111°から137°の範囲に設定されていることを特徴とする請求項5に記載の反射保護シート。
【請求項7】
前記凹凸形状の頂角が、120°から135°の範囲に設定されていることを特徴とする請求項5又は6に記載の反射保護シート。
【請求項8】
光を入射する前面板と、
該前面板を透過した光を透過する充填層と、
該充填層内部に封止されるとともに、前記充填層を透過した光を受光面から受光して電気に変換するセルとを備える半導体発電装置本体の背面側に、
請求項1から7のいずれか一項に記載の反射保護シートが積層されていることを特徴とする半導体発電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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