説明

反射型スキャニング方法及び反射型原稿読取装置

【課題】文字等の情報が印刷されたメタリック調の原稿を読み取る技術において、金箔や銀箔の鏡面を有する地肌が白すぎたり黒すぎたりすることなく、また、鏡面の地肌中に情報が埋もれないように、階調表現と画質とを良好に読み取ることができる反射型スキャニング方法を提供する。
【解決手段】本発明のスキャニング方法は、原稿台(2)上に原稿(6)を載置し、原稿台(2)の原稿(6)とは反対側から光を照射して原稿(6)を読み取るスキャニング方法において、前記原稿としてメタリック調の原稿(6)を用いるとともに前記原稿台(2)と前記原稿(2)との間に光拡散板(7)を挟み、前記光拡散板(7)としては、特定の光学特性であって、少なくとも一方の表面の表面粗さが特定の光拡散板(7)を用い、前記光拡散板(7)の前記表面粗さを有する側の面を、前記原稿台(2)側に向けて用いるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スキャナ等の原稿読取装置に使用して、原稿からの反射光の読み取りを好適に行うことができる反射型スキャニング方法及び反射型原稿読取装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
スキャナを使用して一般的に印刷原稿や写真等の原稿を読み取る場合、原稿台の上に原稿を直接置いて原稿カバーを閉じた後に、画像入力プログラムに従って光源からの光を原稿に照射し原稿から反射した光を読み取ることで画像データを得ることができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、金箔や銀箔(あるいはアルミ箔)等を有する原稿を反射型スキャナで読み取ると、金箔や銀箔(あるいはアルミ箔)等の部分が鏡面反射を起こしてしまうことに起因して、鏡面反射した部分が真っ黒に再現されてしまうという問題があった。また、金箔や銀箔等の地肌部分に印刷された文字、図形、写真等の情報がある場合には、真っ黒に再現された地肌部分の中に情報が埋もれてしまうため、印刷された情報が良好に識別できなくなるという問題があった。
【0004】
これに対し、特許文献1および2は、スキャナの原稿台上に、光を拡散するための拡散層あるいは拡散フィルタ、金箔や銀箔(またはアルミ箔)等に文字、図形、写真等の情報が印刷された原稿を順に載置し、鏡面を有する原稿を読み取る技術に関するものである。当該技術によれば、真っ黒に再現された地肌部分の中に情報が埋もれてしまうという課題が達成可能ではあるが、鏡面部分が白すぎたり、あるいは黒すぎたりというように、メタリック調の階調表現が、良好な階調表現で必ずしも行えるものとはいえなかった。
【0005】
【特許文献1】特開平10−261072号公報(従来の技術)
【特許文献2】特開昭63−269144号公報(請求項1)
【課題を解決するための手段】
【0006】
この影響をさらに解明する為に、読み取り時の原稿、光源、画像読取部の位置について調べてみたところ、光源からの光が好適に拡散されていないということがわかった。
【0007】
そこで本発明者は、特定の光学特性と特定の表面粗さを有する光拡散板を用い、特定の表面粗さを有する側の面を原稿台側に向けて使用することにより、金、銀などの鏡面に印刷された文字、図形、写真等の情報が鏡面に埋もれることなく良好にすることができつつ、鏡面部分が白すぎたり、黒すぎたりして読み取られてしまうのを防止することができ、メタリック調の階調表現を良好にすることができることを見出し、本発明に至ったものである。
【0008】
すなわち、上記課題を解決する本発明のスキャニング方法は、原稿台上に原稿を載置し、原稿台の原稿とは反対側から光を照射して原稿を読み取るスキャニング方法において、前記原稿としてメタリック調の原稿を用いるとともに前記原稿台と前記原稿との間に光拡散板を挟み、前記光拡散板としては、光学特性が、ヘーズ(JIS K7105:1981)90.0%以上、全光線透過率(JIS K7105:1981)60.0%以上、透過の像鮮明度(JIS K7105:1981)15.0%以上23.5%以下であり、少なくとも一方の表面の表面粗さが、中心線平均粗さ(Ra、JIS B0601:1994)0.8μm以上2.0μm以下、最大高さ(Ry、JIS B0601:1994)18.0μm以下である光拡散板を用い、前記光拡散板の前記表面粗さを有する側の面を、前記原稿台側に向けることを特徴とするものである。
【0009】
また、本発明の反射型原稿読取装置は、光源と読取装置とを内蔵した筐体と、前記筐体の、光出射面上に備えられた原稿台と、前記原稿台上に光拡散板を載置してなる反射型原稿読取装置において、前記光拡散板としては、光学特性が、ヘーズ(JIS K7105:1981)90.0%以上、全光線透過率(JIS K7105:1981)60.0%以上、透過の像鮮明度(JIS K7105:1981)15.0%以上23.5%以下であり、少なくとも一方の表面の表面粗さが、中心線平均粗さ(Ra、JIS B0601:1994)0.8μm以上2.0μm以下、最大高さ(Ry、JIS B0601:1994)18.0μm以下である光拡散板を用い、前記光拡散板の前記表面粗さを有する側の面を、前記原稿台側に向けて配置してなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明のスキャニング方法は、原稿台上に原稿を載置し、原稿台の原稿とは反対側から光を照射して原稿からの反射光を読み取る反射型スキャニング方法において、前記原稿としてメタリック調の原稿を用いるとともに前記原稿台と前記原稿との間に光拡散板を挟み、光拡散板としては、光学特性が、ヘーズ(JIS K7105:1981)90.0%以上、全光線透過率(JIS K7105:1981)60.0%以上、透過の像鮮明度(JIS K7105:1981)15.0%以上23.5%以下であり、少なくとも一方の表面の表面粗さが、中心線平均粗さ(Ra、JIS B0601:1994)0.8μm以上2.0μm以下、最大高さ(Ry、JIS B0601:1994)18.0μm以下である光拡散板を用い、その特定の表面粗さを有する側の面を、原稿台側に向けて用いることにより、読み取り原稿がメタリック調を有することにより生じる弊害、即ち、金、銀等の鏡面に印刷された文字、図形、写真等の情報が鏡面に埋もれることなく良好に読み取ることができつつ、鏡面が白すぎたり、黒すぎたりして読み取られてしまうのを防止することができ、メタリック調を有する多様な原稿に対して、メタリック調の階調表現が良好で鮮明な画像データを得ることができる。
【0011】
また、本発明の反射型原稿読取装置は、光源と読取装置とを内蔵した筐体と、前記筐体の、光出射面上に備えられた原稿台と、前記原稿台上に光拡散板を載置してなる反射型原稿読取装置において、前記光拡散板としては、光学特性が、ヘーズ(JIS K7105:1981)90.0%以上、全光線透過率(JIS K7105:1981)60.0%以上、透過の像鮮明度(JIS K7105:1981)15.0%以上23.5%以下であり、少なくとも一方の表面の表面粗さが、中心線平均粗さ(Ra、JIS B0601:1994)0.8μm以上2.0μm以下、最大高さ(Ry、JIS B0601:1994)18.0μm以下である光拡散板を用い、前記光拡散板の前記表面粗さを有する側の面を、前記原稿台側に向けて配置してなることにより、読み取り原稿がメタリック調を有することにより生じる弊害、即ち、金、銀等の鏡面に印刷された文字、図形、写真等の情報が鏡面に埋もれることなく良好に読み取ることができつつ、鏡面が白すぎたり、黒すぎたりして読み取られてしまうのを防止することができ、メタリック調を有する多様な原稿に対して、良好なメタリック調の階調表現で鮮明な画像データを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の反射型原稿読取装置は、光源と読取装置とを内蔵した筐体と、前記筐体の、光出射面上に備えられた原稿台と、前記原稿台上に光拡散板を載置してなる反射型原稿読取装置において、前記光拡散板としては、光学特性が、ヘーズ(JIS K7105:1981)90.0%以上、全光線透過率(JIS K7105:1981)60.0%以上、透過の像鮮明度(JIS K7105:1981)15.0%以上23.5%以下であり、少なくとも一方の表面の表面粗さが、中心線平均粗さ(Ra、JIS B0601:1994)0.8μm以上2.0μm以下、最大高さ(Ry、JIS B0601:1994)18.0μm以下である光拡散板を用い、前記光拡散板の前記表面粗さを有する側の面を、前記原稿台側に向けて配置してなることを特徴とするものである。
【0013】
本発明のスキャニング方法は、原稿台上に原稿を載置し、原稿台の原稿とは反対側から光を照射して原稿を読み取るスキャニング方法において、前記原稿としてメタリック調の原稿を用いるとともに前記原稿台と前記原稿との間に光拡散板を挟み、前記光拡散板としては、光学特性が、ヘーズ(JIS K7105:1981)90.0%以上、全光線透過率(JIS K7105:1981)60.0%以上、透過の像鮮明度(JIS K7105:1981)15.0%以上23.5%以下であり、少なくとも一方の表面の表面粗さが、中心線平均粗さ(Ra、JIS B0601:1994)0.8μm以上2.0μm以下、最大高さ(Ry、JIS B0601:1994)18.0μm以下である光拡散板を用い、前記光拡散板の前記表面粗さを有する側の面を、前記原稿台側に向けることを特徴とするものである。以下、各構成要素の実施の形態を説明する。
【0014】
まず、本発明の反射型原稿読取装置及び、本発明のスキャニング方法で使用する反射原稿読取装置について説明するが、反射原稿読取装置としては一般的なものを使用することができる。たとえば、原稿読取装置は図1のように、原稿(6)を照射するランプユニット(光源)(4)と原稿(6)を読み取り画像データにする読取装置(3)を内蔵した筐体(1)と、カバー(5)とからなる。また、筐体(1)は、上面の一部がランプユニット(4)からの光を出射するために開放されていて、その開放面上に原稿台(2)がある。このように原稿読取装置は透過原稿を読み取ることができる透過型と、反射原稿を読み取る反射型とがある。なお、本発明では反射型を使用する。また、本発明では、さらに光拡散板(7)を使用する。
【0015】
また、筐体の開放面上に備えられている原稿台としては、透明ガラスからなるプラテンガラスなどが考えられる。さらに、原稿はプラテンガラス上にその読み取る画像面を下向きにして載置して原稿台を使用することができる。このような向きで原稿台に原稿を載置することにより、画像面とプラテンガラスの下方に設けられた光源側とを対向して配置することができ、画像を読み取ることができる。
【0016】
原稿台のプラテンガラスの下方には、光源として原稿照明用のランプとミラーが一体化された移動可能なランプユニットが配置される。ランプは原稿を約45度の角度で照明し、原稿からの拡散光を読取装置で受け取り読み取る。これは原稿からの正反射光(鏡面反射光)を拾わずに、原稿からの拡散光を読取装置上に導くためである。
【0017】
また、読み取り中は、ランプユニットは原稿台のプラテンガラス上に下向きに載置された原稿に対して平行に移動して、ランプユニットと読取装置との間を一定に保ちながら、ランプによって照射された原稿からの反射光を読取装置で受光できるように設定されている。
【0018】
読取装置は、原稿(原稿台のプラテンガラス)に対し垂直になるように配置され、原稿面に対し垂直に読み取る。また、読取装置は、原稿台のプラテンガラスの下面にカラーイメージセンサを配置し、原稿の各画素についてその反射光を各原色に分解して、その各原色の光量を電気信号に変換する。また、カラーイメージセンサは、一次元に配列されたものが使用され、主走査方向とは直角な方向に移動(副走査)しながら画像を信号として読み取る。なお、読み取った信号は、アンプにより信号の増幅が行われ、A/Dコンバーターにより、デジタルデータとなる。
【0019】
なお、読取装置は、原稿あるいはカラーイメージセンサの一方を移動させることで、原稿からの反射光を読み取るようにしてもよい。
【0020】
カバーは、筐体上部に連接し、開閉自由に取り付けられている。このカバーは、必ずしも筐体に連接して取り付けられていなくても良い。このカバーを使用して、原稿台に載置された原稿を押さえて固定することができる。
【0021】
本発明によると、原稿としてメタリック調の原稿を用いることができる。このメタリック調の原稿とは、金箔や銀箔(またはアルミ箔)等のように鏡面を有し、鏡面反射または正反射を起こすものをいう。また、メタリック調の原稿は、金銀等の金属の粉末を用いた素材を含み、その金属の粉末が有する微小な鏡面が無数に散在する状態になっていてもよいし、メタリック調の原稿は、つや消し処理されたものであってもよい。また、メタリック調は、金属的な光沢であればよく、非金属の材料で作製されたものであってもよい。さらに、メタリック調の原稿は、メタリック調を有する部分が基材であってもよいし、あるいはメタリック調を有する部分が紙基材に部分的にあってもよい。
【0022】
また、鏡面反射または正反射を起こすメタリック調の原稿は、読取装置が原稿からの反射光を受け取ることができず、原稿からの反射光は読み取りに無効な光となり、メタリック調の読み取りに影響を与えてしまう。
【0023】
このようなメタリック調の原稿を、写真フィルムに撮影された透過原稿として読み取る場合には、正常にメタリック調の原稿を読み取ることができる。しかし、メタリック調の素材を有する原稿を反射原稿として読み取る場合には、メタリック調を有する部分が、黒くつぶれて異常に読み込まれてしまうという問題が発生する。
【0024】
このように、メタリック調を有する部分が、黒くつぶれてしまうと、メタリック調を有した部分に印刷された文字、図形、写真等の情報等が、周りの黒くつぶれたメタリック調を有する部分と重なって埋もれてしまい容易に識別できなくなるという問題が発生する。
【0025】
この影響をさらに解明する為に、読み取り時の原稿、光源、画像読取部の位置について調べてみたところ、光源からメタリック調の原稿に入射した光はメタリック調の原稿面で正反射してしまい、読取装置には入射せず画像を読み取ることが構造上できないということがわかった。
【0026】
これに対し、特許文献1および2は、光を拡散するための拡散層あるいは拡散フィルタを用い、鏡面を有する原稿を読み取る技術に関するものである。しかし、当該技術によれば、真っ黒に再現された地肌部分の中に情報が埋もれてしまうという課題が達成可能ではあるが、鏡面部分が白っぽく読み取られたり、あるいは黒っぽく読み取られたりというように、メタリック調の階調表現が、良好な階調表現で必ずしも行えるものとはいえなかった。
【0027】
このように、メタリック調の原稿を読み取るには、原稿面で正反射して逃げる反射光を捕らえ、読取装置に拡散光として読み取らせる必要がある。また、メタリック調の原稿の読み取りを有効なものとする方法について、鋭意研究を進めた結果、特定の光学特性と特定の表面粗さを有する面をもつ特定の光拡散板を使用するとよいことがわかった。さらに、原稿を読み取るときは、原稿台と前記原稿との間に特定の光拡散板を挟み、光拡散板の特定の表面粗さを有する側の面を、原稿台側に向けて読み取りを行うとよいことがわかった。
【0028】
光拡散板としては、光学特性が、ヘーズ(JIS K7105:1981)90.0%以上、全光線透過率(JIS K7105:1981)60.0%以上、透過の像鮮明度(JIS K7105:1981)15.0%以上23.5%以下であり、少なくとも一方の表面の表面粗さが、中心線平均粗さ(Ra、JIS B0601:1994)0.8μm以上2.0μm以下、最大高さ(Ry、JIS B0601:1994)18.0μm以下である光拡散板を用いる。なお、上記で規定した表面粗さを、単に「本発明で規定する表面粗さ」という場合もある。
【0029】
光拡散板のヘーズ(JIS K7105:1981)を90.0%以上とすることにより光源から照射された光を適度に拡散することができる。このように光源から照射された光を適度に光拡散ができると、照射光がメタリック調の原稿で正反射して黒く読み取られるのを防止し、メタリック調の原稿の読み取りに有効な光として捕らえることができる。こうして、メタリック調の原稿は黒くならずに読み取ることができる。
【0030】
また、前述のように、ヘーズ(JIS K7105:1981)を90.0%以上とすることによりメタリック調の原稿にしわや折れ目がある場合には、しわや折れ目により光源からの入射角度が変化した場合でも、白くなりすぎたり、黒くなりすぎたりするのを防止することができる。さらに、ヘーズ(JIS K7105:1981)は90.0%以上95.0%以下であることがより好ましい。
【0031】
全光線透過率(JIS K7105:1981)を60.0%以上とすることにより原稿に照射する光を明るくすることができ、読み取った原稿の階調性を良好にすることができる。さらに、全光線透過率(JIS K7105:1981)は98.0%以上99.0%以下であることがより好ましい。
【0032】
透過の像鮮明度(JIS K7105:1981)を15.0%以上とすることにより、読取装置で読み取り可能な光量を制限でき、鏡面の読み取りが白く(高濃度に)なりすぎるのを防止することができる。この理由は、メタリック調の原稿を約45度の角度で照明した光が、メタリック調の原稿のうち鏡面を有する部分で正反射光(鏡面反射光)となってしまい読み取りに無効となる光を拡散させ、読取装置に有効な拡散光として好適に調整した上で読取装置に導くことができるためと考えられる。
【0033】
また、透過の像鮮明度(JIS K7105:1981)を23.5%以下とすることにより、読取装置に有効な拡散光として好適に調整でき、鏡面の読み取りが黒く(低濃度に)なりすぎるのを防止できる。この理由は、メタリック調の原稿のうち鏡面を有する部分で正反射光(鏡面反射光)となる光を、読み取りに有効な光として好適に調整した上で読取装置に導くことができるためと考えられる。また、透過の像鮮明度(JIS K7105:1981)を23.5%以下とすることにより、読み取りに有効な拡散反射させる光を調整することができるため、鏡面の読み取りを最適な白色の濃度(明るいグレー)で行うことができる。こうして、鏡面部分の読み取りをメタリック調の階調表現に優れたものとすることができる。また、鏡面上に文字、図形、写真などの情報が印刷された場合でも、鏡面の地肌が最適な白色の濃度(明るいグレー)で行うことができるため、鏡面中の、文字、図形、写真などの情報が識別しやすいものとなる。さらに、透過の像鮮明度(JIS K7105:1981)は19.0%以上23.5%以下であることがより好ましい。
【0034】
光拡散板の表面粗さは、少なくとも一方の面が、中心線平均粗さ(Ra、JIS B0601:1994)を0.8μm以上2.0μm以下、最大高さ(Ry、JIS B0601:1994)を18.0μm以下とする。
【0035】
中心線平均粗さ(Ra、JIS B0601:1994)を2.0μm以下とした場合には、光拡散板の上記の表面粗さを有する側の面を原稿台側に向けて用いたときに鏡面部分の濃度ムラを発生させることなく、鏡面部分を良好に読み取ることができる。さらに、中心線平均粗さ(Ra、JIS B0601:1994)は1.7μm以下であることがより好ましい。
【0036】
さらに、中心線平均粗さ(Ra、JIS B0601:1994)は0.8μm以上とすることにより、光拡散板の表面で光を拡散することができ、鏡面を有する部分は梨子地を有する部分より白色度を高濃度で読み取ることができる。このように、中心線平均粗さ(Ra、JIS B0601:1994)0.8μm以上とした場合には、メタリック調の階調再現性を良好なものとすることができる。さらに、中心線平均粗さ(Ra、JIS B0601:1994)は1.0μm以上であることがより好ましい。
【0037】
最大高さ(Ry、JIS B0601:1994)を18.0μm以下とした場合は、光拡散性を高めつつ、鏡面部分の濃度ムラを発生させることなく読み取ることできる。さらに、最大高さ(Ry、JIS B0601:1994)は10.0μm以上12.0μm以下であることがより好ましい。
【0038】
光拡散板は、本発明で規定する特定の光学特性と、特定の表面粗さを有する面を備えたものであれば特に限定されるものではなく、たとえば、バインダー樹脂と粒子とを適宜混合させて形成したものや、板状のものをブラスト加工や賦形転写加工することにより粗面化したものであっても構わない。
【0039】
前記バインダー樹脂と前記粒子との含有割合は、用いる粒子の平均粒子径や光拡散板の厚みによって一概に言えないが、本願で規定する光学特性と本願で規定する表面粗さを得やすくする観点から、バインダー樹脂100重量部に対し、50重量部以上270重量部以下、好ましくは180重量部以上200重量部以下とすることが望ましい。
【0040】
また、前記光拡散板の厚みとしては、使用する粒子の平均径やバインダー樹脂に対する粒子の含有量によって一概とは言えないが、7.0μm以上500.0μm以下とすることが好ましい。
【0041】
前記粒子の平均粒子径としては、光拡散性と輝度との性能バランスを考慮すると、1.0μm以上40.0μm以下の範囲とすることが好ましい。
【0042】
本発明の反射型原稿読取装置に用いる光拡散板は、本発明で規定する特定の表面粗さを有する面を原稿台(2)に向け、反射型原稿読取装置のカバー(5)に光拡散板(7)の一端を固定して配置してもよいし、反射型原稿読取装置の原稿台(2)に光拡散板(7)の一端を固定してもよい。また、光拡散板(7)は固定せずに取り外し可能なようにして原稿台(2)上に載置して用いてもよい。
【0043】
光拡散板は読み取り時に、光拡散板の本発明で規定する表面粗さを有する側の面を、原稿台側に向け、その上に原稿を載置して用いる。このように、光拡散板の本発明で規定する表面粗さを有する側の面を、原稿台側に向けて用いると、メタリック調の鏡面や梨子地部分に発生する干渉縞や斑点状の汚れを防止することができる。
【0044】
なお、光拡散板の本発明で規定する表面粗さを有する側の面を、原稿台側に向けて載置すると、次の理由により著しい効果が得られると考えられる。
【0045】
光拡散板は前述の光学特性を有し、さらに光拡散板の表面が本発明で規定する表面粗さを有することで、光源からの光を適度に拡散させることができる。そして、光拡散板の表面粗さを有する側の面を、原稿台側に向けて載置することで、読み取りを最適にすることができる。このような構成とすることで、鏡面で正反射して読み取りに無効となる原稿からの反射光を捉え、読取装置の方向へ読み取りに有効な拡散光として導くことができる。
【0046】
また、読み取りに有効な拡散光として導くことで、画像の読み取り濃度が低濃度から高濃度までを幅広く読むことが可能となるため、メタリック調の階調表現に優れたものとすることができる。さらに、正反射を生じさせる鏡面を白色度の高いグレーに、梨子地をグレーに読み取ることができる。
【0047】
以上のように、本発明の反射型原稿読取装置及び、本発明のスキャニング方法によれば、メタリック調の多様な素材を含む原稿であっても、金、銀等の鏡面に印刷された文字、図形、写真等の情報が鏡面に埋もれることなく良好に読み取ることができ、かつ、鏡面が白すぎたり、黒すぎたりして読み取られてしまうのを防止しつつ、そのメタリック調の原稿の階調再現を良好に読み取ることができる。また、光拡散板の本発明で規定する表面粗さを有する側の面を、原稿台側に向けて用いることにより、メタリック調の鏡面や梨子地部分に発生する干渉縞や斑点状の汚れを防止しつつ、良好な階調表現と鮮明な画像データとを得ることができる。
【実施例】
【0048】
以下、実施例により本発明を説明する。尚、「部」「%」は特記しない限り、重量基準である。
【0049】
[実施例1]
スキャナとして下記スキャナを用い、原稿としては下記メタリック調の原稿を用いるとともに原稿台と原稿との間に、光拡散板として下記拡散フィルムの拡散層を有する側の面を原稿台側に向けて光拡散板を挟み、実施例1のスキャナ(反射型原稿読取装置)を作製した。そして、カバーを閉じた後、スキャナを用いて読み取りを行った。
【0050】
光拡散板は、表1に記載の市販の拡散フィルム(ライトアップSXE:きもと社)を用いた。
【0051】
スキャナはA4サイズの反射原稿で読み取れる卓上型のスキャナ(GT−9500:EPSON社)を用いた。
【0052】
スキャナの読み取りは、上記スキャナに付属のプログラム(Scan!II:EPSON社)を用いて、読取解像度300dpi、読取サイズA4、RGB各色8ビット(各色256階調)のカラーTIFFの読取データを得た。
【0053】
メタリック調の原稿として、(1)アルミ蒸着して鏡面加工した銀フィルムと、(2)アルミ蒸着した表面をつや消し処理した梨子地の銀フィルとを用い、(1)と(2)の両方に、黒色と緑色のマジックで文字を書き込んだもの2種を用意した。
【0054】
[実施例2]
光拡散板として実施例1で用いた拡散フィルムを、表1に記載の市販の拡散フィルム(ライトアップMXE:きもと社)に変更した以外は、実施例1と同様にして実施例2のスキャナを作製し、読み取りを行った。
【0055】
[比較例1]
光拡散板として実施例1で用いた拡散フィルムを、表1に記載の市販の拡散フィルム(ライトアップGM2:きもと社)に変更した以外は、実施例1と同様にして比較例1のスキャナを作製し、読み取りを行った。
【0056】
[比較例2]
光拡散板として実施例1で用いた拡散フィルムを、表1に記載の市販の拡散フィルム(ライトアップGM3:きもと社)に変更した以外は、実施例1と同様にして比較例2のスキャナを作製し、読み取りを行った。
【0057】
[比較例3]
光拡散板として実施例1で用いた拡散フィルムを、表1に記載の市販の拡散フィルム(ライトアップKNX:きもと社)に変更した以外は、実施例1と同様にして比較例3のスキャナを作製し、読み取りを行った。
【0058】
[比較例4]
光拡散板として実施例1で用いた拡散フィルムを、表1に記載の市販の拡散フィルム(ライトアップLSE:きもと社)に変更した以外は、実施例1と同様にして比較例4のスキャナを作製し、読み取りを行った。
【0059】
[比較例5]
光拡散板として実施例1と同様の市販の拡散フィルム(ライトアップSXE:きもと社)を用い、拡散フィルムの拡散層を有する面を原稿側に向けて組み込んだ以外は、実施例1と同様にして比較例5のスキャナを作製し、読み取りを行った。
【0060】
[比較例6]
光拡散板として実施例2の市販の拡散フィルム(ライトアップMXE:きもと社)を用い、光拡散フィルムの拡散層を有する面を原稿側に向けて組み込んだ以外は、実施例2と同様にして比較例6のスキャナを作製し、読み取りを行った。
【0061】
【表1】

【0062】
次いで、実施例1〜2および比較例1〜6で得られた画像データについて、下記項目の評価を行った。結果を表2に示す。
【0063】
(1)濃度域(階調性)
実施例1〜2および比較例1〜6で作製したスキャナで用いる原稿を、濃度が真っ黒から真っ白まで段階的変化させた反射グレースケール(KODAK GRAY SCALE:コダック社)に替えて、読み取りを行った。得られた画像データを、画像処理ソフト(PaintShopPro PHOTOX2:COREL社)を使用してパソコンの画面に表示し、グレースケールの真っ黒から真っ白に階段的に変化した画像濃度をグレー濃度でそれぞれ計測した。その結果、グレースケールが示す濃度域が140以上255以下であったものを「○」、グレースケールが示す濃度域が140未満であったものを「×」とした。
【0064】
(2)鏡面濃度(階調性)
実施例1〜2および比較例1〜6で得られた画像データを、画像処理ソフトを使用してパソコンの画面に表示し、鏡面部分をグレー濃度で画像濃度を計測した。その結果、鏡面濃度が200以上252以下で白くなりすぎずに読み取られたものを「○」、鏡面濃度が252を超えて白くなったものや鏡面濃度が200未満で白色度の低いものを「×」とした。
【0065】
(3)梨子地濃度(階調性)
実施例1〜2および比較例1〜6で得られた画像データを、画像処理ソフトを使用してパソコンの画面に表示し、梨子地部分をグレー濃度で画像濃度を計測した。その結果、梨子地部分の濃度が170以上230以下に読み取られたものを「○」、梨子地部分の濃度が230を超えて白くなりすぎたものや170未満で黒くなりすぎたものを「×」とした。
【0066】
(4)メタリック調の階調性(階調性)
実施例1〜2および比較例1〜6で得られた画像データを、画像処理ソフトを使用してパソコンの画面に表示し、鏡面部分と梨子地部分をグレー濃度で画像濃度を計測し、鏡面部分の濃度から梨子地部分の画像濃度を差し引いた濃度を得た。この差し引いた画像濃度が+9以上+30以下のものを「○」、差し引いた画像濃度が+9未満または+31を超えるものを「×」とした。
【0067】
(5)鏡面ムラ(画質)
実施例1〜2および比較例1〜6で得られた画像データを、画像処理ソフトを使用してパソコンの画面に表示し、鏡面部分に発生する汚れを目視した。その結果、汚れが無いものを「○」、鏡面部分に汚れが発生し画質の低下を伴うものを「×」とした。
【0068】
(6)梨子地ムラ(画質)
実施例1〜2および比較例1〜6で得られた画像データを、画像処理ソフトを使用してパソコンの画面に表示し、梨子地部分に発生する汚れを目視した。その結果、汚れが無いものを「○」、梨子地部分に汚れが発生し画質の低下を伴うものを「×」とした。
【0069】
【表2】

【0070】
表1および表2の結果から明らかなように実施例1〜2のスキャナ及び実施例1〜2の方法は、拡散フィルムの光学特性が、ヘーズ(JIS K7105:1981)90.0%以上、全光線透過率(JIS K7105:1981)60.0%以上、透過の像鮮明度(JIS K7105:1981)15.0%以上23.5%以下であり、拡散層を有する側の面の表面粗さが、中心線平均粗さ(Ra、JIS B0601:1994)0.8μm以上2.0μm以下、最大高さ(Ry、JIS B0601:1994)18.0μm以下からなるものであり、かつ、原稿台と原稿との間にこの拡散フィルムの拡散層を有する側の面を原稿台側となるように配置したため、濃度域、鏡面濃度、梨子地濃度、メタリック調の階調性、鏡面ムラ、梨子地ムラともに良好であった。このように、メタリック調の階調再現性と画質を良好にすることができるという顕著な効果が得られた。
【0071】
一方、比較例1〜2のスキャナ及び比較例1〜2の方法は、拡散フィルムの拡散層を有する側の面の表面粗さの、中心線平均粗さ(Ra)が2.0μmを越え、最大高さ(Ry)が18.0μmを超えていたため、鏡面にムラが発生するものとなった。
【0072】
また、比較例3のスキャナ及び比較例3の方法は、拡散フィルムの光学特性のヘーズが89.5%であったため、鏡面部分と梨子地部分との濃度差が少なく読み取られてしまった。このように、鏡面部分と梨子地部分との濃度差が少なくなったため、メタリック調の階調性に劣るものとなった。
【0073】
また、比較例4のスキャナ及び比較例4の方法は、拡散フィルムの光学特性のヘーズが84.0%であったため、規定したヘーズ値90.0%との差により鏡面部分の濃度が低くなりすぎたため黒っぽくなってしまった。また、鏡面部分の濃度の低下により鏡面部分と梨子地部分の濃度が逆転して読み取られたため、メタリック調の階調性に劣るものとなった。
【0074】
他方、比較例5〜6のスキャナ及び比較例の5〜6方法は、実施例1と2で用いた光拡散フィルムの拡散層を有する側の面を原稿側に向けて用いたため、光拡散フィルムの原稿台側の面の表面粗さのうち、中心平均粗さ(Ra)が0.8μm以上2.0μm以下の範囲から外れるものとなった。それにより、比較例5の濃度域が実施例1の70.1%に減少し、比較例6の濃度域が実施例2の61.4%に減少してしまい、濃度域が狭くメタリック調の階調性に劣るものとなった。また、比較例5、6は梨子地の濃度が高くなりすぎてしまい白っぽくなってしまったため、梨子地の濃度が適切でなくなった。このため、メタリック調の階調性に劣るものであった。さらに比較例6は、鏡面、梨子地にムラを発生させてしまい画質に劣るものであった。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の一実施形態を示す側面図
【符号の説明】
【0076】
1・・・・筐体
2・・・・原稿台
3・・・・読取装置
4・・・・ランプユニット
5・・・・カバー
6・・・・原稿
7・・・・光拡散板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿台上に原稿を載置し、原稿台の原稿とは反対側から光を照射して原稿からの反射光を読み取る反射型スキャニング方法において、
前記原稿としてメタリック調の原稿を用いるとともに前記原稿台と前記原稿との間に光拡散板を挟み、
前記光拡散板としては、光学特性が、ヘーズ(JIS K7105:1981)90.0%以上、全光線透過率(JIS K7105:1981)60.0%以上、透過の像鮮明度(JIS K7105:1981)15.0%以上23.5%以下であり、少なくとも一方の表面の表面粗さが、中心線平均粗さ(Ra、JIS B0601:1994)0.8μm以上2.0μm以下、最大高さ(Ry、JIS B0601:1994)18.0μm以下である光拡散板を用い、
前記光拡散板の前記表面粗さを有する側の面を、前記原稿台側に向けることを特徴とする反射型スキャニング方法。
【請求項2】
光源と読取装置とを内蔵した筐体と、前記筐体の、光出射面上に備えられた原稿台と、前記原稿台上に光拡散板を載置してなる反射型原稿読取装置において、
前記光拡散板としては、光学特性が、ヘーズ(JIS K7105:1981)90.0%以上、全光線透過率(JIS K7105:1981)60.0%以上、透過の像鮮明度(JIS K7105:1981)15.0%以上23.5%以下であり、少なくとも一方の表面の表面粗さが、中心線平均粗さ(Ra、JIS B0601:1994)0.8μm以上2.0μm以下、最大高さ(Ry、JIS B0601:1994)18.0μm以下である光拡散板を用い、
前記光拡散板の前記表面粗さを有する側の面を、前記原稿台側に向けて配置してなることを特徴とする反射型原稿読取装置。

【図1】
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【公開番号】特開2010−87732(P2010−87732A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−253093(P2008−253093)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(000125978)株式会社きもと (167)
【Fターム(参考)】