説明

反射型スクリーンおよび反射型スクリーンの製造方法

【課題】スクリーン基材の反射側の面と裏面との接触抵抗を低減する反射型スクリーンおよび反射型スクリーンの製造方法を提供する。
【解決手段】反射型スクリーン2は、投射光を反射する第1面(基材表面21A)と、第1面(基材表面21A)の反対面となる第2面(基材裏面21B)とを有すると共に、可撓性を有するシート状の基材(スクリーン基材21)を備え、第2面(基材裏面21B)には、凹凸状の形状(凹凸面22)が形成されている。また、凹凸状の形状(凹凸面22)は、一様に形成されている。更に、凹凸状の形状(凹凸面22)は、シボ形状で構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射型スクリーンおよび反射型スクリーンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プロジェクター等の投射型表示装置から出力された投射光を反射して画像を表示する反射型スクリーンが知られている。この反射型スクリーンは、シート状の合成樹脂製の基材が用いられ、投射光を反射する面(反射面)には、複数の半球状のパターンが形成されたものがある。なお、投射光を反射する反射面とは逆側(反対側)の面(裏面)は、一般的には何も加工されず平坦な基材面が露出している。
【0003】
なお、特許文献1では、反射型スクリーンの製造方法に関して、観察面に複数の凹部または凸部が形成された基材(スクリーン基板)に、観察面に対して斜めからアルミニウム等の材料を蒸着させ、凹部または凸部の表面の一部に反射膜を形成させることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−15196号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、スクリーン基材の裏面が平坦面の場合、巻取り式の反射型スクリーンにおいて、反射型スクリーンを巻き取った場合、反射型スクリーンの反射面に形成される半球状の突起と裏面の平坦面が接触するため、接触抵抗が大きくなる。そのため、スクリーン基材の展張時や収納時にロール回転を行うことで、半球状の突起と平坦面が剥離と接触を繰り返すことにより、基材に静電気が帯電しやすくなるという課題がある。静電気が反射型スクリーンに帯電することにより、反射面に塵埃等が付着して汚染され、反射面の反射率が低下するという課題がある。また、接触抵抗が大きいため、反射面の半球状の突起をつぶすことや、半球状の突起に選択的に形成される反射膜を損傷するという課題がある。
従って、スクリーン基材の反射面と裏面との接触抵抗を低減する反射型スクリーンおよび反射型スクリーンの製造方法が要望されていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述した課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0007】
(適用例1)本適用例に係る反射型スクリーンは、投射光を反射する反射型スクリーンであって、投射光を反射する第1面と、第1面の反対面となる第2面とを有すると共に、可撓性を有するシート状の基材を備え、第2面には、凹凸状の形状が形成されていることを特徴とする。
【0008】
このような反射型スクリーンによれば、第1面の反対面となる第2面(いわゆる第1面の裏面)に凹凸状の形状が形成されていることにより、反射型スクリーンを巻き取って収納した場合、投射光を反射する第1面と、第2面の凹凸状の形状とが接触する。従って、従来のように、第2面が平坦面ではないため、第1面との接触面積を低減できることで、接触抵抗を低減させることができる。
【0009】
(適用例2)上記適用例に係る反射型スクリーンにおいて、凹凸状の形状は、一様に形成されていることが好ましい。
【0010】
このような反射型スクリーンによれば、適用例1の効果に加えて、第2面の凹凸状の形状が一様に形成されるため、第2面の見栄えを向上させることができる。
【0011】
(適用例3)上記適用例に係る反射型スクリーンにおいて、凹凸状の形状は、シボ形状で構成されていることが好ましい。
【0012】
このような反射型スクリーンによれば、第2面の凹凸状の形状がシボ形状で構成されているため、第2面の質感を向上させることができる。
【0013】
(適用例4)本適用例に係る反射型スクリーンの製造方法は、投射光を反射する第1面と、第1面の反対面となる第2面とを有すると共に、可撓性を有するシート状の基材に対し、第2面に、凹凸状の形状を形成する凹凸形状形成工程を備えていることを特徴とする。
【0014】
このような反射型スクリーンの製造方法によれば、凹凸形状形成工程により、第2面に凹凸状の形状を形成する。これにより、反射型スクリーンを巻き取って収納した場合、投射光を反射する第1面に、第2面に形成した凹凸状の形状を接触させることができる。従って、従来のように、第2面が平坦面ではないため、第1面と第2面との接触面積を低減できることで、接触抵抗を低減する反射型スクリーンを製造することができる。
【0015】
(適用例5)上記適用例に係る反射型スクリーンの製造方法において、凹凸形状形成工程は、凹凸状の形状を転写する転写工程を備えていることが好ましい。
【0016】
このような反射型スクリーンの製造方法によれば、転写工程により凹凸状の形状を転写することで、第2面に凹凸状の形状を容易に形成することができる。
【0017】
(適用例6)上記適用例に係る反射型スクリーンの製造方法において、転写工程は、凹凸状の形状に形成された型を加熱して基材に押し付ける工程を含み、型は、耐熱性を有する合成樹脂部材で形成されていることが好ましい。
【0018】
このような反射型スクリーンの製造方法によれば、耐熱性を有する合成樹脂部材を型として転写工程を行う。なお、従来、転写工程において、スクリーン基材の基材表面に、例えば凹状または凸状の形状を形成させる金属型を使用した場合、基材裏面が溶融して緩衝部材と密着するため、緩衝部材と基材裏面との間に密着防止部材として、耐熱性を有する合成樹脂部材を使用していた。これに対して、この耐熱性を有する合成樹脂部材に、例えば凹凸状の形状を形成し、型として用いて転写工程を行うことにより、従来の密着防止部材としての機能を有することができる。これにより、金属型を使用しない効率的な型構造の実現と、型の簡易化を図ることができる。
【0019】
(適用例7)上記適用例に係る反射型スクリーンの製造方法において、合成樹脂部材は、シート状またはロール状に形成されていることが好ましい。
【0020】
このような反射型スクリーンの製造方法によれば、転写工程において、シート状の合成樹脂部材を用いるか、ロール状の合成樹脂部材を用いるか適宜選択することができることで、選択の自由度を向上させることができる。
【0021】
(適用例8)上記適用例に係る反射型スクリーンの製造方法において、第1面に複数の凹部または複数の凸部を有するように基材を変形させる基材変形工程を備え、転写工程は、基材変形工程と併せて行われることが好ましい。
【0022】
このような反射型スクリーンの製造方法によれば、基材変形工程と転写工程とを併せて行うことで、反射型スクリーンの製造の効率化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】第1実施形態に係る反射型スクリーン装置が設置された状態を示す模式図。
【図2】反射型スクリーンの製造工程を示す模式図。
【図3】凹凸形状形成工程と基材変形工程とを示す模式図。
【図4】反射膜形成工程を示す模式図。
【図5】第2実施形態に係る凹凸形状形成工程と基材変形工程とを示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、実施形態を図面に基づいて説明する。
(第1実施形態)
【0025】
図1は、第1実施形態に係る反射型スクリーン装置1が設置された状態を示す模式図である。図1を参照して、本実施形態の反射型スクリーン装置1の概構成と動作に関して簡略に説明する。
【0026】
本実施形態の反射型スクリーン装置1は、床面F等に載置するタイプの装置である。反射型スクリーン装置1は、直方体状の箱型に形成される筺体3の内部から上方(床面Fに対して略垂直な方向)に向かって反射型スクリーン2が繰り出される。そして、反射型スクリーン2は、床面Fに対して起立して使用可能な状態となる。なお、反射型スクリーン2は、反射型スクリーン装置1の近傍で机上面D(又は床面F)等に載置されたプロジェクターPJから射出された投射光Lpを観察者側に反射する。
【0027】
図1を含む以降の図面では、各構成要素を図面上で認識できる程度の大きさとするため、各構成要素の寸法や比率を実際のものとは適宜異ならせて示している。また、図1を含む以降の図面では、説明の便宜上、XYZ直交座標系で記載する。XYZ直交座標系は、床面Fに対して垂直方向をY方向(起立した状態の反射型スクリーン2の床面F側を−Y方向)とする。また、起立した反射型スクリーン2のスクリーン基材21面に平行で、Y方向に直交する方向をX方向(起立した状態の反射型スクリーン2の反射面と正対した場合の右方向を+X方向)とする。また、Y方向及びX方向に直交する方向をZ方向(起立した状態の反射型スクリーン2の反射面と正対する方向を+Z方向)とする。また、重力方向を基準として、重力方向を下方向、逆方向を上方向とする。
【0028】
反射型スクリーン装置1は、図1に示すように、反射型スクリーン2と筺体3を備えている。筺体3の内部には、パンタグラフ機構部(図示省略)が伸縮自在に設置されている。このパンタグラフ機構部の上端部に反射型スクリーン2の上端部が固定されている。また、反射型スクリーン2の下端部は、筺体3内部に設置されるばね式の巻き取り機構部(図示省略)に固定されて巻き取られている。
【0029】
巻き取り機構部は、反射型スクリーン2の幅方向(X方向)の長さと同等の長さの巻き取り軸(図示省略)を備えて構成されている。巻き取り軸は、常に巻き取る方向に引張り力を付与するバネ部材(図示省略)を有している。従って、反射型スクリーン2は、使用時や、引き出し時及び巻き取り時において、常に突っ張る状態となり、弛みを低減させている。
【0030】
本実施形態のパンタグラフ機構部は、モーター(図示省略)により伸縮動作(昇降動作)を行う。パンタグラフ機構部が動作し、上方(+Y方向)に伸びる動作に対応して、反射型スクリーン2は、巻き取り機構部から繰り出される。また、逆に、パンタグラフ機構部が動作し、下方(−Y方向)に縮む動作に対応して、反射型スクリーン2は、巻き取り機構部(巻き取り軸)に巻き取られ、筺体3内部に収容される。
【0031】
図2は、反射型スクリーン2の製造工程100を示す模式図であり、図2(a)は、凹凸形状形成工程110と基材変形工程120とを示す模式図であり、図2(b)は、反射膜形成工程130を示す模式図である。図2を参照して、反射型スクリーン2の製造工程100を説明する。
【0032】
反射型スクリーン2は、可撓性を有するシート状の基材(以降、スクリーン基材21と称す)を用いている。スクリーン基材21は、本実施形態では、黒色の塩化ビニル樹脂で形成されている。黒色としているのは、不要な入射光を吸収させることができるためである。
【0033】
なお、図2に示す製造工程100は、長さ数百mのスクリーン基材がロール状に巻かれた状態で行われる、いわゆるロール・ツー・ロール方式により実施される。従って、本実施形態のスクリーン基材21は、反射型スクリーン装置1として反射型スクリーン2(スクリーン基材21)が起立した場合の左右方向が長尺状に繋がって形成される。図2は、工程毎に実施された結果を、要部の断面として拡大して示している。
【0034】
製造工程100は、凹凸形状形成工程110と基材変形工程120と反射膜形成工程130とを備えている。また、製造工程100は、本実施形態では、凹凸形状形成工程110と基材変形工程120は、後述するエンボス加工装置200を用いて、略同時に併せて行われる。その後、反射膜形成工程130が行われる。なお、各工程には、図示省略する搬送装置が備えられ、ロール状に巻かれたスクリーン基材21を、1枚分のスクリーン基材21の長さ毎に、順次引き出し、また、順次巻き取ることで加工が行われる。
【0035】
図2(a)に示すように、凹凸形状形成工程110は、スクリーン基材21の第2面としての基材裏面21Bに凹凸形状の面(凹凸面22)を形成する工程である。凹凸形状形成工程110は、本実施形態では、転写工程(以降、凹凸面転写工程111と称す)を含んで構成されている。また、凹凸面転写工程111は、加熱しながら型を押し付ける転写装置として、エンボス加工装置200を用いて実施される。凹凸面22は、基材裏面21Bの略全領域に渡って一様に形成される。また、本実施形態の凹凸面22は、いわゆるシボ形状で構成されている。また、シボ形状として、本実施形態では梨地模様を用いている。なお、シボ形状として、梨地模様の他、網目模様等を用いてもよい。
【0036】
一方、基材変形工程120は、スクリーン基材21の第1面としての基材表(おもて)面21Aを変形させる工程である。基材変形工程120は、本実施形態では、転写工程を含んで構成されている。本実施形態では、この転写工程(以降、凹面転写工程121と称す)により、基材表面21Aを変形させ、複数の凹部23を形成している。また、凹面転写工程121は、凹凸面転写工程111と同様に、エンボス加工装置200を用いて実施される。
【0037】
図3は、凹凸形状形成工程110と基材変形工程120とを示す模式図であり、図3(a)は、エンボス加工装置200の構成を示す概断面図であり、図3(b)は、エンボス加工装置200が動作した状態を示す概断面図である。図3を参照して、エンボス加工装置200の構成と動作を説明することで、凹凸形状形成工程110と基材変形工程120とにおける転写工程(凹凸面転写工程111、凹面転写工程121)を説明する。
【0038】
エンボス加工装置200は、平面状の型で構成されている。エンボス加工装置200は、形成させる形状とは逆形状に形成された型を加熱しながら、スクリーン基材21を上下方向から高圧力で押し付け、スクリーン基材21を型形状に沿わせて熱変形(転写)させて、必要な形状を形成させる装置である。
【0039】
図3(a)に示すように、エンボス加工装置200は、スクリーン基材21の下側に、下側金型ベース220と、下側金型ベース220の上部には凸状に形成された凸部221Aを有する金型221とを備えて構成される。また、エンボス加工装置200は、スクリーン基材21の上側に、上側金型ベース210を備えて構成される。上側金型ベース210のスクリーン基材21側は、平面を有して形成されている。
【0040】
また、エンボス加工装置200は、上側金型ベース210とスクリーン基材21との間に、凹凸形状に形成された凹凸部211Aを有する凹凸型211を備えて構成される。凹凸型211は、本実施形態では合成樹脂部材で構成されている。また、合成樹脂部材として、本実施形態では、耐熱性を有するシート状のテフロン(登録商標)樹脂を用いている。
【0041】
また、エンボス加工装置200は、上側金型ベース210と凹凸型211との間に、転写する際にスクリーン基材21に圧力を均等にかけるための緩衝部材212を備えている。緩衝部材212として、本実施形態ではフェルト部材を用いている。
【0042】
なお、本実施形態の凹凸型211は、エンボス加工装置200が動作した際、基材裏面21B側の溶融による緩衝部材212との密着を防止する密着防止部材としての機能も有している。
【0043】
凹凸形状形成工程110と基材変形工程120を行う場合、最初に、エンボス加工装置200に対して、ロール状のスクリーン基材21を引き出してセットする。詳細には、図3(a)に示すように、スクリーン基材21の基材表面21Aが金型221に相対し、基材裏面21Bが凹凸型211に相対するようにセットする。そして、エンボス加工装置200を動作させる。この場合、下側金型ベース220と上側金型ベース210は加熱されている。エンボス加工装置200が動作する場合、下側金型ベース220は固定されており、上側金型ベース210が下降することで、スクリーン基材21を押し付ける。
【0044】
図3(b)に示すように、エンボス加工装置200が、スクリーン基材21を、下側金型ベース220と上側金型ベース210とで押し付けることにより、凹凸面転写工程111と凹面転写工程121が略同時に行われる。これにより、基材裏面21Bは、凹凸型211の凹凸部211Aに沿って熱変形して転写される。これにより、図2(a)に示すように凹凸面22が形成される。また、基材表面21Aは、金型221の凸部221Aに沿って熱変形して転写される。これにより、図2(a)に示すように凹部23が形成される。
【0045】
凹部23は、基材表面21Aの略全領域に渡って形成される。凹部23は、例えば、X方向において、反射型スクリーン2のX方向の中心線上(図示省略)の所定の位置を中心とする円弧状に配列し、Y方向において、この中心を同心とする同心円状に配列するように形成される。本実施形態の凹部23は、略半球状となるように形成される。なお、凹部23の配置はこれに限らず、実使用時の反射型スクリーン2とプロジェクターPJとの位置関係などに合わせて、適宜変更してもよい。
【0046】
なお、凹凸形状形成工程110と基材変形工程120は、ロール・ツー・ロール方式で、引き出された1枚分のスクリーン基材21の長さ毎に、連続的に凹凸面22と凹部23を形成する。
【0047】
図2に戻り、凹凸形状形成工程110と基材変形工程120が終了した場合、次工程の反射膜形成工程130に移行する。図2(b)に示すように、反射膜形成工程130は、凹部23の内面23Aに選択的に反射膜24を形成する工程である。なお、反射膜形成工程130は、本実施形態では、蒸着工程131を含んで構成されている。本実施形態では、この蒸着工程131により、内面23Aにアルミニウムの膜を選択的に形成している。
【0048】
図4は、反射膜形成工程130を示す模式図である。図4を参照して、反射膜形成工程130における蒸着工程131に関して説明する。
【0049】
蒸着工程131は、ロール状に巻き取られたスクリーン基材21を、基材表面21Aが蒸着源Sの上方に相対して、傾斜するように引き出し、先端を巻き取り側のロール部材に取り付ける。なお、基材表面21Aは、スクリーン基材21の上部側が下部側に比べて、蒸着源Sから離れる状態に取り付けられる。また、蒸着源Sは、反射型スクリーン2のX方向の中心線上(図示省略)で、スクリーン基材21の下部側に設置される。なお、スクリーン基材21の上部側とは、反射型スクリーン2が起立した場合の上部側をいう。
【0050】
蒸着工程131は、詳細には、反射膜24を形成する際、基材表面21Aに対して斜めに投射光Lpを射出するプロジェクターPJの位置を仮想光源位置Pとして予め想定しておく。そして、基材表面21Aの各凹部23に対する蒸着材料の蒸着の角度θsが、基材表面21Aの各凹部23に対する仮想光源位置Pからの投射光Lpの入射角度θpと等しいか、それよりも小さくなるように蒸着源Sを配置して、投射光Lpの入射方向から各凹部23に蒸着材料を蒸着させる。
【0051】
蒸着工程131を行うことにより、凹部23の内面23Aの投射光Lpが照射される部分に、凹状の反射膜24が形成される。なお、このように、斜め方向から蒸着を行い、反射膜24を選択的に形成することで、蒸着源Sを中心にして、基材表面21Aの各凹部23に放射状で部分的に反射膜24が形成される。そして、反射膜24の膜厚は、蒸着源Sから離れるに従って徐々に薄く形成される。なお、反射膜24を蒸着法により形成することで、スプレーコート方法、印刷方法などにより反射膜を形成するよりも、薄く高品位な反射膜24を形成することができる。
【0052】
なお、反射膜形成工程130も、ロール・ツー・ロール方式で、引き出された1枚分のスクリーン基材21の長さ毎に、連続的に反射膜24を形成する。上述した製造工程100で製造されたスクリーン基材21(反射型スクリーン2)は、以降の工程において、所定の長さで個々に切り分けられ、本実施形態の反射型スクリーン2及び反射型スクリーン装置1として組み立てられる。
【0053】
なお、上述した製造工程100により、形成された反射型スクリーン2が、反射型スクリーン装置1として組み立てられた場合、プロジェクターPJから投射された投射光Lpは、反射型スクリーン2の反射膜24により、効率的に観察者側に反射される。また、反射型スクリーン2に、蛍光灯等からの不要な外光が入射した場合には、反射膜24以外の凹部23に吸収されるため、観察者側には反射させ難くできる。また、反射型スクリーン2は、基材裏面21Bに凹凸面22が形成されているため、反射型スクリーン2の背面側から入射する外光に対して乱反射させることで、遮光性を向上させることができる。これにより、反射型スクリーン2のコントラスト性能を向上させる。
【0054】
また、上述した製造工程100により、形成された反射型スクリーン2が、反射型スクリーン装置1として組み立てられた場合、反射型スクリーン2が筺体3内部に収容される際には、スクリーン基材21の基材表面21Aに形成された凹部23(及び反射膜24)は、基材裏面21Bに形成された凹凸面22と重なる状態で、巻き取り機構部(巻き取り軸)に巻き取られる。また、巻き取り機構部から反射型スクリーン2が繰り出される際には、基材表面21Aの凹部23と基材裏面21Bの凹凸面22とが剥離される状態で展張される。
【0055】
上述した第1実施形態によれば、以下の効果が得られる。
本実施形態の反射型スクリーン2によれば、基材裏面21Bに凹凸面22を有しているため、反射型スクリーン2の収納時に、基材表面21Aの凹部23と基材裏面21Bの凹凸面22とが重なって巻き取られても、従来のように基材裏面が平坦面であった場合に比較して、凹部23との接触面積を低減できる。そのため、凹部23と凹凸面22とが剥離される状態で展張された場合に、従来のように基材裏面が平坦面であった場合に比較して、接触抵抗を低減することができ、接触抵抗による静電気がスクリーン基材21に帯電し難くなり、静電気の発生を抑制することができる。
また、静電気の発生を抑制することができるため、反射膜24を含む凹部23に塵埃等が付着して汚染されることを低減でき、反射膜24の反射率の低下を防止することができる。
【0056】
本実施形態の反射型スクリーン2によれば、基材裏面21Bに凹凸面22を有しているため、基材表面21Aの凹部23との接触抵抗を低減できることにより、凹部23をつぶすことや、反射膜24を損傷することを防止することができる。
【0057】
本実施形態の反射型スクリーン2によれば、凹凸面22は、一様に形成され、また、シボ形状(梨地)で構成されている。これにより、第2面としての基材裏面21Bの質感を向上させることができ、見栄えを向上させることができる。
【0058】
本実施形態の反射型スクリーン2の製造方法によれば、第2面としての基材裏面21Bに、凹凸面22を形成する凹凸形状形成工程110を備えている。これにより、反射型スクリーン2を巻き取って収納する場合、投射光を反射する基材表面21Aに、基材裏面21Bに形成した凹凸面22を接触させることができる。従って、従来の平坦な基材裏面と異なり、基材裏面21Bが平坦面ではないため、基材表面21Aと基材裏面21Bとの接触面積を低減できることにより、接触抵抗を低減する反射型スクリーン2を製造することができる。
【0059】
本実施形態の反射型スクリーン2の製造方法によれば、凹凸形状形成工程110は、凹凸状の形状(凹凸部211A)を転写する転写工程(凹凸面転写工程111)を備えている。この凹凸面転写工程111により凹凸部211Aを転写することで、基材裏面21Bに容易で効率的に凹凸面22を形成することができる。
【0060】
本実施形態の反射型スクリーン2の製造方法によれば、凹凸面転写工程111において、耐熱性を有するシート状のテフロン樹脂を型として転写工程を行っている。従来、転写工程において、スクリーン基材の基材表面に例えば凹状の形状を形成させる金属型を使用した場合、基材裏面が溶融して緩衝部材と密着するため、緩衝部材と基材裏面との間に密着防止部材として、耐熱性を有する合成樹脂部材を使用していた。これに対して、この耐熱性を有するテフロン樹脂を凹凸型211として用いて凹凸面転写工程111を行うことにより、従来の密着防止部材としての機能を有すると共に、型として使用することができるため、効率的な型構造の実現と、型の簡易化を図ることができる。
【0061】
本実施形態の反射型スクリーン2の製造方法によれば、凹凸形状形成工程110の凹凸面転写工程111と、基材変形工程120の凹面転写工程121とが略同時に併せて行われる。これにより、反射型スクリーン2の製造の効率化を図ることができる。
(第2実施形態)
【0062】
図5は、第2実施形態に係る凹凸形状形成工程150と基材変形工程160とを示す模式図である。図5を参照して、本実施形態の凹凸形状形成工程150と基材変形工程160とにおける転写工程(凹凸面転写工程151と凹面転写工程161)を説明する。
【0063】
本実施形態の反射型スクリーン2は、第1実施形態の反射型スクリーン2と比較して、製造方法が異なっている。詳細には、第1実施形態の転写工程(凹凸面転写工程111、凹面転写工程121)は平面状の型で構成されるエンボス加工装置200を用いていた。これに対して、本実施形態の転写工程(凹凸面転写工程151、凹面転写工程161)は、ロール状の型で構成されるエンボス加工装置300を用いて行うことが異なる。その他は、第1実施形態と同様である。同様の構成には同様の符号を付記している。
【0064】
なお、本実施形態の凹凸形状形成工程150(凹凸面転写工程151)と、基材変形工程160(凹面転写工程161)は、第1実施形態の凹凸形状形成工程110(凹凸面転写工程111)と、基材変形工程120(凹面転写工程121)にそれぞれ対応している。また、凹凸形状形成工程150と基材変形工程160は、エンボス加工装置300を用いることで、第1実施形態と同様に略同時に併せて行われる。また、凹凸形状形成工程150と基材変形工程160は、第1実施形態と同様に、ロール状に巻かれたスクリーン基材21を、1枚分のスクリーン基材21の長さ毎に、順次引き出し、また、順次巻き取ることで加工が行われる。
【0065】
図5に示すように、エンボス加工装置300は、円柱状の受けローラー310と円柱状のエンボスローラー320とを有して構成されている。また、受けローラー310とエンボスローラー320は、互いに対向して配置され、それぞれ中心軸を中心に回転自在に保持されている。
【0066】
受けローラー310は、受けローラー本体311の外周面に、凹凸部312Aが形成された凹凸型312が設置されている。なお、この凹凸型312は、第1実施形態と同様に、耐熱性を有するロール状のテフロン樹脂またはシリコンゴムで形成され、その表面に、凹凸部312Aとしてのシボ形状(本実施形態では梨地)が一様に形成されている。また、エンボスローラー320は、エンボスローラー本体321の外周面に、凸部321Aが形成された金型で構成されている。
【0067】
凹凸形状形成工程150と基材変形工程160は、このように構成されるエンボス加工装置300に対し、加熱されたスクリーン基材21をエンボスローラー320と受けローラー310との間に上方から下方に向けた状態で挟持させて実施される。詳細には、基材表面21Aにエンボスローラー320を当接させ、基材裏面21Bに受けローラー310を当接させて挟持させる。
【0068】
そして、エンボスローラー320が回転することにより、基材表面21Aに凸部321Aを押圧して、凸部321Aの形状を転写させる。これにより、基材表面21Aに凹部23が形成される。また、受けローラー310が回転することにより、基材裏面21Bに凹凸部312Aを押圧して、凹凸部312Aの形状を転写させる。これにより、基材裏面21Bに凹凸面22が形成される。
【0069】
上述したエンボス加工装置300により、凹凸形状形成工程150と基材変形工程160を実施した後は、第1実施形態と同様の、反射膜形成工程130に移行する。
【0070】
上述した第2実施形態によれば、第1実施形態での効果を同様に奏することができる他、以下の効果が得られる。
【0071】
本実施形態の反射型スクリーン2によれば、第1実施形態での転写工程(凹凸面転写工程111、凹面転写工程121)では、平面状の型で構成されるエンボス加工装置200を用いていたが、第2実施形態での転写工程(凹凸面転写工程151、凹面転写工程161)では、ロール状の型で構成されるエンボス加工装置300を用いて行っている。これにより、転写工程を行う際のエンボス加工装置200,300の選択の自由度を向上させる。
【0072】
なお、上述した実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変更や改良等を加えて実施することが可能である。変形例を以下に述べる。
【0073】
前記第1実施形態の反射型スクリーン2は、スクリーン基材21の基材表面21Aに複数の凹部23を形成させているが、複数の凸部を形成させることでもよい。凸部の形成は、基材変形工程において、エンボス加工装置200の金型221を、凹部を有する金型に交換して行うことで実現できる。また、その後、この転写された複数の凸部に対して、第1実施形態と同様に反射膜を選択的に形成させることでよい。また、前記第2実施形態のエンボス加工装置300において、凸部321Aを有するエンボスローラー320を、凹部を有するエンボスローラーに交換して行うことで、基材表面21Aに複数の凸部を形成させることができる。
【0074】
前記第1実施形態の反射型スクリーン2において、凹凸型211は、耐熱性を有するシート状のテフロン樹脂を用いている。しかし、耐熱性を有するシート状のシリコン樹脂を用いてもよい。これは、第2実施形態においても同様に、耐熱性を有するロール状のシリコン樹脂を用いてもよい。また、耐熱性を有する合成樹脂部材であればよい。
【0075】
前記第1、第2実施形態の反射型スクリーン2において、基材裏面21Bに形成される凹凸面22は、基材裏面21Bの略全領域に渡って一様に形成され、また、シボ形状で構成されている。そして、シボ形状として梨地模様を用いている。しかし、これに限定されず、凹凸面22は、スクリーン基材21の基材表面21Aに凹凸形状が影響を与えない範囲で、様々な模様を用いることができる。例えば、革や木目等の模様を用いてもよい。また、画像データを利用した模様等でもよい。また、会社や商品等のロゴマークを模様として用いることでもよく、会社や商品等のイメージを使用者に印象づけることができる効果も奏する。
【0076】
前記第1、第2実施形態の反射型スクリーン2において、凹凸形状形成工程110と基材変形工程120とは、エンボス加工装置200を用いて同時に行われている。しかし、これに限られず、別々に行われてもよい。
【0077】
前記第1、第2実施形態の反射型スクリーン2は、製造工程100において、各工程に搬送装置が備えられ、ロール状に巻かれたスクリーン基材を、1枚分のスクリーン基材21の長さ毎に、順次引き出し、また、順次巻き取ることで加工が行われている。しかし、1枚分のスクリーン基材21の長さに切断したものを用いて各工程を行ってもよい。
【0078】
前記第1、第2実施形態の反射型スクリーン2は、基材表面21A(投射光Lpの入射側)に複数の凹部23を形成し、複数の凹部23に選択的に反射膜24を形成している。しかし、投射光Lpの入射側は、これに限られず、入射光を反射させるために様々に形成されていてもよい。例えば、スクリーンの基材に白色の塗料を塗布したものや、基材の表面にレンチキュラーレンズの凹凸を形成したものや、基材の表面にアルミ箔を貼着してマットフィルム等の被膜を設けたものや、基材の表面に細かいガラス粉末(ビーズ)を塗布したもの等でもよい。
【0079】
前記第1、第2実施形態の反射型スクリーン装置1は、電動で、反射型スクリーン2を伸縮する。しかし、これに限られず、筒状の部材に反射型スクリーンを手動で巻き取るタイプの反射型スクリーン装置であってもよい。
【0080】
前記第1、第2実施形態の反射型スクリーン2において、凹部23は、中心線上の所定の位置を中心として円弧状に配列されている。しかし、これに限られず、Y方向、X方向に直線状に配列するように形成してもよい。
【0081】
前記第1、第2実施形態の反射型スクリーン2において、凹部23のピッチや深さ等は、製造のしやすさや反射効率等を考慮して適宜設定することができる。
【0082】
前記第1、第2実施形態の反射型スクリーン装置1において、反射型スクリーン2は、巻き取り機構部(巻き取り軸)に巻き取られて収容される。しかし、これに限られず、ジャバラ方式で折り畳むように収容されてもよい。
【0083】
前記第1、第2実施形態の反射型スクリーン装置1は、床面Fに載置するタイプである。しかし、これに限られず、壁面に固定されてもよい。また、机や台等に固定されてもよい。
【0084】
前記第1、第2実施形態の反射型スクリーン装置1は、床面Fに載置して、筺体3の内部から上方(床面Fに対して略垂直な方向)に向かって反射型スクリーン2が繰り出される。しかし、これに限られず、天井や天井に近い壁面などに固定して、筺体の内部から、床面に向かって下方向に反射型スクリーンが繰り出されることでもよい。
【符号の説明】
【0085】
1…反射型スクリーン装置、2…反射型スクリーン、21…スクリーン基材、21A…基材表面、21B…基材裏面、22…凹凸面、23…凹部、24…反射膜、100…製造工程、110…凹凸形状形成工程、111…凹凸面転写工程、120…基材変形工程、121…凹面転写工程、150…凹凸形状形成工程、151…凹凸面転写工程、160…基材変形工程、161…凹面転写工程、200…エンボス加工装置、211…凹凸型、211A…凹凸部、300…エンボス加工装置、310…受けローラー、312…凹凸型、312A…凹凸部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
投射光を反射する反射型スクリーンであって、
前記投射光を反射する第1面と、当該第1面の反対面となる第2面とを有すると共に、可撓性を有するシート状の基材を備え、
前記第2面には、凹凸状の形状が形成されていることを特徴とする反射型スクリーン。
【請求項2】
請求項1に記載の反射型スクリーンであって、
前記凹凸状の形状は、一様に形成されていることを特徴とする反射型スクリーン。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の反射型スクリーンであって、
前記凹凸状の形状は、シボ形状で構成されていることを特徴とする反射型スクリーン。
【請求項4】
投射光を反射する反射型スクリーンの製造方法であって、
前記投射光を反射する第1面と、当該第1面の反対面となる第2面とを有すると共に、可撓性を有するシート状の基材に対し、前記第2面に、凹凸状の形状を形成する凹凸形状形成工程を備えていることを特徴とする反射型スクリーンの製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の反射型スクリーンの製造方法であって、
前記凹凸形状形成工程は、前記凹凸状の形状を転写する転写工程を備えていることを特徴とする反射型スクリーンの製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載の反射型スクリーンの製造方法であって、
前記転写工程は、前記凹凸状の形状に形成された型を加熱して前記基材に押し付ける工程を含み、
前記型は、耐熱性を有する合成樹脂部材で形成されていることを特徴とする反射型スクリーンの製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載の反射型スクリーンの製造方法であって、
前記合成樹脂部材は、シート状またはロール状に形成されていることを特徴とする反射型スクリーンの製造方法。
【請求項8】
請求項5〜請求項7のいずれか一項に記載の反射型スクリーンの製造方法であって、
前記第1面に複数の凹部または複数の凸部を有するように前記基材を変形させる基材変形工程を備え、
前記転写工程は、前記基材変形工程と併せて行われることを特徴とする反射型スクリーンの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−128137(P2012−128137A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−278925(P2010−278925)
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】