反射型スクリーンの製造方法および反射型スクリーン
【課題】様々な入射角度の投写光に対応できる反射型スクリーンの製造方法と、反射型スクリーンの製造方法に係る装置の小型化と、蒸着源など反射膜材料の利用効率の向上ができる反射型スクリーンの製造方法を提供する。
【解決手段】投射光を反射する反射型スクリーンの製造方法であって、スクリーン基板表面に、有機珪素化合物を含み、投射光と異なる方向から入射する外光を吸収する吸収膜を形成する吸収膜形成工程と、吸収膜形成工程の前工程または後工程で行われ、スクリーン基板表面に複数の凸部または複数の凹部を形成する基板形成工程と、投射光の入射方向に対応した領域の吸収膜を除去する除去工程と、除去工程により、除去された吸収膜の領域に、投射光を反射する反射膜を形成する反射膜形成工程と、を備えている。
【解決手段】投射光を反射する反射型スクリーンの製造方法であって、スクリーン基板表面に、有機珪素化合物を含み、投射光と異なる方向から入射する外光を吸収する吸収膜を形成する吸収膜形成工程と、吸収膜形成工程の前工程または後工程で行われ、スクリーン基板表面に複数の凸部または複数の凹部を形成する基板形成工程と、投射光の入射方向に対応した領域の吸収膜を除去する除去工程と、除去工程により、除去された吸収膜の領域に、投射光を反射する反射膜を形成する反射膜形成工程と、を備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射型スクリーンの製造方法および反射型スクリーンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プロジェクターなどの投射型表示装置から射出された投射光を反射させて、画像を表示する反射型スクリーンが知られている。反射型スクリーンは、投射光を効率よく反射させるため、反射型スクリーンの観察面の一部に反射膜を形成した反射型スクリーンが知られている。
【0003】
特許文献1に記載の反射型スクリーンは、観察面に配置される複数の突起部が光透過性素材によって形成されている。また、スクリーン下地面が光吸収性素材によって形成され、不要光である外光が複数の突起部を透過し、スクリーン下地に吸収される。また、複数の突起部と、投射光の入射方向および外光の入射方向に対応して、前記複数の突起部の表面上の所定領域にそれぞれ形成される複数の反射層(反射膜)とを備える反射型スクリーンが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−47882号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の反射型スクリーンは、観察面に形成される反射膜の形成を、プロジェクターの投影位置から射出される投射光の入射角と略同じ角度の延長線上に、反射膜材料(蒸着源)を配置し、蒸散をさせる蒸着工程によって行われている。そのため、反射膜が形成されるスクリーンの表面から数メートル離れた位置に蒸着源を配置し、反射膜の形成が実施される。よって、大掛かりな装置で反射膜の形成を行うこととなる。また、前記投影位置から射出される投射光の入射角が異なる製品を製造する場合は、蒸着源の配置位置の変更など、蒸着装置の調整が必要で、多くの時間を必要とし、生産装置の稼動率の低下が考えられる。よって、蒸着源と、蒸着されるスクリーン基板との間隔が長くなり、蒸着対象のスクリーン以外に蒸着源が付着することによる蒸着源の利用効率の低下や、スクリーンへの反射膜の形成時間が長くなり、生産性の低下が考えられる。
【0006】
従って、様々な入射角度の投写光に対応できる反射型スクリーンの製造方法と、反射膜の形成工程にかかる装置の小型化と、蒸着源など反射膜材料の利用効率の向上と、が要望されていた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述した課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0008】
(適用例1)本適用例に係る反射型スクリーンの製造方法は、スクリーン基板表面に、有機珪素化合物を含み、投射光と異なる方向から入射する外光を吸収する吸収膜を形成する吸収膜形成工程と、吸収膜形成工程の前工程または後工程で行われ、スクリーン基板表面に複数の凸部または複数の凹部を形成する基板形成工程と、投射光の入射方向に対応した領域の吸収膜を除去する除去工程と、除去工程により、除去された吸収膜の領域に、投射光を反射する反射膜を形成する反射膜形成工程と、を備えることを特徴とする。
【0009】
このような反射型スクリーンの製造方法によれば、吸収膜形成工程で有機珪素化合物を含む吸収膜を形成することで、有機珪素化合物の分子構造中で、光を吸収する吸収膜を形成することができる。また、スクリーン基板上に形成した吸収膜によって、外光を吸収する吸収効率を高めることができる。また、吸収膜上に有機珪素化合物を含むことで、反射膜の形成を防止することができる。さらに、スクリーン基板上の凸部上または凹部上に形成されている吸収膜を除去工程で除去し、除去された吸収膜の領域に反射膜形成工程によって反射膜を形成することで、凸部上および凹部上の一部に反射膜を形成することができる。従って、反射型スクリーンに入射する投射光を反射し、投射光と異なる方向から入射する外光を吸収する反射型スクリーンの製造ができる。
【0010】
(適用例2)上記適用例に係る反射型スクリーンの製造方法において、投射光の入射方向に対応した領域の吸収膜を除去する除去工程を備えることが好ましい。
【0011】
このような反射型スクリーンの製造方法によれば、投射光の入射方向に対応した領域の吸収膜を除去することで、吸収膜を除去した領域のみ反射膜を形成することができる。
【0012】
(適用例3)上記適用例に係る反射型スクリーンの製造方法において、除去工程は、吸収膜に対して紫外線を照射させる紫外線照射工程を含むことが好ましい。
【0013】
このような反射型スクリーンの製造方法によれば、紫外線照射工程を備えスクリーン基板上に形成された吸収膜に紫外線を照射することで、吸収膜に接することなく吸収膜を酸化させ、分解し除去することができる。
【0014】
(適用例4)上記適用例に係る反射型スクリーンの製造方法において、紫外線は紫外線を照射する紫外線照射装置を用い、紫外線照射装置をスクリーン基板に相対させて設置し、固定されるスクリーン基板に対して拡散する紫外線を照射することが好ましい。
【0015】
このような反射型スクリーンの製造方法によれば、プロジェクターから射出された投射光と同様に拡散する紫外線を、スクリーン基板に相対させた位置に設置された紫外線照射装置からスクリーン基板に照射することができる。従って、プロジェクターの投射光の入射に対応する領域に紫外線を照射することができる。
【0016】
(適用例5)上記適用例に係る反射型スクリーンの製造方法において、紫外線照射工程は、紫外線を照射する紫外線照射装置を用い、紫外線装置をスクリーン基板に相対させて移動自在または回動自在に設置し、固定または移動自在に設置されるスクリーン基板に対して指向性を有する紫外線を照射することが好ましい。
【0017】
このような反射型スクリーンの製造方法によれば、紫外線照射工程は、スクリーン基板に相対させた位置に設置された紫外線照射装置から、回動自在または移動自在に指向性を有する紫外線をスクリーン基板に照射することができる。また、固定されているスクリーン基板への照射は、紫外線照射装置が移動自在または回動自在に紫外線を照射することで、投射光の入射角が異なるスクリーンの製造が出来る。また、移動するスクリーン基板への紫外線の照射は、移動自在または回動自在な紫外線照射装置から指向性を有する紫外線を照射することで、投射光の入射角が異なるスクリーンの製造を、いわゆるロール・ツー・ロールで実現できる。
【0018】
(適用例6)上記適用例に係る反射型スクリーン製造方法において、吸収膜を構成する有機珪素化合物は、フッ素を含んでいることが好ましい。
【0019】
このような反射型スクリーンの製造方法によれば、有機珪素化合物にフッ素を含むことで、フッ素を含まない有機珪素化合物に比べて、吸収膜上に反射膜を形成する反射膜材料の付着を防止することができる。
【0020】
(適用例7)上記適用例に係る反射型スクリーンの製造方法において、吸収膜の膜厚は、5nm以上、20nm以下に形成されていることが好ましい。
【0021】
このような反射型スクリーンの製造方法によれば、吸収膜は、5nm以上の膜厚を有して形成することで光吸収性を有する。また、吸収膜は、20nm以下の膜厚で形成することで、紫外線照射工程によって紫外線が照射された領域以外の吸収膜を酸化することなく吸収膜を除去することができる。
【0022】
(適用例8)上記適用例に係る反射型スクリーンの製造方法において、吸収膜を構成する有機珪素化合物の分子量は、800以上で構成されることが好ましい。
【0023】
このような反射型スクリーンの製造方法によれば、吸収膜を構成する有機珪素化合物の分子量を800以上とすることで、有機珪素化合物を構成する分子構造中の側鎖によって、反射膜を形成する反射膜材料の付着を防止することができる。従って、吸収膜の表面に反射膜が形成されることを防止できる。
【0024】
(適用例9)上記適用例に係る反射型スクリーンの製造方法において、吸収膜を構成する有機珪素化合物の分子量は、さらに2000以上で構成されることが好ましい。
【0025】
このような反射型スクリーンの製造方法によれば、吸収膜を構成する有機珪素化合物の分子量を2000以上とすることで、有機珪素化合物を構成する分子構造中の側鎖が伸長する。側鎖が伸長することで、反射膜を形成する反射膜材料の付着をさらに防止することができる。
【0026】
(適用例10)本適用例に係る反射型スクリーンは、適用例1から適用例9のいずれか一項に記載の反射型スクリーンの製造方法によって製造されたことを特徴とする。
【0027】
このような反射型スクリーンによれば、上述した方法によって反射型スクリーンを製造することで、反射型スクリーンに入射する投射光を反射し、投射光と異なる方向から入射する外光を、反射型スクリーン上に形成された吸収膜で吸収することができる反射型スクリーンが実現できる。
【0028】
(適用例11)本適用例に係る反射型スクリーンは、スクリーン基板表面に、投射光と異なる方向から入射する外光を吸収し、有機珪素化合物を含む吸収膜を備えていることを特徴とする。
【0029】
このような反射型スクリーンによれば、有機珪素化合物を含む吸収膜を備えることによって、吸収膜で外光を吸収し、また、吸収膜を透過した外光は、スクリーン基板で光を吸収することができる。従って、外光の光吸収率を向上させることができる。
【0030】
(適用例12)上記適用例に係る反射型スクリーンは、有機珪素化合物にフッ素を含んでいることが好ましい。
【0031】
このような反射型スクリーンによれば、有機珪素化合物にフッ素を含んでいることで、吸収膜上の表面張力が大きくなり、反射型スクリーンへの塵埃の付着を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】第一実施形態に係る反射型スクリーンが設置された状態を示す模式図。
【図2】反射型スクリーンの製造工程を示すフロー図。
【図3】反射型スクリーンの製造手順を説明する模式図。
【図4】反射型スクリーンの製造手順を説明する模式図。
【図5】反射型スクリーンの構造を示す拡大模式図。
【図6】第二実施形態に係る反射型スクリーンが設置された状態を示す模式図。
【図7】反射型スクリーンに対応して、紫外線が照射される領域を示す模式図。
【図8】第三実施形態に係る反射型スクリーンの製造手順を説明する模式図。
【図9】反射型スクリーンの製造手順を説明する模式図。
【図10】反射型スクリーンの構造を示す拡大模式図。
【図11】第四実施形態に係る紫外線照射工程を説明する模式図。
【図12】紫外線照射工程を説明する模式図。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、実施形態を図面に基づいて、反射型スクリーンの製造方法および反射型スクリーンについて説明する。また、以下に示す各図においては、各構成要素を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各構成要素の寸法や縮尺や比率を実際の構成要素とは適宜変更し記載している。なお、以下の説明において、XYZ直交座標系を設定し、このXYZ直交座標系を参照し、各部材の位置関係について説明する。鉛直面内における所定方向をX軸方向、鉛直面内においてX軸方向と直交する方向をY軸方向、X軸方向及びY軸方向のそれぞれに直交する方向をZ軸方向とする。また、重力方向を基準として、重力方向を下方向、逆方向を上方向とする。
【0034】
(第一実施形態)
図1は、第一実施形態に係る反射型スクリーンが設置された状態を示す模式図である。
【0035】
図1に示すように、反射型スクリーン100は、観察面101の中心点Cを通る法線NLに対して、垂直方向(Y軸方向)にずれた位置に配置されたプロジェクターPから、観察面101に向けて斜めに射出された投射光LPを、反射型スクリーン100の観察者側(Z軸方向)に反射するものである。反射型スクリーン100は、法線NLがZ軸と平行になるように配置されている。
【0036】
プロジェクターPは、設置位置を仮想光源位置PVとした場合、仮想光源位置PVと観察面101との距離Dを約900mmとし、仮想光源位置PVから反射型スクリーン100の中心点Cに向かう投影光LPと法線NLのなす角度θ1を約36°としたときに、反射型スクリーン100に垂直方向の寸法Hが約996mm、水平方向(図のX軸方向)の寸法Wが約1771mmの画像を投影可能に設置されている。本実施形態の場合、反射型スクリーン100は、80インチの投影画像を表示可能な大きさとなっている。
【0037】
次に、本実施形態の反射型スクリーン100の製造工程について説明する。
【0038】
図2は、反射型スクリーン100の製造工程を示すフロー図である。図2に示すように、反射型スクリーン100の製造工程は、スクリーン基板110を形成するスクリーン基板形成工程P100と、次に、スクリーン基板110上に光を吸収する吸収膜140を形成する吸収膜形成工程P110とを備える。次に、スクリーン基板110上に形成した吸収膜140の一部を除去する除去工程P120と、次に、スクリーン基板110上に投射光LPを反射する反射膜150を形成する反射膜形成工程P130とを備えている。
【0039】
前述の各工程には、図示および説明を省略するが、スクリーン基板110の搬送装置が備えられている。各工程では、ロール状に巻き取られているスクリーン基板110を搬送装置によって送り出し、各工程で加工された後に、スクリーン基板110を巻き取る。いわゆるロール・ツー・ロール方式で製造される。
【0040】
次に、反射型スクリーン100の製造方法について、工程順に説明をする。
図3は、基板形成工程P100と、吸収膜形成工程P110とを示す模式図であり、図3(a)は、スクリーン基板110に凸部120が形成された状態を示す模式図であり、図3(b)は、凸部120上に吸収膜140が形成された状態を示す模式図である。図3を参照して、基板形成工程P100と、吸収膜形成工程P110とを説明する。
【0041】
スクリーン基板形成工程P100は、図3(a)に示すように、スクリーン基板110の観察面101に複数の凸部120を形成する。凸部120は、光吸収性樹脂で形成されている。本実施形態の凸部120を観察面101に形成する方法は、観察面101に接着剤を塗付し、予め形成された凸部120を接着によって、観察面101へ貼り付けて形成する。なお、スクリーン基板110は、黒色に着色した光吸収性を有する塩化ビニル樹脂などでシート状に予め形成されている。
【0042】
吸収膜形成工程P110は、図3(b)に示すように、前述のスクリーン基板形成工程P100によって形成された凸部120上に吸収膜140を形成する。また、吸収膜140は、フッ素を含む有機珪素化合物を有して構成される。
【0043】
吸収膜140を形成する方法は、有機珪素化合物を含む溶液にスクリーン基板110を浸漬する。次に、スクリーン基板110を60℃から80℃に加熱し、吸収膜140を形成する。本実施形態では、加熱温度の条件を60℃から80℃としたが、有機珪素化合物の構成によって加熱温度を変更しても良い。また、吸収膜140の膜厚は20nmに設定する。また、有機珪素化合物と、スクリーン基板110との密着性が悪い場合は、スクリーン基板110の観察面101にプラズマ表面処理を施し、スクリーン基板110に付着している油分や、他の有機物質を除去し、密着性を高める前処理を行う。
【0044】
ところで、吸収膜140による光吸収は、吸収膜を構成する有機珪素化合物の分子構造が複雑であることによって、吸収膜140に入射した光を分子構造中で吸収する。吸収膜140は、膜厚が厚くなることで、有機珪素化合物の分子構造が複雑となって、光吸収性がさらに向上する。吸収膜140の膜厚は、発明者の実験によって5nm以上で光吸収性を有することが確認された。従って、本実施形態の反射型スクリーン100の製造方法では、吸収膜140の膜厚を5nm以上と、設定することができる。
【0045】
吸収膜140は、前述の通り膜厚が厚くなれば、さらに光吸収性が向上する。吸収膜140は、後述する除去工程P120において、紫外線Luが照射された領域の吸収膜140の除去を行う。このため、吸収膜140の膜厚が厚い場合、除去工程P120で紫外線Luの照射時間を長くしなければ、吸収膜140の除去が不十分となり、照射時間を長くすると、紫外線Luが照射されている領域以外の吸収膜140が酸化される。
【0046】
そこで、吸収膜140は光吸収性を有し、紫外線Luの照射されない領域の吸収膜140が酸化されないように対処する。ここで、発明者の実験によって、吸収膜140の膜厚を20nm以下とすることで、紫外線Luの照射されない領域の吸収膜140が酸化されることなく除去できることが確認された。よって、吸収膜140の膜厚は、20nm以下と設定することができる。従って、吸収膜140の膜厚は、5nm以上20nm以下と設定することができる。
【0047】
ところで、有機珪素化合物を含み形成される吸収膜140は、有機珪素化合物の分子量を大きくすることで分子の側鎖が伸長し、後述する反射膜形成工程P130において、反射膜150を形成する金属粒子M(原子)との結合力を抑制することができる。よって、反射膜150を形成する金属粒子Mが、吸収膜140の表面に留まることなく再蒸発し、吸収膜140上に、反射膜150が形成されることを防止できる。ここで、有機珪素化合物の分子量は、発明者の実験によって800以上、さらに2000以上とすることで、反射膜150を形成する金属粒子Mが、吸収膜140上に留まることなく再蒸発することの確認がされた。従って、本実施形態の吸収膜140を形成する有機珪素化合物の分子量は、800以上、さらに2000以上と設定することができる。
【0048】
また、有機珪素化合物は、フッ素を含むことによって、分子間引力(結合力)の弱いフッ素で吸収膜140上を覆うことができる。よって、後述する反射膜形成工程P130において、吸収膜140と、反射膜150を形成する金属粒子Mとの結合力をさらに抑制することができる。ここで、発明者の実験によって、有機珪素化合物に含むフッ素として、パーフルオロアルキル基、パーフルオロエーテル基を含むことで、吸収膜140と、金属粒子Mとの結合力を抑制することができることの確認がされた。従って、本実施形態の吸収膜140を形成する有機珪素化合物は、パーフルオロアルキル基、パーフルオロエーテル基などフッ素を含む構成とすることができる。
【0049】
図4は、除去工程P120と、反射膜形成工程P130とを示す模式図であり、図4(c)は、除去工程P120において、紫外線Luをスクリーン基板110へ照射した模式図であり、図4(d)は、吸収膜140が除去された状態を示す図である。また、図4(e)は、吸収膜140が除去された領域に、反射膜150が形成された状態を示す模式図である。図4を参照して、除去工程P120と反射膜形成工程P130とを説明する。
【0050】
除去工程P120は、紫外線照射工程P121(不図示)を備え、前述の吸収膜形成工程P110によって凸部120上に形成した吸収膜140に、紫外線Luを照射することで、吸収膜140の酸化と除去とを行う。紫外線照射工程P121は、図4(c)に示すように、スクリーン基板110の観察面101の法線NLに対して、垂直方向下方(Y軸下方向)にずれた仮想光源位置PVと、同じ位置に紫外線照射装置60を配置する。
【0051】
図4(d)に示すように、紫外線Luが照射された領域の吸収膜140は除去され、凸部120が露出し、反射膜形成領域122が形成される。紫外線Luと、凸部120との本影123となる部分は、紫外線Luが入射しないことから、吸収膜140は除去されずに残存する。
【0052】
紫外線Luの照射は、投射光LPの入射に対応した領域の吸収膜140を除去するため、紫外線Luのスクリーン基板110に対する入射角度θ2と、図1で示した仮想光源位置PVから射出する投影光LPの入射角度θ1とが等しくなるように紫外線照射装置60の配置を行い、紫外線Luを射出する。
【0053】
紫外線照射装置60から射出される紫外線Luは、プロジェクターPから射出された投射光LPと同様に、スクリーン基板110の大きさに合わせて、拡散して照射される。
【0054】
紫外線照射装置60は、図示および詳細な説明を省略するが、その筐体内に、紫外線ランプと、紫外線ランプを駆動する電源部と、紫外線を凝縮および拡散させるレンズを有する光学部とを備える。
【0055】
また、紫外線照射装置60から射出される紫外線Luの照射条件は、波長172nm、照射密度15mW/平方センチメートルである。ここで、紫外線Luの照射条件は、吸収膜140の膜厚などの膜質や照射距離によって、波長と照射密度とを適宜調整し、除去工程P120を行うと良い。
【0056】
反射膜形成工程P130は、図4(e)に示すように、吸収膜140が除去された領域に、投射光LPを反射することができる金属粒子Mで構成された反射膜150を形成する。本実施形態では反射膜材料として、アルミニウムを用いる。ここで、反射膜150は、アルミニウムに限らず、投射光LPを反射できる他の材料を用いても良い。
【0057】
ところで、反射膜形成工程P130によって、反射膜150の形成を行うスクリーン基板110上には、外光を吸収するために吸収膜140が残存している。吸収膜140は、前述の通り、吸収膜140上に、金属粒子Mが反射膜形成工程P130によって付着し、形成されることを防止することができる。よって、反射膜150の形成は、反射膜150を形成する金属粒子M(原子)の放散方向に関係なく、金属粒子Mで構成される反射膜150を、反射膜形成領域122に形成することができる。
【0058】
ここで、反射膜形成工程P130による反射膜150の形成は、スパッタ法を用いてアルミニウムの膜を形成する。本実施形態では、対向ターゲット式スパッタ法を用いて、反射型スクリーン100の観察者側(Z軸方向)から反射膜150を構成するアルミニウムの膜を形成する。
【0059】
スパッタ法によって反射膜150を形成する金属粒子Mは、蒸着法によって反射膜150を形成する金属粒子Mと比べて、数十倍から数百倍の運動エネルギーを有する。本実施形態で用いる対向ターゲット式スパッタ法は、反射膜材料となる金属(ターゲット)から飛散する金属粒子Mの運動エネルギーが小さいため、金属粒子Mがスクリーン基板110上へ衝突することによる損傷を抑制できる。また、金属粒子Mによるスクリーン基板110上の損傷が少ないため、損傷によって生じるスクリーン基板110上で金属粒子Mの凝集を抑制できる。
【0060】
図5は、本実施形態の製造方法を用いて製造した反射型スクリーン100を拡大し、模式的に示す断面図である。図5に示すように、観察面101上には、光吸収性を有する略半球状の凸部120が複数形成されている。凸部120上には、投射光LPを観察者側に反射する反射膜150と、観察に不要な外光Loを吸収する吸収膜140とが備えられている。また、投射光LPは、凸部120の本影123となる部分、すなわち、吸収膜140には殆ど入射しない。従って、プロジェクターPから射出された投射光LPは、反射膜150によって観察者側(Z軸方向)に法線NLと平行して反射される。また、観察に不要な外光Loは、吸収膜140によって吸収し、吸収膜140を透過した外光Loは、凸部120を形成する光吸収性を有する樹脂と、スクリーン基板110とによって吸収される。
【0061】
上述のように、投射光LPを反射する反射膜150と、外光Loを吸収する吸収膜140と、が形成された凸部120を観察面101の略全面に形成し、反射型スクリーン100を構成している。
【0062】
上述した第一実施形態によれば、以下の効果が得られる。
本実施形態の反射型スクリーン100の製造方法は、スクリーン基板110上に形成された複数の凸部120に、有機珪素化合物の分子構造中で光を吸収する吸収膜140と、投射光LPを反射する反射膜150と、を形成することができる。また、有機珪素化合物で構成される吸収膜140は、反射膜150の付着を防止することができる。よって、反射膜形成工程P130では、除去工程P120によって吸収膜140の一部が除去された領域に、反射膜150を形成することができる。従って、反射膜形成工程P130は、反射膜材料をスクリーン基板110の近い位置に配置し、金属粒子Mの放散方向に関係なく、投射光LPの入射に対応した領域に反射膜150の形成ができる。
【0063】
また、スクリーン基板の近い位置に反射膜材料を設置することで、反射膜を形成する金属粒子Mの飛散(放散)距離が短くなる。よって、反射膜形成の時間短縮と、スクリーン基板以外への金属粒子Mの放散の抑制とができる。従って、反射膜形成工程P130を実行する装置の小型化と、反射膜形成工程P130の時間短縮化と、蒸着源など反射膜材料の利用効率の向上と、が実現できる。
【0064】
本実施形態の反射型スクリーン100の製造方法は、紫外線照射工程P121を備え、紫外線Luをスクリーン基板110上に形成された吸収膜140に照射することで、吸収膜140に接することなく吸収膜140を酸化させ、分解し除去することができる。よって、紫外線Luを照射し、吸収膜140が除去された領域に反射膜形成工程P130において反射膜150を選択的に形成することができる。また、従来、反射膜形成工程P130では、スクリーン基板110上にマスク版を配置し、金属粒子Mが付着する領域を選択し、反射膜150を形成していたがマスク版が不要となる。従って、反射膜150を形成する領域が異なっても、紫外線Luの照射領域を変更することで、反射膜150を形成する領域を容易に変更できる。
【0065】
本実施形態の反射型スクリーン100の製造方法は、吸収膜を5nm以上、20nm以下の膜厚で形成することで光吸収性を有し、紫外線照射工程P121において紫外線Luを照射することで、紫外線Luが照射された領域以外の吸収膜140を酸化させることなく除去することができる。
【0066】
本実施形態の反射型スクリーン100の製造方法は、スクリーン基板110に相対させた位置に紫外線照射装置60を設置し、投射光LPと同様に拡散する紫外線Luをスクリーン基板110に照射することで、投射光LPに対応した領域に紫外線Luを照射することができる。従って、紫外線Luが照射された領域の吸収膜140が除去され、外光Loなどを吸収する吸収膜140を残置し、反射膜形成工程P130によって、投射光LPの入射に対応した領域に反射膜150を形成することができる。
【0067】
本実施形態の反射型スクリーン100の製造方法は、吸収膜140を構成する有機珪素化合物にフッ素を含むことで、反射膜150を構成する反射膜材料の付着を防止することができる。また、有機珪素化合物の分子量を800以上、さらに2000以上とすることで、反射膜150を構成する反射膜材料の付着をさらに防止することができる。
【0068】
本実施形態の反射型スクリーン製造方法は、フッ素を含む有機珪素化合物で吸収膜140を形成することで、吸収膜140上への塵埃付着を低減できる。また、吸収膜140は、塵埃で妨げられることなく外光Loを吸収し、光吸収率を向上させることができる。従って、コントラストの高い反射型スクリーンが実現できる。
【0069】
(第二実施形態)
本実施形態は、プロジェクターPの投射光LPの射出位置が第一実施形態と異なる仕様の反射型スクリーンの製造形態で、反射型スクリーン100の観察面中心点Cの観察者側から投射光LPを射出する場合を説明する。
【0070】
図6は、本実施形態に係る反射型スクリーン100が設置された状態を示す模式図である。
【0071】
図6に示すように、本実施形態で製造する反射型スクリーン100は、観察面101の中心点Cを通る法線NLに対して観察者側(Z軸方向)にずれた位置に配置されたプロジェクターPから、観察面101に向けて投射光LPを射出する。投射光LPは、反射型スクリーン100の観察者側(Z軸方向)に反射される。ここで、この位置を仮想光源PVとする。また、反射型スクリーン100は、法線NLがZ軸と平行になるように配置されている。従って、紫外線照射工程P121を行う紫外線照射装置60を設置する位置が、前述の第一実施形態の反射型スクリーンの製造方法と異なっている。その他の構成および工程は、第一実施形態と同様であるため相違点を説明し、同様の工程および構成には同様の符号を付して説明は省略または簡略とする。
【0072】
図7は、本実施形態の反射型スクリーン100に対応して紫外線Luが照射される領域を示す模式図である。図7を参照して、本実施形態の紫外線照射工程P121について説明する。
【0073】
紫外線照射工程P121は、図7に示すように、プロジェクターPの仮想光源PV位置に紫外線照射装置60を設置し、プロジェクターPから射出された投射光LPと同様に、スクリーン基板110の大きさに合わせて、紫外線Luを拡散して照射を行う。紫外線照射装置60は、投射光LPと同様の入射角度で紫外線Luを射出し照射を行う。
【0074】
紫外線照射工程P121は、第一実施形態と同様に、スクリーン基板110上の凸部120上に形成された吸収膜140に紫外線Luを照射し、紫外線Luによって吸収膜140が酸化し除去され、反射膜形成領域122が形成される。ここで、紫外線Luが照射される領域は、前述の観察者側から射出された投射光LPが投写される領域と同じである。
【0075】
その他の反射型スクリーン100の製造方法および反射型スクリーン100は、第一実施形態と同様である。
【0076】
上述した第二実施形態によれば、以下の効果が得られる。
【0077】
本実施形態の反射型スクリーン100の製造方法は、紫外線照射装置60の設置位置を、投射光LPの射出位置に応じて移動し、変更することで様々な投射光LPの入射に対応した反射型スクリーン100の製造ができる。従って、投射光LPを反射する反射膜150を形成する領域が異なっても、反射膜形成工程P130に係る装置の調整が不要で、生産装置の稼働率を高めることができる。
【0078】
(第三実施形態)
本実施形態は、第一実施形態および第二実施形態で説明をした基板形成工程P100で、スクリーン基板110上に凸部120を形成することに変えて、凹部220を形成する。凹部220の内壁面221に、吸収膜140および反射膜150を備える反射型スクリーン100の製造方法と、反射型スクリーン100との形態である。この点が、第一実施形態および第二実施形態と異なっている点である。その他の工程および構成は、第一実施形態および第二実施形態と同様であるため相違点を説明し、同様の工程および構成には同様の符号を付して説明は省略または簡略とする。
【0079】
図8は、基板形成工程P100と、吸収膜形成工程P110とを示す模式図であり、図8(a)は、スクリーン基板110に凹部220が形成された状態を示す模式図である。図8(b)は、凹部220の内壁面221上に吸収膜140が形成された状態を示す模式図である。図8を参照して、基板形成工程P100と吸収膜形成工程P110とを説明する。
【0080】
基板形成工程P100は、第一実施形態の凸部120を接着し形成を行う方法に変えて凹部220を、スクリーン基板110を変形させることで形成する。図8(a)に示すようにスクリーン基板110の観察面101に複数の凹部220が形成されている。凹部220を形成する方法は、形成させる形状とは逆形状に形成された金型を加熱し、スクリーン基板110に押し付けて形成する転写装置(不図示)を用いて実施される。
【0081】
転写装置は、形成させる形状とは逆形状に形成された金型を加熱しながらスクリーン基板110を、観察面101と、その反対面との両面から高圧力で押し付け、スクリーン基板110を金型の形状に合わせて変形させて、必要な形状を形成させる装置である。
【0082】
吸収膜形成工程P110は、図8(b)に示すように、前述のスクリーン基板形成工程P100によって、観察面101に形成された凹部220の内壁面221上に、吸収膜140を形成する。 吸収膜140の形成は第一実施形態と同様に、スクリーン基板110を、有機珪素化合物を含んだ溶液に浸漬し形成する。上述した以外の吸収膜形成工程P110は、第一実施形態と同様である。
【0083】
図9は、除去工程P120と、反射膜形成工程P130とを示す模式図であり、図9(c)は、除去工程P120で、紫外線Luをスクリーン基板110へ照射した模式図であり、図9(d)は、吸収膜140が除去された状態を示す図である。また、図9(e)は、吸収膜140が除去された領域に、反射膜150が形成された状態を示す模式図である。図9を参照して、除去工程P120と、反射膜形成工程P130とを説明する。
【0084】
除去工程P120は、第一実施形態同様に紫外線照射工程P121を備え、図9(c)に示すように、スクリーン基板110の観察面101の法線NLに対して、垂直方向下方(Y軸下方向)にずれた仮想光源位置PVと、同じ位置に紫外線照射装置60を配置する。
図9(d)に示すように、紫外線Luが照射された領域の吸収膜140は除去され、凹部220の内壁面221が露出し、反射膜形成領域222が形成される。紫外線Luと凹部220との本影223となる部分は、紫外線Luが入射しないことから、吸収膜140は除去されずに残存する。
【0085】
紫外線Luの照射は、投射光LPの入射に対応した領域の吸収膜140を除去するため、スクリーン基板110に対する入射角度θ3が、図1で示した、仮想光源位置PVから射出する投影光LPの入射角度θ1と等しくなるように、紫外線照射装置60を配置し紫外線Luを射出する。上述した以外の除去工程P120の内容は、第一実施形態と同様である。
【0086】
反射膜形成工程P130は、図9(e)に示すように、吸収膜140が除去された反射膜形成領域222に、投射光LPを反射することができる金属粒子Mで構成された反射膜150を形成する。上述した以外の反射膜形成工程P130は、第一実施形態と同様である。
【0087】
図10は、本実施形態の製造方法を用いて製造した反射型スクリーン100を拡大し模式的に示す断面図である。図10に示すように、観察面101には、光吸収性を有する略半球状の凹部220が複数形成されている。凹部220上には、投射光LPを観察者側反射する反射膜150と、観察に不要な外光Loを吸収する吸収膜140とが備えられている。また、投射光LPは、凹部220の本影223となる部分、すなわち、吸収膜140には殆ど入射しない。従って、プロジェクターPから射出された投射光LPは、反射膜150によって観察者側(Z軸方向)に法線NLと平行し反射される。また、観察に不要な外光Loは、吸収膜140によって吸収し、吸収膜140を透過した外光Loは、スクリーン基板110によって吸収される。
【0088】
このように、投射光LPを反射する反射膜150と、外光Loを吸収する吸収膜140とが形成された凹部220を観察面101の略全面に形成し、反射型スクリーン100を構成している。
【0089】
その他の反射型スクリーン100の製造方法および反射型スクリーン100は、第一実施形態と第二実施形態と同様である。
【0090】
上述した第三実施形態によれば、以下の効果が得られる。
本実施形態の反射型スクリーン100の製造方法によれば、スクリーン基板110を変形させて凹部220を形成することで、第一実施形態で説明をした基板形成工程P100に比べて、予め凸部120を形成する工程と、凸部120を接着する工程とを省略し、基板形成工程P100の時間短縮ができる。従って、生産効率の高い反射型スクリーン100の製造方法が実現できる。
【0091】
(第四実施形態)
本実施形態は、紫外線照射工程P121を実行する紫外線照射装置60を、スクリーン基板110に相対する観察者側(Z軸方向)に移動自在または回動自在に設置し、指向性を有する紫外線Luの照射を行う。また、紫外線Luが照射されるスクリーン基板110は、固定または移動自在に設置されている形態である。
【0092】
ここで、紫外線照射装置60は、図示と詳細な説明を省略するが、第一実施形態の紫外線照射装置60の構成に加えて、射出位置の移動および射出角度の回動を自在に行う駆動部と、駆動部の制御を行う制御部とを備える。制御部は、除去工程P120によって、吸収膜140の除去を行う領域が設定されている。紫外線照射装置60は、この設定に基づき駆動部によって、移動自在または回動自在に動作し、紫外線Luを射出し照射する。
【0093】
上述の点が、前述の第一実施形態と、第三実施形態との反射型スクリーン100の製造方法と異なっている。その他の構成および工程は、第一実施形態と、第三実施形態と同様であるため相違点を説明し、同様の工程および構成には同様の符号を付して説明は省略または簡略とする。
【0094】
図11と、図12とは、本実施形態に係る除去工程P120の紫外線照射工程P121を説明する模式図であり、図11(a)と、図11(b)とは、固定されたスクリーン基板110に、回動自在な紫外線照射装置60から紫外線Luを照射した状態を示す模式図である。また、図12(a)から図12(c)は、移動自在なスクリーン基板110に、移動自在または回動自在な紫外線照射装置60から、紫外線Luを照射した状態を示す模式図である。図11と、図12とを参照して、本実施形態の紫外線照射工程P121を説明する。
【0095】
先ず、固定されたスクリーン基板110に、回動自在な紫外線照射装置60を用いて、紫外線照射工程P121を実施する場合を図11を用いて説明する。
図11(a)に示すY軸方向の任意の点(本実施形態では、A点とする。)の吸収膜140の除去を行うために、観察者側(Z軸方向)に設置した紫外線照射装置60を回動させ、A点における投射光LPの入射と同様の入射角度で紫外線Luを射出し照射を行う。また、図11(b)に示すY軸方向の任意の点(本実施形態では、B点とする。)の吸収膜140の除去を行う場合、A点と同様に、紫外線照射装置60を回動させ、B点における投射光LPの入射と同様の入射角度で紫外線Luを射出し照射を行う。このように、スクリーン基板110に形成された凸部120上または凹部220(不図示)上に形成された吸収膜140は、紫外線照射装置60を回動させ、順次紫外線Luを照射し除去を行う。
【0096】
次に、固定されたスクリーン基板110に、移動自在または回動自在な紫外線照射装置60を用いて、紫外線照射工程P121を実施する場合を説明する。
固定されたスクリーン基板110に形成されている吸収膜140の除去を行うために、紫外線照射装置60をスクリーン基板110に相対させて移動し、回動をさせながら、指向性を有する紫外線Luの照射を行う。紫外線照射装置60は、スクリーン基板110の観察者側(Z軸方向)に設置され、吸収膜140の除去を行う領域における投射光LPの入射と同様の入射角度で紫外線Luの射出を行う。このように、スクリーン基板110に形成された凸部120上または凹部220(不図示)上に形成された吸収膜140は、紫外線照射装置60を移動し、回動をさせ順次紫外線Luを照射し除去を行う。
【0097】
次に、移動自在なスクリーン基板110に、移動自在または回動自在な紫外線照射装置60を用いて、紫外線照射工程P121を実施する場合を図12を用いて説明する。
図12(a)から図12(c)に示すY軸方向の任意の点(本実施形態では、C点からE点とする。)の吸収膜140の除去を行うために、観察者側(Z軸方向)に設置した紫外線照射装置60を回動または移動させ、紫外線Luを射出し照射を行う。このように、紫外線照射装置60は、スクリーン基板110の移動に対応して、吸収膜140の除去を行う任意の点における投射光LPの入射角度と、同様の入射角度で紫外線Luを射出し照射を行う。
【0098】
ここで、紫外線照射工程P121は、紫外線照射装置60を1台で行うことを説明したが、複数台の紫外線照射装置60を組み合わせて紫外線Luの照射を行ってもよい。
【0099】
その他の反射型スクリーンの製造方法および反射型スクリーンの構成は、第一実施形態および第三実施形態と同様である。
【0100】
上述した第四実施形態によれば、以下の効果が得られる。
本実施形態の反射型スクリーンの製造方法によれば、投射光LPの入射角が異なるスクリーンの製造を、紫外線照射装置60を移動または回動させ、紫外線Luの照射を行うことで、投射光LPと同様の紫外線Luの入射角度を短距離で再現することができる。従って、紫外線照射工程P121を行う装置の小型化ができる。また、紫外線照射装置60が移動または回動することで、様々な投影位置に対応した反射膜150を形成する領域を形成することができる。
【0101】
本実施形態の反射型スクリーンの製造方法によれば、スクリーン基板110の移動と、吸収膜140を除去する領域に対応して、紫外線照射装置60を移動または回動して紫外線Luを射出し照射することで、スクリーン基板110の任意の領域に形成されている吸収膜140の除去する領域を自在に変化させることができる。従って、投射光LPの投射位置が異なる反射型スクリーン100をロール・ツー・ロールで連続して製造することができる。また、スクリーン基板110の領域によって、吸収膜140の除去を行う領域を変化させることで、反射型スクリーン100の反射効率を改善することができる。
【0102】
なお、上述した実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変更や改良等を加えて実施することが可能である。変形例を以下に述べる。
【0103】
(変形例1)スクリーン基板形成工程P100に複数の凸部120または凹部220を形成する方法として、光吸収性樹脂をインクジェットヘッドによって吐出し凸部120を形成する方法、を反射型スクリーン100の製造に適用することができる。
【0104】
(変形例2)スクリーン基板形成工程P100に複数の凹部220を形成する方法として、スクリーン基板100をマスクパターンで覆い、ウエットエッチング法を用い、等方性エッチングによって凹部220を形成する方法を反射型スクリーン100の製造に適用することができる。
【0105】
(変形例3)吸収膜形成工程P110で吸収膜140を形成する方法として、フッ素を含む有機珪素化合物を膜形成材料とし、化学気相成長法を用いるCVD(Chemical−Vapor−Deposition)法で吸収膜140を形成する方法や、スプレー噴射などによって塗付し吸収膜140を形成するスプレー法を反射型スクリーン100の製造に適用することができる。
【0106】
(変形例4)反射膜形成工程P130で形成する反射膜150を形成する方法として、第一実施形態で説明した対向ターゲット式スパッタ法に限らず、他のスパッタ法や、蒸着法などの物理気相成長法を用いるPVD(Physical−Vapor−Deposition)法で形成する方法。または、化学気相成長法を用いるCVD(Chemical−Vapor−Deposition)法で反射膜150を形成する方法を反射型スクリーン100の製造に適用することができる。
【符号の説明】
【0107】
60…紫外線照射装置、100…反射型スクリーン、101…観察面、110…スクリーン基板、120…凸部、140…吸収膜、150…反射膜、220…凹部、NL…法線、LP…投射光、Lu…紫外線、PV…仮想光源、P100…スクリーン基板形成工程、P110…吸収膜形成工程、P120…除去工程、P130…反射膜形成工程。
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射型スクリーンの製造方法および反射型スクリーンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プロジェクターなどの投射型表示装置から射出された投射光を反射させて、画像を表示する反射型スクリーンが知られている。反射型スクリーンは、投射光を効率よく反射させるため、反射型スクリーンの観察面の一部に反射膜を形成した反射型スクリーンが知られている。
【0003】
特許文献1に記載の反射型スクリーンは、観察面に配置される複数の突起部が光透過性素材によって形成されている。また、スクリーン下地面が光吸収性素材によって形成され、不要光である外光が複数の突起部を透過し、スクリーン下地に吸収される。また、複数の突起部と、投射光の入射方向および外光の入射方向に対応して、前記複数の突起部の表面上の所定領域にそれぞれ形成される複数の反射層(反射膜)とを備える反射型スクリーンが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−47882号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の反射型スクリーンは、観察面に形成される反射膜の形成を、プロジェクターの投影位置から射出される投射光の入射角と略同じ角度の延長線上に、反射膜材料(蒸着源)を配置し、蒸散をさせる蒸着工程によって行われている。そのため、反射膜が形成されるスクリーンの表面から数メートル離れた位置に蒸着源を配置し、反射膜の形成が実施される。よって、大掛かりな装置で反射膜の形成を行うこととなる。また、前記投影位置から射出される投射光の入射角が異なる製品を製造する場合は、蒸着源の配置位置の変更など、蒸着装置の調整が必要で、多くの時間を必要とし、生産装置の稼動率の低下が考えられる。よって、蒸着源と、蒸着されるスクリーン基板との間隔が長くなり、蒸着対象のスクリーン以外に蒸着源が付着することによる蒸着源の利用効率の低下や、スクリーンへの反射膜の形成時間が長くなり、生産性の低下が考えられる。
【0006】
従って、様々な入射角度の投写光に対応できる反射型スクリーンの製造方法と、反射膜の形成工程にかかる装置の小型化と、蒸着源など反射膜材料の利用効率の向上と、が要望されていた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述した課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0008】
(適用例1)本適用例に係る反射型スクリーンの製造方法は、スクリーン基板表面に、有機珪素化合物を含み、投射光と異なる方向から入射する外光を吸収する吸収膜を形成する吸収膜形成工程と、吸収膜形成工程の前工程または後工程で行われ、スクリーン基板表面に複数の凸部または複数の凹部を形成する基板形成工程と、投射光の入射方向に対応した領域の吸収膜を除去する除去工程と、除去工程により、除去された吸収膜の領域に、投射光を反射する反射膜を形成する反射膜形成工程と、を備えることを特徴とする。
【0009】
このような反射型スクリーンの製造方法によれば、吸収膜形成工程で有機珪素化合物を含む吸収膜を形成することで、有機珪素化合物の分子構造中で、光を吸収する吸収膜を形成することができる。また、スクリーン基板上に形成した吸収膜によって、外光を吸収する吸収効率を高めることができる。また、吸収膜上に有機珪素化合物を含むことで、反射膜の形成を防止することができる。さらに、スクリーン基板上の凸部上または凹部上に形成されている吸収膜を除去工程で除去し、除去された吸収膜の領域に反射膜形成工程によって反射膜を形成することで、凸部上および凹部上の一部に反射膜を形成することができる。従って、反射型スクリーンに入射する投射光を反射し、投射光と異なる方向から入射する外光を吸収する反射型スクリーンの製造ができる。
【0010】
(適用例2)上記適用例に係る反射型スクリーンの製造方法において、投射光の入射方向に対応した領域の吸収膜を除去する除去工程を備えることが好ましい。
【0011】
このような反射型スクリーンの製造方法によれば、投射光の入射方向に対応した領域の吸収膜を除去することで、吸収膜を除去した領域のみ反射膜を形成することができる。
【0012】
(適用例3)上記適用例に係る反射型スクリーンの製造方法において、除去工程は、吸収膜に対して紫外線を照射させる紫外線照射工程を含むことが好ましい。
【0013】
このような反射型スクリーンの製造方法によれば、紫外線照射工程を備えスクリーン基板上に形成された吸収膜に紫外線を照射することで、吸収膜に接することなく吸収膜を酸化させ、分解し除去することができる。
【0014】
(適用例4)上記適用例に係る反射型スクリーンの製造方法において、紫外線は紫外線を照射する紫外線照射装置を用い、紫外線照射装置をスクリーン基板に相対させて設置し、固定されるスクリーン基板に対して拡散する紫外線を照射することが好ましい。
【0015】
このような反射型スクリーンの製造方法によれば、プロジェクターから射出された投射光と同様に拡散する紫外線を、スクリーン基板に相対させた位置に設置された紫外線照射装置からスクリーン基板に照射することができる。従って、プロジェクターの投射光の入射に対応する領域に紫外線を照射することができる。
【0016】
(適用例5)上記適用例に係る反射型スクリーンの製造方法において、紫外線照射工程は、紫外線を照射する紫外線照射装置を用い、紫外線装置をスクリーン基板に相対させて移動自在または回動自在に設置し、固定または移動自在に設置されるスクリーン基板に対して指向性を有する紫外線を照射することが好ましい。
【0017】
このような反射型スクリーンの製造方法によれば、紫外線照射工程は、スクリーン基板に相対させた位置に設置された紫外線照射装置から、回動自在または移動自在に指向性を有する紫外線をスクリーン基板に照射することができる。また、固定されているスクリーン基板への照射は、紫外線照射装置が移動自在または回動自在に紫外線を照射することで、投射光の入射角が異なるスクリーンの製造が出来る。また、移動するスクリーン基板への紫外線の照射は、移動自在または回動自在な紫外線照射装置から指向性を有する紫外線を照射することで、投射光の入射角が異なるスクリーンの製造を、いわゆるロール・ツー・ロールで実現できる。
【0018】
(適用例6)上記適用例に係る反射型スクリーン製造方法において、吸収膜を構成する有機珪素化合物は、フッ素を含んでいることが好ましい。
【0019】
このような反射型スクリーンの製造方法によれば、有機珪素化合物にフッ素を含むことで、フッ素を含まない有機珪素化合物に比べて、吸収膜上に反射膜を形成する反射膜材料の付着を防止することができる。
【0020】
(適用例7)上記適用例に係る反射型スクリーンの製造方法において、吸収膜の膜厚は、5nm以上、20nm以下に形成されていることが好ましい。
【0021】
このような反射型スクリーンの製造方法によれば、吸収膜は、5nm以上の膜厚を有して形成することで光吸収性を有する。また、吸収膜は、20nm以下の膜厚で形成することで、紫外線照射工程によって紫外線が照射された領域以外の吸収膜を酸化することなく吸収膜を除去することができる。
【0022】
(適用例8)上記適用例に係る反射型スクリーンの製造方法において、吸収膜を構成する有機珪素化合物の分子量は、800以上で構成されることが好ましい。
【0023】
このような反射型スクリーンの製造方法によれば、吸収膜を構成する有機珪素化合物の分子量を800以上とすることで、有機珪素化合物を構成する分子構造中の側鎖によって、反射膜を形成する反射膜材料の付着を防止することができる。従って、吸収膜の表面に反射膜が形成されることを防止できる。
【0024】
(適用例9)上記適用例に係る反射型スクリーンの製造方法において、吸収膜を構成する有機珪素化合物の分子量は、さらに2000以上で構成されることが好ましい。
【0025】
このような反射型スクリーンの製造方法によれば、吸収膜を構成する有機珪素化合物の分子量を2000以上とすることで、有機珪素化合物を構成する分子構造中の側鎖が伸長する。側鎖が伸長することで、反射膜を形成する反射膜材料の付着をさらに防止することができる。
【0026】
(適用例10)本適用例に係る反射型スクリーンは、適用例1から適用例9のいずれか一項に記載の反射型スクリーンの製造方法によって製造されたことを特徴とする。
【0027】
このような反射型スクリーンによれば、上述した方法によって反射型スクリーンを製造することで、反射型スクリーンに入射する投射光を反射し、投射光と異なる方向から入射する外光を、反射型スクリーン上に形成された吸収膜で吸収することができる反射型スクリーンが実現できる。
【0028】
(適用例11)本適用例に係る反射型スクリーンは、スクリーン基板表面に、投射光と異なる方向から入射する外光を吸収し、有機珪素化合物を含む吸収膜を備えていることを特徴とする。
【0029】
このような反射型スクリーンによれば、有機珪素化合物を含む吸収膜を備えることによって、吸収膜で外光を吸収し、また、吸収膜を透過した外光は、スクリーン基板で光を吸収することができる。従って、外光の光吸収率を向上させることができる。
【0030】
(適用例12)上記適用例に係る反射型スクリーンは、有機珪素化合物にフッ素を含んでいることが好ましい。
【0031】
このような反射型スクリーンによれば、有機珪素化合物にフッ素を含んでいることで、吸収膜上の表面張力が大きくなり、反射型スクリーンへの塵埃の付着を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】第一実施形態に係る反射型スクリーンが設置された状態を示す模式図。
【図2】反射型スクリーンの製造工程を示すフロー図。
【図3】反射型スクリーンの製造手順を説明する模式図。
【図4】反射型スクリーンの製造手順を説明する模式図。
【図5】反射型スクリーンの構造を示す拡大模式図。
【図6】第二実施形態に係る反射型スクリーンが設置された状態を示す模式図。
【図7】反射型スクリーンに対応して、紫外線が照射される領域を示す模式図。
【図8】第三実施形態に係る反射型スクリーンの製造手順を説明する模式図。
【図9】反射型スクリーンの製造手順を説明する模式図。
【図10】反射型スクリーンの構造を示す拡大模式図。
【図11】第四実施形態に係る紫外線照射工程を説明する模式図。
【図12】紫外線照射工程を説明する模式図。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、実施形態を図面に基づいて、反射型スクリーンの製造方法および反射型スクリーンについて説明する。また、以下に示す各図においては、各構成要素を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各構成要素の寸法や縮尺や比率を実際の構成要素とは適宜変更し記載している。なお、以下の説明において、XYZ直交座標系を設定し、このXYZ直交座標系を参照し、各部材の位置関係について説明する。鉛直面内における所定方向をX軸方向、鉛直面内においてX軸方向と直交する方向をY軸方向、X軸方向及びY軸方向のそれぞれに直交する方向をZ軸方向とする。また、重力方向を基準として、重力方向を下方向、逆方向を上方向とする。
【0034】
(第一実施形態)
図1は、第一実施形態に係る反射型スクリーンが設置された状態を示す模式図である。
【0035】
図1に示すように、反射型スクリーン100は、観察面101の中心点Cを通る法線NLに対して、垂直方向(Y軸方向)にずれた位置に配置されたプロジェクターPから、観察面101に向けて斜めに射出された投射光LPを、反射型スクリーン100の観察者側(Z軸方向)に反射するものである。反射型スクリーン100は、法線NLがZ軸と平行になるように配置されている。
【0036】
プロジェクターPは、設置位置を仮想光源位置PVとした場合、仮想光源位置PVと観察面101との距離Dを約900mmとし、仮想光源位置PVから反射型スクリーン100の中心点Cに向かう投影光LPと法線NLのなす角度θ1を約36°としたときに、反射型スクリーン100に垂直方向の寸法Hが約996mm、水平方向(図のX軸方向)の寸法Wが約1771mmの画像を投影可能に設置されている。本実施形態の場合、反射型スクリーン100は、80インチの投影画像を表示可能な大きさとなっている。
【0037】
次に、本実施形態の反射型スクリーン100の製造工程について説明する。
【0038】
図2は、反射型スクリーン100の製造工程を示すフロー図である。図2に示すように、反射型スクリーン100の製造工程は、スクリーン基板110を形成するスクリーン基板形成工程P100と、次に、スクリーン基板110上に光を吸収する吸収膜140を形成する吸収膜形成工程P110とを備える。次に、スクリーン基板110上に形成した吸収膜140の一部を除去する除去工程P120と、次に、スクリーン基板110上に投射光LPを反射する反射膜150を形成する反射膜形成工程P130とを備えている。
【0039】
前述の各工程には、図示および説明を省略するが、スクリーン基板110の搬送装置が備えられている。各工程では、ロール状に巻き取られているスクリーン基板110を搬送装置によって送り出し、各工程で加工された後に、スクリーン基板110を巻き取る。いわゆるロール・ツー・ロール方式で製造される。
【0040】
次に、反射型スクリーン100の製造方法について、工程順に説明をする。
図3は、基板形成工程P100と、吸収膜形成工程P110とを示す模式図であり、図3(a)は、スクリーン基板110に凸部120が形成された状態を示す模式図であり、図3(b)は、凸部120上に吸収膜140が形成された状態を示す模式図である。図3を参照して、基板形成工程P100と、吸収膜形成工程P110とを説明する。
【0041】
スクリーン基板形成工程P100は、図3(a)に示すように、スクリーン基板110の観察面101に複数の凸部120を形成する。凸部120は、光吸収性樹脂で形成されている。本実施形態の凸部120を観察面101に形成する方法は、観察面101に接着剤を塗付し、予め形成された凸部120を接着によって、観察面101へ貼り付けて形成する。なお、スクリーン基板110は、黒色に着色した光吸収性を有する塩化ビニル樹脂などでシート状に予め形成されている。
【0042】
吸収膜形成工程P110は、図3(b)に示すように、前述のスクリーン基板形成工程P100によって形成された凸部120上に吸収膜140を形成する。また、吸収膜140は、フッ素を含む有機珪素化合物を有して構成される。
【0043】
吸収膜140を形成する方法は、有機珪素化合物を含む溶液にスクリーン基板110を浸漬する。次に、スクリーン基板110を60℃から80℃に加熱し、吸収膜140を形成する。本実施形態では、加熱温度の条件を60℃から80℃としたが、有機珪素化合物の構成によって加熱温度を変更しても良い。また、吸収膜140の膜厚は20nmに設定する。また、有機珪素化合物と、スクリーン基板110との密着性が悪い場合は、スクリーン基板110の観察面101にプラズマ表面処理を施し、スクリーン基板110に付着している油分や、他の有機物質を除去し、密着性を高める前処理を行う。
【0044】
ところで、吸収膜140による光吸収は、吸収膜を構成する有機珪素化合物の分子構造が複雑であることによって、吸収膜140に入射した光を分子構造中で吸収する。吸収膜140は、膜厚が厚くなることで、有機珪素化合物の分子構造が複雑となって、光吸収性がさらに向上する。吸収膜140の膜厚は、発明者の実験によって5nm以上で光吸収性を有することが確認された。従って、本実施形態の反射型スクリーン100の製造方法では、吸収膜140の膜厚を5nm以上と、設定することができる。
【0045】
吸収膜140は、前述の通り膜厚が厚くなれば、さらに光吸収性が向上する。吸収膜140は、後述する除去工程P120において、紫外線Luが照射された領域の吸収膜140の除去を行う。このため、吸収膜140の膜厚が厚い場合、除去工程P120で紫外線Luの照射時間を長くしなければ、吸収膜140の除去が不十分となり、照射時間を長くすると、紫外線Luが照射されている領域以外の吸収膜140が酸化される。
【0046】
そこで、吸収膜140は光吸収性を有し、紫外線Luの照射されない領域の吸収膜140が酸化されないように対処する。ここで、発明者の実験によって、吸収膜140の膜厚を20nm以下とすることで、紫外線Luの照射されない領域の吸収膜140が酸化されることなく除去できることが確認された。よって、吸収膜140の膜厚は、20nm以下と設定することができる。従って、吸収膜140の膜厚は、5nm以上20nm以下と設定することができる。
【0047】
ところで、有機珪素化合物を含み形成される吸収膜140は、有機珪素化合物の分子量を大きくすることで分子の側鎖が伸長し、後述する反射膜形成工程P130において、反射膜150を形成する金属粒子M(原子)との結合力を抑制することができる。よって、反射膜150を形成する金属粒子Mが、吸収膜140の表面に留まることなく再蒸発し、吸収膜140上に、反射膜150が形成されることを防止できる。ここで、有機珪素化合物の分子量は、発明者の実験によって800以上、さらに2000以上とすることで、反射膜150を形成する金属粒子Mが、吸収膜140上に留まることなく再蒸発することの確認がされた。従って、本実施形態の吸収膜140を形成する有機珪素化合物の分子量は、800以上、さらに2000以上と設定することができる。
【0048】
また、有機珪素化合物は、フッ素を含むことによって、分子間引力(結合力)の弱いフッ素で吸収膜140上を覆うことができる。よって、後述する反射膜形成工程P130において、吸収膜140と、反射膜150を形成する金属粒子Mとの結合力をさらに抑制することができる。ここで、発明者の実験によって、有機珪素化合物に含むフッ素として、パーフルオロアルキル基、パーフルオロエーテル基を含むことで、吸収膜140と、金属粒子Mとの結合力を抑制することができることの確認がされた。従って、本実施形態の吸収膜140を形成する有機珪素化合物は、パーフルオロアルキル基、パーフルオロエーテル基などフッ素を含む構成とすることができる。
【0049】
図4は、除去工程P120と、反射膜形成工程P130とを示す模式図であり、図4(c)は、除去工程P120において、紫外線Luをスクリーン基板110へ照射した模式図であり、図4(d)は、吸収膜140が除去された状態を示す図である。また、図4(e)は、吸収膜140が除去された領域に、反射膜150が形成された状態を示す模式図である。図4を参照して、除去工程P120と反射膜形成工程P130とを説明する。
【0050】
除去工程P120は、紫外線照射工程P121(不図示)を備え、前述の吸収膜形成工程P110によって凸部120上に形成した吸収膜140に、紫外線Luを照射することで、吸収膜140の酸化と除去とを行う。紫外線照射工程P121は、図4(c)に示すように、スクリーン基板110の観察面101の法線NLに対して、垂直方向下方(Y軸下方向)にずれた仮想光源位置PVと、同じ位置に紫外線照射装置60を配置する。
【0051】
図4(d)に示すように、紫外線Luが照射された領域の吸収膜140は除去され、凸部120が露出し、反射膜形成領域122が形成される。紫外線Luと、凸部120との本影123となる部分は、紫外線Luが入射しないことから、吸収膜140は除去されずに残存する。
【0052】
紫外線Luの照射は、投射光LPの入射に対応した領域の吸収膜140を除去するため、紫外線Luのスクリーン基板110に対する入射角度θ2と、図1で示した仮想光源位置PVから射出する投影光LPの入射角度θ1とが等しくなるように紫外線照射装置60の配置を行い、紫外線Luを射出する。
【0053】
紫外線照射装置60から射出される紫外線Luは、プロジェクターPから射出された投射光LPと同様に、スクリーン基板110の大きさに合わせて、拡散して照射される。
【0054】
紫外線照射装置60は、図示および詳細な説明を省略するが、その筐体内に、紫外線ランプと、紫外線ランプを駆動する電源部と、紫外線を凝縮および拡散させるレンズを有する光学部とを備える。
【0055】
また、紫外線照射装置60から射出される紫外線Luの照射条件は、波長172nm、照射密度15mW/平方センチメートルである。ここで、紫外線Luの照射条件は、吸収膜140の膜厚などの膜質や照射距離によって、波長と照射密度とを適宜調整し、除去工程P120を行うと良い。
【0056】
反射膜形成工程P130は、図4(e)に示すように、吸収膜140が除去された領域に、投射光LPを反射することができる金属粒子Mで構成された反射膜150を形成する。本実施形態では反射膜材料として、アルミニウムを用いる。ここで、反射膜150は、アルミニウムに限らず、投射光LPを反射できる他の材料を用いても良い。
【0057】
ところで、反射膜形成工程P130によって、反射膜150の形成を行うスクリーン基板110上には、外光を吸収するために吸収膜140が残存している。吸収膜140は、前述の通り、吸収膜140上に、金属粒子Mが反射膜形成工程P130によって付着し、形成されることを防止することができる。よって、反射膜150の形成は、反射膜150を形成する金属粒子M(原子)の放散方向に関係なく、金属粒子Mで構成される反射膜150を、反射膜形成領域122に形成することができる。
【0058】
ここで、反射膜形成工程P130による反射膜150の形成は、スパッタ法を用いてアルミニウムの膜を形成する。本実施形態では、対向ターゲット式スパッタ法を用いて、反射型スクリーン100の観察者側(Z軸方向)から反射膜150を構成するアルミニウムの膜を形成する。
【0059】
スパッタ法によって反射膜150を形成する金属粒子Mは、蒸着法によって反射膜150を形成する金属粒子Mと比べて、数十倍から数百倍の運動エネルギーを有する。本実施形態で用いる対向ターゲット式スパッタ法は、反射膜材料となる金属(ターゲット)から飛散する金属粒子Mの運動エネルギーが小さいため、金属粒子Mがスクリーン基板110上へ衝突することによる損傷を抑制できる。また、金属粒子Mによるスクリーン基板110上の損傷が少ないため、損傷によって生じるスクリーン基板110上で金属粒子Mの凝集を抑制できる。
【0060】
図5は、本実施形態の製造方法を用いて製造した反射型スクリーン100を拡大し、模式的に示す断面図である。図5に示すように、観察面101上には、光吸収性を有する略半球状の凸部120が複数形成されている。凸部120上には、投射光LPを観察者側に反射する反射膜150と、観察に不要な外光Loを吸収する吸収膜140とが備えられている。また、投射光LPは、凸部120の本影123となる部分、すなわち、吸収膜140には殆ど入射しない。従って、プロジェクターPから射出された投射光LPは、反射膜150によって観察者側(Z軸方向)に法線NLと平行して反射される。また、観察に不要な外光Loは、吸収膜140によって吸収し、吸収膜140を透過した外光Loは、凸部120を形成する光吸収性を有する樹脂と、スクリーン基板110とによって吸収される。
【0061】
上述のように、投射光LPを反射する反射膜150と、外光Loを吸収する吸収膜140と、が形成された凸部120を観察面101の略全面に形成し、反射型スクリーン100を構成している。
【0062】
上述した第一実施形態によれば、以下の効果が得られる。
本実施形態の反射型スクリーン100の製造方法は、スクリーン基板110上に形成された複数の凸部120に、有機珪素化合物の分子構造中で光を吸収する吸収膜140と、投射光LPを反射する反射膜150と、を形成することができる。また、有機珪素化合物で構成される吸収膜140は、反射膜150の付着を防止することができる。よって、反射膜形成工程P130では、除去工程P120によって吸収膜140の一部が除去された領域に、反射膜150を形成することができる。従って、反射膜形成工程P130は、反射膜材料をスクリーン基板110の近い位置に配置し、金属粒子Mの放散方向に関係なく、投射光LPの入射に対応した領域に反射膜150の形成ができる。
【0063】
また、スクリーン基板の近い位置に反射膜材料を設置することで、反射膜を形成する金属粒子Mの飛散(放散)距離が短くなる。よって、反射膜形成の時間短縮と、スクリーン基板以外への金属粒子Mの放散の抑制とができる。従って、反射膜形成工程P130を実行する装置の小型化と、反射膜形成工程P130の時間短縮化と、蒸着源など反射膜材料の利用効率の向上と、が実現できる。
【0064】
本実施形態の反射型スクリーン100の製造方法は、紫外線照射工程P121を備え、紫外線Luをスクリーン基板110上に形成された吸収膜140に照射することで、吸収膜140に接することなく吸収膜140を酸化させ、分解し除去することができる。よって、紫外線Luを照射し、吸収膜140が除去された領域に反射膜形成工程P130において反射膜150を選択的に形成することができる。また、従来、反射膜形成工程P130では、スクリーン基板110上にマスク版を配置し、金属粒子Mが付着する領域を選択し、反射膜150を形成していたがマスク版が不要となる。従って、反射膜150を形成する領域が異なっても、紫外線Luの照射領域を変更することで、反射膜150を形成する領域を容易に変更できる。
【0065】
本実施形態の反射型スクリーン100の製造方法は、吸収膜を5nm以上、20nm以下の膜厚で形成することで光吸収性を有し、紫外線照射工程P121において紫外線Luを照射することで、紫外線Luが照射された領域以外の吸収膜140を酸化させることなく除去することができる。
【0066】
本実施形態の反射型スクリーン100の製造方法は、スクリーン基板110に相対させた位置に紫外線照射装置60を設置し、投射光LPと同様に拡散する紫外線Luをスクリーン基板110に照射することで、投射光LPに対応した領域に紫外線Luを照射することができる。従って、紫外線Luが照射された領域の吸収膜140が除去され、外光Loなどを吸収する吸収膜140を残置し、反射膜形成工程P130によって、投射光LPの入射に対応した領域に反射膜150を形成することができる。
【0067】
本実施形態の反射型スクリーン100の製造方法は、吸収膜140を構成する有機珪素化合物にフッ素を含むことで、反射膜150を構成する反射膜材料の付着を防止することができる。また、有機珪素化合物の分子量を800以上、さらに2000以上とすることで、反射膜150を構成する反射膜材料の付着をさらに防止することができる。
【0068】
本実施形態の反射型スクリーン製造方法は、フッ素を含む有機珪素化合物で吸収膜140を形成することで、吸収膜140上への塵埃付着を低減できる。また、吸収膜140は、塵埃で妨げられることなく外光Loを吸収し、光吸収率を向上させることができる。従って、コントラストの高い反射型スクリーンが実現できる。
【0069】
(第二実施形態)
本実施形態は、プロジェクターPの投射光LPの射出位置が第一実施形態と異なる仕様の反射型スクリーンの製造形態で、反射型スクリーン100の観察面中心点Cの観察者側から投射光LPを射出する場合を説明する。
【0070】
図6は、本実施形態に係る反射型スクリーン100が設置された状態を示す模式図である。
【0071】
図6に示すように、本実施形態で製造する反射型スクリーン100は、観察面101の中心点Cを通る法線NLに対して観察者側(Z軸方向)にずれた位置に配置されたプロジェクターPから、観察面101に向けて投射光LPを射出する。投射光LPは、反射型スクリーン100の観察者側(Z軸方向)に反射される。ここで、この位置を仮想光源PVとする。また、反射型スクリーン100は、法線NLがZ軸と平行になるように配置されている。従って、紫外線照射工程P121を行う紫外線照射装置60を設置する位置が、前述の第一実施形態の反射型スクリーンの製造方法と異なっている。その他の構成および工程は、第一実施形態と同様であるため相違点を説明し、同様の工程および構成には同様の符号を付して説明は省略または簡略とする。
【0072】
図7は、本実施形態の反射型スクリーン100に対応して紫外線Luが照射される領域を示す模式図である。図7を参照して、本実施形態の紫外線照射工程P121について説明する。
【0073】
紫外線照射工程P121は、図7に示すように、プロジェクターPの仮想光源PV位置に紫外線照射装置60を設置し、プロジェクターPから射出された投射光LPと同様に、スクリーン基板110の大きさに合わせて、紫外線Luを拡散して照射を行う。紫外線照射装置60は、投射光LPと同様の入射角度で紫外線Luを射出し照射を行う。
【0074】
紫外線照射工程P121は、第一実施形態と同様に、スクリーン基板110上の凸部120上に形成された吸収膜140に紫外線Luを照射し、紫外線Luによって吸収膜140が酸化し除去され、反射膜形成領域122が形成される。ここで、紫外線Luが照射される領域は、前述の観察者側から射出された投射光LPが投写される領域と同じである。
【0075】
その他の反射型スクリーン100の製造方法および反射型スクリーン100は、第一実施形態と同様である。
【0076】
上述した第二実施形態によれば、以下の効果が得られる。
【0077】
本実施形態の反射型スクリーン100の製造方法は、紫外線照射装置60の設置位置を、投射光LPの射出位置に応じて移動し、変更することで様々な投射光LPの入射に対応した反射型スクリーン100の製造ができる。従って、投射光LPを反射する反射膜150を形成する領域が異なっても、反射膜形成工程P130に係る装置の調整が不要で、生産装置の稼働率を高めることができる。
【0078】
(第三実施形態)
本実施形態は、第一実施形態および第二実施形態で説明をした基板形成工程P100で、スクリーン基板110上に凸部120を形成することに変えて、凹部220を形成する。凹部220の内壁面221に、吸収膜140および反射膜150を備える反射型スクリーン100の製造方法と、反射型スクリーン100との形態である。この点が、第一実施形態および第二実施形態と異なっている点である。その他の工程および構成は、第一実施形態および第二実施形態と同様であるため相違点を説明し、同様の工程および構成には同様の符号を付して説明は省略または簡略とする。
【0079】
図8は、基板形成工程P100と、吸収膜形成工程P110とを示す模式図であり、図8(a)は、スクリーン基板110に凹部220が形成された状態を示す模式図である。図8(b)は、凹部220の内壁面221上に吸収膜140が形成された状態を示す模式図である。図8を参照して、基板形成工程P100と吸収膜形成工程P110とを説明する。
【0080】
基板形成工程P100は、第一実施形態の凸部120を接着し形成を行う方法に変えて凹部220を、スクリーン基板110を変形させることで形成する。図8(a)に示すようにスクリーン基板110の観察面101に複数の凹部220が形成されている。凹部220を形成する方法は、形成させる形状とは逆形状に形成された金型を加熱し、スクリーン基板110に押し付けて形成する転写装置(不図示)を用いて実施される。
【0081】
転写装置は、形成させる形状とは逆形状に形成された金型を加熱しながらスクリーン基板110を、観察面101と、その反対面との両面から高圧力で押し付け、スクリーン基板110を金型の形状に合わせて変形させて、必要な形状を形成させる装置である。
【0082】
吸収膜形成工程P110は、図8(b)に示すように、前述のスクリーン基板形成工程P100によって、観察面101に形成された凹部220の内壁面221上に、吸収膜140を形成する。 吸収膜140の形成は第一実施形態と同様に、スクリーン基板110を、有機珪素化合物を含んだ溶液に浸漬し形成する。上述した以外の吸収膜形成工程P110は、第一実施形態と同様である。
【0083】
図9は、除去工程P120と、反射膜形成工程P130とを示す模式図であり、図9(c)は、除去工程P120で、紫外線Luをスクリーン基板110へ照射した模式図であり、図9(d)は、吸収膜140が除去された状態を示す図である。また、図9(e)は、吸収膜140が除去された領域に、反射膜150が形成された状態を示す模式図である。図9を参照して、除去工程P120と、反射膜形成工程P130とを説明する。
【0084】
除去工程P120は、第一実施形態同様に紫外線照射工程P121を備え、図9(c)に示すように、スクリーン基板110の観察面101の法線NLに対して、垂直方向下方(Y軸下方向)にずれた仮想光源位置PVと、同じ位置に紫外線照射装置60を配置する。
図9(d)に示すように、紫外線Luが照射された領域の吸収膜140は除去され、凹部220の内壁面221が露出し、反射膜形成領域222が形成される。紫外線Luと凹部220との本影223となる部分は、紫外線Luが入射しないことから、吸収膜140は除去されずに残存する。
【0085】
紫外線Luの照射は、投射光LPの入射に対応した領域の吸収膜140を除去するため、スクリーン基板110に対する入射角度θ3が、図1で示した、仮想光源位置PVから射出する投影光LPの入射角度θ1と等しくなるように、紫外線照射装置60を配置し紫外線Luを射出する。上述した以外の除去工程P120の内容は、第一実施形態と同様である。
【0086】
反射膜形成工程P130は、図9(e)に示すように、吸収膜140が除去された反射膜形成領域222に、投射光LPを反射することができる金属粒子Mで構成された反射膜150を形成する。上述した以外の反射膜形成工程P130は、第一実施形態と同様である。
【0087】
図10は、本実施形態の製造方法を用いて製造した反射型スクリーン100を拡大し模式的に示す断面図である。図10に示すように、観察面101には、光吸収性を有する略半球状の凹部220が複数形成されている。凹部220上には、投射光LPを観察者側反射する反射膜150と、観察に不要な外光Loを吸収する吸収膜140とが備えられている。また、投射光LPは、凹部220の本影223となる部分、すなわち、吸収膜140には殆ど入射しない。従って、プロジェクターPから射出された投射光LPは、反射膜150によって観察者側(Z軸方向)に法線NLと平行し反射される。また、観察に不要な外光Loは、吸収膜140によって吸収し、吸収膜140を透過した外光Loは、スクリーン基板110によって吸収される。
【0088】
このように、投射光LPを反射する反射膜150と、外光Loを吸収する吸収膜140とが形成された凹部220を観察面101の略全面に形成し、反射型スクリーン100を構成している。
【0089】
その他の反射型スクリーン100の製造方法および反射型スクリーン100は、第一実施形態と第二実施形態と同様である。
【0090】
上述した第三実施形態によれば、以下の効果が得られる。
本実施形態の反射型スクリーン100の製造方法によれば、スクリーン基板110を変形させて凹部220を形成することで、第一実施形態で説明をした基板形成工程P100に比べて、予め凸部120を形成する工程と、凸部120を接着する工程とを省略し、基板形成工程P100の時間短縮ができる。従って、生産効率の高い反射型スクリーン100の製造方法が実現できる。
【0091】
(第四実施形態)
本実施形態は、紫外線照射工程P121を実行する紫外線照射装置60を、スクリーン基板110に相対する観察者側(Z軸方向)に移動自在または回動自在に設置し、指向性を有する紫外線Luの照射を行う。また、紫外線Luが照射されるスクリーン基板110は、固定または移動自在に設置されている形態である。
【0092】
ここで、紫外線照射装置60は、図示と詳細な説明を省略するが、第一実施形態の紫外線照射装置60の構成に加えて、射出位置の移動および射出角度の回動を自在に行う駆動部と、駆動部の制御を行う制御部とを備える。制御部は、除去工程P120によって、吸収膜140の除去を行う領域が設定されている。紫外線照射装置60は、この設定に基づき駆動部によって、移動自在または回動自在に動作し、紫外線Luを射出し照射する。
【0093】
上述の点が、前述の第一実施形態と、第三実施形態との反射型スクリーン100の製造方法と異なっている。その他の構成および工程は、第一実施形態と、第三実施形態と同様であるため相違点を説明し、同様の工程および構成には同様の符号を付して説明は省略または簡略とする。
【0094】
図11と、図12とは、本実施形態に係る除去工程P120の紫外線照射工程P121を説明する模式図であり、図11(a)と、図11(b)とは、固定されたスクリーン基板110に、回動自在な紫外線照射装置60から紫外線Luを照射した状態を示す模式図である。また、図12(a)から図12(c)は、移動自在なスクリーン基板110に、移動自在または回動自在な紫外線照射装置60から、紫外線Luを照射した状態を示す模式図である。図11と、図12とを参照して、本実施形態の紫外線照射工程P121を説明する。
【0095】
先ず、固定されたスクリーン基板110に、回動自在な紫外線照射装置60を用いて、紫外線照射工程P121を実施する場合を図11を用いて説明する。
図11(a)に示すY軸方向の任意の点(本実施形態では、A点とする。)の吸収膜140の除去を行うために、観察者側(Z軸方向)に設置した紫外線照射装置60を回動させ、A点における投射光LPの入射と同様の入射角度で紫外線Luを射出し照射を行う。また、図11(b)に示すY軸方向の任意の点(本実施形態では、B点とする。)の吸収膜140の除去を行う場合、A点と同様に、紫外線照射装置60を回動させ、B点における投射光LPの入射と同様の入射角度で紫外線Luを射出し照射を行う。このように、スクリーン基板110に形成された凸部120上または凹部220(不図示)上に形成された吸収膜140は、紫外線照射装置60を回動させ、順次紫外線Luを照射し除去を行う。
【0096】
次に、固定されたスクリーン基板110に、移動自在または回動自在な紫外線照射装置60を用いて、紫外線照射工程P121を実施する場合を説明する。
固定されたスクリーン基板110に形成されている吸収膜140の除去を行うために、紫外線照射装置60をスクリーン基板110に相対させて移動し、回動をさせながら、指向性を有する紫外線Luの照射を行う。紫外線照射装置60は、スクリーン基板110の観察者側(Z軸方向)に設置され、吸収膜140の除去を行う領域における投射光LPの入射と同様の入射角度で紫外線Luの射出を行う。このように、スクリーン基板110に形成された凸部120上または凹部220(不図示)上に形成された吸収膜140は、紫外線照射装置60を移動し、回動をさせ順次紫外線Luを照射し除去を行う。
【0097】
次に、移動自在なスクリーン基板110に、移動自在または回動自在な紫外線照射装置60を用いて、紫外線照射工程P121を実施する場合を図12を用いて説明する。
図12(a)から図12(c)に示すY軸方向の任意の点(本実施形態では、C点からE点とする。)の吸収膜140の除去を行うために、観察者側(Z軸方向)に設置した紫外線照射装置60を回動または移動させ、紫外線Luを射出し照射を行う。このように、紫外線照射装置60は、スクリーン基板110の移動に対応して、吸収膜140の除去を行う任意の点における投射光LPの入射角度と、同様の入射角度で紫外線Luを射出し照射を行う。
【0098】
ここで、紫外線照射工程P121は、紫外線照射装置60を1台で行うことを説明したが、複数台の紫外線照射装置60を組み合わせて紫外線Luの照射を行ってもよい。
【0099】
その他の反射型スクリーンの製造方法および反射型スクリーンの構成は、第一実施形態および第三実施形態と同様である。
【0100】
上述した第四実施形態によれば、以下の効果が得られる。
本実施形態の反射型スクリーンの製造方法によれば、投射光LPの入射角が異なるスクリーンの製造を、紫外線照射装置60を移動または回動させ、紫外線Luの照射を行うことで、投射光LPと同様の紫外線Luの入射角度を短距離で再現することができる。従って、紫外線照射工程P121を行う装置の小型化ができる。また、紫外線照射装置60が移動または回動することで、様々な投影位置に対応した反射膜150を形成する領域を形成することができる。
【0101】
本実施形態の反射型スクリーンの製造方法によれば、スクリーン基板110の移動と、吸収膜140を除去する領域に対応して、紫外線照射装置60を移動または回動して紫外線Luを射出し照射することで、スクリーン基板110の任意の領域に形成されている吸収膜140の除去する領域を自在に変化させることができる。従って、投射光LPの投射位置が異なる反射型スクリーン100をロール・ツー・ロールで連続して製造することができる。また、スクリーン基板110の領域によって、吸収膜140の除去を行う領域を変化させることで、反射型スクリーン100の反射効率を改善することができる。
【0102】
なお、上述した実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変更や改良等を加えて実施することが可能である。変形例を以下に述べる。
【0103】
(変形例1)スクリーン基板形成工程P100に複数の凸部120または凹部220を形成する方法として、光吸収性樹脂をインクジェットヘッドによって吐出し凸部120を形成する方法、を反射型スクリーン100の製造に適用することができる。
【0104】
(変形例2)スクリーン基板形成工程P100に複数の凹部220を形成する方法として、スクリーン基板100をマスクパターンで覆い、ウエットエッチング法を用い、等方性エッチングによって凹部220を形成する方法を反射型スクリーン100の製造に適用することができる。
【0105】
(変形例3)吸収膜形成工程P110で吸収膜140を形成する方法として、フッ素を含む有機珪素化合物を膜形成材料とし、化学気相成長法を用いるCVD(Chemical−Vapor−Deposition)法で吸収膜140を形成する方法や、スプレー噴射などによって塗付し吸収膜140を形成するスプレー法を反射型スクリーン100の製造に適用することができる。
【0106】
(変形例4)反射膜形成工程P130で形成する反射膜150を形成する方法として、第一実施形態で説明した対向ターゲット式スパッタ法に限らず、他のスパッタ法や、蒸着法などの物理気相成長法を用いるPVD(Physical−Vapor−Deposition)法で形成する方法。または、化学気相成長法を用いるCVD(Chemical−Vapor−Deposition)法で反射膜150を形成する方法を反射型スクリーン100の製造に適用することができる。
【符号の説明】
【0107】
60…紫外線照射装置、100…反射型スクリーン、101…観察面、110…スクリーン基板、120…凸部、140…吸収膜、150…反射膜、220…凹部、NL…法線、LP…投射光、Lu…紫外線、PV…仮想光源、P100…スクリーン基板形成工程、P110…吸収膜形成工程、P120…除去工程、P130…反射膜形成工程。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
投射光を反射する反射型スクリーンの製造方法であって、
スクリーン基板表面に、有機珪素化合物を含み、前記投射光と異なる方向から入射する外光を吸収する吸収膜を形成する吸収膜形成工程と、
前記吸収膜形成工程の前工程または後工程で行われ、スクリーン基板表面に複数の凸部または複数の凹部を形成する基板形成工程と、
前記投射光を反射する反射膜を形成する反射膜形成工程と、を備えることを特徴とする反射型スクリーンの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の反射型スクリーンの製造方法であって、
前記投射光の入射方向に対応した領域の前記吸収膜を除去する除去工程を備えること、を特徴とする反射型スクリーンの製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載の反射型スクリーンの製造方法であって、
前記除去工程は、前記吸収膜に対して紫外線を照射させる紫外線照射工程を含むこと、を特徴とする反射型スクリーンの製造方法。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の反射型スクリーンの製造方法であって、
前記紫外線は紫外線を照射する紫外線照射装置を用い、当該紫外線照射装置を前記スクリーン基板に相対させて設置し、固定される前記スクリーン基板に対して拡散する前記紫外線を照射すること、を特徴とする反射型スクリーンの製造方法。
【請求項5】
請求項2から請求項4のいずれか一項に記載の反射型スクリーンの製造方法であって、
前記紫外線照射工程は、紫外線を照射する紫外線照射装置を用い、当該紫外線装置を前記スクリーン基板に相対させて移動自在または回動自在に設置し、固定または移動自在に設置される前記スクリーン基板に対して指向性を有する前記紫外線を照射すること、を特徴とする反射型スクリーンの製造方法。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の反射型スクリーンの製造方法であって、
前記吸収膜を構成する前記有機珪素化合物は、フッ素を含んでいること、を特徴とする反射型スクリーンの製造方法。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の反射型スクリーンの製造方法であって、
前記吸収膜の膜厚は、5nm以上20nm以下に形成されていること、を特徴とする反射型スクリーンの製造方法。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の反射型スクリーンの製造方法であって、
前記吸収膜を構成する前記有機珪素化合物の分子量は、800以上で構成されること、を特徴とする反射型スクリーンの製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載の反射型スクリーンの製造方法であって、
前記有機珪素化合物の分子量は、さらに2000以上で構成されていること、を特徴とする反射型スクリーンの製造方法。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の反射型スクリーンの製造方法によって製造されたこと、を特徴とする反射型スクリーン。
【請求項11】
投射光を反射する反射型スクリーンの製造方法であって、
スクリーン基板表面に、前記投射光と異なる方向から入射する外光を吸収し、有機珪素化合物を含む吸収膜を備えていること、を特徴とする反射型スクリーン。
【請求項12】
請求項11に記載の反射型スクリーンであって、
前記有機珪素化合物は、フッ素を含んでいることを特徴とする反射型スクリーン。
【請求項1】
投射光を反射する反射型スクリーンの製造方法であって、
スクリーン基板表面に、有機珪素化合物を含み、前記投射光と異なる方向から入射する外光を吸収する吸収膜を形成する吸収膜形成工程と、
前記吸収膜形成工程の前工程または後工程で行われ、スクリーン基板表面に複数の凸部または複数の凹部を形成する基板形成工程と、
前記投射光を反射する反射膜を形成する反射膜形成工程と、を備えることを特徴とする反射型スクリーンの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の反射型スクリーンの製造方法であって、
前記投射光の入射方向に対応した領域の前記吸収膜を除去する除去工程を備えること、を特徴とする反射型スクリーンの製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載の反射型スクリーンの製造方法であって、
前記除去工程は、前記吸収膜に対して紫外線を照射させる紫外線照射工程を含むこと、を特徴とする反射型スクリーンの製造方法。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の反射型スクリーンの製造方法であって、
前記紫外線は紫外線を照射する紫外線照射装置を用い、当該紫外線照射装置を前記スクリーン基板に相対させて設置し、固定される前記スクリーン基板に対して拡散する前記紫外線を照射すること、を特徴とする反射型スクリーンの製造方法。
【請求項5】
請求項2から請求項4のいずれか一項に記載の反射型スクリーンの製造方法であって、
前記紫外線照射工程は、紫外線を照射する紫外線照射装置を用い、当該紫外線装置を前記スクリーン基板に相対させて移動自在または回動自在に設置し、固定または移動自在に設置される前記スクリーン基板に対して指向性を有する前記紫外線を照射すること、を特徴とする反射型スクリーンの製造方法。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の反射型スクリーンの製造方法であって、
前記吸収膜を構成する前記有機珪素化合物は、フッ素を含んでいること、を特徴とする反射型スクリーンの製造方法。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の反射型スクリーンの製造方法であって、
前記吸収膜の膜厚は、5nm以上20nm以下に形成されていること、を特徴とする反射型スクリーンの製造方法。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の反射型スクリーンの製造方法であって、
前記吸収膜を構成する前記有機珪素化合物の分子量は、800以上で構成されること、を特徴とする反射型スクリーンの製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載の反射型スクリーンの製造方法であって、
前記有機珪素化合物の分子量は、さらに2000以上で構成されていること、を特徴とする反射型スクリーンの製造方法。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の反射型スクリーンの製造方法によって製造されたこと、を特徴とする反射型スクリーン。
【請求項11】
投射光を反射する反射型スクリーンの製造方法であって、
スクリーン基板表面に、前記投射光と異なる方向から入射する外光を吸収し、有機珪素化合物を含む吸収膜を備えていること、を特徴とする反射型スクリーン。
【請求項12】
請求項11に記載の反射型スクリーンであって、
前記有機珪素化合物は、フッ素を含んでいることを特徴とする反射型スクリーン。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−108341(P2012−108341A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−257559(P2010−257559)
【出願日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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