説明

反射型スクリーン及び反射型スクリーンの製造方法

【課題】近接投射型プロジェクターとともに用いるのに適する反射型スクリーンとすることが可能であり、かつ、投写画像の明るさを従来の反射型スクリーンよりも均一にすることが可能な反射型スクリーンを提供する。
【解決手段】投写面側に複数の凹面が形成され、近接投写型プロジェクターとともに用いる反射型スクリーンであって、基準点Pの近くに位置する第1領域R1と、基準点Pから遠くに位置する第2領域R2とに区分され、第1領域R1には、複数の凹面として、略球面状の内面を有する複数の第1凹面が形成され、第2領域R2には、複数の凹面として、略円柱状の内面と、当該略円柱状の内面の両端部に形成された略球面状の内面とを有する第2凹面であって、当該第2凹面から基準点Pへの方向と当該第2凹面の長軸方向とが略一致する複数の第2凹面が形成されていることを特徴とする反射型スクリーン1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射型スクリーン及び反射型スクリーンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、球面状の内面を有する複数の凹面が投写面側に形成され、近接投写型プロジェクターとともに用いる反射型スクリーンが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
従来の反射型スクリーンによれば、球面状の内面を有する複数の凹面が形成されているため、近接投写型プロジェクターから斜めに入射する光を使用者に向けて反射することが可能となり、その結果、近接投射型プロジェクターとともに用いるのに適する反射型スクリーンとすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−192871号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、投写面のうち近接投射型プロジェクターから遠い位置では当該近接投射型プロジェクターからの光の入射角度が大きくなることから、当該光を使用者に向けて正しく反射するためには、近接投射型プロジェクターからの位置が遠い凹面ほど当該凹面の縁を高くする必要がある。しかしながら、従来の反射型スクリーンにおいては、近接投射型プロジェクターからの位置が遠い凹面について当該凹面の縁を高くすると、当該凹面のうち近接投射型プロジェクター側の凹面の縁に光が遮られ、当該凹面に光が入射しないことがある。このため、従来の反射型スクリーンにおいては、投写面のうち近接投射型プロジェクターから遠い位置における投写画像が暗くなってしまうため、投写画像の明るさが不均一になってしまうことがあるという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は上記の問題を解決するためになされたもので、近接投射型プロジェクターとともに用いるのに適する反射型スクリーンとすることが可能であり、かつ、投写画像の明るさを従来の反射型スクリーンよりも均一にすることが可能な反射型スクリーンを提供することを目的とする。また、このような反射型スクリーンの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[1]本発明の反射型スクリーンは、投写面側に複数の凹面が形成され、近接投写型プロジェクターとともに用いる反射型スクリーンであって、前記投写面を含む基準平面における、前記反射型スクリーンの中心から前記近接投写型プロジェクターを配置する側に偏倚した所定の点を基準点としたとき、前記反射型スクリーンは、前記基準点の近くに位置する第1領域と、前記基準点から遠くに位置する第2領域とに区分され、前記第1領域には、前記複数の凹面として、略球面状の内面を有する複数の第1凹面が形成され、前記第2領域には、前記複数の凹面として、略円柱状の内面と、当該略円柱状の内面の両端部に形成された略球面状の内面とを有する第2凹面であって、当該第2凹面から前記基準点への方向と当該第2凹面の長軸方向とが略一致する複数の第2凹面が形成されていることを特徴とする。
【0008】
このため、本発明の反射型スクリーンによれば、基準点から遠くに位置する第2領域には、略円柱状の内面と、当該略円柱状の内面の両端部に形成された略球面状の内面とを有する第2凹面であって、当該第2凹面から基準点への方向と当該第2凹面の長軸方向とが略一致する第2凹面が形成されているため、後述する実施形態に示すように、近接投射型プロジェクターからの位置が遠い第2凹面について当該第2凹面の縁を高くしても、第2凹面の縁同士の間隔を広げることで当該第2凹面のうち近接投射型プロジェクター側の第2凹面の縁により光が遮られることを抑制し、当該第2凹面に光を入射させることが可能となり、その結果、投写画像の明るさを従来の反射型スクリーンよりも均一にすることが可能となる。
【0009】
また、本発明の反射型スクリーンによれば、従来の反射型スクリーンと同様に複数の凹面が形成されているため、近接投写型プロジェクターから斜めに入射する光を使用者に向けて反射することが可能となり、その結果、近接投射型プロジェクターとともに用いるのに適する反射型スクリーンとすることができる。
【0010】
[2]本発明の反射型スクリーンにおいては、前記凹面における一部の領域には、前記近接投射型プロジェクターからの光を反射する反射層が形成されていることが好ましい。
【0011】
このような構成とすることにより、近接投射型プロジェクターからの光をより多く反射することが可能となり、その結果、明るい投写画像を表示することが可能となる。
なお、反射層は、凹面の形状、近接投射型プロジェクターの種類、使用者の位置等種々の要素を考慮し、近接投射型プロジェクターからの光を使用者へ向けて反射可能な領域に形成される。
【0012】
[3]本発明の反射型スクリーンにおいては、前記複数の凹面は、前記基準点から遠い位置に形成されている前記第2凹面ほど、前記略円柱状の内面の長さが長くなるように形成されていることが好ましい。
【0013】
基準点から遠い第2凹面ほど当該第2凹面のうち近接投射型プロジェクター側の第2凹面の縁により光が遮られやすいため、このような構成とすることにより、いずれの位置の第2凹面においても近接投射型プロジェクター側の第2凹面の縁により光が遮られることを抑制し、当該第2凹面に光を入射させることが可能となり、その結果、投写画像の明るさを一層均一にすることが可能となる。
【0014】
[4]本発明の反射型スクリーンにおいては、前記複数の凹面は、前記基準点から遠い位置に形成されている前記凹面ほど、基準点方向に隣接する他の凹面との距離が大きくなるように形成されていることが好ましい。
【0015】
このような構成とすることにより、基準点から遠い位置に形成されている凹面ほど当該凹面が形成される領域を大きくとり、凹面の縁を高くすることが可能となり、その結果、近接投射型プロジェクターからの光を使用者に向けて正しく反射することが可能となる。
【0016】
[5]本発明の反射型スクリーンにおいては、前記複数の凹面は、前記基準点を中心として略同心円状に形成され、前記基準点を中心とし、所定の半径を有する円を基準円としたとき、前記第1領域は、前記反射型スクリーンにおける前記基準円の内側の領域であり、前記第2領域は、前記反射型スクリーンにおける前記基準円の外側の領域であることが好ましい。
【0017】
このような構成とすることにより、同心円に沿って同様の形状を有する凹面同士が隣接することとなるため、同心円に沿って隣接する凹面間で反射の様子が同様となり、より一層自然な投写画像を表示することが可能となる。
【0018】
[6]本発明の反射型スクリーンの製造方法は、転写板の基となる転写板基板を準備する転写板基板準備工程と、前記転写板基板の表面に、前記第1凹面に対応する円形状の第1孔と、前記第2凹面に対応する細長形状の第2孔とを有するマスク層を形成するマスク層形成工程と、エッチングにより前記転写板基板に前記第1凹面及び前記第2凹面に対応する凹面を形成して前記転写板を製造する転写板製造工程と、転写により、前記転写板から前記第1凹面及び前記第2凹面に対応する凸面を有する成形型を製造する成形型製造工程と、転写により、前記成形型から前記反射型スクリーンの基となるスクリーン基板に前記第1凹面及び前記第2凹面を形成する凹面形成工程とをこの順序で含むことを特徴とする。
【0019】
このような方法とすることにより、本発明の反射型スクリーンを高い生産性で製造することが可能となる。
【0020】
[7]本発明の反射型スクリーンの製造方法は、反射型スクリーンの基となるスクリーン基板を用意するスクリーン基板準備工程と、前記スクリーン基板の表面に、前記第1凹面に対応する円形状の第1孔と、前記第2凹面に対応する細長形状の第2孔とを有するマスク層を形成するマスク層形成工程と、エッチングにより前記スクリーン基板に前記第1凹面及び前記第2凹面を形成する凹面形成工程とをこの順序で含むことを特徴とする。
【0021】
このような方法とすることにより、本発明の反射型スクリーンを短い工程で製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施形態に係る反射型スクリーン1を説明するために示す図。
【図2】実施形態における第1凹面20aを説明するために示す図。
【図3】実施形態における第2凹面30cを説明するために示す図。
【図4】実施形態における複数の凹面を説明するために示す図。
【図5】比較例における複数の凹面を説明するために示す図。
【図6】実施形態に係る反射型スクリーンの製造方法を説明するために示す図。
【図7】実施形態に係る反射型スクリーンの製造方法を説明するために示す図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の照明装置及びプロジェクターについて、図に示す実施の形態に基づいて説明する。
【0024】
[実施形態]
1.実施形態に係る反射型スクリーン1の構成
図1は、実施形態に係る反射型スクリーン1を説明するために示す図である。図1(a)は反射型スクリーン1の正面図であり、図1(b)は反射型スクリーン1の中央部における縦断面図である。なお、図1においては、複数の凹面の形状をわかりやすくするために反射層の表示を省略する。
図2は、実施形態における第1凹面20aを説明するために示す図である。図2(a)は第1凹面20aの拡大正面図であり、図2(b)は図1(b)におけるA1の範囲を拡大して示す図である。
図3は、実施形態における第2凹面30cを説明するために示す図である。図3(a)は第2凹面30cの拡大正面図であり、図3(b)は図1(b)におけるA2の範囲を拡大して示す図である。
なお、図1〜図3並びに後述する図5(a)、図6及び図7においては、説明を簡単にするために、反射型スクリーン1に比して凹面を大きく表示し、また、複数の凹面の数を減らして表示する。
また、図1並びに後述する図5(a)、図6及び図7においては、複数の凹面(第1凹面、第2凹面を含む)のうち、反射型スクリーンの中央に位置する凹面にのみ符号を表示する。
【0025】
実施形態1に係る反射型スクリーン1は、図1に示すように、スクリーン本体10の投写面側に複数の凹面が形成され、近接投写型プロジェクターとともに用いる反射型スクリーンである。図1において符号Pで示すのは、反射型スクリーン1における基準点である。当該基準点Pは、投写面を含む基準平面における、反射型スクリーン1の中心から近接投写型プロジェクターを配置する側に偏倚した所定の点であり、具体的には、近接投射型プロジェクター500(後述)が光を射出する点(近接投射型プロジェクター500における投写光学系510の中心点)から基準平面への垂線と基準平面との交点と一致する。このようにすることにより、近接投射型プロジェクター500からの光が第2凹面に入射する方向と第2凹面の長手方向とを略一致させることが可能となる。
【0026】
反射型スクリーン1は、使用者が投写面の略正面から投写画像を見ることを想定し、近接投射型プロジェクター500からの光を略正面に向けて反射する(後述する図4参照。)。
スクリーン本体10は、例えば、黒色の塩化ビニル系樹脂からなる。
【0027】
複数の凹面は、図1(a)に示すように、基準点Pを中心として同心円状に形成されている。
複数の凹面は、基準点Pから遠い位置に形成されている凹面ほど、基準点方向に隣接する他の凹面との距離が大きくなるように形成されている。つまり、反射型スクリーン1の中央に位置する第1凹面20a,20b,20c(それぞれ後述)においては、第1凹面20aと第1凹面20bとの距離よりも第1凹面20bと第1凹面20cとの距離が大きく、他の凹面においても同様の関係が成立する。このため、基準点Pからの位置が遠い凹面ほど、つまり、近接投射型プロジェクターからの位置が遠い凹面ほど、当該凹面の縁が高くなる(後述する図4参照。)。
円周方向に隣接する凹面の中心間の距離は、例えば、0.18mmである。径方向に隣接する凹面の中心間の距離は、基準点Pから距離が遠い位置にある凹面同士であるほど大きくなるが、例えば、0.25mm〜0.8mmである。
【0028】
反射型スクリーン1は、基準点の近くに位置する第1領域R1と、基準点から遠くに位置する第2領域R2とに区分されている。具体的には、図1(a)に示すように、基準点を中心とし、所定の半径を有する円を基準円Cとしたとき、第1領域R1は、反射型スクリーン1における基準円Cの内側の領域であり、第2領域R2は、反射型スクリーン1における基準円Cの外側の領域である。
【0029】
第1領域R1には、複数の凹面として、略球面状の内面を有する複数の第1凹面が形成されている。
以下、第1凹面20aを例として第1凹面の構成を説明する。
第1凹面20aは、図2に示すように、略球面状の内面22aを有する。略球面状の内面22aは、例えば、直径0.4mmの球における表面に相当する面からなる。
第1凹面20aにおける一部の領域には、近接投射型プロジェクター500からの光を略正面方向に向かって反射する反射層28aが形成されている。反射層28aが形成されている領域は、近接投射型プロジェクター500からの光が入射する領域(第1凹面20aにおける、近接投射型プロジェクター500とは反対側の縁近傍の領域)である。
反射層28aは、例えば、アルミニウムの薄膜からなる。
【0030】
以上が第1凹面20aの構成であり、20b、20c等他の第1凹面も基本的に同様の構成を有する。
【0031】
第2領域R2には、複数の凹面として、基準点Pを通過する軸を有する略円柱状の内面と、当該略円柱状の内面の両端部に形成された略球面状の内面とを有する複数の第2凹面が形成されている。
以下、第2凹面30cを例として第2凹面の構成を説明する。
第2凹面30cは、図3に示すように、略円柱状の内面32cと、当該略円柱状の内面32cの両端部に形成された略球面状の内面34c,36cとを有する。略円柱状の内面32cは、例えば、高さ0.4mm、底面の直径0.4mmの円柱における表面に相当する面からなる。また、略球面状の内面34c,36cは、例えば、直径0.4mmの球における表面に相当する面からなる。
【0032】
図3(a)において符号Lで示すのは略円柱状の内面32cの長さである。略円柱状の内面32cの長さLは、例えば、0.4mmである。
第2凹面30cは、図1に示すように、当該第2凹面30cから基準点Pへの方向と当該第2凹面30cの長軸方向(第2凹面30cの軸30cax(図3(a)参照。)に沿う方向)とが略一致するように形成されている。
第2凹面30cにおける一部の領域には、近接投射型プロジェクター500からの光を反射する反射層38cが形成されている。反射層38aが形成されている領域は、近接投射型プロジェクター500からの光が入射する領域である。反射層38cは、第2凹面30cにおいては、略球面状の内面34c(第2凹面30cにおける、近接投射型プロジェクター500とは反対側の縁近傍の領域)に形成されている。
反射層38cは、例えば、アルミニウムの薄膜からなる。
【0033】
以上が第2凹面30cの構成であり、30a、30b等他の第2凹面も基本的に同様の構成を有するが、基準点Pからの距離によって円柱状凹面の長さが異なる。すなわち、基準点Pから遠い位置に形成されている第2凹面ほど、略円柱状の内面の長さが長くなるように形成されている。つまり、反射型スクリーン1の中央に位置する第2凹面30a,30b,30cにおいては、図1(a)に示すように、30a,30b,30cの順番で略円柱状の内面の長さが長くなる。なお、基準点Pから遠い位置に形成されている第2凹面ほど、基準点方向に隣接する他の凹面との距離が大きくなるように形成されているため、略円柱状の内面の長さが長くなっても第2凹面の縁の高さが低くなってしまうこともない。
【0034】
近接投射型プロジェクター500は、反射型スクリーン1に対して投写画像を投写するプロジェクターである。近接投射型プロジェクター500は、投写光学系510から斜めに光を射出する。
【0035】
2.実施形態における複数の凹面
ここで、実施形態における複数の凹面について、図4及び図5を用いて詳しく説明する。
図4は、実施形態における複数の凹面を説明するために示す図である。図4(a)は反射型スクリーン1が近接投射型プロジェクター500からの光を反射する様子を示す縦断面図であり、図4(b)は図4(a)におけるA3の範囲を拡大して示す図であり、図4(c)は図4(a)におけるA4の範囲を拡大して示す図である。
図5は、比較例における複数の凹面を説明するために示す図である。図5(a)は比較例に係る反射型スクリーン1aの正面図であり、図5(b)は反射型スクリーン1aが近接投射型プロジェクター500からの光を反射する様子を示す縦断面図であり、図5(c)は図5(b)におけるA5の範囲を拡大して示す図であり、図5(d)は図5(b)におけるA6の範囲を拡大して示す図である。
【0036】
比較例に係る反射型スクリーン1aは、基本的には実施形態に係る反射型スクリーン1と同様の構成を有するが、複数の凹面の構成が実施形態に係る反射型スクリーン1の場合とは異なる。すなわち、比較例に係る反射型スクリーン1aにおける複数の凹面は、図5(a)に示すように、全て略球形状をしている。
【0037】
実施形態に係る反射型スクリーン1及び比較例に係る反射型スクリーン1aにおいては、図4及び図5に示すように、近接投射型プロジェクター500からの位置が遠い凹面ほど当該凹面の縁が高くなっている。
反射型スクリーン1及び反射型スクリーン1aのいずれにおいても、投写面のうち近接投射型プロジェクター500から近い位置では当該近接投射型プロジェクター500からの光の入射角度が小さく、また、凹面の縁が低いため、図4(b)及び図5(c)に示すように、当該凹面のうち近接投射型プロジェクター500側の凹面の縁に遮られることなく当該凹面に光が入射する。
【0038】
一方、比較例に係る反射型スクリーン1aにおいては、投写面のうち近接投射型プロジェクター500から遠い位置では凹面の縁が高くなっているため、図5(d)に示すように、当該凹面のうち近接投射型プロジェクター500側の凹面の縁に光が遮られ、当該凹面に光が入射しない。
【0039】
これに対して、実施形態に係る反射型スクリーン1においては、投写面のうち近接投射型プロジェクター500から遠い第2領域R2には第2凹面が形成されており、図4(c)に示すように、第2凹面の縁を高くしても、第2凹面の縁同士の間隔を広げることで当該第2凹面のうち近接投射型プロジェクター側の第2凹面の縁により光が遮られることを抑制し、当該第2凹面に光を入射させることが可能となる。
【0040】
3.実施形態に係る反射型スクリーンの製造方法
図6及び図7は、実施形態に係る反射型スクリーンの製造方法を説明するために示す図である。図6(a)〜図6(d)及び図7(a)〜図7(d)は各工程図である。
【0041】
(1)転写板基板準備工程
転写板基板準備工程は、図6(a)に示すように、転写板の基となる転写板基板100を準備する工程である。転写板基板100は、例えば板状のガラスからなる。
【0042】
(2)マスク層形成工程
マスク層形成工程は、転写板基板100の表面に、第1凹面に対応する円形状の第1孔(120a、120b、120cその他)と、第2凹面に対応する細長形状の第2孔(130a、130b、130cその他)とを有するマスク層を形成する工程である。
まず、図6(b)に示すように、転写板基板100の表面を薄膜110で覆う。薄膜110は、例えば、クロムからなる。
その後に、図6(c)に示すように、複数の第1孔及び複数の第2孔を形成する。複数の第1孔及び複数の第2孔は、基準点から遠い位置に形成されている孔ほど、基準点方向に隣接する他の孔との距離が大きくなるように形成されている。第1孔は、例えば、レーザー発振器からのレーザーを走査しないで照射することにより形成することができる。また、第2孔は、例えば、レーザー発振器からのレーザーを走査しながら照射することにより形成することができる。第2孔の長さは、第2凹面における略円柱状の内面の長さと対応するため、基準点から遠い第2孔ほど長さが長くなるように形成される。
【0043】
(3)転写板製造工程
転写板製造工程は、図6(d)に示すように、エッチングにより転写板基板100に第1凹面及び第2凹面に対応する凹面(122a、122b、122c、132a、132b、132cその他)を形成して転写板102を製造する工程である。
【0044】
(4)成形型製造工程
成形型製造工程は、図7(a)及び図7(b)に示すように、転写により、転写板102から第1凹面及び第2凹面に対応する凸面(220a、220b、220c、230a、230b、230cその他)を有する成形型200を製造する工程である。転写は、転写板製造工程後の転写板102から、表面のマスク層110を除去した後に行われる。転写は、微細な凹面を写し取ることが可能な方法により行われ、例えば、電鋳により行うことができる。成形型200は、例えば、ニッケルからなる。
【0045】
(5)凹面形成工程
凹面形成工程は、図7(c)及び図7(d)に示すように、転写により、成形型200から反射型スクリーン1の基となるスクリーン基板に第1凹面(20a,20b,20cその他)及び第2凹面(30a,30b,30cその他)を形成する工程である。この工程により、スクリーン本体10を製造することができる。
【0046】
(6)スクリーン製造工程
スクリーン製造工程は、凹面形成工程で製造したスクリーン本体10から反射型スクリーン1を製造する工程である。図示は省略するが、スクリーン本体10における各凹面に反射層を形成することにより、反射型スクリーン1を製造することができる。反射層は、例えば、アルミニウムを蒸着することにより形成することができる。
【0047】
4.実施形態に係る反射型スクリーン1及び反射型スクリーンの製造方法の効果
以下、実施形態に係る反射型スクリーン1及び反射型スクリーンの製造方法の効果を説明する。
【0048】
上記のように、実施形態に係る反射型スクリーン1によれば、基準点Pから遠くに位置する第2領域R2には、略円柱状の内面と、当該略円柱状の内面の両端部に形成された略球面状の内面とを有する第2凹面であって、当該第2凹面から基準点への方向と当該第2凹面の長軸方向とが略一致する第2凹面が形成されているため、近接投射型プロジェクター500からの位置が遠い第2凹面について当該第2凹面の縁を高くしても、第2凹面の縁同士の間隔を広げることで当該第2凹面のうち近接投射型プロジェクター500側の第2凹面の縁により光が遮られることを抑制し、当該第2凹面に光を入射させることが可能となり、その結果、投写画像の明るさを従来の反射型スクリーンよりも均一にすることが可能となる。
【0049】
また、実施形態に係る反射型スクリーン1によれば、従来の反射型スクリーンと同様に複数の凹面が形成されているため、近接投写型プロジェクター500から斜めに入射する光を使用者に向けて反射することが可能となり、その結果、近接投射型プロジェクターとともに用いるのに適する反射型スクリーンとすることができる。
【0050】
また、実施形態に係る反射型スクリーン1によれば、凹面における一部の領域に反射層が形成されているため、近接投射型プロジェクター500からの光をより多く反射することが可能となり、その結果、明るい投写画像を表示することが可能となる。
【0051】
また、実施形態に係る反射型スクリーン1によれば、複数の凹面が、基準点Pから遠い位置に形成されている第2凹面ほど、略円柱状の内面の長さが長くなるように形成されているため、いずれの位置の第2凹面においても近接投射型プロジェクター500側の第2凹面の縁により光が遮られることを抑制し、当該第2凹面に光を入射させることが可能となり、その結果、投写画像の明るさを一層均一にすることが可能となる。
【0052】
また、実施形態に係る反射型スクリーン1によれば、複数の凹面が、基準点Pから遠い位置に形成されている凹面ほど、基準点P方向に隣接する他の凹面との距離が大きくなるように形成されているため、基準点Pから遠い位置に形成されている凹面ほど当該凹面が形成される領域を大きくとり、凹面の縁を高くすることが可能となり、その結果、近接投射型プロジェクター500からの光を使用者に向けて正しく反射することが可能となる。
【0053】
また、実施形態に係る反射型スクリーン1によれば、複数の凹面が、基準点Pを中心として略同心円状に形成され、第1領域R1は、反射型スクリーン1における基準円Cの内側の領域であり、第2領域R2は、反射型スクリーン1における基準円Cの外側の領域であるため、同心円に沿って同様の形状を有する凹面同士が隣接することから、同心円に沿って隣接する凹面間で反射の様子が同様となり、より一層自然な投写画像を表示することが可能となる。
【0054】
実施形態に係る反射型スクリーンの製造方法は、転写板基板準備工程と、マスク層形成工程と、転写板製造工程と、成形型製造工程と、凹面形成工程とをこの順序で含むため、反射型スクリーン1を高い生産性で製造することが可能となる。
【0055】
以上、本発明を上記の実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。その趣旨を逸脱しない範囲において種々の様態において実施することが可能であり、例えば、次のような変形も可能である。
【0056】
(1)上記実施形態において示した各要素の寸法、形状、位置は例示であり、本発明はこれに限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲において任意に決定することができる。
【0057】
(2)上記実施形態において示したスクリーン本体10、反射層28a,38c等の材質は例示であり、本発明はこれに限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲において任意に決定することができる。
【0058】
(3)上記実施形態においては、転写板基板準備工程と、マスク層形成工程と、転写板製造工程と、成形型製造工程と、凹面形成工程とをこの順序で含む反射型スクリーンの製造方法により反射型スクリーン1を製造したが、本発明はこれに限定されるものではない。反射型スクリーンの基となるスクリーン基板を用意するスクリーン基板準備工程と、スクリーン基板の表面に、第1凹面に対応する円形状の第1孔と、第2凹面に対応する細長形状の第2孔とを有するマスク層を形成するマスク層形成工程と、エッチングによりスクリーン基板に第1凹面及び第2凹面を形成する凹面形成工程とをこの順序で含む反射型スクリーンの製造方法により反射型スクリーンを製造してもよい。また、上記実施形態における転写板102に反射層を形成し、反射型スクリーンとすることもできる。このような方法とすることにより、本発明の反射型スクリーンを短い工程で製造することが可能となる。
【符号の説明】
【0059】
1,1a…反射型スクリーン、10,11…スクリーン本体、20a,20b,20c…第1凹面、21a,21b,21c,21d,21e,21f…凹面、22a…(第1凹面の)略球面状の内面、28a,28f,38c…反射層、30a,30b,30c…第2凹面、30cax…第2凹面の軸、32c…略円柱状の内面、34c,36c…(第2凹面の)略球面状の内面、100…転写板基板、102…転写板、110…マスク層、120a,120b,120c…第1孔、122a,122b,122c…第1凹面に対応する凹面、130a,130b,130c…第2孔、132a,132b,132c…第2凹面に対応する凹面、200…成形型、220a,220b,220c…第1凹面に対応する凸面、230a,230b,230c…第2凹面に対応する凸面、500…近接投射型プロジェクター、510…投写光学系、C…基準円、P…基準点、R1…第1領域、R2…第2領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
投写面側に複数の凹面が形成され、近接投写型プロジェクターとともに用いる反射型スクリーンであって、
前記投写面を含む基準平面における、前記反射型スクリーンの中心から前記近接投写型プロジェクターを配置する側に偏倚した所定の点を基準点としたとき、
前記反射型スクリーンは、前記基準点の近くに位置する第1領域と、前記基準点から遠くに位置する第2領域とに区分され、
前記第1領域には、前記複数の凹面として、略球面状の内面を有する複数の第1凹面が形成され、
前記第2領域には、前記複数の凹面として、略円柱状の内面と、当該略円柱状の内面の両端部に形成された略球面状の内面とを有する第2凹面であって、当該第2凹面から前記基準点への方向と当該第2凹面の長軸方向とが略一致する複数の第2凹面が形成されていることを特徴とする反射型スクリーン。
【請求項2】
請求項1に記載の反射型スクリーンにおいて、
前記凹面における一部の領域には、前記近接投射型プロジェクターからの光を反射する反射層が形成されていることを特徴とする反射型スクリーン。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の反射型スクリーンにおいて、
前記複数の凹面は、前記基準点から遠い位置に形成されている前記第2凹面ほど、前記略円柱状の内面の長さが長くなるように形成されていることを特徴とする反射型スクリーン。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の反射型スクリーンにおいて、
前記複数の凹面は、前記基準点から遠い位置に形成されている前記凹面ほど、基準点方向に隣接する他の凹面との距離が大きくなるように形成されていることを特徴とする反射型スクリーン。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の反射型スクリーンにおいて、
前記複数の凹面は、前記基準点を中心として略同心円状に形成され、
前記基準点を中心とし、所定の半径を有する円を基準円としたとき、
前記第1領域は、前記反射型スクリーンにおける前記基準円の内側の領域であり、
前記第2領域は、前記反射型スクリーンにおける前記基準円の外側の領域であることを特徴とする反射型スクリーン。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の反射型スクリーンを製造するための反射型スクリーンの製造方法であって、
転写板の基となる転写板基板を準備する転写板基板準備工程と、
前記転写板基板の表面に、前記第1凹面に対応する円形状の第1孔と、前記第2凹面に対応する細長形状の第2孔とを有するマスク層を形成するマスク層形成工程と、
エッチングにより前記転写板基板に前記第1凹面及び前記第2凹面に対応する凹面を形成して前記転写板を製造する転写板製造工程と、
転写により、前記転写板から前記第1凹面及び前記第2凹面に対応する凸面を有する成形型を製造する成形型製造工程と、
転写により、前記成形型から前記反射型スクリーンの基となるスクリーン基板に前記第1凹面及び前記第2凹面を形成する凹面形成工程とをこの順序で含むことを特徴とする反射型スクリーンの製造方法。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれかに記載の反射型スクリーンを製造するための反射型スクリーンの製造方法であって、
反射型スクリーンの基となるスクリーン基板を用意するスクリーン基板準備工程と、
前記スクリーン基板の表面に、前記第1凹面に対応する円形状の第1孔と、前記第2凹面に対応する細長形状の第2孔とを有するマスク層を形成するマスク層形成工程と、
エッチングにより前記スクリーン基板に前記第1凹面及び前記第2凹面を形成する凹面形成工程とをこの順序で含むことを特徴とする反射型スクリーンの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−203618(P2011−203618A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−72415(P2010−72415)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】