説明

反射型光学センサ

【課題】迷光および光軸ずれによる精度の悪化、および特性バラツキが大幅に低減された反射型光学センサを提供する。
【解決手段】本発明に係る反射型光学センサ1は、基板2と、基板2の同一面上に備えられた発光素子3および受光素子4と、投光レンズ部6aおよび受光レンズ部6bが一体成形されたレンズ部材6とを有し、レンズ部材6中を発光素子3側から受光素子4側に向かって伝播する迷光L’を遮光する第1の遮光手段であるスリット9を設け、さらに、基板2中を発光素子3側から受光素子4側に向かって伝播する迷光L”を遮光する第2の遮光手段である貫通溝10を設けたことにより、受光素子4が反射光Lのみを検知することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光学センサに関し、特に発光素子から放射された光を測定対象物に投光するとともに、測定対象物からの反射光を受光素子で検知することにより、測定対象物の有無、距離、表面状態、色、温度等を測定することができる反射型光学センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の反射型光学センサは、例えば図4(A)のように構成されている。
すなわち、反射型光学センサ1は、基板2と、同一の基板2上に実装される発光素子3および受光素子4と、発光素子3の上方に位置する投光レンズ20と、受光素子4の上方に位置する受光レンズ21と、投光レンズ20および受光レンズ21のさらに上方に位置する透明カバー14とを備える。発光素子3および受光素子4は、基板2上に備えられるケース5によって別々に収納される。
投光レンズ20および受光レンズ21は、それぞれケース5の開口部に備えられる。また、透明カバー14は、ケース5内に水、埃等が侵入するのを防止する。
【0003】
この反射型光学センサ1によれば、発光素子3から放射される放射光が投光レンズ20によって集光されて測定対象物30に照射される。
これとともに、測定対象物30からの反射光Lが受光レンズ21によって集光され、受光素子4に照射される。そして、受光素子4が受光した反射光Lの多寡等に応じて、測定対象物30の有無、測定対象物30との距離、測定対象物30の表面状態、色、温度等を特定することができる。
【0004】
一般に、電気製品の小形化、高精度化に伴って、反射型光学センサ1には、小形で、かつ高精度に上記測定対象物30に関する情報を測定することが求められる。
したがって、受光素子4に反射光L以外の光が照射されないこと、および投・受光レンズ20、21と受・発光素子4、3の幾何学的配置等によって決定される光軸がずれないことが、反射型光学センサ1に要求される特性を確保する上で重要である。
【0005】
しかしながら、図4(A)に示す従来の反射型光学センサ1では、透明カバー14内を反射しつつ伝播する迷光L’、および基板2を透過して伝播する迷光L”の影響で、上記した測定対象物30に関する情報の精度が悪化する場合があった。
また、この反射型センサ1では、2つのレンズが別部材となっているため、投光レンズ20および受光レンズ21の組成、形状等が個々に変動することによって、光軸がずれ、反射型センサ1全体としての検出特性にバラツキが生じ易かった。
【0006】
そこで従来から、図4(B)に示すように、透明カバー14の一部に光吸収部材22を設け、迷光L’による精度の悪化を防止する反射型光学センサが検討されている(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、この反射型光学センサ1においても、基板2を透過する迷光L”に起因する精度の悪化は防げなかった。
また、図4(B)に示す反射型光学センサ1は、相変わらず2つのレンズが別部材となっているので、光軸がずれることによる検出特性のバラツキを解消することができなかった。
【0007】
図5に、他の従来の反射型光学センサを示す。この反射型光学センサ1では、レンズ部材6に投光レンズ部6aと受光レンズ部6bを形成することにより、2つのレンズを一体成形しているので、光軸がずれることによる検出特性のバラツキを大幅に改善することができる。
また、この反射型光学センサ1では、ケース5内への水、埃等の侵入を防止する透明カバー14を設ける必要がない。
【特許文献1】特開2001―250979号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、図5に示す反射型光学センサ1では、光軸のずれを防止するために2つのレンズを一体成形しているので、レンズ部材6中を透過する迷光L’によって、反射型光学センサ1の精度が悪化する場合があった。
また、この反射型光学センサ1においても、基板2を透過する迷光L”に起因する精度の悪化は防げなかった。
【0009】
そこで本発明は、迷光および光軸ずれによる精度の悪化、および特性バラツキを大幅に低減することができる反射型光学センサを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明に係る反射型光学センサは、
基板と、前記基板の同一面上に備えられた発光素子および受光素子と、投光レンズ部および受光レンズ部が一体成形されたレンズ部材とを有し、
前記発光素子から放射された光が前記投光レンズ部を通って測定対象物に投光され、投光された光に対する前記測定対象物からの反射光が前記受光レンズ部を通って前記受光素子で検知される反射型光学センサであって、
前記レンズ部材中を、前記発光素子側から前記受光素子側に向かって伝播する迷光を遮光する第1の遮光手段を設けたことを特徴とする。
なお、本明細書中の用語「迷光」とは、発光素子によって放射された光のうち、測定対象物に反射することなく受光素子側に伝播する光を意味する。
【0011】
好ましくは、前記第1の遮光手段は、前記投光レンズ部と前記受光レンズ部とを隔てるように前記レンズ部材に形成されたスリットであり、前記スリットには、遮光性を有する遮光壁が嵌合される。
【0012】
好ましくは、前記第1の遮光手段は、前記レンズ部材内において、前記投光レンズ部と前記受光レンズ部との間に形成された、レーザー加工による傷の集合体である。
【0013】
また、上記課題を解決するために、本発明に係る反射型光学センサは、さらに、前記基板中を前記発光素子側から前記受光素子側に向かって伝播する迷光を遮光する第2の遮光手段を設けたことを特徴とする。
【0014】
好ましくは、前記第2の遮光手段は、前記発光素子が備えられた領域と前記受光素子が備えられた領域とを隔てるように前記基板に形成された貫通溝であり、前記貫通溝には、遮光性を有する遮光壁が嵌合される。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る反射型光学センサによれば、受光素子に入射する迷光を遮光するとともに、2つのレンズを一体成形することにより光軸ずれを生じにくくしたので、これらに起因する精度の悪化、および特性バラツキが大幅に低減された反射型光学センサを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して、本発明の好ましい実施形態について説明する。
【実施例1】
【0017】
図1は、実施例1に係る反射型光学センサの構成を示す断面図である。
この反射型光学センサ1では、レンズ部材6の投光レンズ部6aと受光レンズ部6bとを隔てるようなスリット9がレンズ部材6に形成される。これにより、レンズ部材6内を投光レンズ部6a側から受光レンズ部6b側へ透過していく迷光L’が遮光される。
また、基板2には、発光素子3が備えられた領域と受光素子4が備えられた領域を隔てるような貫通溝10が形成される。これにより、基板2を透過して伝播する迷光L”も遮光される。
【0018】
スリット9と貫通溝10を形成した本実施例に係る反射型光学センサ1によれば、迷光L’およびL”を遮光することができるので、反射光Lのみが受光素子4で測定され、測定対象物30に関する情報を高精度に測定することができる。
【0019】
なお、本実施例に係る反射型光学センサ1では、スリット9をレンズ部材6のケース2側(下面側)に形成したが、スリット9は、測定対象物30側(上面側)に形成してもよいし、下面側から上面側まで貫通するように形成することもできる。また、本実施例では、スリット9の幅は0.5mmとしたが、μmオーダーの微小なスリット幅でも同様の効果を得ることができる。
【0020】
さらに、本実施例では、レンズ部材6、ケース5、基板2の材料を、それぞれアクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ガラス基材エポキシ樹脂積層プリント基板としたが、適宜別の材料等に置き換えてもよい。ただし、ケース5の材料は遮光性を有することが必要である。
【実施例2】
【0021】
図2は、実施例2に係る反射型光学センサの構成を示す断面図である。
この反射型光学センサ1では、実施例1のスリット9および貫通溝10に嵌合する遮光壁8がケース5から突出するように形成される。レンズ部材6、ケース5、基板2の材料については、実施例1に係る反射型光学センサと同様である。また、遮光壁8はケース5と同一の材料からなり、ケース5と一体成形することができる。
【0022】
遮光壁8を形成した本実施例に係る反射型光学センサ1によれば、スリット9や貫通溝10を通り抜けて受光素子4側へ伝搬する僅かな迷光9をも遮光することができる。
したがって、本実施例に係る反射型光学センサ1によれば、実施例1に係る反射型光学センサ1よりも、さらに測定対象物30に関する情報を高精度に測定することができる。
【0023】
なお、本実施例に係る反射型光学センサ1によれば、遮光壁8を、スリット9および貫通溝10と同一の形状とすることにより、レンズ部材6とケース5、ケース5と基板2の位置合わせが容易になるという副次的な効果を得ることができる。
ただし、このような効果が不要の場合は、遮光壁8の形状をスリット9および貫通溝10の形状と同一にする必要はなく、これらに嵌合できる任意の形状にすることができる。
【実施例3】
【0024】
図3は、実施例3に係る反射型光学センサの構成を示す断面図である。
この反射型光学センサ1では、レンズ部材6内において投光レンズ部6aと受光レンズ部6bとの間の領域11に、レーザー加工による微細な傷が多数形成される。この加工方法は、一般的に“レーザーエングレービング”と呼ばれるもので、複数の方向から照射されたレーザーを被加工部材(本実施例では、レンズ部材6)の内部の特定位置で交差させることにより、被加工部材の内部に微細な傷を付けることができる。
そして、これを連続して行うことにより、特定の領域11に微細な傷の集合体を形成することができる。
【0025】
レーザー加工領域11では、傷の集合体のために迷光L’は散乱し、受光素子4側へはほとんど透過しない。したがって、本実施例に係る反射型光学センサ1によれば、実施例1のスリット9または実施例2の遮光壁8と同様の遮光効果を得ることができるので、反射光Lのみが受光素子4で測定され、測定対象物30に関する情報を高精度に測定することができる。
【0026】
以上、本発明に係る反射型光学センサの好ましい実施形態について説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではない。
例えば、本発明は、発光素子3および受光素子4のいずれか一方、または両方を複数備えたタイプの反射型光学センサにも適用することができる。また、遮光壁8、スリット9、貫通溝10およびレーザー加工領域11等の遮光手段は、それぞれ複数形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】実施例1に係る反射型光学センサの断面図である。
【図2】実施例2に係る反射型光学センサの断面図である。
【図3】実施例3に係る反射型光学センサの断面図である。
【図4】(A)(B)ともに、投光レンズと受光レンズを別部材とした従来の反射型光学センサの断面図である。
【図5】投光レンズと受光レンズを一体成形した従来の反射型光学センサの断面図である。
【符号の説明】
【0028】
1 反射型光学センサ
2 基板
3 発光素子
4 受光素子
5 ホルダー
6 レンズ
6a 投光レンズ部
6b 受光レンズ部
8 遮光壁
9 スリット
10 貫通溝
11 レーザー加工領域
20 投光レンズ
21 受光レンズ
22 光吸収部材
30 測定対象物
L 光
L’、L” 迷光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、前記基板の同一面上に備えられた発光素子および受光素子と、投光レンズ部および受光レンズ部が一体成形されたレンズ部材とを有し、
前記発光素子から放射された光が前記投光レンズ部を通って測定対象物に投光され、投光された光に対する前記測定対象物からの反射光が前記受光レンズ部を通って前記受光素子で検知される反射型光学センサであって、
前記レンズ部材中を、前記発光素子側から前記受光素子側に向かって伝播する迷光を遮光する第1の遮光手段を設けたことを特徴とする反射型光学センサ。
【請求項2】
前記第1の遮光手段は、前記投光レンズ部と前記受光レンズ部とを隔てるように前記レンズ部材に形成されたスリットであることを特徴とする請求項1に記載の反射型光学センサ。
【請求項3】
前記スリットに、遮光性を有する遮光壁を嵌合させたことを特徴とする請求項2に記載の反射型光学センサ。
【請求項4】
前記第1の遮光手段は、前記レンズ部材内において、前記投光レンズ部と前記受光レンズ部との間に形成された、レーザー加工による傷の集合体であることを特徴とする請求項1に記載の反射型光学センサ。
【請求項5】
前記基板中を、前記発光素子側から前記受光素子側に向かって伝播する迷光を遮光する第2の遮光手段を設けたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の反射型光学センサ。
【請求項6】
前記第2の遮光手段は、前記発光素子が備えられた領域と前記受光素子が備えられた領域とを隔てるように前記基板に形成された貫通溝であることを特徴とする請求項5に記載の反射型光学センサ。
【請求項7】
前記貫通溝に、遮光性を有する遮光壁を嵌合させたことを特徴とする請求項6に記載の反射型光学センサ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate