説明

反射型照明装置

【課題】LEDから射出される中央部の強度の高い光を有効に使用することができる反射型照明装置を提供する。
【解決手段】表側に凹面状をなす反射面11が形成された反射鏡1と、前記反射面11の中央部12に対向するように設けられた基板4と、前記基板4に取り付けられ、前記反射面11に向かって光を射出するLED3と、を備えた反射型照明装置100であって、前記LED3が光を射出するLEDチップ31と、前記LEDチップ31と前記反射面11との間に設けられたレンズ32とを具備し、前記レンズ32が、前記LEDチップ31から射出された光軸近傍の光を前記反射面11の外縁部側へと屈折させるように構成した

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手術等の医用の他、展示場あるいは劇場等にでも好適に用いることができる反射型照明装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の反射型照明装置は、光源から射出された光を一旦反射鏡で反射させて、所定領域を照明するものである。光源には例えばハロゲンランプや水銀灯が用いられていたが、近年、LEDを用いたものも開発されている。
【0003】
例えば、本願発明者らは、特許文献1で示されるようなLEDを用いた反射型照明装置を出願している。より具体的には、この反射型照明装置は、図14に示すように、凹面鏡1Aと、前記凹面鏡1の裏側に取り付けられる放熱構造2Aと、前記凹面鏡1Aに対向するように設けられたLED3Aと、前記放熱構造2Aと、前記LED3Aが載置されている基板4Aとを、前記凹面鏡1Aの中央部12Aを通過して接続するヒートパイプ5Aと、を備えたものであり、LED3A側に放熱構造2Aを設けるのではなく、凹面鏡1A側において当該凹面鏡1Aの裏側から前記基板4Aとは反対側へと突出させて放熱構造2Aを設けて反射光を遮ることなくLEDの放熱を行えるように構成したものである。
【0004】
ところで、このように放熱構造2Aを凹面鏡1Aの裏側に設けて遮光される光の量を減らしたとしても、図15(b)の拡大図に示すように前記LED3Aから射出される光が略ランバーシアン分布を有していると、前記凹面鏡1Aの中央部にもLEDの光が入射することになる。すると、図15(a)に示すようにLED3Aから凹面鏡1Aの中央部に入射した後に反射された光(図中において点線で示す)は、前記LED3A又は基板4Aに遮られるため、照射対象に到達することができず無駄になってしまっている。このため、LED3Aから射出された光のうち特に強度の高い光である光軸近傍の光の使用効率が低下してしまっているという問題が依然として残っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−108721号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上述したような問題を鑑みてなされたものであり、LEDから射出される中央部の強度の高い光が、反射鏡にて反射した後にLED又はLEDの設けられている基板により遮られるのを防ぎ、LEDから射出される光を無駄なく有効に使用することができる反射型照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、表側に凹面状をなす反射面が形成された反射鏡と、前記反射面の中央部に対向するように設けられた基板と、前記基板に取り付けられ、前記反射面に向かって光を射出するLEDと、を備えた反射型照明装置であって、前記LEDが光を射出するLEDチップと、前記LEDチップと前記反射面との間に設けられたレンズとを具備し、前記レンズが、前記LEDチップから射出された光軸近傍の光を前記反射面の外縁部側へと屈折させるように構成されていることを特徴とする。
【0008】
このようなものであれば、LEDから射出された光軸近傍の光は、前記反射面の中央部以外の部分に入射する、又は、中央部に入射したとしても反射面に対してある程度入射角のある状態で入射するので、前記反射面からの反射光を前記LED又は前記基板を避けて照射対象に到達させることができるようになる。つまり、従来であればLED又は基板に遮られていた光も有効に利用する事ができ、より好適に照射対象を照明する事が可能となる。
【0009】
前記反射面の中央部に入射する光の量を少なくし、反射面から照射対象に到達する光の量をより多くして高効率にするための具体的な実施の態様としては、前記レンズの中央部の形状がクサビ形状、凹レンズ形状、又は凸レンズ形状に形成されているものが挙げられる。
【0010】
反射面において反射された光を大きく遮ることなく、LEDにおいて発生する熱を効率よく放熱し、LEDの故障等を防ぐことができるようにするには、一端が前記基板に固着されている棒状の熱伝導部材を更に備え、前記熱伝導部材が、前記基板から前記反射鏡の外縁部へ向かって放射状に設けられており、前記熱伝導部材の他端が前記反射鏡に固着されていればよい。
【0011】
このようなものであれば、前記熱伝導部材が棒状のものであり、前記基板から前記反射鏡の外縁部へと放射状に設けられているので、前記熱伝導部材の両端が前記基板及び前記反射鏡に固着されているとしても、前記基板から見て斜めに取り付けられている当該熱伝導部材をたわませることが可能であることから、そのたわみによってLEDの位置や向きを微調整する事も可能となる。
【0012】
また、前記反射鏡自体に前記熱伝導部材が固着されているので、前記反射鏡自体から放熱させることができる。従って、反射鏡の裏側から光軸に沿って大きく突出させて放熱構造を設ける必要が無く、放熱構造を無くしたり、その大きさを小さく構成したり事が可能となる。この結果、放熱に関する制限が弱くなるので、前記反射鏡の裏面を略平面に形成する等の自由度が大きくなり、この反射型照明装置を天井等の平面に取り付けることが容易になる。
【0013】
さらに、基板と反射鏡とが直接熱伝導部材で接続されるので、従来に比べて熱を移送する距離を小さくすることができるので、放熱効率をより向上させることが可能となる。
【0014】
加えて、前記熱伝導部材を反射面の中央部に取り付けたり、挿入するための穴を設けたりする必要がなく、LEDから射出される中央部の強度の強い光を無駄にすることなく反射させることができるようになる。さらに、反射面の中央部を通るように前記伝熱部材が設けられるのではなく、反射鏡の外縁部に一端を設けられるので、前記熱伝導部材により前記LEDから射出された光が遮られることがなく、略全ての光を反射面まで到達させることができるようになる。また、前記熱伝導部材は前記基板から前記反射鏡の外縁部へと放射状に設けられている棒状のものであるので、従来に比べてその径を小さくしても、前記LED及び前記基板を支持させることができるとともに、反射面において反射された光をほとんど遮らないようにすることができる。従って、反射面から照射される反射型照装置から射出される光量をさらに向上させることができるようになる。
【0015】
より放熱効果を高めるためには、前記反射鏡の裏側に放熱構造が形成されているものであればよい。このようなものであれば、LEDと放熱構造との距離を非常に短いものにすることができ、例えば、空気を媒介にした熱伝導による放熱効果の寄与も大きくすることができる。
【0016】
熱伝導部材の具体的な実施の態様としては、前記熱伝導部材がヒートパイプであるものがあげられる。このようなものであれば、非常に細い径の熱伝導部材とすることができるので、反射面において反射された光が遮られるのを最小限にすることができ、光量を損なわないようにすることができる。
【0017】
前記反射型照明装置の照射範囲を調整できるようにするには、前記基板の前記反射面に対する距離を調節する位置調節機構を更に備えたものであればよい。
【0018】
前記熱伝導部材と、前記反射鏡との固着具合を向上させて熱伝導の効率を向上させるとともに、前記LEDと前記反射面と間の相対位置の調整できる範囲を大きくするには、前記放熱構造が、反射鏡の外側に設けられ、熱伝導部材の他端が固着される固着部と、前記反射面の裏側に接触して接触部と、前記固着部と前記接触部の間に設けられ、らせん状に形成されたフィン部と、から構成されるものであればよい。
【0019】
複雑な機構を用いずに、熱伝導部材の熱伝導効率を高めるとともに、LEDの反射面に対する可動範囲を大きくするための実施の態様としては、前記熱伝導部材が、前記反射鏡と前記基板との間に曲げて設けられているものであればよい。
【0020】
LEDの熱を効率よく放熱するための別の実施態様としては、一端が前記基板に固着されている棒状の熱伝導部材と、前記反射鏡の裏側に設けられた放熱構造と、を備え、前記熱伝導部材が、前記基板から前記反射鏡の中央部を貫通して、その他端が前記放熱構造に固着されていればよい。このようなものであっても、前記レンズの構成により、反射面からの反射光が前記LED又は前記基板により遮られる量が小さくなっているので、光の使用効率を従来と比べて高く、しかも、LEDの放熱も効率よく行える。
【0021】
前記反射面に対してほこりがつくのを防ぎつつ、反射面から反射された光が損なわれないようにするための具体的な実施の態様としては、前記基板が透光性を有するものであり、前記反射鏡の凹面を塞ぐように設けられたものが挙げられる。
【発明の効果】
【0022】
このように本発明によれば、レンズによってLEDからの射出光のうち光軸近傍の光を前記反射面の外縁部側へと屈折させているので、反射面からの反射光がLED又は基板に遮られてしまうのを防ぎ、LEDから射出された光の使用効率を良くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1実施形態に係る反射型照明装置を示す模式的斜視図。
【図2】第1実施形態における反射型照明装置の構造を示す模式的断面図。
【図3】第1実施形態における反射型照明装置の使用状態の一例を示す模式図。
【図4】第1実施形態におけるレンズの構造及びLEDから射出される光の軌跡を示す模式図。
【図5】第1実施形態におけるLEDの配光特性図。
【図6】第1実施形態の変形実施形態におけるレンズの構造及びLEDから射出される光の軌跡を示す模式図。
【図7】第1実施形態の変形実施形態におけるLEDの配光特性図。
【図8】第1実施形態の更に別の変形実施形態におけるレンズの構造及びLEDから射出される光の軌跡を示す模式図。
【図9】第1実施形態の更に異なる変形実施形態における反射型照明装置の構造を示す模式的断面図。
【図10】本発明の第2実施形態に係る反射型照明装置の構造を示す模式的断面図。
【図11】本発明の第3実施形態に係る反射型照明装置の構造を示す模式的断面図。
【図12】本発明の第4実施形態に係る反射型照明装置の構造及び光の軌跡を示す模式図。
【図13】本発明の第5実施形態に係る反射型照明装置の構造及び光の軌跡を示す模式図。
【図14】従来の反射型照明装置の構造を示す模式的断面図。
【図15】従来の反射型照明装置における、LEDから射出された光の軌跡を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の第1実施形態について図面を参照して説明する。
【0025】
本実施形態に係る反射型照明装置100は、医療用、特に歯科治療に用いられる反射型の無影照明装置であって、図1及び図2に示すように、表側に凹面状をなす反射面11が形成された反射鏡1と、前記反射面11の中央部12に対向するように設けられた基板4と、前記基板4に取り付けられ、前記反射面11に向かって光を射出するLED3と、を具備し、前記反射鏡1の裏側に放熱構造2が形成されるとともに、前記放熱構造2と、前記基板4とを熱的に接続する熱伝導部材たるヒートパイプ5を備えたものである。そして、この反射型照明装置100は、図3に示すように、LED3からの光を一旦反射面11で内方に向かうように反射させて、所定領域を照明するものであり、LED3及び基板4だけでなく、照射領域及び反射面11の間に介在する歯科医師の指や治療用具Jの影が所定領域に生じないように照明するものである。以下に各部について説明する。
【0026】
前記反射鏡1は、例えば熱伝導性のよいアルミや銅等の金属から形成された概略短円筒形状から椀形状を取り除いた形状をなしており、その内面にアルミ蒸着を施すことにより前記反射面11が形成してある。前記反射鏡1の表側に形成してある反射面11は、凹面状をなすものであり、具体的には放物面鏡又は楕円面鏡である。
【0027】
前記反射鏡1の裏側に形成してある放熱構造2は、光軸を中心とした円筒体の側面に円環状の溝を一定間隔ごとに設けることにより形成されたフィン21である。このフィン21を形成する溝の深さは、表側の反射面11に到達しない範囲で可能な限り深く形成してある。つまり、この放熱構造2であるフィン21は反射鏡1自体に直設形成してあるものであることから、反射鏡1に伝熱された熱を速やかに放熱することができる。
【0028】
前記基板4は、金属(例えばアルミや銅)等の熱伝導性に富む高熱伝導性材料から形成された切頭円錐形状のものであり、ヒートパイプ5の先端部がその側面に略垂直に入射するように設けられている。そして、その反射面11側には、LED3が設けられ、LED3から射出された光は、直接照明対象物(図示しない)に照射されることなく反射面11に照射されるようにしている。反射面11により反射された光が照明対象物に照射される。
【0029】
前記LED3は、基板4の反射面11側の表面に設けられ、反射面11に向かって可視光域の光を射出するものである。そして、このLED3は、R(赤)、G(緑)、B(青)の光を射出する発光素子が搭載されたLEDチップ31を含み、それら各色が混ざるように射出する。本実施形態においては、1つのLED3が基板44の反射面側表面の中央部12に設けられている。
【0030】
前記LED3は、光を射出するLEDチップ31と、前記LEDチップ31と前記反射面12との間に設けられたレンズ32とを具備し、前記レンズ32が、前記LEDチップ31から射出された光軸近傍(中央部)の光を反射面の外縁部(周辺部側)へ屈折させるように構成してある。
【0031】
なお、以下の説明で用いている図4においては、反射鏡1と基板4とを接続するヒートパイプ5を分かりやすさのため省略して記載しているとともに、前記LED3の位置を前記反射面の焦点に配置し、反射光が略平行光となる例を用いて説明している。また、各図においては、(a)に全体図を、(b)にLED3周辺の拡大図を示している。
【0032】
図4には、前記レンズ32が前記LEDチップ31を覆う封止材により形成してある実施形態を示している。図4(b)の拡大図に示すようにこのレンズ32は略半球状のレンズであって、その中央部である光の射出方向にある天頂部分に逆円錐状の凹部、すなわち断面形状がくさび状の切り込みを形成してある。なお、図4(b)では、分かりやすさのためレンズ32の天頂を通るように切断した断面を示してある。この凹部により、LEDチップ31から射出され中央部を通過する光を周辺側へと屈折させるように構成してある。言い換えると、レンズ中央部を通過する光軸近傍の光を光軸から離れる方向へと屈折するように中央部のみ屈折の形態が変化するようにしてある。
【0033】
このようなくさび状の切り込みを形成したレンズ32を用いた場合の配光特性は図5のようになる。この図5から明らかなように光軸付近の光量がほとんど無くなるとともに、外縁部側の光量が大きくなっていることが分かる。また、中央部のハッチングで示した領域R1、R2の面積と、外側の部分について別のハッチングで示した領域I1、I2の面積はそれぞれ略同じであり、光軸付近に照射されなくなった光が略そのまま外縁部側へと照射されるようになっている。
【0034】
このように構成されたレンズ32を用いることにより、LED3の配向特性は、図4(a)のように本来反射面11の中央部12に入射するはずであった点線で示される光は、反射面11の中央部12から遠ざけることができ、反射されてもLED3や基板4により遮られてしまうことを防ぐことができる。
【0035】
従って、LED3から射出される光を略無駄なく使用することができるので、光の使用効率を従来に比べて格段に向上することができる。
【0036】
前記ヒートパイプ53は、図1及び図2等に示すようにその先端部が前記基板4に固着し、その基端部が反射鏡1の外縁部13に固着してあるものである。ここで、本実施形態では溶接又は圧入により基板4及び反射鏡1とヒートパイプ5とを固着してあり、十分な熱伝導が行われるように構成してある。このヒートパイプ5は、LED3で発生した熱を前記放熱構造2に移送する機能と、前記基板4及びLED3を所定位置に保持する機能という2つの機能を兼ね備えたものである。本実施形態では、4本のヒートパイプ5を前記基板4から前記反射鏡1の外縁部13へ放射状に、光軸方向から見て90度ずつに設けることにより、前記基板4及び前記LED3を支持及び伝熱するようにしてある。このヒートパイプ5についての具体的な構成について説明すると、例えば銅、アルミニウム又はステンレス鋼等で形成されたパイプであり、その内壁に毛細管構造としての溝構造が形成され、内部に少量の水、フレオン又はアンモニア等の熱媒体が真空封入されたものである。
【0037】
このように構成された反射型照明装置100によれば、前記基板4から前記反射鏡1の外縁部13へと放射状にヒートパイプ5が設けてあるので、前記基板4及び前記反射鏡1に前記ヒートパイプ5の両端がそれぞれ溶接又は圧入により完全に固定されているとしても、斜めに設けられたヒートパイプ5は中央部をたわませることが可能であり、前記基板4の位置を微小に変更することができる。従って、ヒートパイプ5を反射鏡1に直接固着し、熱の移送を十分に行うことができるようにしながら、LEDの位置や向きを調整することが可能となる。
【0038】
また、前記反射鏡1の裏側に放熱構造2が設けられているので、余計な部材を介することなく、前記LED3で発生した熱を前記基板4、前記ヒートパイプ5によって前記放熱構造2に移送し、放熱することができる。従って、従来に比べて、ヒートパイプ5により熱が移送される距離を大幅に短くすることができるので、放熱効率を向上させることができる。
【0039】
さらに、前記ヒートパイプ5が前記基板4から前記反射鏡1の外縁部13へと設けられているので、従来のように反射鏡1の中央部12にヒートパイプ5が設けられおり、反射面11の中央部12に穴等が設けられていた場合に比べて、LED3から射出される光のうち中央部12の強度の強いものを全く無駄にすることなく反射させることができる。つまり、反射面11から帰ってくる反射光の光量をより多くすることができ、反射型照明装置100としての光量をより向上させることができる。
【0040】
また、前記基板4から前記反射光の外縁部13へと複数のヒートパイプ5が放射状に設けてあり、ヒートパイプ5同士が斜めに支え合うような形状となるため、支えられる荷重を垂直に設けた場合に比べて向上させることができる。つまり、ヒートパイプ5の径を小さくしたとしても、前記LED3及び前記基板4を支えることができるとともに、径を小さくすることができるので、反射面11から反射された光がヒートパイプ5により遮られるのを最小限にすることができる。つまり、ヒートパイプ5により照射できる光量が損なわれることがほとんどないようにすることができる。
【0041】
加えて、前記基板4から反射鏡1の中央部12へと延びるヒートパイプ5が存在しないので、LED3から射出された光が反射面11に到達するまでヒートパイプ5によって遮られることがないので、反射型照明装置100全体としての光量のロスを大幅に改善することができる。
【0042】
さらに、ヒートパイプ5を前記反射鏡1へと直接固着するようにして反射鏡1自体から放熱させるように構成してあるので、従来のようにフィン等の放熱部材を反射面の裏面から大きく突出させるなどして放熱量を大きくする必要が無い。つまり、放熱構造から来る設計の制限が弱くなり、反射面の裏側の形状を本実施形態のように略平面にすることができる等形状の設計自由度が大きくなる。その結果、本実施形態の反射型照明装置100を例えば天井等の平面に設ける事が容易となり、様々な用途に対して用いることが可能となる。
【0043】
その他の実施形態について説明する。なお、前記実施形態に対応する部材には同じ符号を付すこととする。
【0044】
前記第1実施形態のレンズ32についてはその他の形状であっても構わない。例えば、図6(b)に示すように、レンズ32の中央部のみが非球面凹レンズ状に形成してあってもよい。このようなレンズ形状にした場合の配光特性を図7に示す。図5に示すくさび状にした場合の配光特性と比べて、光軸近傍に照射される光量が若干多くなっているものの、やはり光軸近傍に照射されるはずであった光を外縁部側へとそのまま振り分ける事ができていることが分かる。従って、この場合図4に示したレンズ32を用いた場合と略同様に反射型照明装置100における光の使用効率を向上させることができる。
【0045】
さらに、図8に示すようにレンズ32の中央部が突出させてあり、非球面凸レンズ形状に形成してあってもよい。この場合は、図4、図6に示した場合とは異なり、レンズ32の中央部を通過した光は一度焦点に集められたのちに、光軸から離れていくことなる。このようなものであってもLEDの前方0度付近の配光を略ゼロにすることができ、光の使用効率を向上させることができる。
【0046】
また前記第1実施形態では、レンズの形状を中央部のみ変化させることによって前方0度付近の配光をなくすようにしていたが、例えば、材質の選択等によりレンズの屈折率を中央部のみ異ならせることによって、上述した配光を達成できるようにしても構わない。
【0047】
なお、図4、図6、図8の説明では、反射鏡11の焦点近傍にLED3を配置する例を基準として説明しているが、その他の位置にあったとしても、LED3の前方0度付近の光を屈折させて前記反射面11の中央部12に入射することを防ぐことにより同様に光の使用効率を向上させることができる。
【0048】
図9に示すように、前記第1実施形態の反射型照明装置100がさらに、前記基板4の前記反射面11に対する距離を調節する位置調節機構6を備えたものであってもよい。具体的には、前記反射面11から前記基板4に向かって延び、前記基板4に形成された穴に挿入される棒状の案内部61と、前記案内部61に前記基板4を着脱可能に固定する固定部62と、を備えたものであればよい。前記固定部62は、前記基板4の側面に形成された前記案内部61へと向かうねじ穴と止めねじから構成されるものである。このようなものであれば、前記LED3と前記反射面11との距離を調節することができ、反射光による照射範囲を適宜調整することができるようになる。
【0049】
第2実施形態の反射型照明装置100としては図10に示すように、前記反射鏡1の裏側から曲面に対して垂直に突出するように形成された放熱構造2を有するものが挙げられる。より具体的には、前記放熱構造2は概略スプリング状に形成されたものであって、反射鏡の外側に設けられ、熱伝導部材たるヒートパイプ5の他端が固着される固着部22と、前記反射面の裏側に接触して接触部23と、前記固着部22と前記接触部23との間に設けられ、らせん状に形成されたフィン部24と、から構成されるものである。この実施形態では、一対のヒートパイプ5と前記放熱構造2が、前記反射鏡1の光軸に対して線対称となるように設けてある。このような放熱構造2であれば、スプリング状に形成されているので、予め縮めておき、前記固着部22と前記基板4との間をヒートパイプ5で対称に取り付けておくことにより、復元力によって前記接触部23が前記反射鏡1の裏側に略隙間なく押しつけることができる。従って、LEDで発生し、ヒートパイプ5によって前記固着部22に移送された熱がフィン部24で放熱させつつ、さらに接触部23を介して反射鏡1に効率よく伝熱させることができ、放熱面積をさらに大きくすることができるので、放熱効率を向上させることができる。また、前記LED3及び前記基板4を前記反射面11に対して前後方向に動かす場合には、前記放熱構造2がスプリング状に形成されていることから、伸び縮みによりその移動量を吸収させることができ、より簡単に照明範囲の設定を行うことができるようになる。
【0050】
第3実施形態の反射型照明装置100としては、図11に示すように、反射鏡1の反射面11にヒートパイプ5の端部を固着してあるのではなく、外縁部13にある放熱構造2へと直接固着してあり、前記ヒートパイプ5が反射面11とは反対側へと曲げてあり、前記基板4に固着してあるものが挙げられる。さらに、図11に示すようにヒートパイプ5の一端は前記基板4の斜めに形成されている側面へと略垂直に入射し、他端は前記反射鏡1に対して若干傾いて入射するように構成してある。
【0051】
このようなものであれば、予めヒートパイプ5を曲げてあるので、前記基板4及びLED3と反射面11との位置関係を調節する場合において、ヒートパイプ5の軸方向の伸び縮みだけでなく、曲げでもその変化量を吸収することができ、前記基板4及びLED3の可動範囲をより大きくすることができる。
【0052】
また、例えば、反射鏡の光照射方向が鉛直下向きになっている場合であれば、前記ヒートパイプ5が反射鏡1に対して鉛直に固着されているので、斜めに入射させて固着させてある場合に比べて、放熱構造2の近傍で液化し、再び冷媒を発熱部であるLED3の近傍に返しやすくなるので放熱効率を更に向上させることができる。
【0053】
加えて、図11に示されるように反射面11とは反対側へヒートパイプ5を曲げて設ける以外にも、例えば、反射面側へヒートパイプ5を曲げて設けても構わない。
【0054】
前記実施形態において、放熱構造は、反射鏡において半径方向に伸びるフィンであったが、他の方向、例えば、軸方向等に伸びるものであっても構わない。要するに、反射鏡自体に放熱構造が形成されているものであればよい。
【0055】
前記各実施形態では4本のヒートパイプにより、前記LED及び前記基板を支持するとともに、放熱構造へ熱を移動させるようにしていたが、2本又は3本であっても構わない。また、4本より多くの複数のヒートパイプを用いても構わない。また、熱伝導部材はヒートパイプのみに限られるものではなく、その他の伝熱部材であっても構わない。加えて、前記実施形態では、ヒートパイプの基板部は反射鏡の外縁部、特に反射面の外縁部に設けられるものであったが、例えば、放熱構造であるフィンに直接取り付けられるようにしてあってもかまわない。
【0056】
次に第4実施形態の反射型照明装置100について説明する。図12(a)に示すように、第4実施形態の反射型照明装置100は、前記第1実施形態とは異なり、ヒートパイプ5を基板4から反射鏡1の外縁部に向かって放射状に設けるのではなく、前記反射面11の中央部に向かって設けてある。LED3は、図12(b)の拡大図に示すように、前記第1実施形態と略同様に天頂部に逆円錐状の凹部を有したレンズ32と、LEDチップ31とから構成してある。従って、LEDチップ32から射出された光軸近傍の光は、図12の点線で示すように反射面1の外縁部側へと屈折されるので、本来であればLED3又は基板4に入射していた反射光をLED3又は基板4により遮られることなく、照射対象へと到達させることができる。つまり、ヒートパイプ5の配置に関係なく、レンズの機能により光の使用効率を向上させることができる。
【0057】
さらに第5実施形態の反射型照明装置100について説明する。図13に示すように、第5実施形態の反射型照明装置100は、ヒートパイプ5を用いていない点が前記第1実施形態とは異なっている。より具体的には、前記反射鏡1の開口側を覆うように前記LED1が取り付けられる概略薄円板上の例えばガラス基板等の透光性を有する基板4が取り付けてあり、反射鏡1の反射面11と前記基板4とにより密閉された内部空間が形成されるようにしてある。言い換えると、前記基板4の周縁部41を前記反射鏡1の外縁部13に直接貼り付けることにより、前記反射鏡1の凹面を前記基板4で蓋をするようにしている。また、LED3を構成するレンズ32は透光性の基板4では遮られないので、前記LED3の周囲にのみ前記反射面11から光が戻ってこないように前記各実施形態に比べて例えば屈折率等を低くする等して光軸から離れていく範囲を狭く設定してある。
【0058】
このように構成されているので、前記LED3から射出された光は前記反射面11にて反射された後に前記基板4を透過して照射対象へ到達することになる。しかも、前記LED3で発生した熱は前記基板4から直接前記反射鏡1へと伝導し、その後反射鏡1に形成された放熱構造2によりすみやかに放熱されることになる。
【0059】
また、前記基板4は前記反射鏡1の表側、すなわち反射面11を塞ぐように取り付けられているので、ほこりなどが前記反射面11に付着することを防止することができる。
【0060】
前記LEDと電源を接続するには、電池等の電源を反射鏡の裏側等に設けておき、前記ヒートパイプに沿わして配線を設けるようにしても構わない。
【0061】
前記実施形態では医療用、歯科用に用いられるものであったが、例えば、自動車のライト等にも上述した反射型照明装置を用いても構わない。また、一般の照明として用いても構わない。
【0062】
その他、本発明の趣旨に反しない限りにおいて、様々な変形や実施形態の組み合わせを行っても構わない。
【符号の説明】
【0063】
100・・・反射型照明装置
1・・・反射鏡
11・・・反射面
2・・・放熱構造
3・・・LED
31・・・LEDチップ
32・・・レンズ
4・・・基板
5・・・熱伝導部材(ヒートパイプ)
6・・・位置調節機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表側に凹面状をなす反射面が形成された反射鏡と、前記反射面の中央部に対向するように設けられた基板と、前記基板に取り付けられ、前記反射面に向かって光を射出するLEDと、を備えた反射型照明装置であって、
前記LEDが光を射出するLEDチップと、前記LEDチップと前記反射面との間に設けられたレンズとを具備し、前記レンズが、前記LEDチップから射出された光軸近傍の光を前記反射面の外縁部側へと屈折させるように構成されていることを特徴とする反射型照明装置。
【請求項2】
前記レンズの中央部の形状がクサビ形状、凹レンズ形状、又は凸レンズ形状に形成されている請求項1記載の反射型照明装置。
【請求項3】
一端が前記基板に固着されている棒状の熱伝導部材を更に備え、
前記熱伝導部材が、前記基板から前記反射鏡の外縁部へ向かって放射状に設けられており、前記熱伝導部材の他端が前記反射鏡に固着されている請求項1又は2記載の反射型照明装置。
【請求項4】
前記反射鏡の裏側に放熱構造が形成されている請求項1、2又は3記載の反射型照明装置。
【請求項5】
前記熱伝導部材がヒートパイプである請求項3又は4記載の反射型照明装置。
【請求項6】
前記基板の前記反射面に対する距離を調節する位置調節機構を更に備えた請求項1、2、3、4又は5記載の反射型照明装置。
【請求項7】
前記放熱構造が、反射鏡の外側に設けられ、熱伝導部材の他端が固着される固着部と、前記反射面の裏側に接触する接触部と、前記固着部と前記接触部の間に設けられ、らせん状に形成されたフィン部と、から構成される請求項4、5又は6記載の反射型照明装置。
【請求項8】
前記熱伝導部材が、前記反射鏡と前記基板との間に曲げて設けられている請求項3、4、5、6又は7記載の反射型照明装置。
【請求項9】
一端が前記基板に固着されている棒状の熱伝導部材と、前記反射鏡の裏側に設けられた放熱構造と、を備え、
前記熱伝導部材が、前記基板から前記反射鏡の中央部を貫通して、その他端が前記放熱構造に固着されている請求項1又は2記載の反射型照明装置。
【請求項10】
前記基板が透光性を有するものであり、前記反射鏡の凹面を塞ぐように設けられた請求項1又は2記載の反射型照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−226874(P2012−226874A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−91373(P2011−91373)
【出願日】平成23年4月15日(2011.4.15)
【出願人】(596099446)シーシーエス株式会社 (121)
【Fターム(参考)】