説明

反射板及び発光装置

【課題】液晶ポリエステルの劣化を十分抑制しながらも、高度の反射率を実現できる反射板、及び該反射板を用いてなる発光装置を提供する。
【解決手段】下記いずれかの反射板、及び発光装置の提供。
(1)(A)液晶ポリエステル、(B)酸化チタンフィラー、(C)酸化ケイ素の含有量が85質量%以上であるシリカ系フィラー、及び必要に応じて(D)無機充填材を含有する樹脂組成物を成形して得られる反射板。
(2)波長460nmの光線に対する反射率が70.0%以上の反射板。
(3)前記いずれかの反射板と発光素子とを具備する発光装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射率及び耐熱性に優れた反射板、並びに該反射板を有する発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、LED(発光ダイオード)発光装置等には、軽量であり、板状に成形加工しやすいことから、樹脂製の反射板が使用されている。このようなLED発光装置の製造においては、LED素子の実装工程、LEDモジュール組立時のハンダ付け工程や封止樹脂の硬化工程等で反射板は高温環境に曝されることがある。そのため、反射板を構成する樹脂材料は高耐熱性であることが必要とされている。また、反射板の形状は、近年さらに薄膜化が要求されており、該反射板を成形するうえで一層優れた成形性も必要とされている。したがって、より優れた成形性を有する樹脂材料として、液晶ポリマー、特に液晶ポリエステルが種々検討されている。
【0003】
また、前記反射板には、発光装置の輝度を良好にするために、高い反射率が要求されている。従来の樹脂製の反射板では、メッキ加工等の表面処理を施して反射率を向上させたものがある。しかしながら、メッキ加工のような表面処理は製造工程が比較的煩雑になるといった問題があるため、このような表面処理を施して得られる反射板に代わって、高反射率を付与できるような充填材と、液晶ポリエステルとを含む樹脂組成物を用いた反射板の製造に関する検討が散見されている。例えば、液晶性樹脂(液晶ポリエステル)に、酸化チタン及び青色着色料を配合した樹脂組成物が提案され、この樹脂組成物から得られる成形体が反射率及び白色度が高く、光源周辺の反射板に好適であることが開示されている(特許文献1参照)。また、本出願人は、YI値32以下である液晶ポリエステルと酸化チタンとを含有する樹脂組成物から得られる反射板を提案している(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−320996号公報(特許請求の範囲、実施例)
【特許文献2】特開2004−256673号公報(特許請求の範囲)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1で提案されている樹脂組成物では、成形体(反射板)の反射率を実証している実施例の結果からみると、当該樹脂組成物中の酸化チタンの充填量を比較的多くしないと、良好な反射率を有するものを得ることができないことを示している(具体的には液晶ポリエステル100質量部に対する酸化チタンの充填量を100質量部以上とした樹脂組成物において、波長500nmの光線に対する反射率85%以上の成形体が得られている)。本出願人は特許文献2において、酸化チタンはその充填量を大にするほど、反射板の反射率向上を達成できるが、液晶ポリエステル自体を劣化させ易くなるという不都合があることを指摘した。そして、特許文献2では、特定のYI値を有する液晶ポリエステルを用いることで、比較的低充填量の酸化チタンを用いた樹脂組成物であっても、良好な反射率を有する反射板が得られることを示したが、その反射率にはいまだ改善の余地があった。
【0006】
そこで本発明は、液晶ポリエステルの劣化を十分抑制できる程度の酸化チタン配合量の樹脂組成物から製造することが可能であり、高度の反射率を実現できる反射板を提供することを目的とする。特に、LED素子の実装工程等の高温環境に耐え得る高耐熱性という液晶ポリエステルの特性を十分維持したまま、可視光領域の反射率が高い反射板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記のような課題を解決するべく鋭意検討を重ねた結果、本発明を完成させるに至った。
即ち本発明は、以下の<1>を提供する。
<1>以下の成分(A)100質量部に対し、成分(B)5〜80質量部及び成分(C)0.01〜20質量部を含有する樹脂組成物を成形して得られる反射板
(A)液晶ポリエステル
(B)酸化チタンフィラー
(C)酸化ケイ素の含有量が85質量%以上であるシリカ系フィラー
【0008】
また、本発明は前記<1>に係る好適な実施態様として、以下の<2>〜<6>を提供する。
<2>成分(C)が、実質的に球状の形状を有するシリカ系フィラーである、<1>の反射板;
<3>前記樹脂組成物が、前記成分(B)及び前記成分(C)以外に、さらに以下の成分(D)を含有する樹脂組成物である、<1>又は<2>の反射板;
(D)繊維状又はウィスカー状の無機充填材
<4>前記樹脂組成物が、成分(A)、(B)及び(C)の合計質量を100質量部としたとき、成分(D)を5〜100質量部含有する樹脂組成物である、<3>の反射板;
<5>厚み0.01mm〜3.0mmの薄肉部を有する、<1>〜<4>のいずれかの反射板;
<6>JIS K7105−1981の全光線反射率測定法A(標準白色板:硫酸バリウム)に基づいて求められる波長460nmの光線に対する反射率が70%以上である、<1>〜<5>のいずれかの反射板;
【0009】
また、本発明は反射板の製造方法である以下の<7>及び<8>を、該反射板を用いてなる発光装置である以下の<9>及び<10>を提供する。
<7>以下の成分(A)100質量部に対し、成分(B)5〜80質量部及び成分(C)0.01〜20質量部を含有する樹脂組成物を調製する調製工程と、
該調製工程で得られた樹脂組成物を射出成形する成形工程とを有する反射板の製造方法;
(A)液晶ポリエステル
(B)酸化チタンフィラー
(C)酸化ケイ素の含有量が85質量%以上であるシリカ系フィラー
<8>前記樹脂組成物が、前記成分(B)及び前記成分(C)以外に、さらに以下の成分(D)を含有する樹脂組成物である、<7>の反射板の製造方法;
(D)繊維状又はウィスカー状の無機充填材
<9><1>〜<6>のいずれかの反射板と発光素子とを具備する発光装置;
<10>前記発光素子が発光ダイオード(LED)である、<9>の発光装置;
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、液晶ポリエステルの優れた耐熱性を維持したまま、優れた反射率、特に可視光領域の光線に対して優れた反射率を有する反射板を得ることができる。また、本発明によれば、薄肉部を有する反射板も製造することができる。そして、当該反射板を用いれば、輝度等の特性に優れた発光装置を得ることができるため、産業上極めて有用である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の反射板は、以下の成分(A)100質量部に対し、(B)5〜80質量部及び(C)0.01〜20質量部を含有する樹脂組成物を成形して得られることを特徴とする。
(A)液晶ポリエステル
(B)酸化チタンフィラー
(C)酸化ケイ素の含有量が85質量%以上であるシリカ系フィラー
以下、これらの成分について好適な実施態様、これらの成分を含む樹脂組成物、樹脂組成物を用いてなる反射板、発光装置を順次説明する。
【0012】
<成分(A)>
成分(A)に用いる液晶ポリエステルとは、サーモトロピック液晶ポリマーと呼ばれるポリエステルであり、450℃以下で光学的に異方性を示す溶融体を形成するものである。例えば、
(1)芳香族ヒドロキシカルボン酸と芳香族ジカルボン酸と芳香族ジオールとの組み合わせを重合して得られるもの、
(2)異種の芳香族ヒドロキシカルボン酸を重合して得られるもの、
(3)芳香族ジカルボン酸と芳香族ジオールとの組み合わせを重合して得られるもの、
(4)ポリエチレンテレフタレート等の結晶性ポリエステルに芳香族ヒドロキシカルボン酸を反応させて得られるもの
等を具体的に挙げることができる。
なお、前記(1)〜(4)の液晶ポリエステルの製造には、芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジカルボン酸又は芳香族ジオールの代わりに、これらのエステル形成性誘導体を使用することも可能であり、該エステル形成性誘導体を用いれば、液晶ポリエステルの製造が、より容易になるという利点がある。
【0013】
ここで、エステル形成性誘導体に関し、例を挙げて簡単に説明する。
分子内にカルボキシル基を有する、芳香族ヒドロキシカルボン酸及び芳香族ジカルボン酸のエステル形成性誘導体としては、当該カルボキシル基を、高反応性の酸ハロゲン基や酸無水物等の基に転化したもの、当該カルボキシル基を、エステル交換反応によりポリエステルを生成するようなアルコール類やエチレングリコール等とエステルを形成しているもの等を挙げられる。また、分子内にフェノール性水酸基を有する芳香族ヒドロキシカルボン酸及び芳香族ジオールのエステル形成性誘導体としては、当該フェノール性水酸基を、エステル交換反応によりポリエステルを生成するように、低級カルボン酸類とエステルを形成させたもの等も挙げることができる。
【0014】
さらに、エステル形成性を阻害しない程度であれば、上述の芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジカルボン酸又は芳香族ジオールは、その芳香環に、塩素原子、フッ素原子等のハロゲン原子、メチル基、エチル基等のアルキル基、又はフェニル基等のアリール基を置換基として有していてもよい。
【0015】
液晶ポリエステルを構成する構造単位としては、下記のものを例示することができる。

芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する構造単位:

前記の構造単位は、ハロゲン原子、アルキル基又はアリール基を置換基として有していてもよい。
【0016】
芳香族ジカルボン酸に由来する構造単位:

前記の構造単位は、ハロゲン原子、アルキル基又はアリール基を置換基として有していてもよい。
【0017】
芳香族ジオールに由来する構造単位:

前記の構造単位は、ハロゲン原子、アルキル基又はアリール基を置換基として有していてもよい。
【0018】
好適な液晶ポリエステルとしては、その構造単位の組み合わせとして、以下の(a)〜(f)を挙げることができる。
(a):(A1)、(B1)及び(C1)からなる組み合わせ、又は、(A1)、(B1)、(B2)及び(C1)からなる組み合わせ
(b):(A2)、(B3)及び(C2)からなる組み合わせ、又は(A2)、(B1)、(B3)及び(C2)からなる組み合わせ
(c):(A1)及び(A2)からなる組み合わせ。
(d):(a)の構造単位の組み合わせにおいて、(A1)の一部又は全部を(A2)で置きかえたもの
(e):(a)の構造単位の組み合わせにおいて、(B1)の一部又は全部を(B3)で置きかえたもの
(f):(a)の構造単位の組み合わせにおいて、(C1)の一部又は全部を(C3)で置きかえたもの
(g):(b)の構造単位の組み合わせにおいて、(A2)の一部又は全部を(A1)で置きかえたもの
(h):(c)の構造単位の組み合わせに、(B1)と(C2)を加えたもの
【0019】
上述の(a)〜(f)のように、成分(A)として用いられる液晶ポリエステルとしては、芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する構造単位として(A1)及び/又は(A)、芳香族ジオールに由来する構造単位として、(B1)、(B)及び(B)からなる群より選ばれる1つ以上、芳香族ジカルボン酸に由来する構造単位として、(C1)、(C)及び(C)からなる群より選ばれる1つ以上を有するものが好ましい。なお、ここに示す、(A1)、(A)、(B1)、(B)、(B)、(C1)、(C)、(C)には、前記のように、その芳香環に置換基を有してもよいが、より高耐熱性の液晶ポリエステルを得る場合には、このような置換基を有していないことが望ましい。
【0020】
成分(A)に用いられる液晶ポリエステルは、その流動温度が270〜400℃の範囲であることが好ましく、300〜380℃の範囲であることがより好ましい。流動温度がこのような範囲である液晶ポリエステルを成分(A)として用いた場合、得られる反射板は、LEDを発光素子とする発光装置に用いた場合においても、LEDモジュール組立工程等での高温環境下において、反射板自体が変形したり、液晶ポリエステル自体が熱劣化したり、することを十分防止することができる。また、このような液晶ポリエステルを用いれば、実用的な溶融加工温度で反射板を製造することができる。特に、400℃を超えるような高温の溶融加工温度で、反射板を製造しようとすると液晶ポリエステルが酸化チタンの影響を受けて熱劣化し易く、ひどい場合には反射板が変色して反射率が低下し易くなるという不都合が生じることがある。
なお、ここでいう流動温度とは、内径1mm、長さ10mmのノズルを持つ毛細管型レオメーターを用い、9.8MPaの荷重において、4℃/分の昇温速度で加熱溶融体をノズルから押し出す時に、溶融粘度が4800Pa・secを示す温度を意味するものであり、該流動温度は当技術分野で周知の液晶ポリエステルの分子量を表す指標である(小出直之編、「液晶性ポリマー−合成・成形・応用−」、95〜105頁、シーエムシー、1987年6月5日発行を参照)。
【0021】
液晶ポリエステルの製造方法としては、種々公知の方法を採用することができる。本出願人が、前記特許文献2で提唱したような製造方法により得られるYI値32以下の液晶ポリエステルが、成分(A)として好ましい。
具体的に、特許文献2で開示した好適な液晶ポリエステルの製造方法について説明する。
まず、芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジオール及び芳香族ジカルボン酸を混合した混合物に、脂肪酸無水物を加え、窒素雰囲気中、130〜180℃で加熱することで、芳香族ヒドロキシカルボン酸及び芳香族ジオールのフェノール性水酸基を、脂肪酸無水物と反応させてアシル化することで、アシル化物(芳香族ヒドロキシカルボン酸アシル化物及び芳香族ジオールアシル化物)を得る。そして、さらに昇温して反応副生物を反応系外に留去しながら、得られたアシル化物のアシル基と、芳香族ヒドロキシカルボン酸アシル化物及び芳香族ジカルボン酸のカルボキシル基と、をエステル交換させることで重縮合させ、液晶ポリエステルを製造する。
芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジオール及び芳香族ジカルボン酸の混合物において、フェノール性水酸基とカルボキシル基との当量比は、0.9〜1.1であることが好ましい。
【0022】
また、芳香族ジオール及び芳香族ヒドロキシカルボン酸のフェノール性水酸基の合計当量に対する脂肪酸無水物の使用量は、0.95〜1.2倍当量が好ましく、1.00〜1.15倍当量がより好ましい。
脂肪酸無水物の使用量が少ないと液晶ポリエステルの着色が抑えられる傾向があるが、脂肪酸無水物の使用量が少なすぎると、重縮合時に未反応の芳香族ジオール又は芳香族ジカルボン酸が昇華し易くなって、反応器に備えられている還流器又は分留器を閉塞するおそれがある。一方、脂肪酸無水物の使用量が1.2倍当量を超える場合には、得られる液晶ポリエステルの着色が著しくなり(液晶ポリエステルのYI値が32を越えることになり)、反射板の反射率を悪化させる恐れがある。
【0023】
使用する脂肪酸無水物としては、例えば、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸、無水イソ酪酸、無水吉草酸、無水ピバル酸、無水2エチルヘキサン酸、無水モノクロル酢酸、無水ジクロル酢酸、無水トリクロル酢酸、無水モノブロモ酢酸、無水ジブロモ酢酸、無水トリブロモ酢酸、無水モノフルオロ酢酸、無水ジフルオロ酢酸、無水トリフルオロ酢酸、無水グルタル酸、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水β−ブロモプロピオン酸等が挙げられるが、特に限定されるものでない。これらは2種類以上を混合して使用してもよい。価格と取扱い性の点から、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸、無水イソ酪酸が好ましく、無水酢酸がより好ましい。
【0024】
エステル交換(重縮合)反応は、130〜400℃の範囲で0.1〜50℃/分の割合で昇温させながら行うことが好ましく、150〜350℃の範囲で0.3〜5℃/分の割合で昇温しながら行うことがより好ましい
【0025】
前記特許文献2で、本出願人が提唱したように、エステル交換(重縮合)反応は、窒素原子を2原子以上含む複素環状有機塩基化合物(含窒素複素環状有機塩基化合物)の存在下に行うことが好ましい。該含窒素複素環状有機塩基化合物の存在下で重縮合を行うと、液晶ポリエステルの製造をより円滑にし、得られる液晶ポリエステルの着色を十分抑制できる。
このような含窒素複素環状有機塩基化合物としては、例えば、イミダゾール化合物、トリアゾール化合物、ジピリジリル化合物、フェナントロリン化合物、ジアザフェナントレン化合物等が挙げられる。これらの中でも、反応性の点からはイミダゾール化合物が好ましく使用され、入手が容易であることから1−メチルイミダゾール、1−エチルイミダゾールがより好ましく使用される。
なお、この含窒素複素環状有機塩基化合物は、前記アシル化物を製造する過程で反応系に共存させていてもよく、上述の芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジオール及び芳香族ジカルボン酸を混合する段階で、含窒素複素環状有機塩基化合物を合わせて混合してもよい。
【0026】
また、エステル交換(重縮合)反応を、より促進して重縮合速度を増加させるため、本発明の目的を損なわない範囲であれば、前記含窒素複素環状有機塩基化合物以外の触媒を用いることもできる。ただし、金属塩等を触媒として使用する場合には、当該金属塩が液晶ポリエステルに不純物として残存することになるので、本発明の反射板のような電子部品には悪影響を及ぼすことがある。この点においても、前記含窒素複素環状有機塩基化合物を用いることは、成分(A)に用いられる液晶ポリエステルを製造するうえで、特に好適な実施態様である。
【0027】
エステル交換(重縮合)反応を、さらに進行させて重合度を上げる方法としては、エステル交換(重縮合)反応の反応容器内を減圧するといった方法(減圧重合)や、エステル交換(重縮合)後の反応生成物を冷却固化後、粉末状に粉砕し、得られた粉末を250〜350℃で2〜20時間加熱処理する方法(固相重合)等が挙げられる。このような方法で重合度を上げることにより、好適な流動温度の液晶ポリエステルを製造することが容易となる。簡便な設備により実施できることから、液晶ポリエステルの重合度を上げる方法としては、固相重合が好ましい。
なお、前記のアシル化及びエステル交換(重縮合)や、その後の減圧重合や固相重合は、窒素等の不活性ガス雰囲気下で行われることが、液晶ポリエステルの着色を十分防止できる点で有利である。
【0028】
かくして製造された液晶ポリエステルは、前記特許文献2で示したように、YI値として32以下を示す液晶ポリエステルであり、成分(A)として特に好ましいものである。なお、YI値とは、液晶ポリエステルからなる試験片を得たとき、該試験片を、色差計を用いて測定することにより得られる値をいう。YI値は、物体の黄色度を表わす指標で、ASTM D1925に定義されるものであり、具体的には下記式で求めることができる。
YI=[100(1.28X−1.06Z)/Y]
(ここで、X値、Y値、Z値は、それぞれXYZ表色系における光源色の三刺激値である。)
【0029】
前記含窒素複素環状有機塩基化合物を用いた製造方法で得られる、YI値32以下の液晶ポリエステルは、成分(A)として特に好ましいものであるが、複数種の液晶ポリエステルを混合することでYI値が32以下となる液晶ポリエステル混合物を成分(A)として用いることもできる。この場合も、該液晶ポリエステル混合物のYI値を、上述したような色差計を用いた方法で求めれば、成分(A)として好適な液晶ポリエステルの組み合わせを求めることもできる。
【0030】
<成分(B)>
酸化チタンフィラーとは、主として酸化チタンからなるものであり、当分野で「酸化チタン」と呼称され、樹脂充填材として市販されているものであれば、成分(B)として用いることができる。なお、酸化チタンと呼称されて樹脂充填材として市販されているものはそのまま使用することができ、企図せず含有される不純物を排除するものではない。また、成分(B)としては、後述するような表面処理が施された酸化チタンも使用可能である。
【0031】
成分(B)に用いられる酸化チタンフィラーは、含有される酸化チタン自身の結晶形は特に限定されず、ルチル型の酸化チタン、アナターゼ型の酸化チタン、または両者を任意に混合した酸化チタンからなる酸化チタンフィラーを用いてもよい。より優れた反射率を有し、さらに耐光性が良好な反射板を得るためには、ルチル型の酸化チタンを含有する酸化チタンフィラーを用いることが好ましい。
酸化チタンフィラーの粒子径(平均粒径)についても特に限定はされないが、反射板に対して、酸化チタンフィラーがほぼ均一に分散できる点(分散性)では、平均粒径が0.01〜10μmであることが好ましく、0.1〜1μmであることがより好ましく、0.1〜0.5μmであることがより好ましい。また、得られる反射板の反射率をより高くするためには、酸化チタンフィラーの粒子径は0.15〜0.25μmであることがさらに好ましい。酸化チタンフィラーの粒子径が大きすぎると、後述する成分(C)による反射率の改良効果(向上効果)が小さくなる傾向もある。また、粒子径が上述した範囲の酸化チタンフィラーを、成分(B)として用いれば、比較的小型の反射板の製造も容易になる。
なお、ここでいう粒子径の測定はたとえば、以下のようにすればよい。まず、酸化チタンフィラーの外観を走査形電子顕微鏡(SEM)で測定し、得られたSEM写真を画像解析装置(例えば株式会社ニレコ社製「ルーゼックスIIIU」)を用いて、一次粒子の各粒径区間における粒子量(%)をプロットして分布曲線を求める。続いて、該分布曲線から累積分布曲線を求め、この累積分布曲線における累積度50%の値を読み取って、粒子径(体積平均粒径)が求められる。
【0032】
以上のように、本発明の成分(B)に使用する好適な酸化チタンフィラーは、市販品から、上述したような粒子径のものを選択して使用したり、市販品を適当な分級手段により、好適な粒子径になるように分級したり、して得ることができる。
また、このような好適な粒子径の酸化チタンフィラーを各種公知の手段により製造することもできる。本発明の成分(B)に使用するうえでは、いわゆる塩素法で製造される酸化チタンを含む酸化チタンフィラーが好ましい。この塩素法を簡単に説明すると、チタン源である鉱石(ルチル鉱やイルメナイト鉱から得られる合成ルチル等)を1000℃付近で塩素と反応させて粗四塩化チタンとし、この粗四塩化チタンを精留で精製した後、得られた四塩化チタンを、酸素で酸化して得られる酸化チタンを得るという方法である。この塩素法によれば、好適な結晶型であるルチル型の酸化チタンが得られる。そして、酸素で酸化する工程(酸化工程)での条件を最適化することにより、比較的白色度に優れた酸化チタンが得られやすく、このような酸化チタンを含む酸化チタンフィラーは本発明の成分(B)として特に好適である。
【0033】
本発明の反射板における成分(B)酸化チタンフィラーの含量は、成分(A)100質量部に対して5〜80質量部であり、10〜75質量部であると、より好ましく、20〜50質量部であると特に好ましい。5質量部未満では反射板の反射率が十分でなく、また、80質量部を超える場合は、反射板の製造が困難になる傾向があり、液晶ポリエステルの種類によっては、その耐熱性等の特性が十分維持されないことがある。この液晶ポリエステルの特性を劣化させる原因は必ずしも明らかでないが、本発明者等は、酸化チタンフィラーに含まれる酸化チタン、又は酸化チタンフィラー中の酸化チタンと表面処理剤とが、触媒のように作用して、液晶ポリエステルのエステル結合を切断し、液晶ポリエステルの低分子量化を引き起こすことが一つの要因と推定している。使用する液晶ポリエステルの種類にもよるが、成分(A)100質量部に対する成分(B)の配合割合が80質量部以下であると、液晶ポリエステルの特性を十分維持しながら、後述する成分(C)シリカ系フィラーとの相乗効果により、優れた反射率を示す反射板を製造することができる。
なお、成分(B)として複数種の酸化チタンフィラーを用いる場合は、その合計質量が成分(A)に対して、前記の範囲であればよい。
【0034】
成分(B)に用いる酸化チタンフィラーは、その分散性等の特性向上を目的として、さらに表面処理を施してもよい。このような表面処理は特に限定されないが、酸化チタンフィラーの分散性及び得られる反射板の耐候性を向上させる点からは、無機金属酸化物による表面処理が好ましく、該無機金属酸化物としてはアルミナ(酸化アルミニウム)が好ましい。ただし、用いる酸化チタンフィラーが、凝集等がなく、取扱いが容易であれば、表面処理は必ずしも必要ではない。表面処理していない酸化チタンフィラーを成分(B)として使用すると、得られる反射板の耐熱性や硬度をより良好にできるという利点もある。
【0035】
成分(B)として使用可能な酸化チタンフィラーの市販品としては、例えば、石原産業(株)が販売しているTIPAQUE CR−60、TIPAQUE CR−58を挙げることができる。
【0036】
<成分(C)>
成分(C)として使用するシリカ系フィラーとは、酸化ケイ素(SiO)の含有量が85質量%以上のフィラーである。該酸化ケイ素の含有量は、好ましくは90質量%以上であり、特に好ましくは95質量%以上の酸化ケイ素を含むシリカ系フィラーが、成分(C)としては好適である。
本発明者等は、このようなシリカ系フィラーを用いることで、成分(B)酸化チタンフィラーの使用量を液晶ポリエステルが著しく劣化しないような配合割合にしながらも、極めて高い反射率の反射板を得ることができることを見出した。
【0037】
このシリカ系フィラーの平均粒径は0.2〜50μmとすることが好ましく、反射板の反射率をより向上する点では、0.5〜20μmがより好ましく、1.0〜10μmがより好ましい。この平均粒径が0.2μmより小さいと光を透過する傾向が強くなり、シリカ系フィラーの添加効果が低くなる。一方、50μmより大きいと、小型形状の反射板を製造する場合、その成形性が悪くなる傾向がある。かかるシリカ系フィラーの平均粒径は、製造する反射板の厚みを勘案して最適なものを使用する必要があるが、シリカ系フィラーの平均粒径が前記の範囲であれば、より良好な反射率を発現する反射板が得られることに加え、小型形状の反射板を製造する場合においても成形性が十分となる。
なお、ここでいうシリカ系フィラーの平均粒径の測定法は、JIS B 9925に基づき、レーザー回折散乱方式粒度分布測定装置(商品名LA−910(堀場製作所))によって測定されるものである。
【0038】
シリカ系フィラーの形状としては、球状、立方状、針状、棒状、紡錘形状、板状、鱗片状、繊維状の何れでもよいが、実質的に球状であることが好ましい。ここでいう「実質的に球状」とは、平均粒形度で表して0.7〜1.0の球状であることを意味するものである。なお、平均粒形度は以下の方法により測定されるものである。
<平均粒径度の測定>
実体顕微鏡(ニコン社製モデル「SMZ−10型」)又は走査型電子顕微鏡にて外観撮影した粒子写真を、画像解析装置(例えば日本アビオニクス社製画像解析装置)に取り込み、粒子像を得る。得られた粒子像から粒子の投影面積(A)と周辺長(PM)を測定する。周辺長(PM)に対応する真円の面積を(B)とすると、その粒子の真円度はA/Bとして表示できる。そこで試料粒子の周囲長(PM)と同一の周囲長を持つ真円を想定すると、PM=2πr、B=πrであるから、B=π×(PM/2π)となり、個々の粒子の球形度は、球形度=A/B=A×4π/(PM)として算出することができる。このようにして得られた任意の粒子個数の粒形度を求め、その平均値を平均粒形度とする。
【0039】
成分(C)としては、シリカ系フィラーを1種のみ用いたものでもよいし、2種以上を併用してもよい。いずれの場合でも、成分(C)の使用量は、液晶ポリエステル100質量部に対して、0.01〜20質量部が好ましく、0.03〜15質量部がより好ましく、0.05〜10質量部がさらに好ましい。シリカ系フィラーの使用量が、この範囲であれば、成分(B)との相乗効果により、高度の反射率の反射板を得ることができる。シリカ系フィラーの使用量は、少ないと反射率の向上効果が得られ難い。シリカ系フィラーの使用量を多くするにしたがって、反射率の向上効果が認められるが、20質量部を超える範囲では反射率の向上効果が小さくなる傾向があるので、液晶ポリエステル100質量部に対してシリカ系フィラーは20質量部以下でよい。ただし、該シリカ系フィラーの市販品には、空気中の水分によって吸湿している場合がある。そして、このように吸湿したシリカ系フィラーを、20質量部を超えるようにして用いると、成分(A)の液晶ポリエステルが成形時(溶融加工時)に加水分解することがある。このような加水分解を良好に回避するためには、シリカ系フィラーは20質量部以下が好ましい。なお、吸湿したシリカ系フィラーは200℃程度の温度で、数時間減圧乾燥を行うことにより、吸湿した水分を除去することもできる。
【0040】
本発明の反射板において、このようなシリカ系フィラーを用いることにより、得られる反射板の反射率が向上する原因は必ずしも明らかではない。ただし、本発明者等は、酸化ケイ素の含有量が60質量%以下のガラス材質からなるフィラー(ガラス系フィラー)、たとえばガラスビーズのようなガラス系フィラーを用いたとしても、反射率の向上効果は認められないことを見出しており、シリカ系フィラーの材質による特有の作用が反射率に影響しているものと推定される。
【0041】
成分(C)として使用可能なシリカ系フィラーの市販品としては、例えば、電気化学工業(株)の球状シリカ、「FB又はFBXシリーズ:FB−105」や触媒化成工業(株)の「SILICA MICROBEADSシリーズ:P−500」等を挙げることができる。
【0042】
<樹脂組成物>
本発明の反射板は、前記の成分(A)、(B)及び(C)を含む樹脂組成物から得られるものであり、該樹脂組成物における、成分(A)、(B)及び(C)の配合割合は、上述のとおりである。以下、この樹脂組成物について説明する。
該樹脂組成物には、必要に応じて、成分(B)や成分(C)以外の無機充填材を、成分(D)として添加してもよい。
この場合、成分(D)の添加量は、成分(A)、(B)及び(C)の合計質量を100質量部としたとき、成分(D)が5〜100質量部の範囲であると好ましく、5〜90質量部であると、より好ましい。成分(D)の添加量が100質量部を超えると、反射板の色調の低下や、樹脂組成物の溶融粘度が高くなって該樹脂組成物を溶融造粒する際の造粒性が悪化し易く、小型の反射板を成形する場合には、成形加工性が低下する傾向がある。
【0043】
成分(D)としては、得られる反射板の反射率が著しく悪化しない点で、繊維状の充填材又はウィスカー状の無機充填材が好ましい。具体的に例示すると、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維、アルミナ繊維、ボロン繊維、チタン酸塩繊維、ウォラストナイト、アスベスト等の無機繊維、炭化ケイ素、アルミナ、ボロンナイトライド、ホウ酸アルミニウムや窒化ケイ素等のウィスカー状の無機充填材などが挙げられる。
これらの中でも、得られる反射板の反射率を著しく低下させることなく、実用的な機械強度を反射板に付与するためには、ガラス繊維、チタン酸繊維、ウォラストナイトなどの無機繊維、ホウ酸アルミニウムや窒化ケイ素等のウィスカー状の無機充填材が好ましい。
なお、このような無機充填材においては、集束剤が使用される場合もあるが、色調の低下を抑制する点から、使用される集束剤の量は少ないほうが好ましい。なお、このガラス繊維の材質であるガラスは、酸化ケイ素の含有量は前記ガラス系フィラーと同様に、60質量%以下のものである。
また、本発明の目的を著しく損なわない範囲において、酸化チタンフィラー以外の白色顔料を前記樹脂組成物に用いてもよい。このような白色顔料としては、酸化亜鉛、硫化亜鉛、鉛白等が挙げられる。
【0044】
また、前記樹脂組成物には、フッ素樹脂、高級脂肪酸エステル化合物、脂肪酸金属石鹸類等の離型改良剤;染料、顔料等の着色剤;酸化防止剤;熱安定剤;蛍光増白剤;紫外線吸収剤;帯電防止剤;界面活性剤等の通常の添加剤を添加してもよい。また、高級脂肪酸、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸金属塩、フルオロカーボン系界面活性剤等の外部滑剤効果を有するもの添加してもよい。このような添加剤は、得られる反射板の反射率を著しく損なわないようにして、その種類及び使用量を決定することが好ましい。
【0045】
<反射板>
本発明の反射板は、成分(A)、(B)及び(C)を含有する樹脂組成物を調製する調製工程と、該調製工程で得られた樹脂組成物を種々慣用の成形方法により溶融成形する成形工程とを含む製造方法で得ることができる
調製工程としては、例えば、成分(A)、成分(B)、成分(C)及び必要に応じて使用される成分(D)を、ヘンシェルミキサー、タンブラー等を用いて混合した後、押出機を用いて溶融造粒するといった方法が挙げられ、このような溶融造粒によって、樹脂組成物をペレット化することが好適な実施態様である。ペレット化して得られた樹脂組成物は、操作性が良好になり、目的とする反射板の形状によって好適な成形方法の選択幅を広げることができる。
成形工程における成形方法としては、例えば、射出成形法、射出圧縮成形法、押出し成形法等が挙げられる。とりわけ射出成形法が好適であり、射出成形して得られる成形板は、薄肉部を有するような反射体の製造も可能となる。特に薄肉部が0.01mm〜3.00mm、好ましくは0.03〜3.00mm、より好ましくは0.05〜2.00mm、特に好ましくは0.05〜1.00mmのような小型の反射板には、射出成形が特に適している。上述のペレット化して得られた樹脂組成物を射出成形することにより、このような薄肉部を有する反射板が容易に製造され、該反射板は特に小型化を必要とする発光装置には有用である。
【0046】
射出成形等の溶融成形における成形温度(溶融温度)は、使用する樹脂組成物の流動温度より10〜60℃程度高い温度であることが好ましい。成形温度が前記の温度より低いと流動性が極端に低下し、成形性の悪化や反射板の強度の低下を招く傾向がある。また、成形温度が前記の温度より高いと、液晶ポリエステルの劣化が著しくなり、反射板の反射率の低下を生じる傾向がある。なお、樹脂組成物の流動温度は、液晶ポリエステルの流動温度の測定方法として説明した方法と同様にして、毛細管型レオメーターを用いて求めることができる。
【0047】
かくして得られる本発明の反射板は、特に可視光量域の光線に対する反射率が極めて良好である。具体的にいうと、波長460nmの光線に対する反射率が70.0%以上の反射率を有する反射板を製造することが可能となる。さらには、反射率が75.0%以上、さらには反射率が80.0%以上の反射板を製造することもできる。なお、個々でいる反射率とは、JIS K7105−1981の全光線反射率測定法A(標準白色版:硫酸バリウム)に基づいて求められるものである。
【0048】
<発光装置>
本発明の反射板は、電気、電子、自動車、機械等の分野で光反射、特に可視光領域の光線に対する反射を必要とする反射板に好適に使用することができる。例えば、ハロゲンランプ、HID等の光源装置のランプリフレクターや、LEDや有機EL素子等の発光素子を用いた発光装置、表示装置の反射板として好適に使用することができる。特にLEDを発光素子とする発光装置においては、その製造過程で、素子の実装工程やハンダ付け工程などの高温環境下に反射板が曝されることがあるが、本発明の反射板では、このような高温プロセス、特にハンダ付けを行ったとしても、ブリスター等の変形を生じることがない。したがって、LEDを発光素子とする発光装置に、本発明の反射板を用いた場合、輝度等の特性に優れた発光装置を得ることができる。
【実施例】
【0049】
以下、本発明を実施例に基づいて説明する。なお、実施例中の物性等は次の方法で測定した。
【0050】
(1)反射率
64mm×64mm×1mmの反射板試験片の表面に対して、自記分光光度計(U−3500:(株)日立製作所製)を用いて各波長光(測定波長:460nm、520nm、640nmの3水準で行った。)に対する拡散反射率の測定を行った。なお、反射率は硫酸バリウムの標準白板の拡散反射率を100%とした時の相対値である。
(2)300℃ハンダ耐熱評価
各実施例および比較例で得た液晶ポリエステル樹脂組成物からなるミニダンベル(JIS K71131(1/2)(厚さ1.2mm)の試験片を300℃に加熱したハンダ浴に1分間浸した後、成形体の変形が見られない場合を○、変形が見られる場合を×とした。
【0051】
なお、実施例、比較例で反射板の試験片を得るために使用した、充填材は下記のとおりである。
酸化チタンフィラー :TIPAQUE CR−60(石原産業(株)製)
アルミナ表面処理品,平均粒径0.21μm
(以下、「CR−60」と略称する。)
:TIPAQUE CR−58(石原産業(株)製)
アルミナ表面処理品,平均粒径0.28μm
(以下、「CR−58」と略称する。)
シリカ系フィラー :シリカビーズ P−500(触媒化成(株)製)
平均粒径:約2μm
平均粒形度:0.70以上
酸化ケイ素含有量:90質量%以上
(以下、「P−500」と略称する。)
:シリカビーズ FB−105(電気化学(株)製)
平均粒径:約12μm
平均粒形度:0.70以上
酸化ケイ素含有量:90質量%以上
(以下、「FB−105」と略称する。)
ガラス繊維 :EFH75−01(セントラル硝子(株)製)
材質:酸化ケイ素含有量約55質量%のガラス
ガラスビーズ :UBS−0010L(ユニチカ(株)製
材質 Eガラス(酸化ケイ素含有量52%〜56%)
【0052】
実施例1
攪拌装置、トルクメータ、窒素ガス導入管、温度計及び還流冷却器を備えた反応器に、パラヒドロキシ安息香酸994.5g(7.2モル)、4,4’−ジヒドロキシビフェニル446.9g(2.4モル)、テレフタル酸299.0g(1.8モル)、イソフタル酸99.7g(0.6モル)及び無水酢酸1347.6g(13.2モル)を仕込み、1−メチルイミダゾールを0.2g添加した後、反応器内を十分に窒素ガスで置換した。その後、窒素ガス気流下で30分かけて150℃まで昇温し、同温度を保持して1時間還流させた。
その後、1−メチルイミダゾールを0.9g添加し、副生酢酸及び未反応の無水酢酸を留去しながら2時間50分かけて320℃まで昇温し、トルクの上昇が認められる時点を反応終了としてプレポリマーを得た。
得られたプレポリマーを室温まで冷却し、粗粉砕機で粉砕後、窒素雰囲気下、室温から250℃まで1時間かけて昇温し、250℃から285℃まで5時間かけて昇温し、285℃で3時間保持し、固相重合を行った。得られた液晶ポリエステルの流動温度は327℃であり、YI値は32程度であった。このようにして得られた樹脂を液晶ポリエステル1とする。
得られた液晶ポリエステル1に対して、酸化チタン及び無機充填材を表1に示す配合量で配合した後、2軸押出機(池貝鉄工(株)製 PCM−30)を用いて溶融造粒し、ペレット状の樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を射出成形機(日精樹脂工業(株)製 PS40E5ASE型)を用い、溶融温度340℃にて射出成形し、64mm×64mm×1mmの反射板の試験片を得た。この試験片を測定に用いた評価結果を表1に示す。なお、この試験片の成形には鏡面加工した金型を使用した。
【0053】
実施例2〜5及び比較例1〜6
実施例1で用いた液晶ポリエステル1に対し、各種充填材を表1に示す配合量で配合して樹脂組成物を得た後、実施例1と同様にして反射板の試験片を得て、各種測定を行った。結果を表1に示す。
【0054】
【表1】

【0055】
表1に示したように、実施例1〜5の成分(A)〜成分(D)を含む試験片は、シリカ系フィラー[成分(C)]を添加しない比較例1の試験片に比して、反射率の向上効果が認められた。また、酸化チタンフィラー[成分(B)]を多く用いれば、反射率の高い試験片(比較例2)を得ることが可能だが、この試験片は極めてハンダ耐熱性が低下していることが判明した。
またシリカ系フィラーをガラス製のフィラー(ガラスビーズ)に置き換えたような、比較例3〜5の試験片では、実施例1〜5の試験片ばかりか、比較例1の試験片に対しても、その反射率は低下していた。これは、本発明の成分(C)シリカ系フィラーの有用性を示すものである。このような高度な反射率と良好なハンダ耐熱性を有する試験片が得られる樹脂組成物は、反射率及び耐熱性に優れた反射板を形成し得るものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の成分(A)100質量部に対し、成分(B)5〜80質量部及び成分(C)0.01〜20質量部を含有する樹脂組成物を成形して得られる反射板。
(A)液晶ポリエステル
(B)酸化チタンフィラー
(C)酸化ケイ素の含有量が85質量%以上であるシリカ系フィラー
【請求項2】
成分(C)が、実質的に球状の形状を有するシリカ系フィラーである請求項1記載の反射板。
【請求項3】
前記樹脂組成物が、前記成分(B)及び前記成分(C)以外に、さらに以下の成分(D)を含有する樹脂組成物である請求項1又は2に記載の反射板。
(D)繊維状又はウィスカー状の無機充填材
【請求項4】
前記樹脂組成物が、成分(A)、(B)及び(C)の合計質量を100質量部としたとき、成分(D)を5〜100質量部含有する樹脂組成物である請求項3記載の反射板。
【請求項5】
厚み0.01mm〜3.00mmの薄肉部を有する請求項1〜4のいずれかに記載の反射板。
【請求項6】
JIS K7105−1981の全光線反射率測定法A(標準白色板:硫酸バリウム)に基づいて求められる波長460nmの光線に対する反射率が70.0%以上である請求項1〜5のいずれかに記載の反射板。
【請求項7】
以下の成分(A)100質量部に対し、成分(B)5〜80質量部及び成分(C)0.01〜20質量部を含有する樹脂組成物を調製する調製工程と、
該調製工程で得られた樹脂組成物を射出成形する成形工程と、
を有する反射板の製造方法。
(A)液晶ポリエステル
(B)酸化チタンフィラー
(C)酸化ケイ素の含有量が85質量%以上であるシリカ系フィラー
【請求項8】
前記樹脂組成物が、前記成分(B)及び前記成分(C)以外に、さらに以下の成分(D)を含有する樹脂組成物である請求項7記載の反射板の製造方法。
(D)繊維状又はウィスカー状の無機充填材
【請求項9】
請求項1〜6のいずれかに記載の反射板と発光素子とを具備する発光装置。
【請求項10】
前記発光素子が発光ダイオード(LED)である請求項9記載の発光装置。

【公開番号】特開2009−231269(P2009−231269A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−16427(P2009−16427)
【出願日】平成21年1月28日(2009.1.28)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】