説明

反射防止フィルムの製造方法、反射防止フィルム、塗布組成物

【課題】1度の塗布工程で2層以上の多層構造を形成することにより製造効率を向上させることができる反射防止フィルムの製造方法を提供すること。
【解決手段】下記(A)〜(F)成分を混合してなる塗布組成物から屈折率の異なる多層構造を形成させる、反射防止フィルムの製造方法。
(A)ポリアルキレンオキシド基及び塩基性官能基から選ばれる少なくとも1つの基を有する化合物に由来する構成単位を含むフッ素含有ポリマー
(B)表面修飾されていない低屈折率無機微粒子、又は分子量が600以下のシランカップリング剤で表面処理された低屈折率無機微粒子
(C)分子内にフッ素原子を含有しない硬化性バインダー
(D)溶剤
(E)多官能フッ素含有硬化性化合物
(F)特定の表面修飾剤で処理された高屈折率無機微粒子
但し、該塗布組成物において、[(A)成分+(B)成分+(E)成分]/[(C)成分+(F)成分]の質量比は20/80〜60/40である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射防止フィルムの製造方法、反射防止フィルム、及び塗布組成物に関する。より詳細には、1度の塗布工程で屈折率の異なる2層以上の層からなる多層構造を有する反射防止フィルムを形成することが可能であり、製造効率に優れる塗布組成物、該塗布組成物を用いて2層以上の多層構造を有する反射防止フィルムを製造する方法、該製造方法で製造された反射防止フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
反射防止フィルムは、液晶表示装置(LCD)、陰極管表示装置(CRT)、プラズマディスプレイ(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)等の画像表示装置において、ディスプレイの表面に配置され、外光の反射や像の映り込みによるコントラスト低下を防止するために低い反射率が要求されると共に、高い物理強度(耐擦傷性など)、透明性等も要求されている。
そのため、反射防止フィルムとしては、一般に、基材上にハードコート層や高屈折率層などの機能層と該基材より低い屈折率を有する、適切な膜厚の低屈折率層がこの順で形成されたものである。
【0003】
これら反射防止フィルムは、塗布法により製造することができるが、異なる屈折率である薄膜を複数層積層することは、少なくとも複数回の塗布工程をはじめとする成膜工程が必要であり、複数の成膜工程に付随する設備を設けなくてはならず、またそれらを稼動させる工程時間も必要であるため生産性に問題を有している。
この問題に関し、1の塗液から2以上の層を形成することができる技術が開示されている(例えば、特許文献1〜4参照)。
しかしながら、反射防止フィルムを少ない塗布工程で製造できる点でこれらの技術は優れているが、例えば特許文献1〜3に記載の技術では、塗布溶剤の選択肢の自由度がなく、塗布後の乾燥工程の制御が困難であり、条件の変動や乾燥の不均一性によって精密な膜厚制御によって得られる高い反射防止性能を有する反射防止フィルムを得ることが困難である。例えば特許文献4に記載の技術では、塗液に含まれる異なる屈折率の層を形成するための2種の無機粒子の偏在性が不十分であり、層の厚みムラの抑制が困難である。
また、得られた反射防止フィルムにおいて、各層間の密着性、表面の耐擦傷性、更に面状故障(点欠陥)の抑制の観点でも更なる改良が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−206832号公報
【特許文献2】特開2007−038199号公報
【特許文献3】特開2007−238897号公報
【特許文献4】特開2009−198748号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、1度の塗布工程で2層以上の多層構造を形成することにより製造効率を向上させることができる反射防止フィルムの製造方法、該製造方法により得られる、多層構造における各層の厚みムラ、各層間の密着性、反射率、耐擦傷性、面状の観点で優れた反射防止フィルム、並びに前記多層構造を形成するために用いられる塗布組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上述の課題を解消すべく鋭意検討した結果、下記構成とすることにより前記課題を解決し目的を達成しうることを知見し、本発明を完成するに至った。
【0007】
本発明は、1度の塗布工程で2層以上の層からなる多層構造を形成可能な、反射防止フィルムの製造効率を向上させることができる塗布組成物に関する技術であり、特に表面エネルギーが低く、かつ低屈折率無機微粒子への相互作用の高い特定の化合物で該低屈折率無機微粒子を表面被覆することよって、該表面被覆された低屈折率無機微粒子の表面エネルギーを低下させ、該低屈折率無機微粒子を塗布した塗布膜内で自発的に偏在させ、同様に比較的表面エネルギーの高い高屈折率無機微粒子の偏在性も制御した技術である。
特に、上記のような表面エネルギーが低下した低屈折率無機微粒子は、空気界面側の上層に偏在させ、同時に表面エネルギーの高い高屈折率無機微粒子は基材側の下層に偏在させることができ、塗布膜内で多層構造を形成することが可能である。塗布組成物中に前記表面エネルギーの低い化合物と相分離しやすい硬化性バインダーと高屈折率無機微粒子を用いることで、上層に前記低屈折率無機微粒子が存在する層と下層に高屈折率無機微粒子が存在する層を形成することができる。
更に、塗布組成物中に、(E)多官能フッ素含有硬化性化合物を含有させることで、驚くべきことに、点欠陥の発生が抑制され、面状に優れた層を得られることが分かった。
本発明の課題は下記構成の構成によって達成される。
【0008】
1.
下記(A)〜(F)成分を混合してなる塗布組成物を調製する工程、基材上に該塗布組成物を塗布し塗膜を形成する工程、該塗膜から溶剤を揮発させ乾燥させる工程、該塗膜を硬化し硬化層を形成する工程をこの順に有し、前記塗布組成物から屈折率の異なる多層構造を形成させる、反射防止フィルムの製造方法。
(A)含フッ素炭化水素構造、並びに、ポリアルキレンオキシド基及び塩基性官能基から選ばれる少なくとも1つの基を有する化合物に由来する構成単位を含むフッ素含有ポリマー
(B)表面修飾されていない低屈折率無機微粒子、又は分子量が600以下のシランカップリング剤で表面処理された低屈折率無機微粒子
(C)分子内にフッ素原子を含有しない硬化性バインダー
(D)溶剤
(E)多官能フッ素含有硬化性化合物
(F)下記一般式(F−1)で表される表面修飾剤で処理された高屈折率無機微粒子
【0009】
【化1】

【0010】
一般式(F−1)中、Rは炭素数1以上の有機基を表し、Mは珪素、ジルコニウム、チタニウムから選ばれる金属原子を表し、Xはアルコキシ基又はハロゲン原子を表す。mは1から3の整数を表し、nは1から3の整数を表す。R及びXは複数存在する場合、それぞれ同じでも異なっていてもよい。
但し、該塗布組成物において、[(A)成分+(B)成分+(E)成分]/[(C)成分+(F)成分]の質量比は20/80〜60/40である。
2.
前記(E)成分の分子量が450〜2000である上記1に記載の反射防止フィルムの製造方法。
3.
前記(B)成分がシランカップリング剤で表面処理された低屈折率無機微粒子であって、該シランカップリング剤の分子量が90〜600である、上記1又は2に記載の反射防止フィルムの製造方法。
4.
前記(A)成分が、含フッ素炭化水素構造を有する構成単位を含有する共重合体である、上記1〜3のいずれか1項に記載の反射防止フィルムの製造方法。
5.
前記(A)成分が、分子内に更にポリシロキサン構造を有する、上記1〜4のいずれか1項に記載の反射防止フィルムの製造方法。
6.
前記(A)成分が、分子内に重合性の官能基を含有する上記1〜5のいずれか1項に記載の反射防止フィルムの製造方法。
7.
前記(A)成分が下記一般式(1)で表されるフッ素含有ポリマーである上記1〜6のいずれか1項に記載の反射防止フィルムの製造方法。
一般式(1):
(MF1)a−(MF2)b−(MF3)c−(MA)d−(MB)e−(MC)f−(MD)g
一般式(1)中、a〜fは、それぞれ、フッ素含有ポリマーを構成する全構成単位に対する各構成単位のモル分率を表し、gはフッ素含有ポリマー全体に対する構成単位(MD)の質量比率を表し、0%≦a≦70%、0%≦b≦70%、0%≦c≦80%、30%≦a+b+c≦90%、0%≦d≦50%、0%≦e≦50%、0.1%≦f≦50%、0質量%≦g≦15質量%の関係を満たす。
(MF1):CF=CF−Rfで表される単量体に由来する構成単位を示す。Rfは炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基を表す。
(MF2):CF=CF−ORf12で表される単量体に由来する構成単位を示す。Rf12は炭素数1〜30の含フッ素アルキル基を表す。
(MF3):CH=CR−L−Rf13で表される単量体に由来する構成単位を示す。Rは水素原子、ハロゲン原子、又はメチル基を表し、Lは2価の連結基を表し、Rf13は炭素数1〜30の含フッ素アルキル基を表す。
(MA):架橋性基を少なくとも1つ有する構成単位を表す。
(MB):非架橋性基を少なくとも1つ有する構成単位を表す。
(MC):ポリアルキレンオキシド基及び塩基性官能基から選ばれる少なくとも1つの基を有する化合物に由来する構成単位を表す。
(MD):ポリシロキサン構造を少なくとも1つ有する構成単位を表す。
(MF1)、(MF2)、(MF3)、(MA)、(MB)、(MC)、及び(MD)は複数存在する場合、それぞれ同じでも異なっていてもよい。
8.
前記低屈折率無機微粒子が、平均粒径1〜150nm、かつ屈折率1.46以下の金属酸化物微粒子である、上記1〜7のいずれか1項に記載の反射防止フィルムの製造方法。
9.
前記低屈折率無機微粒子が、表面が少なくともケイ素を構成成分とする金属酸化物粒子である、上記1〜8のいずれか1項に記載の反射防止フィルムの製造方法。
10.
前記(C)成分として、分子内に複数の不飽和二重結合を有する化合物を含有する、上記1〜9のいずれか1項に記載の反射防止フィルムの製造方法。
11.
前記(C)成分と前記(A)成分との混合自由エネルギー(ΔG=ΔH−T・ΔS)がゼロより大きい、上記1〜10のいずれか1項に記載の反射防止フィルムの製造方法。
12.
前記(D)成分が、下記(D−1)及び(D−2)を含む混合溶剤である、上記1〜11のいずれか1項に記載の反射防止フィルムの製造方法。
(D−1):沸点が100℃を超える揮発性溶剤
(D−2):沸点が100℃以下の揮発性溶剤
13.
前記溶剤(D−1)及び(D−2)の粘度が4.0cP以下である上記12に記載の反射防止フィルムの製造方法。
14.
前記高屈折率無機微粒子が、ジルコニア、チタン、アルミニウム、鉄、銅、亜鉛、イットリウム、ニオブ、モリブデン、インジウム、スズ、タンタル、タングステン、鉛、ビスマス、セリウム、アンチモン、及びゲルマニウムからなる群より選択される少なくとも1つの元素の酸化物微粒子である、上記1〜13のいずれか1項に記載の反射防止フィルムの製造方法。
15.
前記高屈折率無機微粒子における表面修飾剤が、少なくともビニル基、スチリル基、アクリル基、メタクリル基、アクリロキシ基、エポキシ基、炭素−炭素二重結合、フェニル基、メチルフェニル基、ケイ素−水素結合の群から選択された少なくとも1つの基を有する化合物である、上記1〜14のいずれか1項に記載の反射防止フィルムの製造方法。
16.
前記(A)成分が、含フッ素炭化水素構造を有する構成単位を含有する重合体であって、塩基性官能基を含む構成単位がグラフトされている、上記1〜15のいずれか1項に記載の反射防止フィルムの製造方法。
17.
前記一般式(1)における(MC)が、塩基性官能基を含有する不飽和基含有プレポリマーを反応させて得られた構成単位である、上記7〜16のいずれか1項に記載の反射防止フィルムの製造方法。
18.
前記一般式(1)における(MC)が、塩基性官能基を含有する化合物を多官能エポキシ化合物を介して結合した成分を反応させて得られた構成単位である、上記7〜16のいずれか1項に記載の反射防止フィルムの製造方法。
19.
前記一般式(1)における(MC)が、下記一般式(2)のポリアルキレンオキシド基を少なくとも1つ有する単量体に由来する構成単位である、上記7〜16のいずれか1項に記載の反射防止フィルムの製造方法。
【0011】
【化2】

【0012】
(Rは水素原子、ハロゲン原子、又はメチル基を表し、Lは2価の連結基を表し、Rcは水素原子、又は炭素数1〜10のアルキル基を表し、mは正の整数で、2≦m≦50、nは正の整数であって、1≦n≦5を表す。なお、mが2以上のとき、複数の−C2n−O−はそれぞれ異なる繰り返し単位であってもよい。)
20.
前記一般式(2)におけるLが、炭素数が1〜9の2価の連結基である、上記19に記載の反射防止フィルムの製造方法。
21.
上記1〜20のいずれか1項に記載の製造方法により得られた反射防止フィルム。
22.
前記(B)成分が空気界面側に偏在した低屈折率層、及び前記(F)成分が基材界面側に偏在した高屈折率層を有し、前記低屈折率層の屈折率が1.25〜1.48であり、前記高屈折率層の屈折率が1.55〜1.90である、上記21に記載の反射防止フィルム。
23.
下記(A)〜(F)成分を混合してなる塗布組成物。
(A)含フッ素炭化水素構造、並びに、ポリアルキレンオキシド基及び塩基性官能基から選ばれる少なくとも1つの基を有する化合物に由来する構成単位を含むフッ素含有ポリマー
(B)表面修飾されていない低屈折率無機微粒子、又は分子量が600以下のシランカップリング剤で表面処理された低屈折率無機微粒子
(C)分子内にフッ素原子を含有しない硬化性バインダー
(D)溶剤
(E)多官能フッ素含有硬化性化合物
(F)下記一般式(F−1)で表される表面修飾剤で処理された高屈折率無機微粒子
【0013】
【化3】

【0014】
一般式(F−1)中、Rは炭素数1以上の有機基を表し、Mは珪素、ジルコニウム、チタニウムから選ばれる金属原子を表し、Xはアルコキシ基又はハロゲン原子を表す。mは1から3の整数を表し、nは1から3の整数を表す。R及びXは複数存在する場合、それぞれ同じでも異なっていてもよい。
但し、該塗布組成物において、[(A)成分+(B)成分+(E)成分]/[(C)成分+(F)成分]の質量比は20/80〜60/40である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、1度の塗布工程で2層以上の多層構造を形成することが可能な塗布組成物を提供できる。また、該塗布組成物を用いることで生産性に優れた(製造工程が簡略化された)反射防止フィルムの製造方法を提供できる。また、反射率が低く、高い耐擦傷性が良好で、密着性に優れた反射防止フィルムを提供できる。また、多官能フッ素含有硬化性化合物を用いることで、耐擦傷性に優れるとともに、面状故障を低減させた反射防止フィルムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、下記(A)〜(F)成分を混合してなる塗布組成物を調製する工程、基材上に該塗布組成物を塗布し塗膜を形成する工程、該塗膜から溶剤を揮発させ乾燥させる工程、該塗膜を硬化し硬化層を形成する工程をこの順に有し、前記塗布組成物から屈折率の異なる多層構造を形成させる、反射防止フィルムの製造方法に関する。
(A)含フッ素炭化水素構造、並びに、ポリアルキレンオキシド基及び塩基性官能基から選ばれる少なくとも1つの基を有する化合物に由来する構成単位を含むフッ素含有ポリマー
(B)表面修飾されていない低屈折率無機微粒子、又は分子量が600以下のシランカップリング剤で表面処理された低屈折率無機微粒子
(C)分子内にフッ素原子を含有しない硬化性バインダー
(D)溶剤
(E)多官能フッ素含有硬化性化合物
(F)下記一般式(F−1)で表される表面修飾剤で処理された高屈折率無機微粒子
但し、該塗布組成物において、[(A)成分+(B)成分+(E)成分]/[(C)成分+(F)成分]の質量比は20/80〜60/40である。
【0017】
【化4】

【0018】
一般式(F−1)中、Rは炭素数1以上の有機基を表し、Mは珪素、ジルコニウム、チタニウムから選ばれる金属原子を表し、Xはアルコキシ基又はハロゲン原子を表す。mは1から3の整数を表し、nは1から3の整数を表す。R及びXは複数存在する場合、それぞれ同じでも異なっていてもよい。
また、本発明は前記塗布組成物、及び前記反射防止フィルムの製造方法により製造される反射防止フィルムにも関する。
【0019】
<(A)成分:フッ素含有ポリマー>
本発明における塗布組成物は、(A)成分として、含フッ素炭化水素構造、並びに、ポリアルキレンオキシド基及び塩基性官能基から選ばれる少なくとも1つの基を有する化合物に由来する構成単位を含むフッ素含有ポリマー含有する。
【0020】
フッ素含有ポリマーとしては、含フッ素炭化水素を含有する基、及び含フッ素炭化水素を含有する構成単位(含フッ素炭化水素を含む単量体に由来する構成単位)などの含フッ素炭化水素構造を有する化合物が挙げられる。
含フッ素炭化水素構造としては、含フッ素脂肪族炭化水素基、含フッ素芳香族炭化水素基、含フッ素脂肪族炭化水素を含有する構成単位、及び含フッ素芳香族炭化水素を含有する構成単位が挙げられ、含フッ素脂肪族炭化水素基又は含フッ素脂肪族炭化水素を含有する構成単位が好ましい。
含フッ素炭化水素構造の分子量は500〜100000が好ましく、より好ましくは1000〜80000であり、更に好ましくは2000〜50000である。含フッ素炭化水素構造の分子量の調節は、含フッ素炭化水素を含有する構成単位の場合は、含フッ素ビニルモノマーの重合度を変えて行うことが容易であり好ましい。含フッ素ビニルモノマーとしては、例えばフルオロオレフィン類(例えばフルオロエチレン、ビニリデンフルオライド、テトラフルオロエチレン、パーフルオロオクチルエチレン、ヘキサフルオロプロピレン等)、(メタ)アクリル酸の部分又は完全フッ素化アルキルエステル誘導体類(例えばビスコート6FM(大阪有機化学製)やM−2020(ダイキン製)等)、ビニルエーテル類の部分又は完全フッ化物等が挙げられる。
(A)成分において、含フッ素炭化水素構造は単独でも、複数種が混合されていてもよい。
前記(A)成分が、分子内に更にポリシロキサン構造を有することも好ましい。
前記(A)成分が、分子内に重合性の官能基を含有することも好ましい。
【0021】
(A)成分の合成方法の好ましい態様
(A)成分の合成方法の好ましい態様について詳細に説明する。
本発明における(A)成分の合成方法の好ましい態様としては、以下の(A−1)〜(A−5)が挙げられる。
(A−1):不飽和二重結合を含有する重合性のポリアルキレンオキシド化合物(ア)と含フッ素炭化水素構造を有する不飽和二重結合を含有する重合性の化合物(イ)とを反応させる合成方法。
(A−2):不飽和二重結合を含有する重合性の塩基性化合物(キ)と含フッ素炭化水素構造を有する不飽和二重結合を含有する重合性の化合物(イ)とを反応させる合成方法。
(A−3):含フッ素炭化水素構造を有する不飽和二重結合を含有する重合性の化合物(イ)に、不飽和二重結合を含有する重合性の塩基性化合物(キ)に由来する構成単位を含有する不飽和二重結合を含有するプレポリマー(ウ)をグラフトさせる合成方法。
(A−4):含フッ素炭化水素構造を有しかつ末端にカルボキシル基を有するプレポリマー(エ)と塩基性化合物(オ)とを、多官能エポキシ化合物(カ)を介してグラフトさせる合成方法。
(A−5):不飽和二重結合を含有する重合性のポリアルキレンオキシド化合物(ア)と不飽和二重結合を含有する重合性の塩基性化合物(キ)と含フッ素炭化水素構造を有する不飽和二重結合を含有する重合性の化合物(イ)とを反応させる合成方法。
【0022】
本発明における好ましい態様としては、(A)成分のフッ素含有ポリマーに含まれるポリアルキレンオキシド基又は塩基性官能基が、後述する(B)成分の低屈折率無機微粒子と相互作用し、(A)成分のフッ素含有ポリマーにより(B)成分の低屈折率無機微粒子の表面が被覆されることによって、該表面被覆された低屈折率無機微粒子の表面エネルギーを低下させ、該低屈折率無機微粒子を塗布した塗布膜内で自発的に偏在させるように制御するものである。
なお、(A)成分のフッ素含有ポリマーと(B)成分の低屈折率無機微粒子の相互作用は、(A)成分のポリアルキレンオキシド基又は塩基性官能基と、低屈折率無機微粒子表面に一般的に存在する水酸基との水素結合であるため、本発明における塗布組成物を硬化して硬化層を形成する工程より前に(A)成分と(B)成分とは共有結合を形成するものではない。
また、塗布組成物の調液前に、あらかじめ、(A)成分と(B)成分とを混合(相互作用)させておくことが好ましい。
【0023】
フッ素含有ポリマーとしては、下記一般式(1)で表されるフッ素含有ポリマーであることが好ましい。
一般式(1):
(MF1)a−(MF2)b−(MF3)c−(MA)d−(MB)e−(MC)f−(MD)g
一般式(1)中、a〜fは、それぞれ、フッ素含有ポリマーを構成する全構成単位に対する各構成単位のモル分率を表し、gはフッ素含有ポリマー全体に対する質量比率を表し、0%≦a≦70%、0%≦b≦70%、0%≦c≦80%、30%≦a+b+c≦90%、0%≦d≦50%、0%≦e≦50%、0.1%≦f≦50%、0質量%≦g≦15質量%の関係を満たす。
(MF1):CF=CF−Rfで表される単量体に由来する構成単位を示す。Rfは炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基を表す。
(MF2):CF=CF−ORf12で表される単量体に由来する構成単位を示す。Rf12は炭素数1〜30の含フッ素アルキル基を表す。
(MF3):CH=CR−L−Rf13で表される単量体に由来する構成単位を示す。Rは水素原子、ハロゲン原子、又はメチル基を表し、Lは2価の連結基を表し、Rf13は炭素数1〜30の含フッ素アルキル基を表す。
(MA):架橋性基を少なくとも1つ有する構成単位を表す。
(MB):非架橋性基を少なくとも1つ有する構成単位を表す。
(MC):ポリアルキレンオキシド基及び塩基性官能基から選ばれる少なくとも1つの基を有する化合物に由来する構成単位を表す。
(MD):ポリシロキサン構造を少なくとも1つ有する構成単位を表す。
(MF1)、(MF2)、(MF3)、(MA)、(MB)、(MC)、及び(MD)は複数存在する場合、それぞれ同じでも異なっていてもよい。
【0024】
前記一般式(1)で表されるフッ素含有ポリマーは、ランダム共重合体でも、ブロック共重合体でも、グラフト共重合体でもよい。
【0025】
前記一般式(1)の(MC)について説明する。
一般式(1)の(MC)は、ポリアルキレンオキシド基及び塩基性官能基から選ばれる少なくとも1つの基を有する化合物に由来する構成単位を表す。
【0026】
<ポリアルキレンオキシド基を有する化合物に由来する構成単位を有するフッ素含有ポリマー>
まず、一般式(1)における(MC)のひとつの形態である、ポリアルキレンオキシド基を有する化合物に由来する構成単位について説明する。
ポリアルキレンオキシド基を有する化合物(ポリアルキレンオキシド化合物)としては、前述のように、不飽和二重結合を有する重合性のポリアルキレンオキシド化合物(ア)であることが好ましく、下記一般式(2)で表される化合物が好ましい。
【0027】
【化5】

【0028】
式中、Rは水素原子、ハロゲン原子、又はメチル基を表し、Lは2価の連結基を表し、Rcは水素原子、又は炭素数1〜10のアルキル基を表し、mは正の整数であって2≦m≦50であり、nは正の整数であって1≦n≦5である。なお、mが2以上のとき、複数の−C2n−O−はそれぞれ異なる繰り返し単位であってもよい。
【0029】
低屈折率無機微粒子との相互作用が十分でありかつ塗布組成物を調製するための溶媒への溶解性を十分なものとするために、nは2≦n≦4が好ましく、2≦n≦3がより好ましい。また、mは3≦m≦20が好ましく、5≦m≦10がより好ましい。
低屈折率無機微粒子との相互作用の観点から、一般式(2)におけるLは、炭素数が1〜9の2価の連結基であることが好ましく、炭素数が1〜7の2価の連結基であることがより好ましく、炭素数が1〜5の2価の連結基であることが更に好ましい。Lとしては、−COO−、−CO−、−O−、−CONH−、−CO−S−、−COO−(CH2)u−、−CO−(CH2)u−、−O−(CH2)u−、−CONH−(CH2)u−、−CO−S−(CH2)u−(uは8以下の整数)が挙げられ、−COO−であることが最も好ましい。
【0030】
不飽和二重結合を有する重合性のポリアルキレンオキシド化合物としては、不飽和二重結合を有する重合性の化合物であって、ポリアルキレンオキシド側鎖を有する化合物が好ましく挙げられ、例えば、メトキシポリエチレングリコールアクリレート及びメタクリレート、(メトキシポリエチレングリコール)アクリルアミド及びメタクリルアミド、メトキシポリ(プロピレン−ブロック−エチレン)グリコールアクリレート及びメタクリレート、(メトキシポリ(プロピレン−ブロック−エチレン)グリコール)アクリルアミド及びメタクリルアミド、エトキシポリエチレングリコールアクリレート及びメタクリレート、(エトキシポリエチレングリコール)アクリルアミド及びメタクリルアミド、エトキシポリ(プロピレン−ブロック−エチレン)グリコールアクリレート及びメタクリレート、(エトキシポリ(プロピレン−ブロック−エチレン)グリコール)アクリルアミド及びメタクリルアミドが挙げられる。特に、メトキシポリアルキレングリコールアクリレート及びメタクリレートが好ましい。
ポリアルキレンオキシド側鎖の全長は、この側鎖の平均分子量が30〜4300g/mol、好ましくは132〜1440g/mol、より好ましくは220〜580g/molとなるようにするのが有利である。
これらの化合物の中では、数平均分子量が100〜4500であるものが好ましく、より好ましくは200〜1600、更に好ましくは300〜700である化合物が好ましく、これらの分子量範囲のポリアルキレンオキシド側鎖を有するメトキシポリアルキレングリコールアクリレート及びメタクリレートが特に好ましい。具体例としては、ブレンマーPE−20、PE−200、PE−350、PME−100、PME−200、PME−400、AE−350(以上日本油脂(株)製)MA−30、MA−50、MA−100、MA−150、RA−1120、RA−2314、RMA−564、RMA−568、RMA−1114、MPG130−MA(以上、日本乳化剤(株)製)などが挙げられる。また、市販のヒドロキシポリ(オキシアルキレン)材料、例えば商品名“プルロニック”[Pluronic(旭電化工業(株)製)、アデカポリエーテル(旭電化工業(株)製)“カルボワックス[Carbowax(グリコ・プロダクス)]、”トリトン“[Toriton(ローム・アンド・ハース(Rohm and Haas製))及びP.E.G(第一工業製薬(株)製)として販売されているものを公知の方法でアクリル酸、メタクリル酸、アクリルクロリド、メタクリルクロリド又は無水アクリル酸等と反応させることによって製造することもできる。なお以上に例記した単量体は一種又は二種以上を併用して使用することができる。
【0031】
不飽和二重結合を有する重合性のポリアルキレンオキシド化合物の例を挙げるが、これらに限定されるものではない。化合物中アルキレンオキシド基の繰り返し単位は質量平均での平均値に最も近い整数を表す。
【0032】
【化6】

【0033】
【化7】

【0034】
前記一般式(1)の(MF1)〜(MF3)について説明する。
(MF1)〜(MF3)は、下記一般式(1−1)、(1−2)、又は(1−3)で表される単量体に由来する構成単位である。下記一般式(1−1)、(1−2)、又は(1−3)で表される単量体は、前述の含フッ素炭化水素構造を有する不飽和二重結合を含有する重合性の化合物(イ)に相当する。
【0035】
(MF1)は下記一般式(1−1)で表される単量体に由来する構成単位である。
一般式(1−1):CF=CF−Rf
式中、Rfは炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基を表す。
一般式(1−1)で表される化合物としては重合反応性の観点からは、パーフルオロプロピレン又はパーフルオロブチレンが好ましく、入手性の観点からパーフルオロプロピレンであることが特に好ましい。
【0036】
(MF2)は下記一般式(1−2)で表される単量体に由来する構成単位である。
一般式(1−2):CF=CF−ORf12
式中、Rf12は炭素数1〜30の含フッ素アルキル基を表す。前記含フッ素アルキル基は置換基を有していてもよい。更に、Rf12は炭素−炭素間にエーテル結合を有するものであってもよい。
Rf12は、好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜10の含フッ素アルキル基であり、更に好ましくは炭素数1〜10のパーフルオロアルキル基である。Rf12の具体例としては、下記のもの等が挙げられるが、これらに限定されない。
−CF、−CFCF、−CFCFCF、−CFCF(OCFCFCF)CF
【0037】
(MF3)は下記一般式(1−3)で表される単量体に由来する構成単位を示す。
一般式(1−3):CH=CR−L−Rf13
式中、Rは水素原子、ハロゲン原子又はメチル基を表し、Lは2価の連結基を表し、Rf13は、炭素数1〜30の含フッ素アルキル基を表す。
Rf13は、好ましくは炭素数1〜15の含フッ素アルキル基であり、直鎖(例えば、−CFCF、−CH(CFH、−CH(CFCF、−CHCH(CFH等)であっても、分岐構造(例えば、−CH(CF、−CHCF(CF、−CH(CH)CFCF、−CH(CH)(CFCFH等)であっても、また脂環式構造(好ましくは5員環又は6員環、例えば、パーフルオロシクロへキシル基、パーフルオロシクロペンチル基、又はこれらで置換されたアルキル基等)であってもよい。
また、Rf13は置換基を有していてもよく、炭素−炭素間にエーテル結合を有するものであってもよい。Rf13は、例えば、−CHOCHCFCF、−CHCHOCH(CFH、−CHCHOCH(CFF(b:2〜12の整数)、−CHCHOCFCFOCFCFH等でもよい。
【0038】
一般式(1−3)におけるLとしては、特に限定されないが、−COO−、−CONH−、−CO−S−が好ましい。
【0039】
(MF3)は下記一般式(1−3−1)、又は(1−3−2)で表される単量体に由来する構成単位を用いることが好ましい。
【0040】
【化8】

【0041】
(式中Rは水素原子、ハロゲン原子、又はメチル基を表し、Lは2価の連結基を表し、n1は0又は正の整数で、0≦n1≦20であり、n2は正の整数で、1≦n2≦30である。)
【0042】
【化9】

【0043】
(式中Rは水素原子、ハロゲン原子、又はメチル基を表し、Lは2価の連結基を表し、n3は0又は正の整数で、0≦n3≦20であり、n4は正の整数で、1≦n4≦30である。)
【0044】
上記一般式(1−3−1)、又は(1−3−2)で表される単量体の具体例を挙げるが、これらに限定されるものではない。
また、一般式(1−3)で表される単量体は、例えば特開2007−298974号公報の段落[0025]〜[0033]に記載のものも使用することができる。
【0045】
【化10】

【0046】
【化11】

【0047】
前記一般式(1)の(MA)について説明する。
一般式(1)の(MA)は、架橋性基を少なくとも1つ有する構成単位を表す。架橋性基とは、架橋性部位(架橋反応に関与しうる反応性部位)を有する基であり、本発明における塗布組成物を用いて形成される塗膜の強度向上の点で、(A)成分である含フッ素ポリマーは、ポリマー分子内に架橋性部位を有する繰り返し単位(MA)を含むことが好ましい。
架橋性部位としては、例えば、水酸基又は加水分解可能な基を有するシリル基(例えばアルコキシシリル基、アシルオキシシリル基等)、反応性不飽和二重結合を有する基((メタ)アクリロイル基、アリル基、ビニルオキシ基等)、開環重合反応性基(エポキシ基、オキセタニル基、オキサゾリル基等)、活性水素原子を有する基(たとえば水酸基、カルボキシル基、アミノ基、カルバモイル基、メルカプト基、β―ケトエステル基、ヒドロシリル基、シラノール基等)、酸無水物、求核剤によって置換され得る基(活性ハロゲン原子、スルホン酸エステル等)等が挙げられる。
(MA)の架橋性基は、好ましくは反応性不飽和二重結合を有する基又は開環重合反応性基であり、より好ましくは反応性不飽和二重結合を有する基である。
【0048】
以下に、上記一般式(1)中の(MA)で表される構成単位の好ましい具体例を示すが、これらに限定されるものではない。
【0049】
【化12】

【0050】
【化13】

【0051】
前記一般式(1)の(MB)について説明する。
一般式(1)における(MB)は非架橋性基を少なくとも1つ有する構成単位を表す。(MB)は、脱水縮合反応や加水分解反応等により、三次元ネットワーク構造が形成され、塗布組成物液中、又は塗布膜を形成時にゲル化や異物の発生等の悪影響が発生する。これを防ぐために、塗布組成物の安定性、溶剤への溶解性、低屈折率無機微粒子との親和性、低屈折率無機微粒子の分散安定性などの観点から適宜選択することができる。
(MB)を形成するための単量体としては、例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、シクロへキシルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル等のビニルエーテル類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、シクロヘキサンカルボン酸ビニル等のビニルエステル類、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチルの(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。
【0052】
前記一般式(1)の(MD)について説明する。
一般式(1)における(MD)はポリシロキサン構造を少なくとも1つ有する構成単位を表す。(MD)としてポリシロキサン構造を含むことにより、本発明における低屈折率無機微粒子の上部偏在性を高めることができ、更に面状故障の原因となる下層に微量残存する低屈折率無機微粒子を低減することができるため、ポリシロキサン構造を少なくとも1つ有する構成単位を有することが好ましい。
すなわち、(A)成分が、分子内に含フッ素炭化水素単位及びポリシロキサン単位の両方を含有することが好ましく、より具体的には、(MD)は、主鎖又は側鎖に下記一般式(20)で表されるポリシロキサン繰り返し単位を含むことが好ましい。
一般式(20)
【0053】
【化14】

【0054】
式中、R及びRは、それぞれ独立にアルキル基又はアリール基を表す。
該アルキル基としては、炭素数1〜4が好ましく、置換基を有していてもよい。具体的には、メチル基、トリフルオロメチル基、エチル基等が挙げられる。
該アリール基としては炭素数6〜20が好ましく、置換基を有していてもよい。具体的には、フェニル基、ナフチル基が挙げられる。
及びRは、メチル基又はフェニル基であることが好ましく、メチル基であることがより好ましい。
pは構成単位の数であり、2〜500の整数を表し、好ましくは5〜350であり、より好ましくは8〜250である。
【0055】
側鎖に一般式(20)で表されるポリシロキサン構造を有するポリマーは、例えばJ.Appl.Polym.Sci.2000,78,1955、特開昭56−28219号公報等に記載のごとく、エポキシ基、水酸基、カルボキシル、酸無水物基等の反応性基を有するポリマーに対して、相対する反応性基(例えばエポキシ基、酸無水物基に対してアミノ基、メルカプト基、カルボキシル基、水酸基等)を片末端に有するポリシロキサン(例えばサイラプレーンシリーズ、チッソ株式会社製等)を高分子反応によって導入する方法や、ポリシロキサン含有シリコンマクロマーを重合させる方法によって合成することができる。
【0056】
主鎖にポリシロキサン構造を有するポリマーは、例えば特開平6−93100号公報に記載のアゾ基含有ポリシロキサンアミド(市販のものでは、例えばVPS−0501、1001、ワコー純薬工業(株)社製)等のポリマー型開始剤を用いる方法、重合開始剤、連鎖移動剤由来の反応性基(例えばメルカプト基、カルボキシル基、水酸基等)をポリマー末端に導入した後、片末端あるいは両末端反応性基(例えばエポキシ基、イソシアネート基等)含有ポリシロキサンと反応させる方法として、ヘキサメチルシクロトリシロキサン等の環状シロキサンオリゴマーをアニオン開環重合にて共重合させる方法等が挙げられる。中でもポリシロキサン部分構造を有する開始剤を利用する手法が容易であり好ましい。
【0057】
前記一般式(1)のa〜gについて説明する。
一般式(1)中、a〜fは、それぞれ、フッ素含有ポリマーを構成する全構成単位に対する各構成単位のモル分率を表し、gは全ポリマーに対する質量比を表し、0%≦a≦70%、0%≦b≦70%、0%≦c≦80%、30%≦a+b+c≦90%、0%≦d≦50%、0%≦e≦50%、0.1%≦f≦50%、0質量%≦g≦15質量%の関係を満たす。
(MF1)成分、(MF2)成分、及び(MF3)成分のモル分率(%)であるa+b+cを高めることで該ポリマーの表面自由エネルギーが低下し、該ポリマーによって修飾された微粒子が上部偏在し易くなるが、低屈折率無機微粒子への吸着性、汎用溶剤への溶解性などの点で30%≦a+b+c≦90%が好ましく、40%≦a+b+c≦80%がより好ましい。
【0058】
(MC)で表されるポリアルキレンオキシド基を有する化合物に由来する構成単位は、該ポリマーの低屈折率無機微粒子への被覆性が十分でありかつ低屈折率無機微粒子の上部偏在性に必要な含フッ素成分の量も確保できるという点で、そのモル分率は0.1%≦f≦50%の範囲であることが好ましく、より好ましくは0.5%≦f≦40%、更に好ましくは1%≦f≦30%である。また、共重合体形成時の含フッ素共重合体のモノマー組成により塗布溶媒への溶解性が十分に高い場合には、ポリアルキレンオキシド基を有するモノマーの比率を高めることができ、好ましくは6%≦f≦40%にすることもできる。
【0059】
(MA)で表される架橋性基を有する構成単位は、塗膜の硬度上昇の点でポリマーに導入することが好ましい。本発明では特に、(MA)成分のモル分率は0≦d≦50の範囲であることが好ましく、5%≦d≦40%の範囲であることが好ましく、5%≦d≦30%の範囲であることが特に好ましい。
【0060】
(MB)で表される非架橋性基を少なくとも1つ有する構成単位のモル分率eは0%≦e≦50%の範囲であることが好ましく、0%≦e≦20%の範囲であることがより好ましく、0%≦e≦10%の範囲であることが更に好ましい。
【0061】
(MD)で表されるポリシロキサン構造を少なくとも1つ有する構成単位はポリシロキサン構造を導入することが微粒子の上部偏在性及び塗膜面状改良の点で好ましい。含フッ素ポリマー中のポリシロキサン構造の含有率は全ポリマーに対する質量比で0.5質量%≦g≦15質量%が好ましく、1質量%≦g≦10質量%が更に好ましい。
【0062】
以下に、本発明の(A)成分である前記一般式(1)で表されるフッ素含有ポリマーの具体例を示すが、これらに限定されない。なお、表1には、重合することにより一般式(1)のフッ素含有構成単位を形成する単量体(MF1)、(MF2)、(MF3)、及び構造単位(MC)、(MA)、(MB)、(MD)の組合せとして表記する。表中a〜fは、各成分の単量体のモル比(%)を表す。表中(MD)成分でwt%の記載があるものは、全重合体中の該成分の質量%を示す。
【0063】
【表1】

【0064】
上記表中の略号は、以下を表す。
(MF1)成分
HFP:ヘキサフルオロプロピレン
(MF2)成分
FPVE:パーフルオロプロピルビニルエーテル
【0065】
(MB)成分
EVE:エチルビニルエーテル
(MD)成分
VPS―1001:アゾ基含有ポリジメチルシロキサン、ポリシロキサン部の分子量約1万、(株)和光純薬工業製
FM−0721:片末端メタクリロイル変性ジメチルシロキサン、平均分子量5000、(株)チッソ製
【0066】
ポリアルキレンオキシド基を有する化合物に由来する構成単位を有するフッ素含有ポリマーの質量平均分子量は、1000〜100000が好ましく、より好ましくは2000〜50000であり、更に好ましくは3000〜30000である。
【0067】
ここで、質量平均分子量は、TSKgel GMHxL、TSKgel G4000HxL、TSKgel G2000HxL(いずれも東ソー(株)製の商品名)のカラムを使用したGPC分析装置により、溶媒THF、示差屈折計検出によるポリスチレン換算で表した分子量である。
【0068】
ポリアルキレンオキシド基を有する化合物に由来する構成単位を有するフッ素含有ポリマーは公知慣用の方法で製造することができる。特に前記合成方法(A−1)で合成することが好ましい。すなわち、不飽和二重結合を含有する重合性のポリアルキレンオキシド化合物(ア)と含フッ素炭化水素構造を有する不飽和二重結合を含有する重合性の化合物(イ)を有機溶媒中、汎用のラジカル重合開始剤を添加し、重合させることにより製造できる。若しくは場合によりその他の付加重合性不飽和化合物を添加して上記と同じ方法にて製造することができる。各モノマーの重合性に応じ、反応容器にモノマーと開始剤を滴下しながら重合する滴下重合法なども、均一な組成のポリマーを得るために有効である。
【0069】
<塩基性官能基を有する化合物に由来する構成単位を有するフッ素含有ポリマー>
次に、フッ素含有ポリマーのひとつの形態である塩基性官能基を有する態様について説明する。
塩基性官能基としてはアミノ基、4級アンモニウム基、アミド基、ピリジル基、トリアジン基、ピリル基、インドリル基、カルバゾイル基、イミダゾイル基等が挙げられる。中でも、低屈折率無機微粒子との相互作用の観点からアミノ基又はアミド基が好ましい。
【0070】
前記した塩基性官能基を有する化合物に由来する構成単位を有するフッ素含有ポリマーの好ましい合成方法(A−2)〜(A−5)に記載された各成分について説明する。
【0071】
[不飽和二重結合を含有する重合性の塩基性化合物(キ)]
不飽和二重結合を有する塩基性化合物としては、以下の化合物が好ましく挙げられる。
【0072】
アミノ(メタ)アクリレート類:
ジメチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレート、ジブチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、ジブチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノプロピルアクリレート、ジエチルアミノプロピルアクリレート、ジメチルアミノプロピルメタクリレート、t−ブチルアミノエチルアクリレート、t−ブチルアミノエチルメタクリレート、アミノエチルアクリレート、アミノエチルメタクリレート、アミノプロピルアクリレート、アミノプロピルアクリレート等
【0073】
(メタ)アクリルアミド類:
N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N,N−ジブチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N,N−ジエチルメタクリルアミド、N,N−ジブチルメタクリルアミド、アクリロイルモルホリン、N−t−ブチルアクリルアミド、N−t−ブチルメタクリルアミド、**N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−(ジメチルアミノエチル)アクリルアミド、N−(ジエチルアミノエチル)アクリルアミド、N−(ジブチルアミノエチル)アクリルアミド、N−(ジメチルアミノエチル)メタクリルアミド、N−(ジエチルアミノエチル)メタクリルアミド、N−(ジブチルアミノエチル)メタクリルアミド、N−(ジメチルアミノプロピル)アクリルアミド、N−(ジエチルアミノプロピル)アクリルアミド、N−(ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミド、t−ブチルアミノエチルアクリルアミド、t−ブチルアミノエチルメタクリルアミド等、が挙げられる。
これらは、単独で用いてもよいし、2種類以上組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも、ジアルキルアミノ基又はジアルキルアミド基を含有する化合物が好ましい。
【0074】
[塩基性モノマーに由来する重合体成分からなる不飽和二重結合を含有するプレポリマー(ウ)]
本発明において、塩基性モノマーに由来する重合体成分からなる不飽和二重結合を含有するプレポリマーを用いて、本発明の(A)成分に塩基性基を局在化させて導入することができる。該プレポリマーは、塩基性モノマーに由来する重合体の多官能の塩基性官能基の一部を、エポキシ基と不飽和二重結合性基を含有する化合物のエポキシ基と結合させて得ることが好ましい。エポキシ基と不飽和二重結合性基を含有する化合物としては、例えばグリシジルアクリレート、グリシジルメタアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル等が挙げられる。
塩基性のモノマーは、上記(キ)の不飽和二重結合を含有する重合性の塩基性化合物を用いるのが好ましい。これら塩基性のモノマーは複数種を混合して用いてもよく、本発明の効果を妨げない範囲で他のモノマーと共重合することもできる。
塩基性モノマーに由来する重合体中の塩基性官能基の数は、2〜21が好ましく、更に好ましくは4〜21である。エポキシ基と不飽和二重結合性基を含有する化合物は、重合体中の塩基性官能基に対してエポキシ基は0.1〜0.5当量の範囲で該塩基性重合体に対して添加して反応させることが好ましい。このような条件とすることで、得られるプレポリマー中に不飽和2重結合を過剰に導入することが防止できる。(ウ)のプレポリマー1分子中には、不飽和二重結合は1個であることが好ましい。
【0075】
[(オ)塩基性化合物]
塩基性化合物(オ)は、多官能エポキシ化合物を介して、上記(エ)の(末端)カルボキシル基を有するプレポリマーと結合することによって本発明の(A)成分を形成することができる。この合成方法に用いることのできる塩基性化合物は、1級又は2級のアルキルアミンが好ましく、エポキシ基との反応性が高いため高収率で塩基性のアミンを固定できる。この塩基性化合物としては、
アルキルアミン:
エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、イソブチルアミン、ヘキシルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジメチルアミノエチルアミン、ジエチルアミノエチルアミン、ジメチルアミノプロピルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、3−メトキシプロピルアミン、ジエチレントリアミンまたはテトラエチレンペンタミン等、
アミノ複素環化合物:
N−アミノピペリジン、1−アミノ−4−メチルピペラジン、2−アミノ−3−ニトロピリジン、2−ピコリルアミン、3−ピコリルアミン、2−アミノピリジン、3−アミノピリジン、4−アミノピリジンまたは2−アミノピラジン等、
複素環化合物アミン:
トリアゾール、イミダゾール、モルホリン、ピペリジンピロリジン、2−ピペコリン、3−ピペコリンまたは4−ピペコリン等が挙げられる。
これらは単独で使用できるし、あるいは2種以上を併用することもできる。
【0076】
[(カ)多官能エポキシ化合物]
本発明の上記好ましい3の態様において、用いることのできる多官能エポキシ化合物は、1分子内に複数個のエポキシ基を有する化合物であれば特に制限はないが、グリシジル基を有する不飽和2重結合基含有モノマーの(共)重合体、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、フェノールノボラック型、クレゾールノボラック型のエポキシ樹脂であることが好ましい。これら化合物は、分子量200〜5000の化合物が好ましく、更に好ましくは分子量300〜3000である。エポキシ当量は150〜500が好ましく、更に好ましくは150〜300である。一分子内のエポキシ基は2〜20が好ましく、更に好ましくは3〜15である。この範囲にすることで、本発明の含フッ素炭化水素構造またはポリシロキサン構造と、塩基性成分を効率よく結合させることが容易である。
【0077】
市販のエポキシ樹脂としては、日本化薬製EOCN−120、EOCN−102、EOCN−103、EOCN−104等、三菱化学製エポキシ樹脂1001、1002、806、807、152、154、157S70等を使用することができる。
【0078】
[(イ)含フッ素炭化水素構造を有する不飽和2重結合を含有する重合性の化合物]
(イ)の化合物としては、不飽和二重結合を有する含フッ素炭化水素系のモノマーが挙げられる。
【0079】
含フッ素ビニルモノマーとしては、例えばフルオロオレフィン類(例えばフルオロエチレン、ビニリデンフルオライド、テトラフルオロエチレン、パーフルオロオクチルエチレン、ヘキサフルオロプロピレン等)、(メタ)アクリル酸の部分または完全フッ素化アルキルエステル誘導体類(例えばビスコート6FM(大阪有機化学製)やM−2020(ダイキン製)等)、ビニルエーテル類の部分または完全フッ化物等が挙げられる。これら含フッ素炭化水素成分は単独でも、複数種が混合されていてもよい。
【0080】
[(エ)含フッ素炭化水素構造を有しかつ(末端)カルボキシル基を有するプレポリマー]
本発明において、含フッ素炭化水素構造を有しかつ(末端)カルボキシル基を有するプレポリマーを用いて、本発明の(A)成分に塩基性基を導入することができる。該プレポリマーは、以下の方法により合成することができる。
モノマーを重合する際に、汎用のアゾ−ニトリル化合物やパーオキサイド化合物を重合開始剤として重合を開始せしめ、連鎖移動剤としてカルボキシル基を含有する化合物、例えばメルカプト酢酸を用いることによって、形成される重合体の末端にカルボキシル基を導入したプレポリマーが合成できる。
また、カルボキシル基含有開始剤、例えば4,4‘−アゾビス(4−シアノペンタイック酸)を用いて重合を開始させることにより、形成される重合体の末端にカルボキシル基を導入したプレポリマーが合成できる。
また、末端に限定されないが、含フッ素炭化水素成分を有するポリマーにカルボキシル基を導入する方法は、重合体形成時にモノマーとともに、カルボキシル基含有モノマーを汎用のアゾ−ニトリル化合物やパーオキサイド化合物を重合開始剤で重合する方法である。カルボキシル基含有モノマーとしては、アクリル酸、メタアクリル酸、マレイン酸、フマル酸などが挙げられる。
上記3つのプレポリマーの合成方法のなかでも。その後の(A)成分の合成時にゲル化などの問題が起こりにくいため、末端にカルボキシル基が導入される合成方法が好ましい。
これらの方法で合成されるプレポリマーの分子量は1000〜100000が好ましく、更に好ましくは2000〜50000である。
【0081】
また、本発明の(A)成分の別の合成方法によれば、含フッ素炭化水素成分を有し、かつイソシアネート基を有する化合物を合成し、その化合物のイソシアネート基を加水分解することにより1級アミノ基を導入することができる。イソシアネート基の導入方法に制限はないが、例えば不飽和2重結合を有するイソシアネート化合物を不飽和2重結合を有する含フッ素炭化水素成分とともに共重合することで合成することができる。
【0082】
塩基性官能基を有するフッ素含有ポリマーが前記一般式(1)で表される場合においても((MC)として塩基性官能基を有する構成単位を有するフッ素含有ポリマーにおいても)、(MF1)、(MF2)、(MF3)、(MA)、(MB)、(MD)、a、b、c、d、e、f、及びgは、前述の(MC)としてポリアルキレンオキシド基を有する構成単位を有するフッ素含有ポリマーにおいて説明したものと同様である。
【0083】
<塩基性官能基を有するブロック又はグラフト型フッ素含有ポリマー>
(A)成分のなかでも、塩基性官能基のポリマー中での位置の制御が容易であり、(B)成分の低屈折率無機粒子との相互作用を強めかつ、(B)成分の粒子間架橋凝集などの弊害を低減できる観点からは、フッ素含有ポリマーは、下記一般式(10)で表される構造を有するブロック又はグラフト型のポリマーであることが好ましい。
一般式(10):
[(MF1)a−(MF2)b−(MF3)c−(MA)d−(MB)e−(MD)g]j−[(MC’)]k
一般式(10)中、
[ ]はそれぞれの( )の構成単位からなるプレポリマー又は連結可能な構造体を表し、j、kはそれらの質量比率(質量%)を表す。70%≦j≦99.8%、0.2%≦k≦30%である。a〜eは、それぞれ、各プレポリマーを構成する全構成単位に対する各構成単位のモル分率を表し、gは全ポリマーに対する質量比を表し、a+b+c+d+e=100%、0%≦a≦70%、0%≦b≦70%、30%≦a+b≦70%、0%≦c≦50%、0%≦d≦50%、0%≦e≦50%、0質量%≦g≦15質量%の関係を満たす。
(MF1):CF=CF−Rfで表される単量体に由来する構成単位を示す。Rfは炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基を表す。
(MF2):CF=CF−ORf12で表される単量体に由来する構成単位を示す。Rf12は炭素数1〜30の含フッ素アルキル基を表す。
(MF3):CH=CR−L−Rf13で表される単量体に由来する構成単位を示す。Rは水素原子、ハロゲン原子、又はメチル基を表し、Lは2価の連結基を表し、Rf13は炭素数1〜30の含フッ素アルキル基を表す。
(MA):架橋性基を少なくとも1つ有する構成単位を表す。
(MB):非架橋性基を少なくとも1つ有する構成単位を表す。
(MD):ポリシロキサン構造を少なくとも1つ有する構成単位を表す。
(MC’):塩基性官能基を少なくとも2つ有する構成単位を表す。
【0084】
一般式(10)における(MF1)、(MF2)、(MF3)、(MA)、(MB)、及び(MD)は、前記一般式(1)の頁で述べたものと同様である。
(MC’)の構成単位は、前述の好ましい合成法(A−3)及び(A−4)で述べた、(ウ)不飽和二重結合を含有する重合性の塩基性化合物に由来する構成単位を含有する不飽和二重結合を含有するプレポリマーから誘導される構成単位、(オ)塩基性化合物と多官能エポキシ化合物の反応物から形成される構成単位であることが好ましい。
【0085】
以下に、(A)成分である前記一般式(1)で表わされる塩基性官能基を有する構成単位を有するフッ素含有ポリマーの具体例を示すが、これらに限定されない。なお、表2には、重合することにより一般式(1)のフッ素含有構成単位を形成する単量体((MF1)、(MF2)、(MF3)、(MA)、(MB)、(MD))及び構成成分(MC’)の組合せとして表記する。表中a〜eは、各成分の単量体のモル分率(%)を表す。表中(MD)成分でwt%の記載があるものは、全重合体中の該成分の質量%を示す。
【0086】
【表2】

【0087】
上記表中の略号は、以下を表す。
(MF1)成分
HFP:ヘキサフルオロプロピレン
(MF2)成分
FPVE:パーフルオロプロピルビニルエーテル
(MF3)成分
MF3−1:CH=CH−O−CHCH−O−CH(CF
【0088】
(MB)成分
EVE:エチルビニルエーテル
(MD)成分
VPS―0501:アゾ基含有ポリジメチルシロキサン、ポリシロキサン部の分子量約5000、(株)和光純薬工業製
VPS―1001:アゾ基含有ポリジメチルシロキサン、ポリシロキサン部の分子量約1万、(株)和光純薬工業製
FM−0721:片末端メタクリロイル変性ジメチルシロキサン、平均分子量5000、(株)チッソ製
【0089】
(MC’)成分
DMAEA:ジメチルアミノエチルアクリレート、(株)興人製
DMAPAA:N−(ジメチルアミノプロピル)アクリルアミド、(株)興人製
DEAA:N,N−ジエチルアクリルアミド、(株)興人製
*1)AOI’:2−アクリロイルオキシエチルイソシアネートのアクリロイルが主鎖に重合した構成成分であって、イソシアネート基を加水分解したもの。
*2)HEVE/IPDI’:ヒドロキシエチルビニルエーテルのビニル基が主鎖に重合した構成成分であって、水酸基にイソホロンジイソシアネートの1つのイソシアネート基を反応させたもので、残る一つのイソシアネート基を加水分解したもの
【0090】
以下に、(A)成分である前記一般式(10)で表わされるブロックまたはグラフト型フッ素含有ポリマーの具体例を示すが、これらに限定されない。なお、表3には、重合することにより一般式(10)のフッ素含有構成成分を形成する単量体((MF1)、(MF2)、(MF3)、(MA)、(MB)、(MD))及び構成成分(MC’)の組合せとして表記する。
含フッ素ポリマー部の表中の組成比は、含フッ素ポリマー各成分の単量体のモル比(%)を表し、wt%の記載があるものは、含フッ素ポリマー部での該成分の質量%を示す。また、塩基性部(MC’)の表中の組成当量比は、塩基性官能基とエポキシ基の当量比を表す。
また、含フッ素ポリマー部と塩基性部の全重合体中の組成(j/k比)はそれぞれの質量比を表す。
【0091】
【表3】

【0092】
上記表中の略号は、以下を表す。
含フッ素ポリマー部
+MAc:連鎖移動剤としてメルカプト酢酸を使用し、ポリマー末端にカルボキシル基を導入したもの。
+ABCPA:重合開始剤として、4,4‘−アゾビス(4−シアノペンタイック酸)を用いポリマー末端にカルボキシル基を導入したもの
【0093】
塩基性部(MC’)
DMAEA/GMA:ジメチルアミノエチルアクリレートの重合体のアミノ基とグリジジルメタアクリレートのグリジジル基の(90/10当量比混合物の)反応したメタアクリレートプレポリマー(質量平均分子量1400)
DMAA/GMA:ジメチルアクリルアミドの重合体のアミド基とグリジジルメタアクリレートのグリジジル基の(90/10当量比混合物の)反応したメタアクリレートプレポリマー(質量平均分子量1100)
DMAPAA/GMA:N−(ジメチルアミノプロピル)アクリルアミドの重合体のアミノ基とグリジジルメタアクリレートのグリジジル基の(90/10当量比混合物の)反応したメタアクリレートプレポリマー(質量平均分子量1700)
DMAEA/4HBAGE:ジメチルアミノエチルアクリレートの重合体のアミノ基と4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテルのグリジジル基の(90/10当量比混合物の)反応したメタアクリレートプレポリマー(質量平均分子量1500)
DMAA/4HBAGE:ジメチルアクリルアミドの重合体のアミド基と4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテルのグリジジル基の(90/10当量比混合物の)反応したメタアクリレートプレポリマー(質量平均分子量1200)
DMAPAA/4HBAGE:N−(ジメチルアミノプロピル)アクリルアミドの重合体のアミノ基と4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテルのグリジジル基の(90/10当量比混合物の)反応したメタアクリレートプレポリマー(質量平均分子量1600)
DEA/EOCN104S:ジエチルアミンとEOCN−104S(平均7.5官能のフェノールノボラック型エポキシ樹脂、エポキシ当量約220)の45/55(当量比)反応物(分子量約1800)
DEA/EOCN104S:ジエチルアミンとEOCN−104S(平均7.5官能のフェノールノボラック型エポキシ樹脂、エポキシ当量約220)の45/55(当量比)反応物(分子量約2300)
DBA/EOCN104S:ジブチルアミンとEOCN−104S(平均7.5官能のフェノールノボラック型エポキシ樹脂、エポキシ当量約220)の40/60(当量比)反応物(分子量約1300)
DEA/GMA/MMA:グリシジルメタクリレートとメチルメタクリレートの1:1共重合体(重量平均分子量約1000)のグリシジル基とジエチルアミンの反応物(重量平均分子量約1300)。アミンとグリシジル基の当量比は40/60。
【0094】
塩基性官能基を有する化合物に由来する構成単位を有するフッ素含有ポリマーの質量平均分子量は、1000〜100000が好ましく、より好ましくは2000〜50000であり、更に好ましくは3000〜30000である。質量平均分子量の求め方は前述のポリアルキレンオキシド基を有する化合物に由来する構成単位を有するフッ素含有ポリマーの質量平均分子量の求め方と同様である。
【0095】
<塗布組成物の調製方法>
本発明の塗布組成物を調製する際には、各成分を溶剤に溶解又は分散したものを混合することができ、(A)成分のポリアルキレンオキシド基及び塩基性官能基から選ばれる少なくとも1つの基を有するフッ素含有ポリマーと(B)成分の低屈折率無機微粒子とを(D)成分の溶剤と共にあらかじめ混合した後に(C)成分のバインダーと(E)成分の多官能フッ素含有硬化性化合物、(F)成分の高屈折率無機微粒子を混合することが好ましい。
【0096】
(A)成分ポリアルキレンオキシド基及び塩基性官能基から選ばれる少なくとも1つの基を有するフッ素含有ポリマーの塗布液の全固形分に対する質量%は塗膜形成後の低屈折率化と低屈折率無機微粒子の上方偏在性の観点から1〜50質量%が好ましく、3〜30質量%がより好ましく、5〜20質量%が更に好ましい。
【0097】
(B)成分低屈折率無機微粒子の塗布液の全固形分に対する質量%は塗膜形成後の低屈折率層の低屈折率化の観点から1〜50質量%が好ましく、3〜30質量%がより好ましく、5〜20質量%が更に好ましい。
【0098】
(C)成分バインダーの塗布液の全固形分に対する質量%は塗膜形成後の高屈折率層の高屈折率化、耐擦傷性の観点から0.1〜50質量%が好ましく、0.5〜30質量%がより好ましく、1〜20質量%が更に好ましい。
【0099】
(E)成分多官能フッ素含有硬化性化合物の塗布液の全固形分に対する質量%は塗膜形成後の低屈折率層の低屈折率化、耐擦傷性の観点から0.1〜50質量%が好ましく、0.5〜30質量%がより好ましく、1〜20質量%が更に好ましい。
【0100】
(F)成分高屈折率無機微粒子の塗布液の全固形分に対する質量%は塗膜形成後の高屈折率化の観点から5〜80質量%が好ましく、10〜70質量%がより好ましく、20〜60質量%が更に好ましい。
【0101】
<(B)成分:低屈折率無機微粒子>
本発明に用いられる(B)成分の低屈折率無機微粒子は、その平均粒径が1nm以上150nm以下の低屈折率無機微粒子であることが好ましく、より好ましくは平均粒径が5nm以上100nm以下の低屈折率無機微粒子であり、更に好ましくは10nm以上80nm以下の低屈折率無機微粒子である。
低屈折率無機微粒子の粒径が小さすぎると、耐擦傷性の改良効果が少なくなり、大きすぎると硬化層表面に微細な凹凸ができ、黒の締まりといった外観、積分反射率が悪化する場合があるので、上述の範囲内とするのが好ましい。低屈折率無機微粒子は、結晶質でも、アモルファスのいずれでも良く、また単分散粒子でも、所定の粒径を満たすならば凝集粒子でも構わない。形状は、球径が最も好ましいが、不定形であっても問題無い。
ここで、低屈折率無機微粒子の平均粒径は電子顕微鏡による観察により測定することができる。
【0102】
低屈折率無機微粒子の組成に特に制限はなく、例えばケイ素、チタン、アルミニウム、スズ、亜鉛、アンチモンなどの酸化物又はそれらの混合物を用いることができるが、本発明における(A)成分と共に塗膜内で上部偏在するためには、少なくとも粒子表面にケイ素を構成成分とする金属酸化物が含まれることが好ましい。例えば表面が二酸化ケイ素からなるコアシェル粒子であっても、ケイ素とその他無機元素との混晶を形成していてもよい。特に低屈折率化の点からは二酸化ケイ素(シリカ)の粒子であることが好ましい。
【0103】
低屈折率無機微粒子の屈折率は、好ましくは1.46以下、より好ましくは1.15〜1.46、特に好ましくは1.15〜1.40、更に好ましくは1.15〜1.35、最も好ましくは1.17〜1.32である。(B)成分の低屈折率無機微粒子は、硬化層の上部に偏在して、耐擦傷性の向上、屈折率の低下に寄与するため、低屈折率であることが望ましい。
【0104】
(B)成分の低屈折率無機微粒子は、中空構造であるのが更に好ましい。中空構造の無機微粒子の場合に屈折率は外殻の無機質のみの屈折率を表すものではなく、粒子全体の平均の値を示す。この場合、粒子内の空孔の半径をa、粒子外殻の半径をbとすると空隙率xは下記数式(II)で表される。
(数式II): x=(4πa/3)/(4πb/3)×100
空隙率xは好ましくは10〜60%、より好ましくは20〜60%、更に好ましくは30〜60%である。この空隙率の範囲にすることで、低屈折率性と粒子自身の強度を好適な範囲にすることができる。
【0105】
(B)成分の低屈折率無機微粒子は、分散液中あるいは塗布液中で、分散安定化を図るために、あるいはバインダー成分との親和性、結合性を高めるために、プラズマ放電処理やコロナ放電処理のような物理的表面処理、界面活性剤やシランカップリング剤等による化学的表面処理がなされていても良い。なかでも、シランカップリング処理が特に有効である。本発明の(A)成分との相互作用を阻害せず、分散液又は塗布液中での分散安定性を十分なものとするためには、シランカップリング剤の分子量は、600以下である必要があり、90以上600以下が好ましく、更に好ましくは100以上400以下、最も好ましくは120以上300以下である。本発明においてシランカップリング剤の分子量とは、無機微粒子表面との結合に寄与するシランカップリング剤のSi原子に結合している加水分解可能な基がシラノール基(Si−OH)に加水分解された状態での分子量を表す。
本発明の好ましいシランカップリング剤としては、例えば、トリメチルメトキシシラン、トリエチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリエチルエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロへキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。シランカップリング剤のなかでも、アルキル基または重合性の官能基を有するアルキル基を有するものが好ましい。重合性の官能基としては、エポキシ基、ビニル基、(メタ)アクリロイル基などが好ましく、最も好ましくはアクリロイル基である。これら官能基導入により、低屈折率無機微粒子の上部偏在層の塗膜強度が向上できる。
【0106】
(B)成分の低屈折率無機微粒子は、分散液中あるいは塗布液中で、分散安定化と前記(A)成分との相互作用をさせるために立体的な反発を抑える観点で、該低屈折率無機微粒子の表面修飾率が0.1%〜9%が好ましく、1%〜9%がより好ましく、3%〜8%が更に好ましく、4%〜7%が特に好ましい範囲である。
【0107】
(B)成分の低屈折率無機微粒子の表面修飾率は固体29SiCP―MAS NMR等の公知の手法で測定することができる。CP−MAS法はH核を励起した後、その磁化を交互分極によって29Si核に移動させ、それを観測する間接法である。これは最表面のSiのピーク挙動を測定することができ、得られた化学シフトの異なるピークの大きさを調べることで、固体中の結合様式がわかる。表面修飾率αはカップリング剤の種類によって、後述のM/Q、D/Q、T/Q(カップリング剤由来のピーク/シリカピークの強度比)で表現でき、例えば、トリメチルシランの表面修飾率α1はM/Qで求められ、γ−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランの表面修飾率α2はT/Qで求めることができる。
【0108】
Siの固体NMRを測定することで、Siを含む粒子の表面状態を定量的に評価することが可能である。始めに固体29Si CP−MAS NMRによって得られる情報について述べる。29Si−NMRではSiの結合する相手により化学シフトが異なるため、それぞれのピークの大きさを調べることで、固体中の結合様式が分かる。慣用的に4官能のSiをQ、3官能はT,2官能はD,1官能はMと表す。また、O原子を介していくつのSiと結合するかについて上付き数字で表す。構造式と対応する表記例を以下の式に示す。
【0109】
【化15】

【0110】
上記式中、R、R、R、RはSiと直接結合する元素がOでない置換基を表し、X、X、XはOと直接結合する元素がSi原子でない置換基を表す。
本発明のオルガノシラン化合物で表面処理することにより、Si原子を含む低屈折率無機微粒子表面のシラノール基が減少しSi−O−Si結合が生成するためにNMRピークに変化が現れる。分散されたシリカ粒子を評価する場合には、溶媒を25℃で減圧して溶媒を蒸発させてシリカの粉体を得て、それを測定に用いる。
本発明のNMR測定は、29Si CP−MAS法で行い、以下の装置を用いて測定した値を用いた。
Bruker社製AVANCE−300型コンソール、BL−7 CP−MASプローブ、
測定幅:18000Hz
観測周波数:59.621MHz
MAS回転速度:4000Hz
1H−90°パルス幅:5.0ms
コンタクト時間:5ms
パルス繰り返し時間:5s
固体高分解能NMRのCPおよびMASの手法については、現代化学 増刊11「高分解能NMR −基礎と新しい展開−」斎藤肇・森島績 偏 東京化学同人 1987版 P.40〜P.50に記載がある。
【0111】
このようにして測定したNMRシグナルのピーク面積を用いて以下の値を算出決定する。
【0112】
M/Qは以下の様に定義され、表面Si原子に対して1官能のオルガノシラン化合物が化学結合している割合の目安となる。このM/Qが大きいほど表面の処理量が大きいことを示す。
M/Q=M/(Q+Q+Q+Q
(式中Mは構造Mに対するNMRシグナルのピーク面積を表す。)
【0113】
D/Qは以下の様に定義され、表面Si原子に対して2官能のオルガノシラン化合物が化学結合している割合の目安となる。このD/Qが大きいほど表面の処理量が大きいことを示す。
D/Q=(D+D)/(Q+Q+Q+Q
(式中Dは構造Dに対するNMRシグナルのピーク面積を表す。)
【0114】
T/Qは以下の様に定義され、表面Si原子に対して3官能のオルガノシラン化合物が化学結合している割合の目安となる。このT/Qが大きいほど表面の処理量が大きいことを示す。
T/Q=(T+T+T)/(Q+Q+Q+Q
(式中T(i=1〜3)は構造Tiに対するNMRシグナルのピーク面積を表す。)
【0115】
(B)成分の低屈折率無機微粒子が分散物状態で表面処理された場合には、分散溶媒を25℃で減圧下で除去することにより得られる粒子を用いて上記NMRを測定することができる。
【0116】
(B)成分の低屈折率無機微粒子と前記(A)成分の比率
前記(A)成分の(B)成分に対する量は、(A)成分が架橋性官能基を有さない場合には、10〜150質量%が好ましく、15〜100質量%がより好ましい。(A)成分が架橋性官能基を有する場合には、10〜200質量%が好ましく、15〜150質量%がより好ましく、更に好ましくは50〜150質量%である。この範囲にすることで、粒子の上部偏在性、塗膜強度の観点で好ましい。
【0117】
<(C)成分:分子内にフッ素原子を含有しない硬化性バインダー>
本発明の塗布組成物は、(C)成分として分子内にフッ素原子を含有しない硬化性バインダーを含有する。(C)成分の好ましい一例としては、熱又は電離放射線により架橋する反応性基を有するモノマー又はオリゴマーが好ましく、2官能基以上を有する多官能モノマーや多官能オリゴマーを有する樹脂成分がより好ましく、3官能基以上を有する多官能モノマーや多官能オリゴマーを有する樹脂成分がさらに好ましい。
【0118】
前記(C)成分としては、前記(A)成分より表面自由エネルギーが大きいことが好ましい。30mN/m以上の表面自由エネルギーを有する硬化層を形成可能な樹脂であることが好ましく、35〜80mN/mの範囲がより好ましく、40〜60mN/mの範囲が特に好ましい。また、前記(A)成分と前記(C)成分の表面自由エネルギーの差が、5mN/m以上であることが好ましく、10mN/m以上40mN/m以下であることがより好ましい。この範囲とすることにより、本発明の塗布組成物を用いた場合に層分離構造がより形成し易くなる。硬化後の表面自由エネルギーが高すぎても、低すぎても、反射率の低下、ムラなどが発生することがある。表面自由エネルギーは、強度、塗布性の観点から、上記の好ましい下限以上とすることが好ましい。
【0119】
前記(B)成分の低屈折率無機微粒子が前記(A)成分のポリアルキレンオキシド基及び塩基性官能基から選ばれる少なくとも1つの基を有するフッ素含有ポリマーによって、表面を覆われ、塗膜の最表面に偏在するためには、前記(A)成分と前記(C)成分の分離性が大きい方が好ましい。
前記(A)成分と前記(C)成分の分離性は熱力学的及び動力学的考察によって予測することができる。例えば、フローリー・ハギンスの格子理論で分離性の指標である混合自由エネルギー(ΔG=ΔH−T・ΔS)を求めると、重合度、体積分率(φ:文献では組成分率とも呼ばれる)、及び相互作用パラメーター(χ)の関数として予測することが知られている(たとえば、Batesの「Polymer−Polymer Phase Behavior」、Science、Vol.251 pp.898−905、1991、又は、ストローブルの「高分子の物理」シュプリンガー・フェアラーク東京、1998、参照)。
ΔGはゼロより大きいと、2成分は分離する方向に進み、ゼロより小さいとと、2成分は混合する方向に進むことを意味している。本発明において、前記(B)成分が前記(A)成分によって、表面を覆われ、塗膜の最表面に偏在するためには、前記(A)成分と前記(C)成分のΔGはゼロより大きいことがより好ましく、より分離を促進させ、層界面の乱れを軽減させるという観点で、ΔGは0.01以上がさらに好ましい。
【0120】
前記(C)成分の硬化性バインダーが有する官能基としては、光、電子線、放射線重合性のものが好ましく、中でも光重合性官能基が好ましい。
光重合性官能基としては、具体的には、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、スチリル基、アリル基等の不飽和の重合性官能基等が挙げられ、中でも、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
耐擦傷性向上の観点から(C)成分の硬化性バインダーとしては、分子内に少なくとも複数の不飽和二重結合を有する化合物を含有することが好ましい。
【0121】
光重合性官能基を有する硬化性バインダーの具体例としては、
ネオペンチルグリコールアクリレート、1,6−ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等のアルキレングリコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類;
トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリオキシアルキレングリコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類;
ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート等の多価アルコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類;
2,2−ビス{4−(アクリロキシ・ジエトキシ)フェニル}プロパン、2−2−ビス{4−(アクリロキシ・ポリプロポキシ)フェニル}プロパン等のエチレンオキシドあるいはプロピレンオキシド付加物の(メタ)アクリル酸ジエステル類;
等を挙げることができる。
【0122】
さらにはエポキシ(メタ)アクリレート類、ウレタン(メタ)アクリレート類、ポリエステル(メタ)アクリレート類も、光重合性多官能モノマーとして、好ましく用いられる。
【0123】
中でも、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル類が好ましい。さらに好ましくは、1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能モノマーが好ましい。具体的には、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、1,2,4−シクロヘキサンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタグリセロールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、(ジ)ペンタエリスリトールトリアクリレート、(ジ)ペンタエリスリトールペンタアクリレート、(ジ)ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、(ジ)ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールトリアクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサトリアクリレート等が挙げられる。本明細書において、「(メタ)アクリレート」、「(メタ)アクリル酸」、「(メタ)アクリロイル」は、それぞれ「アクリレート又はメタクリレート」、「アクリル酸又はメタクリル酸」、「アクリロイル又はメタクリロイル」を表す。
【0124】
モノマーバインダーとしては、各層の屈折率を制御するために、屈折率の異なるモノマーを用いることが出来る。特に高屈折率モノマーの例としては、ビス(4−メタクリロイルチオフェニル)スルフィド、ビニルナフタレン、ビニルフェニルスルフィド、4−メタクリロキシフェニル−4’−メトキシフェニルチオエーテル等が含まれる。
また、例えば特開2005−76005号、同2005−36105号に記載されたデンドリマーや、例えば特開2005−60425号記載のようなノルボルネン環含有モノマーを用いることもできる。
多官能モノマーは、二種類以上を併用してもよい。
【0125】
本発明の塗布組成物に用いられる前記(A)成分と前記(B)成分と(C)成分と後述する(E)成分の質量比は、1度の塗布工程で、屈折率の異なる2層以上を形成させ、且つ反射防止性を付与する観点から[(A)成分+(B)成分+(E)成分]/[(C)成分+(F)成分]の質量比は20/80〜60/40が好ましく、25/75〜55/45がより好ましく、30/70〜50/50がさらに好ましい。
【0126】
<(D)成分:溶剤>
本発明に用いられる(D)溶剤としては、各成分を溶解又は分散可能であること、塗布工程、乾燥工程において均一な面状となり易いこと、液保存性が確保できること、適度な飽和蒸気圧を有すること、等の観点で選ばれる各種の溶剤が使用できる。
溶媒は1種類でも良いし、2種類以上を混合して用いても良い。
(D)成分としては、以下の少なくとも2種の混合溶剤であることが好ましい。
(D−1):沸点が100℃を超える揮発性溶剤
(D−2):沸点が100℃以下の揮発性溶剤
【0127】
特に、乾燥負荷の観点から、常圧室温における沸点が100℃以下の溶剤を主成分とし、乾燥速度の調整のために沸点が100℃を超える溶剤を少量(沸点が100℃以下の溶剤100質量部に対して沸点が100℃を超える溶剤1〜50質量部、より好ましくは2〜40質量部、特に好ましくは3〜30質量部)含有させることが好ましい。2種の溶媒の沸点の差が25℃以上であることが好ましく、35℃以上が特に好ましく、50℃以上が更に好ましい。沸点の異なる有機溶剤を少なくとも2種併用することで、低屈折率無機微粒子の上部偏在、バインダーの分離がし易くなる。更に塗布・乾燥中に塗膜が相分離を起こし、粒子を偏在する際に、系全体の粘度を低くした方が偏在性が良化する。このため(D−1)及び(D−2)成分の粘度は4.0cP以下であることが好ましく、2.0cP以下であることがより好ましく、1.5cP以下であることが更に好ましい。
更に前記(A)成分又は前記(C)成分と溶解性パラメータ差が1.0以上10以下の溶剤を少量(沸点が100℃以下の溶剤100質量部に対して1〜50質量部、より好ましくは2〜40質量部、特に好ましくは3〜30質量部)含有させることが好ましい。溶解性の悪い溶剤を添加することで、バインダーの分離性が促進される。
【0128】
沸点が100℃以下の溶剤としては、例えば、ヘキサン(沸点68.7℃)、ヘプタン(98.4℃)、シクロヘキサン(80.7℃)、ベンゼン(80.1℃)などの炭化水素類、ジクロロメタン(39.8℃)、クロロホルム(61.2℃)、四塩化炭素(76.8℃)、1,2−ジクロロエタン(83.5℃)、トリクロロエチレン(87.2℃)などのハロゲン化炭化水素類、ジエチルエーテル(34.6℃)、ジイソプロピルエーテル(68.5℃)、ジプロピルエーテル (90.5℃)、テトラヒドロフラン(66℃)などのエーテル類、ギ酸エチル(54.2℃)、酢酸メチル(57.8℃)、酢酸エチル(77.1℃)、酢酸イソプロピル(89℃)、炭酸ジメチル(90.3℃)などのエステル類、アセトン(56.1℃)、メチルエチルケトン、79.6℃)などのケトン類、メタノール(64.5℃)、エタノール(78.3℃)、2−プロパノール(82.4℃)、1−プロパノール(97.2℃)などのアルコール類、アセトニトリル(81.6℃)、プロピオニトリル(97.4℃)などのシアノ化合物類、二硫化炭素(46.2℃)などがある。このうちケトン類、エステル類が好ましく、特に好ましくはケトン類である。ケトン類の中ではメチルエチルケトンが特に好ましい。
【0129】
沸点が100℃を超える溶剤としては、例えば、オクタン(125.7℃)、トルエン(110.6℃)、キシレン(138℃)、テトラクロロエチレン(121.2℃)、クロロベンゼン(131.7℃)、ジオキサン(101.3℃)、ジブチルエーテル(142.4℃)、酢酸イソブチル(118℃)、シクロヘキサノン(155.7℃)、2−メチル−4−ペンタノン(メチルイソブチルケトン(MiBK)と同じ、115.9℃)、1−ブタノール(117.7℃)、N,N−ジメチルホルムアミド(153℃)、N,N−ジメチルアセトアミド(166℃)、ジメチルスルホキシド(189℃)などがある。好ましくは、シクロヘキサノン、2−メチル−4−ペンタノンである。
【0130】
粘度が4.0cP以下の溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン(0.40cP(20℃))、ジメチルケトン(0.32cP(20℃))、トルエン(0.59cP(25℃))、キシレン(0.67cP(25℃))、炭酸ジメチル(0.63cP(20℃))、n-酢酸ブチル(0.73cP(20℃))、テトラヒドロフラン(THF)(0.55cP(20℃))、メチルイソブチルケトン(0.61cP(20℃))、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)(1.30cP(20℃))、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)(1.81cP(20℃))、(エタノール(1.12cP(20℃))、酢酸メチル(0.39cP(20℃))などがある。好ましくは、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジメチルケトン、炭酸ジメチル、酢酸メチルである。
【0131】
本発明においては、(A)成分と(C)成分のいずれか一方とのSP値(溶解性パラメータ)の差が1〜10である揮発性溶剤を用いることが好ましい。
(A)成分と溶解性パラメータ差が1.0以上10以下の溶剤としては、溶解性パラメータの絶対値が20以上30以下の溶剤が好ましく、より好ましくは21以上27以下、更に好ましくは22以上26以下の溶剤である。例えば、プロピレングリコールモノエチルエーテル(溶解性パラメータ=23.05)、酢酸エチル(溶解性パラメータ=23.65)、メタノール(溶解性パラメータ=28.17)、エタノール(溶解性パラメータ=25.73)などがある。好ましくはプロピレングリコールモノエチルエーテルである。
塗布組成物を塗布し、乾燥が進んでいく過程において、溶解性パラメータの絶対値が20以上の溶剤は前記(A)成分との相溶性が低くなる傾向が強く、層分離性を高めるために溶解性パラメータ差が1.0以上の溶剤を用いることが適している。また塗布組成物の調液の際に、溶解性パラメータの絶対値が30以上の溶剤は前記(A)成分を溶解しにくい傾向が高いため溶解性パラメータ差が10以下の溶剤を用いることが適している。
【0132】
また、前記(C)成分と溶解性パラメータ差が1.0以上10以下の溶剤としては、溶解性パラメータの絶対値が10以上20以下の溶剤が好ましく、より好ましくは12以上18以下の溶剤である。
これら溶剤として、例えば、1,1,2,2−テトラフルオロ−1−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)エタン(溶解性パラメータ=14.54)トリフルオロメチルベンゼン(溶解性パラメータ=16.76)、パーフルオロヘプチルエチルアセテート(溶解性パラメータ=14.79)、1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6−ドデカフルオロヘキシルエチルアセテート(溶解性パラメータ=16.72)、トリフルオロ酢酸メチル(溶解性パラメータ=15.73)などがある。好ましくは1,1,2,2−テトラフルオロ−1−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)エタンである。溶解性パラメータ差が1.0以上10以下の溶剤を併用することにより、適度な層分離性を保ちつつ必要最低限の溶解性を満足することが容易である。
【0133】
(溶解性パラメータ)
溶解性パラメータとはどれだけ溶媒などに溶けやすいかということを数値化したものであり、有機化合物ではよく使われる極性と同様の概念で、この溶解性パラメータが大きい程、極性が大きいことを表す。本発明で利用する前記(A)成分は、好ましくは含フッ素ポリマーであり、Fedorの推算法で計算した溶解性パラメータは例えば19以下となる。前項に記載した前記(C)成分のDPHA:ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物の溶解性パラメータ21.4である。上記でいうSP値は例えばFedorの推算法(SP値基礎・応用と計算方法 p.66:山本秀樹著:情報機構(2005.3.31発行)で計算した値である。
【0134】
本発明の塗布組成物中の(D)成分である有機溶剤の配合割合は、塗布組成物の固形分濃度が2〜70質量%になるように添加するのが好ましく、3〜60質量%になるように添加するのがより好ましく、5〜50質量%になるように添加するのが特に好ましい。固形分濃度が低すぎると乾燥に時間がかかる、乾燥起因の膜厚ムラが出易いなどの懸念があり、固形分濃度が高すぎると粒子の偏在が十分に起こらない、塗布量が少なくなり、塗布ムラが出易いなどの懸念がある。
【0135】
<(E)多官能フッ素含有硬化性化合物>
本発明の塗布組成物には、(E)成分として、多官能フッ素含有硬化性化合物を含有する。多官能フッ素含有硬化性化合物としては、多官能フッ素モノマー又はオリゴマーであることが好ましく、耐擦傷性、面状故障の改良効果の観点から、分子量が450〜2000であることが好ましく、500〜2000であることがより好ましく、600〜1500であることが更に好ましい。
(E)成分として、多官能のフッ素モノマー又はオリゴマーを用いることにより、耐擦傷性が高く、更に面状故障を低減した反射防止フィルムを提供することができる。本発明における反射防止フィルムの耐擦傷性を向上させるためにも、(E)フッ素原子を含有する硬化性化合物が上方偏在することによって最表層の硬度やスリップ性を上げることが好ましい。
(E)成分の多官能フッ素含有硬化性化合物は重合性基を有することが好ましく、該重合性基が、アクリロイル基、メタアクリロイル基及び、−C(O)OCH=CHから選ばれるいずれかの基を有することが好ましい。
【0136】
(E)成分として用いることができる多官能含フッ素モノマーまたはオリゴマーは、主に複数のフッ素原子と炭素原子からなる(但し、一部に酸素原子及び/又は水素原子を含んでも良い)、実質的に重合に関与しない原子団(以下、「含フッ素コア部」とも言う)と、エステル結合やエーテル結合などの連結基を介してラジカル重合、イオン重合、又は縮合重合性などの重合性を有する化合物であって、2つ以上の重合性基を有していることが好ましい。
【0137】
多官能含フッ素モノマーまたはオリゴマーは、下記一般式(I)で表される化合物が好ましい。
一般式(I) : Rf{−(L)−Y}
(式中Rfは少なくとも炭素原子及びフッ素原子を含み、酸素原子及び水素原子のうち少なくとも一方を含んでも良い、鎖状又は環状のn価の基を表し、nは2以上の整数を表す。Lは単結合又は二価の連結基を表し、mは0又は1を表す。Yは重合性基を表す。)
【0138】
上記一般式(I)において、Yは重合性基を表す。Yは、ラジカル重合性、イオン重合性、又は縮合重合性の基であることが好ましく、重合性不飽和基又は開環重合性基であることがより好ましく、重合性不飽和基が更に好ましい。具体的には、(メタ)アクリロイル基、アリル基、アルコキシシリル基、α−フルオロアクリロイル基、エポキシ基、及び−C(O)OCH=CHから選ばれるものが更に好ましい。これらの中でも、重合性の観点から、ラジカル重合性又はカチオン重合性を有する(メタ)アクリロイル基、アリル基、α−フルオロアクリロイル基、エポキシ基、又は−C(O)OCH=CHが好ましく、特に好ましいのはラジカル重合性を有する(メタ)アクリロイル基、アリル基、α−フルオロアクリロイル基、又は−C(O)OCH=CHであり、最も好ましいのは(メタ)アクリロイル基、又は−C(O)OCH=CHである。
【0139】
なお、多官能フッ素含有硬化性化合物は重合性基を架橋性基とする架橋剤であってもよい。
架橋性基としては例えば、水酸基又は加水分解可能な基を有するシリル基(例えばアルコキシシリル基、アシルオキシシリル基等)、反応性不飽和二重結合を有する基((メタ)アクリロイル基、アリル基、ビニルオキシ基等)、開環重合反応性基(エポキシ基、オキセタニル基、オキサゾリル基等)、活性水素原子を有する基(たとえば水酸基、カルボキシル基、アミノ基、カルバモイル基、メルカプト基、β―ケトエステル基、ヒドロシリル基、シラノール基等)、酸無水物、求核剤によって置換され得る基(活性ハロゲン原子、スルホン酸エステル等)等が挙げられる。
【0140】
Lは単結合又は二価の連結基を表し、炭素数1〜10のアルキレン基、炭素数6〜10のアリーレン基、−O−、−S−、−N(R)−、及びこれらを2種以上組み合わせて得られる二価の連結基が好ましい。ただし、前記Rは水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を表す。
Lがアルキレン基又はアリーレン基を表す場合、Lで表されるアルキレン基及びアリーレン基はハロゲン原子で置換されていることが好ましく、フッ素原子で置換されていることがより好ましい。
【0141】
ここで、架橋間分子量の計算値とは、多官能フッ素含有硬化性化合物の重合性基が全て重合した重合体において、合わせて3個以上炭素原子及び/又はケイ素原子及び/又は酸素原子が置換した炭素原子を(a)、合わせて3個以上炭素原子及び/又は酸素原子が置換したケイ素原子を(b)とするときに、(a)と(a)、(b)と(b)、又は(a)と(b)で挟まれた原子団の原子量の合計をいう。架橋間分子量を大きくすると、含フッ素モノマー中のフッ素含量を高めることができ、低反射率化、導電性や防汚性能を向上させることが出来るが、一方、塗布膜の強度及び硬度が低下し、塗布膜表面の耐擦傷性及び耐摩耗性が不足してしまう。一方、架橋間分子量を小さくすると、分子間架橋密度があがり、膜強度が向上するが、フッ素量低下し、反射率が上昇してしまうため、架橋密度とフッ素含率の観点から、含フッ素多官能モノマーの重合性基を全て重合させたとき、架橋間分子量の計算値が2000以下であることが好ましい。また1000より小さい事が更に好ましく、400より大きく800よりも小さいことが最も好ましい。また、多官能フッ素含有硬化性化合物は分子内に合わせて3個以上酸素原子及び/又は炭素原子及び/又はケイ素原子で置換された炭素原子を有する(ただし、カルボニルの酸素原子は除く)ことが好ましい。上記炭素原子を含有する事で硬化時に緻密な架橋網目構造を構築することができ、塗膜の硬度が上がる傾向にある。
【0142】
一般式(I)で表される多官能フッ素含有硬化性化合物のより好ましい態様は下記一般式(I−1)、(I−2)及び(I−3)で表されるものである。
【0143】
【化16】

【0144】
式中、Rfは、酸素原子、実質的に炭素原子とフッ素原子のみから構成される基、又は炭素原子とフッ素原子と酸素原子のみから構成される基であって、d価の有機基を表す。Rfは、酸素原子、実質的に炭素原子とフッ素原子のみから構成される基、又は炭素原子とフッ素原子と酸素原子のみから構成される基であって、e価の有機基を表す。Lfは−CFCFCHO−又は−CFCHO−(いずれも炭素原子側で酸素原子と結合)を表し、L及びYは上記一般式(I)におけるL及びYと同義であり、d、eはそれぞれ独立に2以上の整数を表し、fは1以上の整数を表す。
【0145】
Rf及びRfの炭素数は好ましくは0〜30であり、より好ましくは0〜10である。
【0146】
上記記一般式(I−1)、(I−2)又は(I−3)で表される化合物の更に好ましい態様は、下記一般式(I−1’)、(I−2’)及び(I−3’)で表されるものである。
【0147】
【化17】

【0148】
式中、Rf’は、酸素原子、実質的に炭素原子とフッ素原子のみから構成される基、又は炭素原子とフッ素原子と酸素原子のみから構成される基であって、d’価の有機基を表す。Rf’は、酸素原子、実質的に炭素原子とフッ素原子のみから構成される基、又は炭素原子とフッ素原子と酸素原子のみから構成される基であって、e’価の有機基を表す。Rは水素原子、フッ素原子、アルキル基(好ましくは炭素数1〜5のアルキル基)、フルオロアルキル基(好ましくは炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基)のいずれかを表す。d’、e’はそれぞれ独立に2又は3の整数を表し、f’は1〜4の整数を表す。
【0149】
Rf’及びRf’の炭素数は好ましくは0〜30であり、より好ましくは0〜10である。
【0150】
以下に本発明の一般式(I)で表される多官能フッ素含有硬化性化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0151】
【化18】

【0152】
【化19】

【0153】
【化20】

【0154】
【化21】

【0155】
【化22】

【0156】
本発明の一般式(I)で表される多官能フッ素含有硬化性化合物の製造方法は特に限定されないが、例えば以下のような公知の方法の組み合わせにより製造することができる。なお、以下の説明において、既出の記号については特に記載のない限り前記のものと同義である。
工程1:Rh(CO)a又はRh(CHOCOR)aで表される化合物を米国特許第5,093,432号明細書や国際公開第00/56694号に記載の液相フッ素化反応及び引き続くメタノールとの反応により、メチルエステルRf(COCH)aを得る工程。
(式中、Rはメチル基やエチル基のような低級アルキル基を表し、Rはアルキル基、好ましくは含フッ素アルキル基、より好ましくはペルフルオロアルキル基を表し、Rhは液相フッ素化反応によりRfとなり得る基を表す。)
【0157】
工程2:Rf(COCH)aで表される化合物を水素化リチウムアルミニウムや水素化ホウ素ナトリウム等の還元剤で還元してアルコールRf(CHOH)aを得る工程。
工程3:Rf(CHOH)aで表される化合物に、エチレンカーボネート又はエチレンオキシド、及びグリシジルアルコールから選ばれる1種類以上をブロック状又はランダム状に付加させてRf(CHO−L−H)a得る工程。なお、b=c=0の場合、本工程は必要ない。
【0158】
工程4:Rf(CHO−L−H)aで表される化合物に重合性基を導入して一般式(I)で表される化合物Rf(CHO−L−Y)aを得る工程。
ここで、Yが−COC(R)=CHの場合、重合性基導入反応としては、アルコールRf(CHO−L−H)aと酸ハライドXCOC(R)=CH(Xはハロゲン原子を表し、好ましくは塩素原子を表す。)とのエステル化反応やカルボン酸HOCOC(R)=CHとの脱水縮合を利用することができる。また、Yがその他の重合性基の場合、Rf(CHO−L−H)aと対応するハライド化合物との求核置換反応等を利用することができる。
【0159】
多官能フッ素含有硬化性化合物として好ましいものの具体例を以下に示す。ただし、これらに限定されるものではない。
また、多官能含フッ素モノマーまたはオリゴマーは、塗布面状改良、膜の耐擦傷性改良の点から、特開2006−28409号公報の段落番号〔0023〕から〔0027〕に記載のX−2〜4、X−6、X−8〜14、X−21〜32も好ましく用いることができる。
【0160】
【化23】

【0161】
【化24】

【0162】
【化25】



【0163】
また、下記化合物も好ましく用いることができる。
【0164】
【化26】

【0165】
【化27】

【0166】
【化28】

【0167】
【化29】

【0168】
【化30】

【0169】
【化31】

【0170】
【化32】

【0171】
【化33】

【0172】
また、多官能フッ素含有硬化性化合物は、他のバインダーや非含フッ素モノマーとの相溶性の観点で、下記一般式(II)で表される、エーテル結合を介してフッ素で置換されたアルキル鎖の繰り返し単位を有するモノマーを用いることができる。
【0173】
一般式(II) : Y−(CF−CFX−O)n2−Y
(式中Xは−F又は−CFを表し、n2は1〜20の整数を表し、Yは重合性基を表す。)
【0174】
Yの好ましい範囲、及び具体例は前記一般式(I)におけるYと同様である。
以下に一般式(II)で表される多官能フッ素含有モノマーの具体例を示すが、これらに限定されるものではない。
【0175】
FP−1 : CH=CH−COOCH(CFCF−O)CHOCOCH=CH
FP−2 : CH=CH−COOCH(CFCF−O)CHOCOCH=CH
FP−3 : CH=C(CH)−COOCH(CFCF−O)CHOCOC(CH)=CH
FP−4 : CH=C(CH)−COOCH(CFC(CF)F−O)CHOCOC(CH)=CH
FP−5 : CH=C(CH)−COOCH(CFC(CF)F−O)CHOCOC(CH)=CH
【0176】
また、多官能含フッ素モノマーまたはオリゴマーは、架橋構造を形成でき、硬化した皮膜の強度や硬度が高い点から、下記多官能含フッ素含有(メタ)アクリル酸エステルも好ましく用いることができる。具体例としては、例えば1,3−ビス{(メタ)アクリロイルオキシ}−2,2−ジフルオロプロパン、1,4−ビス{(メタ)アクリロイルオキシ}−2,2,3,3−テトラフルオロブタン、1,5−ビス{(メタ)アクリロイルオキシ}−2,2,3,3,4,4−ヘキサフルオロペンタン、1,6−ビス{(メタ)アクリロイルオキシ}−2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロヘキサン、1,7−ビス{(メタ)アクリロイルオキシ}−2,2,3,3,4,4,5,5,6,6−デカフルオロヘプタン、1,8−ビス{(メタ)アクリロイルオキシ}−2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7−ドデカフルオロオクタン、1,9−ビス{(メタ)アクリロイルオキシ}−2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8−テトラデカフルオロノナン、1,10−ビス{(メタ)アクリロイルオキシ}−2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9−ヘキサデカフルオロデカン、1,11−ビス{(メタ)アクリロイルオキシ}−2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10−オクタデカフルオロウンデカン、1,12−ビス{(メタ)アクリロイルオキシ}−2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11−エイコサフルオロドデカン、1,8−ビス{(メタ)アクリロイルオキシ}−2,7−ジヒドロキシ4,4,5,5−テトラフルオロオクタン、1,7−ビス{(メタ)アクリロイルオキシ}−2,8−ジヒドロキシ4,4,5,5−テトラフルオロオクタン、2,7−ビス{(メタ)アクリロイルオキシ}−1,8−ジヒドロキシ4,4,5,5−テトラフルオロオクタン、1,10−ビス{(メタ)アクリロイルオキシ}−2,9−ジヒドロキシ4,4,5,5,6,6,7,7−オクタフルオロデカン、1,9−ビス{(メタ)アクリロイルオキシ}−2,10−ジヒドロキシ4,4,5,5,6,6,7,7−オクタフルオロデカン、2,9−ビス{(メタ)アクリロイルオキシ}−1,10−ジヒドロキシ4,4,5,5,6,6,7,7−オクタフルオロデカン、1,2,7,8−テトラキス{(メタ)アクリロイルオキシ}−4,4,5,5−テトラフルオロデカン、1,2,8,9−テトラキス{(メタ)アクリロイルオキシ}−4,4,5,5,6,6−ヘキサフルオロノナン、1,2,9,10−テトラキス{(メタ)アクリロイルオキシ}−4,4,5,5,6,6,7,7−オクタフルオロデカン、1,2,10,11−テトラキス{(メタ)アクリロイルオキシ}−4,4,5,5,6,6,7,7,8,8−デカフルオロウンデカン、1,2,11,12−テトラキス{(メタ)アクリロイルオキシ}−4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9−ドデカフルオロドデカン、1,10−ビス(α−フルオロアクリロイルオキシ)−2,9−ジヒドロキシ4,4,5,5,6,6,7,7−オクタフルオロデカン、1,9−ビス(α−フルオロアクリロイルオキシ)−2,10−ジヒドロキシ4,4,5,5,6,6,7,7−オクタフルオロデカン、2,9−ビス(α−フルオロアクリロイルオキシ)−1,10−ジヒドロキシ4,4,5,5,6,6,7,7−オクタフルオロデカン、1,2,9,10−テトラキス(α−フルオロアクリロイルオキシ)−4,4,5,5,6,6,7,7−オクタフルオロデカン、1,2,11,12−テトラキス(α−フルオロアクリロイルオキシ)−4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9−ドデカフルオロドデカン等が挙げられる。
【0177】
これらのフッ素多官能(メタ)アクリル酸エステルは、公知の方法により製造することができる。例えば相当する含フッ素エポキシ化合物と(メタ)アクリル酸との開環反応や、相当する含フッ素多価アルコール又は前記開環反応で中間体として得られる水酸基(ヒドロキシル基)を有する含フッ素(メタ)アクリル酸エステルと(メタ)アクリル酸クロライドとのエステル化反応により製造される。
【0178】
(含フッ素モノマーのフッ素含有率)
含フッ素モノマーのフッ素含有率は、前記(C)成分と相分離し、上方偏在させるために表面エネルギーを低下させる観点から、含フッ素モノマーの分子量の25.0質量%以上であることが好ましい。更に好ましくは、45.0〜80.0質量%であり、最も好ましくは50.0〜80.0質量%である。一方、80.0質量%を超える場合には硬化皮膜中のフッ素原子含有量が高いが、皮膜の強度及び硬度が低下し、皮膜表面の耐擦傷性及び耐摩耗性が不足してしまう。
【0179】
<(F)成分:一般式(F−1)で表される表面修飾剤で処理された高屈折率無機微粒子>
本発明における塗布組成物に含まれる(F)成分である、一般式(F−1)で表される表面修飾剤で処理された高屈折率無機微粒子について説明する。
【0180】
高屈折率無機微粒子としては、無機酸化物微粒子が好ましく、無機酸化物微粒子としては、特に限定されないが、ジルコニア(Zr)、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)、鉄(Fe)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、イットリウム(Y)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、インジウム(In)、スズ(Sn)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、鉛(Pb)、ビスマス(Bi)、セリウム(Ce)、アンチモン(Sb)、ゲルマニウム(Ge)などの元素の酸化物が用いられる。
これらの元素の酸化物としては、例えば、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化チタン(TiO)、酸化アルミニウム(Al)、酸化鉄(Fe、FeO、Fe)、酸化銅(CuO、CuO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化イットリウム(Y)、酸化ニオブ(Nb)、酸化モリブデン(MoO)、酸化インジウム(In、InO)、酸化スズ(SnO)、酸化タンタル(Ta)、酸化タングステン(WO、W)、酸化鉛(PbO、PbO)、酸化ビスマス(Bi)、酸化セリウム(CeO、Ce)、酸化アンチモン(Sb、Sb)酸化ゲルマニウム(GeO、GeO)などが挙げられる。特に、樹脂との相溶性を高める酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化チタン(TiO)が好ましい。
【0181】
高屈折率無機微粒子の平均分散粒径は、1nm以上かつ20nm以下であることが好ましい。平均分散粒径が1nm未満であると、結晶性が乏しくなり、屈折率等の粒子特性を発現することが難しくなるからであり、一方、無機酸化物微粒子の平均分散粒径が20nmを超えると、分散液や透明複合体とした場合に透明性が低下するからである。
このように、無機酸化物微粒子は、ナノサイズの粒子であるから、この無機酸化物微粒子を樹脂中に分散させて透明複合体とした場合においても、光散乱が小さく、複合体の透明性を維持することが可能である。
【0182】
高屈折率無機微粒子の屈折率は塗膜形成後の高屈折率層の高屈折率化の観点から、1.50〜2.50(550nmの波長)が好ましく、1.60〜2.30(550nmの波長)がより好ましく、1.70〜2.10(550nmの波長)がさらに好ましい。
【0183】
[高屈折率無機微粒子分散液の作製]
高屈折率無機微粒子と、この高屈折率無機微粒子の表面を修飾する表面修飾剤と、分散媒とを混合し、この高屈折率無機微粒子の表面を表面修飾剤により修飾し、次いで、分散処理を行い、表面修飾剤により表面が修飾された高屈折率無機微粒子を分散媒中に分散してなる高屈折率無機微粒子分散液の形態とすることが好ましい。
【0184】
[高屈折率無機微粒子の分散方法]
高屈折率無機微粒子を有機溶剤、または塗布組成物中で、均一に分散させるために、表面修飾剤処理により、化学的に表面に結合させる分散方法が望ましい。表面修飾剤処理を行わない未修飾の高屈折率無機微粒子は有機溶剤、または塗布組成物中に分散させることができず、凝集、沈殿してしまう。また、既知の低分子や高分子系のカチオン系、またはノニオン系、アニオン系の分散剤による分散方法では、比較的極性の高い低屈折率粒子と混合したときに塗布液中で、凝集、沈殿してしまう問題がある。
【0185】
[高屈折率無機微粒子の表面修飾剤]
高屈折率無機微粒子の表面修飾剤は下記一般式(F−1)で表される。
【0186】
【化34】

【0187】
一般式(F−1)中、Rは炭素数1以上の有機基を表し、Mは珪素、ジルコニウム、チタニウムから選ばれる金属原子を表し、Xはアルコキシ基又はハロゲン原子を表す。mは1から3の整数を表し、nは1から3の整数を表す。R及びXは複数存在する場合、それぞれ同じでも異なっていてもよい。
【0188】
一般式(F−1)中、Rは炭素数3以上50以下の有機基であることが好ましく、炭素数5以上30以下の有機基であることがより好ましい。
Xはアルコキシ基であることが好ましい。
【0189】
表面修飾剤としては、ビニル基、スチリル基、アクリル基、メタクリル基、アクリロキシ基、エポキシ基、炭素−炭素二重結合、フェニル基、メチルフェニル基、ケイ素−水素結合の群から選択された1種または2種以上を有するものが好適に用いられる。
このような表面修飾剤としては、アルコキシシラン化合物、シロキサン化合物などが挙げられる。
これらの表面修飾剤のうち特に好ましいのは、アルコキシシラン化合物としてはシランカップリング剤である。
【0190】
シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリフェノキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、p−スチリルトリエトキシシラン、p−スチリルトリフェノキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリフェノキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリフェノキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、アリルトリフェノキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリエトキシシラン、n−オクチルトリエトキシシラン、n−デシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシランなどが挙げられる。
【0191】
上記の表面修飾剤を用いて無機酸化物微粒子の表面を修飾する方法としては、湿式法、乾式法などが挙げられる。
湿式法とは、表面修飾剤と無機酸化物微粒子を溶媒に投入し混合することにより、無機酸化物微粒子の表面を修飾する方法である。
乾式法とは、表面修飾剤と乾燥した無機酸化物微粒子をミキサーなどの乾式混合機に投入し混合することにより、無機酸化物微粒子の表面を修飾する方法である。
【0192】
この表面が修飾された高屈折率無機酸化物微粒子の修飾部分の質量比は、粒子全体量の1質量%以上かつ50質量%以下であることが好ましく、より好ましくは2質量%以上かつ30質量%以下、更に好ましくは3質量%以上かつ25質量%以下である。
ここで、修飾部分の質量比を1質量%以上かつ50質量%以下と限定した理由は、修飾部分の質量比が1質量%未満であると、無機酸化物微粒子の樹脂への相溶が困難となり、樹脂との複合化の際に透明性が失われるからであり、一方、修飾部分の質量比が50質量%を超えると、表面処理剤が樹脂特性へ及ぼす影響が大きくなり、屈折率等の複合体特性が低下するからである。
【0193】
高屈折率無機微粒子の分散溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノール、ブタノール、オクタノールなどのアルコール類;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトンなどのエステル類;ジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル(メチルセロソルブ)、エチレングリコールモノエチルエーテル(エチルセロソルブ)、エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルなどのエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素;ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアセトアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド類が好適に用いられ、これらの溶媒のうち1種または2種以上を用いることができる。
【0194】
[反射防止フィルムの構造]
本発明の反射防止フィルムは前記方法により得られた反射防止フィルムである。
本発明の塗布組成物を基材上に塗布し塗膜を形成する工程、塗膜から溶剤を揮発させ乾燥する工程、塗膜を硬化し硬化層を形成する工程をこの順に有することによって、屈折率の異なる多層構造を有する硬化膜が得られる。多層構造は実質的に二層構造であることが好ましい。これらの分離して形成される二層は、(B)成分が空気界面側に偏在した低屈折率層と(F)成分が基材界面側に偏在した高屈折率層とから構成されている。本発明において、前記低屈折率層が前記(B)成分と前記(A)成分由来の成分を主成分として構成され、前記高屈折率層が前記(C)成分由来の成分と前記(F)を主成分として構成されていることが好ましい。本発明において、前記低屈折率層には、(A)及び(B)成分が本発明の塗布組成物から形成される塗膜全層の平均密度の1.5倍以上の濃度で存在していることが好ましく、更に好ましくは1.8倍以上、最も好ましくは1.9〜2.0倍である。前記高屈折率層は(C)及び(F)成分が本発明の塗布組成物から形成される塗膜全層の平均密度の1.5倍以上の濃度で存在していることが好ましく、更に好ましくは1.8倍以上、最も好ましくは1.9〜2.0倍である。また、前記低屈折率層には、(B)成分は、20〜90体積%の密度で存在することが好ましく、更に好ましくは30〜80体積%以上、最も好ましくは40〜70体積%である。同様に、前記高屈折率層には、(B)成分は、20〜90体積%の密度で存在することが好ましく、更に好ましくは30〜80体積%以上、最も好ましくは40〜70体積%である。
前記組成物を塗布して得られる硬化膜の屈折率の異なる多層構造とは、前記(B)成分が空気界面側に偏在した低屈折率層と、(F)成分が基材界面側に偏在した高屈折率層の少なくとも二層で構成された構造のことであり、実質性能を落とさない範囲で、該2層の界面近傍で、構成成分が混合した層(前記(A)成分由来の成分と前記(C)成分由来の成分が混合している層、また前記(B)成分と前記(C)成分由来の成分が混合している層、前記(A)成分由来の成分と前記(F)成分由来の成分が混合している層、また前記(B)成分と前記(F)成分由来の成分が混合している層、前記(A)成分由来の成分と前記(B)成分と前記(C)成分由来の成分と前記(C)が混合している層等)があってもよい。
本発明の(E)成分に由来する成分は、(B)成分と(A)成分が偏在して構成された層に存在することが好ましい。
【0195】
本発明の反射防止フィルムの硬化膜の多層構造は、例えば、得られたフィルムの断面TEM、または、C60スパッタリングESCAで観察することにより確認することができる。断面TEMからは前記(B)成分と前記(F)成分の膜内分布状態を観察することができ、また、C60スパッタリングESCAにて、深さ(膜厚)方向のフッ素原子、または珪素原子、高屈折率無機粒子に起因する元素(アルミニウム、チタニウム、ジルコニウム、亜鉛、インジウム、スズ、アンチモン、セリウムから少なくとも1つの元素)の強度比を解析することで、(A)、(C)、(E)、(F)成分に由来する成分の膜厚方向の組成物分布を知ることができる。
例えば、断面TEMにより、前記(B)成分が空気界面側に、前記(F)成分が基材界面側に多く存在していることが観察でき、また、基材界面側に高屈折率無機粒子に起因する元素が多く存在していることが観察できる。また、C60スパッタリングESCAでは、空気界面側にフッ素、または珪素原子が多く存在する層が存在し、空気界面側の表面から膜厚が80nm〜100nmの深さからフッ素、または珪素原子が減少し、80〜110nmの深さから高屈折率無機粒子に起因する元素が増加することが観察できる。
本発明の塗布組成物を塗布し、乾燥させていったときに、前記(A)成分由来の成分と混合自由エネルギーがゼロ以上の前記(C)成分、もしくは前記(F)成分は相分離を起こし、分離が開始される。このとき前記(A)成分由来の成分は表面エネルギーの低いフッ素成分、またはシリコーン成分を有するため、疎水界面(空気界面)に偏在し、前記(A)成分由来の成分に被覆されている前記(B)成分も同時に上方偏在することで実質的に前記(B)成分と前記(A)成分由来の成分が偏在している層が形成できる。前記(B)成分と前記(A)成分由来の成分は共に低屈折率材料であるので、上層(空気界面側)に低屈折率層を形成することができる。同時に、前記(C)成分と(F)成分は下層(基材界面側)に偏在することになるので、実質的に前記(C)成分由来の成分と(F)成分が主成分として構成された層が形成することができる。前記(C)成分由来の成分と(F)成分は前記(B)成分と前記(A)成分由来の成分に比べ、高屈折率材料であるために、高屈折率層が形成でき、屈折率差が生じることにより、反射防止能を得ることができる。
【0196】
また粒子を上方偏在と下方偏在を同時に起こさせることにより、耐擦傷性を向上するとともに、使用量は少量で良いためにコスト面でも優れていると言える。
また、前記(A)成分同様表面エネルギーの低い前記(E)成分を用いると、前記(E)成分は上部偏在し、実質的に前記(B)成分と前記(A)成分由来の成分と前記(E)成分由来の成分が偏在している層が形成できる。さらに、前記(E)成分は硬化性のフッ素モノマーであるために、耐擦傷性に優れ、更に面状改良効果も示す。このとき、前記(F)成分によって、前記(A)成分、前記(B)成分、前記(E)成分の上方偏在性をより良化させることができる。
【0197】
本発明の塗布組成物を基材上に塗布し塗膜を形成する工程、塗膜から溶剤を揮発させ乾燥する工程、塗膜を硬化し硬化層を形成する工程によって作製した低屈折率層の膜厚とは、塗膜の断面のTEM写真において、(B)成分である低屈折率無機微粒子が本発明の塗布組成物から形成される塗膜全層の平均密度の1.8倍以上の濃度で存在している領域のことで、40〜200nmであることが好ましく、50〜150nmであることがより好ましく、60〜110nmであることが更に好ましい。
【0198】
本発明の塗布組成物を基材上に塗布し塗膜を形成する工程、塗膜から溶剤を揮発させ乾燥する工程、塗膜を硬化し硬化層を形成する工程によって作製した高屈折率層の膜厚とは、塗膜の断面のTEM写真において、(F)成分である高屈折率無機微粒子が本発明の塗布組成物から形成される塗膜全層の平均密度の1.8倍以上の濃度で存在している領域のことで、40〜200nmであることが好ましく、50〜170nmであることがより好ましく、70〜130nmであることが更に好ましい。
【0199】
本発明の塗布組成物を基材上に塗布し塗膜を形成する工程、塗膜から溶剤を揮発させ乾燥する工程、塗膜を硬化し硬化層を形成する工程によって作製した硬化層(低屈折率層+高屈折率層)の膜厚は断面TEMにより求められ、100〜300nmであることが好ましく、150〜280nmであることがより好ましく、180〜230nmであることが更に好ましい。
【0200】
本発明の反射防止フィルムの前記(B)成分が偏在している低屈折率層の屈折率は1.25〜1.48であることが好ましく、1.28〜1.45であることがより好ましく、1.30〜1.40の範囲であることが更に好ましい。屈折率が高すぎると反射防止能が低下する原因となり、また、低すぎると耐擦傷性が低下する原因となる。
【0201】
本発明の反射防止フィルムの前記(F)成分が偏在し、(C)成分由来の成分を主成分とする高屈折率層の屈折率は1.55〜1.90であることが好ましく、1.85〜1.70であることがより好ましく、1.60〜1.80の範囲であることが更に好ましい。
【0202】
塗布組成物を基材上に塗布する際に、上記多層構造を有する層の屈折率、膜厚を最適となるよう設計することはもちろんであるが、反射率を更に低下させるための中間屈折率層、ゴミ付きを防止するための帯電防止機能層、物理的強度を付与するためのハードコート層、防眩性を付与するための防眩層等を目的に応じて設けることができる。
【0203】
本発明の製造方法を用いて反射防止フィルムを作製する場合は、基材を透明フィルム基材として本発明の塗布組成物を塗布すれば良い。その場合、光学特性、物理特性等が良好な好ましい態様としては、〔フィルム基材/高屈折率層/低屈折率層〕、〔フィルム基材/ハードコート層/高屈折率層/低屈折率層〕、〔フィルム基材/下塗り層/高屈折率層/低屈折率層〕、〔フィルム基材/導電性層/高屈折率層/低屈折率層〕、〔フィルム基材/干渉ムラ防止層/高屈折率層/低屈折率層〕、〔フィルム基材/光拡散層/高屈折率層/低屈折率層〕、〔フィルム基材/密着性層/高屈折率層/低屈折率層〕の構成が例示できる。
【0204】
〔基材〕
本発明に用いることができる基材としては種々の層を積層可能なものであればどのようなものでも良いが、連続搬送による高生産性の観点からフィルム基材が好ましい。
フィルム基材は、可視光の光線透過率に優れ(好ましくは光線透過率90%以上)、透明性に優れるもの(好ましくはヘイズ値1%以下)であれば特に制限はない。具体的には、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系ポリマー、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース等のセルロース系ポリマー、ポリカーボネート系ポリマー、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー等の透明ポリマーからなるフィルムが挙げられる。また、ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体等のスチレン系ポリマー、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ないしノルボルネン構造を有するポリオレフィン、エチレン・プロピレン共重合体等のオレフィン系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、ナイロンや芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー等の透明ポリマーからなるフィルムも挙げられる。更に、イミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマーや前記ポリマーのブレンド物等の透明ポリマーからなるフィルム等も挙げられる。特に光学的に複屈折の少ないものが好適に用いられる。
【0205】
フィルム基材の厚さ、巾については適宜に決定し得る。フィルム基材の厚さとしては、一般には強度や取り扱い性等の作業性、薄層性等の点を考慮し、10〜500μm程度である。特に20〜300μmが好ましく、30〜200μmがより好ましい。フィルム基材の巾としては、100〜5000mmのものが好適に用いられ、800〜3000mmであることが好ましく、1000〜2000mmであることがさらに好ましい。更に、フィルム基材の屈折率としては特に制限されず、通常1.30〜1.80程度、特に1.40〜1.70であることが好ましい。
【0206】
基材の表面は平滑であることが好ましく、平均粗さRaの値が1μm以下であることが好ましく、0.0001〜0.5μmであることが好ましく、0.001〜0.1μmであることがさらに好ましい。
【0207】
〔反射防止フィルムの製造方法〕
本発明の反射防止フィルムは、塗布組成物を塗布する工程、乾燥する工程、硬化する工程により製造することが可能であり、上述のようにフィルム基材を用いることで連続的に塗布、乾燥、硬化工程を行うことができ、高い生産性を実現できる。この際、得られる積層体はフィルム状の積層体、即ち反射防止フィルムが作製される。以下に各々の工程について説明する。なお、本発明の製造方法は前記工程以外にその他の工程を有していてもよい。
【0208】
(塗布工程)
本発明の製造方法における塗布方法としては、例えば、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法やエクストルージョンコート法(ダイコート法)(米国特許2681294号明細書参照)、マイクログラビアコート法等の公知の方法が用いられ、その中でもマイクログラビアコート法、ダイコート法が高い生産性、塗膜の均一性の観点で好ましく用いられる。
【0209】
[スロットダイを用いて支持体上に押し出す工程]
本発明のフィルムを高い生産性で供給するために、エクストルージョン法(ダイコート法)が好ましく用いられる。特に、ハードコート層や反射防止層のような、ウエット塗布量の少ない領域(20cc/m以下)で好ましく用いることができるダイコーターについては例えば特開2007−293313号公報などを参照することができ、本発明においても同様である。
【0210】
(乾燥工程)
本発明の製造方法において、本発明の塗布組成物を基材上に塗布した後、溶剤を乾燥するために加熱されたゾーンにウェブで搬送する。その際の乾燥ゾーンの温度としては0℃〜140℃が好ましく、10℃〜120℃が更に好ましく、乾燥ゾーンの前半は比較的低温に、後半は比較的高温にする等の調整をすることも好適である。但し、塗布組成物に含有される溶剤以外の成分の揮発が始まる温度以下とすることは必須である。これらの好ましい乾燥条件以外に乾燥工程の制約はなく、通常の塗布後乾燥に使用できる方法を用いることができる。
【0211】
(硬化方法)
本発明において、塗布乾燥された積層体を紫外線照射および/または熱により硬化することができる。ここで紫外線照射による硬化とは、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等、また、ArFエキシマレーザ、KrFエキシマレーザ、エキシマランプまたはシンクロトロン放射光等の光源を用いて乾燥した膜に紫外線を照射して膜を硬化させることをいう。
照射条件はそれぞれのランプによって異なるが、照射光量は20〜10000mJ/cmが好ましく、さらに好ましくは、100〜2000mJ/cmであり、特に好ましくは、150〜1000mJ/cmである。
紫外線による硬化の場合、各層を1層ずつ照射してもよいし、積層後照射しても良い。紫外線照射の際に表面の硬化を促進させる目的で、窒素ガス等のパージをして酸素濃度を低下させることもできる。硬化させる環境の酸素濃度は5%以下が好ましい。本発明の反射防止フィルムのように最表層が低屈折率層を形成する場合には、酸素濃度は0.1%以下が好ましく、0.05%以下がより好ましく、0.02%以下が最も好ましい。
本発明の製造方法によって得られた積層体は粒子含有層を有することが好ましい。また、該積層体は反射防止機能を有することが好ましい。
【0212】
〔ハードコート層〕
本発明の反射防止フィルムは、物理的強度を付与するために基材の一方の面にハードコート層を設けることができる。
【0213】
ハードコート層の膜厚は、十分な耐久性または耐衝撃性の付与、カール、生産性、コストの観点から、0.5μm〜50μm程度とするのが一般的である。好ましい膜厚としては1μm〜30μmであり、更に好ましくは2μm〜20μmであり、最も好ましくは3μm〜15μmである。
また、ハードコート層の強度は、鉛筆硬度試験で、H以上であることが好ましく、2H以上であることがより好ましく、3H以上であることが更に好ましく、最も好ましくは5H以上である。
さらに、JIS K5400に従うテーバー試験で、試験前後の試験片の摩耗量が少ないほど好ましい。
【0214】
ハードコート層の屈折率は、光学設計、反射率、色味、ムラ、コストの点から、屈折率が1.48〜1.75の範囲にあることが好ましく、より好ましくは1.49〜1.65であり、更に好ましくは1.50〜1.55である。
【0215】
ハードコート層の表面散乱にて防眩機能を付与する場合は、表面ヘイズ(全ヘイズ値から内部ヘイズ値を引いた値。内部ヘイズ値はフィルム表面の凹凸をフィルム表面と同じ屈折率の物質により無くすことで測定可能である。)が0.1%〜20%が好ましく、0.2%〜5%がより好ましく、0.2%〜2%であることが特に好ましい。表面ヘイズが大きすぎると明室コントラストが悪化し、小さすぎると映り込みが悪化する。
【0216】
また、ハードコート層に透光性粒子を含有して内部散乱を付与する場合、内部ヘイズは目的により好ましい範囲が異なるが、内部散乱により液晶パネルの模様や色ムラ、輝度ムラ、ギラツキなどを見難くしたり、散乱により視野角を拡大する機能を付与する場合は、内部ヘイズ値は0%〜60%であることが好ましく、1%〜40%であることがより好ましく、10%〜35%であることが特に好ましい。内部ヘイズが大きすぎると正面コントラストが低下し、白茶け感が増す。小さすぎると使用できる素材の組合せが限定され、防眩性その他の特性値の合わせこみが困難となり、また、高コストとなる。一方、正面コントラストを重視する場合は、0%〜30%が好ましく、更に好ましくは1%〜20%であり、最も好ましくは1%〜10%である。
【0217】
また、ハードコート層の表面凹凸形状については、中心線平均粗さ(Ra)を0.30μm以下とすることが好ましい。Raは、より好ましくは0.01〜0.20μmであり、更に好ましくは0.01〜0.12μmである。Raが大きいと表面散乱起因の白ボケ感が出たり、ハードコート層上に形成する層の均一性が得難いなどの問題が起こる場合がある。
【0218】
〔中屈折率層〕
本発明においては、ハードコート層または防眩層が設けられた透明支持体と高屈折率層の間に中屈折率層を設ける。
中屈折率層の屈折率はハードコート層または防眩層の屈折率と、高屈折率層の中間的な値であるように調節し、値としては1.55〜1.80であることが好ましく、1.55〜1.70がより好ましい。
【0219】
また本発明において中屈折率層の膜厚は150nm以下であることが好ましく、20〜150nmであることがより好ましく、さらに30〜130nmであることが好ましい。
【0220】
中屈折率層は硬化性バインダー(例えば、多官能モノマーや多官能オリゴマーなど)と、屈折率を制御する目的の高屈折率無機微粒子を含有してなる。
【0221】
また中屈折率層に用いる高屈折率無機微粒子はアルミニウム、チタニウム、ジルコニウム、亜鉛、インジウム、スズ、アンチモン、セリウムから少なくとも1つの元素を含む酸化物であることが好ましい。
【0222】
また中屈折率層の高屈折率無機微粒子の平均粒径は、50nm以下であることが好ましく、特に5〜40nmであることが好ましい。
【0223】
中屈折率層の高屈折率無機微粒子は、中屈折率層の全固形分に対して30〜90質量%含有することが好ましく、さらに40〜90質量%含有することが好ましい。
【0224】
〔導電性層〕
本発明の反射防止フィルムにおいては、帯電防止の目的で導電性層を設けることができ、それにより反射防止フィルム表面でのゴミつきを防止することができる。導電性層は各層と別の単独層として設けても良いし、積層した層のいずれかが導電性層を兼ねるような兼用層として設けることも可能である。
【0225】
導電性層の膜厚は、0.01μm〜10μmが好ましく、0.03μm〜7μmがより好ましく、0.05μm〜5μmが最も好ましい。導電性層の表面抵抗SR(Ω/sq)は、logSRとして、5〜12であることが好ましく、5〜11がより好ましく、6〜10であることが最も好ましい。導電性層の表面抵抗は公知の測定法で測定することができ、例えば四探針法により測定可能である。
【0226】
〔干渉ムラ防止層〕
本発明の反射防止フィルムにおいては、干渉ムラ防止の目的で干渉ムラ防止層を設けることができ、それにより反射防止フィルム表面での干渉ムラを防止することができる。干渉ムラは基材と基材上に塗布した層(例えばハードコート層)の屈折率差によって反射光が干渉し、膜厚ムラに対応して色味変化してしまうことであり、これを防止するために基材と基材上に塗布した層の間に屈折率を連続的に変化させることで、干渉ムラを防止する方法がある(特開2003−205563号公報、特開2003−131007号公報等参照)。このような干渉ムラ防止層を基材層の上に設けても良い。
【0227】
〔偏光板用保護フィルム〕
本発明の反射防止フィルムを液晶表示装置に用いる場合は、偏光板を作成するにあたり、反射防止フィルムを偏光膜の表面保護フィルム(偏光板用保護フィルム)として用いるために、低屈折率層を有する側とは反対側の透明支持体の表面、すなわち偏光膜と貼り合わせる側の表面を親水化することで、ポリビニルアルコールを主成分とする偏光膜との接着性を改良することが好ましい。
【0228】
反射防止フィルムにおけるフィルム基材としては、トリアセチルセルロースフィルムを用いることが特に好ましい。本発明における偏光板用保護フィルムを作製する手法としては、(1)予め鹸化処理した透明支持体の一方の面に上記の各層(例、ハードコート層、中屈折率層、表層2層など)を塗設する手法、(2)透明支持体の一方の面に上記の各層を塗設した後、偏光膜と貼り合わせる側を鹸化処理する手法、の2つが考えられるが、(1)はハードコート層を塗設するべき面まで親水化されるため、支持体とハードコート層との密着性の確保が困難となる場合があり、(2)の手法が好ましい。
【0229】
〔鹸化処理〕
(1)浸漬法
アルカリ液の中に上記のような反射防止フィルムを適切な条件で浸漬して、フィルム全表面のアルカリと反応性を有する全ての面を鹸化処理する手法であり、特別な設備を必要としないため、コストの観点で好ましい。アルカリ液は、水酸化ナトリウム水溶液であることが好ましい。好ましい濃度は0.5〜3mol/lであり、特に好ましくは1〜2mol/lである。好ましいアルカリ液の液温は30〜70℃、特に好ましくは40〜60℃ である。
上記の鹸化条件の組合せは比較的穏和な条件同士の組合せであることが好ましいが、反射防止フィルムの素材や構成、目標とする接触角によって設定することができる。
アルカリ液に浸漬した後は、フィルムの中にアルカリ成分が残留しないように、水で十分に水洗したり、希薄な酸に浸漬してアルカリ成分を中和することが好ましい。
【0230】
鹸化処理することにより、透明支持体の反射防止層を有する表面と反対の表面が親水化される。偏光板用保護フィルムは、透明支持体の親水化された表面を偏光膜と接着させて使用する。
親水化された表面は、ポリビニルアルコールを主成分とする接着層との接着性を改良するのに有効である。
鹸化処理は、低屈折率層を有する側とは反対側の透明支持体の表面の水に対する接触角が低いほど、偏光膜との接着性の観点では好ましいが、一方、浸漬法では同時に低屈折率層を有する表面までアルカリによるダメージを受ける為、必要最小限の反応条件とすることが重要となる。アルカリによる反射防止層の受けるダメージの指標として、反射防止構造層を有する側とは反対側の透明支持体の表面、すなわち反射防止フィルムの貼り合わせ面の、水に対する接触角を用いた場合、特に支持体がトリアセチルセルロースであれば、20度〜50度、好ましくは30度〜50度、より好ましくは40度〜50度を上記接触角とするのが好ましい。50度以下であると偏光膜との接着性に優れるため好ましい。一方、20度以上であると反射防止層の受けるダメージが小さく物理強度や耐光性を損なわないため好ましい。
【0231】
(2)アルカリ液塗布法
上述の浸漬法における反射防止膜へのダメージを回避する手段として、適切な条件でアルカリ液を反射防止膜を有する表面と反対側の表面のみに塗布、加熱、水洗、乾燥するアルカリ液塗布法が好ましく用いられる。なお、この場合の塗布とは、鹸化を行う面に対してのみアルカリ液などを接触させることを意味し、この時、反射防止フィルムの貼り合わせ面の水に対する接触角が、10〜50度となるように鹸化処理を行なうことが好ましい。また、塗布以外にも噴霧、液を含んだベルト等に接触させる、などによって行われることも含む。これらの方法を採ることにより、別途、アルカリ液を塗布する設備、工程が必要となるため、コストの観点では(1)の浸漬法に劣る。一方で、鹸化処理を施す面にのみアルカリ液が接触するため、反対側の面にはアルカリ液に弱い素材を用いた層を有することができる。例えば、蒸着膜やゾル−ゲル膜では、アルカリ液によって、腐食、溶解、剥離など様々な影響が起こるため、浸漬法では設けることが望ましくないが、この塗布法では液と接触しないため問題なく使用することが可能である。
【0232】
上記(1)、(2)のどちらの鹸化方法においても、例えばロール状の支持体から巻き出して各層を形成後に行うことができるため、前述の製造工程の後に加えて一連の操作で行っても良い。さらに、同様に巻き出した支持体からなる偏光板との張り合わせ工程もあわせて連続で行うことにより、枚葉で同様の操作をするよりもより効率良く偏光板を作成することができる。
【0233】
〔偏光板〕
本発明の偏光板は、偏光膜と該偏光膜の表側および裏側の少なくとも一方を保護する保護フィルムとして前記反射防止フィルムを有する。本発明の偏光板は好ましくは前記偏光膜の両面を保護する2枚の保護フィルムとを有する積層板であって、該保護フィルムの少なくとも一方が前記反射防止フィルムである態様である。
偏光板は、偏光膜の保護フィルム(偏光板用保護フィルム)の少なくとも一方に、反射防止フィルムを有する。反射防止フィルムの透明支持体がポリビニルアルコールからなる接着剤層を介して偏光膜に接着しており、もう一方の偏光膜の保護フィルムが接着剤層を介して偏光膜の反射防止フィルムが接着している主面と反対側の主面と接着している。もう一方の保護フィルムの偏光膜と接着している主面と反対側の主面には粘着剤層を有している。
本発明の反射防止フィルムを偏光板用保護フィルムとして用いることにより、物理強度、優れた反射防止機能を有する偏光板が作製でき、大幅なコスト削減が可能となる。
また、本発明の反射防止フィルムを偏光板用保護フィルムの一方に、後述する光学異方性のある光学補償フィルムを偏光膜の保護フィルムのもう一方に用いた偏光板を作製することにより、さらに、液晶表示装置の明室でのコントラストを改良し、上下左右および斜め方向の視野角を非常に広げることができる偏光板を作製できる。
【0234】
[画像表示装置]
本発明の反射防止フィルムを有する画像表示装置としては、液晶表示装置(LCD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(OLED)や陰極管表示装置(CRT)、電界放出ディスプレイ(FED)、表面電界ディスプレイ(SED)等が挙げられる。中でも、本発明の反射防止フィルムは、液晶パネル画面の表面フィルムとして使用することが好ましい。本発明の反射防止フィルムを有する偏光板を有する画像表示装置としては、液晶表示装置(LCD)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(OLED)のような画像表示装置が挙げられる。本発明の画像表示装置においては、本発明の反射防止フィルムを有する偏光板を、液晶表示装置の液晶セルのガラスに直接または他の層を介して接着して用いる。
【0235】
本発明に係る反射防止フィルムを用いた偏光板は、ツイステットネマチック(TN)、スーパーツイステットネマチック(STN)、バーティカルアライメント(VA)、インプレインスイッチング(IPS)、オプティカリーコンペンセイテットベンドセル(OCB)等のモードの透過型、反射型、または半透過型の液晶表示装置に好ましく用いることができる。
また、透過型または半透過型の液晶表示装置に用いる場合には、市販の輝度向上フィルム(偏光選択層を有する偏光分離フィルム、例えば住友3M(株)製のD−BEFなど)と併せて用いることにより、さらに視認性の高い表示装置を得ることができる。
また、λ/4板と組み合わせることで、反射型液晶用の偏光板や、OLED用表面保護板として表面および内部からの反射光を低減するのに用いることができる。
【実施例】
【0236】
以下本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、特別の断りの無い限りは、「部」及び「%」は質量基準の値である。
【0237】
<実施例1>
(下塗り層付き基材の作成)
[下塗り層用塗布液(Sub−1)の調製]
各成分を下記表4に示す組成で混合し、MEK(メチルエチルケトン)/MIBK(メチルイソブチルケトン)/シクロヘキサノン=45/45/10(質量比)の溶剤で固形分濃度が40質量%になるように調整し、孔径30μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して下塗り層用塗布液(Sub−1)を調製した。
【0238】
【表4】

【0239】
上記で使用した化合物を以下に示す。
・DPCA−20:部分カプロラクトン変性の多官能アクリレート[日本化薬(株)製]
・シリカゾル:MIBK−ST、MIBK溶剤使用の固形分濃度30%分散液、平均粒子サイズ約15nmのシリカ微粒子、屈折率1.45[日産化学工業(株)製]
・イルガキュア184:重合開始剤[チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製];
【0240】
[下塗り層用塗布液(Sub−2)の調製]
各成分を下記表5に示す組成で混合し、MEK(メチルエチルケトン)/MIBK(メチルイソブチルケトン)=50/50(質量比)の溶剤で固形分濃度が2.5質量%になるように調整し、下塗り層用塗布液(Sub−2)を調製した。
【0241】
【表5】

【0242】
上記で使用した化合物を以下に示す。
・DPHA:ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(日本化薬(株)製)
・イルガキュア127:重合開始剤[チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製];
・ジルコニア分散液;Z−1;下記記載の表面修飾処理ジルコニア分散液
【0243】
[下塗り層の形成]
膜厚80μm、幅1340mmのトリアセチルセルロースフィルム TAC−TD80U(富士フイルム(株)製)上に、下塗り層用塗布液(Sub−1)を、ダイコーターで、搬送速度30m/分の条件で塗布し、60℃で150秒乾燥の後、窒素パージ(酸素濃度0.5%以下)しながら、160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度400mW/cm、照射量150mJ/cmの紫外線を照射して塗布層を硬化させ、硬化後の膜厚が6μmになるように下塗り層−1を形成した。
この下塗り層−1の上に、下塗り層用塗布液(Sub−2)を、ダイコーターで、搬送速度30m/分の条件で塗布し、60℃で60秒乾燥の後、窒素パージ(酸素濃度0.5%以下)しながら、160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度160mW/cm、照射量60mJ/cmの紫外線を照射して塗布層を硬化させ、硬化後の膜厚が58nm、硬化後の屈折率が1.63になるように下塗り層−2を形成した。この際に、狙いの膜厚にするために塗設量を5%刻みでプラスマイナス20%の範囲で調節した。
このようにして得られた下塗り層付きトリアセチルセルロースフィルム(TAC−1)を以降の塗布組成物の評価に用いる基材とした。
【0244】
[中空シリカ粒子分散液 S−1の調製]
中空シリカ微粒子ゾルA(イソプロピルアルコールシリカゾル、平均粒子径50nm、シリカ濃度20%、シリカ粒子屈折率1.25)500質量部に、γ−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(本文定義の分子量192)10質量部およびジイソプロポキシアルミニウムエチルアセテート1.51質量部、メチルエチルケトン500質量部加えて混合した後に、イオン交換水3質量部を加えた。この混合液を60℃で8時間反応させた後に室温まで冷却し、アセチルアセトン1.8質量部を添加して分散液を得た。その後、シリカの含率がほぼ一定になるようにシクロヘキサノンを添加しながら、圧力30Torrで減圧蒸留による溶媒置換を行い、最後に濃度調整により固形分濃度21.7%(シリカ濃度20%)の重合性官能基を有するシランカップリング剤で表面修飾した中空シリカ粒子分散液S−1を得た。
【0245】
[中空シリカ粒子分散液 S−2の調製]
中空シリカ微粒子ゾルA(イソプロピルアルコールシリカゾル、平均粒子径50nm、シリカ濃度20%、シリカ粒子屈折率1.25)に、シリカの含率がほぼ一定になるようにシクロヘキサノンを添加しながら、圧力30Torrで減圧蒸留による溶媒置換を行い、固形分濃度21.7%(シリカ濃度20%)の中空シリカ粒子分散液S−2を得た。
【0246】
[中空シリカ粒子分散液 S−3の調製]
中空シリカ微粒子ゾルA(イソプロピルアルコールシリカゾル、平均粒子径50nm、シリカ濃度20%、シリカ粒子屈折率1.25)500質量部に、トリメチルメトキシシラン(本文定義の分子量90)4.4質量部およびジイソプロポキシアルミニウムエチルアセテート1.51質量部、メチルエチルケトン500質量部加えて混合した後に、イオン交換水3質量部を加えた。この混合液を60℃で8時間反応させた後に室温まで冷却し、アセチルアセトン1.8質量部を添加して分散液を得た。その後、シリカの含率がほぼ一定になるようにシクロヘキサノンを添加しながら、圧力30Torrで減圧蒸留による溶媒置換を行い、最後に濃度調整により固形分濃度21.7%のトリメチルシリル基で表面修飾した中空シリカ粒子分散液S−3を得た。
【0247】
[中空シリカ粒子分散液 S−4の調製]
中空シリカ微粒子ゾルA(イソプロピルアルコールシリカゾル、平均粒子径50nm、シリカ濃度20%、シリカ粒子屈折率1.25)500質量部に、特開2007−238897号公報のシランカップリング剤(例示化合物(A−4)及び(A−5)を含む混合物(Ab−1)(本文定義の分子量660)28質量部およびジイソプロポキシアルミニウムエチルアセテート1.51質量部、メチルエチルケトン500質量部加えて混合した後に、イオン交換水3質量部を加えた。この混合液を60℃で8時間反応させた後に室温まで冷却し、アセチルアセトン1.8質量部を添加して分散液を得た。その後、シリカの含率がほぼ一定になるようにシクロヘキサノンを添加しながら、圧力30Torrで減圧蒸留による溶媒置換を行い、最後に濃度調整により固形分濃度21.7%の表面修飾した中空シリカ粒子分散液S−4を得た。
【0248】
[酸化ジルコニウム粒子分散液 Z−1の調製]
ジルコニア粒子粉末20質量部に、分散媒としてメチルイソブチルケトンを70質量部、表面修飾剤としてアクリル基を含有するシランカップリング剤であるメタクリロキシプロピルトリメトキシシラン10質量部を加えて混合し、ジルコニア粒子の表面を表面修飾剤により修飾した。
その後分散処理を行い、固形分30質量%のジルコニア透明分散液(Z−1)を調製した。
【0249】
[酸化ジルコニウム粒子分散液 Z−2の調製]
ジルコニア粒子粉末20質量部に、分散媒としてメチルエチルケトンを70質量部、表面修飾剤としてアルコキシシラン化合物のメチルトリメトキシシラン(b.p.102℃)を10質量部加えて混合し、ジルコニア粒子の表面を表面修飾剤により修飾した。その後分散処理を行い、固形分30質量%のジルコニア透明分散液(Z−2)を作製した。
【0250】
[酸化ジルコニウム粒子分散液 Z−3の調製]
酸化ジルコニウムナノ粒子粉体(商品名:RC−100、第一稀元素化学工業(株)製、一次粒径10nm)27g、リン酸エステル系分散剤(商品名:ディスパーBYK106、ビックケミー社製)1.35g、トルエン270gを混合し、攪拌しながら超音波を10分照射して粗分散した。
得られた混合液を、遠心分離によりメディアを分離する機構を備えた湿式撹拌粉砕機である寿工業(株)製ウルトラアペックスミルUAM−015を用いて分散処理を行い、固形分30質量%のジルコニア透明分散液(Z−3)を作製した。
【0251】
[酸化ジルコニウム粒子分散液 Z−4の調製]
ジルコニア粒子粉末20質量部分散媒として水を70質量部を加えて混合し、分散処理を行い、固形分30質量%のジルコニア透明分散液(Z−4)を作製した。
【0252】
[1液2層用塗布組成物の作製]
(A)成分としてIPF−1を9.2質量部をMEK溶剤で固形分30質量%とした。(B)成分のS−1を12.0質量部(固形分量として)と該(A)成分とを混合し、MEK/MiBKの80/20(質量比)の溶剤で希釈し、固形分濃度が2.4質量%溶液とし、25℃で24時間放置した。その後に(C)成分であるDPHAを1.3質量部と(E)成分であるF−1を1.8質量部と(F)成分であるZ−1を38.7質量部添加し、光重合開始剤としてイルガキュア127を0.2質量部混合し、同じ溶媒組成で固形分濃度が6.7質量%になるように調節し、本発明の塗布組成物(Comp−1)とした。
【0253】
(Comp−1)と同様にして各成分を下記表6のように混合し、固形分6.7質量%の塗布組成物を作製した。
塗布組成物において、[(A)成分+(B)成分+(E)成分]/[(C)成分+(F)成分]の質量比は35/65であった。
なお、下記表において各成分の添加量は質量部である。また、(C)成分及び(D)成分について2種以上使用されているものはその質量比を示した。
【0254】
【表6】

【0255】
上記で使用した化合物を以下に示す。
DPHA:ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(日本化薬(株)製)
TMPTA:トリメチロールプロパントリアクリレート(ダイセル・サイテック(株))
イルガキュア−127(Irg.127):光重合開始剤[チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)
製]
比較用A−1:含フッ素炭化水素構造を含まないポリアルキレンオキシド基を有する化合物((IPF−2)において、HFPモノマーに由来する構造単位をEVEモノマーに由来する構造単位に置き換えたポリマー、質量平均分子量2.5万)
MF3−3:CH=CH−COOCH(CFH (分子量386g/mol)
FP−1:CH=CH−COOCH(CFCF−O)CHOCOCH=CH (分子量402g/mol)
【0256】
【化35】

【0257】
[積層体の形成]
前述の基材TAC−1の下塗り層の上に、前記塗布組成物Comp−1をダイコーターで、搬送速度30m/分の条件で塗布し、60℃で150秒乾燥の後、窒素パージ(酸素濃度0.1%以下)しながら、160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度400mW/cm、照射量400mJ/cmの紫外線を照射して塗布層を硬化させ、硬化後の低屈折率層の膜厚が92nm、高屈折率層の膜厚が112nmになるように積層体101を形成した。前記表のその他の塗布組成物(Comp−2〜Comp−26)についても同様にして積層体102〜126を作成した。この際に、後述の反射率の測定で反射率の2つの極小反射率の差が0.1%の範囲になるように塗設量を5%刻みでプラスマイナス20%の範囲で調節した。
【0258】
また、比較用の積層体として、基材TAC−1の上に高屈折率層用塗布液(Hn−1)を、ダイコーターで、搬送速度30m/分の条件で塗布し、60℃で60秒乾燥の後、窒素パージ(酸素濃度0.1%以下)しながら、160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度160mW/cm、照射量60mJ/cmの紫外線を照射して塗布層を硬化させ、硬化後の膜厚が112nmになるように高屈折率層を形成した。その上に低屈折率層用塗布液Ln−1をダイコーターで、搬送速度30m/分の条件で塗布し、60℃で60秒乾燥の後、窒素パージ(酸素濃度0.1%以下)しながら、160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度400mW/cm、照射量400mJ/cmの紫外線を照射して塗布層を硬化させ、硬化後の膜厚が93nmになるように比較用積層体126を形成した。
【0259】
[積層体の評価]
得られた積層体(反射防止フィルム)について、以下の項目の評価及び測定を行った。
【0260】
[粒子の偏在性]
硬化後の反射防止フィルム試料を厚み方向に垂直に切削し、断面を透過型電子顕微鏡で観察して、断面画像を幅方向5μmに渡り観察し、無機微粒子の存在状態を以下の5段階評価した。
◎ :低屈折率無機微粒子含有層が上部に偏在し、かつ、高屈折率無機微粒子含有層が下方に偏在し、その厚みムラが5%未満である。
○ :低屈折率無機微粒子含有層が上部に偏在し、かつ、高屈折率無機微粒子含有層が下方に偏在し、その厚みムラが5%以上10%未満である。
△ :低屈折率無機微粒子含有層が上部に偏在し、かつ、高屈折率無機微粒子含有層が下方に偏在し、その厚みムラが10%以上30%未満であり、一部の無機粒子は下層にも存在している。
× :無機微粒子含有層の厚みムラが30%以上50%未満であるか、低屈折率無機微粒子の偏在層と下層の高屈折率無機微粒子層界面が不明瞭である。
××:無機微粒子含有層の厚みムラが50%以上であるか、無機微粒子の偏在層が実質形成されていない。
なお、厚みムラの定義を以下に示す。
幅方向5μmに渡り観察した中から、10点の低屈折率層の膜厚と高屈折率層の膜厚を測定し、低屈折率層の膜厚と2層の合計膜厚との膜厚比を算出した。ある1点での厚みムラ=(ある1点での低屈折率層の膜厚と2層の合計膜厚との膜厚比)÷(低屈折率層の膜厚と2層の合計膜厚との膜厚比の平均値)と定義し、更にこの10点測定の平均値を厚みムラと定義した。
【0261】
[塗布液の凝集性]
塗布液の凝集性は塗布液を調液後、1時間経過したところで、目視にて沈殿物があるかないかを判断した。
○:塗布液の凝集・沈殿物なし。
×:塗布液の凝集・沈殿物が発生した。
【0262】
[面状故障]
反射防止フィルム試料の裏面(支持体側)に黒色PETフィルムを貼り付け、裏面反射を抑えた面状評価用試料を作成した。試料の表面側に3波長蛍光灯を表面が500ルックスになるように照射し、目視で5mだけ検査し、面状故障の数を5で割り1mあたりの無機粒子起因の面状故障の発生頻度について以下の基準で評価した。○△以上のレベルが好ましい。
面状故障かどうかの判断は故障部分の断面を切削し、光学顕微鏡観察を使って、1液2層塗布層に5μm以上の凝集物、又は異物等があった場合に故障があったと判断した。
◎ :0以上0.1個未満
○ :0.1以上0.2個未満
○△:0.2以上0.3個未満
△ :0.3以上0.4個未満
× :0.4以上1.0個未満
××:1.0個以上
【0263】
[積分反射率]
反射防止フィルム試料の裏面(支持体側)をサンドペーパーで粗面化した後に黒色インクで処理し、裏面反射をなくした状態で、表面側を、分光光度計(日本分光(株)製)を用いて、380〜780nmの波長領域において、入射角5°における積分分光反射率を測定した。結果には450〜650nmの積分反射率の算術平均値を用いた。
反射防止フィルム試料の積分反射率は0.79%以下であることが好ましい。
【0264】
[スチールウール耐擦傷性]
ラビングテスターを用いて、以下の条件でこすりテストを行った。
・評価環境条件:25℃、60%RH
・こすり材:試料と接触するテスターのこすり先端部(1cm×1cm)にスチールウール{(株)日本スチールウール製、No.0000}を巻いて、動かないようバンド固定した。その上で下記条件の往復こすり運動を与えた。
・移動距離(片道):13cm、こすり速度:13cm/秒、
・荷重:500g/cm、先端部接触面積:1cm×1cm、
・こすり回数:10往復。
こすり終えた試料の裏側に油性黒インキを塗り、反射光で目視観察して、こすり部分の傷を、以下の基準で評価した。
○:非常に注意深く見ても、全く傷が見えない。
○△:非常に注意深く見ると僅かに弱い傷が見える。
△:弱い傷が見える。
△×:中程度の傷が見える。
×:一目見ただけで分かる傷がある。
耐擦傷性は○△レベル以上が実用上の価値が高い。
【0265】
[密着性]
反射防止フィルム試料を温度25℃、60RH%の条件で2時間調湿した。各試料の低屈折率層を有する側の表面に、カッターナイフで碁盤目状に縦11本、横11本の切り込みを入れて、合計100個の1cm×1cmの正方形の升目を刻み、その面に日東電工(株)製のポリエステル粘着テープ(No.31B)を貼りつけた。30分経時したあとに、垂直方向にテープを素早く引き剥がし、剥がれた升目の数を数えて、下記4段階の基準で評価した。同じ密着評価を3回行って平均をとった。
◎:100升において剥がれが全く認められなかった。
○:100升において1〜2升の剥がれが認められた。
△:100升において3〜10升の剥がれが認められた(許容範囲内)。
×:100升において11升以上の剥がれが認められた。
【0266】
[膜厚の算出方法]
硬化後の反射防止フィルム試料を厚み方向に垂直に切削し、断面を透過型電子顕微鏡で観察して、(B)成分である無機微粒子が本発明の塗布組成物から形成される塗膜全層の平均密度の1.8倍以上の濃度で存在している領域を低屈折率層の膜厚として算出した。また、(F)成分である高屈折率無機微粒子が本発明の塗布組成物から形成される塗膜全層の平均密度の1.8倍以上の濃度で存在している領域を高屈折率層の膜厚として算出した。ただし、低屈折率層、高屈折率層がない場合は硬化膜の膜厚を低屈折率層の膜厚として表記している。
低屈折率層と高屈折率層の屈折率は光学フィッティング(最小二乗法)により算出した。
【0267】
[混合自由エネルギーの算出方法]
(A)成分と(C)成分の混合自由エネルギー(ΔG=ΔH−T・ΔS)は、混合自由エネルギー(ΔG=ΔH−T・ΔS、ΔH;エンタルピー、ΔS=エントロピー、T;絶対温度)をフローリー・ハギンスの格子理論で求めた。(A)成分と(C)成分の重合度、体積分率(φ:文献では組成分率とも呼ばれる)、及び(A)成分と(C)成分の相互作用パラメーター(χ)を使用し、算出した。
【0268】
以上の結果を表7に示す。
【0269】
【表7】

【0270】
上記の表7から分かるように、試料101〜110では、1回の塗布で低屈折率無機微粒子(中空シリカ粒子)を含有している低屈折率層が空気界面側に偏在し、かつ、高屈折率無機微粒子(ジルコニア粒子)を含有している高屈折率層が基材界面側に偏在し、組成の異なる2層が同時に形成できているため、反射防止フィルムの生産効率が高く、逐次塗布試料127と比較すると、粒子の偏在性が○以上で、積分反射率0.79%以下及び耐擦傷性○△以上であり、更に密着性は○以上、面状故障は○以上の優れた結果が得られた。また、試料101〜110では、(A)成分にポリアルキレンオキシド基または塩基性官能基含有フッ素化合物を使用しているため、それらの官能基を含有していないフッ素化合物(P−1)を(A)成分に使用している試料114と比較すると、粒子の偏在性が○以上で、積分反射率0.79%以下及び耐擦傷性○△以上であり、更に密着性は○以上、面状故障は○以上の優れた結果が得られた。また、試料101〜110では本発明の(A)成分に含フッ素炭化水素構造を有する化合物を用いることで、(A)成分の表面エネルギーが低くでき、粒子の偏在性が○以上で、積分反射率0.79%以下及び耐擦傷性○△以上であり、更に密着性は○以上、面状故障は○以上の優れた結果が得られた。(試料115との比較。試料115は含フッ素炭化水素構造を有さない化合物A−1を用いているため、屈折率界面がなく、均一層になっており、反射率が実質低下していない)。また、試料101〜110では(E)成分に多官能フッ素モノマーを使用しているため、試料111の比較例の多官能フッ素モノマーがない系や試料112の比較例の単官能フッ素モノマーと比較して、面状故障が○以上の優れた結果が得られた。
【0271】
試料116では(F)成分に表面修飾処理した高屈折率無機微粒子を用いていることで、塗布液の凝集性を制御し、かつ、2粒子の偏在性をそれぞれ制御することができ、粒子の偏在性が○以上で、積分反射率0.61%以下及び耐擦傷性○以上であり、更に密着性は○以上の優れた結果が得られた。比較例117は分散剤で分散させたジルコニア粒子を用いているため、塗布液中で、比較的極性の高い中空シリカと分散剤が相互作用し、塗布液の凝集性を制御することができない。また、比較例118も表面処理をしていないジルコニアを用いているため、塗布液の凝集性を制御することができない。
試料116、119、120の(A)成分との混合自由エネルギーがゼロ以上の(C)成分は、(A)成分由来の成分及び(B)成分との分離性が良化し、偏在性を○以上、反射率積分反射率0.62%以下及び耐擦傷性○△以上、更に密着性は◎以上の優れた結果が得られた。
試料116、122のMEK、MiBKに加え、PGME、または、酢酸メチルの溶剤を併用すると、(A)成分とのSP値の差が4.5程度の貧溶媒が相分離性を良化させ(PGME)、相分離してから無機微粒子の拡散移動が終了するまでの時間を沸点が100℃より高い溶剤で稼ぎ(MiBK)、(A)成分とともに無機微粒子(B)が相分離する濃度までは面状欠陥故障等を減少させるために沸点が100℃以下の溶剤で速乾させる(MEK)ことができ、また、MEKやMiBK、酢酸メチルといった低粘度溶剤を用いることで、偏在性を○以上、反射率積分反射率0.71%以下及び耐擦傷性○△以上、更に密着性は○以上の優れた結果が得られた(試料123との比較。2−ブタノールは粘度が4.2cP(20℃)であり、塗布・乾燥中に塗膜中の粘度が非常に高くなり、粒子の拡散しにくくなってしまうために、粒子の偏在性が悪化する)。
試料124、125で(B)成分が未修飾、もしくは(B)成分のシランカップリング剤の分子量が600以下であることで、有機溶媒中の分散性を良化させ、かつ、(B)成分と(A)成分の相互作用させることで、中空シリカの偏在性を○以上、積分反射率0.67%以下及び耐擦傷性○△以上、更に密着性は○以上の優れた結果が得られた(試料126との比較。試料126はシランカップリング剤の本願定義の分子量が600より大きい)。
【0272】
これらの実施例及び比較例の結果から、本発明の塗布組成物は無機微粒子を上部に偏在させることができるため、無機粒子含有層と無機粒子を含まない層とを1回の塗布工程で形成することができ、生産性が高いことが分かる。また、得られた積層体は低反射で、耐擦傷性、密着性に優れた反射防止フィルムである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)〜(F)成分を混合してなる塗布組成物を調製する工程、基材上に該塗布組成物を塗布し塗膜を形成する工程、該塗膜から溶剤を揮発させ乾燥させる工程、該塗膜を硬化し硬化層を形成する工程をこの順に有し、前記塗布組成物から屈折率の異なる多層構造を形成させる、反射防止フィルムの製造方法。
(A)含フッ素炭化水素構造、並びに、ポリアルキレンオキシド基及び塩基性官能基から選ばれる少なくとも1つの基を有する化合物に由来する構成単位を含むフッ素含有ポリマー
(B)表面修飾されていない低屈折率無機微粒子、又は分子量が600以下のシランカップリング剤で表面処理された低屈折率無機微粒子
(C)分子内にフッ素原子を含有しない硬化性バインダー
(D)溶剤
(E)多官能フッ素含有硬化性化合物
(F)下記一般式(F−1)で表される表面修飾剤で処理された高屈折率無機微粒子
【化1】

一般式(F−1)中、Rは炭素数1以上の有機基を表し、Mは珪素、ジルコニウム、チタニウムから選ばれる金属原子を表し、Xはアルコキシ基又はハロゲン原子を表す。mは1から3の整数を表し、nは1から3の整数を表す。R及びXは複数存在する場合、それぞれ同じでも異なっていてもよい。
但し、該塗布組成物において、[(A)成分+(B)成分+(E)成分]/[(C)成分+(F)成分]の質量比は20/80〜60/40である。
【請求項2】
前記(E)成分の分子量が450〜2000である請求項1に記載の反射防止フィルムの製造方法。
【請求項3】
前記(B)成分がシランカップリング剤で表面処理された低屈折率無機微粒子であって、該シランカップリング剤の分子量が90〜600である、請求項1又は2に記載の反射防止フィルムの製造方法。
【請求項4】
前記(A)成分が、含フッ素炭化水素構造を有する構成単位を含有する共重合体である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の反射防止フィルムの製造方法。
【請求項5】
前記(A)成分が、分子内に更にポリシロキサン構造を有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の反射防止フィルムの製造方法。
【請求項6】
前記(A)成分が、分子内に重合性の官能基を含有する請求項1〜5のいずれか1項に記載の反射防止フィルムの製造方法。
【請求項7】
前記(A)成分が下記一般式(1)で表されるフッ素含有ポリマーである請求項1〜6のいずれか1項に記載の反射防止フィルムの製造方法。
一般式(1):
(MF1)a−(MF2)b−(MF3)c−(MA)d−(MB)e−(MC)f−(MD)g
一般式(1)中、a〜fは、それぞれ、フッ素含有ポリマーを構成する全構成単位に対する各構成単位のモル分率を表し、gはフッ素含有ポリマー全体に対する構成単位(MD)の質量比率を表し、0%≦a≦70%、0%≦b≦70%、0%≦c≦80%、30%≦a+b+c≦90%、0%≦d≦50%、0%≦e≦50%、0.1%≦f≦50%、0質量%≦g≦15質量%の関係を満たす。
(MF1):CF=CF−Rfで表される単量体に由来する構成単位を示す。Rfは炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基を表す。
(MF2):CF=CF−ORf12で表される単量体に由来する構成単位を示す。Rf12は炭素数1〜30の含フッ素アルキル基を表す。
(MF3):CH=CR−L−Rf13で表される単量体に由来する構成単位を示す。Rは水素原子、ハロゲン原子、又はメチル基を表し、Lは2価の連結基を表し、Rf13は炭素数1〜30の含フッ素アルキル基を表す。
(MA):架橋性基を少なくとも1つ有する構成単位を表す。
(MB):非架橋性基を少なくとも1つ有する構成単位を表す。
(MC):ポリアルキレンオキシド基及び塩基性官能基から選ばれる少なくとも1つの基を有する化合物に由来する構成単位を表す。
(MD):ポリシロキサン構造を少なくとも1つ有する構成単位を表す。
(MF1)、(MF2)、(MF3)、(MA)、(MB)、(MC)、及び(MD)は複数存在する場合、それぞれ同じでも異なっていてもよい。
【請求項8】
前記低屈折率無機微粒子が、平均粒径1〜150nm、かつ屈折率1.46以下の金属酸化物微粒子である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の反射防止フィルムの製造方法。
【請求項9】
前記低屈折率無機微粒子が、表面が少なくともケイ素を構成成分とする金属酸化物粒子である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の反射防止フィルムの製造方法。
【請求項10】
前記(C)成分として、分子内に複数の不飽和二重結合を有する化合物を含有する、請求項1〜9のいずれか1項に記載の反射防止フィルムの製造方法。
【請求項11】
前記(C)成分と前記(A)成分との混合自由エネルギー(ΔG=ΔH−T・ΔS)がゼロより大きい、請求項1〜10のいずれか1項に記載の反射防止フィルムの製造方法。
【請求項12】
前記(D)成分が、下記(D−1)及び(D−2)を含む混合溶剤である、請求項1〜11のいずれか1項に記載の反射防止フィルムの製造方法。
(D−1):沸点が100℃を超える揮発性溶剤
(D−2):沸点が100℃以下の揮発性溶剤
【請求項13】
前記溶剤(D−1)及び(D−2)の粘度が4.0cP以下である請求項12に記載の反射防止フィルムの製造方法。
【請求項14】
前記高屈折率無機微粒子が、ジルコニア、チタン、アルミニウム、鉄、銅、亜鉛、イットリウム、ニオブ、モリブデン、インジウム、スズ、タンタル、タングステン、鉛、ビスマス、セリウム、アンチモン、及びゲルマニウムからなる群より選択される少なくとも1つの元素の酸化物微粒子である、請求項1〜13のいずれか1項に記載の反射防止フィルムの製造方法。
【請求項15】
前記高屈折率無機微粒子における表面修飾剤が、少なくともビニル基、スチリル基、アクリル基、メタクリル基、アクリロキシ基、エポキシ基、炭素−炭素二重結合、フェニル基、メチルフェニル基、ケイ素−水素結合の群から選択された少なくとも1つの基を有する化合物である、請求項1〜14のいずれか1項に記載の反射防止フィルムの製造方法。
【請求項16】
前記(A)成分が、含フッ素炭化水素構造を有する構成単位を含有する重合体であって、塩基性官能基を含む構成単位がグラフトされている、請求項1〜15のいずれか1項に記載の反射防止フィルムの製造方法。
【請求項17】
前記一般式(1)における(MC)が、塩基性官能基を含有する不飽和基含有プレポリマーを反応させて得られた構成単位である、請求項7〜16のいずれか1項に記載の反射防止フィルムの製造方法。
【請求項18】
前記一般式(1)における(MC)が、塩基性官能基を含有する化合物を多官能エポキシ化合物を介して結合した成分を反応させて得られた構成単位である、請求項7〜16のいずれか1項に記載の反射防止フィルムの製造方法。
【請求項19】
前記一般式(1)における(MC)が、下記一般式(2)のポリアルキレンオキシド基を少なくとも1つ有する単量体に由来する構成単位である、請求項7〜16のいずれか1項に記載の反射防止フィルムの製造方法。
【化2】

(Rは水素原子、ハロゲン原子、又はメチル基を表し、Lは2価の連結基を表し、Rcは水素原子、又は炭素数1〜10のアルキル基を表し、mは正の整数で、2≦m≦50、nは正の整数であって、1≦n≦5を表す。なお、mが2以上のとき、複数の−C2n−O−はそれぞれ異なる繰り返し単位であってもよい。)
【請求項20】
前記一般式(2)におけるLが、炭素数が1〜9の2価の連結基である、請求項19に記載の反射防止フィルムの製造方法。
【請求項21】
請求項1〜20のいずれか1項に記載の製造方法により得られた反射防止フィルム。
【請求項22】
前記(B)成分が空気界面側に偏在した低屈折率層、及び前記(F)成分が基材界面側に偏在した高屈折率層を有し、前記低屈折率層の屈折率が1.25〜1.48であり、前記高屈折率層の屈折率が1.55〜1.90である、請求項21に記載の反射防止フィルム。
【請求項23】
下記(A)〜(F)成分を混合してなる塗布組成物。
(A)含フッ素炭化水素構造、並びに、ポリアルキレンオキシド基及び塩基性官能基から選ばれる少なくとも1つの基を有する化合物に由来する構成単位を含むフッ素含有ポリマー
(B)表面修飾されていない低屈折率無機微粒子、又は分子量が600以下のシランカップリング剤で表面処理された低屈折率無機微粒子
(C)分子内にフッ素原子を含有しない硬化性バインダー
(D)溶剤
(E)多官能フッ素含有硬化性化合物
(F)下記一般式(F−1)で表される表面修飾剤で処理された高屈折率無機微粒子
【化3】

一般式(F−1)中、Rは炭素数1以上の有機基を表し、Mは珪素、ジルコニウム、チタニウムから選ばれる金属原子を表し、Xはアルコキシ基又はハロゲン原子を表す。mは1から3の整数を表し、nは1から3の整数を表す。R及びXは複数存在する場合、それぞれ同じでも異なっていてもよい。
但し、該塗布組成物において、[(A)成分+(B)成分+(E)成分]/[(C)成分+(F)成分]の質量比は20/80〜60/40である。

【公開番号】特開2013−76786(P2013−76786A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−215655(P2011−215655)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】