説明

反射防止フィルム

【課題】 反射防止フィルムの表面硬度が高く、また製造工程数を減少させることでコストダウンを可能にした反射防止フィルムを提供することを目的とする。
【解決手段】 フッ素系モノマーを主原料とする低屈折率微粒子を添加したハードコート樹脂を透明基材上に塗布し、硬化させる。該低屈折率微粒子は乳化重合法により合成されたものであり、平均一次粒子径が80〜500nmで、かつ乳化重合時にニ官能以上のアクリレートモノマーを1重量部以上使用する。該低屈折率微粒子の添加量が樹脂の固形分100重量部に対して1重量部以上30重量部未満配合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
近年、テレビやパーソナルコンピューターにおいては、従来のブラウン管に代わってPDP(プラズマディスプレイ)や液晶ディスプレイによる大画面・薄型化が進んでいる。これらのディスプレイは高画質であるため、その画面部への光や物体の映りこみが画像の見栄えに与える影響が大きく、反射防止性能を付与することが必要となっている。
【0002】
また、液晶や有機EL(エレクトロルミネッセンス)等の表示方式が用いられる携帯電話、電子ペーパー等のモバイル機器の表示材においても、屋外で使用されることから光や物体の映りこみの画像に対する影響が大きく、反射防止性能を付与することが必要である。
【0003】
反射防止の一つの方法として、表示画面の表面に反射防止フィルムを装着することが行われてきた。この反射防止フィルムは、透明基材の片面にアクリル系樹脂等の硬度が高く、かつ屈折率の高いハードコート層と、シリコーン系樹脂又はフッ素系樹脂等の屈折率が低い低屈折率層とを順次積層したものである。
【特許文献1】特開2003−311911号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような従来のハードコート層と低屈折率層とからなる反射防止フィルムにおいて、これらの密着性は優れているとは言えず、長期に亘って使用した場合、層間剥離などの問題が発生し、結果的に反射防止性能が低下する場合がある。この問題を解決するために、特許文献1には、ハードコート層を紫外線照射によりハーフキュアした後に低屈折率層を塗布し、その後硬化させる方法が開示されている。この方法では、ハードコート層を2段階に分けて紫外線照射することで層間の密着性を上げているが、反射防止フィルムとして重要な性能の一つである最小反射率を引き上げてしまう問題があった。また、ハードコート層と反射防止層を2回に分けてコーティングしているため、製造時間が長く必要であり、コストダウンが困難であった。
【0005】
本発明は以上の点に鑑みなされたものであり、反射防止フィルムの表面硬度が高く、また製造工程数を減少させることでコストダウンを可能にした反射防止フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は、フッ素系(メタ)アクリレートを主原料とする低屈折率微粒子を添加したハードコート剤を透明基材上に塗布硬化してなることを特徴とする反射防止である。
【0007】
本発明に使用する透明基材層は、特に限定されるものではなく、全光線透過率90%以上で、厚み10μm〜5mmの公知の透明プラスチックフィルムの中から適宜選択して用いることができる。プラスチックフィルムとしては、塩化ビニルフィルム、アクリルフィルム、ポリカーボネートフィルムのほか、ポリプロピレンフィルム、低延伸性ポリエステルフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリスチレンフィルム、アクリロニトリルブタジエンスチレンフィルム、ナイロンフィルムなどを用いることができる。
【0008】
本発明の低屈折率微粒子は主原料として(メタ)アクリレートモノマーを重合微粒子である。フッ素系モノマーを使用する理由として、微粒子の屈折率を下げるだけでなく、樹脂との相溶性を低くし、透明基材上に塗布した時に微粒子が表層に浮きやすくなる特徴を有している。本発明の低屈折率微粒子はフッ素系モノマーを主原料とする微粒子である。フッ素系モノマーとしては2,2,2−トリフルオロエチルアクリレート、2,2,2、−トリフルオロエチルメタクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルアクリレート、1H、1H、5H−オクタフルオロペンチルアクリレート、1H、1H、5H−オクタフルオロペンチルメタクリレート、パーフロロオクチルエチルメタクリレートなどがある。これらは単独あるいは2種以上を混合して重合時に使用してもよい。
【0009】
プラスチックフィルムに塗布されたハードコート剤は、紫外線、電子線などの活性エネルギー線の照射により硬化させる。紫外線により硬化する場合には、組成物中に光重合開始剤、場合により光重合増感剤、光重合促進剤を含有する必要がある。紫外線照射装置としては、高圧水銀灯やメタルハライドランプ等既知の装置を使用でき、照射エネルギーは100〜2000mJ/cm2、さらに300〜700mJ/cm2がより好ましい。尚、照射する際、窒素ガス雰囲気下でおこなうと耐擦傷性がより向上することから好ましい。
【0010】
本発明のハードコート層及び反射防止層を形成する方法は、特に制限はなく、公知のスプレーコート、ロールコート、ダイコート、エアナイフコート、ブレードコート、スピンコート、リバースコート、グラビアコート、ワイヤーバーなどの塗工法またはグラビア印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷、インクジェット印刷などの印刷法により形成できる。層の総厚さは、1μm〜10μmが好ましい。
【0011】
請求項2の発明は、該低屈折率微粒子が乳化重合法により合成されたものであり、平均一次粒子径が80〜500nmで、かつ乳化重合時に2官能以上の(メタ)アクリレートモノマーを重合時に使用するモノマー100重量部に対して1重量部以上使用してなるものであることを特徴とする請求項1記載の反射防止フィルムである。
【0012】
低屈折率微粒子としては、乳化重合法により合成されたアクリル系樹脂などの有機微粒子が挙げられる。乳化重合法以外の方法では一次粒子径のバラツキが多く、反射防止層が均一に配向しないため、反射防止効果が画面内でばらついてしまう。また、単分散微粒子を合成し易い分散重合法では、架橋剤の添加量を増やすことができないために樹脂に溶解してしまう問題がある。そこで、平均一次粒子径の制御が容易で、かつ架橋剤を添加することができる乳化重合法が好ましい。
【0013】
乳化重合時に二官能以上のアクリルモノマーを1重量部以上添加しないと樹脂と混合した際に主に樹脂に含まれる溶剤に有機微粒子が溶解もしくは膨潤してしまい、フィルムの最表面に有機微粒子が浮かずに反射防止フィルムの性能が発現しない。
【0014】
有機微粒子の平均一次粒子径は80〜500nmのものが好適である。乳化重合法では平均一次粒子径が80nm未満および500nmを越えると有機微粒子を合成することは難しい。また、80nm未満では可視光領域において十分な反射防止性能を付与できないのに対し、500nmを越えるとヘイズが上昇し、視認性が低下する問題が発生する。有機微粒子の形状は、球状、数珠状が好ましく用いられるが、特にこれらに限定されない。尚、平均一次粒子径とは凝集を起こしていない単一の粒子の径であり、球状のものについてはその直径を、球状以外のものについては長軸径、短軸径の算術平均値を示し、電子顕微鏡により測定される値である
低屈折率微粒子の屈折率は1.40〜1.49のものが好適である。屈折率が1.40以下のものを合成することは困難であり、また、1.49以上のものは反射防止層として十分な反射防止効果が得られない。
【0015】
請求項3の発明は、該低屈折率微粒子の添加量が感光性樹脂の固形分100重量部に対して1重量部以上30重量部未満であることを特徴とする請求項1又は2記載の反射防止フィルムである。
【0016】
本発明に用いる低屈折率微粒子の添加量は、感光性樹脂の固形分100重量部に対して1重量部以上30重量部未満が適している。1重量部未満では反射防止性能がなく、また30重量部を超えると樹脂との混和性が悪くなり、ヘイズが上昇する問題が発生する。
【0017】
感光性樹脂としては、アクリル基やメタクリロイル基を有するものが好ましい。例えばエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、1.4−ブタンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、1.6−ヘキサンジオールジメタクレート、1.9−ノナンジオールジメタクリレート、1.10−デカンジオールジメタクリレート、グリセリンジメタクリレート、ジメチロールートリシクロデカンジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジシクロペンタニルジアクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジアクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジアクリレート、アリル化シクロヘキシルジアクリレート、イソシアヌレートジアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレートやエトキシ化トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジペンタエリスリトールトリアクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリアクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、また市販されているウレタンアクリレートやメラミンアクリレートなどが挙げられ、官能基数の多いアクリレートほど表面硬度が高くなり、好ましい。これらは単独あるいは2種以上を混合して使用してもよい。

光重合開始剤には、例えば、アセトフェノン、2、2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアセトフェノン、p−ジメチルアミノプロピオフェノン、ベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、などのカルボニル化合物、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、テトラメチルチウラムシ゛スルフィドなどの硫黄化合物などを用いることができる。
【0018】
本発明のハードコート剤には、必要に応じて、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、スチレン系樹脂、フェノール系樹脂、メラミン系樹脂、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化チタン、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、塩基性炭酸亜鉛、塩基性炭酸鉛、珪砂、クレー、タルク、シリカ化合物、二酸化チタン、三酸化アンチモン、ジルコニア等の充填剤の他、シラン系やチタネート系などのカップリング剤、殺菌剤、防腐剤、可塑剤、流動調整剤、増粘剤、pH調整剤、界面活性剤、レベリング調整剤、消泡剤、着色顔料、防錆顔料等の配合材料を添加してもよい。また、耐光性向上を目的に酸化防止剤や紫外線吸収剤を添加しても良い。その他配合材料として帯電防止剤、イオン性液体、導電性高分子、導電性微粒子等を添加し帯電防止機能を付与することができる。また、金属酸化物を屈折率調整剤としても利用することもできる。
【0019】
ハードコート剤の粘度は、塗布性、レベリング性ならびに塗布方法などから、1〜50000mPa・s/20℃の範囲で使用でき、前記の配合材料の選択ならびに配合比率のほか、適宜溶剤あるいは重合反応を阻害しない各種添加物を添加して、塗布液の粘度を調整することができる。
【0020】
本発明のハードコート剤を構成する溶媒としては、例えば、有機溶媒であるメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトン、シクロヘキサン等のケトン系溶剤、キシレン等の芳香族系、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、エチル−3−エトキシプロピオネート等のグリコールエーテルエステル系溶剤、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶剤、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、等のアミド系溶剤、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール等のアルコール系溶剤を用いることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、透明基材層の上にハードコート層及び反射防止層を一工程で形成することができる。理由は、低屈折率微粒子がハードコート層の表面に均一配向することで反射防止層を形成したと思われる。一工程で反射防止層とハードコート層を形成しているため、生産性が大幅にアップするとともに、多官能アクリレートモノマーからなるハードコート層と低屈折率微粒子からなる反射防止層の密着性向上により表面硬度が著しく向上し、層間の剥離が全く生じ難くなる。また、ハードコート層と低屈折率微粒子からなる反射防止層の密着性向上により表面硬度が著しく向上し、本発明の反射防止フィルムは、スチールウール(#0000)を用いた500g荷重耐擦傷性試験(10往復)を行った際に傷が入らない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明について実施例、比較例を挙げてより詳細に説明するが、具体例を示すものであって特にこれらに限定するものではない。
(I)有機微粒子の合成
(I−1)有機微粒子スラリーA
攪拌機、温度計、還流冷却器および窒素ガス導入口を備えた重合容器に、脱イオン水120重量部、ジアルキルスルホコハク酸エステルナトリウム0.3重量部およびpH緩衝剤として重炭酸ナトリウム0.1重量部を仕込み攪拌しながら60℃に加熱した後、窒素置換した。この中にメチルメタクリレート2重量部を添加し、10分後に0.98重量部の脱イオン水に溶解した過硫酸ナトリウム0.1部を添加し種重合を行った。発熱開始から60分後、4.9部の脱イオン水に溶解した過硫酸ナトリウム0.1重量部を添加し、さらに10分後、2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート70重量部、メチルメタクリレート25重量部、エチレングリコールジメタクリレート5.0重量部、脱イオン水60重量部、ジアルキルスルホコハク酸エステルナトリウム0.8重量部、重炭酸ナトリウム0.3部重量からなる乳化モノマー液を攪拌下、温度を80℃に保ちながら3時間かけて滴下し、滴下終了後2時間85℃を維持し重合を終了させ水系ラテックス(A−1)を得た。生成物(A−1)は固形分33.9%、平均粒子径490nm、有機微粒子固形物の屈折率は1.43であった。
【0023】
上記で合成された水系ラテックス(A−1)に、有機溶剤への転相の妨げとなるイオン性不純物の除去を目的に、イオン交換樹脂15重量部を添加し攪拌した。24時間攪拌した後、濾過によりイオン交換樹脂を除去し、水系ラテックス(A−2)を得た。
【0024】
この精製された水系ラテックス(A−2)に、酢酸エチル570重量部を加え攪拌、水系ラテックス中に存在する有機微粒子の有機層への転相を行った。その後静置し、透明な水相と白濁した有機相とを分離し、非水系微粒子分散体(A−3)を得た。有機微粒子スラリーA(A−3)は固形分15.0%であった。
(I−2)有機微粒子スラリーB
攪拌機、温度計、還流冷却器および窒素ガス導入口を備えた重合容器に、脱イオン水120重量部、ジアルキルスルホコハク酸エステルナトリウム0.8重量部およびpH緩衝剤として重炭酸ナトリウム0.4重量部を仕込み攪拌しながら60℃に加熱した後、窒素置換した。この中にメチルメタクリレート2重量部を添加し、10分後に0.98重量部の脱イオン水に溶解した過硫酸ナトリウム0.1重量部を添加し種重合を行った。発熱開始から60分後、4.9重量部の脱イオン水に溶解した過硫酸ナトリウム0.1重量部を添加し、さらに10分後、2,2,2―トリフルオロエチルメタクリレート70重量部、メチルメタクリレート25重量部、エチレングリコールジメタクリレート5重量部、脱イオン水60重量部、ジアルキルスルホコハク酸エステルナトリウム1.2重量部、重炭酸ナトリウム0.5重量部からなる乳化モノマー液を攪拌下、温度を80℃に保ちながら3時間かけて滴下し、滴下終了後2時間85℃を維持し重合を終了させ水系ラテックス(B−1)を得た。生成物(B−1)は固形分34.1%、平均一次粒子径100nm、有機微粒子固形物の屈折率は1.43であった。
【0025】
上記で合成された水系ラテックス(B−1)に、有機溶剤への転相の妨げとなるイオン性不純物の除去を目的に、イオン交換樹脂(アンバーライトMB−2,Rohm and Haas社製)25重量部を添加し攪拌した。24時間攪拌した後、濾過によりイオン交換樹脂を除去し、水系ラテックス(B−2)を得た。
【0026】
この精製された水系ラテックス(B−2)に、酢酸エチル570重量部を加え攪拌、水系ラテックス中に存在する有機微粒子の有機層への転相を行った。その後静置し、透明な水相と白濁した有機相とを分離し、非水系微粒子分散体(B−3)を得た。有機微粒子スラリーB(B−3)は固形分15.0%であった。
(I−3)有機微粒子スラリーC
攪拌機、温度計、還流冷却器および窒素ガス導入口を備えた重合容器に、脱イオン水120重量部、ジアルキルスルホコハク酸エステルナトリウム0.8重量部およびpH緩衝剤として重炭酸ナトリウム0.4重量部を仕込み攪拌しながら60℃に加熱した後、窒素置換した。この中にメチルメタクリレート2重量部を添加し、10分後に0.98重量部の脱イオン水に溶解した過硫酸ナトリウム0.1重量部を添加し種重合を行った。発熱開始から60分後、4.9重量部の脱イオン水に溶解した過硫酸ナトリウム0.1重量部を添加し、さらに10分後メチルメタクリレート95重量部、エチレングリコールジメタクリレート5重量部、脱イオン水60重量部、ジアルキルスルホコハク酸エステルナトリウム1.2重量部、重炭酸ナトリウム0.5重量部からなる乳化モノマー液を攪拌下、温度を80℃に保ちながら3時間かけて滴下し、滴下終了後2時間85℃を維持し重合を終了させ水系ラテックス(C−1)を得た。生成物(C−1)は固形分34.1%、平均一次粒子径100nm、有機微粒子固形物の屈折率は1.49であった。
【0027】
上記で合成された水系ラテックス(C−1)に、有機溶剤への転相の妨げとなるイオン性不純物の除去を目的に、イオン交換樹脂(アンバーライトMB−2,Rohm and Haas社製)25重量部を添加し攪拌した。24時間攪拌した後、濾過によりイオン交換樹脂を除去し、水系ラテックス(C−2)を得た。
【0028】
この精製された水系ラテックス(C−2)に、酢酸エチル570重量部を加え攪拌、水系ラテックス中に存在する有機微粒子の有機層への転相を行った。その後静置し、透明な水相と白濁した有機相とを分離し、非水系微粒子分散体(C−3)を得た。有機微粒子スラリーC(C−3)は固形分15.0%であった。
【実施例1】
【0029】
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(新中村化学工業株式会社製 商品名A−DPH 固形分100%)100重量部に対し、有機微粒子スラリーB(固形分15%)を33.3重量部、ジルコニアスラリー(シーアイ化成株式会社製 固形分15%)66.7重量部をMEK65.0重量部、開始剤として1−ヒドロキシーシクロへキシルーフェニルーケトンを5重量部、レベリング剤としてSNレベラーS−906(サンノプコ株式会社製、固形分50%)を0.5重量部加えハードコート剤Aを得た。次に、ハードコート剤Aを100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(以下PETフィルムとする)に硬化膜厚が3μmとなるようにバーコート法で塗工して熱風乾燥機で100℃、2分の条件で乾燥した。しかる後、紫外線照射装置(フュージョンUVシステムズ・ジャパン株式会社製、フュージョンランプ)を用いて紫外線を積算光量約300mJ/cm照射して反射防止フィルム1を得た。
【実施例2】
【0030】
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(新中村化学工業株式会社製 商品名A−DPH 固形分100%)100重量部に対し、有機微粒子スラリーA(固形分15%)を33.3重量部、ジルコニアスラリー333.3重量部、開始剤として1−ヒドロキシーシクロへキシルーフェニルーケトンを5重量部、レベリング剤としてSNレベラーS−906を0.5重量部加えハードコート剤Bを得た。次に、ハードコート剤Bを100μmのPETフィルムに硬化膜厚が3μmとなるようにバーコート法で塗工して熱風乾燥機で100℃、2分の条件で乾燥した。しかる後、紫外線照射装置を用いて紫外線を積算光量約300mJ/cm照射して反射防止フィルム2を得た。
【実施例3】
【0031】
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(新中村化学工業株式会社製 商品名A−DPH 固形分100%)100重量部に対し、有機微粒子スラリーB(固形分15%)を6.7重量部、ジルコニアスラリー333.3重量部、開始剤として1−ヒドロキシーシクロへキシルーフェニルーケトンを5重量部、レベリング剤としてSNレベラーS−906を0.5重量部加えハードコート剤Cを得た。次に、ハードコート剤Cを100μmのPETフィルムに硬化膜厚が3μmとなるようにバーコート法で塗工して熱風乾燥機で100℃、2分の条件で乾燥した。しかる後、紫外線照射装置を用いて紫外線を積算光量約300mJ/cm照射して反射防止フィルム3を得た。
【実施例4】
【0032】
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(新中村化学工業株式会社製 商品名A−DPH 固形分100%)100重量部に対し、有機微粒子スラリーB(固形分15%)を166.7重量部、ジルコニアスラリー333.3重量部、開始剤として1−ヒドロキシーシクロへキシルーフェニルーケトンを5重量部、レベリング剤としてSNレベラーS−906を0.5重量部加えハードコート剤Dを得た。次に、ハードコート剤Dを100μmのPETフィルムに硬化膜厚が3μmとなるようにバーコート法で塗工して熱風乾燥機で100℃、2分の条件で乾燥した。しかる後、紫外線照射装置を用いて紫外線を積算光量約300mJ/cm照射して反射防止フィルム4を得た。
【0033】
比較例1
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、100重量部に対し、有機微粒子スラリーC(固形分15%)を33.3重量部、ジルコニアスラリー66.7重量部をMEK65.0重量部、開始剤として1−ヒドロキシーシクロへキシルーフェニルーケトンを5重量部、レベリング剤としてSNレベラーS−906を0.5重量部加えハードコート剤Eを得た。次に、ハードコート剤Eを100μmのPETフィルムに硬化膜厚が3μmとなるようにバーコート法で塗工して熱風乾燥機で100℃、2分の条件で乾燥した。しかる後、紫外線照射装置(フュージョンUVシステムズ・ジャパン株式会社製、フュージョンランプ)を用いて紫外線を積算光量約300mJ/cm照射して反射防止フィルム5を得た。
【0034】
比較例2
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、100重量部に対し、有機微粒子スラリーB(固形分15%)を0.7重量部、ジルコニアスラリー333.3重量部、開始剤として1−ヒドロキシーシクロへキシルーフェニルーケトンを5重量部、レベリング剤としてSNレベラーS−906を0.5重量部加えハードコート剤Fを得た。次に、ハードコート剤Fを100μmのPETフィルムに硬化膜厚が3μmとなるようにバーコート法で塗工して熱風乾燥機で100℃、2分の条件で乾燥した。しかる後、紫外線照射装置を用いて紫外線を積算光量約300mJ/cm照射した。
【0035】
比較例2
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、100重量部に対し、有機微粒子スラリーB(固形分15%)を200重量部、ジルコニアスラリー333.3重量部、開始剤として1−ヒドロキシーシクロへキシルーフェニルーケトンを5重量部、レベリング剤としてSNレベラーS−906を0.5重量部加えハードコート剤Gを得た。次に、ハードコート剤Gを100μmのPETフィルムに硬化膜厚が3μmとなるようにバーコート法で塗工して熱風乾燥機で100℃、2分の条件で乾燥した。しかる後、紫外線照射装置を用いて紫外線を積算光量約300mJ/cm照射した。

評価結果を表1に示す。
【0036】
【表1】

【0037】
試験・評価方法
(1)全光線透過率(Tt)の測定
JIS K 7361−1(2000年版)3.2の規定に基づいて行った。測定装置としては、株式会社東洋精機製作所製のヘイズガードIIを用いた。
(2)ヘイズ値(Hz)の測定
JIS K 7136(2000年版)の規定に基づいて行った。具体的には、入射する平行光のうち、前方散乱によって、入射光から0.44rad(2.5°)以上それた透過光の百分率を測定した。測定装置としては、株式会社東洋精機製作所製のヘイズガードIIを用いた。
(3)最小反射率の測定
作製した反射防止フィルムの裏面をサンドペーパーで均一に研磨し、マーカーの黒色で塗りつぶしたサンプルを作製し、350〜780nmの5°、−5°分光反射スペクトルを日本分光株式会社製の紫外可視分光光度計を用いて測定し、反射率スペクトルより最小反射率を読み取った。反射スペクトルに振幅がある場合はその中心を最小反射率とした。
(4)耐擦傷性の測定
反射防止フィルムの表面を、500gの荷重をかけた日本スチールウール株式会社製のスチールウール#0000にて摩擦して傷の度合いを目視により評価した。傷の本数が0本のものを○、1本〜5本のものを△、それ以上のものを×とした。
(5)鉛筆硬度の測定
JIS K 5600−5−4(1999年版)の規定に基づいて行った。測定装置としては、株式会社東洋精機製作所製の鉛筆引掻塗膜硬さ試験機(形式P)を用いた。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素系(メタ)アクリレートを主原料とする低屈折率微粒子を添加したハードコート剤を透明基材上に塗布硬化してなることを特徴とする反射防止フィルム。
【請求項2】
該低屈折率微粒子が乳化重合法により合成されたものであり、平均一次粒子径が80〜500nmで、かつ乳化重合時に2官能以上の(メタ)アクリレートモノマーを重合時に使用するモノマー100重量部に対して1重量部以上使用してなるものであることを特徴とする請求項1記載の反射防止フィルム。
【請求項3】
該低屈折率微粒子の添加量が感光性樹脂の固形分100重量部に対して1重量部以上30重量部未満であることを特徴とする請求項1又は2記載の反射防止フィルム。

【公開番号】特開2008−76707(P2008−76707A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−255303(P2006−255303)
【出願日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【出願人】(000100698)アイカ工業株式会社 (566)
【Fターム(参考)】