説明

反射防止光学素子及び反射防止光学素子の製造方法

【課題】 本件発明の課題は、微細凹凸構造体の反射防止性能を維持した上で、耐高温高湿環境性及び耐擦傷性に優れた反射防止光学素子を提供することである。
【解決手段】上記課題を解決するため、入射光の反射を抑制する微細凹凸構造体20を光学素子本体10の光学面11に備えた反射防止光学素子1であって、微細凹凸構造体20の外側を被覆する透光性材料から成る被覆層30を備え、当該被覆層30と当該微細構造体20の凹部22との間に空隙40が設けられた状態で、当該被覆層30により当該微細凹凸構造体20の凸部21の先端が被覆されることを特徴とする反射防止光学素子1を採用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学素子本体の光学面に反射防止構造体を備えた反射防止光学素子及び当該反射防止光学素子の製造方法に関し、特に、反射防止構造体として、入射光の反射を抑制する微細凹凸構造を備えた反射防止光学素子及び当該反射防止光学素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レンズ等の光学素子の光学面に、表面反射による透過光の損失を低減させるために反射防止構造体を備えた反射防止光学素子が用いられている。反射防止構造体の一つとして、入射光波長よりも短い間隔で凸部が規則的に配列された微細凹凸構造体が知られている(例えば、「特許文献1」及び「特許文献2」参照。)。このような微細凹凸構造体を光学素子本体の光学面に備えることにより、広い波長帯域および広い光線入射角に対して反射防止効果を発揮することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−157119号
【特許文献2】特開2010−48896号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、光学素子本体の光学面における表面積に対して、上記微細凹凸構造体の表面積は極めて大きい。このため、例えば、高温高湿環境下に長期間保管された場合、微細凹凸構造体に水分が吸着するなどして微細凹凸構造が崩れることで、反射防止性能が低下するという課題があった。
【0005】
また、微細凹凸構造体は、光学素子本体の光学面から突出する無数の凸部を有する。反射を抑制するためには、微細凹凸構造体の深さ方向に向かって緩やかな屈折率分布を形成する必要がある。従って、これらの凸部は、一般に、先端が基端よりも細い錐体状の形状を呈している。このため、微細凹凸構造体の表面は機械的損傷を受けやすく、耐擦傷性が低いという課題があった。
【0006】
以上のことから、本件発明の課題は、微細凹凸構造体の反射防止性能を維持した上で、耐高温高湿環境性及び耐擦傷性に優れた反射防止光学素子及び当該反射防止光学素子の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、本発明者等は、鋭意研究を行った結果、以下の反射防止光学素子を採用することで上記目的を達成するに到った。
【0008】
本件発明に係る反射防止光学素子は、入射光の反射を抑制する微細凹凸構造体を光学素子本体の光学面に備えた反射防止光学素子であって、当該微細凹凸構造体の外側を被覆する透光性材料から成る被覆層を備え、当該被覆層と当該微細構造体の凹部との間に空隙が設けられた状態で、当該被覆層により当該微細凹凸構造体の凸部の先端が被覆されることを特徴とする。
【0009】
本件発明に係る反射防止光学素子において、前記微細凹凸構造体は樹脂材料を用いて形成されたものであり、前記微細凹凸構造体の凸部は、200nm以下のピッチ幅で互いに隣接していることが好ましい。
【0010】
本件発明に係る反射防止光学素子において、前記被覆層の屈折率は、1.15以上2.35以下であることが好ましく、1.15以上1.5以下であることがより好ましい。ここで、被覆層の構成する透光性材料としては、無機系の透光材料を用い、成膜条件等を制御することにより上述の範囲内の屈折率を有する被覆層を得ることが好ましい。具体的には、無機系の透光性材料として、例えば、SiO、MgF、Al、Nb、Ta、TiO、La及びTiOの混合物、HfO、SnO、ZrO、ZrO及びTiOの混合物、Pr11及びTiOの混合物、Al及びLaの混合物、Laなどを用い、成膜条件等を制御することなどにより上述の範囲内の屈折率を有する被覆層を形成することができる。
【0011】
また、本件発明に係る反射防止光学素子において、前記被覆層は、前記透光性材料を成膜材料として用い、空孔を含む前記透光性材料から成る粗状態な膜として形成されたものであって、前記透光性材料自体よりも屈折率が低いことが好ましい。例えば、物理的気相成長法等による成膜プロセスにおいて、二次粒子の成長過程において生じる空孔を残した状態で成膜するように成膜条件を制御することにより、成膜材料として用いた透光性材料自体の屈折率、即ち、バルク状態にある透光性材料の屈折率よりも低い屈折率を有する被覆層を得ることができる。すなわち、本件発明において、前記被覆層の屈折率は、当該被覆層を構成する透光性材料の屈折率よりも低いことが好ましい。
【0012】
本件発明に係る反射防止光学素子において、前記被覆層の膜厚は5nm以上50nm以下であることが好ましい。ここで、当該膜厚は、被覆層の屈折率が1.5以上2.35以下の場合、5nm以上25nm以下であることがより好ましく、5nm以上10nm以下であることが更に好ましい。
【0013】
本件発明に係る反射防止光学素子において、前記微細凹凸構造体は、前記光学素子本体の光学面に、単層または複数層から成る光学薄膜を介して設けられることが好ましい。
【0014】
本件発明に係る反射防止光学素子において、前記被覆層は、光学素子本体をドーム回転又は遊星回転させながら前記微細凹凸構造体の凸部の先端に透光性材料を物理的気相成長法により成膜したものであることが好ましい。ここで、物理的気相成長法としては、例えば、真空蒸着法、マグネトロンスパッタリング法、イオンプレーティング法などを挙げることができる。
【0015】
また、本件発明に係る反射防止光学素子は、入射光の反射を抑制する微細凹凸構造体を光学素子本体の光学面に備えた反射防止光学素子であって、前記微細凹凸構造体は、前記光学素子本体の光学面に、単層または複数層から成る光学薄膜を介して設けられ、当該微細凹凸構造体の外側を被覆する透光性材料から成る被覆層を備え、当該被覆層と当該微細構造体の凹部との間に空隙が設けられた状態で、当該被覆層により当該微細凹凸構造体の凸部の先端が被覆されることを特徴とする。
【0016】
本件発明に係る反射防止光学素子の製造方法は、上記反射防止光学素子を製造する方法であって、被覆層は、光学素子本体をドーム回転又は遊星回転させながら前記微細凹凸構造体の凸部の先端に透光性材料を物理的気相成長法により成膜することを特徴とする。物理的気相成長法としては、上記例示した各種方法等を採用することができる。
【発明の効果】
【0017】
本件発明に係る反射防止光学素子によれば、微細凹凸構造体の凸部の先端を被覆する被覆層を設けたので、微細凹凸構造体の表面に水分等が吸着するのを防止して、反射防止光学素子の耐高温高湿環境性を向上することができる。また、被覆層により、微細凹凸構造体の凸部の先端を被覆しているので、微細凹凸構造体を機械的損傷から保護することができ、反射防止光学素子の耐擦傷性を向上することができる。
【0018】
また、本件発明に係る反射防止光学素子によれば、透光性材料から成る被覆層と当該微細構造体の凹部との間に空隙が設けられた状態で、当該被覆層により当該微細凹凸構造体の凸部の先端が被覆するようにして、被覆層により微細凹凸構造体の外側を被覆している。微細凹凸構造体の表面形状、すなわち凹凸形状に沿って、微細凹凸構造体との間に空隙無く表面全面を被覆層で覆った場合には、微細凹凸構造体の凸部の表面を被覆する透光性材料により入射光が反射し、微細凹凸構造体の反射抑制機能が損なわれる場合がある。しかしながら、本件発明のように、微細凹凸構造体の凸部の先端のみを被覆層により覆い、被覆層と凹部との間を空隙とすることにより、入射光の媒質である空気との屈折率の差異が小さくなり、反射を抑制することができる。このように、本件発明によれば、微細凹凸構造体の反射防止性能を維持した上で、耐高温高湿環境性及び耐擦傷性に優れた反射防止光学素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本件発明に係る反射防止光学素子の断面を示す模式図である。
【図2】本件発明に係る反射防止光学素子と比較するための、被覆層の態様を説明するための模式図である。
【図3】本件発明に係る被覆層を形成する際に用いるドーム回転型の回転基板保持台の構成を示す図である。
【図4】本件発明に係る被覆層を形成する際に用いる遊星回転型の回転基板保持台の構成を示す図である。
【図5】実施例1及び比較例1で製造した反射防止光学素子の膜厚方向における屈折率の分布を示す図である。
【図6】実施例1及び比較例1で製造した反射防止光学素子の入射光波長に対する反射率を示す図である。
【図7】実施例2で製造した反射防止光学素子の膜厚方向における屈折率の分布を示す図である。
【図8】実施例3で製造した反射防止光学素子の膜厚方向における屈折率の分布を示す図である。
【図9】実施例4で製造した反射防止光学素子の膜厚方向における屈折率の分布を示す図である。
【図10】実施例2〜実施例4で製造した反射防止光学素子の入射光波長に対する反射率を示す図である。
【図11】実施例5で製造した反射防止光学素子の膜厚方向における屈折率の分布を示す図である。
【図12】実施例6で製造した反射防止光学素子の膜厚方向における屈折率の分布を示す図である。
【図13】実施例2、実施例5及び実施例6で製造した反射防止光学素子の入射光波長に対する反射率を示す図である。
【図14】実施例7で製造した反射防止光学素子の膜厚方向における屈折率の分布を示す図である。
【図15】実施例7で製造した反射防止光学素子の入射光波長に対する反射率を示す図である。
【図16】実施例8で製造した反射防止光学素子の膜厚方向における屈折率の分布を示す図である。
【図17】実施例8で製造した反射防止光学素子の入射光波長に対する反射率を示す図である。
【図18】実施例9で製造した反射防止光学素子の膜厚方向における屈折率の分布を示す図である。
【図19】比較例2で製造した反射防止光学素子の膜厚方向における屈折率の分布を示す図である。
【図20】実施例9及び比較例2で製造した反射防止光学素子の入射光波長に対する反射率を示す図である。
【図21】実施例9及び比較例2で製造した反射防止光学素子の入射光波長に対する反射率を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら、本件発明に係る反射防止光学素子及び当該反射防止光学素子の製造方法の実施の形態を説明する。
【0021】
〈反射防止光学素子)
まず、図1及び図2を参照して、本実施の形態の反射防止光学素子100の構成を説明する。図1は、本実施の形態の反射防止光学素子100の構成を示す模式図である。図1に示すように、本実施の形態の反射防止光学素子100は、入射光の反射を抑制する微細凹凸構造体20を光学素子本体10の光学面11に備えたものである。微細凹凸構造体20の外側は、透光性材料から成る被覆層30により被覆されている。本件発明では、当該被覆層30と当該微細構造体の凹部22との間に空隙40(空気層)が設けられた状態で、当該被覆層30により当該微細凹凸構造体20の凸部21の先端が被覆されるようにして、被覆層30により微細凹凸構造体20の外側が被覆されていることを特徴としている。以下、各構成要素毎に説明する。
【0022】
光学素子本体10: 光学面11に微細凹凸構造体20を備える光学素子本体10として、例えば、デジタルスチルカメラ、アナログスチルカメラ、各種顕微鏡等のレンズを挙げることができる。但し、光学素子本体10はレンズに限定されるものではなく、反射防止フィルム、偏光分離プリズム、色分解プリズム、赤外線カットフィルター、濃度フィルター、インテグレーター等各種のものに適用することができる。また、光学素子本体10は、ガラス材料から形成されていてもよいし、樹脂材料から形成されていてもよく、光学素子本体10を形成する材料に特に限定はない。
【0023】
微細凹凸構造体20: 光学素子本体10の光学面11に備えられる微細凹凸構造体20は、樹脂材料から形成されるものが好ましい。樹脂材料を用いることにより、微細なピッチで凹凸構造を精度よく形成することができ、一定の品質の反射防止構造体を量産することができる。なお、必要に応じて、各種の機能を付与するための添加剤(無機酸化物等)を適宜添加した樹脂材料を用いてもよい。
【0024】
図1に示すように、微細凹凸構造体20は、光学面11から突出する複数(無数)の凸部21を備えている。微細凹凸構造体20の凸部21は、互いに隣接して規則正しく配置されている。各凸部21は、円錐状、角錐状、多角錐状(それぞれ先端の一部が切り欠かれた形状も含む)等の錐体状形状を呈し、微細凹凸構造体20の深さ方向に向かって緩やかな屈折率分布が形成されている。
【0025】
また、微細凹凸構造体20において凸部21のピッチ幅pは200nm以下であることが好ましい。ここで、ピッチ幅pとは、例えば、互いに隣接する凸部21の先端位置間の距離を指す。但し、ピッチ幅pは、電子顕微鏡観察により測定することができる。
【0026】
凸部21のピッチ幅pが200nm以下であることにより、後述する真空蒸着法等の物理的気相成長法により、被覆層30を成膜することで、被覆層30と凹部22との間に空隙40を設けた状態で、微細凹凸構造体20の外側を被覆することができる。換言すれば、真空蒸着法等により被覆層30を成膜する際に、凸部21のピッチ幅pが200nm以下であれば、本件特有の成膜方法を採用することにより、凹部22に被覆層形成材料(透光性材料)を充填することなく、微細凹凸構造体20の外側を被覆層30で被覆することができる。
【0027】
一方、このピッチ幅pが200nmを超える場合、被覆層30を真空蒸着法等により形成する際に、微細凹凸構造体20の凹部22に被覆層形成材料が充填される可能性が高くなる。微細凹凸構造体20の凹部22に被覆層形成材料が充填されると、微細凹凸構造体20の深さ方向に形成された緩やかな屈折率の分布を維持することができず、微細凹凸構造体20の反射防止性能が低下する場合がある。また、ピッチ幅pが200nmを超える場合、光散乱が発生し、透過光の損失や迷光の発生につながる他、被覆層30の保護膜としての機能が低下する場合がある。
【0028】
また、凸部21の高さhは、50nm以上250nm以下であることが好ましい。ここで、「凸部21の高さh」とは、図1に示すように、凸部21の基端部から先端部までの距離を指す。凸部21の高さhは、電子顕微鏡観察により求めることができる。凸部21の高さhが50nm以上250nm以下であることにより、凸部21を錐体状に形成することで、微細凹凸構造体20の深さ方向において緩やかな屈折率の分布を形成することができる。これにより、可視光領域の入射光の反射を効果的に防止することができる。一方、凸部21の高さhが上記範囲を外れる場合、可視光に対する反射防止効果が不十分になり、好ましくない。
【0029】
但し、本件発明において、微細凹凸構造体20が要求される反射防止効果を発揮することができれば、凸部21の高さhは特に限定されるものではない。上述した範囲は、あくまでも好ましい範囲である。従って、上記範囲を超えた場合であっても、微細凹凸構造体20が要求される反射防止効果を発揮する限りにおいて、特に問題は生じない。
【0030】
被覆層30: 次に、被覆層30について説明する。既に述べた通り、本実施の形態の反射防止光学素子100において、当該被覆層30と当該微細構造体の凹部22との間に空隙40が設けられた状態で、当該被覆層30により当該微細凹凸構造体20の凸部21の先端が被覆されるようにして、被覆層30が微細凹凸構造体20の外側を被覆することを特徴としている。ここで、被覆層30は、微細凹凸構造体20の保護膜としての機能と、光学薄膜としての機能とを併せ持つ層である。
【0031】
具体的には、被覆層30を設けることで、微細凹凸構造体20の機械的損傷を防止し、当該反射防止光学素子100の耐擦傷性を向上し、当該被覆層30は保護膜として機能する。
【0032】
また、被覆層30は光学薄膜として、微細凹凸構造体20と一体となって反射防止層として機能する。上述した様に、微細凹凸構造体20はその深さ方向において緩やかな屈折率の分布を有する。当該被覆層30をその屈折率に応じて適切な膜厚とすることにより、反射防止層の深さ方向における屈折率変化をより理想的なものに近づけることができるため好ましい。さらに、微細凹凸構造体20の外側に後述する範囲の屈折率を有する当該被覆層30を設けることで反射防止層の深さ方向における屈折率変化をより理想的なものに近づけることができる場合がある。すなわち、光学素子本体10の光学面11に、微細凹凸構造体20及び空気層を含む屈折率勾配層と、所定の屈折率を有する被覆層30との積層体としての反射防止層を設けることにより、反射防止層を微細凹凸構造体20のみから構成する場合に比して、反射防止層の深さ方向における屈折率変化をより理想的なものに近づけて、当該反射防止光学素子100の反射防止効果を高めることができる。
【0033】
被覆層30の屈折率は、1.15以上2.35以下であることが好ましい。屈折率が1.15未満および2.35を超える場合、そのような屈折率を有する被覆層30を製造することは困難になる。当該観点から、被覆層30を形成する透光性材料の屈折率は低い方が好ましく、1.5以下であることがより好ましい。
【0034】
被覆層30は、成膜時に生じる空孔を含む当該透光性材料から成る粗状態な膜として形成されたものであることが好ましい。このような粗状態な膜とすることにより、当該被覆層の屈折率を透光性材料自体の屈折率よりも低いものとすることができる。すなわち、成膜材料として用いる透光性材料の物質が有する屈折率、すなわち、バルク状態にある透光性材料の屈折率よりも、被覆層30の屈折率を低くすることができる。例えば、透光性材料を真空蒸着法等の物理的気相成長法により成膜する際に、二次粒子の成長過程において生じる空孔を残した状態で成膜することにより、当該透光性材料から成る粗状態な膜を得ることができる。このとき、数nm程度(例えば、5nm以下)の空孔が被覆層30内に分散配置される。
【0035】
被覆層30において、空孔が占める体積率は70%未満であることが好ましい。当該体積率が70%以上になると、被覆層30の耐久性が低下し、また、保護膜としての機能が低下する場合があるためである。当該観点から、被覆層30において、空孔が占める体積率は50%未満であることがより好ましく、30%未満であることが更に好ましい。一方、空孔が占める体積率の下限値は、成膜材料として用いた透光性材料の屈折率と、被覆層30に要求される屈折率とに応じて適宜、適切な値とすることができ、特に限定されるものではない。
【0036】
また、透光性材料としては、無機系の透光材料が好ましい。被覆層30は、上述した通り、微細凹凸構造体20の機械的損傷を防止し、当該反射防止光学素子100の耐擦傷性を向上することを目的として設けるものである。樹脂系の透光性材料よりも、無機系の透光性材料の方が一般に機械的強度が高いため、被覆層30の形成材料として無機系の透光性材料が好ましい。
【0037】
さらに、被覆層30は、上述した通り、反射防止層の深さ方向の屈折率の変化を理想的なものに調整する光学薄膜としての機能を有し、当該反射防止光学素子100の反射防止性能を向上することを目的として設けるものである。樹脂系の透光性材料よりも、無機系の透光性材料の方が材料の屈折率の範囲が広く、光学設計において選択する材料の自由度が増すことから、被覆層30の形成材料として無機系の透光性材料が好ましい。また、後述する物理的気相成長法により、無機系の透光性材料を用いて、空孔を含むように成膜することにより、材料自体の屈折率よりも被覆層30の屈折率を低くすることができるため、光学設計において選択する材料の自由度をより増加させることができる。
【0038】
屈折率が2.35以下の無機系の透光性材料として、例えば、Al、Nb、Ta、TiO、La及びTiOの混合物、HfO、SnO、ZrO、ZrO及びTiOの混合物、Pr11及びTiOの混合物、Al及びLaの混合物、Laなどが挙げられる。また、屈折率が1.5以下の無機系の透光性材料として、SiO又はMgFなどが挙げられる。
【0039】
被覆層30の膜厚は5nm以上50nm以下であることが好ましい。被覆層30の膜厚が5nm未満になると、膜厚が薄く、微細凹凸構造体20の機械的損傷を防止するという保護膜としての機能を十分に発現することができない場合がある。一方、被覆層30の膜厚が50nmを超える場合、被覆層30を形成する透光性材料の屈折率によっては、被覆層30において入射光が反射したり、入射光が散乱したりする等により、透過光の損失が生じるため好ましくない。反射防止性能上、被覆層30の屈折率に応じて、被覆層30の膜厚を適宜、最適な厚さにすることが好ましい。具体的には、屈折率が1.5より大きく、2.35以下の透光性材料を用いる場合には、被覆層30の厚みは25nm以下の範囲内であることが好ましく、10nm以下であることがより好ましい。当該範囲内に被覆層30の屈折率に応じた反射防止性能上最適な膜厚が存在するためである。一方、屈折率が1.5よりも小さい場合には、被覆層30の膜厚を5nm〜50nmの範囲内において、反射防止性能上最適な膜厚を採用することができる。
【0040】
光学薄膜50: 光学素子本体10の光学面11には、単層または複数層から成る光学薄膜50(反射防止薄膜層)が設けられ、当該光学薄膜50上に上記微細凹凸構造体20が設けられることが好ましい。これにより、当該光学薄膜50を、微細凹凸構造体20及び被覆層30と一体となって反射防止層として機能させることができる。このように、光学素子本体10の光学面11に設ける反射防止層を、当該光学薄膜50と、微細凹凸構造体20と、被覆層30との複合層とすることにより、反射防止層の深さ方向における屈折率変化を、反射防止性能を発揮する上でより理想的な屈折率変化にすることができる。但し、図1には、光学薄膜50の位置を図示したものであり、光学薄膜50を構成する層の数を示すものではない。
【0041】
このような光学薄膜50は、例えば、各種成膜法により、MgF、SiO、Al、Nb、Ta、TiO、La及びTiOの混合物、HfO、SnO、ZrO、ZrO及びTiOの混合物、Pr11及びTiOの混合物、Al及びLaの混合物、Laなどを用いて成膜した層を単層又は複数層積層することにより得ることができる。但し、光学薄膜50を構成する材料はこれらに限定されるものではない。また、当該光学薄膜50の厚み等は、反射防止性能を発揮する上で、適宜、適切な値とすることができる。
【0042】
以上のように、本実施の形態の反射防止光学素子100は、微細凹凸構造体20の凸部21の先端を被覆する被覆層30を有するので、微細凹凸構造体20の表面に水分等が吸着するのを防止して、反射防止光学素子100の耐高温高湿環境性を向上することができる。また、被覆層30により、微細凹凸構造体20の凸部21の先端を被覆しているので、微細凹凸構造体20を機械的損傷から保護することができ、反射防止光学素子100の耐擦傷性を向上することができる。さらに、被覆層30は、光学薄膜としての機能を有し、微細凹凸構造体20と協働して、反射防止光学素子100の反射防止性能を向上することができる。
【0043】
また、本実施の形態の反射防止光学素子100は、透光性材料から成る被覆層30と当該微細構造体の凹部22との間に空隙40が設けられた状態で、被覆層30により微細凹凸構造体20の外側を被覆している。これに対して、例えば、図2に示すように、微細凹凸構造体20の表面形状、すなわち凹凸形状に沿って、微細凹凸構造体20との間に空隙40無く表面全面を被覆層30で覆った場合には、微細凹凸構造体20の凸部21の表面を被覆する透光性材料により入射光が反射し、微細凹凸構造体20の反射抑制機能が損なわれる場合がある。しかしながら、上記実施の形態のように、微細凹凸構造体20の凸部21の先端のみを被覆層30により覆い、被覆層30と凹部22との間を空隙40とすることにより、被覆層30を透過した入射光は微細凹凸構造体20と入射光の媒質である空気との屈折率の差異が小さくなり、反射を抑制することができる。このように、上記実施の形態の反射防止光学素子100によれば、微細凹凸構造体20の反射防止性能を維持した上で、耐高温高湿環境性及び耐擦傷性に優れたものとすることができる。
【0044】
〈反射防止光学素子100の製造方法〉
次に、図3及び図4を参照して、上記反射防止光学素子100の製造方法の一例を説明する。反射防止光学素子100の製造方法は、例えば、次の工程を備える。
A)微細凹凸構造体形成工程
B)被覆層形成工程
以下、各工程毎に説明する。
【0045】
A)微細凹凸構造体形成工程
微細凹凸構造体形成工程は、光学素子本体10の光学面11に微細凹凸構造体20を付与する工程である。光学素子本体10を形成する材料によって、種々の方法を採用することができる。本件発明において、微細凹凸構造形成工程は特に限定されるものではない。しかしながら、より微細な凹凸構造を精度よく形成可能な方法として、本実施の形態では、光学素子本体10の光学面11に設けられた樹脂面(樹脂膜又は光学面11)に対して、プラズマエッチングにより微細凹凸構造体20を形成する方法を採用する。また、後述するように、プラズマエッチングを行う際には、樹脂面に、例えば、TiO等の無機酸化物膜を形成した上で、プラズマエッチングを施すことが好ましい。
【0046】
(1)ガラス製の光学素子本体10を用いる場合
光学素子本体10がガラス製である場合、光学面11に樹脂膜を備えた光学素子本体10を用いる。樹脂膜を構成する材料として、PMMA樹脂(ポリメタクリル酸メチル樹脂)、日本ゼオン社製のZEONEX(登録商標)樹脂、ポリカーボネート樹脂、シクロオレフィン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアミド樹脂、PET樹脂、PPG Industries社製のCR−39樹脂(登録商標)(allyl diglycol carbonate)等が挙げられる。また、樹脂膜の厚みは、300nm〜0.5mm程度が好ましい。
【0047】
光学面11に樹脂膜を備えた光学素子本体10に対し、市販の真空蒸着装置(例えば、ARES1510(Leybold Optics社製))を用いて、電子線蒸着によりTiO等の無機酸化物膜を形成する。このとき、蒸着レート、0.01nm/s〜5nm/s、真空度1×10−4Pa〜5×10−2Paで電子線蒸着を行うことが好ましい。また、無機酸化物膜の膜厚は、電子線蒸着装置に取り付けられた水晶膜厚計で測定した場合に、0.3nm〜2nm程度であることが好ましい。なお、無機酸化物膜として、TiO膜の他、SiO膜、TiO膜、MgF膜等を上記電子線蒸着により形成してもよい。
【0048】
その後、放電電圧50V〜150V、放電電流20A〜60A、基板バイアス80−150Vの範囲でプラズマエッチングを60s〜500sの間行う。このとき、Arを5sccm〜20sccm及びOを5sccm〜50sccmの流量で流しておく。但し、「sccm」とは、「standard cc/min、1atm(大気圧1.013hPa)、0℃」を指す。以上の工程により、樹脂膜がエッチングされて、凸部21のピッチ幅pは50nm〜200nm程度、凸部21の高さhが50nm〜250nm程度の微細凹凸構造体20が形成される。また、凸部21の形状は、錐体状を呈する。
【0049】
(2)樹脂製の光学素子本体10を用いる場合
樹脂製の光学素子本体10の光学面11に微細凹凸構造体20を形成する場合、まず、上記と同様の手順により微細凹凸構造の表面形状を形成し、ニッケル電鋳によりモールド(型)を作製する。モールドの作製に際して、まず、モールド作製用の光学素子本体10(以下、「モールド作製用本体」と称する。)を用意する。このモールド作製用本体は、微細凹凸構造を形成する光学素子本体10と同じものであり、例えば、PMMA樹脂製のものを用いることができる。そして、その光学面11に上記と同様の方法で微細凹凸構造を形成する。このとき、凸部21のピッチ幅pが50nm〜200nm程度、凸部21の高さhが50nm〜250nm程度の微細凹凸構造が形成される。この微細凹凸構造が形成されたモールド作製用本体の微細凹凸構造体20の表面に、微細凹凸形状に沿って、例えば1nmの厚さで金をスパッタリング法により成膜する。金の薄膜が形成されたモールド作製用本体を用いて、ニッケル電鋳によりモールドを作製する。以上のように形成されたモールドを用いて、エンボス加工により、例えば、PMMA樹脂等からなる光学素子本体10の光学面11に微細凹凸構造を形成する。
【0050】
B)被覆層形成工程
本件発明において、被覆層形成工程は、被覆層30と凹部22との間に間隙を設け、凸部21の先端のみを被覆するように微細凹凸構造体20の外側を被覆層30を形成可能な方法であれば、如何なる方法を採用してもよい。しかしながら、本件発明者等の鋭意研究により、以下の方法を採用することで、本件発明に特有の上記被覆形態を有する被覆層30を簡易に、且つ、精度よく形成することが可能であることを見出した。以下、当該方法を説明する。
【0051】
本件発明において、被覆層形成工程は、微細凹凸構造体20を光学面11に備える光学素子本体10をドーム回転又は遊星回転させながら、微細凹凸構造体20の凸部21の先端に透光性材料を物理的気相成長法により成膜させることが好ましい。ここで、物理的気相成長法として、例えば、真空蒸着法、マグネトロンスパッタリング法、イオンプレーティング法等を挙げることができる。
【0052】
前記被覆層30を構成する被覆層構成材料は、上述した通り、屈折率1.15以上2.35以下の透光性材料を用いる。また、上述した通り、無機系の透光性材料であることが好ましく、採用可能な具体的な透光性材料は上記列挙した通りである。物理的気相成長法としては、例えば、電子線蒸着法を用いることが好ましい。電子線蒸着法を適用する際に、例えば、上述した市販の電子線蒸着装置(例えば、APS904(Leybold Optics社製))を用いることができる。このとき、蒸着レート、0.1nm/s〜10nm/s、真空度1×10−4Pa〜5×10−2Paで電子線蒸着を行うことが好ましい。
【0053】
光学面11に微細凹凸構造体20を備えた光学素子本体10を、図3に示すドーム回転型の回転基板保持台100を用いることが好ましい。図3に示すように、ドーム回転型の回転基板保持台100の内側に、微細凹凸構造体20を備える光学面11を成膜面として、光学素子本体10を固定する。そして、当該ドーム型の回転基板保持台100を図示しない回転軸により回転させながら、蒸発させた被覆層形成材料を成膜面に対して、20度〜80度の角度で接触させるようにすることが好ましい。あるいは、ドーム回転型の回転基板保持台100において、回転中心位置から当該回転基板保持台100の外縁までの距離を1とした場合、回転中心位置から1/2〜1となる領域に光学素子本体10を固定することが好ましい。このとき、回転中心位置から2/3〜1となる領域に光学素子本体10を固定することがより好ましい。回転する微細凹凸構造体20の表面に対して、斜めに蒸発した被覆層形成材料が接触することにより、凹部22に被覆層形成材料が充填されることなく、被覆層30と凹部22との間に空隙40を設けた状態で、凸部21の先端のみ被覆層30で被覆されるように、微細凹凸構造体20の外側に被覆層30を成膜することができる。但し、微細凹凸構造体20の表面に対して、斜めの方向とは、光学素子本体10の光学面11に対して、斜めの方向を指す(以下、同じ。)。
【0054】
また、被覆層30を成膜する際に、図4に示す遊星回転型の回転基板保持台110を用いることも好ましい態様である。遊星回転型の回転基板保持台110は、略円盤形状の公転回転台(プラネットベース)111と、この公転回転台111の外周部に、蒸着側に突出し、且つ、公転回転台111の回転面において外周側から回転中心側に傾斜するように、回転可能に設けられる支柱軸112と、この支柱軸112に基板保持面が垂直になるように取り付けられる遊星回転台(プラネタリ)113とを備えている。なお、遊星回転台113も略円盤形状を呈している。公転回転台111が公転する際、支柱軸112の回転により遊星回転台113は自転する。これにより、微細凹凸構造体20側が成膜面となるように遊星回転台113に保持された光学素子本体10は、遊星回転を行いながら、蒸発した被覆層形成材料に接触する。これにより、微細凹凸構造体20の凹部22に被覆層形成材料が充填されることなく、被覆層30と凹部22との間に空隙40を設けた状態で、凸部21の先端のみ被覆層30で被覆されるように、微細凹凸構造体20の外側に被覆層30を成膜することができる。但し、公転回転台111に対して、支柱軸112は20度〜70度の傾斜角度で設けられていることが好ましい。支柱軸112の公転回転台111に対する傾斜角度を当該範囲内とすることにより、本件発明に係る被覆層30を形成することができる。
【0055】
以上、説明した本実施の形態は本件発明の一態様であり、本件発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能であるのは勿論である。また、以下、実施例及び比較例を挙げて、本件発明をより詳細に説明するが、本件発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0056】
実施例1では、ガラス製の光学素子本体10を用いて、PMMA樹脂から成る微細凹凸構造体20を光学素子本体10の光学面11に形成し、その後、無機系の透光性材料としてSiOを用いて、微細凹凸構造体20の外側を被覆層30で被覆した。具体的には、次の通り、本件発明に係る反射防止光学素子100を製造した。
【0057】
まず、光学素子本体10として、株式会社オハラ製の光学ガラス(商品名:S−LAH66(nd=1.77))から成るガラスレンズを採用した。そして、このガラスレンズの光学面11に設けられた0.2mmの膜厚のPMMA樹脂膜に対して、真空蒸着装置ARES1510(Leybold Optics)を用い、PMMA樹脂膜の表面に、電子線蒸着によって水晶膜厚で1.25nmのTiO膜を成膜した。このとき、蒸着レートは0.03nm/sとし、チャンバー内の真空度を1×10−3Paとした。次に基板バイアス120V、放電電流50Aでプラズマエッチングを約200s(秒)行った。また、このとき、チャンバ−内にArガスと、Oガスとをそれぞれ流量14sccm、30sccmで流した。以上の工程により、凸部21のピッチ幅pが50nm〜150nm程度で、凸部21の高さhが60nm〜130nm程度のPMMA樹脂から成る微細凹凸構造体20を形成した。その後、微細凹凸構造体20が形成された光学面11を成膜面として、図3に示すように、ドーム回転型の基板支持保持台に当該ガラスレンズを取り付けた。そして、電子線蒸着によりSiOを水晶膜厚で20nm成膜した。このとき、SiOの蒸気が微細凹凸構造体20の表面に対して、20度〜80度の角度で接触するように、ドーム回転型の基板支持保持台に対するガラスレンズの取り付け位置を調整した。以上のようにして実施例1の反射防止光学素子100を製造した。
【実施例2】
【0058】
実施例2では、株式会社オハラ製の光学ガラス(商品名:S−LAH55(nd=1.83))から成るガラスレンズを光学素子本体10として用いた。そして、光学素子本体10の光学面11に、表1に示す4層(第1層〜第4層)から成る光学薄膜50を以下の手順で形成した後、当該光学薄膜50上に、PMMA樹脂から成る微細凹凸構造体20を形成した。その後、無機系の透光性材料としてSiOを成膜材料とし、下記の手順で、微細凹凸構造体20の外側を被覆層30で被覆した。具体的には、次の通り、本件発明に係る反射防止光学素子100を製造した。
【0059】
まず、光学素子本体10としてのS−LAH55製のガラスレンズ上に、真空蒸着法により、第1層としてAl膜を形成した。そして、第1層の表面に、同じく真空蒸着法によりZrO+TiO膜を形成した。第1層及び第2層と同様にして、第3層としてAl膜、第4層としてZrO+TiO膜を形成した。次いで、第4層の表面にスピンコートによりPMMA膜を形成した。そして、光学素子本体10の光学面11に第1層〜第4層から成る光学薄膜50と、PMMA膜とが形成されたガラスレンズの光学面11に対して、実施例1と同様にして、プラズマエッチングを行った。以上の工程により、凸部21のピッチ幅pが50nm〜150nm程度で、凸部21の高さhが50nm〜120nm程度の微細凹凸構造体20を形成した。
【0060】
その後、微細凹凸構造体20が形成された光学面11を成膜面として、図4に示すように、遊星回転型の回転基板保持台に当該ガラスレンズを取り付けた。そして、真空蒸着装置ARES1510(Leybold Optics)を用いて、真空蒸着によりSiOを水晶膜厚で20nm成膜した。このとき、公転回転台に対して支柱軸は50度の傾斜角度になるように遊星回転型の基板支持保持台に対するガラスレンズの取り付け位置を設定した。以上のようにして実施例2の反射防止光学素子100を製造した。
【0061】
実施例2により製造した反射防止光学素子100の膜構成及び膜厚は以下の表1に示す通りである。
【0062】
【表1】

【実施例3】
【0063】
光学素子本体10の光学面11と、微細凹凸構造体20との間に設ける光学薄膜50の各層の膜厚をそれぞれ表2に示す通りにし、被覆層30を構成する無機系の透光性材料としてTiOを用い、被覆層30の膜厚を5nmとしたこと以外は、実施例2の反射防止光学素子100と同様にして、実施例3の反射防止光学素子を製造した。
【0064】
【表2】

【実施例4】
【0065】
光学素子本体10の光学面11と、微細凹凸構造体20との間に設ける光学薄膜50の各層の膜厚をそれぞれ表3に示す通りにし、被覆層30を構成する無機系の透光性材料としてMgFを用い、被覆層30の膜厚を50nmとしたこと以外は、実施例2の反射防止光学素子100と同様にして、実施例4の反射防止光学素子を製造した。
【0066】
【表3】

【実施例5】
【0067】
光学素子本体10の光学面11と、微細凹凸構造体20との間に設ける光学薄膜50の各層の膜厚を表4に示す通りとし、被覆層30を構成する無機系の透光性材料としてSiOを用い、被覆層30の膜厚を5nmとしたこと以外は、実施例2の反射防止光学素子100と同様にして、実施例5の反射防止光学素子を製造した。
【0068】
【表4】

【実施例6】
【0069】
光学素子本体10の光学面11と、微細凹凸構造体20との間に設ける光学薄膜50の各層の膜厚を表5に示す通りとし、被覆層30を構成する無機系の透光性材料としてSiOを用い、被覆層30の膜厚を50nmとしたこと以外は、実施例2の反射防止光学素子100と同様にして、実施例6の反射防止光学素子を製造した。
【0070】
【表5】

【実施例7】
【0071】
実施例7では、光学素子本体10として、日本ゼオン社のZEONEX(登録商標)樹脂製の光学レンズを採用し、この光学レンズの表面に微細凹凸構造体20を形成した。微細凹凸構造体20の形成に際しては、この光学素子本体10の光学面11に対して、実施例2と同様にして、プラズマエッチングを行った。以上の工程により、凸部21のピッチ幅pが100nm〜200nm程度で、凸部21の高さhが150nm〜250nm程度の微細凹凸構造体20を形成した。その後、実施例2と同様にして、樹脂レンズを遊星回転させながら、電子線蒸着によりSiOを水晶膜厚計により測定したときに10nmの厚みになるまで成膜した。以上のようにして、実施例7の反射防止光学素子100を製造した。
【実施例8】
【0072】
実施例8では、樹脂製の光学素子本体10として、PMMA樹脂製の光学レンズを採用し、この光学レンズの表面に微細凹凸構造体20を形成した。微細凹凸構造体20の形成に際しては、まず、当該光学素子本体10と同一のモールド作製用本体を用意して、このモールド作製用本体の光学面11に対して、プラズマエッチングを行った。具体的には、マグネトロンスパッタリング装置を用い、PMMA樹脂の表面に、反応性直流スパッタリングによってSiターゲットに対し300WのAr/Nプラズマで約1nmのSiN膜を成膜した。また、このとき、Arガスと、Nガスとをそれぞれ流量10sccm、15sccmで流した。次に13.56MHzの高周波放電により100WのAr/Nプラズマでプラズマエッチングを約200s(秒)行った。また、このとき、Arガスと、Oガスとをそれぞれ流量10sccm、20sccmで流した。これにより、モールド作製用本体の光学面11に、凸部21のピッチ幅pが50nm〜120nm、凸部21の高さhが同じく50nm〜120nmの微細凹凸構造体20を形成した。次に、このモールド作製用本体の微細凹凸構造体20の表面に、微細凹凸形状に沿って1nmの厚さで金をスパッタリング法により成膜した。そして、金の薄膜が形成されたモールド作製用本体を用いて、ニッケル電鋳によりモールドを作成した。以上のように形成されたモールドを用いて、エンボス加工により、光学素子本体10の光学面11の表面に微細凹凸形状をインプリントし、微細凹凸構造体20を形成した。その後、微細凹凸構造体20が形成された光学素子本体10を回転基板保持台に取り付け、スパッタリングによりSiOを12.4nmの厚みになるまで成膜した。以上のようにして、実施例8の反射防止光学素子100を製造した。
【実施例9】
【0073】
光学素子本体10として、SCHOTT AG社(ショット社)製のN−BK7ガラス(nd=1.52)から成るガラスレンズを採用した。表6に示す3層(第1層〜第3層)から成る光学薄膜50を以下の手順で形成した後、当該光学薄膜50上に、PMMA樹脂から成る微細凹凸構造体20を形成した。その後、無機系の透光性材料としてSiOを成膜材料とし、下記の手順で、微細凹凸構造体20の外側を被覆層30で被覆した。具体的には、次の通り、本件発明に係る反射防止光学素子100を製造した。
【0074】
まず、光学素子本体10としてのN−BK7製のガラスレンズ上に、真空蒸着法により、第1層としてAl膜を形成した。そして、第1層の表面に、同じく真空蒸着法によりZrO+TiO膜を形成した。更に、第3層として、Al膜を第1層と同様に形成した。次いで、第3層の表面にスピンコートによりPMMA膜を形成した。そして、光学素子本体10の光学面11に第1層〜第3層から成る光学薄膜50と、PMMA膜とが形成されたガラスレンズの光学面に対して、実施例2と同様にして、プラズマエッチングを行った。以上の工程により、凸部21のピッチ幅pが50nm〜150nm程度で、凸部21の高さhが100nm〜180nm程度の微細凹凸構造体20を形成した。
【0075】
その後、微細凹凸構造体20が形成された光学面11を成膜面として、実施例2と同様にして真空蒸着によりSiOを水晶膜厚で9.6nm成膜した。以上のようにして実施例9の反射防止光学素子100を製造した。
【0076】
実施例9により製造した反射防止光学素子100の膜構成及び膜厚は以下の表6に示す通りである。
【0077】
【表6】

【比較例】
【0078】
[比較例1]
被覆層30を形成しなかったこと以外は、実施例1の反射防止光学素子100と同様にして、比較例1の反射防止光学素子を製造した。
【0079】
[比較例2]
被覆層30を形成しなかったこと以外は、実施例9の反射防止光学素子100と同様にして、比較例2の反射防止光学素子を製造した。
比較例2で製造した反射防止光学素子の膜構成及び膜厚は以下の表7に示す通りである。
【0080】
【表7】

【0081】
[評価]
1.評価方法
上記実施例及び比較例において製造した反射防止光学素子100を用いて、それぞれ、1)膜厚方向(深さ方向)における屈折率の分布及び反射率の測定、2)耐擦傷性の評価、3)耐高温高湿環境性の評価を行った。以下、具体的な評価方法を説明する。
【0082】
1)膜厚方向における屈折率の分布及び反射率の測定
各実施例及び比較例において製造した反射防止光学素子100を用いて、微細凹凸構造体20の膜厚方向における屈折率の分布を、J.A.Woollam社製の分光エリプソメーターM−2000を用いて測定した。また、波長420nm〜680nmの範囲の光を微細凹凸構造体20を介して光学素子本体10の光学面11に照射したときの、反射防止光学素子100の反射率の測定を行った。反射率の測定は、大塚電子社製の分光光度計FE−3000を用いて行った。
【0083】
2)耐擦傷製の評価
各実施例及び比較例において製造した反射防止光学素子100を用いて、微細凹凸構造体20を備える光学面11をワイパー(MX−CLOTH、CleanEra社)(以下、同じ)にメタノールを含ませて100gfで10往復させた。その後、蛍光灯下で透過および反射光線を利用して目視により、反射防止光学素子100の表面を観察して、表面のキズの有無を確認した。
【0084】
3)耐高温高湿環境性の評価
各実施例及び比較例において製造した反射防止光学素子100をそれぞれ60℃、90%の高温高湿環境下に240時間保管した後、各反射防止光学素子100の反射率を測定し、高温高湿環境に保管する前後の反射率の変化を評価した。
【0085】
2.評価結果
ここでは、実施例1及び比較例1、実施例2、実施例3、実施例4、実施例5、実施例6、実施例7、実施例8、実施例9および比較例2について、上記1)〜3)の評価結果について説明する。
【0086】
2−1.実施例1及び比較例1の評価結果
1)膜厚方向における屈折率の分布及び反射率の測定
図5に、実施例1及び比較例1で製造した反射防止光学素子100の膜厚方向における屈折率の分布を示す。図5において、横軸は光学素子本体10の光学面11からの距離を示し、縦軸は屈折率を示している(なお、図7、図8、図9、図11、図12、図14、図16、図18及び図19についても同様である)。また、図6に各反射防止光学素子100の入射光波長における反射率を示している。図6において、横軸は、微細凹凸構造体20に入射した光の波長を示し、縦軸は当該入射光の反射率を示している(なお、図6、図10、図13、図15、図17、図20及び図21についても同様である)。
【0087】
図5に示すように、各反射防止光学素子100の屈折率の分布は、略類似した分布をしている。従って、微細凹凸構造体20の外側を被覆層30で被覆した場合にも、被覆層30と、微細凹凸構造体20の凹部22との間に空隙を設けることにより、膜厚方向における屈折率の分布を維持することが可能であることが分かる。また、最表面の被覆層30の屈折率は1.38であり、SiOのバルク状態の屈折率1.46よりも低くなっている。また、実施例1の反射防止光学素子100の入射光波長420nm〜680nmの範囲における平均反射率は、0.50%であった。一方、比較例1の反射防止光学素子の上記入射光波長範囲における平均反射率は1.55%であった。以上より、微細凹凸構造体20の凹部22と被覆層30との間に空隙40を設けた状態で微細凹凸構造体20の外側を被覆層30で被覆することにより、微細凹凸構造体20の深さ方向に形成された緩やかな屈折率を維持することが可能であり、当該微細凹凸構造体20による反射防止性能を維持可能であることが確認できた。
【0088】
2)耐擦傷性の評価結果
実施例1の反射防止光学素子100については、上記ワイパーで光学面11側を擦った場合にも、その表面にキズは観察されなかった。一方、比較例1の反射防止光学素子については、表面にキズが観察された。以上より、被覆層30を設けることにより、微細凹凸構造体20を備える反射防止光学素子100の耐擦傷性を向上可能であることが確認された。
【0089】
3)耐高温高湿環境性の評価結果
実施例1の反射防止光学素子100は、高温高湿環境下で240時間保管前後において、反射率の増加は見られなかった。一方、比較例1の反射防止光学素子は、高温高湿環境下で240時間保管した後は、反射率が増加し、反射防止性能の低下が見られた。
【0090】
2−2.実施例2〜実施例6の評価結果
1)膜厚方向における屈折率の分布及び反射率の測定
図7、図8、図9、図11及び図12は、それぞれ実施例2〜実施例6で製造した反射防止光学素子100の膜厚方向における屈折率の分布を示すグラフである。また、図10及び図13は、各反射防止光学素子100の入射光波長における反射率を示したものである。
【0091】
図7、図8、図9、図11及び図12に示すように、実施例2〜実施例6の反射防止光学素子100は、入射光波長420nm〜680nmの全範囲において全て1%以下の反射率であった。また、図10及び図13に示すように、実施例2〜実施例6の上記入射光波長範囲における反射防止光学素子100の平均反射率はそれぞれ、0.12%、0.21%、0.05%、0.14%、0.17%であった。以上より、被覆層30の屈折率が1.15〜2.35、膜厚が5〜50nmである場合に、反射防止光学素子100は反射防止性能を示すことが確認できた。また、実施例2の反射防止光学素子の上記入射光波長範囲における平均反射率は実施例5、6の平均反射率より低いことから、被覆層30を適切な膜厚にすることにより反射防止光学素子100はより優れた反射防止性能を示し、被覆層30は光学特性(反射防止性能)を向上させる機能をもつことが確認できた。
【0092】
2)耐擦傷性の評価結果
実施例2〜実施例6の反射防止光学素子100についても、上記ワイパーで光学面11側を擦った場合にも、その表面にキズは観察されなかった。以上より、被覆層30を設けることにより、微細凹凸構造体20を備える反射防止光学素子100は耐擦傷性に優れることが確認された。
【0093】
3)耐高温高湿環境性の評価結果
実施例2〜実施例6の反射防止光学素子100についても、高温高湿環境下で240時間保管前後において、反射率の増加は見られなかった。
【0094】
2−3.実施例7について
1)膜厚方向における屈折率の分布及び反射率の測定
図14は、実施例7で製造した反射防止光学素子100の膜厚方向における屈折率の分布を示すグラフである。また、図15は反射防止光学素子100の入射光波長における反射率を示したものである。実施例7の反射防止光学素子100の入射光波長420nm〜680nmに対する平均反射率は、0.21%であった。
【0095】
2)耐擦傷性の評価結果
実施例7の反射防止光学素子100についても、上記ワイパーで光学面11側を擦った場合、その表面にキズは観察されなかった。
【0096】
3)耐高温高湿環境性の評価結果
実施例7の反射防止光学素子100についても、高温高湿環境下で240時間保管前後において、反射率の増加は見られなかった。
【0097】
2−4.実施例8について
1)膜厚方向における屈折率の分布及び反射率の測定
図16は、実施例7で製造した反射防止光学素子100の膜厚方向における屈折率の分布を示すグラフである。また、図17は反射防止光学素子100の入射光波長における反射率を示したものである。実施例8の反射防止光学素子100の入射光波長420nm〜680nmに対する平均反射率は、0.54%であった。
【0098】
2)耐擦傷性の評価結果
実施例8の反射防止光学素子100についても、上記ワイパーで光学面11側を擦った場合にも、その表面にキズは観察されなかった。
【0099】
3)耐高温高湿環境性の評価結果
実施例8の反射防止光学素子100についても、高温高湿環境下で240時間保管前後において、反射率の増加は見られなかった。
【0100】
2−5.実施例9および実施例10の評価結果
1)膜厚方向における屈折率の分布及び反射率の測定
図18及び図19は、それぞれ実施例9及び比較例2で製造した反射防止光学素子100の膜厚方向における屈折率の分布を示すグラフである。また、図20は各反射防止光学素子100の入射光角度0°のときの入射光波長における反射率を示したものである。さらに、図21は各反射防止光学素子100の入射光角度45°のときの入射光波長における反射率を示したものである。
【0101】
実施例9及び比較例2において、入射光波長420nm〜680nmにおける平均反射率はそれぞれ、入射光角度0°のとき0.15%、0.29%であり、入射光角度45°のとき0.56%、0.95%であった。実施例9の反射防止光学素子の上記入射光波長範囲における平均反射率は比較例2の平均反射率より低いことから、適切な膜厚の被覆層30をもつ反射防止光学素子100はより優れた反射防止性能を示し、被覆層30はその反射防止性能を向上させる機能をもつことが確認できた。
【0102】
2)耐擦傷性の評価結果
実施例9の反射防止光学素子100についても、上記ワイパーで光学面11側を擦った場合にも、その表面にキズは観察されなかった。一方、比較例2の反射防止光学素子については、表面にキズが観察された。以上より、被覆層30を設けることにより、微細凹凸構造体20を備える反射防止光学素子100の耐擦傷性を向上可能であることが確認された。
【0103】
3)耐高温高湿環境性の評価結果
実施例9の反射防止光学素子100についても、高温高湿環境下で240時間保管前後において、反射率の増加は見られなかった。一方、比較例2の反射防止光学素子は、高温高湿環境下で240時間保管した後は、反射率が増加し、反射防止性能の低下が見られた。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本件発明に係る反射防止光学素子は、微細凹凸構造体の凹部に空隙を設け、微細凹凸構造体の凸部の先端を被覆する被覆層により、微細凹凸構造体の外側を被覆する構成としたため、反射防止性能を維持または向上した上で、耐高温高湿環境性及び耐擦傷性が向上した。従って、本件発明に係る反射防止光学素子は、高温高湿環境下においても好適に用いることができ、また、手入れ等を容易にすることができるため、各種の光学素子に好適に適用することができる。
【符号の説明】
【0105】
10・・・光学素子本体
11・・・光学面
20・・・微細凹凸構造体
21・・・凸部
22・・・凹部
30・・・被覆層
40・・・空隙
50・・・光学薄膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射光の反射を抑制する微細凹凸構造体を光学素子本体の光学面に備えた反射防止光学素子であって、
当該微細凹凸構造体の外側を被覆する透光性材料から成る被覆層を備え、
当該被覆層と当該微細構造体の凹部との間に空隙が設けられた状態で、当該被覆層により当該微細凹凸構造体の凸部の先端が被覆されること、
を特徴とする反射防止光学素子。
【請求項2】
当該微細凹凸構造体は樹脂材料を用いて形成されたものであり、
当該微細凹凸構造体の凸部は、200nm以下のピッチ幅で互いに隣接している請求項1に記載の反射防止光学素子。
【請求項3】
前記被覆層の屈折率は、1.15以上2.35以下である請求項1又は請求項2に記載の反射防止光学素子。
【請求項4】
前記被覆層は、前記透光性材料を成膜材料として用い、空孔を含む前記透光性材料から成る粗状態な膜として形成されたものであって、前記透光性材料自体よりも屈折率が低い請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の反射防止光学素子。
【請求項5】
前記被覆層の膜厚は、5nm以上50nm以下である請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の反射防止光学素子。
【請求項6】
前記微細凹凸構造体は、前記光学素子本体の光学面に、単層または複数層から成る光学薄膜を介して設けられる請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の反射防止光学素子。
【請求項7】
前記被覆層は、光学素子本体をドーム回転又は遊星回転させながら前記微細凹凸構造体の凸部の先端に透光性材料を物理的気相成長法により成膜したものである請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の反射防止光学素子。
【請求項8】
入射光の反射を抑制する微細凹凸構造体を光学素子本体の光学面に備えた反射防止光学素子であって、
前記微細凹凸構造体は、前記光学素子本体の光学面に、単層または複数層から成る光学薄膜を介して設けられ、
当該微細凹凸構造体の外側を被覆する透光性材料から成る被覆層を備え、
当該被覆層と当該微細構造体の凹部との間に空隙が設けられた状態で、当該被覆層により当該微細凹凸構造体の凸部の先端が被覆されること、
を特徴とする反射防止光学素子。
【請求項9】
請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載の反射防止光学素子を製造する方法であって、
前記被覆層は、光学素子本体をドーム回転又は遊星回転させながら前記微細凹凸構造体の凸部の先端に透光性材料を物理的気相成長法により成膜すること、
を特徴とする反射防止光学素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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