説明

反射防止構造体を有する部材

【課題】その板状部に形成された開口部の内壁においても不要光の反射を防止し、迷光の発生を抑制することができ、小型の撮像光学装置に適用した場合であっても、ゴーストやフレアの発生を充分に防止することができる部材を提供すること。
【解決手段】板状部と、該板状部に形成された開口部とを備え、該開口部の内壁に、構造単位が反射を防止すべき光の最短波長よりも小さいピッチでアレイ状に配置されてなる、アスペクト比が1以上の反射防止構造体が形成された、反射防止構造体を有する部材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射防止構造体を有する部材に関する。特に本発明は、例えば光学機器の画像特性を向上させることができる反射防止構造体を有する部材に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な用途に用いられている光学素子や光学部品には、多くの場合、光の反射を防止するために、反射防止機能が求められている。図5は、一般的な撮像光学装置の構成を示す概略断面図であり、撮像光学装置50の、光軸51を含む面に沿う断面構造を示している。図5において、撮像光学装置50を構成するレンズ鏡筒52は、その内部に、光軸51上に同軸に配置された、開口絞り53、レンズ54、レンズ55及びレンズ保持部材57が装着されたレンズ56を有する。
【0003】
前記のように構成された撮像光学装置50では、不要光の反射が生じると、この不要光の反射光が迷光となる場合があり、ゴーストやフレアとなって画像品質を低下させる原因となる。そのため、レンズ54の側から入射する包括画角以上の光束や、レンズ54、55及び56の表面反射で生じる迷光といった不要光を、開口絞り53に形成された開口部53a又はレンズ保持部材57に形成された開口部57aに導き、該不要光の反射を防止するように構成されている。また近年では、より一層不要光の反射を防止するために、レンズ54、55及び56、レンズ鏡筒52、開口絞り53等の光学部品の光学機能面に、蒸着、スパッタリング、塗装等により、低屈折率層からなる単層膜や低屈折率層と高屈折率層とを積層した多層膜等の反射防止膜を形成する反射防止処理が施されている(例えば特許文献1)。
【0004】
このような反射防止膜は、蒸着やスパッタリングという一般的な方法で形成することができるので広く用いられていたが、反射防止膜の光学的膜厚を高精度に制御するためには複雑な工程が必要となるため、生産性やコスト面での改善が望まれていた。また、該反射防止膜は、波長依存性を有するため、所定の波長以外での反射防止効果は小さくなり、特に撮像光学装置において必要とされる可視光領域全域で良好な反射防止が達成されることは非常に困難である。さらに、該反射防止膜は、入射角が大きくなると反射防止効果が小さくなるという入射角依存性も有するため、波長依存性及び入射角依存性を改善し得る反射防止処理方法の開発が望まれていた。
【0005】
そこで、前記波長依存性及び入射角依存性に関する問題を改善する方法として、近年、光学素子又は光学部品における光学機能面に、反射防止構造体と呼ばれる、微細な凹凸形状の構造単位を、例えばサブミクロンのピッチで配置した構造体を形成する技術が注目を集めている。
【0006】
このような反射防止構造体を光学素子又は光学部品の光学機能面に形成すると、該光学機能面の屈折率分布が非常に滑らかに変化するようになり、凹凸形状の構造単位を配置するピッチ以上の波長の入射光は、ほとんど全て光学素子又は光学部品の内部に進入する。したがって、該光学機能面での光の反射を防止することができる。また、該反射防止構造体を光学機能面に形成した場合、入射光の入射角度が大きくなっても、反射防止効果はそれほど小さくならない。このように、光学素子又は光学部品の光学機能面に反射防止構造体を形成すれば、前記反射防止膜が有する波長依存性及び入射角依存性の問題を解決することができる。
【0007】
ところで、前記のように構成された撮像光学装置50では、各種部材の光学機能面に反射防止構造体が形成されているものの、開口絞り53における開口部53aの内壁やレンズ保持部材57における開口部57aの内壁には、該反射防止構造体は形成されていない。これは、開口絞り53及びレンズ保持部材57において、開口部53a及び開口部57aが形成される板状部の厚みが約1mm以下と非常に薄く、これら開口部53a及び開口部57aの内壁での光の反射は無視して光学設計を行っているためである。
【0008】
従来の撮像光学装置では、前記のごとき光学設計による構成であっても特に大きな問題は起こらなかった。しかしながら、近年、撮像光学装置の小型化に伴い、絞りや保持部材の開口部の内壁において入射光の屈折率が急激に変化し、表面の屈折率分布が滑らかに変化せず、若干ではあるが不要光が反射し、ゴーストやフレアが発生して画像特性が低下するといった問題が生じている。
【特許文献1】特開2001−127852号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は前記背景技術に鑑みてなされたものであり、その板状部に形成された開口部の内壁においても不要光の反射を防止し、迷光の発生を抑制することができ、小型の撮像光学装置に適用した場合であっても、ゴーストやフレアの発生を充分に防止することができる部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち本発明は、
板状部と、
前記板状部に形成された開口部とを備え、
前記開口部の内壁に、構造単位が反射を防止すべき光の最短波長よりも小さいピッチでアレイ状に配置されてなる、アスペクト比が1以上の反射防止構造体が形成された、反射防止構造体を有する部材
に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、小型の光学機器においても、不要光の反射を防止して迷光の発生を充分に抑制することができ、光路中に配置される光学素子を保持するための構成部材等として好適な部材を提供することができる。また、該部材を、光学機器の中でも特に撮像光学装置に適用することで、ゴーストやフレアが充分に抑制され、画像特性に優れた撮像光学装置を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
(第1の実施形態)
以下に、本発明の実施形態に係る反射防止構造体を有する部材について説明する。該反射防止構造体を有する部材は、例えば各種光学機器の一構成部材として適用することができる。ここでは、カメラレンズのアパーチャを例にあげて説明する。
【0013】
図1は、カメラレンズのアパーチャの構成を示す概略斜視図である。図1において、アパーチャ1は、厚みを有する板状部2と、該板状部2に形成された開口部3とを有する。
【0014】
本実施形態において、開口部3の内壁4(図1中、斜線で示した箇所)の幅は、0.03mm以上、1mm以下であることが好ましい。開口部3の内壁4の幅とは、すなわち板状部2の厚みであり、内壁4の幅が0.03mm未満である板状部2には、開口部3を形成することが困難である。また内壁4の幅が1mmを超えると、若干ではあるが迷光が生じ易くなる場合がある。したがって、本実施形態においては、開口部3の内壁4の幅は、さらには0.05mm以上、特に0.1mm以上であることが好ましく、またさらには0.7mm以下、特に0.4mm以下であることが好ましい。
【0015】
板状部2の上面、下面及び外壁(以下、これらを総称して「外表面」という)には、前記のごとき一般的な従来例と同様に、反射防止構造体が形成されている。しかしながら、本実施形態においては、板状部2の外表面だけではなく、開口部3の内壁4にも反射防止構造体が形成されている。このように反射防止構造体が形成されたアパーチャ1は、開口部3の内壁4においても、反射を防止すべき光を内部に進入させ、該反射を防止すべき光の反射を充分に抑制することができる。したがって、小型化されたカメラに該アパーチャ1を適用した場合であっても、迷光の発生を防止することができる。
【0016】
本実施形態における反射防止構造体とは、構造単位が、反射を防止すべき光の最短波長よりも小さいピッチ(例えば、以下の図2A中、pで示す)でアレイ状に配置され、該ピッチと構造単位の高さ(例えば、以下の図2A中、hで示す)との比であるアスペクト比が1以上の構造体である。このような反射防止構造体が開口部3の内壁4に形成されていることで、該内壁4における光の反射を防止することができ、迷光によるゴーストやフレアの発生を抑制することができる。本実施形態においては、反射防止構造体のアスペクト比は、2以上、さらには3以上であることが好ましい。このようなアスペクト比を有する反射防止構造体により、さらに反射防止効果を高めることができる。
【0017】
なお前記ピッチとは、反射防止構造体が、多数の構造単位が二次元的に配置された構造体である場合には、最も密な配置方向におけるピッチを意味する。
【0018】
また反射防止構造体とは、勿論、不要光である反射を防止すべき光の反射を防止するための構造体であるが、本実施形態においては、反射を防止すべき光の反射を、完全に防止する態様だけではなく、迷光によるゴーストやフレアの発生を充分に抑制し得る程度まで低減させる態様も含まれる。
【0019】
反射防止構造体としては、例えば、図2Aに示す円錐形状の構造単位を有する反射防止構造体6a、図2Bに示す角錐形状の構造単位を有する反射防止構造体6b、図2C及び図2Dに示す釣鐘形状の構造単位を有する反射防止構造体6c及び6d、図2Eに示す先端部が平坦化された円錐台形状の構造単位を有する反射防止構造体6e、図2Fに示す先端部が平坦化された角錐台形状の構造単位を有する反射防止構造体6f等があげられる。これらの中でも、反射防止効果が特に優れるという点から、円錐形状や角錐形状の錐形状の構造単位を有する反射防止構造体が好ましい。ただし、各構造単位は、円錐形状や角錐形状の錐形状、釣鐘形状、円錐台形状や角錐台形状の錐台形状といった厳密な幾何学的形状でなくてもよく、実質、錐形状、釣鐘形状、錐台形状等であればよい。
【0020】
さらに前記図2A〜2Fでは、突出形状の構造単位を有する反射防止構造体を示しているが、本実施形態においては、このような突出形状の構造単位に限定されることはない。例えば平面に、錐形状、釣鐘形状、錐台形状等の陥没形状の構造単位が、反射を防止すべき光の最短波長よりも小さいピッチでアレイ状に配置された反射防止構造体を用いることも可能である。また突出形状の構造単位と陥没形状の構造単位とが1つの反射防止構造体中に同時に存在していてもよい。なお、かかる突出形状の構造単位と陥没形状の構造単位とが同時に存在した反射防止構造体の場合、その突出部の高さと陥没部の深さとの合計を、構造単位の高さという。
【0021】
アパーチャ1の外表面及び開口部3の内壁4に反射防止構造体を形成する方法には特に限定がない。例えば、X線リソグラフィにより反射防止構造体を直接形成する方法、電子線描画法(以下、「EB描画法」という)により反射防止構造体を形成する方法、所望の反射防止構造体とは反対形状を有する成形型を用いる成形加工方法等を、単独で又は複数組み合わせて行うことができる。なお成形型としては、ガラス材料で形成された型、電鋳処理により形成された型、金型等を用いることができる。
【0022】
以下に、反射防止構造体を有する部材を安価でかつ大量に製造し得る方法の一例について説明する。まず、石英ガラス基板等の基板にEB描画法などにより所望のパターンを描画し、該基板にドライエッチングなどの加工処理を施すことにより、予め反射防止構造体と同一形状に精密加工された高精度のマスター型を形成する。次に、得られたマスター型を用いて、加熱軟化したガラス材料をプレス成形し、所望の反射防止構造体とは反対形状を有する成形型を作製する。そして、該成形型を用い、例えば黒色樹脂といった黒色材料等から形成された材料にプレス成形を行うことにより、該材料に所望の形状の反射防止構造体を形成する。
【0023】
また、反射防止構造体を形成するための部材が熱可塑性樹脂からなる部材であれば、次のような方法も有効である。まず、エッチング、X線リソグラフィ、フォトリソグラフィ等を適宜組み合わせ、アルミニウムや真鍮等の金属で、所望の反射防止構造体とは反対形状を有する成形型を作製する。次に、該成形型を加熱して熱可塑性樹脂からなる部材に押圧し、該部材に反射防止構造体を形成することができる。
【0024】
さらに、アパーチャ1の外表面及び開口部3の内壁4に反射防止構造体を形成する方法として、前記方法の他に、可撓性を有するシート部材に形成された反射防止構造体を、外表面及び内壁4に貼付する方法もあげられる。反射防止構造体を形成するためのシート部材が、顔料、染料等によって黒色に着色された熱可塑性樹脂からなるシート部材であると、該シート部材が光の吸収体として作用するのでより好ましい。また、反射防止構造体自体が黒色材料にて形成されている場合は、シート部材が透明であっても、前記と同様に光の吸収体として作用する。
【0025】
なお、前記図1を用いた説明では、例えば光学機器の構成部材として、円形の板状部2に円形の開口部3が形成されたカメラレンズのアパーチャ1を例にあげたが、反射防止構造体を有する部材を構成する板状部2の形状は、円形に限定されるものではなく、矩形、多角形等であってもよい。また、開口部3の形状も円形に限定されるものではなく、楕円形、矩形等であってもよい。さらに、開口部3は板状部2に対して垂直に形成されており、板状部2の厚みと開口部3の内壁4の幅とが同じ値となるように形成されていたが、開口部3は、板状部2に対して傾斜を有して形成されていてもよい。このように、本実施形態に係る反射防止構造体を有する部材とは、少なくとも、板状部2と、板状部2に形成された開口部3とを備えた部材であればよく、例えば、板状部2に側壁が形成された円筒形状の部材や、板状部2に円錐面又は円盤形状の側壁が形成された部材等も適用することができる。
【0026】
本実施形態に係る反射防止構造体を有する部材として、具体的には、前記アパーチャの他に、光束の少なくとも一部を遮蔽するように構成された遮光部材、光学系の明るさの指標であるFナンバーを調整する開口絞り、レンズに装着して使用するレンズ保持部材、撮像光学系の迷光を防ぐために配置される迷光防止部材、撮像光学系の軸外光束のフレアをカットするためのフレアカット絞り等があげられる。これらは、光学機器、特に撮像光学装置の構成部材として好適に使用することができる。
【0027】
以上のように、本実施形態によると、前記各種部材の板状部に形成された開口部の内壁に反射防止構造体を形成することで、高い反射防止効果が発現され、これにより、小型化された光学機器であっても、反射を防止すべき光の反射が充分に抑制され、迷光の発生が防止され得る。したがって、本実施形態に係る反射防止構造体を有する部材は、各種光学機器において、光路中に配置される光学素子を保持するための構成部材等として好適に使用することができる。また、該反射防止構造体を有する部材を、光学機器の中でも特に撮像光学装置に適用することで、ゴーストやフレアが充分に抑制され、画像特性に優れた撮像光学装置を実現することができる。
【0028】
また、本実施形態において、反射防止構造体を有する部材に高い遮光性及び光吸収性が要求される場合には、該部材を黒色材料にて形成することが好ましい。黒色材料にて形成された部材は、不要光を吸収することができるので、該不要光の発生自体を充分に抑制することができ、より一層、迷光の発生を防止することができる。該黒色材料としては、例えば、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂等の樹脂に、シアン、マゼンタ、イエロー等の色素を混ぜて得られる染料やカーボンブラック等の顔料を配合した材料を好適に使用することができる。
【0029】
以下に、本実施形態を具体例に基づいてさらに説明する。図3は、本実施形態に係る開口絞りの構成を示す概略斜視図である。図3において、開口絞り7は、板状部8と、所望のFナンバーとなるように該板状部8に形成された円形開口部9とを有する。ここで、円形開口部9の直径は3mmであり、内壁10(図3中、斜線で示した箇所)の幅は0.25mmである。開口絞り7を構成する円環状の板状部8は、黒色材料にて形成されている。ここでは、黒色材料として、ポリカーボネート系樹脂に黒色染料(有本化学工業(株)製、商品名:Plast Black 8950)を配合した材料を用いた。
【0030】
また、板状部8の外表面及び円形開口部9の内壁10には、高さ150nmの円錐形状を有する構造単位がピッチ150nmでアレイ状に配置されてなる反射防止構造体が形成されている。該反射防止構造体は、入射光として可視光を用いた場合、該可視光の波長領域(400〜700nm)よりも小さいピッチで、該ピッチの1倍以上の高さを有する構造単位がアレイ状に配置された反射防止構造体に相当する。このように円形開口部9の内壁10に反射防止機能及び光吸収機能を付与したことにより、内壁10で、不要光が反射して生じる迷光が著しく低減される。
【0031】
図4は、本実施形態に係るレンズ保持部材の構成を示す概略斜視図である。図4において、レンズ保持部材11は、板状部12と、該板状部12に形成された円形開口部13と、該板状部12の外周に形成された側壁部15とを有する。円形開口部13は、撮像に必要な光束を遮蔽することのない範囲で、迷光発生の要因となる光束のみを遮蔽するための開口部であり、直径は2mm、内壁14(図4中、斜線で示した箇所)の幅は0.25mmである。また、レンズ保持部材11は、前記開口絞り7と同様の黒色材料にて形成されている。
【0032】
板状部12の外表面、側壁部15の内面及び外面、並びに円形開口部13の内壁14には、高さ150nmの円錐形状を有する構造単位がピッチ150nmでアレイ状に配置されてなる反射防止構造体が形成されている。該反射防止構造体は、入射光として可視光を用いた場合、該可視光の波長領域(400〜700nm)よりも小さいピッチで、該ピッチの1倍以上の高さを有する構造単位がアレイ状に配置された反射防止構造体に相当する。このように円形開口部13の内壁14に反射防止機能及び光吸収機能を付与したことにより、内壁14で、不要光が反射して生じる迷光が著しく低減される。
【0033】
前記のごとき開口絞り7及びレンズ保持部材11を、図5に示す撮像光学装置50において、開口絞り53及びレンズ保持部材57に替えて適用したところ、レンズ54の側から入射した包括画角以上の光束や、レンズ54、55及び56の表面反射で発生した迷光は、開口絞り7の内壁10やレンズ保持部材11の内壁14に形成された反射防止構造体によって効率よく吸収されており、ゴーストやフレアといった顕著な画像劣化は認められず、コントラストの良好な撮像光学装置を実現することができた。
【0034】
なお、前記説明では、開口絞り7及びレンズ保持部材11を、熱可塑性樹脂に黒色染料を配合した黒色材料にて形成した例をあげたが、該黒色染料の替わりに、熱可塑性樹脂にカーボンブラック等の黒色顔料を配合した黒色材料を用いても同様の効果が得られる。
【0035】
また、前記説明では、入射光として可視光を用いた場合を想定して前記ピッチで構造単位を配置し、開口絞り7の内壁10及びレンズ保持部材11の内壁14に反射防止構造体を形成した。しかしながら、入射光として、可視光の他に、紫外光(波長領域:150〜400nm)、近赤外光(波長領域:700nm〜2μm)及び遠赤外光(波長領域:2〜13μm)を用いた場合を想定し、構造単位を配置するピッチを設定することも可能である。この場合、構造単位を配置するピッチは、それぞれの光の最短波長よりも小さいピッチとなるように設定される。またこの場合も、反射防止構造体のアスペクト比は1以上であり、2以上、さらには3以上であることが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明の反射防止構造体を有する部材は、各種光学機器、特に例えばデジタルカメラ、プリンタ等の撮像光学装置に用いられる、光路中の光線に対する反射防止処理が必要な開口部を有する構成部材として広く適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施形態に係るアパーチャの構成を示す概略斜視図
【図2A】本発明の実施形態に係る、円錐形状の構造単位を有する反射防止構造体の構成を示す概略斜視図
【図2B】本発明の実施形態に係る、角錐形状の構造単位を有する反射防止構造体の構成を示す概略斜視図
【図2C】本発明の実施形態に係る、釣鐘形状の構造単位を有する反射防止構造体の構成を示す概略斜視図
【図2D】本発明の実施形態に係る、釣鐘形状の構造単位を有する反射防止構造体の構成を示す概略斜視図
【図2E】本発明の実施形態に係る、円錐台形状の構造単位を有する反射防止構造体の構成を示す概略斜視図
【図2F】本発明の実施形態に係る、角錐台形状の構造単位を有する反射防止構造体の構成を示す概略斜視図
【図3】本発明の実施形態に係る開口絞りの構成を示す概略斜視図
【図4】本発明の実施形態に係るレンズ保持部材の構成を示す概略斜視図
【図5】一般的な撮像光学装置の構成を示す概略断面図
【符号の説明】
【0038】
1 アパーチャ
2 板状部
3 開口部
4 内壁
6a〜6f 反射防止構造体
7 開口絞り
8 板状部
9 円形開口部
10 内壁
11 レンズ保持部材
12 板状部
13 円形開口部
14 内壁
15 側壁部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状部と、
前記板状部に形成された開口部とを備え、
前記開口部の内壁に、構造単位が反射を防止すべき光の最短波長よりも小さいピッチでアレイ状に配置されてなる、アスペクト比が1以上の反射防止構造体が形成された、反射防止構造体を有する部材。
【請求項2】
内壁の幅が0.03〜1mmである、請求項1に記載の反射防止構造体を有する部材。
【請求項3】
開口部が円形である、請求項1に記載の反射防止構造体を有する部材。
【請求項4】
構造単位が錐形状である、請求項1に記載の反射防止構造体を有する部材。
【請求項5】
板状部が黒色材料にて形成されている、請求項1に記載の反射防止構造体を有する部材。
【請求項6】
黒色材料が、染料又は顔料にて着色された材料である、請求項5に記載の反射防止構造体を有する部材。
【請求項7】
光学機器の構成部材である、請求項1に記載の反射防止構造体を有する部材。
【請求項8】
光学機器が撮像光学装置であり、
構成部材が、アパーチャ、遮光部材、開口絞り、レンズ保持部材、迷光防止部材及びフレアカット絞りの少なくとも1つである、請求項7に記載の反射防止構造体を有する部材。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図2E】
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【図2F】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−285223(P2006−285223A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−62902(P2006−62902)
【出願日】平成18年3月8日(2006.3.8)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】