説明

反射防止膜とその製造方法

【課題】表面に微小空孔を形成することにより表面反射を抑制した反射防止膜を提供する。
【解決手段】溶媒に不溶の有機樹脂材料中に溶媒に可溶性を有するナノサイズの無機材料微粒子を分散させて複合材料を形成するステップ(S105)と、複合材料を光学デバイス表面に膜状に形成するステップ(S106)と、膜状に形成された複合材料を溶媒に浸漬して無機材料微粒子を溶解除去し、微小空孔が形成された反射防止膜を形成するステップ(S109)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射防止膜とその製造方法に関し、特に、樹脂材料中に分散された無機微粒子を溶媒により溶解し、無機微粒子が除去されて形成された微小空孔により優れた反射抑制作用を利用した反射防止膜に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、低屈折率物質を等価的に形成する方法として多孔性シリカ膜を用いることが知られている。例を挙げると、多孔性のシリカ中の空孔率を高めることで実質的に屈折率を低下させフレネル反射率を低減化する構成が特許文献1に開示されている。
【0003】
また、高分子樹脂材料の溶液を流延ベルト上でキャスティングする際に結露させ、有機溶媒と水の沸点の差を用いて多孔性のハニカム構造を付与する構成が特許文献2に開示されている。
【0004】
また、ポリマー材料に空孔形成の鋳型になるテンプレート剤と重合反応開始剤を混ぜたものを基板に塗布後硬化させ、テンプレート剤を有機溶媒で溶解除去し、実質的に屈折率を低下させてフレネル反射率を低減させる構成が特許文献3に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−15309号公報
【特許文献2】特開2006−70254号公報
【特許文献3】特開2006−69207号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に開示された多孔性シリカ膜を形成する際、密着性確保のためには基板の事前洗浄と表面処理が必要であることに加え、50〜2000nmの成膜厚みでは基本的に平板状の基板に塗布する工程が必要であり、厚みの制御が困難であるという問題があった。
【0007】
また、上記特許文献2に開示されたキャスティングによる多孔性のハニカム構造の形成方法は、脱溶媒処理が必要なため厚いフィルムの生産性に限界がある、また溶媒回収工程が必要など設備が大型化するという問題があった。
【0008】
また、上記特許文献3に開示された構成では、鋳型として用いるテンプレート剤の凝集を避けながらナノポア構造のポリマー膜の重合を進めるため、それぞれの材料の粘度、重量比などのパラメータに制約があり適用可能な材料が限られるという問題があった。
【0009】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、少なくとも表面に微小空孔を形成することにより表面反射を抑制した反射防止膜とその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的を達成するために、本発明の反射防止膜は、所定の波長以上の光反射を抑制する光学デバイス表面に形成された反射防止膜であって、有機樹脂材料と、有機樹脂材料中に分散させた無機材料微粒子を溶媒により溶解除去して形成したナノサイズの微小空孔とを備えている。
【0011】
また、本発明の反射防止膜の製造方法は、所定の波長以上の光反射を抑制する反射防止膜の製造方法であって、溶媒に不溶の有機樹脂材料中に溶媒に可溶性を有するナノサイズの無機材料微粒子を分散させて複合材料を形成するステップと、複合材料を光学デバイス表面に膜状に形成するステップと、膜状に形成された複合材料を溶媒に浸漬して無機材料微粒子を溶解除去し、微小空孔が形成された反射防止膜を形成するステップとを備えている。
【0012】
これらの構成により、膜表面に光の波長以下の大きさの複数の微小空孔が形成されるので、優れた表面反射を抑制し、同時に有機樹脂材料の屈折率と空孔率によって決まる膜の等価屈折率を低下させ、より反射抑制効果に優れた反射防止膜を実現することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、光の反射が少ない反射防止膜を安価に、容易に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態1、2、3における基板上に形成された反射防止膜を有する光学デバイスの断面図である。
【図2】同反射防止膜の前駆体である膜状複合材料の部分拡大断面図である。
【図3】図2に示す膜状複合材料を反射防止膜として形成した場合の部分拡大断面図である。
【図4】本発明の実施の形態1、2、3における反射防止膜の製造方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、実施の形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
【0016】
(実施の形態1)
実施の形態1における反射防止膜およびその製造方法について、図1、図2、図3および図4を用いて説明する。
【0017】
図1は実施の形態1における基板101上に形成された反射防止膜110を有する光学デバイス100の断面図、図2は反射防止膜110の前駆体である膜状複合材料102の部分拡大断面図、図3は図2に示す膜状複合材料102を反射防止膜110として形成した場合の部分拡大断面図、図4は実施の形態1における反射防止膜110の製造方法を示すフローチャートである。
【0018】
図1に示すように、反射防止膜110はガラス等の光学材料などの基板101上に積層形成されている。
【0019】
実施の形態1においては、反射防止膜110の前駆体となる有機樹脂材料103と無機材料微粒子104とが複合化された膜状複合材料102では、有機樹脂材料103として溶媒としての水に不溶のアクリル系樹脂を用い、溶媒である水に可溶性を有する無機材料微粒子104として、平均粒子径が100nmで可視光の短波長側の波長400nmの1/3以下に微粒化された塩化ナトリウムを用いている。
【0020】
図4を用いて、光学デバイス100の基板101に、反射防止膜110を形成する製造方法について説明する。図4に示すように、有機樹脂材料103と無機材料微粒子104とを準備する(ステップS101、ステップS102)。このとき、無機材料微粒子104の粒径としては、平均粒子径が100nmであり、可視光の短波長側波長400nmの1/3以下の粒径となるようにしている。
【0021】
次に、この塩化ナトリウムの無機材料微粒子104を有機樹脂材料103であるアクリル系樹脂に対して可溶性を有する有機溶媒液に添加して分散させ、無機材料微粒子分散有機溶媒液を準備する(ステップS103)。
【0022】
続いて、有機樹脂材料103を無機材料微粒子分散有機溶媒液に添加する(ステップS104)。有機溶媒が有機樹脂材料103を溶解するので、十分に撹拌することにより、有機樹脂材料103と無機材料微粒子104とが均一に混合され、液状のままで複合材料化される(ステップS105)。
【0023】
液状の複合材料の粘度を調整した上で、スプレー法、あるいはスピンコート法、または浸漬法により光学デバイス100の基板101の表面上に塗布する(ステップS106)。その後、有機溶媒を揮発飛散させて除去することで、光学デバイス100の基板101の表面に固化して図2に示すような構造の膜状複合材料102が形成される(ステップS107)。
【0024】
この後、膜状複合材料102を溶媒である水に浸漬し、有機樹脂材料103中にある塩化ナトリウムからなる無機材料微粒子104を溶解、除去する(ステップS108)。この結果、少なくとも表面には、無機材料微粒子104が除去されて、微小空孔105が形成された反射防止膜110を完成させることができる(ステップS108)。
【0025】
したがって、反射防止膜110は、その表面に波長以下の大きさで微小空孔105が形成された構造を有するため、表面反射を抑制して反射防止効果を発現することができる。なお、図3には、反射防止膜110の表面について示しているが、溶媒である水の浸透によって反射防止膜110の内部にも微小空孔105が形成される。その結果、有機樹脂材料103単体の屈折率よりも小さな等価屈折率を発現し、反射防止膜110の反射抑制効果をさらに高めることができる。
【0026】
さらに、実施の形態1では無機材料微粒子104の平均粒子径を可視光の短波長側波長400nmの1/3以下としている。そのため、反射防止膜110の微小空孔105の径は、可視光の短波長側波長よりも小さな径となり、可視光の表面反射を十分に抑制することができる。
【0027】
すなわち、実施の形態1における反射防止膜とその製造方法によれば、反射防止膜表面に形成された微細な微小空孔によって表面反射を抑えている。さらに、有機樹脂材料の屈折率と空孔率によって決まる膜の等価屈折率を、空孔率を増加させて有機樹脂材料単体の場合よりも低下させている。それらの結果として、可視光反射を抑制した反射防止膜を実現することができる。
【0028】
なお、上述の説明では、溶媒に可溶性を有するナノサイズの無機材料微粒子104として、塩化ナトリウムを例に挙げて説明したが、これに限定されることはなく、塩化ナトリウムに代えて塩化カリウム、臭化カリウム等の塩を用いても同様にして反射防止膜110を得ることができる。
【0029】
また、溶媒として水を例に挙げて説明したが、水に代えて無機材料微粒子104に対して可溶性を有する各種の酸を用いることもできる。
【0030】
また、図4のステップS103におけるアクリル系樹脂材料に対しては可溶で無機材料微粒子に対しては不溶な有機溶媒としてはアセトン、クロロホルム等を利用できる。
【0031】
以上説明したように、本発明によれば、アクリル樹脂中に分散させたナノサイズの塩化ナトリウムのような無機材料微粒子を溶媒の水や酸等で溶解して除去することで、波長以下の所定のピッチを有する複数の微小空孔が形成されているので、優れた反射抑制効果を有する反射防止膜を得ることができる。
【0032】
(実施の形態2)
実施の形態2における反射防止膜およびその製造方法について、図1、図2、図3および図4を用いて説明する。なお、実施の形態2における反射防止膜およびその製造方法が実施の形態1と異なるのは、有機樹脂材料の材料組成と、無機材料微粒子の材料組成とが異なるのみである。そのため、実施の形態1と同様の図1〜図4を用いて説明する。
【0033】
すなわち、図1は実施の形態2における基板201上に形成された反射防止膜210を有する光学デバイス200の断面図、図2は反射防止膜210の前駆体である膜状複合材料202の部分拡大断面図、図3は図2に示す膜状複合材料202を反射防止膜210として形成した場合の部分拡大断面図、図4は実施の形態2における反射防止膜210の製造方法を示すフローチャートである。
【0034】
図1に示すように、反射防止膜210はガラス等の光学材料などの基板201上に積層形成されている。
【0035】
実施の形態2においては、反射防止膜210の前駆体となる有機樹脂材料203と無機材料微粒子204とが複合化された膜状複合材料202では、有機樹脂材料203として酸である溶媒に不溶のシクロオレフィンポリマー系樹脂を用いている。そして、溶媒である酸に可溶性を有する無機材料微粒子104として、平均粒子径が40nmで可視光の短波長側の波長400nmの1/10以下に微粒化されたフッ化マグネシウムを用いている。
【0036】
図4を用いて、光学デバイス200の基板201に、反射防止膜210を形成する製造方法について説明する。図4に示すように、有機樹脂材料203と無機材料微粒子204とを準備する(ステップS101、ステップS102)。このとき、無機材料微粒子204の粒径としては、平均粒子径が40nmであり、可視光の短波長側波長400nmの1/10以下の粒径となるようにしている。
【0037】
次に、このフッ化マグネシウムの無機材料微粒子204を有機樹脂材料203であるシクロオレフィンポリマー系樹脂に対して可溶性を有する有機溶媒液に添加して分散させ、無機材料微粒子分散有機溶媒液を準備する(ステップS103)。
【0038】
続いて、有機樹脂材料203を無機材料微粒子分散有機溶媒液に添加する(ステップS104)。有機溶媒が有機樹脂材料203を溶解するので、十分に撹拌することにより、有機樹脂材料203と無機材料微粒子204とが均一に混合され、液状のままで複合材料化される(ステップS105)。
【0039】
液状の複合材料の粘度を調整した上で、スプレー法、あるいはスピンコート法、または浸漬法により光学デバイス200の基板201の表面上に塗布する(ステップS106)。その後、有機溶媒を揮発飛散させて除去することで、光学デバイス200の基板201の表面に固化して図2に示すような構造の膜状複合材料202が形成される(ステップS107)。
【0040】
この後、膜状複合材料202を溶媒である硝酸水溶液に浸漬し、有機樹脂材料203中にあるフッ化マグネシウムからなる無機材料微粒子204を溶解、除去する(ステップS108)。この結果、少なくとも表面には、無機材料微粒子204が除去されて、微小空孔205が形成された反射防止膜210を完成させることができる(ステップS108)。
【0041】
したがって、反射防止膜210は、その表面に波長以下の大きさで微小空孔205が形成された構造を有するため、表面反射を抑制して反射防止効果を発現することができる。なお、図3には、反射防止膜210の表面について示しているが、溶媒である硝酸水溶液の浸透によって反射防止膜210の内部にも微小空孔205が形成される。その結果、有機樹脂材料203単体の屈折率よりも小さな等価屈折率を発現し、反射防止膜210の反射抑制効果をさらに高めることができる。
【0042】
さらに、実施の形態2では無機材料微粒子204の平均粒子径を可視光の短波長側波長400nmの1/10以下としている。そのため、反射防止膜210への斜入射に対する反射をより抑制し、可視光の表面反射を十分に抑制することができる。
【0043】
なお、上述の説明では、溶媒に可溶性を有するナノサイズの無機材料微粒子204として、フッ化マグネシウムを例に挙げて説明したが、これに限定されることはなく、フッ化マグネシウムに代えてフッ化カルシウムを用いても同様に反射防止膜210を得ることができる。フッ化カルシウムを無機材料微粒子204として用いる場合は、溶媒として硝酸のような酸に代えて水を用いることもできる。
【0044】
また、シクロオレフィンポリマー系樹脂材料に対しては可溶で無機材料微粒子に対しては不溶な有機溶媒としてシクロヘキサン等を利用できる。
【0045】
(実施の形態3)
実施の形態3における反射防止膜およびその製造方法について、図1、図2、図3および図4を用いて説明する。なお、実施の形態3における反射防止膜およびその製造方法が実施の形態1および実施の形態2と異なるのは、有機樹脂材料の材料組成と、無機材料微粒子の材料組成とが異なるのみである。そのため、実施の形態1と同様の図1〜図4を用いて説明する。
【0046】
すなわち、図1は実施の形態3における基板301上に形成された反射防止膜310を有する光学デバイス300の断面図、図2は反射防止膜310の前駆体である膜状複合材料302の部分拡大断面図、図3は図2に示す膜状複合材料302を反射防止膜310として形成した場合の部分拡大断面図、図4は実施の形態3における反射防止膜310の製造方法を示すフローチャートである。
【0047】
図1に示すように、反射防止膜310はガラス等の光学材料などの基板301上に積層形成されている。
【0048】
実施の形態3においては、反射防止膜310の前駆体となる有機樹脂材料303と無機材料微粒子304とが複合化された膜状複合材料302では、有機樹脂材料303として酸である溶媒に不溶のポリスチレン樹脂を用いている。そして、溶媒である酸に可溶性を有する無機材料微粒子304として、平均粒子径が10nmで可視光の短波長側の波長400nmの1/30以下に微粒化されたアルミニウムを用いている。
【0049】
図4を用いて、光学デバイス300の基板301に、反射防止膜310を形成する製造方法について説明する。図4に示すように、有機樹脂材料303と無機材料微粒子304とを準備する(ステップS101、ステップS102)。このとき、無機材料微粒子304の粒径としては、平均粒子径が10nmであり、可視光の短波長側波長400nmの1/30以下の粒径となるようにしている。
【0050】
次に、このアルミニウムの無機材料微粒子304を有機樹脂材料303であるポリスチレン樹脂に対して可溶性を有する有機溶媒液に添加して分散させ、無機材料微粒子分散有機溶媒液を準備する(ステップS103)。
【0051】
続いて、有機樹脂材料303を無機材料微粒子分散有機溶媒液に添加する(ステップS104)。有機溶媒が有機樹脂材料303を溶解するので、十分に撹拌することにより、有機樹脂材料303と無機材料微粒子304とが均一に混合され、液状のままで複合材料化される(ステップS105)。
【0052】
液状の複合材料の粘度を調整した上で、スプレー法、あるいはスピンコート法、または浸漬法により光学デバイス300の基板301の表面上に塗布する(ステップS106)。その後、有機溶媒を揮発飛散させて除去することで、光学デバイス300の基板301の表面に固化して図2に示すような構造の膜状複合材料302が形成される(ステップS107)。
【0053】
この後、膜状複合材料302を溶媒である塩酸水溶液に浸漬し、有機樹脂材料303中にあるアルミニウムからなる無機材料微粒子304を溶解、除去する(ステップS108)。この結果、少なくとも表面には、無機材料微粒子304が除去されて、微小空孔305が形成された反射防止膜310を完成させることができる(ステップS108)。
【0054】
したがって、反射防止膜310は、その表面に波長以下の大きさで微小空孔305が形成された構造を有するため、表面反射を抑制して反射防止効果を発現することができる。なお、図3には、反射防止膜310の表面について示しているが、溶媒である塩酸水溶液の浸透によって反射防止膜310の内部にも微小空孔305が形成される。その結果、有機樹脂材料303単体の屈折率よりも小さな等価屈折率を発現し、反射防止膜310の反射抑制効果をさらに高めることができる。
【0055】
さらに、実施の形態3では、無機材料微粒子304の平均粒子径を所定の波長の1/30以下としている。そのため、反射防止膜310への斜入射に対する反射をより一層抑制すると共に、無機材料微粒子304を溶解した後の微小空孔305により散乱を抑制することができる。
【0056】
なお、上述の説明では、溶媒に可溶性を有するナノサイズの無機材料微粒子304として、アルミニウムを例に挙げて説明したが、これに限定されることはなく、アルミニウムに代えて鉄、銅、亜鉛等の金属でも同様にして反射防止膜310を得ることができる。
【0057】
ただし、無機材料微粒子304として鉄、銅、亜鉛等の金属を用いる場合は、塩酸に代えてそれぞれに最適な酸を溶媒として用いる必要がある。
【0058】
また、ポリスチレン樹脂材料に対しては可溶で無機材料微粒子に対しては不溶な有機溶媒としてベンジン、トルエン等を利用できる。
【0059】
以上説明したように、本発明によれば、ポリスチレン樹脂中に分散させたナノサイズのアルミニウムのような無機材料微粒子を溶媒の水や酸等で溶解して除去することで、波長以下の所定のピッチを有する複数の微小空孔が形成されているので、優れた反射抑制効果を有する反射防止膜を得ることができる。
【0060】
なお、上述した実施の形態1、2、3においては、樹脂材料として、それぞれ、アクリル樹脂、シクロオレフィンポリマー系樹脂、ポリスチレン樹脂を例に挙げ、これらの材料が光学的に略透明であることとして説明した。したがって、光学的に透明であることによって、反射防止膜をレンズやプリズムなどの光学デバイスに形成したり、プラズマ表示素子や液晶表示素子などの素子表面に形成することができる。その結果、外光の反射を低減し、フレアや迷光の少ないコントラストの良好な画像を実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明における反射防止膜およびその製造方法によれば、可視光反射を十分に抑制した反射防止膜を実現し、レンズやプリズムなどの光学デバイス、プラズマ表示素子や液晶表示素子などの画像表示装置などに有用である。
【符号の説明】
【0062】
100,200,300 光学デバイス
101,201,301 基板
102,202,302 膜状複合材料
103,203,303 有機樹脂材料
104,204,304 無機材料微粒子
105,205,305 微小空孔
110,210,310 反射防止膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の波長以上の光反射を抑制する光学デバイス表面に形成された反射防止膜であって、有機樹脂材料と、前記有機樹脂材料中に分散させた無機材料微粒子を溶媒により溶解除去して形成したナノサイズの微小空孔とを備えたことを特徴とする反射防止膜。
【請求項2】
前記微小空孔のサイズが100nm以下であることを特徴とする請求項1に記載の反射防止膜。
【請求項3】
所定の波長以上の光反射を抑制する反射防止膜の製造方法であって、溶媒に不溶の有機樹脂材料中に前記溶媒に可溶性を有するナノサイズの無機材料微粒子を分散させて複合材料を形成するステップと、前記複合材料を光学デバイス表面に膜状に形成するステップと、膜状に形成された前記複合材料を前記溶媒に浸漬して前記無機材料微粒子を溶解除去し、微小空孔が形成された反射防止膜を形成するステップとを備えたことを特徴とする反射防止膜の製造方法。
【請求項4】
前記無機材料微粒子が金属塩であることを特徴とする請求項3に記載の反射防止膜の製造方法。
【請求項5】
前記無機材料微粒子がフッ化物であることを特徴とする請求項3に記載の反射防止膜の製造方法。
【請求項6】
前記無機材料微粒子が金属であることを特徴とする請求項3に記載の反射防止膜の製造方法。
【請求項7】
前記有機樹脂材料中に分散させる前記無機材料微粒子の平均粒子径が100nm以下であることを特徴とする請求項3に記載の反射防止膜の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−59550(P2011−59550A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−211393(P2009−211393)
【出願日】平成21年9月14日(2009.9.14)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】