反射防止部材、反射防止部材の製造方法、電気光学装置、電子機器
【課題】反射防止性能と防塵性能を有する反射防止部材を提供する。
【解決手段】透光性を有する基材面に形成され、頂部が平坦面を有する凸部と、前記凸部の前記平坦面上に形成された防塵層と、を有する錐体を複数備えた。
【解決手段】透光性を有する基材面に形成され、頂部が平坦面を有する凸部と、前記凸部の前記平坦面上に形成された防塵層と、を有する錐体を複数備えた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、反射防止部材、反射防止部材の製造方法、電気光学装置及び電子機器に関する。
【背景技術】
【０００２】
例えば、液晶ディスプレイ等の電気光学装置の表面における光の反射を防止する部材として、モスアイ（ｍｏｔｈ‐ｅｙｅ、蛾の目）構造を有する反射防止部材が知られている。このモスアイ構造は、微細な錐形状の連続パターンからなる凹凸面を有するものであり、光線の入射角依存性が小さく、広い波長帯域に亘って良好な反射防止効果を発揮することができる（例えば、特許文献１参照）。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００３】
【特許文献１】特開２００４−２８７２３８号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００４】
しかしながら、このようなモスアイ構造を有する反射防止部材が適用された電気光学装置では、その表面に塵や埃等が付着すると、光の透過率が低減し、光学特性が低下してしまう、という課題があった。
【課題を解決するための手段】
【０００５】
本発明は、上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【０００６】
［適用例１］本適用例にかかる反射防止部材は、透光性を有する基材面に形成され、頂部に平坦面を有する凸部と、前記凸部の前記平坦面上に形成された防塵層と、を有する錐体を複数備えたことを特徴とする。
【０００７】
この構成によれば、基材の凸部による反射防止機能と、凸部上に形成された防塵層による防塵機能と、を得ることができる。すなわち、反射防止部材は、反射防止部分と、防塵部分とを兼ね備えたハイブリッド構造を有している。これにより、長期に亘って光学特性を得ることができる。さらに、指や物体が錐体の表面に触れたとしても、凸部上に形成された防塵層がバリア層となって凸部が保護される。従って、取り扱い性を向上させることができる。
【０００８】
［適用例２］上記適用例にかかる反射防止部材の前記防塵層は、尖端形状を有していることを特徴とする。
【０００９】
この構成によれば、容易に空気から錐体に入射する光の屈折率変化が抑えられるので、さらに、反射防止効果を向上させることができる。さらに、表面積が小さくなるため、表面エネルギーが低減され、さらに、防塵効果を向上させることができる。
【００１０】
［適用例３］上記適用例にかかる反射防止部材では、前記凸部の前記平坦面と前記防塵層との間に密着層を備えたことを特徴とする。
【００１１】
この構成によれば、密着層によって凸部と防塵層との密着性が向上し、長期に亘って信頼性を維持することができる。
【００１２】
［適用例４］上記適用例にかかる反射防止部材では、前記基材の底面から前記凸部の前記平坦面までの厚みが均一であることを特徴とする。
【００１３】
この構成によれば、基材に対する光の入射タイミングが均一化され、光学特性を向上させることができる。また、基材の底面から凸部の平坦面までの厚みを等しくすれば、屈折率が低い材料で形成された防塵層の場合では、防塵層の厚みについて厳格な精度が不要になるので、錐体における防塵層の形成を容易に行うことができる。
【００１４】
［適用例５］上記適用例にかかる反射防止部材では、前記平坦面の側断面視における長さが、前記錐体のピッチ長の５分の１以下であることを特徴とする。
【００１５】
この構成によれば、反射防止性能を保持することができる。
【００１６】
［適用例６］本適用例にかかる反射防止部材の製造方法は、複数の錐体を備えた反射防止部材の製造方法であって、基材に向けて成形型を加圧し、前記基材に、頂部が平坦面を有する凸部を形成する凸部形成工程と、前記平坦面上に防塵層を形成する防塵層形成工程と、を含むことを特徴とする。
【００１７】
この構成によれば、成形型の加圧によって、基材に凸部が形成される。そして、凸部の頂部の平坦面に防塵層が形成されることにより、錐体が形成される。この複数の錐体により、反射防止機能を得ることができる。また、凸部の頂部、すなわち、錐体の先端部分は、防塵層であるから、防塵機能により長期に亘って光学特性を得ることができる。さらに、指や物体が錐体の表面に触れたとしても、凸部上に形成された防塵層により、凸部が保護される。従って、取り扱い性を向上させることができる。
【００１８】
［適用例７］本適用例にかかる電気光学装置は、上記の反射防止部材、または、上記の反射防止部材の製造方法によって製造された反射防止部材を備えたことを特徴とする。
【００１９】
この構成によれば、光学特性に優れ、反射防止性能と防塵性能に優れた電気光学装置を提供できる。この場合の電気光学装置としては、例えば、ＬＣＤ（液晶ディスプレイ）、ＯＬＥＤ（有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ）、ＥＰＤ（電気泳動ディスプレイ）、ＰＤＰ（プラズマディスプレイ）等が挙げられる。
【００２０】
［適用例８］本適用例にかかる電子機器は、上記の電気光学装置を搭載したことを特徴とする。
【００２１】
この構成によれば、光学特性に優れ、反射防止性能と防塵性能に優れた電子機器を提供できる。この場合の電子機器としては、例えば、プロジェクター、携帯端末機、パーソナルコンピューター、テレビ受像機等が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【００２２】
【図１】反射防止部材の構成を示す概略図。
【図２】反射防止部材の製造方法を示す工程図。
【図３】電気光学装置としての液晶ディスプレイの構成を示す断面図。
【図４】電子機器としての携帯電話機の構成を示す斜視図。
【図５】変形例における反射防止部材の構成を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【００２３】
以下、本発明を具体化した実施形態について図面に従って説明する。なお、各図面における各部材は、各図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各部材ごとに縮小を異ならせて図示している。
【００２４】
（反射防止部材の構成）
まず、反射防止部材の構成について説明する。図１は、反射防止部材の構成を示す概略図である。図１に示すように、反射防止部材１は、透光性を有する基材１１の面に形成され、頂部が平坦面１２ａを有する凸部１２と、凸部１２の平坦面１２ａ上に形成された防塵層１５と、を有する錐体１０を複数備えている。本実施形態における錐体１０は、四角錐形状を有し、断面が三角形である。そして、反射防止部材１は、複数の錐体１０が連なって形成され、表面が凹凸形状（モスアイ構造）を有している。
【００２５】
基材１１は、熱可塑性または熱硬化性の光透過性樹脂を適用することができる。これらの樹脂は、例えば、ポリメチルメタアクリレート（ＰＭＭＡ）等の材料で構成されている。そして、基材１１は、側面視において台形形状の凸部１２を有している。その台形形状の上底に相当する部分（凸部１２の頂部）に、平坦面１２ａが形成されている。また、基材１１の底面から凸部１２の平坦面１２ａまでの厚み（Ｔ）が均一に形成されている。反射防止機能を均一化させるためである。
【００２６】
防塵層１５は、塵や埃の付着を防止するために設けられた層であり、表面エネルギーが低い材料が用いられ、例えば、フッ素系材料が用いられる。そして、本実施形態における防塵層１５は、尖端形状を有している。すなわち、先端に向かって尖っている。これにより、先端部分の表面積が狭くなるとともに、表面エネルギーが減少するため、防塵効果をより高めることができる。
【００２７】
錐体１０間のピッチＰは、反射防止を行う光の波長よりも短く、およそ１００〜５００ｎｍであり、高さＨは、およそ１００〜５００ｎｍである。また、平坦面１２ａの側断面視における長さＬが、錐体１０のピッチＰの長さの５分の１以下である。このような微細の錐体１０は、光学的には、微細の錐体１０における屈折率が表面から基材１１に向かって連続的に変化した場合と同様に作用する。即ち、表面から基材１１への屈折率の変化は、微細の錐体１０の高さにおける外部の媒質（通常は空気）と基材１１の混ざり方で決定される。例えば、錐体１０の先端部付近では殆ど空気の屈折率であるが、基材１１側に行くに従い基材の屈折率に漸次接近する連続的な屈折率変化を示す。その結果、視角による色変化が少ない極めて良好な反射防止機能を有するとともに、錐体１０の頂部には、防塵層１５が設けられているため、防塵機能も有する。
【００２８】
（反射防止部材の製造方法）
次に、反射防止部材の製造方法について説明する。図２は、反射防止部材の製造方法を示す工程図である。本実施形態における反射防止部材の製造方法は、複数の錐体を備えた反射防止部材の製造方法であって、基材に向けて成形型を加圧し、基材に、頂部が平坦面を有する凸部を形成する凸部形成工程と、平坦面上に防塵層を形成する防塵層形成工程と、を含むものである。以下、具体的に説明する。
【００２９】
まず、凸部形成工程では、図２（ａ）に示すように、基材１１ａと、錐体１０における基材１１の表面形状に対応した成形型２０と、を対向させ、図２（ｂ）に示すように、基材１１ａに対して成形型２０を加圧する。そうすると成形型２０の形状が、基材１１ａに転写され、基材１１には、頂部に平坦面１２ａを有する凸部１２が形成される。
【００３０】
次に、防塵層形成工程では、基材１１の平坦面１２ａ上に防塵層を形成する。本実施形態では、斜方蒸着によって、基材１１の平坦面１２ａ上にフッ素系材料を成膜する。これにより、図２（ｃ）に示すように、基材１１の平坦面１２ａ上に防塵層１５が形成される。
【００３１】
以上のようにして、基材１１に形成された凸部１２と、凸部１２の頂部の平坦面１２ａ上に形成された防塵層１５と、を有する複数の錐体１０で構成された反射防止部材１が形成される。
【００３２】
（電気光学装置の構成）
次に、電気光学装置の構成について説明する。図３は、電気光学装置としての液晶ディスプレイの構成を示す断面図である。図３に示すように、液晶ディスプレイ１００は、液晶層１２０と、液晶層１２０の下部に、下側ガラス基板１２２を介して配置された下側偏光板１２４と、液晶層１２０の上部に、上側ガラス基板１２６を介して配置された上側偏光板１２８と、を備えている。また、液晶層１２０両側のガラス基板１２２，１２６間には図示しない配向膜を挟んで画素電極１３０と対向電極１３２とがそれぞれ設けられている。
【００３３】
そして、上側偏光板１２８上には、反射防止部材１が配置されている。反射防止部材１では、上記したように、複数の微細な錐体１０が連続パターンを成している。このため、液晶ディスプレイ１００の表面の空気と上側偏光板１２８との間に屈折率が大きく異なる界面が存在しなくなるため、液晶ディスプレイ１００の表面の光の反射が抑えられ、反射による表示機能の低下が防止される。さらに、反射防止部材１の錐体１０の表面には、防塵層１５が形成されているため、塵や埃の付着が防止され、長期間に亘って光学特性を維持することができる。
【００３４】
（電子機器の構成）
次に、電子機器の構成について説明する。図４は、電子機器としての携帯電話機の構成を示す斜視図である。図４に示すように、携帯電話機２００は、上記した液晶ディスプレイ１００を含む表示部２０１と、複数の操作ボタン２０２と、受話口２０３と、及び送話口２０４等を備えている。これにより、信頼性に優れ、高品質な表示が可能な表示部２０１を具備した携帯電話機２００を提供することができる。
【００３５】
従って、上記実施形態によれば、以下に示す効果がある。
【００３６】
錐体１０は、凸部１２と防塵層１５とで構成される。これにより、容易に、反射防止機能と防塵機能とを発揮させることができる。また、凸部１２は、平坦面１２ａを有しており、先端部を尖らせる必要がない。このため、成形型２０で簡単に均一の凸形状を形成することができる。また、錐体１０の先端部は防塵層１５が形成され、硬度が向上する。従って、指や物体が錐体１０に接触した場合では、損傷しにくくなり、取り扱い性を向上させることができる。
【００３７】
なお、上記の実施形態に限定されるものではなく、以下のような変形例が挙げられる。
【００３８】
（変形例）上記の実施形態では、基材１１の凸部１２の平坦面１２ａ上に防塵層１５を形成したが、これに限定されず、例えば、図５に示すように、基材１１の凸部１２の平坦面１２ａと防塵層１５との間に密着層１４を備えてもよい。この場合、密着層１４の材料としては、例えば、ＴＭＡ（トリメチルアルミナ）等を適用することができる。このようにすれば、基材１１と防塵層１５との密着性が向上するため、長期信頼性を確保することができる。
【符号の説明】
【００３９】
１…反射防止部材、１０…錐体、１１…基材、１１ａ…基材、１２…凸部、１２ａ…平坦面、１４…密着層、１５…防塵層、２０…成形型、１００…電気光学装置としての液晶ディスプレイ、２００…電子機器としての携帯電話機。
【技術分野】
【０００１】
本発明は、反射防止部材、反射防止部材の製造方法、電気光学装置及び電子機器に関する。
【背景技術】
【０００２】
例えば、液晶ディスプレイ等の電気光学装置の表面における光の反射を防止する部材として、モスアイ（ｍｏｔｈ‐ｅｙｅ、蛾の目）構造を有する反射防止部材が知られている。このモスアイ構造は、微細な錐形状の連続パターンからなる凹凸面を有するものであり、光線の入射角依存性が小さく、広い波長帯域に亘って良好な反射防止効果を発揮することができる（例えば、特許文献１参照）。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００３】
【特許文献１】特開２００４−２８７２３８号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００４】
しかしながら、このようなモスアイ構造を有する反射防止部材が適用された電気光学装置では、その表面に塵や埃等が付着すると、光の透過率が低減し、光学特性が低下してしまう、という課題があった。
【課題を解決するための手段】
【０００５】
本発明は、上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【０００６】
［適用例１］本適用例にかかる反射防止部材は、透光性を有する基材面に形成され、頂部に平坦面を有する凸部と、前記凸部の前記平坦面上に形成された防塵層と、を有する錐体を複数備えたことを特徴とする。
【０００７】
この構成によれば、基材の凸部による反射防止機能と、凸部上に形成された防塵層による防塵機能と、を得ることができる。すなわち、反射防止部材は、反射防止部分と、防塵部分とを兼ね備えたハイブリッド構造を有している。これにより、長期に亘って光学特性を得ることができる。さらに、指や物体が錐体の表面に触れたとしても、凸部上に形成された防塵層がバリア層となって凸部が保護される。従って、取り扱い性を向上させることができる。
【０００８】
［適用例２］上記適用例にかかる反射防止部材の前記防塵層は、尖端形状を有していることを特徴とする。
【０００９】
この構成によれば、容易に空気から錐体に入射する光の屈折率変化が抑えられるので、さらに、反射防止効果を向上させることができる。さらに、表面積が小さくなるため、表面エネルギーが低減され、さらに、防塵効果を向上させることができる。
【００１０】
［適用例３］上記適用例にかかる反射防止部材では、前記凸部の前記平坦面と前記防塵層との間に密着層を備えたことを特徴とする。
【００１１】
この構成によれば、密着層によって凸部と防塵層との密着性が向上し、長期に亘って信頼性を維持することができる。
【００１２】
［適用例４］上記適用例にかかる反射防止部材では、前記基材の底面から前記凸部の前記平坦面までの厚みが均一であることを特徴とする。
【００１３】
この構成によれば、基材に対する光の入射タイミングが均一化され、光学特性を向上させることができる。また、基材の底面から凸部の平坦面までの厚みを等しくすれば、屈折率が低い材料で形成された防塵層の場合では、防塵層の厚みについて厳格な精度が不要になるので、錐体における防塵層の形成を容易に行うことができる。
【００１４】
［適用例５］上記適用例にかかる反射防止部材では、前記平坦面の側断面視における長さが、前記錐体のピッチ長の５分の１以下であることを特徴とする。
【００１５】
この構成によれば、反射防止性能を保持することができる。
【００１６】
［適用例６］本適用例にかかる反射防止部材の製造方法は、複数の錐体を備えた反射防止部材の製造方法であって、基材に向けて成形型を加圧し、前記基材に、頂部が平坦面を有する凸部を形成する凸部形成工程と、前記平坦面上に防塵層を形成する防塵層形成工程と、を含むことを特徴とする。
【００１７】
この構成によれば、成形型の加圧によって、基材に凸部が形成される。そして、凸部の頂部の平坦面に防塵層が形成されることにより、錐体が形成される。この複数の錐体により、反射防止機能を得ることができる。また、凸部の頂部、すなわち、錐体の先端部分は、防塵層であるから、防塵機能により長期に亘って光学特性を得ることができる。さらに、指や物体が錐体の表面に触れたとしても、凸部上に形成された防塵層により、凸部が保護される。従って、取り扱い性を向上させることができる。
【００１８】
［適用例７］本適用例にかかる電気光学装置は、上記の反射防止部材、または、上記の反射防止部材の製造方法によって製造された反射防止部材を備えたことを特徴とする。
【００１９】
この構成によれば、光学特性に優れ、反射防止性能と防塵性能に優れた電気光学装置を提供できる。この場合の電気光学装置としては、例えば、ＬＣＤ（液晶ディスプレイ）、ＯＬＥＤ（有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ）、ＥＰＤ（電気泳動ディスプレイ）、ＰＤＰ（プラズマディスプレイ）等が挙げられる。
【００２０】
［適用例８］本適用例にかかる電子機器は、上記の電気光学装置を搭載したことを特徴とする。
【００２１】
この構成によれば、光学特性に優れ、反射防止性能と防塵性能に優れた電子機器を提供できる。この場合の電子機器としては、例えば、プロジェクター、携帯端末機、パーソナルコンピューター、テレビ受像機等が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【００２２】
【図１】反射防止部材の構成を示す概略図。
【図２】反射防止部材の製造方法を示す工程図。
【図３】電気光学装置としての液晶ディスプレイの構成を示す断面図。
【図４】電子機器としての携帯電話機の構成を示す斜視図。
【図５】変形例における反射防止部材の構成を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【００２３】
以下、本発明を具体化した実施形態について図面に従って説明する。なお、各図面における各部材は、各図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各部材ごとに縮小を異ならせて図示している。
【００２４】
（反射防止部材の構成）
まず、反射防止部材の構成について説明する。図１は、反射防止部材の構成を示す概略図である。図１に示すように、反射防止部材１は、透光性を有する基材１１の面に形成され、頂部が平坦面１２ａを有する凸部１２と、凸部１２の平坦面１２ａ上に形成された防塵層１５と、を有する錐体１０を複数備えている。本実施形態における錐体１０は、四角錐形状を有し、断面が三角形である。そして、反射防止部材１は、複数の錐体１０が連なって形成され、表面が凹凸形状（モスアイ構造）を有している。
【００２５】
基材１１は、熱可塑性または熱硬化性の光透過性樹脂を適用することができる。これらの樹脂は、例えば、ポリメチルメタアクリレート（ＰＭＭＡ）等の材料で構成されている。そして、基材１１は、側面視において台形形状の凸部１２を有している。その台形形状の上底に相当する部分（凸部１２の頂部）に、平坦面１２ａが形成されている。また、基材１１の底面から凸部１２の平坦面１２ａまでの厚み（Ｔ）が均一に形成されている。反射防止機能を均一化させるためである。
【００２６】
防塵層１５は、塵や埃の付着を防止するために設けられた層であり、表面エネルギーが低い材料が用いられ、例えば、フッ素系材料が用いられる。そして、本実施形態における防塵層１５は、尖端形状を有している。すなわち、先端に向かって尖っている。これにより、先端部分の表面積が狭くなるとともに、表面エネルギーが減少するため、防塵効果をより高めることができる。
【００２７】
錐体１０間のピッチＰは、反射防止を行う光の波長よりも短く、およそ１００〜５００ｎｍであり、高さＨは、およそ１００〜５００ｎｍである。また、平坦面１２ａの側断面視における長さＬが、錐体１０のピッチＰの長さの５分の１以下である。このような微細の錐体１０は、光学的には、微細の錐体１０における屈折率が表面から基材１１に向かって連続的に変化した場合と同様に作用する。即ち、表面から基材１１への屈折率の変化は、微細の錐体１０の高さにおける外部の媒質（通常は空気）と基材１１の混ざり方で決定される。例えば、錐体１０の先端部付近では殆ど空気の屈折率であるが、基材１１側に行くに従い基材の屈折率に漸次接近する連続的な屈折率変化を示す。その結果、視角による色変化が少ない極めて良好な反射防止機能を有するとともに、錐体１０の頂部には、防塵層１５が設けられているため、防塵機能も有する。
【００２８】
（反射防止部材の製造方法）
次に、反射防止部材の製造方法について説明する。図２は、反射防止部材の製造方法を示す工程図である。本実施形態における反射防止部材の製造方法は、複数の錐体を備えた反射防止部材の製造方法であって、基材に向けて成形型を加圧し、基材に、頂部が平坦面を有する凸部を形成する凸部形成工程と、平坦面上に防塵層を形成する防塵層形成工程と、を含むものである。以下、具体的に説明する。
【００２９】
まず、凸部形成工程では、図２（ａ）に示すように、基材１１ａと、錐体１０における基材１１の表面形状に対応した成形型２０と、を対向させ、図２（ｂ）に示すように、基材１１ａに対して成形型２０を加圧する。そうすると成形型２０の形状が、基材１１ａに転写され、基材１１には、頂部に平坦面１２ａを有する凸部１２が形成される。
【００３０】
次に、防塵層形成工程では、基材１１の平坦面１２ａ上に防塵層を形成する。本実施形態では、斜方蒸着によって、基材１１の平坦面１２ａ上にフッ素系材料を成膜する。これにより、図２（ｃ）に示すように、基材１１の平坦面１２ａ上に防塵層１５が形成される。
【００３１】
以上のようにして、基材１１に形成された凸部１２と、凸部１２の頂部の平坦面１２ａ上に形成された防塵層１５と、を有する複数の錐体１０で構成された反射防止部材１が形成される。
【００３２】
（電気光学装置の構成）
次に、電気光学装置の構成について説明する。図３は、電気光学装置としての液晶ディスプレイの構成を示す断面図である。図３に示すように、液晶ディスプレイ１００は、液晶層１２０と、液晶層１２０の下部に、下側ガラス基板１２２を介して配置された下側偏光板１２４と、液晶層１２０の上部に、上側ガラス基板１２６を介して配置された上側偏光板１２８と、を備えている。また、液晶層１２０両側のガラス基板１２２，１２６間には図示しない配向膜を挟んで画素電極１３０と対向電極１３２とがそれぞれ設けられている。
【００３３】
そして、上側偏光板１２８上には、反射防止部材１が配置されている。反射防止部材１では、上記したように、複数の微細な錐体１０が連続パターンを成している。このため、液晶ディスプレイ１００の表面の空気と上側偏光板１２８との間に屈折率が大きく異なる界面が存在しなくなるため、液晶ディスプレイ１００の表面の光の反射が抑えられ、反射による表示機能の低下が防止される。さらに、反射防止部材１の錐体１０の表面には、防塵層１５が形成されているため、塵や埃の付着が防止され、長期間に亘って光学特性を維持することができる。
【００３４】
（電子機器の構成）
次に、電子機器の構成について説明する。図４は、電子機器としての携帯電話機の構成を示す斜視図である。図４に示すように、携帯電話機２００は、上記した液晶ディスプレイ１００を含む表示部２０１と、複数の操作ボタン２０２と、受話口２０３と、及び送話口２０４等を備えている。これにより、信頼性に優れ、高品質な表示が可能な表示部２０１を具備した携帯電話機２００を提供することができる。
【００３５】
従って、上記実施形態によれば、以下に示す効果がある。
【００３６】
錐体１０は、凸部１２と防塵層１５とで構成される。これにより、容易に、反射防止機能と防塵機能とを発揮させることができる。また、凸部１２は、平坦面１２ａを有しており、先端部を尖らせる必要がない。このため、成形型２０で簡単に均一の凸形状を形成することができる。また、錐体１０の先端部は防塵層１５が形成され、硬度が向上する。従って、指や物体が錐体１０に接触した場合では、損傷しにくくなり、取り扱い性を向上させることができる。
【００３７】
なお、上記の実施形態に限定されるものではなく、以下のような変形例が挙げられる。
【００３８】
（変形例）上記の実施形態では、基材１１の凸部１２の平坦面１２ａ上に防塵層１５を形成したが、これに限定されず、例えば、図５に示すように、基材１１の凸部１２の平坦面１２ａと防塵層１５との間に密着層１４を備えてもよい。この場合、密着層１４の材料としては、例えば、ＴＭＡ（トリメチルアルミナ）等を適用することができる。このようにすれば、基材１１と防塵層１５との密着性が向上するため、長期信頼性を確保することができる。
【符号の説明】
【００３９】
１…反射防止部材、１０…錐体、１１…基材、１１ａ…基材、１２…凸部、１２ａ…平坦面、１４…密着層、１５…防塵層、２０…成形型、１００…電気光学装置としての液晶ディスプレイ、２００…電子機器としての携帯電話機。
【特許請求の範囲】
【請求項１】
透光性を有する基材面に形成され、頂部に平坦面を有する凸部と、
前記凸部の前記平坦面上に形成された防塵層と、を有する錐体を複数備えたことを特徴とする反射防止部材。
【請求項２】
請求項１に記載の反射防止部材において、
前記防塵層は、尖端形状を有していることを特徴とする反射防止部材。
【請求項３】
請求項１または２に記載の反射防止部材において、
前記凸部の前記平坦面と前記防塵層との間に密着層を備えたことを特徴とする反射防止部材。
【請求項４】
請求項１〜３のいずれか一項に記載の反射防止部材において、
前記基材の底面から前記凸部の前記平坦面までの厚みが均一であることを特徴とする反射防止部材。
【請求項５】
請求項１〜４のいずれか一項に記載の反射防止部材において、
前記平坦面の側断面視における長さが、前記錐体のピッチ長の５分の１以下であることを特徴とする反射防止部材。
【請求項６】
複数の錐体を備えた反射防止部材の製造方法であって、
基材に向けて成形型を加圧し、前記基材に、頂部が平坦面を有する凸部を形成する凸部形成工程と、
前記平坦面上に防塵層を形成する防塵層形成工程と、を含むことを特徴とする反射防止部材の製造方法。
【請求項７】
請求項１〜５のいずれか一項に記載の反射防止部材、または、請求項６に記載の反射防止部材の製造方法によって製造された反射防止部材を備えた電気光学装置。
【請求項８】
請求項７に記載の電気光学装置を搭載した電子機器。
【請求項１】
透光性を有する基材面に形成され、頂部に平坦面を有する凸部と、
前記凸部の前記平坦面上に形成された防塵層と、を有する錐体を複数備えたことを特徴とする反射防止部材。
【請求項２】
請求項１に記載の反射防止部材において、
前記防塵層は、尖端形状を有していることを特徴とする反射防止部材。
【請求項３】
請求項１または２に記載の反射防止部材において、
前記凸部の前記平坦面と前記防塵層との間に密着層を備えたことを特徴とする反射防止部材。
【請求項４】
請求項１〜３のいずれか一項に記載の反射防止部材において、
前記基材の底面から前記凸部の前記平坦面までの厚みが均一であることを特徴とする反射防止部材。
【請求項５】
請求項１〜４のいずれか一項に記載の反射防止部材において、
前記平坦面の側断面視における長さが、前記錐体のピッチ長の５分の１以下であることを特徴とする反射防止部材。
【請求項６】
複数の錐体を備えた反射防止部材の製造方法であって、
基材に向けて成形型を加圧し、前記基材に、頂部が平坦面を有する凸部を形成する凸部形成工程と、
前記平坦面上に防塵層を形成する防塵層形成工程と、を含むことを特徴とする反射防止部材の製造方法。
【請求項７】
請求項１〜５のいずれか一項に記載の反射防止部材、または、請求項６に記載の反射防止部材の製造方法によって製造された反射防止部材を備えた電気光学装置。
【請求項８】
請求項７に記載の電気光学装置を搭載した電子機器。
【図１】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【公開番号】特開２０１１−２２１２７３（Ｐ２０１１−２２１２７３Ａ）
【公開日】平成２３年１１月４日（２０１１．１１．４）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２０１０−９０１６６（Ｐ２０１０−９０１６６）
【出願日】平成２２年４月９日（２０１０．４．９）
【出願人】（０００００２３６９）セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２３年１１月４日（２０１１．１１．４）
【国際特許分類】
【出願日】平成２２年４月９日（２０１０．４．９）
【出願人】（０００００２３６９）セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Ｆターム（参考）】
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