説明

反応制御方法

【課題】圧力容器の耐圧力を高く設計する必要を無くし、低コスト化でき、充填率を向上できるとともに、反応の条件に柔軟に対応できる反応制御方法を提供する。
【解決手段】圧力容器110のガス排出路111に背圧弁V2を有する反応装置100を用いた反応制御方法であって、背圧弁V2の設定値を反応時に圧力容器110内で維持したい圧力に設定する工程と、圧力容器110に原料を供給する工程と、背圧弁V2を機能させ、圧力容器内の圧力を設定値以下に維持しつつ、反応を進行させる工程とを含む。これにより、圧力容器110の耐圧力を高く設計する必要を無くし、装置を低コスト化できる。また、圧力が一定に決まることから、圧力容器110内の原料の充填率を向上できる。また、圧力容器110とは別個に排出路側に背圧弁V2を設けることで反応の条件に応じた強度の圧力容器110を用い条件に柔軟に対応できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力容器のガス排出路に背圧弁を有する反応装置を用いた反応制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、反応ガスが発生する反応をさせる場合に圧力容器を用いて、閉ざされた空間で反応させる方法が知られている(たとえば特許文献1参照)。特許文献1記載の水素ガス発生方法は、簡単な設備(圧力容器)と容易に入手可能な材料(金属及びアルカリ)とにより効率的に高圧の水素ガスを発生させている。このような方法では、圧力容器に許容限度を超えて負担をかけないように発生するガスや溶媒の蒸気圧等分圧を考慮して原材料の投入量を決定している。
【0003】
一方、反応容器の中には、そのガス排出路に背圧弁を有するものが知られている(たとえば特許文献2参照)。特許文献2記載の金属フッ化物の製造方法は、無水フッ化水素酸および無水金属を反応容器に導入し、金属フッ化物生成物を得ている。そして反応後に、発生したガス状生成物を、自動調節ガス背圧弁を介して排出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−210591号公報
【特許文献2】特表2006−504617号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の特許文献1や特許文献2記載のような方法では、圧力と温度が圧力容器のスペックを決める大きな要因となっており、不必要に圧力容器を強靱に製作する必要が生じる。このように過大な圧力と反応温度を想定する必要が生じると、圧力容器の肉厚等を厚く見積もることで、コストが高くなる。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、圧力容器の耐圧力を高く設計する必要を無くし、低コスト化でき、充填率を向上するとともに、反応の条件に柔軟に対応できる反応制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)上記の目的を達成するため、本発明の反応制御方法は、圧力容器のガス排出路に背圧弁を有する反応装置を用いた反応制御方法であって、背圧弁の設定値を反応時に圧力容器内で維持したい圧力に設定する工程と、前記圧力容器に原料を供給する工程と、前記背圧弁により、前記圧力容器内の圧力を設定値以下に維持しつつ、反応を進行させる工程とを含むことを特徴としている。
【0008】
これにより、圧力容器内の圧力が一定以下に維持され、圧力容器の耐圧力を高く設計する必要を無くし、反応装置を低コスト化できる。また、圧力が一定に決まることから、圧力容器内の原料の充填率を向上できる。
【0009】
(2)また、本発明の圧力制御方法は、前記背圧弁の設定値を前記圧力容器の耐圧力に応じて決まる値に設定することを特徴としている。これにより、圧力容器の耐圧力に応じて背圧弁で維持しようとする値を設定し、効率的に反応を進行させることができる。
【0010】
(3)また、本発明の圧力制御方法は、前記背圧弁の設定値を、8MPa以上に設定し、前記圧力容器に、原料としてアンモニアおよび金属カルシウムを供給し、100℃付近の温度で反応を進行させることを特徴としている。このように設定することで、アンモニアを溶媒として用いた金属カルシウムとの反応において、十分な速度で効率的に反応を進行させることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、圧力容器の耐圧力を高く設計する必要を無くし、低コスト化でき、充填率を向上できるとともに、反応の条件に柔軟に対応できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に用いられる反応装置の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。
【0014】
(反応装置)
図1は、反応装置100の構成を示す模式図である。反応装置100は、ガスの発生を伴う反応を進行させる際に用いられる。図1に示すように、反応装置100は、圧力容器110、導入弁V1、ガス排出路111、背圧弁V2、バイパス112、バイパス弁V3、除害部150により構成されている。
【0015】
圧力容器110は、内部を密閉可能な容器であり、内部の温度と圧力を制御し、ガスの発生を伴う反応を進行させる。導入弁V1の開閉により、圧力容器110には原料を導入可能となっている。ガスの発生を伴う反応には、たとえばアンモニアを溶媒として用いた金属カルシウムとの反応が挙げられる。この場合には、水素とアンモニアの混合ガスが発生する。
【0016】
ガス排出路111は、圧力容器110に接続し、圧力容器110内で反応により発生したガスを排出する。背圧弁V2は、圧力容器110のガス排出路111に設けられ、用いる圧力容器110に応じて背圧弁V2で維持しようとする値を設定できる。たとえば圧力容器110側の圧力を8MPa等の設定値に維持可能である。
【0017】
アンモニアと金属カルシウムとの反応の場合、アンモニアは約100℃、8MPaで溶媒(液体)として存在でき、発生するガスの分圧分、圧力容器110の耐圧力を高く設計する必要が無くなる。このように、背圧弁V2により、圧力容器110内部の圧力が常に一定以下となるため、圧力容器110への原料充填量を容器容量いっぱいに取ることができる。その結果、圧力容器110のスペックを下げ、原料の充填率を最大にすることができる。
【0018】
その場合、反応ガスにより8MPaを超えた排ガスは、ガス排出路111、背圧弁V2を通って除害部150へ流入する。バイパス112は、背圧弁V2を機能させている間はバイパス弁V3を閉じて用いられず、圧力容器110に残ったガスを排出する際に用いられる。排出されたガスは、除害部150へ流入する。
【0019】
除害部150は、背圧弁V2のガス排出側に設けられ、発生したガスを除害処理する。なお、除害部150は有害なガスを処理するものであり、有害なガスが発生しない場合には必要ない。そのような場合には、そのままガスを外部に放出してもよい。
【0020】
(反応制御方法)
次に、反応装置100を用いた反応制御方法の一例として、アンモニアと金属カルシウムとの反応に反応装置100を用いた場合を説明する。まず、背圧弁V2の設定値を反応時に圧力容器110内で維持したい圧力に設定する。背圧弁V2について、圧力容器110の内部の圧力の設定値は、8MPaに限定されないが、設定値は8MPa以上に設定されていることが好ましい。このように設定することで、アンモニアを溶媒として用いた金属カルシウムとの反応において、100℃付近の温度で十分な速度で反応を進行させることができる。
【0021】
次に、金属カルシウムを圧力容器110内に供給し、導入弁V1を開けて原料のアンモニアを圧力容器110に導入する。このとき、バイパス弁V3は閉じておく。そして、圧力容器110において、アンモニアを溶媒として用い、金属カルシウムと反応させる。その結果として水素とアンモニアの混合ガスが発生する。
【0022】
反応時には、背圧弁V2は、圧力容器110内の圧力を設定値以下に維持する。なお、圧力容器110の耐圧力に応じて背圧弁V2で維持しようとする値に設定し、効率的に反応を進行させることができる。反応終了後、残った残ガスは除害部150へ送る。なお、原料は、導入弁V1を介さずに圧力容器110の蓋を開けて投入してもよい。
【0023】
(実施例)
上記のような反応装置100を用いて実験を行った。まず、背圧弁V2を閉じた状態(機能させない状態)で、圧力容器110の内部に金属カルシウムを設置し、アンモニアを導入した。そして、100℃、2時間でアンモニアと金属カルシウムとを反応させた。このとき、圧力容器110内の圧力を測定したところ、12MPaまで上昇した。したがって、背圧弁V2を機能させない場合には、高い耐圧力を有する圧力容器110が必要になることが分かった。
【0024】
また、背圧弁V2を8MPaに設定し、上記と同様の条件で圧力容器110の内部に金属カルシウムを設置し、アンモニアを導入した。そして、100℃でアンモニアと金属カルシウムとを反応させた。その際、背圧弁V2を用いて圧力容器110内の圧力を8MPa以下に維持し2時間運転した。発生した水素とアンモニアとの混合ガスは除害部150に流入させて処理した。この実験の結果、8MPaを超える程度の耐圧力を有する圧力容器110を用いれば十分であることが実証された。
【符号の説明】
【0025】
100 反応装置
110 圧力容器
111 ガス排出路
112 バイパス
150 除害部
V1 導入弁
V2 背圧弁
V3 バイパス弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧力容器のガス排出路に背圧弁を有する反応装置を用いた反応制御方法であって、
背圧弁の設定値を反応時に圧力容器内で維持したい圧力に設定する工程と、
前記圧力容器に原料を供給する工程と、
前記背圧弁により、前記圧力容器内の圧力を設定値以下に維持しつつ、反応を進行させる工程とを含むことを特徴とする反応制御方法。
【請求項2】
前記背圧弁の設定値を前記圧力容器の耐圧力に応じて決まる値に設定することを特徴とする請求項1記載の反応制御方法。
【請求項3】
前記背圧弁の設定値を、8MPa以上に設定し、
前記圧力容器に、原料としてアンモニアおよび金属カルシウムを供給し、
100℃付近の温度で反応を進行させることを特徴とする請求項1記載の反応制御方法。

【図1】
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