説明

反応性ホットメルト接着剤組成物

【課題】 建築内装ラッピング部材の接着性、表面平滑性に優れた反応性ホットメルト接着剤を提供する。
【解決手段】 ポリオールとポリイソシアネートを反応させて得られるイソシアネート末端ポリウレタンプレポリマーに特定の表面調整効果のある表面調整剤を接着剤の総重量に対して、0.003〜0.25重量%含む反応性ホットメルト接着剤組成物。表面調整剤がアクリル系重合体、シリコーン系界面活性剤、消泡剤のいずれかであると好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築内装ラッピング部材の接着性、表面平滑性に優れる反応性ホットメルト接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
建築内装ラッピング材とは、木材や集成材、パーティクルボード、MDF(中密度繊維板;木質繊維を接着剤で固めたもの)を基材としてその表面に、木目調などの印刷やシボ加工等を施したプラスチックシート、フィルムを被覆、接着した材料である。これは、印刷や加工条件により、様々な意匠に対応できるため内装材として広く使われている。
通常、建築内装ラッピング部材は、化粧シートと平面部、曲面部、凹凸部、角部等を有する基材を、2液溶剤型ウレタン系接着剤や反応性ホットメルト接着剤(例えば特許文献1参照)にて、貼り合せて構成されている。
【特許文献1】特開平11−71565号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、通常の2液溶剤型ウレタン系接着剤を用いた接着では、基材の凹凸を拾い易く、透明、又は半透明色の化粧シート、或いは、表面光沢性を有する化粧シートを用いた場合、表面平滑性が劣り、シート表面が凹凸となるゆず肌状になる問題がある。
一方、上記特許文献1のように反応性ホットメルト接着剤を使用することが提案されているが、反応性ホットメルト接着剤を使用した場合、化粧シートの浮きを抑える目的で、一般的に、結晶固化を速くする必要があり、前述の接着剤に比べ、基材への接着剤のしみ込みが少ない。その為、基材の凹凸は拾いにくく、表面平滑性は優れるものの、基材への接着性が劣る場合がある。
本発明は、表面平滑性、接着性に優れた反応性ホットメルト接着剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者は、前記の問題点を解決する為、鋭意研究の結果、本発明に到達したものである。すなわち、ポリオールとポリイソシアネートを反応させて得られるイソシアネート末端ポリウレタンプレポリマーに、特定の表面調整効果のある表面調整剤を接着剤の総重量に対して、0.003〜0.25重量%含む反応性ホットメルト接着剤組成物とすることにより、前記の問題点を解決し得ることを見出した。特定の表面調整効果のある表面調整剤として、アクリル系重合体、シリコーン系界面活性剤、消泡剤のいずれかが挙げられる。また、表面調整剤の融点が110℃以下、沸点が140℃以上であると好ましく、さらに、予め表面調整剤を接着剤の総重量に対して、0.003〜0.25重量%となるようポリオールとポリイソシアネートに配合してから、ポリオールとポリイソシアネートを反応させてイソシアネート末端ポリウレタンプレポリマーを合成し反応性ホットメルト接着剤組成物を得ると好ましい。
【0005】
該接着剤組成物は、ダイコーター、ロールコーター等を用いて、例えば、プライマー付きオレフィンシート、PETシート、アクリルシート、樹脂含浸紙等の化粧シートに塗工し、例えば、MDF、パーティクルボード、合板等の木質系基材、サンディング処理、或いは、コロナ処理等の接着面の表面処理を施したFRP、ABS、オレフィン基材、アルミ等の金属系基材に、ソフトロール、鉄ロール、ピンチロール等にて圧着して貼り合せる。また、該接着剤組成物の塗布厚は、20〜120μmが一般的である。20μm未満であると、基材への接着剤のしみ込みが少なく、或いは、十分な濡れ性が確保されず、接着性が低下する傾向がある。また、120μmを超えた厚みであると、効果に乏しく経済的でなくなる。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、特に建築内装ラッピング部材の接着性、表面平滑性良好な工業的価値の大なる反応性ホットメルト接着剤の提供が可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明で使用するポリオールとしては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオール、ポリオレフィンポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール、ロジン変性ポリオール、ポリエチレンブチレンポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール等が用いられる。
使用するポリオールは、1分子中に1.5個以上、好ましくは2〜3個の水酸基を有するポリオールの一種、又は二種以上を組み合わせて用いる。
【0008】
本発明で使用するポリイソシアネート(化合物)としては、ジフェニルメタンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、イソフォロンジイソシアネート等が用いられる。
【0009】
本発明における特定の表面調整効果のある表面調整剤としては、アクリル系重合体、シリコン系界面活性剤、消泡剤の中から選ばれる。融点は、110℃以下、沸点が140℃以上のものが用いられると好ましい。表面調整剤として、接着性と表面平滑性の面から、特に、アクリル系重合体が好ましい。
アクリル系重合体としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸のアルキルエステル類を原料として得られた分子量が300〜50000のアクリル重合体が挙げられる。このようなものの例としては、アクロナール(BASFジャパン株式会社製)、ポリフロー(共栄社化学株式会社製)、モダフロー(モンサント社製、ユーシービージャパン株式会社)等の商品が市販されている。ここで、メチル(メタ)アクリレートとは、メチルアクリレートとメチルメタアクリレートおよび両者の混合物を意味する。
【0010】
消泡剤としては、シリコーン系、オキシアルキレン系、プロルニック型、鉱物系などの消泡剤が挙げられ、例えば、フローレンAC−300(共栄社油脂株式会社製)、BYK−088、BYK−065、BYK−P104(ドイツ、ビックケミー社製)、ディスパロンOX−70(楠本化成株式会社製)等が用いられる。
【0011】
シリコーン系界面活性剤として、例えば、BYK−066N、BYK−141、BYK−302、BYK−307、BYK−310、BYK−333、BYK−370、BYK−UV3510(以上、ビックケミー・ジャパン株式会社製)、SH193、SH30PA、SH3746(以上、東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製)、ポリジメチルシロキサン、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン等のシロキサン化合物が用いられる。
その他にフッ素系界面活性剤、エーテル系界面活性剤、界面活性剤を用いることもでき、フッ素系界面活性剤として、例えば、エフトップEF−122B、エフトップEF−801、エフトップEF−802(以上、株式会社ジェムコ製)、メガファックBL−20、メガファックF−172、メガファックF−177S、メガファックR−08(以上、大日本インキ化学工業株式会社製)等が用いられる。
エーテル系界面活性剤として、例えば、レオコン1015H、レオコン1020H(以上、ライオン株式会社製)等が用いられる。
界面活性剤として、ポリエチレングリコールおよびそのエステル、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ラウリル硫酸アミン類、アルキル置換芳香族スルホン酸塩、アルキルリン酸塩、脂肪族あるいは芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物等の陰イオン系界面活性剤;ラウリルアミドプロピルベタイン、ラウリルアミノ酢酸ベタイン等の両性系界面活性剤;ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンアルキルアミン等の非イオン系界面活性剤;パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物、パーフルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩、パーフルオロアルキル基・親水性基含有オリゴマー、パーフルオロアルキル・親油基含有オリゴマーパーフルオロアルキル基含有ウレタン等のフッ素系界面活性剤;ポリアクリル酸、アクリル酸共重合体、メタクリル酸、メタクリル酸共重合体等のアクリル系界面活性剤等が挙げられる。
【0012】
表面調整剤は、接着剤の総重量に対し、0.003〜0.25重量%の範囲のものが最適である。0.003重量%未満では、配合効果に乏しく、0.25重量%を超えて配合すると、接着界面における組成物自体の凝集力が低下し、その結果収まり性が悪化する。ウレタンプレポリマーを合成する際に、予め表面調整剤を配合することで凝集力の低下は緩和されるが、0.25重量%を超えた場合は改善効果が少ない。好ましくは、0.04〜0.2重量%であり、さらに好ましくは、0.05〜0.15重量%である。
【0013】
本発明で用いるイソシアネート末端ポリウレタンプレポリマーの製造におけるポリイソシアネート(化合物)とポリオールのイソシアネート基と水酸基の当量比として、NCO/OH比は、1.2以上、好ましくは、1.5〜3.0の範囲となるように決定される。1.2未満では、得られるプレポリマーの粘度が高くなり過ぎ、作業性の悪化を招き、3.0を超えると得られる被膜が脆くなり、接着性の低下を生じるという欠点がある。
【0014】
上記ポリオール好ましくは2種類以上のポリオール混合物とポリイソシアネート化合物からプレポリマーを得るには、加熱及び脱泡可能な混合機を用いて、50〜130℃の範囲で窒素ガスをパージする等の方法で空気と遮断しつつ数時間加熱、反応させる。
この際に、予め表面調整剤を接着剤の総重量に対し、0.003〜0.25重量%となるようとポリイソシアネートに配合し、反応させプレポリマーを得ると好ましい。
【0015】
本発明の反応性ホットメルト接着剤組成物には、必要に応じて、熱可塑性ポリマー(ポリウレタン、エチレン系共重合体、プロピレン系共重合体、塩化ビニル系共重合体、アクリル共重合体、スチレン−共役ジエンブロック共重合体等の各種ゴム系)、粘着付与樹脂(ロジン樹脂、ロジンエステル樹脂、水添ロジンエステル樹脂、テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、水添テルペン樹脂、石油樹脂、水添石油樹脂、クマロン樹脂、ケトン樹脂、スチレン樹脂、変性スチレン樹脂、キシレン樹脂、エポキシ樹脂等の各種樹脂系)、更に触媒(ジブチルチンジラウレート、ジブチルチオンオクテート、ジメチルシクロヘキシルアミン、ジメチルベンジルアミン、トリオクチルアミン等)、顔料、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、充填剤等を適量配合しても良い。
【0016】
本発明では、表面調整剤を接着剤の総重量に対して、0.003〜0.25重量%含む反応性ホットメルト接着剤組成物とすることにより、特に建築内装ラッピング部材の接着性、表面平滑性に優れた反応性ホットメルト接着剤を提供することができる。
【実施例】
【0017】
次に、実施例および比較例によって本発明をさらに詳細に説明し、これらの具体例の結果を表1として示すが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0018】
(実施例1)
ポリオールとして予め真空乾燥機により脱水処理したアジピン酸と1,6−ヘキサンジオールを主成分とするポリエステルポリオール(官能基数:2.0、分子量5000)55.0重量%とアゼライン酸とネオペンチルグリコールを主成分とするポリエステルポリオール(官能基数:2.0、分子量1500)を30.0重量%、とポリイソシアネートとしてジフェニルメタンジイソシアネート14.9重量%、表面調整剤としてMODAFLOW(ユーシービージャパン株式会社製、アクリル系表面調整剤)を0.1重量%を加熱、脱泡攪拌可能な反応容器に投入し、窒素ガス雰囲気中で混合攪拌しながら、110℃で2時間反応させた後、更に110℃で2時間減圧脱泡攪拌しイソシアネート末端ポリウレタンプレポリマーを合成し、反応性ホットメルト接着剤組成物(粘度:10Pa・s/120℃、固化時間:60秒)を得た。
【0019】
(実施例2)
アルリル系表面調整剤の替わりに、SC5570(東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製、シリコーン系消泡剤)を0.1重量%とする以外は、実施例1と同様とし反応性ホットメルト接着剤組成物を得た(粘度:10Pa・s/120℃、固化時間:60秒)。
【0020】
(比較例1)
実施例1の表面調整剤の添加無しで、ジフェニルメタンジイソシアネートを15.0重量%とする以外は、実施例1と同様とした(粘度:10Pa・s/120℃、固化時間:60秒)。
【0021】
(比較例2)
実施例1の表面調整剤を0.002重量%、ジフェニルメタンジイソシアネートを14.998重量%とする以外は、実施例1と同様とした(粘度:10Pa・s/120℃、固化時間:60秒)。
【0022】
(比較例3)
実施例1のアクリル系表面調整剤を0.26重量%、ジフェニルメタンジイソシアネートを14.74重量%とする以外は、実施例1と同様とした(粘度:10Pa・s/120℃、固化時間:60秒)。
【0023】
実施例1〜2で得た本発明の反応性ホットメルト接着剤と比較例1〜3で得た反応性ホットメルト接着剤を用いて以下の試験を行なった。
【0024】
プライマー層を有する170μm厚みのオレフィン化粧シートに実施例1〜2、比較例1〜3で得た反応性ホットメルト接着剤を、それぞれダイコーターで厚み60μm塗工し、ゴムロール、多数のピンチロールを有するラッピングマシンにて、凹凸部を有する建築内装部材のMDF、集成材基材の2種類とそれぞれ貼り合わせ、温度20℃、湿度65%RHの条件で7日以上養生したものを試験体とした。
【0025】
常態はく離接着強さは、20℃雰囲気中にて、引張り速度200mm/分、180°方向のはく離接着強さの評価を行った。また、表面平滑性は、試験体表面の凹凸の大小を目視にて判定し、収まり性は、MDFの凹凸部分のシートの浮き状態を目視にて、判定した。
【0026】
【表1】

表中記号 B:MDFの材料破壊 b:MDFの材料破壊(但し、表層材料破壊)
○:表面が平滑で良好 ×:表面の凹凸が大きく、ゆず肌状
【0027】
表1から、実施例1〜2は、比較例1〜3と比較して、常態はく離接着強さ、表面平滑性、収まり性のバランスに優れる。また、実施例1〜2の比較より、木質系基材では、アクリル系の表面調整剤が常態はく離接着強さにおいて最も優位であることがわかる。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオールとポリイソシアネートを反応させて得られるイソシアネート末端ポリウレタンプレポリマーに表面調整剤を接着剤の総重量に対して、0.003〜0.25重量%含む反応性ホットメルト接着剤組成物。
【請求項2】
表面調整剤がアクリル系重合体、シリコーン系界面活性剤、消泡剤のいずれかである請求項1に記載の反応性ホットメルト接着剤組成物。
【請求項3】
表面調整剤の融点が110℃以下、沸点が140℃以上である請求項1または請求項2に記載の反応性ホットメルト接着剤組成物。
【請求項4】
ポリオールとポリイソシアネートを反応させてイソシアネート末端ポリウレタンプレポリマーを合成する際に、予め表面調整剤を接着剤の総重量に対して、0.003〜0.25重量%配合し、合成して得られる請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の反応性ホットメルト接着剤組成物。



【公開番号】特開2007−119578(P2007−119578A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−312861(P2005−312861)
【出願日】平成17年10月27日(2005.10.27)
【出願人】(000233170)日立化成ポリマー株式会社 (75)
【Fターム(参考)】