説明

反応性ホットメルト接着剤

【課題】 自動車座席等の複雑な三次元曲面において、表皮の浮き等の欠点が生じることがなく、風合いの良好な反応性ホットメルト接着剤を提供する。
【解決手段】 ポリオールとポリイソシアネートを反応させて得られるイソシアネート末端ポリウレタンプレポリマーを主成分とし、チキソ係数が1.10以上、120℃の溶融粘度が20.0Pa・s以下であり、塗布時にドット形状のパターンを有する反応性ホットメルト接着剤。ポリオールが、脂肪族酸ベースのポリエステルポリオールと、少なくとも1種類以上の芳香族酸ベースのポリエステルポリオールを用いると好ましい。また、ドット形状パターンの塗布量が、20〜100g/mであると好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イソシアネート末端ポリウレタンプレポリマーを主成分とし、特定の粘度となるようにした塗布時にドット形状のパターンを有する反応性ホットメルト接着剤に関する。この反応性ホットメルト接着剤は、特に自動車座席接着用として有用である。
【背景技術】
【0002】
自動車座席は、意匠性、居住性の面から、複雑な三次元曲面が形成されることが一般的である。そのため、その曲面形状を維持するために、表皮材と、ウレタンフォーム等のモールドパットとを全面接着した「接着シート」を採用する場合が多い。その際、接着剤として反応性ホットメルト接着剤を使用する提案がされている(特許文献1、特許文献2)。
このような、自動車座席接着に用いられる反応性ホットメルト接着剤は、3次元形状に対応するため、初期凝集力が高い結晶性ポリエステル系ポリオールを用い、イソシアネート化合物を反応させて得られるウレタンプレポリマーを主成分としている。
この接着剤は、初期から高強度が得られるため、接着工程の高速化の面で有効であり、さらに、溶剤を使用していないので、環境衛生や安全性の面からも好ましく使用される。
【0003】
【特許文献1】特公平7−85757号公報
【特許文献2】特開平5−76836号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、自動車座席は、形状のみでなく、乗り心地の要求から、座面の柔軟化の要求がある。そのため、「接着シート」に使用される接着剤にも柔軟性が要求されている。特にコスト低減を目的として、表皮材の単層化が進んでいるため、自動車座席用接着剤には、より一層の柔軟化が求められている。
しかし、上記の初期凝集力の高い接着剤を用い、全面にスプレー塗布を行って自動車座席を接着した場合、接着剤の硬化後の皮膜が硬く、風合いを損なうという欠点がある。
一方で、風合いを向上させるために、結晶性ポリエステル系ポリオールの割合を少なくする等の手法により、接着剤の硬化後の皮膜を柔らかくした場合、初期の凝集力が低下してしまい、複雑な三次元曲面において、表皮の浮き等の欠点が生じる。
本発明は、自動車座席等の複雑な三次元曲面において、表皮の浮き等の欠点が生じることがなく、風合いの良好な反応性ホットメルト接着剤を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、前記の問題点を解決する為、鋭意研究の結果、本発明に到達したものである。すなわち、本発明は、ポリオールとポリイソシアネートを反応させて得られるイソシアネート末端ポリウレタンプレポリマーを主成分とし、チキソ係数が1.10以上、120℃の溶融粘度が20.0Pa・s以下であり、塗布時にドット形状のパターンを有する反応性ホットメルト接着剤である。本発明の反応性ホットメルト接着剤を用いて、例えばスプレーすることにより、スプレーパターンが均一なドット形状で、点接着になるため、従来の不織布状のスプレーパターンによる全面接着に比べて、良好な風合いを有する自動車座席が製造でき、前記の問題点を解決し得る。
更に、本発明者は、ポリオールとして、互いに相溶性の劣る、脂肪族酸ベースのポリエステルポリオールと、少なくとも1種類以上の芳香族酸ベースのポリエステルポリオールを組合わせて用いることにより、チキソ係数、溶融粘度が調整し易くなる。
【0006】
本発明の反応性ホットメルト接着剤は、カーテンスプレー等を用いて、ウレタンパッド表面に塗工し、表皮シートを被せ、圧着して使用される。塗布量は、20〜100g/mが好ましく、100g/m上を超えると、風合いを悪化させる傾向にあり、20g/m未満であると、接着性が劣る傾向にある。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ドット形状のパターンとした点接着とする反応性ホットメルト接着剤を用いることで、複雑な三次元曲面でも表皮の浮きが無く、良好な風合いを有する自動車座席の提供が可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明では、ポリオールとポリイソシアネートを反応させて得られるイソシアネート末端ポリウレタンプレポリマーを主成分とし、チキソ係数が1.10以上、120℃の溶融粘度が20.0Pa・s以下である反応性ホットメルト接着剤を用いる。
本発明のイソシアネート末端ポリウレタンプレポリマーを主成分とするとは、配合量の50重量%以上を占めることであり、好ましくは、60重量%以上、さらに好ましくは、70重量%以上、特に好ましくは80重量%以上である。
使用できるポリイソシアネートは、種類が限定されているので、用いるポリオールによりチキソ係数、溶融粘度を上記のような範囲に調整することが好ましい。本発明におけるポリオールとしては、チキソ係数が1.10以上で、120℃の溶融粘度が20Pa・s以下となる組合せであれば、制限は無いが、互いに相溶性の悪い脂肪族酸ベースのポリエステルポリオールと芳香族酸ベースのポリエステルポリオールとの組合せが好ましい。かつ、ポリオールは、1分子中に1.5個以上、好ましくは2〜3個の水酸基を有しており、設定する特性が得られるように適宜選択する。しかし、この場合、チキソ性付与剤を添加し、チキソ係数1.10以上の特性が得られる場合は、この限りではない。
【0009】
本発明におけるチキソ係数は、120℃におけるBH型回転粘度計の4rpmと10rpmの粘度比から算出するもので、1.10未満であると、均一なドット形状のパターンが得られず、スプレーパターンが不織布状になるおそれがある。
また、本発明における粘度は、120℃におけるBH型回転粘度計の10rpmの粘度であり、チキソ係数が1.10以上であっても、粘度20.0Pa・sを超える場合は、スプレー時のドット形状のパターンが不均一となり、自動車座席の風合いのばらつき、更には、表皮から接着剤が染み出すという問題が生じる。
粘度20.0Pa・s以下の場合は、スプレーパターンがドット形状のパターンとなり、良好な風合いを有する自動車座席が製造することができる。
【0010】
本発明で用いるポリイソシアネートとしては、ジフェニルメタンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、イソフォロンジイソシアネート等が用いられる。
【0011】
本発明におけるポリイソシアネートとポリオールを反応させる際の両者の混合物のNCO/OH比は、1.2以上、好ましくは、1.5〜3.0の範囲となるようにし、イソシアネート末端のポリウレタンプレポリマーとなるようにする。1.2未満では、得られるプレポリマーの粘度が高くなり過ぎ、ドット形状パターンの不均一化を招き、3.0を超えると接着剤硬化後の皮膜がもろくなり、接着性の低下を招くおそれがある。
【0012】
上記ポリオールとポリイソシアネートからイソシアネート末端ポリウレタンプレポリマーを得るには、加熱及び脱泡可能な混合機を用いて、50〜130℃の範囲で窒素ガスをパージする等の方法で空気と遮断しつつ数時間加熱、反応させる。ポリオール、ポリイソシアネートは、それぞれ2種類以上用いてもよい。
【0013】
ポリオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリット、および上記化合物のオリゴマー性エーテル、およびこれらのより高位の同族体または異性体。さらに、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ポリブタジエンポリオール等の1分子中に少なくとも2個以上の水酸基を有する置換された、または無置換のポリアルキルエーテルグリコール、ポリヒドロキシポリアルキレンエーテル、ポリヒドロキシポリエステルポリオールのエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイドまたはプロピレン付加物およびグリコールのモノ置換エステル、ポリヒドロキシポリオール等があげられ、単独で、または併せて用いられる。
【0014】
本発明では、末端イソシアネート基を有するポリウレタンプレポリマーを調製するためのポリオールとして、ポリエステルポリオールが好ましい。中でも、脂肪族酸ベースのポリエステルポリオールと、少なくとも1種類以上の芳香族酸ベースのポリエステルポリオールを用いることが好ましい。
脂肪族酸ベースの脂肪酸としては、例えば、アジピン酸、コハク酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、クエン酸および炭素原子数が16までのこれらの同族体、不飽和ジカルボン酸、例えば、マレイン酸、フマル酸等が挙げられ、芳香族酸ベースの脂肪酸としては、例えば、フタル酸異性体(フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸)、フタル酸無水物、トリメリット酸、テトラヒドロフタル酸無水物、テトラクロルフタル酸無水物、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸無水物等が挙げられる。これらの脂肪酸または芳香族酸とアルコールを縮合させ、ポリエステルポリオールとする。ポリエステルポリオールのポリオールとして、上記したポリオールが挙げられる。
【0015】
本発明では、必要に応じて、熱可塑性ポリマー(ポリウレタン、エチレン系共重合体、プロピレン系共重合体、塩化ビニル系共重合体、アクリル共重合体、スチレン−共役ジエンブロック共重合体等の各種ゴム系)、粘着付与樹脂(ロジン樹脂、ロジンエステル樹脂、水添ロジンエステル樹脂、テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、水添テルペン樹脂、石油樹脂、水添石油樹脂、クマロン樹脂、ケトン樹脂、スチレン樹脂、変性スチレン樹脂、キシレン樹脂、エポキシ樹脂等の各種樹脂系)、更に触媒(ジブチルチンジラウレート、ジブチルチンオクテート、ジメチルシクロヘキシルアミン、ジメチルベンジルアミン、トリオクチルアミン等)、顔料、酸化防止剤、紫外線吸収剤、界面活性剤、難燃剤、充填剤等を適量配合しても良い。
【実施例】
【0016】
次に、実施例および比較例によって本発明をさらに具体的に説明し、これらの具体例の結果を表1として示すが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0017】
(実施例1)
予め真空乾燥機により脱水処理したアジピン酸と1,6ヘキサンジオールを主成分とするポリエステルポリオール(官能基数:2.0、分子量5000)40重量%と、アジピン酸とエチレングリコールを主成分とするポリエステルポリオール(官能基数:2.0、分子量2000)30重量%と、イソフタル酸とエチレングリコールを主成分とするポリエステルポリオール(官能基数:2.0、分子量3000)20重量%と、ジフェニルメタンジイソシアネート10重量%を加熱、脱泡攪拌可能な反応容器に投入し、窒素ガス雰囲気中で混合攪拌しながら、110℃で2時間反応させた後、更に110℃で2時間減圧脱泡攪拌し、イソシアネート末端ポリウレタンプレポリマー(チキソ係数1.14、粘度14.0mPa・s/120℃)を得た。
【0018】
(実施例2)
予め真空乾燥機により脱水処理したセバチン酸と1,6ヘキサンジオールを主成分とするポリエステルポリオール(官能基数:2.0、分子量5000)40重量%と、アジピン酸とエチレングリコールを主成分とするポリエステルポリオール(官能基数:2.0、分子量2000)30重量%と、イソフタル酸とエチレングリコールを主成分とするポリエステルポリオール(官能基数:2.0、分子量3000)20重量%と、ジフェニルメタンジイソシアネート10重量%を加熱、脱泡攪拌可能な反応容器に投入し、窒素ガス雰囲気中で混合攪拌しながら、110℃で2時間反応させた後、更に110℃で2時間減圧脱泡攪拌し、イソシアネート末端ポリウレタンプレポリマー(チキソ係数1.20、粘度10.0mPa・s/120℃)を得た。
【0019】
(実施例3)
予め真空乾燥機により脱水処理したアジピン酸と1,6ヘキサンジオールを主成分とするポリエステルポリオール(官能基数:2.0、分子量5000)90重量%と、ジフェニルメタンジイソシアネート9重量%と、揺変性付与剤であるアエロジール200(フュームドシリカ、デグサ社)を1重量%を加熱、脱泡攪拌可能な反応容器に投入し、窒素ガス雰囲気中で混合攪拌しながら、110℃で2時間反応させた後、更に110℃で2時間減圧脱泡攪拌し、イソシアネート末端ポリウレタンプレポリマー(チキソ係数1.10、粘度18.0mPa・s/120℃)を得た。
【0020】
(比較例1)
セバチン酸と1,6ヘキサンジオールを主成分とするポリエステルポリオール(官能基数:2.0、分子量5000)50重量%と、アジピン酸と1,6ヘキサンジオールを主成分とするポリエステルポリオール(官能基数:2.0、分子量5000)40重量%と、ジフェニルメタンジイソシアネート10重量%とした以外は、実施例1と同様とした((チキソ係数1.04、粘度19.0mPa・s/120℃)。
【0021】
(比較例2)
アジピン酸と1,6ヘキサンジオールを主成分とするポリエステルポリオール(官能基数:2.0、分子量5000)87重量%と、ジフェニルメタンジイソシアネート8重量%と、揺変性付与剤であるアエロジール200を5重量%とした以外は、実施例1と同様とした(チキソ係数1.07、粘度20.0mPa・s/120℃)。
【0022】
(比較例3)
アジピン酸と1,6ヘキサンジオールを主成分とするポリエステルポリオール(官能基数:2.0、分子量5000)75重量%と、イソフタル酸とエチレングリコールを主成分とするポリエステルポリオール(官能基数:2.0、分子量3000)15重量%とした以外は、実施例1と同様とした(チキソ係数1.08、粘度15.0mPa・s/120℃)。
【0023】
実施例1〜3で得た本発明の反応性ホットメルト接着剤と比較例1〜3で得た反応性ホットメルト接着剤を用いて以下の試験を行なった。実施例1〜3、比較例1〜3の反応性ホットメルト接着剤を120℃に溶融させ、スプレーパターンは、ノードソン(株)製コントロールコートガンにて、ウレタンパッド上に40g/mとなるよう塗布したものを試験片とし、目視にて確認した。
風合いは、上記試験片を表皮と蒸気活性で貼合せたものを試験体とし、指触により確認した。
接着性は、上記の貼合せたものを試験体とし、破壊状態を確認した。
塗工したスプレーパターン状態、風合い、接着性の評価結果を表1にまとめて示した。
【0024】
【表1】

記号 ○:柔らかい △:ばらつき有り ×:硬い
接着性:材破は、材料破壊を示す
【0025】
表1から、実施例1〜3は、比較例1〜3と比較して、チキソ係数(120℃におけるBH型回転粘度計の4rpmと10rpmの粘度比)が1.10以上であり、スプレーパターンが均一なドット形状パターンになり、風合いが向上する事が分かる。それに対して、比較例1〜3のホットメルト接着剤は、120℃の溶融粘度が20.0Pa・s以下(BH型回転粘度計の10rpmの粘度)であるが、チキソ係数が何れも1.10未満であり、スプレーパターンが不均一で風合いが硬くて好ましくない。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオールとポリイソシアネートを反応させて得られるイソシアネート末端ポリウレタンプレポリマーを主成分とし、チキソ係数が1.10以上、120℃の溶融粘度が20.0Pa・s以下であり、塗布時にドット形状のパターンを有する反応性ホットメルト接着剤。
【請求項2】
ポリオールが、脂肪族酸ベースのポリエステルポリオールと、少なくとも1種類以上の芳香族酸ベースのポリエステルポリオールを用いる請求項1に記載の反応性ホットメルト接着剤。
【請求項3】
ドット形状パターンの塗布量が、20〜100g/mである請求項1または請求項2に記載の反応性ホットメルト接着剤。



【公開番号】特開2007−231070(P2007−231070A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−52355(P2006−52355)
【出願日】平成18年2月28日(2006.2.28)
【出願人】(000233170)日立化成ポリマー株式会社 (75)
【Fターム(参考)】