説明

反応性外科用インプラント

【課題】外科的手順の間で増大した可視化および配置を有するインプラントを提供すること。
【解決手段】医療用デバイスであって:
少なくとも1つの合成成分を含む基体;
この基体の表面の少なくとも一部分上の少なくとも1つの天然材料;および
この医療用デバイスの少なくとも一部分に選択的に付与される反応性成分を備え、
この反応性成分がこの少なくとも1つの天然材料と反応し、この基体の表面上に少なくとも1つの架橋された領域を形成する、医療用デバイス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本出願は、2008年9月26日に出願された米国仮出願第61/100,392号に基づく優先権を主張する2009年8月27日に出願された米国特許出願第12/548,524号の一部継続出願であり、これら出願の各々の全体の開示は、本明細書中に参考として援用される。
【0002】
(技術分野)
本開示は、反応性成分で選択的に架橋された領域を含むインプラント、そしてより特定すれば、インサイチュ(in situ)で組織表面に架橋する外科用インプラントに関し、外科用インプラントの表面に視角インジケーターを提供し、そして/または外科的手順の間で操作の容易さのためにこのインプラントに堅くなった領域を提供する。
【背景技術】
【0003】
(背景)
医療用デバイス、そしてより特定すればインプラントの使用は公知である。しかし、これらインプラントは、一旦インサイチュで配置されると、転位または移動し得、周辺組織への損傷、またはインプラントのタイプおよび位置に依存するデバイス破損を生じる。従って、メッシュのようなインプラントは、しばしば、ステープル、クリップ、タック、縫合糸などのような外科用タッキングデバイスまたはファスナーを用いて手術の間に組織に固定される。
【0004】
例えば、柔らかい曲げやすいメッシュは、代表的には、身体組織の外科的修復のために用いられ、そして外科用ファスナーを用いて組織に固定される。しかし、メッシュの可撓性性質は、それを、特に湿潤環境において、使用し、取り扱い、そして折りたたみを解くことを困難にし得る。メッシュにおけるよじれ、および折りたたみは、それらが漿液腫および瘻孔を発症させるデッドスペースを生成し得、これは感染を引き起こし得、インプラント破損を引き起こし、そして疾患状態を再発させ得るので受容可能ではない。
【0005】
腹腔鏡および内視鏡外科的手順は、所望の身体位置へのインプラントの送達のために用いられている。腹腔鏡手順では、手術は、小さな切開を通って腹部の内部で実施される。同様に、内視鏡手順では、手術は、皮膚にある小さな入口創傷を通じて挿入された狭い内視鏡チューブを通って身体の任意の中空内臓中で実施される。
【0006】
従って、外科用メッシュのようなインプラントは、身体内の配置のために、カニューレまたは狭い内視鏡チューブのような腹腔鏡ポートを通って配置されるために巻かれるか、または折りたたまれなければならないかもしれない。挿入の後、外科医は、メッシュの折りたたみを解き、そして適正に配置するための時間を要し、そしてそのための技量を有さなければならないかもしれない。それ故、より剛直なメッシュは、腹腔鏡ポートを通る挿入の後、腹腔鏡手順の間にその当初の形状に容易に跳ね返り得るので、外科医によって修復部位に折りたたみを解くことがより容易であり得る。
【0007】
さらに、メッシュ上の色識別手段は、腹腔鏡または内視鏡手順のような外科的手順の間にメッシュを適正にサイジングすること、配置すること、および位置決めすることにおいて外科医を支援し得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
現在の外科用インプラントおよび外科的方法は満足に実施しているが、外科的手順の間で増大した可視化および配置を有するインプラントを提供することが有利である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
例えば、本発明は、以下の項目を提供する。
(項目1)
医療用デバイスであって:
少なくとも1つの合成成分を含む基体;
該基体の表面の少なくとも一部分上の少なくとも1つの天然材料;および
該医療用デバイスの少なくとも一部分に選択的に付与される反応性成分を備え、
該反応性成分が該少なくとも1つの天然材料と反応し、該基体の表面上に少なくとも1つの架橋された領域を形成する、医療用デバイス。
(項目2)
前記架橋された領域が、可視マーキングを含む、上記項目に記載の医療用デバイス。
(項目3)
前記マーキングが、前記基体の表面上にパターンを形成する、上記項目のうちのいずれか一項に記載の医療用デバイス。
(項目4)
前記架橋された領域が、それらが付与される基体の部分の剛直性を増加させる、上記項目のうちのいずれか一項に記載の医療用デバイス。
(項目5)
前記架橋された領域が、前記基体の表面の周縁に配置される、上記項目のうちのいずれか一項に記載の医療用デバイス。
(項目6)
前記架橋された領域が、前記基体の端まで延びる、上記項目のうちのいずれか一項に記載の医療用デバイス。
(項目7)
前記反応性成分が、ゲニピン、イソシアネート、N−ヒドロキシスクシンイミド、シアノアクリレート、アルデヒド、ジイミド、シアナミド、カルボジイミド、ジメチルアジピミデート、スターチ、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、上記項目のうちのいずれか一項に記載の医療用デバイス。
(項目8)
前記反応性成分がゲニピンを含む、上記項目のうちのいずれか一項に記載の医療用デバイス。
(項目9)
前記少なくとも1つの合成成分が、ラクチド、グリコリド、カプロラクトン、バレロラクトン、カーボネート、ジオキサノン、1,ジオキセパノン、エチレングリコール、エチレンオキシド、エステルアミド、γ−ヒドロキシバレレート、β−ヒドロキシプロピオネート、α−ヒドロキシ酸、ヒドロキシブチレート、ポリ(オルトエステル)、ヒドロキシアルカノエート、チロシンカーボネート、ポリ(イミドカーボネート)、ポリ(イミノカーボネート)、ポリウレタン、ポリ酸無水物、ポリマー薬物、フルオロエチレン、フルオロプロピレン、フルオロポリエチレングリコール、ポリオレフィン、ポリエステル、ナイロン、ポリアミド、シリコーン、ポリブトエステル、ポリアリールエーテルケトン、およびそれらの組み合わせから誘導されるポリマーを含む、上記項目のうちのいずれか一項に記載の医療用デバイス。
(項目10)
前記少なくとも1つの天然材料がアミン官能基を含む、上記項目のうちのいずれか一項0に記載の医療用デバイス。
(項目11)
前記少なくとも1つの天然材料がコラーゲンを含む、上記項目のうちのいずれか一項に記載の医療用デバイス。
(項目12)
前記基体が、縫合糸、ステープル、ステント、メッシュ、テープ、ガーゼ、軟組織修復デバイス、バットレス、バンド、リボン、グラフト、足場、創傷包帯、および発泡体からなる群から選択される、上記項目のうちのいずれか一項に記載の医療用デバイス。
(項目13)
前記基体がメッシュを含む、上記項目のうちのいずれか一項に記載のデバイス。
(項目14)
前記医療デバイスがポリマーコーティングをさらに備える、上記項目のうちのいずれか一項に記載の医療用デバイス。
(項目15)
前記医療用デバイスが生物活性薬剤をさらに含む、上記項目のうちのいずれか一項に記載の医療用デバイス。
(項目16)
メッシュの剛直性を増加させる方法であって:
少なくとも1つの合成成分を含む基体を、該基体の表面の少なくとも一部分上にアミン基を含む少なくとも1つの天然材料と組み合わせて提供する工程;
該基体をゲニピン溶液と接触させる工程;
該天然材料とゲニピンとを架橋させ、該基体の表面上に局在化され架橋された領域を生成する工程、を包含し、
該局在化され架橋された領域が該メッシュの剛直性を増加させる、方法。
(項目17)
前記架橋された領域が可視的に識別可能である、上記項目のうちのいずれか一項に記載の方法。
(項目18)
前記架橋された領域が、前記基体の表面の周縁に配置される、上記項目のうちのいずれか一項に記載の方法。
(項目19)
前記少なくとも1つの合成成分が、ラクチド、グリコリド、カプロラクトン、バレロラクトン、カーボネート、ジオキサノン、1,ジオキセパノン、エチレングリコール、エチレンオキシド、エステルアミド、γ−ヒドロキシバレレート、β−ヒドロキシプロピオネート、α−ヒドロキシ酸、ヒドロキシブチレート、ポリ(オルトエステル)、ヒドロキシアルカノエート、チロシンカーボネート、ポリ(イミドカーボネート)、ポリ(イミノカーボネート)、ポリウレタン、ポリ酸無水物、ポリマー薬物、フルオロエチレン、フルオロプロピレン、フルオロポリエチレングリコール、ポリオレフィン、ポリエステル、ナイロン、ポリアミド、シリコーン、ポリブトエステル、ポリアリールエーテルケトン、およびそれらの組み合わせから派生するポリマーを含む、上記項目のうちのいずれか一項に記載の方法。
(項目20)
外科用メッシュであって:
ポリエステル基体;
該ポリエステル基体の表面の少なくとも一部分上のコラーゲンのフィルム;および
該メッシュの少なくとも一部分に選択的に付与されるゲニピンを含む反応性成分、を備え、該ゲニピンが該コラーゲンを架橋し、該メッシュの剛直性を増加させる、外科用メッシュ。
(項目21)
前記基体が織られた織物を含む、上記項目のうちのいずれか一項に記載の外科用メッシュ。
【0010】
(要旨)
本開示は、医療用デバイス、実施形態ではメッシュ、それらの製造の方法、および外科的手順においてそれらを用いるための方法を提供する。実施形態では、本開示の医療用デバイスは、少なくとも1つの合成成分;基体の表面の少なくとも一部分上の少なくとも1つの天然材料;および医療用デバイスの少なくとも一部分に選択的に付与される反応性成分を含み、ここで、この反応性成分は、上記少なくとも1つの天然材料と反応し、上記基体の表面上に少なくとも1つの架橋された領域を形成する。
【0011】
本開示の方法は、実施形態では、メッシュの剛直性を増加させる方法を含み得る。このような方法は、少なくとも1つの合成成分を含む基体を、この基体の表面の少なくとも一部分上にアミン基を含む少なくとも1つの天然材料と組み合わせて提供する工程;上記基体をゲニピン溶液と接触する工程;上記天然材料とゲニピンとを架橋させ、上記基体の表面上に局在化され架橋された領域を生成する工程を包含し得、ここで、上記局在化され架橋された領域が上記メッシュの剛直性を増加させる。
【0012】
その他の実施形態では、本開示のメッシュは、ポリエステル基体;このポリエステル基体の表面の少なくとも一部分上のコラーゲンのフィルム;および上記メッシュの少なくとも一部分に選択的に付与されるゲニピンを含む反応性成分を備え、このゲニピンがコラーゲンを架橋し、メッシュの剛直性を増加させる。
【0013】
(摘要)
生体適合性のインプラントは、ポリマー基体およびこの基体に選択的に付与された反応性成分を含む。この基体と組み合わせた反応性成分は、基体の表面上に架橋された領域を生成する。この架橋された領域は、このインプラントに対し視角的支援および/または剛直性要素を提供し得る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
本明細書に記載される例示の実施形態は、以下の記載、添付の図面になされる参照からより容易に明らかになる。
【図1】図1は、本開示の1つの実施形態に従う被覆された反応性インプラントを示す。
【図2】図2は、本開示に従う反応性インプラントの代替の実施形態を示す。
【図3】図3は、本開示の1つの実施形態に従う選択的に架橋された領域を含むインプラントを示す。
【図4】図4は、本開示の別の実施形態に従うインプラントを示す。
【図5】図5は、本開示のなお別の実施形態に従うインプラントを示す。
【図6】図6は、本開示の別の実施形態に従うインプラントを示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(詳細な説明)
本明細書に記載される医療用デバイスは、反応性インプラントを生成する反応性成分と組み合わせて用いられる基体を含む。この反応性インプラントは、組織表面上に存在する反応性基と架橋または化学的に結合することにより、組織のようなアミン含有表面に自己固定する。本明細書で用いられるとき、用語「化学的に結合する」は、共有結合、架橋、イオン結合などを含むすべてのタイプの化学的結合をいう。また本明細書で用いられるとき、用語「デバイス」および「インプラント」は交換可能であるが、一旦、このデバイスまたはインプラントが反応性成分と接触すると、「反応性デバイス」または「反応性インプラント」が生成される。本明細書ではまた、用語「反応性溶液」は、反応性成分を含む溶液を含む。
【0016】
本開示の医療用デバイスは、天然材料、生分解性材料、非生分解性材料、およびそれらの組み合わせから作製され得る。適切な合成の生分解性材料は、ラクチド、グリコリド、カプロラクトン、バレロラクトン、カーボネート(例えば、トリメチレンカーボネート、テトラエチレンカーボネートなど)、ジオキサノン(例えば、1,4−ジオキサノン)、γ−バレロラクトン、1,ジオキセパノン(例えば、1,4−ジオキセパン−2−オンおよび1,5−ジオキセパン−2−オン)、エチレングリコール、エチレンオキシド、エステルアミド、γ−ヒドロキシバレレート、β−ヒドロキシプロピオネート、α−ヒドロキシ酸、ヒドロキシブチレート、ポリ(オルトエステル)、ヒドロキシアルカノエート、チロシンカーボネート、ポリ(イミドカーボネート)、ポリ(ビスフェノールA−イミノカーボネート)およびポリ(ヒドロキノン−イミノカーボネート)のようなポリ(イミノカーボネート);ポリウレタン;ポリ酸無水物;ポリマー薬物(例えば、ポリジフルニソール、ポリアスピリン、およびタンパク質治療薬);およびそれらのコポリマーおよびそれらの組み合わせから誘導されるようなポリマーを含む。
【0017】
適切な天然の生分解性ポリマーは、コラーゲン、ゼラチン、アルブミン、カゼイン、およびポリ(アミノ酸)のようなタンパク質;セルロース、デキストラン、キチン、アルギネート、フカン(fucan)、カルボキシメチルセルロースおよびグリコサミノグリカンのような多糖類;ヒアルロン酸;ガット(gut)のような多糖類;およびそれらのコポリマーおよびそれらの組み合わせを含む。
【0018】
より特定すれば、本明細書で規定されるコラーゲンは、天然または(動物または細菌組換体を含む)誘導されたコラーゲン、およびコラーゲン誘導体を含む。コラーゲンインプラントは、ヒト、動物、細菌、または組換体起源由来のコラーゲンを含む。いくつかの非制限的な例は、I型ブタまたはウシコラーゲン、I、II、III、またはIV型ヒトコラーゲン、またはそれらの組み合わせを含む。1つの例では、コラーゲンは、Tyco Healthcare Group,d\b\a,Covidien、North Haven、CTから市販され入手可能なPARIETEXTM Composite Mesh(PCO)中のコラーゲン構築物を含む。
【0019】
コラーゲンは、当業者の範囲内の任意の方法を用いて改変され得、グリコサミノグリカンの反応性化学基と共有結合し得る部分をもつコラーゲンのペンダント部分を提供する。このようなペンダント部分の例は、アルデヒド、スルフォン、ビニルスルフォン、イソシアナート、および酸無水物を含む。さらに、−CON(COCH、−CON(COCH、−COH、−CHO、−CHOCH、−N=C=O、−SOCH=CH、−N(COCH)、−S−S−(CN)のような求電子基がまたコラーゲンのペンダント鎖に付加され得、それ自体(すなわち、コラーゲン)に共有結合するか、またはグリコサミノグリカンとの共有結合が起こることを可能にする。
【0020】
実施形態では、コラーゲンは、酸化剤の添加によって改変され得る。コラーゲンを酸化剤と接触させることは、コラーゲンの部分に沿って酸化的開裂を生成し、それによって、グリコサミノグリカンと反応し得るペンダントアルデヒド基を生成する。この酸化剤は、例えば、ヨウ素、過酸化物、過ヨウ素酸、過酸化水素、過ヨウ素酸塩、過ヨウ素酸塩を含む化合物、過ヨウ素酸ナトリウム、ジイソシアナート化合物、ハロゲン、ハロゲンを含む化合物、n−ブロモスクシンイミド、過マンガン酸塩、過マンガン酸塩を含む化合物、オゾン、オゾンを含む化合物、クロム酸、塩化スルフリル、スルホキシド、セレノキシド、酸化酵素(オキシダーゼ)、およびそれらの組み合わせであり得る。実施形態では、酸化剤は、過ヨウ素酸であり得る。
【0021】
非生分解性材料がまた、本開示の医療用デバイスを構築するために用いられ得る。適切な材料は、フッ素化ポリマー(例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フルオロプロピレン、およびフルオロPEG類のようなフルオロエチレン);ポリプロピレン、ポリエチレンおよび超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)のようなポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート(PET)のようなポリエステル;ナイロン;ポリアミド;ポリウレタン;シリコーン;ポリブトエステル;ポリエチレングリコール;ポリアリールエーテルケトン;それらのコポリマーおよび組み合わせを含む。さらに、非性分解性ポリマーとモノマーとが互いに組み合わせられ得、そしてまたその他の種々の生分解性ポリマーおよびモノマーと組み合わせられ得、反応性インプラントを生成する。
【0022】
特定の実施形態では、本開示に従うインプラントは、少なくとも一部が形状記憶ポリマーを用いて構築され得る。形状記憶ポリマーのハードセグメントおよびソフトセグメントを調製するために用いられる適切なポリマーおよびモノマーは、カプロラクトン、ジオキサノン、ラクチド、グリコリド、ポリアクリレート、ポリアミド、ポリシロキサン、ポリウレタン、ポリエーテルアミド、ポリウレタン/尿素、ポリエーテルエステル、ウレタン/ブタジエンコポリマー、およびそれらの組み合わせを含む。
【0023】
いくつかの実施形態では、上記インプラントは、金属(例えば、スチールまたはチタン)、鉄を基礎にした分解性合金またはマグネシウムを基礎にした分解性合金などのような分解性合金を含む金属合金を含み得る。
【0024】
特定の実施形態では、インプラントは多孔性基体を含む。本明細書中で用いられるとき、用語「多孔性」は、医療用デバイスを部分的または完全に貫通する表面特徴またはバルク材料性質として存在する開口部および間隔を規定し得る。孔は当業者の範囲内の方法を用いて生成され得、焼成、塩、糖またはスターチ結晶のリーチングのようなプロセス、および繊維の編物または織物を含むが、これらに制限されるわけではない。例えば、織り、または編みパターンによって形成される開口部を有するメッシュは、多孔性材料と考えられ得る。あるいは、発泡体足場が、多孔性材料と考えられ得る。多孔性材料は開放セル構造を有し得、この構造では、孔は互いに連結され、相互連結されたネットワークを形成する。逆に、多孔性基体は、孔が相互連結されない閉セル発泡体であり得る。
【0025】
特定の実施形態では、少なくとも1つの基体と多孔性または非多孔性構築物を有する1つ以上の層を有する複合メッシュのようなメッシュが、反応性インプラントを形成することで用いられ得る。非多孔性層は周辺組織からの組織内成長を遅延または防ぎ得、それによって癒着バリアとして作用し、そして所望されない瘢痕組織の形成を防ぐ。例えば、PARIETEXTM Composite Mesh(Covidienから市販され入手可能)のようなコラーゲン複合メッシュが、本開示の反応性インプラントで用いられ得る。PARIETEXTM Composite Meshは、1つの側面上に結合された吸収性コラーゲンフィルムをもつ3次元ポリエステル織物である。コラーゲンを含むその他のメッシュおよびデバイスが、本開示の特定の実施形態で有用であり得る。
【0026】
その他の適切なメッシュは、PARIETENE(登録商標)、PERMACOLTM、PARIETEXTM、SURGIPROTM、PRO−GRIPTMSelf−fixating mesh(すべてCovidienから市販され入手可能);PROLENETM(Ethicon,Inc.から市販され入手可能);MARLEX(登録商標)、DULEX(登録商標)、3D MAX(登録商標)メッシュ、PERFIX(登録商標)プラグ、VENTRALEX(登録商標)、およびKUGEL(登録商標)パッチ(すべてC.R.Bard.Inc.市販され入手可能);COMPOSIX(登録商標)、SEPRAMESH(登録商標)、およびVISILEX(登録商標)(Davol,Inc.から市販され入手可能);(DUALMESH(登録商標)、MYCROMESH(登録商標)、およびINFINIT(登録商標)メッシュ(すべてW.L.Goreから市販され入手可能))の名の下で販売されるものを含む。
【0027】
本開示の反応性インプラントを作製するために用いられる医療用デバイスは、制限されないで、メッシュ、パッチ、足場、軟組織修復デバイス、縫合糸、ステープル、タック、グラフト、テープ、ガーゼ、バットレス、綿撒糸、組織工学足場、ステント、組織ラップ(wrap)、およびそれらの組み合わせを含む。
【0028】
反応性成分は、医療用デバイスと組み合わせられ、医療用デバイス表面に反応性官能基を与え、反応性インプラントを生成する。適切な反応性成分は、架橋剤、接着剤、シーラント、カプラーなどを含み得、これらは、組織(または遊離アミン)に医療用デバイスを結合し得る少なくとも1つの遊離反応性基で官能化される。より詳細には、反応性成分は、制限されずに、イソシアナート、N−ヒドロキシスクシンイミド(「NHS」)、シアノアクリレート、アルデヒド(例えば、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、グリセルアルデヒド、およびジアルデヒド)、ゲニピン(genipin)、および上記基体、組織、または両方に対し、いくらかの親和性を有する化学的性質を有するその他の化合物を含む。本開示の反応性成分はまた、制限されずに、上記で列挙されたようなアルデヒド;ジイミド;ジイソシアナート;シアナアミド;カルボジイミド;ジメチルアジピミデート;スターチ;およびそれらの組み合わせを含み得る。この反応性成分は、移植前、または移植の間に形成される一官能性、二官能性または多官能性モノマー、ダイマー、小分子、またはオリゴマーであり得る。
【0029】
1つの実施形態では、上記反応性成分は、構造式Iで示されるようなゲニピンである。
【0030】
【化1】

ゲニピンは、クチナシ(Gardenia jasminodes Ellis)の果実に存在するケニポシドと呼ばれるイリドイドグルコシド由来のアグリコンである。本明細書で用いられるとき、用語「ゲニピン」は、ゲニピン、その誘導体、アナログおよびゲニピンの任意の立体異性体または立体異性体の混合物を含む。ゲニピンは、制限されないでコラーゲン、エラスチン、ゼラチン、およびキトサンを含むアミン含有タンパク質のための天然の架橋剤として用いられ得る。ゲニピンは天然に存在するので、それは、インサイチュ(in situ)医療適用のために有用であり得る低い毒性を有している。ゲニピンは、親化合物ゲニポシドの酸化、次いで還元、そして加水分解または酵素による加水分解によって調製され得る。あるいは、ラセミ体ゲニピンは、合成により調製され得る。
【0031】
ゲニピンは無色であるが、それは遊離第一アミンと反応し、そして引き続き酸化的重合を行い、青色の色素を生成する。実施形態では、この生成された青色の色素は、重合が数時間から数日の経過に亘って継続するにつれて暗くなる。この生成された青色の色素は、天然の色識別子の付加された利点を提供し得、メッシュのようなインプラントの化学的付着の点を視覚的に位置決めし得る。その他の実施形態では、化学反応の間に形成された青色の色素はまた、使用者に架橋の程度を示すために用いられ得る。例えば、より暗い青色の色は(アミンと架橋するとき)、より薄い青色と比較したとき、より多くの架橋が生じたことを示し得る。さらに、ゲニピンは、特定された程度の架橋にともなう、特定された程度の色変化を示し得る。さらに、この架橋はまた、インプラントの架橋された領域の剛直性を増加させ得る。
【0032】
色の強度は濃度依存性であり得、それ故、基体を横切ってゲニピンの濃度を変えることにより、または基体をゲニピンと異なる割合で架橋することにより、色の勾配が形成され得る。架橋の動力学はまた、ゲニピン溶液のpHを制御することにより促進され得る。
【0033】
(付着/相互作用の化学的手段)
上記基体は、生存組織と化学的に結合し得る少なくとも1つの遊離の反応基を有する反応性成分と組み合わせられ得る。特定の実施形態では、この反応性成分は基体の周り、および/または基体全体でそれ自体と架橋し得、その一方、組織表面との架橋のために遊離の反応性基を維持する。その他の実施形態では、上記反応性成分はアミン含有基体と、またはその上のアミン含有コーティングと架橋し得、そしてさらに組織と反応し得る。代替の実施形態では、上記反応性成分の第1の反応性基が基体に化学的に結合するために用いられ得、そして上記反応性成分の第2の反応性基が上記基体を組織に化学的に結合するために用いられ得る。
【0034】
いくつかの実施形態では、上記反応性成分は、それ自体と反応することにより基体に固定化され得る。例えば、上記反応性成分はそれ自体と反応し得、基体をカプセル化し、基体またその一部分を取り囲む複雑なネットワークを形成する。その他の実施形態では、基体が多孔性であるとき、上記反応性成分は、隙間または孔を貫通し得、インプラントの内部に到達する。特定の実施形態では、上記反応性成分は(遊離のアミンが存在しない場合)基体に化学的に結合しないかもしれない。上記反応性成分はまた、組織とさらに反応するために遊離の反応性基を維持し得る。
【0035】
代替の実施形態では、上記反応性成分は、基体と化学的に結合することにより基体に固定化され得る。それ故、上記反応性成分は2つ以上の反応性基を有し得る。例えば、反応性成分の第1の反応性基は基体と反応し得、そして第2の反応性基は組織と反応するために遊離のままであり得る。1つより多い反応性基は組織と反応するために遊離であり得;実施形態では、約1の反応性基〜約8の反応性基が組織と反応するために遊離であり得る。例えば、反応性成分は、タンパク質インプラントと反応性であり得る。反応性成分とインプラントとの間の化学反応は、反応性成分をインプラントに結合し得、その一方、ある部分の反応性基をインサイチュで組織表面との将来の化学反応のために未反応にする。
【0036】
実施形態では、ゲニピンは基体との化学的結合のための反応性成分として付与され得る。その他の実施形態では、ゲニピンはアミン含有成分と予め混合され得、そして基体の表面上での架橋のための混合物として付与され、それによってそれに付着されるようになる。
【0037】
(付着/相互作用のための物理的手段)
上記反応性成分は、本明細書において「反応性コーティング」と称される、医療用デバイス上のコーティングとして供給され得る。図1は、反応性コーティング6で被覆されたメッシュ基体4を示す。このメッシュ4は孔10を含み、それによってこの反応性コーティングは孔10を満たさない。しかし、反応性コーティングは、その他の孔基体中にしみ込み、孔または間隙を貫通し、そして満たすと想定される。反応性コーティング6は、滅菌および梱包の前にメッシュ4の少なくとも1つの側面または少なくとも一部分上に存在し得る。医療用デバイスをコーティングするための方法は当業者の範囲内であり、制限されないで、噴霧、浸漬、ブラッシング、蒸着、同時押出し、キャピラーウィッキング、フィルムキャスティング、成形などを含む。上記反応性成分は、基体と、この基体の少なくとも一部分上で、溶液、フィルム、発泡体、または粉末の形態で組み合わされ得る。この反応性成分は、インプラントの約0.001重量%〜約10重量%、実施形態では反応性インプラントの約0.05重量%〜約5.0重量%の量で存在し得る。
【0038】
実施形態では、本開示のインプラントを形成するために利用される基体は、アミン基を有する。このようなアミン基は上記基体それ自体、例えばコラーゲン基体に見出され得るか、またはこのような基体の表面の少なくとも一部分上のコーティングまたは層中に含まれ得る。これらのアミン基は上記の反応性成分と反応し得、それによって反応性成分とアミン基が反応したメッシュ上に架橋された領域を形成する。
【0039】
このメッシュ上の架橋された領域は、メッシュの全体の剛直性を増加させることに加え、この架橋された領域において増加させたメッシュ剛直性を提供する。
【0040】
あるいは、この反応性成分は、ポアへのしみ込み(ウィッキング)またはキャピラリー作用のような機械的相互作用により基体に固定化され得る。例えば、グラフトまたはメッシュのような織られたか、または編まれたインプラントと、ゲニピン溶液は、孔中に、または繊維間に物理的に捕捉され得る。その他の反応性溶液がまた、孔中に、または繊維間に物理的に捕捉されるようになり得ることが理解されるべきである。インプラントは特定の温度および湿度レベルでさらに乾燥され得、残存溶媒を除去し、そして反応性コーティングを後に残し、反応性インプラントを生成する。
【0041】
あるいは、上記反応性コーティングは、移植前にデバイスに付与され得、例えば、医療用デバイスを移植前に手術室中で反応性溶液中に浸す。
【0042】
例えば、反応性成分は、基体を含む特殊な注射可能なパッケージ材料ととともに用いられるべき導管に供給され得る。注射可能なパッケージの例は、2006年1月26日に出願された米国特許出願公開第2007/0170080号明細書中に開示され、その全体の内容は、本明細書中に参考として援用される。反応性成分は、外科的使用前の任意の時間に基体パッケージ中に注入され得る。実施形態では、水溶性または分散可能な反応性成分は、使用に備えて基体を飽和し、そして膨潤する。生物活性薬剤がまた、使用のときに、反応性成分に、または直接基体パッケージ中のいずれかに添加され得る。
【0043】
アミン含有組織との反応に際し、反応性インプラントは有用な時間範囲内で組織に定着すべきである。代替の実施形態では、架橋剤は、組織との反応を遅延させる助けとして化学的に「遮蔽」または「ブロック」され得るか、または目的の架橋剤は、単純に遅い反応動力学を有し得る。
【0044】
反応性成分が基体および/または組織に結合するために必要な時間の長さは、約1秒〜約6時間、実施形態では約30秒〜約2時間で変動し得る。
【0045】
反応性成分は、極性溶媒および非極性溶媒を含む溶媒と組み合わされ得、本開示の医療用デバイスに付与され得る溶液またはコーティングを生成する。溶媒の非制限的な例は、水;塩水;緩衝塩水;メタノール、エタノール、およびプロパノールを含むアルコール;ジメチルスルホキシド;ジメチルホルムアミド;塩化メチレン、クロロホルム、および1,2−ジクロロ−エタンのような塩素化炭化水素;およびヘキサン、ヘプテン、および酢酸エチルのような脂肪族炭化水素を含む。反応性成分は、約0.1w/v%〜約10w/v%の濃度で溶液中に存在し得る。
【0046】
図2は、反応性インプラントがインサイチュで生成され得る代替の実施形態を示す。反応性溶液22はインサイチュでインプラント20に付与されて(反応性インプラントを生成し)、インプラントを組織表面30に架橋する。示されるように、アプリケーター40は、反応性溶液22をインプラント20に向かって噴霧し、インプラント20を覆う。反応性溶液22はインプラント20を組織表面30に架橋し、インプラント20をインサイュで固定する。反応性溶液22はインプラント表面を覆い、そしてメッシュ間隙(図示はしていない)を貫通し得る。特定の実施形態では、この反応溶液は腹腔鏡下で身体中に噴霧され得る。この反応性溶液は、第一アミン基、第二アミン基、水酸基、カルボン酸基、スルホン基およびそれらの組み合わせなどのような組織中の官能基と反応し得る。
【0047】
特定の実施形態では、本開示の反応性インプラントはコーティングをさらに含み得る。コーティングは、(挿入のための)潤滑性を増加させること、インプラント表面の化学的反応性を改変すること、接着を促進若しくは防ぐこと、または生体適合性を増加させることを含む種々の理由のためにインプラントに付与され得る。インプラントのためのコーティングは、上記で列挙された任意の吸収性および非吸収性材料を含み得る。実施形態では、このコーティングはコラーゲンのようなポリマーを含み得る。コラーゲンは、例えば、インサイチュで組織との反応性コーティングの任意の所望されない接着を防ぐことを支援する。コーティングは、当業者の範囲内の任意の方法を用いてインプラントに付与され得、これには、制限されないで、浸漬コーティング、スプレーコーティング、溶媒蒸発などが含まれる。
【0048】
実施形態では、基体との反応性成分の架橋または化学的結合は、可視色変化を生じる。例えば、上記で記載のように、ゲニピンのアミン含有基体との架橋反応は、青色色素を形成させる。この架橋反応は、基体の表面上に、マーク、パターン、または入れ墨を生成するために用いられ得る。これらのマーキングは、身体内でのインプラントの観察、サイジングおよび配置を支援するために用いられ得る。実施形態では、反応性成分は、インプラントの1つの表面上に付与および架橋され得、それによってインプラントに少なくとも1つの識別可能な表面を提供する。実施形態では、これらマーキングは、移植に際し、どの表面を上にして、そして組織と離すべきか、およびどの表面を下にして組織上に向けるべきかを識別するために用いられ得る。
【0049】
図3に示されるように、インプラント50は、インプラント50の表面54上に選択的に分布される架橋された領域またはマーキング52を含み得る。より詳細には、この架橋された領域は、反応性成分がメッシュ上のアミン官能性基を架橋した領域である。インプラント50は、メッシュの少なくとも1つの表面に付着したコラーゲンフィルムを有するポリエステルメッシュを含む。この反応性成分は、インプラント50のコラーゲン表面54に付与され、上記に記載の任意の方法を利用してマーキング52を形成し得る。同様に、反応性成分はメッシュ表面に付与され得、それは次いでコラーゲンフィルム/表面と接触される。その他の実施形態では、反応性成分はまた、コラーゲン付着プロセスの後に付与され得る。当業者の範囲内の種々のアプリケーターがこの反応性成分を付与するために用いられ得、例えば、シリンジ、ドロッパー、マーカーまたはペン様アプリケーター、ブラシ、スポンジ、パッチ、それらの組み合わせなどを含む。マーキング52は任意の形状およびサイズであり得、インプラント50の表面54に可視的に識別可能なマークまたはパターンを提供する。
【0050】
この反応性成分は、メッシュ、すなわちコラーゲンのアミン官能性表面に付与され得る。この反応性成分は、コラーゲン形成および付着プロセスの前、その間、その後に溶液または粉末形態で付与され得る。
【0051】
いくつかの実施形態では、マーキング52は、インプラント50の表面54にわたって均一に配置され、そして外科医が組織内でインプラント50のサイズおよび配置を確かめることを支援するように均一に分布される。このマーキング52は、スケール−ルーラーに対して較正され得、外科医が、必要であるインプラント50のサイズを決定する(例えば、どの領域が削減され得るか、もしくは切り取られ得るか、または任意のさらなる片が欠陥を覆うために必要であるか否か)ことを支援する。その他の実施形態では、マーキング52は、インプラント50の表面54にわたって変化する間隔で配置され得、例えば、表面54の一部分上でマーキング52のより多く配置された領域、および表面上のその他の部分上でマーキング52のより少なく配置された領域を有し(図示はしていない)、それによって差異を示すパターンを提供し、外科医が組織上でインプラント50の適正な配向を決定することを支援する。なおその他の実施形態では、異なるマーキングがインプラントの表面上で利用され得、移植の間にインプラントの適正な位置決め、および配向を維持することを支援する。
【0052】
図4は、インプラント60の表面64にわたってバンドの形態にある一連の架橋された領域またはマーキング62を含むインプラント60の実施形態を示す。このマーキング62は、組織上のインプラントの適正な配向および配置を決定することを支援するために利用され得る(例えば、このインプラントは、組織欠陥の全体に垂直または水平に配置されるバンドで位置決めされ得る)。
【0053】
本開示の基体との反応性成分の架橋密度がまた、インプラント内に剛直にされた領域を提供するために調節され得る。反応性成分の濃度がまた、基体上の異なる位置で変動され得、それ故、反応性成分のより高い濃度が位置決めされた場所において剛直化領域をもつインプラントを提供する。この架橋された領域は、架橋されない領域よりも剛直であり、そしてそれ故、身体内に一旦配置されると、所望の可撓性を維持しながら、インプラントの取り扱いおよび折りたたみを解くことを支援する。それ故、図3および4の基体上の架橋された領域またはマーキング52、62は、インプンラント50、60に視角支援および取り扱い支援の両方を提供し得る。その他の実施形態では、反応性成分は基体の局在化された領域に強度を付与するのみであっても良く、そして色変化を誘導しない。さらに、架橋密度は、生分解性基体の加水分解プロフィールを制御することによるか、または多孔性基体の孔サイズを変えることにより調節され得る。
【0054】
図5に示されるように、反応性成分は、インプラント70の周囲に付与されても良く、インプラント70のエッジ/周縁および/または周辺で架橋された領域72を提供する。この架橋された領域72はインプラント70の取り扱いおよび折りたたみを解く特徴を増大させ、そしてまた、インプラント70を引き裂きに対してより抵抗性にし、そしてファスナーがインプラント70をその場に保持するために利用される場合に縫合またはステープル留めすることをより容易にする。図6は、インプラント80の表面84を横切る「X」の形状にある架橋された領域82を含むインプラント80を示す。この架橋された領域82は、インプラント70の末端(例えば、インプラント80については隅)まで延び、移植に際しインプラント全体が折りたたみを解かれることを確実にする。反応性成分は、インプランに所望の取り扱い性質を与える架橋された領域を提供するために任意の種々のパターンまたは形状で付与され得ることが想定される。
【0055】
本開示のインプラントは、それらの使用が必要とされる任意の外科的手順で利用され得る。実施形態では、本開示のインプラントは、開放(外科的)修復技法および腹腔鏡下での修復技法の両方を利用して、鼠径ヘルニア修復および/または腹ヘルニア修復で用いられ得る。
【0056】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの生物活性薬剤が、本開示のインプラントを形成するために利用される基体もしくは反応性成分、または両方と組み合わされ得る。本明細書で用いられるとき、用語「生物活性薬剤」はその最も広い意味で用いられ、そして臨床使用を有する任意の物質または物質の混合物を含む。生物活性薬剤は、治療または予防効果を提供する任意の薬剤、組織成長、細胞成長、細胞分化に影響または関与する化合物、抗付着化合物、免疫応答のような生物学的作用を誘起し得る可能性があるか、または1つ以上の生物学的プロセスで任意のその他の役割を演じ得る化合物であり得る。この生物活性薬剤は、物質の任意の適切な形態、例えば、フィルム、粉末、液体、ゲル、それらの組み合わせなどで医療用デバイスに付与され得る。
【0057】
本開示に従って利用され得る生物活性薬剤の非制限的なクラスの例は以下を含む:抗接着剤、抗微生物剤、抗感染剤、抗血栓症剤、抗痙攣剤、鎮痛剤、解熱剤、麻酔剤、抗てんかん薬、抗ヒスタミン剤、抗炎症剤、抗増殖剤、心臓血管薬物、診断薬剤、化学療法薬剤、テロメラーゼインヒビター、ポリアスピリンおよびポリジフルニサルを含むポリマー薬物、抗血小板薬物、血小板活性化薬物、血管新生薬剤、遺伝子治療薬剤、タンパク質治療薬、交感神経興奮剤、コリン様作用剤、抗ムスカリン剤、鎮痙薬、ホルモン、成長因子、増殖因子、筋肉弛緩剤、アドレナリン作動性ニューロン遮断薬、抗新生物剤、免疫原性薬剤、免疫抑制剤、胃腸管薬物、利尿剤、ステロイド、脂質、リポ多糖、多糖、および酵素。生物活性薬剤の組み合わせが用いられ得ることもまた意図される。
【0058】
抗接着剤が、付着が移植可能な医療用デバイスと周辺組織との間に形成されることを防ぐために用いられ得る。さらに、抗接着剤は、付着が、コーティングされた移植可能な医療用デバイスとパッケージング材料との間で形成されることを防ぐために用いられ得る。これら薬剤のいくつかの例は、制限されないで以下を含む。ポリ(ビニルピロリドン)、カルボキシメチルセルロース、ヒアルロン酸、アルギネート、コラーゲン、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、スチレンスルホン酸、ポリヒドロキシエチルメチルアクリレート、(pHEMA)およびホスホリピドビニル;ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチルアクリレート、およびポリアクリルアミド、ポリプロピレンオキシド、ホスホリルコリン官能化アクリレートおよびメタクリレートのようなアクリルポリマー;それらのホモポリマーおよびそれらの組み合わせ。上記で注記したように、実施形態では、上記基体を形成するために利用される材料はこれらの材料を含み得る、そしてそれ故、このような基体を含むインプラントは、任意のさらなる生物活性薬剤を含むことなく、抗癒着バリアとして機能し得る。
【0059】
本開示の生物活性薬剤として含まれ得る適切な抗微生物薬剤は、2,4,4’−トリクロロ−2’−ヒドロキシジフェニルエーテルとして知られるトリクロサン;クロロヘキシジンアセテート、クロロヘキシジングルコネート、クロロヘキシジンヒドロクロライド、およびクロロヘキシジンサルフェートを含むクロロヘキシジンおよびその塩;酢酸銀、安息香酸銀、炭酸銀、クエン酸銀、ヨウ素酸銀、ヨウ化銀、乳酸銀、ラウリン酸銀、硝酸銀、酸化銀、パルミチン酸銀、銀タンパク質、および銀スルファジアジンを含む銀およびその塩;ポリミキシン;テトラサイクリン;トブラマイシンおよびゲンタマイシンのようなアミノグリコシド;リファンプシン;バシトラシン;ネオマイシン;クロラムフェニコール;ミコナゾール;オキソリン酸、ノルフロキサシン、ナリジクス酸、ペフロキサシン、エノキサシンおよびシプロフロキサシンのようなキノロン;オキサシリンおよびピプラシルのようなペニシリン;ノンオキシノール9;フシジン酸;セファロスポリン;およびそれらの組み合わせを含む。さらに、ラクトフェリンおよびラクトフェリシンBのような抗微生物タンパク質およひペプチド、ならびにフカンおよびその誘導体のような抗微生物多糖類が本開示における生物活性薬剤として含まれ得る。
【0060】
本開示に従って生物活性薬剤として含まれ得るその他の生物活性薬剤は以下を含む;非ステロイド系不妊薬剤;副交感神経作用薬剤;精神治療薬;トランキライザー;充血除去剤;鎮静催眠剤;ステロイド;スルホンアミド;交感神経興奮剤;ワクチン;ビタミン;抗マラリア剤;抗偏頭痛薬剤;L−dopaのような抗パーキンソン病薬剤;抗痙攣剤;抗コリン作用薬(例えばオキシブチニン);鎮咳薬;気管支拡張薬;血管拡張薬およびニトログリセリンのような心臓血管薬剤;アルカロイド;鎮痛剤;コデイン、ジヒドロコデイノン、メペリジン、およびモルヒネのような麻酔剤;サリシレート、アスピリン、アセトアミノフェン、およびd−プロポキシフェンのような非麻酔剤;ナルトレキソンおよびナロキキソンのようなオピオイドレセプター;抗癌剤;抗痙攣薬;抗催吐薬;抗ヒスタミン剤;ホルモン薬剤、ヒドロコルチゾン、プレドニゾロン、プレドニゾン、非ホルモン薬剤、アロプリノール、インドメタシン、フェニルブタゾンなどのような抗炎症薬剤;ポリマー薬物(例えば、ポリジフルニソール、ポリアスピリン、およびタンパク質治療薬);プロスタグランジンおよび細胞傷害性薬物;エストロゲン;抗細菌剤;抗生物質;抗真菌剤;抗ウイルス剤;抗凝固剤;抗痙攣薬;抗鬱薬;抗ヒスタミン剤;および免疫学的薬剤。
【0061】
適切な生物活性薬剤のその他の例は以下を含む;ウイルスおよび細胞;ペプチド;ポリペプチドおよびタンパク質、ならびにそれらのアナログ、ムテイン、および活性フラグメント;抗体;ナノボディー(nanobody);免疫グロブリン;サイトカイン(例えば、リンホカイン、モノカイン、ケモカイン);血液凝固因子;造血因子;インターロイキン(IL−2、IL−3、IL−4、IL−6);インターフェロン(β−IFN、α−IFNおよびγ−IFN);エリスロポイエチン;ヌクレアーゼ;腫瘍壊死因子;コロニー刺激因子(例えばGCSF、GM−CSF、MCSF);インシュリン;抗腫瘍薬剤および腫瘍抑制剤;血液タンパク質;ゴナドトロピン(例えばFSH、LH、CGなど);ホルモンおよびホルモンアナログ(例えば成長ホルモン);ワクチン(例えば腫瘍抗原、細菌抗原およびウイルス抗原);ソマトスタチン;抗原;血液凝固因子;成長因子(例えば神経成長因子およびインシュリン様成長因子);タンパク質インヒビター;タンパク質アンタゴニストおよびタンパク質アゴニスト;アンチセンス分子、DNA、DNAインターカーレター、RNAおよびRNAiのような核酸;オリゴヌクレオチド;ポリヌクレオチド;およびリボザイム。
【0062】
実施形態では、生物活性薬剤は、ブピバカイン、ロピバカイン、それらの組み合わせなどのような局所麻酔薬であり得る。
【0063】
以下の実施例は、本開示の実施形態を示すために提示されている。これらの実施例は例示にすぎないことが意図され、そして本開示の範囲を制限することは意図していない。また、そうでないことが示されなければ部および%は重量による。
【実施例】
【0064】
以下の非制限的な実施例は、反応動力学を制御するために基体と反応性成分とを組み合わせること、およびインプラントにさらなる特徴を与えるために基体に添加され得る必要に応じた生物活性薬剤のための、メッシュ、パッケージングの考慮のような可能な外科用インプラントを示す。
【0065】
(実施例1)
演歌メチレン中でNHSエステルで末端キャップされたポリエチレングリコールを含む溶液を約40%w/vの濃度で調製する。United States SurgicalからのPARIETEXTMメッシュをこの溶液中で浸漬コーティングし、そして周囲温度で一晩オーブン中で乾燥し、残存するすべての溶媒を除去する。このメッシュを次いでインサイチュで移植し、そして反応性インプラント(メッシュ)は、存在するアミンを有する組織の存在下で、コラーゲンメッシュを組織に架橋し、それによって、相互貫通するネットワークを形成する。反応は30分までに起こり得、終了する。
【0066】
(実施例2)
反応性成分を、グラフト基体を含む特別の注射可能なパッケージとともに用いられるべき導管に供給する。この反応性成分を、外科的使用の直前にグラフトパッケージ中に注入し得る。水溶性または分散可能なこの反応性成分を、使用に備えてグラフト基体に飽和させ、そして膨潤する。
【0067】
提供されたパッケージからの除去に際し、インプラントは特定された時間範囲内に反応するように設計されている。必要に応じて、架橋剤を、水溶性コーティングまたは反応を遅延させる緩衝塩を含むコーティングによって化学的に遮蔽またはブロックし得、必要であれば、外科医がグラフトを再位置決めすることを可能にする。
【0068】
(実施例3)
ポリエステルメッシュが提供され、そして外科医によってインサイチュで適正に位置決めされる。一旦、位置決めされると、約60mg/mLの濃度のゲニピン溶液を腹腔鏡によりスプレーする。このゲニピン溶液は、メッシュおよび周辺組織を覆し、反応性インプラントを生成する。次の数時間にわたって、このゲニピン溶液は、メッシュを組織に架橋し、メッシュをその場に固定する。
【0069】
(実施例4)
その表面にその周縁にそって付与されたコラーゲンフィルムの細片を有するメッシュを提供する。ゲニピン溶液をこのメッシュに付与し、それによってこのゲニピンが、メッシュの周縁に沿ってコラーゲンフィルム中に見出されるアミン基を架橋する。ゲニピンのコラーゲン細片中のアミン基との架橋は、このメッシュの取り扱いと折りたたみを解く特徴を増大し、そしてまたメッシュをより引き裂き抵抗性に、そしてこのメッシュをその場に保持するためにファスナーが利用される場合に縫合またはステープル留めすることをより容易にする。
【0070】
種々の改変が本明細書中に開示される実施形態になされ得ることが理解される。従って、上記の記載は、制限的であると解釈されるべきでなく、好ましい実施形態の単なる例示である。当業者は、本開示の範囲および思想内でその他の改変を想定し得る。このような改変物および変形物は、以下の請求項の範囲内にあることが意図される。
【符号の説明】
【0071】
4 メッシュ基体
6 反応性コーティング
10 孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療用デバイスであって:
少なくとも1つの合成成分を含む基体;
該基体の表面の少なくとも一部分上の少なくとも1つの天然材料;および
該医療用デバイスの少なくとも一部分に選択的に付与される反応性成分を備え、
該反応性成分が該少なくとも1つの天然材料と反応し、該基体の表面上に少なくとも1つの架橋された領域を形成する、医療用デバイス。
【請求項2】
前記架橋された領域が、可視マーキングを含む、請求項1に記載の医療用デバイス。
【請求項3】
前記マーキングが、前記基体の表面上にパターンを形成する、請求項2に記載の医療用デバイス。
【請求項4】
前記架橋された領域が、それらが付与される基体の部分の剛直性を増加させる、請求項1に記載の医療用デバイス。
【請求項5】
前記架橋された領域が、前記基体の表面の周縁に配置される、請求項1に記載の医療用デバイス。
【請求項6】
前記架橋された領域が、前記基体の端まで延びる、請求項1に記載の医療用デバイス。
【請求項7】
前記反応性成分が、ゲニピン、イソシアネート、N−ヒドロキシスクシンイミド、シアノアクリレート、アルデヒド、ジイミド、シアナミド、カルボジイミド、ジメチルアジピミデート、スターチ、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の医療用デバイス。
【請求項8】
前記反応性成分がゲニピンを含む、請求項1に記載の医療用デバイス。
【請求項9】
前記少なくとも1つの合成成分が、ラクチド、グリコリド、カプロラクトン、バレロラクトン、カーボネート、ジオキサノン、1,ジオキセパノン、エチレングリコール、エチレンオキシド、エステルアミド、γ−ヒドロキシバレレート、β−ヒドロキシプロピオネート、α−ヒドロキシ酸、ヒドロキシブチレート、ポリ(オルトエステル)、ヒドロキシアルカノエート、チロシンカーボネート、ポリ(イミドカーボネート)、ポリ(イミノカーボネート)、ポリウレタン、ポリ酸無水物、ポリマー薬物、フルオロエチレン、フルオロプロピレン、フルオロポリエチレングリコール、ポリオレフィン、ポリエステル、ナイロン、ポリアミド、シリコーン、ポリブトエステル、ポリアリールエーテルケトン、およびそれらの組み合わせから誘導されるポリマーを含む、請求項1に記載の医療用デバイス。
【請求項10】
前記少なくとも1つの天然材料がアミン官能基を含む、請求項1に記載の医療用デバイス。
【請求項11】
前記少なくとも1つの天然材料がコラーゲンを含む、請求項10に記載の医療用デバイス。
【請求項12】
前記基体が、縫合糸、ステープル、ステント、メッシュ、テープ、ガーゼ、軟組織修復デバイス、バットレス、バンド、リボン、グラフト、足場、創傷包帯、および発泡体からなる群から選択される、請求項1に記載の医療用デバイス。
【請求項13】
前記基体がメッシュを含む、請求項12に記載のデバイス。
【請求項14】
前記医療デバイスがポリマーコーティングをさらに備える、請求項1に記載の医療用デバイス。
【請求項15】
前記医療用デバイスが生物活性薬剤をさらに含む、請求項1に記載の医療用デバイス。
【請求項16】
メッシュの剛直性を増加させる方法であって:
少なくとも1つの合成成分を含む基体を、該基体の表面の少なくとも一部分上にアミン基を含む少なくとも1つの天然材料と組み合わせて提供する工程;
該基体をゲニピン溶液と接触させる工程;
該天然材料とゲニピンとを架橋させ、該基体の表面上に局在化され架橋された領域を生成する工程、を包含し、
該局在化され架橋された領域が該メッシュの剛直性を増加させる、方法。
【請求項17】
前記架橋された領域が可視的に識別可能である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記架橋された領域が、前記基体の表面の周縁に配置される、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記少なくとも1つの合成成分が、ラクチド、グリコリド、カプロラクトン、バレロラクトン、カーボネート、ジオキサノン、1,ジオキセパノン、エチレングリコール、エチレンオキシド、エステルアミド、γ−ヒドロキシバレレート、β−ヒドロキシプロピオネート、α−ヒドロキシ酸、ヒドロキシブチレート、ポリ(オルトエステル)、ヒドロキシアルカノエート、チロシンカーボネート、ポリ(イミドカーボネート)、ポリ(イミノカーボネート)、ポリウレタン、ポリ酸無水物、ポリマー薬物、フルオロエチレン、フルオロプロピレン、フルオロポリエチレングリコール、ポリオレフィン、ポリエステル、ナイロン、ポリアミド、シリコーン、ポリブトエステル、ポリアリールエーテルケトン、およびそれらの組み合わせから派生するポリマーを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
外科用メッシュであって:
ポリエステル基体;
該ポリエステル基体の表面の少なくとも一部分上のコラーゲンのフィルム;および
該メッシュの少なくとも一部分に選択的に付与されるゲニピンを含む反応性成分、を備え、該ゲニピンが該コラーゲンを架橋し、該メッシュの剛直性を増加させる、外科用メッシュ。
【請求項21】
前記基体が織られた織物を含む、請求項20に記載の外科用メッシュ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−87928(P2011−87928A)
【公開日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−217954(P2010−217954)
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【出願人】(507362281)タイコ ヘルスケア グループ リミテッド パートナーシップ (666)
【Fターム(参考)】