説明

反応性接着剤

本発明は、次の成分(A)及び(B)並びに所望による添加剤、補助剤及び/又は触媒を含有する2成分結合剤系に関する:(A)少なくとも2個のマイケル受容体基を有する少なくとも1種のポリマーであって、1000〜1000000g/molの数平均分子量(M)を有する該ポリマーを含有する成分、及び(B)少なくとも2個の第一又は第二アミノ基又はブロック化アミノ基を有する少なくとも1種のポリマー又はオリゴマーであって、2個の末端アミノ基を有する該ポリマー又はオリゴマーを含有する成分。本発明は、該結合剤系から製造される2成分系接着剤、及び該接着剤によって接合された複合材料(例えば、フィルム等)にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイケル受容体基を有するポリマー及びアミノ基を有するポリマーに基づく架橋性の2成分の結合剤系(bonding agent system)に関する。この種の2成分結合剤系は、接着剤(adhesive)、封止剤(sealing compound)又は注型用樹脂(casting resin)を製造するために使用することができる。
【背景技術】
【0002】
当該分野においては、2成分結合剤系、特にポリオール及びNCOを末端基とする化合物に基づく2成分結合剤系は古くから知られている。この種の2成分結合剤系は、例えば、金属加工産業、自動車産業、電気産業、包装産業及び建築産業等において、接着剤、封止剤、充填剤又は注型剤として使用されている。
【0003】
「硬化剤」として使用されるNCO基具有ポリウレタンの欠点は感湿性である。このため、この種の化合物を貯蔵するためには、適切に封止された包装を利用しなければならない。一般的には、ポリオール成分の乾燥処理は、硬化剤と混合する前に、慎重におこなわれなければならない。そうでなければ、残存する湿気は、接着剤フィルム内に望ましくない気泡を発生させるからである。このような気泡は、特定の環境下においては、最終的な用途に対して不利な効果をもたらす。
【0004】
2成分系のポリウレタン接着剤に基づく少なくとも一部の結合剤系における別の欠点は、硬化性成分中におけるモノマー性イソシアネート、特に高揮発性及び/又は易移動性のモノマー性ジイソシアネートの毒性である。このような用途に関しては、ユーザーは作業場にコスト高の保護措置(特に、清浄で呼吸に適した空気を維持するための措置)を講じなければならない。この場合、ガス、蒸気又は粒状物として作業場で取り扱われる物質の空気中における最大許容濃度は法的に規制されている。
【0005】
しかしながら、遊離のモノマー性ポリイソシアネートは塗膜又は接着層の内部へ移動することができ、また、被覆又は接着された材料内へも部分的に移動することができる。このような移動性成分は技術専門家によって、一般的に「移動物(migrate)」と呼ばれている。湿分と接触すると、移動物のイソシアネート基は、一連の反応を経てアミノ基へ変化する。この種の移動物は、包装産業、特に食品の包装分野においては非常に望ましくない。即ち、包装材料を通過する該移動物によって被包装品の汚染がもたらされ、また、包装材料に移動物が含まれなくなって使用可能になるまで長期間待たなければならない。
【0006】
モノマー性ジイソシアネートの移動によってもたらされる別の望ましくない効果は、積層プラスチックフィルムからバッグ又は携帯バッグの製造に際しての所謂「耐封止効果」である。被覆プラスチックフィルムは脂肪酸アミドに基づくスリップ剤をしばしば含有する。移動したモノマー性ポリイソシアネートと脂肪酸アミド及び湿気との反応によって、該フィルムの表面上には、プラスチックフィルムの封止温度よりも高い融点を有する尿素化合物が形成される。これによって、被封止フィルム間に異種層が形成され、該層は均質な封止接合の形成を妨げる。
【0007】
特許文献1には、多官能性マイケル供与体及び少なくとも1個の多官能性マイケル受容体から成るマイケル架橋性混合物が記載されている。マイケル供与体としては、アセトアセトキシ官能基を有する化合物が記載されている。
【0008】
特許文献2には、支持体の接着法が記載されている。該特許文献には、接着剤として、多官能性マイケル供与体と多官能性マイケル受容体との混合物が記載されている。この場合、強塩基性触媒を含有させなければならない。隣接するCO基又はCN基によって活性化されるCH−酸性基を有する通常のマイケル−反応性官能基はマイケル供与体として記載されている。マイケル供与体からH原子を脱離させる化合物は、強塩基性触媒として記載されている。この種の化合物としては、アミン化合物、アンモニウム化合物、水酸化物及びアルコキシドが列挙されている。特に、第三アミン、例えば、DBU及びDBE等が挙げられている。
【0009】
上記のマイケル架橋性系の欠点は、多くの場合、非常に強い触媒を使用しなければならないという点である。特定の場合においては、このことに起因して、支持体に損傷がもたらされる。さらに、強塩基性材料を加工する場合には、適切な作業条件と安全対策が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】ヨーロッパ特許公報EP1462501号
【特許文献2】ヨーロッパ特許公報EP1435383号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明が解決しようとする課題は、イソシアネート基を有する化合物とポリオールに基づく2成分結合剤系と同じような優れた製品特性を少なくとも有すると共に、この種の結合剤系の不都合な点を有さない結合剤系を提供することである。特に、該結合剤系は優れた接着特性/封止特性を有していなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、上記の課題は、特許請求の範囲に記載の事項によって解決された。
即ち、本発明は、実質的には、下記の成分(A)及び(B)並びに所望による添加剤、補助剤及び/又は触媒を含有する2成分結合剤系に存する:
(A)少なくとも2個のマイケル受容体基を有する少なくとも1種のポリマーであって、1000〜1000000g/molの数平均分子量(M)を有する該ポリマーを含有する成分、及び
(B)少なくとも2個の第一又は第二アミノ基又はブロック化アミノ基を有する少なくとも1種のポリマー又はオリゴマーであって、2個の末端アミノ基を有する該ポリマー又はオリゴマーを含有する成分。
【発明を実施するための形態】
【0013】
成分Aの分子量(M)の上限値は、特定の場合においては、10000000g/molまでである。好ましくは、成分Aの平均分子量(M)は1500〜100000g/mol、特に好ましくは、2000〜50000g/molである。分子量は、特に明記しない限り、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)によって決定される数平均分子量(M)を意味する。
【0014】
少なくとも2個のマイケル受容体基を有する化合物としては、上記の分子量に関する基準を満たすと共に、成分Bとの反応を妨げる他の官能基を有さない限り、いずれのポリマーも使用することができる。少なくとも2個のマイケル受容体基を有する化合物は線状であってもよく、あるいは分枝状であってもよい。
【0015】
マイケル受容体として作用する官能基は、不飽和二重結合を有すると共に、α−位に電子吸引性置換基を有する官能基を意味する。このような官能基は、例えば、線状又は分枝状の脂肪族、脂環式又は芳香族の構造を有するα,β−不飽和カルボン酸誘導体(炭素原子数は2〜12、好ましくは2〜6である)であってもよい。特にこの種の誘導体としては次のものが例示される:
α,β−不飽和カルボニル化合物(例えば、α,β−不飽和アルデヒド又はケトン等)、アクリル酸誘導体、メタクリル酸誘導体、クロトン酸誘導体、イタコン酸誘導体、マレイン酸誘導体、フマル酸誘導体、シトラコン酸誘導体、桂皮酸誘導体、α−スルホ−又はホスホ置換不飽和化合物(例えば、ビニルスルホン酸誘導体及びビニルホスホン酸誘導体等)及びニトロ−スチレン誘導体。
【0016】
本発明によれば、少なくとも2個のマイケル受容体基がポリマー中に存在しなければならない。しかしながら、ポリマー構造中へ10個まで(特に5個まで)のマイケル受容体基を反応によって組み込むことができる。これらの受容体基は異なるマイケル受容体基であってもよいが、好ましくは、同じ官能基である。この基に基づく当量は、一般的には、100〜30000g/mol、特に200〜20000g/molにすべきである。
【0017】
α,β−不飽和カルボニル基のポリマーへの付与(以下においては、官能基化(functionalization)という)は、活性化不飽和二重結合を有する適当なモノマーを使用するポリマー鎖の合成中におこなうことができる。しかしながら、既製の基材ポリマーを官能化する方法が好ましい。この方法においては、酸無水物基又はイソシアネート基を有する基材ポリマーへ、ヒドロキシアルキルが置換された不飽和カルボン酸エステルを付加させる態様が特に好ましい。基材ポリマーを調製後に官能化させるためには、例えば、α,β−不飽和カルボン酸のヒドロキシ−置換アルキルエステル又は不飽和カルボン酸のヒドロキシ置換アルキルアミド等を、基材ポリマーのカルボキシル基又はエステル基とエステル交換させることができる。これにより、側鎖中に活性化不飽和二重結合を含むポリマーが得られる。官能化の別の可能な態様は、エステル交換反応によってポリマー鎖中へ組み込むことができるアルキリデンマロン酸エステル、又はカルボキシル誘導体(例えば、アルデヒド及びケトン等)を用いるポリマー(好ましくはポリエステル)のクネーヴェナーゲル反応によって調製することができるアルキリデンマロン酸エステルに関する。この場合、アルデヒドを用いるクネーヴェナーゲル反応生成物が好ましい。
【0018】
成分Aのマイケル受容体基は、好ましくは、ポリマー鎖の末端に位置する。しかしながら、一部の態様においては、この種の基がポリマー鎖全体にわたってランダム分布された化合物を成分Aとして使用してもよい。
【0019】
成分Aは、好ましくは、マイケル受容体基を有するポリマーである。この場合、基材ポリマーは脂肪化合物、ポリエーテル、ポリエーテルポリオール、ポリエステル、ポリエステルポリオール、ポリカーボネート、ポリカルボン酸、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアミド、ポリウレタン及びこれらの任意の混合物から成る群から選択される。脂肪化合物は、好ましくは、アルコキシル化されたヒマシ油又はダイマージオールである。成分Aとして使用されるポリアミドは、アミン性NH基を有さないポリアミドである。この種の基材ポリマー自体は既知であり、これらの固有の特性に応じて選択することができる。
【0020】
成分Aの選択と不飽和カルボニル誘導体を用いる官能化の選択によって、エステル基のみ又はウレタン基を有するポリマーを得ることが可能である。この方法により、ポリマーの粘度を調整することができる。別の実施態様においては、複数のα,β−不飽和カルボニル基を有する別の低分子量成分A1を、より高い分子量を有するポリマーの外に、結合剤系に含有させることができる。この成分は、1000g/mol未満(好ましくは、800g/mol未満)の分子量を有すると共に、少なくとも2個のα,β−不飽和カルボニル基を有しているべきである。例えば、この種の成分としては、前述のα,β−不飽和カルボン酸と反応してエステル基を形成した二価〜五価アルコールが例示される。この種の成分は反応性希釈剤とも呼ばれており、その添加量は、成分Aの量に基づいて、例えば、50重量%まで(好ましくは、25重量%まで)である。
【0021】
本発明による結合剤系は、成分Bとして、少なくとも2個の−NHR原子団(式中、RはH、アルキル基又はアリール基を示す)を有する少なくとも1種の化合物、この種の化合物の混合物、又は少なくとも1個の−NH基を有する化合物を含有する。この成分Bは、成分B1として60〜500g/mol(好ましくは60〜300g/mol)の平均分子量(M)を有するか、又は成分B2として500g/molよりも高い平均分子量(M)を有する。この場合、成分Bは成分B1又はB2として存在するか、又は成分B1とB2の混合物として存在する。添加されるB1とB2との混合物中における成分B1対B2の重量比は0.5:20〜20:0.5である。
【0022】
成分B2の平均分子量(M)の上限は約5000000g/molである。好ましくは、成分B2は、800〜2000000g/mol(特に好ましくは1000〜1500000g/mol)の平均分子量(M)を有する。本発明に従って添加される成分B1は、単一成分として添加してもよいが、好ましくは、成分B1として使用することができる適当な化合物の混合物として添加される。
【0023】
本発明において使用可能な成分Bは線状又は分枝状であってもよい。成分Bの分子主鎖は、脂肪族構造、芳香族構造、脂肪族−芳香族構造、脂環式構造、及び複素環式構造を含むことができる。第一及び/又は第二及び第三アミンを分子中に存在させることができるが、少なくとも2個の−NHR原子団又はNH基(好ましくは2個の第一アミノ基)が含まれていなければならない。アミンの機能自体は脂肪族的である(即ち、アミン窒素原子に直接的に隣接する炭素原子は、芳香族環構造の一部を成すものではない)。
【0024】
成分B1は、好ましくは、アルキレンジアミン及び/又はシクロアルキレンジアミンから成る群から選択される。アルキレンジアミンは次の一般式で表される化合物を意味する: RN−Z−NR
(式中、R、R、R及びRは相互に独立して、H、アルキル基又はシクロアルキル基を示し、Zは、2個よりも多くの炭素原子を有する線状又は分枝状の飽和又は不飽和アルキレン鎖を示す)。
【0025】
好ましいアルキレンジアミンを次に例示する:ジアミノエタン、ジアミノプロパン、1,2−ジアミノ−2−メチルプロパン、1,3−ジアミノ−2,2−ジメチルプロパン、ジアミノブタン、ジアミノペンタン、1,5−ジアミノ−2−メチルペンタン、ネオペンチルジアミン、ジアミノヘキサン、1,6−ジアミノ−2,2,4−トリメチルヘキサン、1,6−ジアミノ−2、4,4−トリメチルヘキサン、ジアミノヘプタン、ジアミノオクタン、ジアミノノナン、ジアミノデカン、ジアミノウンデカン、ジアミノドデカン、ダイマーアミン(例えば、コグニス社から「ヴェルサミン(Versamin)551」の商品名で市販さえている製品)、トリアセトンジアミン、ジオキサデカンジアミン、N,N−ビス(3−アミノプロピル)−ドデシルアミン及びこれらの任意の混合物。
【0026】
シクロアルキレンジアミンは次の一般式で表される化合物を意味する:
N−Y−NR1011
(式中、R、R、R10及びR11は相互に独立して、H、アルキル基又はシクロアルキル基を示し、Yは、3個よりも多くの炭素原子(好ましくは4個よりも多くの炭素原子)を有する飽和又は不飽和シクロアルキル基を示す)
【0027】
好ましいシクロアルキレンジアミンを次に例示する:ジアミノシクロペンタン、ジアミノシクロヘキサン、ジアミノシクロヘプタン、例えば、1,4−シクロヘキサンジアミン、4,4’−メチレン−ビス−シクロヘキシルアミン、4,4’−イソプロピレン−ビス−シクロヘキシルアミン、イソホロンジアミン、m−キシレンジアミン、N−アミノエチルピペラジン、及びこれらの任意の混合物。
【0028】
ジアミンはアルキル基とシクロアルキル基の両方を有していてもよい。好ましいこの種のジアミンとしては、アミノエチルピペラジン、1,8−ジアミノ−p−メンタン、イソホロンジアミン、1,2−(ビスアミノメチル)−シクロヘキサン、1,3−(ビスアミノメチル)−シクロヘキサン、1,4−(ビスアミノメチル)−シクロヘキサン及びビス−(4−アミノシクロヘキシル)−メタンが例示される。本発明により、成分B1として使用することができる別のジアミンとしては、ビス−(6−アミノヘキシル)−アミン及びα,α−ジアミノキシレン等が例示される。
【0029】
好ましくは、成分B1及び/又はB2としては、多官能性アミンが使用される。特に、この種のアミンとしては、アミノ官能化ポリアルキレングリコール、例えば、1,2−ビス−(アミノエトキシ)−エタン、1,13−ジアミノ−4,7,10−トリオキサトリデカン等が例示される。本発明において使用することができる好ましいアミン官能化ポリアルキレングリコールは市販品として入手可能である。成分B1及び/又は成分B2として使用することができる類似の好ましい多官能性アミンは、次の一般式で表される化合物である:
N−(CHCH−NH)−CHCH−NH
(式中、xは2より大きくて、10よりも小さな数を示す)
【0030】
この種の化合物としては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ジプロピレントリアミン、ビス−(3−アミノプロピル)−アミン、N,N−ビス−(3−アミノプロピル)−エチレンジアミン、ビス−ヘキサメチレントリアミン及びヘプタエチレンオクタミン等が例示される。
【0031】
好ましくは、成分B2としては、次の群から選択されるポリマーが使用される:ポリアミン、ポリイミン、ポリエーテル、ポリアミド、ポリアミノアミド、ポリウレタン、ポリオレフィン、ポリビニルアミン及びこれらの任意の混合物。
【0032】
成分B2として使用することができるポリアミンは下記の非特許文献及びこれらの文献において引用されている文献に記載されている:
1)ヘンリー・リー及びクリス・ネヴィレ、「エポキシ樹脂便覧」、第7章、第7−1頁〜第7−33頁、マグローヒル・ブックカンパニー(ニューヨーク)発行;1967年、及び
2)クレイトンA.メイ、「エポキシ樹脂」、第466頁〜第468頁、マルセル・デッカー社(ニューヨーク)発行;1988年。
【0033】
好ましいポリイミンはポリエチレンイミンである。ポリエチレンイミンのアミン水素の機能は、例えば、アルキル化、ベンジル化、アセチル化及びアルコキシル化(好ましくは、エトキシル化及び/又はプロポキシル化)等によって部分的に変性させることができる。エピクロロヒドリンを用いる変性が特に好ましい。使用することができる好ましいポリエチレンイミンは市販品として入手可能である。
【0034】
ポリアミノアミドは、主鎖中にアミン官能価とアミド官能価の両方を含む。ポリアミノアミドは、ポリアミンとジカルボン酸との重縮合によって調製されるか、又はジアミンへのアクリル酸のマイケル付加とこれによって得られるアミノ酸エステルの重縮合によって調製される。成分B2として使用することができるポリアミノアミドは下記の非特許文献及びこれらの文献に引用されている文献に記載されている:
1)ヘンリー・リー及びクリス・ネヴィレ、「エポキシ樹脂便覧」、第10章、第10−1頁〜第10−23頁、マグローヒル・ブックカンパニー(ニューヨーク)発行;1967年、及び
2)クレイトンA.メイ、「エポキシ樹脂」、第469頁、マルセル・デッカー社(ニューヨーク)発行;1988年。
【0035】
本発明においては、脂肪族ポリアミンと2量化脂肪酸又は3量化脂肪酸の重縮合によって得られる好ましいポリアミノアミドが使用される。非グラフト化ポリアミノアミド及びグラフト化ポリアミノアミド、例えば、国際公開公報WO 94/29422に記載されているポリアミノアミド等も使用することができる。
【0036】
成分B2として使用することができる別の好ましいポリアミンは、ポリビニルアミンである。ポリビニルアミンは、例えば、N−ビニルアクリルアミン(例えば、N−ビニルホルムアミド及びN−ビニルアセトアミド等)の重合化とその後の生成物のアミド基の完全加水分解又は部分的加水分解によって調製することができる。アミンを末端基とするポリエーテルウレタンは同様にして入手可能である。
【0037】
成分B2として使用することができる別のポリアミンは、分枝鎖の末端にアミノ基(特に第一アミノ基)を有する分枝度の高いポリマーである。成分B2として使用される分枝状度の高い特に好ましい一群のポリマーは、デンドリマー(dendrimer)、カスケードポリマー(cascade polymer)又はスターバーストポリマー(starburst polymer)としても知られている樹状ポリマー(dendritic polymer)である。この種のポリマーは、既に結合した各モノマーに対して2以上のモノマーを結合させることによって段階的に構築される合成高分子として理解されている。この合成反応においては、モノマー性末端基の数が各段階で指数関数的に増加する結果として、最終的には球状の樹木状構造がもたらされる。好ましいデンドリマーは、分枝鎖の末端に第一アミノ官能基を有するポリアミノアミド(PAMAM)である。
【0038】
成分B2として使用することができる別の好ましい分枝度の高い一群のポリマーは、例えば、前述の一般式HN−(CHCH−NH)−CHCH−NH(式中、xは2より大きくて、10よりも小さな数を示す)であらわされる多官能性アミンに属する適当な代表的アミン(例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン及びペンタエチレンヘキサミン等)とアクリル酸エステルとの段階的反応によって調製されるポリマーである。
【0039】
本発明において使用することができる成分B2は、成分B1として使用可能なものとして先に言及した低分子量の多官能性アミンを環状カーボネート(平均分子量(M):1000g/mol未満、好ましくは100〜800g/mol)と反応させることによって調製することができる(この場合、後者に対して前者を過剰量使用する)。このような調製法においては、シクロカーボネートに対して適当なモル過剰量のアミンを選択すべきであり、これによって、第一に本発明に係る分子量が達成され、第二に本発明に係る成分B2として使用するためのアミン官能価がもたらされる。
【0040】
本発明に従って添加される成分B2は、単一の成分として添加してもよいが、成分B2としてしようできる適当な化合物の混合物として添加してもよい。
【0041】
所望により、少なくとも1個の第一アミノ基を有する化合物を成分B3として含有させることができる。この種の化合物も、2つの活性化二重結合と反応することができる。アミノ基上の置換基Rとしては、種々の有機基、例えば、アルキル置換基、アリール置換基、線状、分枝状、環状又は複素環状の置換基、及びポリエーテル、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリウレタン又はポリオレフィンに基づく置換基等から選択することができる。成分B3の分子量は、好ましくは50〜5000g/mol、特に100〜2000g/molにすべきである。
【0042】
特定の実施態様においては、ブロックされた第一アミノ基又は第二アミノ基を有する成分B4も使用することができる。この場合、保護剤で処理されたアミノ基を有する前述のポリアミンを使用することができる。ブロック化処理は、例えば、ケチミン基、オキサゾリジン基又はアゼチジン基によっておこなうことができる。この種のブロック化アミンは市販品として入手可能であり(例えば、バイエル社製の「デスモフェン(Desmophem)」)、また、例えば、独国特許公報DE 10356489に記載されている。
【0043】
ブロック剤は湿気によって開裂する。これによって得られる第一アミノ基又は第二アミノ基は、成分Aの反応性マイケル受容体基と反応する。
【0044】
本発明による結合剤系は、接着剤/封止剤として特に適している。従って、本発明は、本発明による結合剤系を使用することによって、接着剤/封止剤を製造する方法にも関する。この方法においては、成分Aと成分Bは、「α,β−不飽和活性化二重結合」対「第一アミノ基」の比率が3:1〜1:5、好ましくは2.5:1〜1:4、特に好ましくは2:1〜1:2.5、特に1.5:1〜1:1.5になるように混合される。この場合、成分A及びA1並びに成分B1、B2、B3及びB4に含まれる各々の官能基が考慮される。本発明の好ましい実施態様においては、成分Aと成分Bとの反応は、溶剤の存在下でおこなう。
【0045】
反応溶剤としては、基本的には、当業者に既知の全ての溶剤を使用することができるが、特に、エステル、ケトン、ハロゲン化炭化水素、アルカン、アルケン及び芳香族炭化水素が使用される。このような溶剤としては、下記の溶剤が例示されるが、ハロゲン不含溶剤が好ましい:
塩化メチレン、トリクロロエチレン、トルエン、キシレン、酢酸ブチル、酢酸アミル、酢酸イソブチル、メチルイソブチルケトン、酢酸メトキシブチル、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、ジクロロベンゼン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、ジオキサン、酢酸エチル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルアセテート、2−エチルヘキシルアセテート、グリコールジアセテート、ヘプタン、ヘキサン、イソオクタン、酢酸イソプロピル、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、テトラクロロエチレン及びこれらの溶剤の2種以上の混合溶剤。
【0046】
本発明の特定の実施態様においては、成分Aと成分Bの反応は触媒の存在下でおこなう。この場合、反応混合物中へ触媒量の塩基が添加される。この種の塩基とその添加量に関しては、次の非特許文献に記載されている:
1)「フーベン−ウェイル」、第XI/1巻(1957年)、第277頁以降、及び
2)パタイ、「アミノ基の化学」、第61頁〜第65頁、インターサイエンス社(ニューヨーク);1968年。
【0047】
本発明によれば、マイケル反応を触媒する化合物を成分B中に存在させなければならない。この化合物はルイス塩基又はブレンステッド塩基の形態の触媒から成る。この場合、後者の共役酸は、少なくとも10のpKaを有する。特に、この種の触媒はアミン含有塩基又はアミン不含塩基である。例示的なアミン不含塩基としては、アルカリ金属の水酸化物又はアルコラート、例えば、LiOH、NaOH、KOH、NaH、KH、CaH、Naメトキシド、Naエトキシド、Kメトキシド、カリウムt−ブトキシド、炭酸カリウム、炭酸カルシウム及びこれらに類似する化合物等が挙げられる。
【0048】
ルイス塩基、例えば、下記の群から選択される塩基は特に適当な触媒であることが判明した。:
脂環式アミン(例えば、ジアザビシクロオクタン(DABCO)等)、脂肪族第三アミン(例えば、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−メチルジイソプロピルアミン及びN−ブチルジエタノールアミン等)、アミジン(例えば、ジアザビシクロノネン(DBN)、ジアザビシクロウンデセン(DBU)等)、グアニジン(例えば、N,N,N’,N’−テトラメチルグアニジン等)、ピリジン誘導体(例えば、2,3,4−ビニルピリジンのコポリマー等)、及びアミン含有アクリレート(例えば、2−ジメチルアミノエチルアクリレート、2−ジエチルアミノエチルアクリレート及び3−ジメチルアミノプロピルアクリレート等)のコポリマー。
【0049】
別のルイス塩基としては、アルキル置換基又はアリール置換基を有するホスファン、例えば、トリブチルホスファン、トリフェニルホスファン、トリス−p−トリルホスファン、メチルジフェニルホスファン及びヒドロキシル基とアミノ基を有するホスファンが挙げられる。塩基性イオン交換樹脂も適当な触媒である。上記の触媒は成分A又は成分Bに含有させる。
【0050】
驚くべきことには、次のことが判明した。即ち、この種の結合剤系は適当な接着剤/封止剤であって、多種多様な大多数の材料に対して非常に優れた接着性を示すことによって特徴づけられる。このようなポリウレタン接着剤/封止剤はNCO基を実質上含んでおらず、そのままで使用することができ、また、一般的な有機溶剤を溶媒とする溶液として使用することもできる。この種の結合剤の基剤は変化させることができ、例えば、ポリウレタン又はポリエステルを基剤ポリマーとして含有させることができる。「NCO基を実質上含有しない」ということは、これらの成分中のNCO含有量が、合成反応に起因する可能性のある僅かな痕跡量であることを意味する。
【0051】
本発明による結合剤系は、多種多様な大多数の支持体の接着(gluing)と封止(sealing)のために適している。支持体としては、木材、金属、ガラス、植物性繊維、石材、紙材、セルロース水和物及びプラスチック(例えば、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、塩化ビニルと塩化ビニリデンとのコポリマー、酢酸ビニルとオレフィンとのコポリマー及びポリアミド等)が例示される。特にプラスチックフィルム及び金属、特にアルミニウムフィルム、鉛フィルム及び銅フィルムが挙げられる。
【0052】
1成分系又は2成分系の接着剤、封止剤又は注型用樹脂は、本発明による結合剤系から製造することができる。このような配合物には、常套の添加剤(例えば、可塑剤、シラン、酸化防止剤、UV安定剤及び老化防止剤等)を配合することができる。好ましい可塑剤は、フタル酸エステル(例えば、ジオクチルフタレート、ジトリデシルフタレート及びブチルベンジルフタレート等)、リン酸エステル(例えば、トリクレシルホスフェート等)、アジピン酸エステル(例えば、ジオクチルアジペート等)及び安息香酸エステル(例えば、プロピレングリコールジベンゾエート等)である。ガラスや金属等に対する接着強さを改善するために、アミノシラン、エポキシシラン又はメルカプトシラン、特にγ−グリシジルオキシプロピル−トリメトキシシラン又はγ−アミノプロピル−トリメトキシシランを添加することができる。上記の添加剤は成分A及び成分Bの一方又は両方へ含有させることができる。
【0053】
特に、本発明による結合剤系は、紙、厚紙、木材、プラスチック、金属及び陶器を接着させるための2成分系接着剤として適している。本発明の特に好ましい実施態様においては、本発明による結合剤系は、溶剤不含型又は溶剤含有型の貼合せ用接着剤として使用される。
【0054】
本発明による結合剤は、当該分野において一般的に使用されている塗布法を用いて、接着されるべき支持体へ塗布することができる。このような塗布法としては、例えば、溶剤不含型又は溶剤含有型の結合剤系を使用する場合、噴霧法、ドクターブレードを用いる方法及びアプリケーターロールを用いる方法等が挙げられる。
【0055】
成分B4を添加することにより、湿分硬化性の1成分系の接着剤又は封止剤を製造することができる。接着剤の粘度は、添加剤の選択によって調整することができる。成分A又は成分Bとして高分子量ポリマーを使用する場合には、例えば、接着剤の粘度は溶剤、可塑剤又は反応性希釈剤等を用いて低減させることができる。しかしながら、低粘性接着剤系は、成分A1又は成分B1として低分子量物質を使用することにより、溶剤を使用せずに調製することができる。この場合、2成分系接着剤(2K接着剤)に対しては、100〜10000mPas、特に500〜5000mPasの粘度を得ることができる。溶剤不含型接着剤に対しては、80℃までの比較的高い測定/塗布温度が主として採用されが、溶剤含有型接着剤に対しては、20〜30℃の測定/塗布温度が主として採用される(ブルックフィールド LVT、EN ISO 2555)。
【0056】
本発明による接着剤系は、その低粘度に起因して、感温性プラスチックフィルム、例えば、ポリオレフィンフィルム(特にポリエチレンフィルム又はポリプロピレンフィルム)を接着させるために特に適している。
【0057】
従って、本発明は、本発明による接着剤系を使用することにより、少なくとも2枚の同一又は異なるプラスチックフィルムの表面を部分的又は全面的に接着させることによって複合フィルムを製造する方法にも関する。その他の支持体、例えば、紙又は金属フィルム等も、所望により、本発明による接着剤系を用いて接着させることができる。
【0058】
接着されるべきフィルム上への2成分系接着剤の塗布は、この種の目的のために常用されている機械、例えば、常套の貼合せ機等を用いて行うことができる。支持体を接着又は封止するためには、接着又は封止されるべき支持体の少なくとも片側に混合物である接着剤を塗布し、次いでこのようにして塗布された面を少なくとも1つの付加的な支持体と接着させる。この場合、塗布温度は20〜80℃にすることができるが、通常は50℃までである。
【0059】
さらに本発明は、本発明による接着剤系を使用する本発明による上記製法によって製造される複合フィルムにも関する。この複合フィルムは、食料品、高級食品及び医薬品の包装に対して特に適している。
【0060】
封止剤として用途に対しては、無機充填剤、例えば、カーボンブラック、炭酸カルシウム及び二酸化チタン等が本発明による結合剤系へ添加される。無機充填剤としてな、好ましくは、チキソトロープ効果をもたらす高分散シリカ、特に熱分解法シリカ又は沈降シリカが使用される。このチキソトロープ性は、長期の貯蔵期間の経過後においても、本発明による結合剤系中に保持される。
【0061】
本発明の別の好ましい実施態様においては、本発明による結合剤系は、絶縁性のフォーム(foam)又は注型用樹脂を製造するために使用される。特に、本発明による結合剤系は、建築用電気部材、例えばケーブル、光ファイバー、カバーストリップ(cover strip)及びプラグ等を汚染物(特に水)の侵入から保護するため、及びこれらの部材の設置中の機械的損傷と温度暴露から保護するための注型用樹脂として適している。このような目的のためには、本発明による結合剤系は、好ましくは、高分散シリカ及び所望による中空品(例えば、ガラス製中空品等)並びに炭化水素に基づく溶剤、ポリマーに基づく有機増粘剤、及び所望による分散剤を含有する。本発明による結合剤系の注型用樹脂としての特徴は、優れた熱安定性である。
【0062】
2成分結合剤系を用いて製造される接着剤又は封止剤は、移動性の低分子量アミンを含有しない系の製造を可能にする。揮発性及び反応性のイソシアネートが存在しないため、職業上の生理学的予防措置を部分的に緩和させることができる。本発明による接着剤中に含まれる一般的に高い分子量を有するアミンの移動性は非常に低いので、該接着剤を用いてフィルム又はその他の支持体が接着されても、長期間の貯蔵後における包装された製品中へのアミンの移動性は低減される。
【0063】
ポリマー成分の選択によって、溶剤を含有しない低粘性の接着剤又は注型用樹脂の製造が可能となり、また、所望により、可塑剤を使用しないでこの種の低粘性の接着剤又は注型用樹脂を製造することができる。
【0064】
以下においては、例示的な実施例を用いて、本発明をより詳細に説明する。特に言及しない限り、以下に記載の「量」の単位は「重量%」である。
【0065】
粘度測定
溶融粘度は、エップレヒト社製のICI円錐プレート粘度計(円錐型D)を用いて測定した。
また、引張測定は、DIN 53504に従っておこなった。
【0066】
原料:
「ポリオールA」;ヘンケル社製の液状ポリエステルポリオール(官能価:2、OH価:58)。
「ポリオールB」;ヘンケル社製の液状ポリエステルポリオール(官能価:2、OH価:140)。
「ポリオールC」;デグッサ社製の製品「ダイナコル 7150」(43のOH価を有する非晶質ポリエステルポリオール)
「ポリオールD」;デグッサ社製の製品「ダイナコル 7360」(28のOH価を有する結晶質ポリエステルポリオール)
「ルプラナート(Lupranat)MIS」;BASF社製のジフェニルメタンジイソシアネート(異性体混合物)
「MDI」;バイエル社製の「デスモデュール44M」(4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート)
【0067】
「PEI」;アルドリッチ・ケミカル社製の低分子量ポリエチレンイミン
「HEA」;2−ヒドロキシエチルアクリレート
「トーン(Tone)M−100」;ドウ社製のカプロラクトンアクリレート
「デスモフェン(Desmophen)VPLS 2965」;バイエル社製のケチミン
「ジェファミン(Jeffamine)T 403」;フンツマン社製のトリメチロールプロパン−ポリ(オキシプロピレン)−トリアミン
「GLYMO」;デグッサ社製の3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン
「BHT」;3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシトルエン
「TEPA」;バイエル社製のテトラエチレンペンタミン
「CPP−フィルム」;ノルデニア社製のポリプロピレンキャストフィルム「PP0946.080型」(厚さ:50μm)
「PET−フィルム」;ミツビシ社製のポリエチレンテレフタレートフィルム「RNK 12型」(厚さ:12μm)
【0068】
実施例1(プレポリマー)
攪拌機、温度計及び不活性ガスの流入/排出弁を具備した4つ口フラスコ(容量:1リットル)内へポリオールA(120g)、ポリオールB(100g)及びポリオールC(80g)を導入し、該混合物を、10 mbar 未満の圧力下において120℃で1時間にわたって溶融/乾燥させた。フラスコ内を乾燥窒素で換気した後、フラスコ内の温度を90℃まで低下させ、MDI(82g)を添加した。得られた混合物を100℃で撹拌した。1時間後、NCOの量は2.31重量%になった。次いで、BHT(0.4g)を添加して均質化させ、さらに、100〜120℃の温度での撹拌下においてHEA(24.4g)を添加して、NCOの量を0.1重量%未満にした。得られたプレポリマーの粘度は9000mPa・s/125℃であった。
【0069】
実施例2
実施例1において調製したプレポリマー(90g)を、室温での撹拌下において、酢酸エチル(100g)中へ溶解させた。得られた溶液(50g)中へジェファミンT−403(1.73g)を添加し、得られた混合物を均質化処理に1分間付した。この混合物を、エリクセン社製のドクターブレード(間隙:500μm)を用いてシリコーン紙上に塗布し、該塗布紙を室温下での空気中において乾燥させ、塗布層の溶融粘度を経時的測定した。125℃で測定した5時間後及び24時間後における溶融粘度はそれぞれ15Pa・s及び189Pa・sであった。4日後におけるフィルムの最終的な引張強さ及び破断点伸びはそれぞれ5N/mm及び750%であった。
【0070】
実施例3
実施例1において調製したプレポリマー(90g)を、室温での撹拌下において、酢酸エチル(100g)中へ溶解させた。得られた溶液(25g)中へPEI(0.12g)を添加し、得られた混合物を均質化処理に1分間付した。この混合物を、ドクターブレード(間隙:500μm)を用いてシリコーン紙上に塗布し、該塗布紙を室温下での空気中において乾燥させた。室温で4日間貯蔵させた後のフィルムの引張剪断強さ及び破断点伸びはそれぞれ7N/mm及び360%であった。
【0071】
ブナ材試験片(ロッコル社製;100mm(長さ)×25mm(幅)×5mm(厚さ))を、上記溶液を用いて重ねて接着させた(重なり長さ:10mm)。該試験片を室温で14日間貯蔵させた後、ブナ材の部分的破断によって引張剪断強さを測定したところ、7.1N/mmであった。
【0072】
実施例4(プレポリマー)
攪拌機、温度計及び不活性ガスの流入/排出弁を具備した4つ口フラスコ(容量:1リットル)内へポリオールA(120g)、ポリオールB(70g)、ポリオールC(80g)及びポリオールD(80g)を導入し、該混合物を、10 mbar 未満の圧力下において120℃で1時間にわたって溶融/乾燥させた。フラスコ内を乾燥窒素で換気した後、フラスコ内の温度を90℃まで低下させ、MDI(58.1g)を添加した。得られた混合物を100℃で撹拌した。1時間後、NCOの量は1.80重量%になった。次いで、BHT(0.35g)及びHEA(17.8g)を添加し、NCOの量が0.1重量%未満になるまで撹拌を続行した。得られたプレポリマーの粘度は32000mPa・s/125℃であった。
【0073】
実施例5
実施例4において調製したプレポリマー(103g)を、室温での撹拌下において、酢酸エチル(100g)中へ溶解させた。得られた溶液(25g)中へPEI(0.13g)を添加し、得られた混合物を均質化処理に1分間付した。この混合物を、エリクセン社製のドクターブレード(間隙:500μm)を用いてシリコーン紙上に塗布し、該塗布紙を室温下での空気中において乾燥させた。室温で14日間貯蔵させた後のフィルムの引張強さ及び破断点伸びはそれぞれ11.2N/mm及び205%であった。
【0074】
ブナ材試験片(ロッコル社製;100mm(長さ)×25mm(幅)×5mm(厚さ))を、上記溶液を用いて重ねて接着させた(重なり長さ:10mm)。該試験片を室温で14日間貯蔵させた後、引張剪断強さを測定したところ、1N/mmであり、ブナ材は破断した。
【0075】
実施例6
実施例4において調製したプレポリマー(104g)を、室温での撹拌下において、酢酸エチル(100g)中へ溶解させた。得られた溶液(25g)中へTEPA(0.5g)を添加し、得られた混合物を均質化処理に1分間付した。ブナ材試験片(ロッコル社製;100mm(長さ)×25mm(幅)×5mm(厚さ))を、上記溶液を用いて重ねて接着させた(重なり長さ:10mm)。該試験片を室温で14日間貯蔵させた後、引張剪断強さを測定したところ、6.4N/mmであり、ブナ材は部分的に破断した。
【0076】
実施例7
実施例4において調製したプレポリマー(103g)を、室温での撹拌下において、酢酸エチル(100g)中へ溶解させた。得られた溶液(25g)中へ「デスモフェンVPLS 2965」(0.87g)を添加し、得られた混合物を均質化処理に1分間付した。ブナ材試験片(100mm(長さ)×25mm(幅)×5mm(厚さ))を、上記溶液を用いて重ねて接着させた(重なり長さ:10mm)。該試験片を室温で14日間貯蔵させた後、引張剪断強さを測定したところ、5N/mmであった。
【0077】
実施例8(プレポリマー)
攪拌機、温度計及び不活性ガスの流入/排出弁を具備した4つ口フラスコ(容量:1リットル)内へポリオールA(70g)、ポリオールB(70g)、ポリオールC(80g)及びポリオールD(80g)を導入し、該混合物を、10 mbar 未満の圧力下において120℃で1時間にわたって溶融/乾燥させた。フラスコ内を乾燥窒素で換気した後、フラスコ内の温度を90℃まで低下させ、MDI(58.1g)を添加した。得られた混合物を100℃で撹拌した。1時間後、NCOの量は1.80重量%になった。次いで、BHT(0.4g)及び「トーン−M−100」(53.5g)を添加し、NCOの量が0.1重量%未満になるまで撹拌を続行した。得られたプレポリマーの粘度は20500mPa・s/125℃であった。
【0078】
実施例9
実施例8において調製したプレポリマー(35g)を、室温での撹拌下において、酢酸エチル(35g)中へ溶解させた。得られた溶液(20g)中へTEPA(0.34g)を添加し、得られた混合物を均質化処理に1分間付した。この混合物を、エリクセン社製のスパイラルドクターブレード(K 手動塗布機 620;K−スタブno.1)を用いてPETフィルム上に塗布し、空気を注意深く吹き付けながら溶剤を蒸発させた後、直ちに、表面をコロナ放電処理に付したCPPフィルムのシートを貼り付け、圧力を均等に印加し、気泡を加圧ローラー(ヘンケル社製)で除去した後、室温下で貯蔵した。この複合フィルムから幅が15mmのストリップを切り取り、該複合フィルムの接着強さ、引張試験機(インストロン 4301)を用いる90℃剥離試験によって測定した。試験速度は100mm/分とした。室温下で1日貯蔵した後の測定値は5N/15mmであった。
【0079】
実施例10
実施例8において調製したプレポリマー(35g)を、室温での撹拌下において、酢酸エチル(35g)中へ溶解させた。得られた溶液(20g)中へPEI(0.1g)を添加し、得られた混合物を均質化処理に1分間付した。この混合物を、エリクセン社製のスパイラルドクターブレードを用いてPETフィルム上に塗布し、空気を注意深く吹き付けながら溶剤を蒸発させた後(約3分間)、直ちに、表面をコロナ放電処理に付したCPPフィルムのシートを貼り付け、圧力を均等に印加し、気泡を加圧ローラー(ヘンケル社製)で除去した後、室温下で貯蔵した。この複合フィルムから幅が15mmのストリップを切り取り、該複合フィルムの接着強さ、引張試験機(インストロン 4301)を用いる90℃剥離試験によって測定した。試験速度は100mm/分とした。室温下で1日貯蔵した後の測定値は10N/15mmであり、PETフィルムには裂け目が見られた。
【0080】
実施例11
実施例8において調製したプレポリマー(35g)を、室温での撹拌下において、酢酸エチル(35g)中へ溶解させた。得られた溶液(20g)中へPEI(0.1g)を添加し、得られた混合物を均質化処理に1分間付した。この混合物を、エリクセン社製のスパイラルドクターブレードを用いてアルミニウム/PET複合フィルム(該複合フィルムは、厚さ12μmのアルミニウム箔(ノルスク・ヒドロ社製)と厚さ12μmのPETフィルム(ミツビシ社製の「RNK 12」)を、ヘンケル社製の「リオフォル(Liofol) UK 3640/6800」を用いて貼合せたものである)のアルミニウム表面上に塗布し、加温空気を注意深く吹き付けながら溶剤を蒸発させた後、直ちに、表面をコロナ放電処理に付したCPPフィルムのシートを貼り付け、圧力を均等に印加し、気泡を加圧ローラー(ヘンケル社製)で除去した後、室温下で貯蔵した。この複合フィルムから幅が15mmのストリップを切り取り、アルミニウムに対するポリプロピレン複合材の接着強さを、引張試験機(インストロン 4301)を用いる90℃剥離試験によって測定した。試験速度は100mm/分とした。室温下で1日及び7日間貯蔵した後の測定値はそれぞれ6N/15mm及び8N/15mmであった。
【0081】
実施例12
実施例11において調製した溶液中へ、固形分に基づいて1重量%の「GLYMO」をさらに添加した。この混合物を、エリクセン社製のスパイラルドクターブレードを用いてアルミニウム/PET複合フィルム(該複合フィルムは、厚さ12μmのアルミニウム箔(ノルスク・ヒドロ社製)と厚さ12μmのPETフィルム(ミツビシ社製の「RNK 12」)を、ヘンケル社製の「リオフォル(Liofol) UK 3640/6800」を用いて貼合せたものである)のアルミニウム表面上に塗布し、加温空気を注意深く吹き付けながら溶剤を蒸発させた後、直ちに、表面をコロナ放電処理に付したCPPフィルムのシートを貼り付け、圧力を均等に印加し、気泡を加圧ローラー(ヘンケル社製)で除去した後、室温下で貯蔵した。この複合フィルムから幅が15mmのストリップを切り取り、アルミニウムに対するポリプロピレン複合材の接着強さ、引張試験機(インストロン 4301)を用いる90℃剥離試験によって測定した。試験速度は100mm/分とした。室温下で7日間貯蔵した後の測定値は11N/15mmであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の成分(A)及び(B)並びに所望による添加剤、補助剤及び/又は触媒を含有する2成分結合剤系:
(A)少なくとも2個のマイケル受容体基を有する少なくとも1種のポリマーであって、1000〜1000000g/molの数平均分子量(M)を有する該ポリマーを含有する成分、及び
(B)少なくとも2個の第一又は第二アミノ基又はブロック化アミノ基を有する少なくとも1種のポリマー又はオリゴマーであって、2個の末端アミノ基を有する該ポリマー又はオリゴマーを含有する成分。
【請求項2】
マイケル受容体基がポリマー鎖の末端に位置する請求項1記載の2成分結合剤系。
【請求項3】
マイケル受容体基がポリマー鎖にランダム分布する請求項1記載の2成分結合剤系。
【請求項4】
マイケル受容体基がポリマー鎖の一部であるか、又はポリマー鎖の側鎖中に存在する請求項1から3いずれかに記載の2成分結合剤系。
【請求項5】
マケル受容体基が、α, β−不飽和ケト基又はエステル基、特にC−C12モノ−又はジ−カルボン酸エステル基である請求項1から4いずれかに記載の2成分結合剤系。
【請求項6】
成分Aのポリマーが1500〜100000の分子量を有する請求項1から5いずれかに記載の2成分結合剤系。
【請求項7】
成分Bのポリマー又はオリゴマーが末端第一アミノ基を有する請求項1から6いずれかに記載の2成分結合剤系。
【請求項8】
アミノ基がブロック化アミノ基である請求項1から7いずれかに記載の2成分結合剤系。
【請求項9】
成分Bのポリマー又はオリゴマーが線状、分枝状又は星状のポリマーである請求項1から8いずれかに記載の2成分結合剤系。
【請求項10】
2−位又は3−位が官能基によって置換されたポリエーテルアミンを成分Bとして含有する請求項1から9いずれかに記載の2成分結合剤系。
【請求項11】
成分Bに含まれるポリマー/オリゴマーの分子量が60〜2000000g/mol、特に60〜500g/mol及び/又は500〜1500000g/molである請求項1から10いずれかに記載の2成分結合剤系。
【請求項12】
B1とB2との混合物を含有する請求項1から11いずれかに記載の2成分結合剤系。
【請求項13】
付加的な成分B3を含有する請求項1から11いずれかに記載の2成分結合剤系。
【請求項14】
請求項1から13いずれかに記載の2成分結合剤系を含有する2成分接着剤。
【請求項15】
溶剤を含有しない請求項14記載の2成分接着剤。
【請求項16】
マイケル受容体基:アミノ基の比が3:1〜1:5、好ましくは2:1〜1:2.5である請求項14又は15記載の2成分接着剤。
【請求項17】
10よりも大きな共役酸のpKa値を有する触媒として、5重量%までのルイス塩基又はブレンステッド塩基を含有する請求項14から16いずれかに記載の2成分接着剤。
【請求項18】
構成成分を混合した直後に、100〜10000mPas(20℃〜80℃での測定値)の粘度を示す請求項14から17いずれかに記載の2成分接着剤。
【請求項19】
成分Aが、500g/mol未満の分子量を有するポリ不飽和カルボン酸エステルをさらに含有する請求項14から18いずれかに記載の2成分接着剤。
【請求項20】
請求項14から19いずれかに記載の2成分接着剤を、軟質フィルム支持体を接合させるために使用する方法。
【請求項21】
支持体の被接合表面がプラスチック製表面、紙製表面又は金属製表面を有する請求項20記載の方法。

【公表番号】特表2010−510365(P2010−510365A)
【公表日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−537574(P2009−537574)
【出願日】平成19年9月18日(2007.9.18)
【国際出願番号】PCT/EP2007/059828
【国際公開番号】WO2008/061828
【国際公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【出願人】(391008825)ヘンケル・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェン (309)
【氏名又は名称原語表記】Henkel AG & Co. KGaA
【住所又は居所原語表記】Henkelstrasse 67,D−40589 Duesseldorf,Germany
【Fターム(参考)】