説明

反応混合物からの樹脂の分離装置

【課題】反応混合物、特に発酵ブロス全体から樹脂を分離する、より優れた装置の要求がある。
【解決手段】本装置は、反応混合物からの樹脂の分離を提供する。装置は、サイドポート、2つの入口/出口ポート及び2つのフランジを取り付けたカラムを含む。各フランジは、支持グリッドにより支持される多層ネットスクリーンを取り付ける。カラム自体は、支持構造体に結合する。反応混合物から樹脂を除くためのこの装置を使用する方法を提供する。ここで、当該反応混合物は装置に添加され、樹脂は濾去されるが、樹脂は依然としてカラム中に残り、このとき廃棄物は除かれる。次いで、残りの樹脂を洗浄し溶出して、精製生成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、反応混合物から、特に発酵ブロスからの樹脂の分離装置、及び当該装置を用いる、反応混合物からの樹脂の分離方法を包含する。
【背景技術】
【0002】
関連出願の相互参照
本願は、米国仮出願第60/819,951(2006年7月10日に出願)、米国仮出願第60/834,606(2006年7月31日に出願)及び米国仮出願第60/847,805(2006年9月27日に出願)の利益を請求する。これらの前記出願の各々は、参照として本明細書に全体が引用される。
【0003】
発明の背景
反応混合物からの生成物の分離は、時々、非常に複雑であり、退屈であり、低収率の生成物を生じ、時には低純度にもなる。この問題は、例えば、固体が、固体からの生成物の分離を困難にする異なった性質を有する反応混合物中に存在するときに証明される。別の例は、生物剤、例えば微生物が、有機又は無機のいずれかの物質上で増殖する、発酵工程であり、かかる増殖中又は増殖後に、生物剤は、所定の他の有機物質に混じって産生する。典型的には、得られた発酵ブロスは、使用済み生物質量(すなわち、微生物細胞)を除くために濾過し、得られた透明な濾液は、所定の特定の生成物と結合する樹脂を有する、バッチ処理するか又はクロマトグラフカラム中で処理する。次いで、樹脂を洗浄し、望ましくない不純物を除き、所望の生成物を好適な溶媒混合物で溶出する。次の工程中、合成及び天然樹脂を発酵生成物の回収及び精製のために大規模に使用する。
【0004】
近年、Journal Ind. Microbiol. 5: 283-288、Journal of Industrial Microbiology 1996, 16, 305-308、J. Antibiot. 55: 141-146, Biotechnology and Bioengineering, 78(3): 280-288, (2002)、Letters in Applied Microbiology 2003, 37, 196-200、米国特許出願US 2005/0170475 A1号、及びJ. Nat. Prod. 2002, 65, 570-572に開示されているように、上記の方法は、発酵中又は濾過前の収穫ブロス内へのいずれかの樹脂の添加により実行されてきた。
【0005】
この方法は、いくつかの利点を有する、例えば、発酵の生産性を上げることができ及び/又は生成物の安定性を改善することができ、及び/又は抽出収率を上げることができる。
【0006】
かかる工程では、反応混合物からの樹脂の分離について懸念がある、例えば、発酵ブロス全体である。これは、特に、当該工程が工業的スケールで行われるときに重大な技術的問題を引き起こす。
【0007】
公知の、反応混合物からの樹脂の分離装置は、現在、GE Healthグループの一部であるAmersham Biosciencesにより供給される、「拡張吸着流動床」である。これは、粗供給原料から直接的にタンパク質を回収するための、STREAMLINE(商標)吸着剤及びカラムを使用するユニット操作である。しかしながら、タンパク質の主な捕獲のためには、拡張吸着流動床(「EBA」)技術が主に使用されている。
【0008】
J. Antibiot. 55: 141-146, (2002)では、生成物を捕獲するために、8.9X33 cmカラムを使用した。
【0009】
Biotechnology and Bioengineering, 78(3): 280-288, (2002)では、小さな発酵ブロス試料のみを処理し、ブロス全体ではなかった。これらの試料では、樹脂は、重力により落ち着き、細胞を含む培養ブロスを静かに注いだ。
【0010】
Letters in Applied Microbiology 2003, 37, 196-200では、菌糸体を含む培養試料及び樹脂を、1670 gで10分間遠心して分離し、培養上清を静かに注いだ。
【0011】
米国特許出願US 2005/0170475 A1号は、10グラムのXAD16ビーズと共に6時間、攪拌することにより、1リットルの発酵ブロスを処理することを開示する。混合物は次いで遠心分離し、上清を除いた。
【0012】
J. Nat. Prod. 2002, 65, 570-572は、ワイヤーメッシュ濾過器を用いて、1000 Lの発酵液からの、20リットルのXAD16樹脂の回収を開示する。
【0013】
当該分野では、反応混合物、特に発酵ブロス全体から樹脂を分離する、より優れた装置の要求がある。
【発明の開示】
【0014】
発明の概要
1つの実施態様では、本発明は、反応混合物からの樹脂の分離装置を提供する。当該装置は、サイドポート及び2つのフランジを有し、その1つは、カラムのいずれかの末端にあり、各々は、支持グリッドにより支持される多層のネットスクリーンに取り付けられている、回転式円筒状カラムである。
【0015】
別の実施態様では、本発明は、反応混合物でカラムを装填し、反応混合物から樹脂を濾去し、樹脂を洗浄し、及び樹脂から生成物を溶出することを含む、反応混合物からの樹脂の分離方法を提供する。ここで、樹脂は、工程全体においてカラム中に残る。
【0016】
発明の詳細な説明
本発明の装置は、反応混合物からの樹脂の分離を可能にすると同時に、技師と樹脂との物理的接触、すなわち、反応混合物からの樹脂の手動的除去を避ける。また、本装置は、フィルターから手動で樹脂を除く必要なく、そして溶出ステップのためにそれをカラム中に置く必要なく、樹脂からの生成物の溶出の遂行を可能にする。従って、本装置は、生成物が強力であるときに特に有利であり、よって、生成物と環境との接触を避けることができる。これは、技師の点からも望ましい因子である。
【0017】
本発明は、反応混合物からの樹脂の分離装置を提供する。当該装置は、サイドポート及び2つのフランジを有し、その1つは、カラムのいずれかの末端にあり、各々は、支持グリッドにより支持される多層のネットスクリーンに取り付けられている、回転式円筒状カラムである。好ましくは、反応混合物は、発酵ブロス又は固相化学合成からの混合物である。好ましくは、樹脂は、ポリマー性吸着樹脂である。より好ましくは、樹脂は、ポリスチレン/ジビニルベンゼン吸着剤樹脂(例えば、Amberlite XAD16、Amberlite XAD4、Diaion HP20、Amberlite XAD1600、Amberlite XAD1180、Diaion HP21、Sepabeads SP825、Sepabeads SP850、Sepabeads SP70、Sepabeads SP700、又はSepabeads SP207)又はポリアクリル酸吸着樹脂(例えば、Amberlite XAD7又はDiaion HP2MG)である。Amberlite XADは、Rohm and Haas Co.の商標であり、Diaion及びSepabeads樹脂は、三菱ケミカルにより供給される。これらの種類の樹脂の他の供給元もある。代替的には、異なった吸着相互作用(例えば、イオン交換、アフィニティ、金属アフィニティ、疎水性相互作用等)で働く樹脂が使用できる。
【0018】
本発明の装置の好ましい実施態様を、図1を参考に説明する。以下の実施態様は、発明の範囲を限定することを意図するものではなく、発明の範囲内に他の実施態様が存在することは当業者により理解されるだろう。
【0019】
図1に示すように、装置は、円筒状カラム1が、支持構造体2へのアタッチメント10の少なくとも1つの点(複数)により、その水平(すなわち、半径)軸の周りに回転可能であるように、支持構造体2に取り付けられた円筒状カラム1を含む。カラム1は、好ましくは、空のクロマトグラフカラムである。カラム1を回転させることを条件に、支持構造体2は、任意の形状又は大きさでよく、固定しても又は移動可能でもよい(例えば、ホィール上に取り付ける)。アタッチメント10の少なくとも1点は、その半径軸の周りにカラム1の回転を許容する、任意の手段を含むことがある。本発明に一致して、カラム1は、アタッチメント10の少なくとも1点により、支持構造体2に取り付けることができるが、好ましくはアタッチメント10の2つの点が存在し、1つはカラム1のいずれかの側上にあり、アタッチメント10のこれらの点は、好ましくは、カラム1の中央に位置し、好ましくは互いに正反対に配置される。好ましくは、アタッチメント10の2つのポイントは、互いに、カラム1と垂直に、カラム1の外層壁の中央に溶接されたシャフトを含み、このアタッチメント10の点は、カラム1の反対側にある。好ましくは、シャフトは、カラム1の回転を可能にする軸受装置を介して、支持構造体2に接触し、1つのシャフトは、空気モーターに連結され、回転を促進する。円筒状カラム1は、サイドポート3及び2つのフランジ4/5を含み、これは、上部フランジ4及び下部フランジ5と称することができ、上部フランジ4は、カラム1が垂直位置にあるときには、下部フランジよりも高い垂直位置に配置される。フランジ4/5は、互いにネットスクリーン6に取り付けられ、好ましくは多層を成し、支持グリッド7により支持される。サイドポート3は、好ましくは、シリンダーの垂直部のおおよそ中央に配置され、好ましくはシリンダーの内部と通じている。加えて、円筒状カラム1の端部は、入口/出口ポート8及び9にカラムの各側に連結される。カラム1の大きさは、濾過される樹脂の量及び分離の困難性に従って変更することができ、当業者は、好適なカラムサイズを決定することができるだろう。
【0020】
場合により、カラム1は、必要な操作温度が環境温度と異なるときに被覆することができる。
【0021】
好ましくは、ネットスクリーン6の網目サイズは、樹脂及び付着生成物がカラム1内に保持され、同時に、反応混合物の残余(例えば、発酵反応の場合には、微生物細胞、不溶性及び/又は反応混合物の未使用の成分を含む不溶性廃棄物)が濾去されるように、特定される。好ましくは、追加のポート及び接続が、図示しないが、フランジ4/5のいずれか1つ又は両方に存在して、処理流動体の流動及び/又は計測器、例えば、圧力計及び/又は温度計の取り付けを可能にする。
【0022】
好ましくは、図1に示される装置の部品1〜5及び7〜10は、金属アロイ、プラスチック、ガラス及びガラスで裏打ちされた材料からなる群より選ばれる材料からできている。当該材料は、洗浄及び溶出工程で使用される溶媒に従って選択される。より好ましくは、材料は、金属アロイであり、最も好ましくは、ステンレス鋼である。好ましくは、ネットスクリーン6は、金属アロイ又はプラスチックのいずれかからできている。好ましくは、任意のガスケット又はO-リングは、使用される溶媒と適合する材料からできている。好ましくは、材料は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)である。
【0023】
フランジ4/5は、装置を安定化させるために使用される。従って、カラム1が支持される限り、フランジは、任意の所望の形状を有することができる。
【0024】
本発明は、反応混合物でカラムを装填し、樹脂及び付着生成物を反応混合物から濾去し、樹脂及び付着生成物を洗浄し、並びに樹脂から生成物を溶出すること、を含む、反応混合物からの樹脂の分離方法を提供する。ここで、樹脂は、全工程中(すなわち、濾過、洗浄及び溶出のステップ中)にカラム中に残る。
【0025】
本発明の工程の好ましい実施態様、特に、発酵ブロスからの反応混合物に適用される工程の好ましい実施態様を、図2〜4を参考に記載する。以下の実施態様は、発明の範囲を限定する意図ではなく、発明の範囲内の他の実施態様が存在することを当業者により理解されるだろう。
【0026】
図2〜4に示すように、カラム1を反応混合物で装填し、反応混合物から樹脂を濾去し、樹脂を洗浄し、及び生成物を樹脂から溶出する、ことを含む、反応混合物からの樹脂の分離方法を提供する。ここで、樹脂は、全工程を通じて、カラム1中に残る。生成物は、吸収、吸着、イオン性相互作用、アフィニティ相互作用及び疎水性相互作用を含むがこれらに限定されない、任意のメカニズムにより結合することができる。好ましくは、生成物は、マクロリド(特に、ポリケチド マクロラクトン)、ポリペプチド、グリコペプチド、ヌクレオチド及びアントラサイクリンからなる群より選ばれる。より好ましくは、生成物は、エポチロン(特に、エポチロンD)、マイトマイシン、シクロスポリン、ブレオマイシン、ダウノルビシン及びフルダラビンからなる群より選ばれる。最も好ましくは、生成物は、エポチロンDである。
【0027】
好ましくは、反応混合物は、カラム1のサイドポート3を通じて装填され、同時に、図2に記載に示すように、水平位でカラム1を維持する。好ましくは、水平位でカラム1を維持し続けながら、樹脂は、次いで、カラム1内に残すことにより濾去され、同時に、反応混合物の廃棄物は、入口/出口ポート8/9の少なくとも1つによりカラム1から押し出される。好ましくは、廃棄物は、重力により押し出されるが、圧力、真空又はこれらの任意の組み合わせは、同様に使用することができる。圧力及び/又は真空は、ポンプ又は他の圧力誘導装置を入口/出口ポート8/9及び/又はサイドポート3のいずれか1つ又は両方に取り付けることにより、カラム1に適用することができる。代替的には、圧力及び/又は真空は、フランジ4/5のいずれか1つ又は両方上の追加のポート又は接続を介して、カラム1に適用することができる。
【0028】
廃棄物は、望ましくなく、かつ濾過工程により除くことができる、バイオマス又は任意の他の成分でよい。バイオマスは、微生物細胞、不溶性及び/又は発酵媒体の未使用の成分(例えば、小麦粉、デンプン、炭酸カルシウム等)を含むことがある。好ましくは、廃棄物は、入口/出口ポート8/9の1つを通じて、カラム1から離れる。場合により、入口/出口ポート8/9の両方は、廃棄物を除くために使用することができ、濾過表面を二重にする。場合により、圧力又は真空は、濾過のスピードを上げるために使用することができる。好ましくは、ネットスクリーン6は、図2に描くように、目詰まりの場合には、廃棄反応混合物を用いて又は新鮮な溶媒を用いて、バックフラッシュにより清浄することができる。バックフラッシュのために使用される溶媒は、好ましくは、洗浄のために使用されるものと同一の溶媒である。
【0029】
樹脂及び付着生成物の洗浄は、カラム1に溶媒を加えることにより行われる。溶媒は、サイドポート3又は入口/出口ポート8/9のいずれかにより加えることができる。好ましくは、カラム1への溶媒の添加前に、洗浄は、図3に示すようにカラム1の垂直位への移動を含む。好ましくは、溶媒は、水、酸性水(例えば、水性鉱酸、例えば、塩酸及び硫酸、又は水性有機酸、例えば、ギ酸又は酢酸等)、塩基性水(例えば、水性水酸化物塩基、例えば、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウム、又は水性炭酸塩塩基、例えば、炭酸ナトリウム又は炭酸カリウム等)、緩衝液、水もしくは緩衝液中で溶解性又は部分的に溶解性である有機溶媒、及びこれらの混合物をからなる群より選ばれる。好ましくは、有機溶媒は、アセトン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、及び/又は酢酸エチルを含むが、これらに限定されない。好ましくは、有機溶媒は、メタノールである。好ましくは、溶媒は、水である。生成物の安定性及び溶解性と適合する任意の緩衝剤が使用できる。緩衝剤は、酢酸塩、炭酸塩、重炭酸塩、リン酸塩及びアンモニウム化合物(例えば、酢酸ナトリウム又は酢酸)を含むが、これらに限定されない。好ましくは、溶媒は、図3に示すように、最上側の入口/出口ポート8から、又は最下側の入口/出口ポート9から、圧力により、添加される。好ましくは、洗浄中に、最少量の生成物が樹脂から離れないか又は全く樹脂から離れない。
【0030】
好ましくは、洗浄は、廃棄物の離脱を確実にするために繰り返される。好ましくは、カラム1は、行きつ戻りつ、すなわち、縦横及びその逆に、回転することができる。底からの洗浄は、樹脂を懸濁させる。
【0031】
好ましくは、生成物の溶出は、図4に示すように、垂直位にカラム1を配置し、そして上部の入口/出口ポート8を通じて好適な溶媒を加えることにより、行われる。好ましくは、溶媒は、溶出用に使用される溶媒が、洗浄用に使用される溶媒と、組成及び割合の点で、同一ではないことを条件に、(上記の)洗浄ステップで用いられるものと同一の溶媒、水非混和性有機溶媒、及びこれらの混合物からなる群より選ばれる。例えば、水と洗浄ステップで使用される有機溶媒との混合物が、溶出用にも使用されるとき、水対有機溶媒の比は、生成物が溶出ステップにおいて溶出し、洗浄ステップでは溶出することができないように、洗浄ステップよりも溶出ステップの方が小さい。必要な特定の比は、生成物及び使用される樹脂に依拠するだろう、そして、当業者により開発された工程において、規定の実験により容易に決定することができる。水非混和性有機溶媒は、トルエン及びジクロロメタンを含むがこれらに限定されない。好ましくは、生成物を含む溶出液は、底の入口/出口ポート9から回収される。
【0032】
各ステップ(濾過、洗浄、溶出)の様々な工程パラメーター(温度、圧力、時間等)の限定は、装置に使用される材料の安定性、並びに樹脂及び付着生成物の安定性に基づく。かかる限定は、当業者には容易に明らかであろう。
【0033】
特定の好ましい実施態様を参考に本発明を説明してきたが。明細書の考慮から、他の実施態様が当業者には明らかであろう。本発明は、本発明の工程及び組成物を詳細に記載する以下の「実施例」を参考に更に特定される。材料及び方法に関する多くの変更が本発明の範囲を逸脱することなく実行することができる、ことが当業者にはあきらかであろう。
【実施例】
【0034】
実施例1:エポチロンを含む反応混合物からの樹脂の分離
エポチロンの製造は、本明細書にその全体が参照として引用される、Lau, J, Frykman S, Regentin R, Ou S, Tsuruta H, Licari O, Optimizing the Heterologous production of Epothilone D in Myxococcus xanthus, Biotechnology and Bioengineering. 78(3): 281-288 (2002) に記載されているように、吸着樹脂の存在下で、マイキソコッカス キサンツス(Myxococcus xanthus)を発酵させることにより行った。発酵工程の最後に、上記の装置を用いて、以下のように、樹脂を細胞から分離した。
【0035】
233.6 gのエポチロンD及び180 LのXAD16(Rohm & Hass Co.から入手可能な、スチレン/ジビニルベンゼンポリマー性吸着剤)を含む8300 Lの発酵ブロスを、高さ100 cm及び内径60 cmを有し、水平位にあるカラム1に、サイドポート3を通じて装填した。濾過を2時間内に行った。カラム1を垂直位に移動し、濁りが観察されなくなるまで、600 L/時間の流速で、樹脂を800 Lの精製水で洗浄した。使用済みブロスでは、活性が検出されなかった。
【0036】
次いで、生成物である、エポチロンDを、2300 Lの84:16(v/v)メタノール/水の混合物を用いて樹脂から溶出した。224.5 gのEPO D活性を96.1 %の収率で回収した、得られた溶液を、本明細書にその全体が参照として引用される、Arslanian RL, Parker CD, Wang PK, McIntire JR, Lau J, Starks C, Licari PJ, Large-Scale Isolation and Cystallization of Epothilone D from Myxococcus xanthus Cultures, J. Nat. Products, 65: 570-572 (2002) で報告されている精製工程の次のステップに供した。
【0037】
実施例2:マイトマイシンを含む反応混合物からの樹脂の分離
8100 Lの収穫ブロスを、2000 Lのメタノール及び200 LのXAD4樹脂と混合し、室温で16時間攪拌した。次いで、サイドポート3を通じて水平位にあるカラム1に懸濁液を装填し、樹脂を濾過した。カラム1を次いで、垂直位に移動し、バックフラッシュで1000 Lの精製水を用いて洗浄した。次いで、生成物であるマイトマイシンをメタノールで溶出し、収穫ブロス中に含まれる元の活性の約95 %を回収した。予測した回収は、溶出液中の生成物の予測量を、収穫ブロス中の生成物の量(元の活性)で除した値に基づく。以下の実施例の予測収率は、同様に決定した。
【0038】
実施例3:マイトマイシンを含む反応混合物からの樹脂の分離
7800 Lの収穫ブロスを、2000 Lのメタノール及び180 LのXAD16樹脂と混合し、室温で16時間攪拌した。次いで、サイドポート3を通じて水平位にあるカラム1に懸濁液を装填し、樹脂を濾過した。次いで、カラム1を垂直位に移動し、バックフラッシュで1000 Lの精製水を用いて洗浄した。次いで、生成物であるマイトマイシンをメタノールで溶出し、収穫ブロス中に含まれる元の活性の約92 %を回収した。
【0039】
実施例4:マイトマイシンを含む反応混合物からの樹脂の分離
マイトマイシンの発酵は、2 %(w/v)のXAD7樹脂の存在下で行った。発酵工程の最後に、サイドポート3を通じて水平位にあるカラム1にブロスを装填し。次いで、使用済みブロスを除き、同時に樹脂を精製水で洗浄した。次いで、生成物であるマイトマイシンを酢酸エチルの6カラム容を用いて、85 %の抽出収率で回収した。
【0040】
実施例5:シクロスポリンを含む反応混合物からの樹脂の分離
2850 Lのシクロスポリン発酵ブロスを、350 Lのメタノール及び200 LのXAD16樹脂と混合し、室温で16時間攪拌した。次いで、サイドポート3を通じて水平位にあるカラム1に懸濁液を装填し、樹脂を濾過した。次いで、カラム1を垂直位に移動し、バックフラッシュで1000 Lの精製水を用いて洗浄した。次いで、生成物であるシクロスポリンをメタノールで溶出し、収穫ブロス中に含まれる元の活性の約85 %を回収した。
【0041】
実施例6:ダウノルビシンを含む反応混合物からの樹脂の分離
発酵工程の最後に、8500 Lのダウノルビシン収穫ブロスを、20時間攪拌しながら、酸性条件下、30℃で処理した。次いで、pHをNaOH溶液で6に調整し、200 LのHP20樹脂を加え、懸濁液を室温で更に16時間攪拌した。次いで、懸濁液を濾過し、サイドポート3を通じて水平位にあるカラム1に装填した。次いで、カラム1を垂直位に移動し、1000 Lの精製水で洗浄した。次いで、生成物であるダウノルビシンをアセトンで溶出し、収穫ブロス中に含まれる元の活性の約70 %を回収した。
【0042】
実施例7:ブレオマイシンを含む反応混合物からの樹脂の分離
ブレオマイシンの発酵は、10000 L発酵タンク中で3 %(w/v)のHP20樹脂の存在下で行った。発酵工程の最後に、サイドポート3を通じて水平位にあるカラム1にブロスを装填し。次いで、使用済みブロスを除き、同時に樹脂を精製水で洗浄した。次いで、生成物であるブレオマイシンを80:20(v/v)の水/アセトンの7カラム容を用いて、90 %の抽出収率で回収した。
【0043】
実施例8:フルダラビンを含む反応混合物からの樹脂の分離
1000 Lのステンレス鋼反応器中で、pH 7の400 Lのリン酸緩衝液/ジメチルホルミアミド80:20(v/v)混合物中で、2400 gの2-フルオロアデニンを懸濁した。次いで、6000 gのアラビノシルウラシル(ARA-U)及び8400 gのE. coli NP25細胞ペーストを100 LのXAD16樹脂に加えた。次いで、懸濁液を60℃で24時間攪拌し、水平位にあるカラム1を用いて濾過して、使用済み細菌細胞及び未結合の副生成物を除いた。次いで、カラム1を垂直位に移動し、400 Lの精製水で洗浄した。次いで、生成物であるフルダラビンを90:10(v/v)のジメチルホルミアミド/精製水の混合物で溶出し、抽出物に更なる水を加えて沈殿させた。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】図1は、垂直位での、本発明の装置の1つの実施態様の側面の概念図である。
【図2】図2は、反応混合物からの樹脂の濾過中の、水平位での、本発明の装置の1つの実施態様の側面の概念図である。
【図3】図3は、樹脂の洗浄中の、垂直位での、本発明の装置の1つの実施態様の側面の概念図である。
【図4】図4は、樹脂からの生成物の溶出の、垂直位での、本発明の装置の1つの実施態様の側面の概念図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能な円筒状カラムを含む、反応混合物からの樹脂の分離装置であって、当該円筒状カラムの各末端がネットスクリーンを備える、前記装置。
【請求項2】
前記円筒状カラムの各末端のネットスクリーンが、支持グリッドに取り付けられている、請求項1記載の装置。
【請求項3】
各支持グリッドが、フランジを備える、請求項2記載の装置。
【請求項4】
前記ネットスクリーンが複数の層を含む、請求項1〜3のいずれか1項記載の装置。
【請求項5】
前記カラムが、おおよそ半径軸、回転可能である、請求項1〜4のいずれか1項記載の装置。
【請求項6】
前記カラムが、アタッチメントの少なくとも1つの点により支持構造体に取り付けられ、当該アタッチメントのポイントが、半径軸の周りにカラムの回転を可能にする、請求項5記載の装置。
【請求項7】
前記カラムが、アタッチメントの2つの点に支持構造体に取り付けられ、当該アタッチメントの点が、半径軸の周りにカラムの回転を可能にするように互いに正反対に配置される、請求項6記載の装置。
【請求項8】
アタッチメントの2つの点の各々が、カラム外層面上に溶接されたシャフトにより結合され、各シャフトは支持構造体に取り付けられる、請求項7記載の装置。
【請求項9】
前記シャフトの各々が、軸受装置を介して支持構造体と接触する、請求項8記載の装置。
【請求項10】
少なくとも1つのシャフトが、モーターに結合する、請求項8又は9記載の装置。
【請求項11】
前記円筒状カラムが、シリンダーの内部と通じているサイドポートを備える、請求項1〜10のいずれか1項記載の装置。
【請求項12】
前記サイドポートが、シリンダーの長手部上に配置される、請求項11記載の装置。
【請求項13】
前記サイドポートが、シリンダーの長手部のおおよそ中央に配置される、請求項12記載の装置。
【請求項14】
各フランジが、シリンダーの内部と通じている少なくとも1つの入口/出口ポートを備える、請求項1〜13のいずれか1項記載の装置。
【請求項15】
前記ネットスクリーン又は前記のネットスクリーンの複数層が、吸収生成物を有する樹脂をカラムの内側に保持させ、同時に反応混合物の残余を通過させる、網目サイズを形成する、請求項1〜14のいずれか1項記載の装置。
【請求項16】
フランジの1方又は両方が、処理流動体の流動及び/又は計測器の取り付けを可能にするための追加のポートを備える、請求項14又は15記載の装置。
【請求項17】
前記カラムが、分離層を備える、請求項1〜16のいずれか1項記載の装置。
【請求項18】
前記分離層が、被覆物である、請求項17記載の装置。
【請求項19】
前記カラム、支持構造体、サイドポート、入口/出口ポート、フランジ及び支持グリッドが、金属アロイ、プラスチック、ガラスで裏打ちした材料及びガラス製である、請求項1〜18のいずれか1項記載の装置。
【請求項20】
前記カラム、支持構造体、サイドポート、入口/出口ポート、フランジ及び支持グリッドが、金属アロイ製である、請求項1〜19のいずれか1項記載の装置。
【請求項21】
前記金属アロイが、ステンレス鋼である、請求項20記載の装置。
【請求項22】
図1〜4に描かれている、請求項1〜21のいずれか1項記載の装置。
【請求項23】
反応混合物でカラムを装填し、反応混合物から樹脂を濾去し、樹脂を洗浄し、及び樹脂から生成物を溶出することを含み、当該樹脂が工程全体を通じてカラム中に残る、反応混合物からの樹脂の分離方法。
【請求項24】
(a) 付着生成物を有する樹脂を含む反応混合物で、請求項1〜22のいずれか1項に定義された装置の円筒状カラムを装填し;
(b) 残存する反応混合物が廃棄物としてカラムから除かれるように、反応混合物から、付着生成物を有する樹脂を濾過し;
(c) 付着生成物を有する樹脂を第一溶媒で洗浄し;及び
(d) 付着生成物を樹脂から第二溶媒で溶出すること、
を含み、樹脂がステップ (b) 〜 (d) の間にカラム中に残る、請求項23記載の方法。
【請求項25】
前記反応混合物が、サイドポートを通じて装填され、同時にカラムが水平位にある、請求項24記載の方法。
【請求項26】
前記濾過が、水平位にあるカラムで実行される、請求項23〜25のいずれか1項記載の方法。
【請求項27】
前記廃棄物が、少なくとも1つの入口/出口ポートから除かれる、請求項24〜26のいずれか1項記載の方法。
【請求項28】
前記廃棄物が、2つの入口/出口ポートから除かれる、請求項27記載の方法。
【請求項29】
前記濾過のステップ中、前記廃棄物を除くために圧力又は真空がカラムに適用される、請求項24〜29のいずれか1項記載の方法。
【請求項30】
前記カラムが垂直位にある間に、最上層の入口/出口ポートを介して第一溶媒を加えることにより前記洗浄ステップ (c) が行われる、請求項24〜29のいずれか1項記載の方法。
【請求項31】
選択された任意有機溶媒が、水又は任意の選択された緩衝液中で溶解性又は部分的に溶解性であるという条件で、前記第一溶媒が、水、酸性水、塩基性水、緩衝液、有機溶媒及びそれらの混合物からなる群より選ばれる、請求項24〜30のいずれか1項記載の方法。
【請求項32】
前記有機溶媒が、アセトン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、酢酸エチル及びそれらの混合物から選ばれる、請求項31記載の方法。
【請求項33】
前記有機溶媒がメタノールである、請求項32記載の方法。
【請求項34】
前記第一溶媒が水である、請求項31記載の方法。
【請求項35】
前記緩衝液が、アセトン、炭酸塩、重炭酸塩、リン酸塩及びアンモニウムからなる群より選ばれる緩衝剤を含む溶液である、請求項31〜34のいずれか1項記載の方法。
【請求項36】
前記カラムが垂直位にある間に、最上層の入口/出口ポートを介して第二溶媒を加えることにより前記洗浄ステップ (d) が行われる、請求項24〜35のいずれか1項記載の方法。
【請求項37】
前記第二溶媒が、任意の第一溶媒、水非混和性有機溶媒及びそれらの混合物からなる群より選ばれる、請求項24〜36のいずれか1項記載の方法。
【請求項38】
前記の水非混和性有機溶媒が、トルエン及びジクロロメタンからなる群より選ばれる、請求項37記載の方法。
【請求項39】
前記付着生成物が、マクロリド、ポリペプチド、グリコペプチド、ヌクレオチド及びアントラサイクリンからなる群より選ばれる、請求項24〜38のいずれか1項記載の方法。
【請求項40】
前記付着生成物が、エポチロン、マイトマイシン、シクロスポリン、ダウノルビシン、ブレオマイシン及びフルダラビンからなる群より選ばれる、請求項24〜38のいずれか1項記載の方法。
【請求項41】
反応混合物から樹脂を分離するための、請求項1〜22のいずれか1項の装置の使用。
【請求項42】
前記反応混合物が、マクロリド、ポリペプチド、グリコペプチド、ヌクレオチド及びアントラサイクリンからなる群より選ばれる、請求項41記載の方法。
【請求項43】
前記付着生成物が、エポチロン、マイトマイシン、シクロスポリン、ダウノルビシン、ブレオマイシン及びフルダラビンからなる群より選ばれる、請求項41記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2008−43940(P2008−43940A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−181208(P2007−181208)
【出願日】平成19年7月10日(2007.7.10)
【出願人】(505216117)シコール インコーポレイティド (35)
【Fターム(参考)】