説明

反応特異性の増加のための非標準塩基を含む増幅プライマー

イソ塩基増幅プライマー(「IAP」)を使用して、増幅反応のアニーリング特異性を増加させるための方法を、本明細書に記載する。イソ領域を含有しているIAPは、配列特異的なアニーリングを調節し、それにより、ヌクレオチドの配列特異的な増幅のためのプライマー-鋳型ハイブリダイゼーションを増強することができる。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連特許出願の相互参照
本願は、2009年10月23日出願の米国仮出願第61/254,281号に基づく優先権を主張し、その内容は参照により完全に本明細書に組み入れられる。
【0002】
技術分野
本テクノロジーは、分子生物学、組換えDNA技術、および核酸増幅の領域に一般に関する。より具体的には、本テクノロジーは、増幅反応における特異性を改善するための非標準塩基の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
核酸増幅は、分子生物学に関係する重要な過程である。核酸増幅の多数の方法は、過程の何らかの段階において、オリゴヌクレオチドプライマーの鋳型核酸へのアニーリングを必要とする。増幅過程は、標的核酸の指数関数的な増加をもたらすことができる。しかしながら、標的核酸増幅の成功は、プライマーが、その標的、即ち、その相補配列にアニールする特異性にかかっている。プライマーが非特異的な部位にアニールするか、それとも相補配列に特異的にアニールするかは、アニーリング温度、プライマーの長さ、G/C含量、pH、および形成され得る二次構造または三次構造を含む多数の要因に依存する。プライマーアニーリングの特異性に関係する変数の過多を考慮すると、どのプライマーがある種の条件の下で標的核酸に特異的にアニールするかを正確に予測することは困難であり得る。
【発明の概要】
【0004】
概要
一つの局面において、本開示は、増幅反応のアニーリング特異性を増加させるための方法を提供し、本方法は、増幅条件下で、以下:
(a)鋳型配列に相補的な3'セグメント;
(b)イソCおよびイソGからなる群より独立に選択される少なくとも2個の連続するかまたは連続しない非標準塩基を含みかつ少なくとも一つのプライマーのアニーリング位置を3'セグメントに制限する、3'セグメントの5'末端にあるイソ領域;ならびに
(c)鋳型配列に相補的なヌクレオチド配列を含むイソ領域の5'末端にある5'セグメント
を含む少なくとも一つのプライマーと、核酸試料とを接触させる工程を含み、少なくとも一つのプライマーは、3'セグメントのみを有するプライマーと比較して増加した鋳型配列に対するアニーリング特異性を有する。
【0005】
一つの態様において、少なくとも一つのプライマーは6〜60ヌクレオチド長である。一つの局面において、イソ領域は約1〜約15個の非標準塩基を含む。一つの局面において、増幅反応は、PCR;逆転写酵素PCR;リアルタイムPCR;ディファレンシャルディスプレイPCR;PCRに基づくゲノム分析;AP(Arbitrary Primed)-PCR;多重PCR;ロングレンジ(long-range)PCR;直線的(linear)PCR;逆PCR;定量的PCR;タッチダウンPCR;インサイチューPCR;ベクトレット(vectorette)PCR;TAIL(thermal asymmetric interlaced)PCR;MOPAC(mixed oligonucleotide-primed amplification of cDNA);3'-RACE(Rapid Amplification of cDNA Ends);5'-RACE、高分解能融解分析、およびプライマー伸長反応:からなる群より選択される。
【0006】
一つの態様において、アニーリング工程は、3'セグメントのみを有するプライマーと比較して、少なくとも一つのプライマーのアニーリング特異性を増加させるために十分な温度で実施される。
【0007】
別の局面において、本開示は、
(a)第一増幅産物を形成させるため、第一のアニーリング温度で、鋳型配列の変性、少なくとも一つのプライマーのアニーリング、および少なくとも一つのプライマーの伸長を少なくとも2サイクル含む、鋳型配列の第一段階増幅を実施する工程であって、少なくとも一つのプライマーが、(i)鋳型配列に相補的な3'セグメントと;(ii)イソCおよびイソGからなる群より独立に選択される少なくとも2個の連続するかまたは連続しない非標準塩基を含み、かつ少なくとも一つのプライマーのアニーリング位置を3'セグメントに制限する、3'セグメントの5'末端にあるイソ領域と;(iii)鋳型配列に相補的なヌクレオチド配列を含む、イソ領域の5'末端にある5'セグメントとを含む、工程;ならびに
(b)第二のアニーリング温度で、
(i)工程(a)から生成された増幅産物の変性、少なくとも一つのプライマーのアニーリング、および少なくとも一つのプライマーの伸長;または
(ii)工程(a)から生成された増幅産物の変性、ならびに少なくとも一つのプライマーの5'セグメントに対応する配列を含むプライマーのアニーリングおよび伸長
を少なくとも1サイクル含む、第一増幅産物の第二段階増幅を実施する工程
を含む、二段階反応において標的核酸を増幅する方法を提供する。
【0008】
一つの態様において、標的核酸は、
(a)オリゴヌクレオチドdTプライマーもしくはアンカード(anchored)オリゴヌクレオチドdTプライマーを標的mRNAのポリAテール領域にハイブリダイズさせるか、または六量体、七量体、および/もしくは八量体のランダムオリゴヌクレオチドを標的mRNAにハイブリダイズさせること;ならびに
(b)cDNAを作製するため標的mRNAを逆転写すること
により形成されたcDNAである。
【0009】
一つの態様において、二段階増幅手順は、
PCR;多重DNA増幅;差次的に発現された遺伝子の同定;3'-RACE;5'-RACE;プライマー伸長反応;全長cDNAの増幅;5'濃縮(enriched)cDNAの増幅;DNAフィンガープリント;RNAフィンガープリント;多重遺伝子ファミリーにおける保存されたホモロジーセグメントの同定;ヌクレオチド配列変動の同定;プレmiRNA増幅;rRNA増幅;PCR後の高分解能融解分析;および変異誘発
の群を含む方法に適用される。
【0010】
一つの局面において、本開示は、それによって少なくとも一つのプライマーが、3'セグメントのみを有するプライマーと比較して増加した鋳型配列に対するアニーリング特異性を有するよう、
(a)3'セグメントが鋳型配列に相補的である少なくとも一つのプライマーを合成する工程;
(b)イソCおよびイソGからなる群より独立に選択される少なくとも2個の連続するかまたは連続しない非標準塩基を含み、かつ少なくとも一つのプライマーのアニーリング位置を3'セグメントに制限し、それにより、3'セグメントのみを有するプライマーと比較して、3'セグメントのアニーリング特異性を増加させるイソ領域を、3'セグメントの5'末端に組み入れる工程;
(c)鋳型配列を含有している鋳型の任意の領域に相補的なヌクレオチド配列を含む5'セグメントを、イソ領域の5'末端に組み入れる工程
を含む、少なくとも一つのプライマーのアニーリング特異性を増加させる方法を提供する。
【0011】
一つの態様において、合成は、固相合成;DNA複製;逆転写;制限消化;ランオフ(run-off)転写;PCR;PCRに基づく方法;プライマー伸長;およびライゲーションからなる群より選択される方法を含む。一つの態様において、少なくとも一つのプライマー配列は、6〜60デオキシリボヌクレオチド長または6〜60リボヌクレオチド長である。
【0012】
一つの態様において、イソ領域は約1〜約15個の非標準塩基を含む。一つの態様において、少なくとも一つのプライマーは増幅反応または二段階増幅反応において使用される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】方法の例示的な態様である。最初のパネルは、5'末端および3'末端の両方がハイブリダイズしている初期ハイブリダイゼーションを示し、イソ塩基領域は半円状に示されている。次の2枚のパネルは、5'領域または3'領域のいずれかと鋳型との間のミスマッチの例である。最後に、最後のパネルは、イソ塩基の相互の対形成を含む、以前に複製された鎖へのIAPのハイブリダイゼーションを示す。このプライミングのTmは、極めて高く、従って、初期プライミングイベントのいずれと比較しても極めて有利である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
詳細な説明
テクノロジーのある種の局面、様式、態様、変動、および特色が、本開示の実質的な理解を提供するため、様々なレベルで詳細に以下に記載されることが認識されるべきである。
【0015】
本テクノロジーの実施において、分子生物学、タンパク質生化学、細胞生物学、微生物学、および組換えDNAにおける多くの従来の技術が使用される。これらの技術は周知であり、例えば、Current Protocols in Molecular Biology,Vols.I-III,Ausubel,Ed.(1997);Sambrook et al.,Molecular Cloning: A Laboratory Manual,Second Ed.(Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY(1989));DNA Cloning: A Practical Approach,Vols.I and II,Glover,Ed.(1985);Oligonucleotide Synthesis,Gait,Ed.(1984);Nucleic Acid Hybridization,Hames & Higgins,Eds.(1985);Transcription and Translation,Hames & Higgins,Eds.(1984);Animal Cell Culture,Freshney,Ed.(1986);Immobilized Cells and Enzymes(IRL Press,1986);Perbal,A Practical Guide to Molecular Cloning;the series,Meth.Enzymol.,(Academic Press,Inc.,1984);Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells,Miller & Calos,Eds.(Cold Spring Harbor Laboratory,NY,1987);ならびにMeth.Enzymol,Vol.154およびVol.155, Wu & Grossman, and Wu,Eds.に説明されている。
【0016】
単位、接頭辞、および記号は、一般に認められているSI系で表示され得る。他に示されない限り、核酸配列は左から右に5'→3'方向で書かれる。核酸は、一般的に公知の命名法、またはIUPAC-IUBMB Nomenclature Commissionにより推奨された1文字記号のいずれかにより、本明細書において言及され得る。
【0017】
以下の説明において、多数の用語が広範囲に利用される。テクノロジーの理解を容易にするため、定義が本明細書に提供される。下記の用語は、全体として本明細書を参照することにより、より完全に定義される。
【0018】
本明細書において使用されるように、「ある(a)」および「ある(an)」という用語は、単数であることが明らかに指定されない限り、「一つまたは複数の」を意味する。
【0019】
本明細書において使用されるように、「対立遺伝子」という用語は、特定のゲノムの遺伝子座またはマーカーに天然に存在する(即ち、個体の集団内に検出可能な)配列異型のコレクションの特定のメンバーをさす。
【0020】
本明細書において使用されるように、「アンカーオリゴヌクレオチド」または「アンカーオリゴdT」という用語は、関心対象の遺伝子座における結合を確実にするための「アンカー」残基を含むオリゴヌクレオチド配列、即ち、オリゴdTまたはポリdTをさす。例えば、アンカード(anchored)オリゴdT配列は、多数のチミジン残基、例えば、1〜50個または10〜40個または20〜30個を有し、mRNAメッセージの最初または末端におけるハイブリダイゼーションを可能にするため、オリゴdTの3'末端に位置する1個または複数個のG、C、またはAヌクレオチドアンカーを有する。1個または複数個のアンカー残基は、アンカーを含まない配列と比較して増加したハイブリダイゼーション特異性を可能にする。アンカードオリゴdTは、逆転写およびcDNA合成にとって特に有益である。
【0021】
本明細書において使用されるように、「アニーリング要因」または「アニーリング条件」という用語は、アニーリング温度;プライマーの長さ;G/C含量;pH;および/または形成され得る二次構造もしくは三次構造のような、プライマーアニーリングに影響を与える要素をさす。
【0022】
本明細書において使用されるように、「任意のヌクレオチド配列」という用語は、標的ヌクレオチド配列の知識なしに選ばれるヌクレオチド配列をさす。
【0023】
本明細書において使用されるように、「査定」および「評価」という用語は、任意の型の測定をさすために交換可能に使用され、要素が存在するか否かの決定を含む。「決定」、「測定」、および「査定」、および「アッセイ」という用語は、交換可能に使用され、定量的決定および定性的決定の両方を含む。査定は、相対的であってもよいし、または絶対的であってもよい。「〜の存在の査定」には、存在するか存在しないかの決定のみならず、存在するものの量の決定も含まれる。
【0024】
本明細書において使用されるように、「cDNA」という用語は相補的DNAをさす。相補的DNAは、相補的DNA配列が形成されるmRNA配列の逆転写を介して合成される。
【0025】
本明細書において使用されるように、「コンセンサス配列」という用語は、多数の類似のヌクレオチド配列を比較した時に、所定の位置に最も高頻度に見出されるヌクレオチド塩基をさす。
【0026】
本明細書において使用されるように、「保存された領域」および「多重遺伝子ファミリーにおける遺伝子の保存された領域」という用語は、遺伝子ファミリーのメンバー間で有意に類似している遺伝子またはアミノ酸配列のセグメントをさす。類似性の程度は変動し得、いくつかの態様において、保存された領域はファミリーメンバー間で同一であろう。他の態様において、ヌクレオチド配列は、有意に変動していてもよいが、やはりファミリーメンバー間で保存されたアミノ酸セグメントをコードするであろう。
【0027】
本明細書において使用されるように、「サイクル」という用語は、標的核酸のコピーの作製をもたらす過程をさす。サイクルは、即ち、PCRにおいて、変性工程、アニーリング工程、および伸長工程を含む。
【0028】
本明細書において使用されるように、「縮重」配列という用語は、アミノ酸配列から推定されるヌクレオチド配列をさす。従って、縮重配列は、遺伝暗号の縮重のため、一つのアミノ酸配列からヌクレオチド配列のプールを形成することができる。
【0029】
本明細書において使用されるように、「過剰」という用語は、所望の増幅を達成する能力が、その成分の濃度によって限定されないような、反応物中の成分の量をさす。
【0030】
本明細書において使用されるように、DNAまたはRNAの「フィンガープリント」という用語は、ゲノムに特徴的な別々のDNAアンプリコン産物のセット、またはmRNA試料に特徴的な別々のcDNAセグメントのセットをさす。
【0031】
本明細書において使用されるように、「ゲノムDNA」または「gDNA」という用語は、種の完全な遺伝学的成分を含むDNAの集団をさす。従って、ゲノムDNAには、予め選択された種に存在する遺伝子の完全なセットが含まれる。種における遺伝子の完全なセットは、「ゲノム」とも呼ばれる。
【0032】
本明細書において使用されるように、「高分解能融解分析」または「HRM」という用語は、特定のPCRアンプリコンが融解するかまたは分離する温度を決定するため、PCR後融解分析、即ち、鎖の分離または変性を利用するオリゴヌクレオチド同定の技術をさす。これに関して、アンプリコン配列は、必要であれば、他の要因に加えて、融解温度に基づき確認または決定され得る。
【0033】
本明細書において使用されるように、「ハイブリダイゼーション」または「アニーリング」という用語は、相補的な核酸の対形成に関して使用される。ハイブリダイゼーションおよびハイブリダイゼーションの強度(即ち、核酸間の会合の強度)は、核酸間の相補性の程度、含まれるハイブリダイゼーション条件のストリンジェンシー、形成されるハイブリッドの融解温度、核酸内のG/C比、およびその他のアニーリング要因により影響を受ける。
【0034】
本明細書において使用されるように、「照合位置」という用語は、標的核酸内の関心対象の特定のヌクレオチド塩基の位置をさす。例えば、一塩基多型の分析において、標的核酸内の照合位置は、野生型位置とは異なっているであろう位置である。照合位置には、標的配列の照合位置に相補的なプライマー内のヌクレオチド配列の位置も含まれる。
【0035】
本明細書において使用されるように、「IAP」というアクロニムは、イソ塩基増幅プライマーをさす。IAPは、5'セグメントから3'セグメントを分離するイソ領域を含有しているプライマーのセットである。
【0036】
本明細書において使用されるように、「イソ領域」という用語は、イソCおよび/またはイソGのような少なくとも2個の連続するかまたは連続しない非標準塩基を含む、3'標的結合セグメントと5'標的結合セグメントとの間にあるIAPのセグメントをさす。イソ領域は、アニーリング温度、プライマーの長さ、G/C含量、pH、および存在し得る二次構造または三次構造と共同して、IAPの指定されたアニーリング機能を担う。イソ領域は、IAPの3'セグメントおよび5'セグメントも画定する。
【0037】
本明細書において使用されるように、「mRNA」という用語はメッセンジャーRNAをさす。メッセンジャーRNAとは、鋳型DNA配列から転写されるリボ核酸である。
【0038】
本明細書において使用されるように、「多重PCR」という用語は、単一の反応容器における複数のDNA標的の同時の増幅をさす。
【0039】
本明細書において使用されるように、「核酸」には、デオキシリボ核酸(DNA)、リボ核酸(RNA)、ペプチド核酸(PNA)、または塩基対を形成するかもしくは相補的な化学構造とハイブリダイズする能力を有する、化学的骨格により接合された塩基と一般的に呼ばれるものの任意の配列のようなポリマー性分子が含まれる。適当な非ヌクレオチド骨格には、例えば、ポリアミド骨格およびポリモルホリノ骨格が含まれる。「核酸」という用語には、オリゴヌクレオチド、ヌクレオチド、またはポリヌクレオチド配列、およびそれらの断片または一部分が含まれる。核酸は、任意の適当な形態で提供され得、例えば、天然の起源から単離されてもよいし、組み換え作製されてもよいし、または人工的に合成されてもよく、一本鎖であってもよいしまたは二本鎖であってもよく、センス鎖を表していてもよいしまたはアンチセンス鎖を表していてもよい。
【0040】
本明細書において使用されるように、「オリゴヌクレオチド」という用語は、一般に、固体支持体核酸合成、DNA複製、逆転写、制限消化、ランオフ転写等のような、当技術分野において現在利用可能な技術を使用して調製され得る、短鎖(例えば、100ヌクレオチド長未満、典型的には、約6〜60ヌクレオチド長)の核酸をさす。オリゴヌクレオチドの正確なサイズは、多くの要因に依存し、それらの要因は、オリゴヌクレオチドの最終の機能または使用に依存するであろう。
【0041】
本明細書において使用されるように、「多型性の」という用語は、特定のゲノム配列の二つ以上の異型が集団内に見出され得る状態をさす。
【0042】
本明細書において使用されるように、「多型性の部位」という用語は、遺伝学的またはプロテオミクス的な変動が存在する遺伝子座である。「一塩基多型」または「SNP」とは、典型的には、多型性の部位において、あるヌクレオチドが別のヌクレオチドに置換されている場合の単一塩基対の異型である。単一ヌクレオチドの欠失または単一ヌクレオチドの挿入も、一塩基多型を与え得る。多型性の部位は、2個の異なるヌクレオチドにより占有され得る。
【0043】
本明細書において使用されるように、「多型」という用語は、異なるゲノムまたは個体に、二つ以上の代替的なゲノム配列または対立遺伝子が存在することをさす。
【0044】
本明細書において使用されるように、「予め選択された任意のヌクレオチド配列」という用語は、天然塩基および/または非標準塩基の特定の配列を含有している、任意の画定されたまたは予め選択されたデオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、または混合型のデオキシリボヌクレオチドおよび/もしくはリボヌクレオチドの配列をさす。
【0045】
本明細書において使用されるように、「プライマー」という用語は、ヌクレオチド合成のための開始点として作用し得る、天然に存在するものであってもよいしまたは合成により作製されたものであってもよいオリゴヌクレオチドをさす。一般に、プライマーは、天然に存在するヌクレオチド、修飾型ヌクレオチド、または非標準塩基を含有し得る一本鎖オリゴヌクレオチドである。さらに、IAP増幅反応、またはその他の任意の反応に関して言及されるような「標準プライマー」とは、IAPプライマーでない任意のプライマーをさし、例えば、標準プライマーは、天然オリゴヌクレオチド、またはイソ塩基でないその他の塩基のみを含む。
【0046】
本明細書において使用されるように、「プライミング」という用語は、ポリメラーゼが、鋳型配列またはその一領域に相補的な核酸分子へとヌクレオチドを重合することを可能にするような、鋳型配列へのオリゴヌクレオチドまたは核酸の位置付けをさす。
【0047】
本明細書において使用されるように、「試料」という用語は、最も広義に使用される。その用語には、生物学的試料および非生物学的試料のみならず、標本または培養物(例えば、微生物学的培養物)も含まれる。
【0048】
本明細書において使用されるように、「セグメント」という用語は、イソ領域により分離されたヌクレオチド配列をさすIAPと共に使用される。本明細書において使用されるように、「3'セグメント」または「5'セグメント」という用語は、イソ領域により分離されており、標的核酸の相補的な領域に特異的にハイブリダイズすることができる、それぞれ、IAPの3'末端または5'末端にあるヌクレオチド配列をさす。
【0049】
本明細書において使用されるように、「配列」という用語は、核酸の順序付けられた配置をさす。
【0050】
本明細書において使用されるように、「標的核酸」、「標的配列」、または「標的ヌクレオチド配列」という用語は、記載されたパラメーターの下での増幅または検出の対象である関心対象のヌクレオチド配列をさす。
【0051】
本明細書において使用されるように、「鋳型」という用語は、核酸またはそのポリマーをさす。IAPは、一本鎖または二本鎖の核酸を鋳型として使用した核酸増幅において利用され得る。
【0052】
本明細書において使用されるように、「Tm」とは、指定されたプライマーの半分が標的核酸または標的領域にアニールする融解温度をさす。
【0053】
I. 非標準塩基を使用した増加した増幅反応のための方法およびその適用
本テクノロジーの一つの局面は、核酸配列の増幅において使用するためのIAPおよびその適用に関する。IAPは、多数の要因、例えば、アニーリング温度、プライマーの長さ、G/C含量、pH、および形成され得る二次構造または三次構造、即ち、「アニーリング要因」と共同して、核酸増幅の特異性が有意に改善されるよう、プライマーアニーリングの制御を可能にする。IAPにより増加するアニーリング特異性の原理は、イソ領域により分離された明瞭な3'セグメントおよび5'セグメントを有するオリゴヌクレオチドプライマーの組成に基づく(図1を参照のこと)。3'セグメントと5'セグメントとの間に位置するイソ領域は、本明細書に記載されたアニーリング要因と共同して、鋳型アニーリングを制御する調節因子として作用する。イソ領域の存在は、5'セグメントのアニーリングを妨げ、同時に、IAPアニーリングを3'セグメントに制限し、アニーリング特異性の劇的な改善をもたらす。3'セグメントと5'セグメントとの間に位置する非標準塩基、即ち、イソ塩基は、各セグメントを整合的に画定するイソ領域を画定する。従って、IAPは、従来のプライマーとは基本的に異なり、アニーリング要因と共同して、従来のプライマーと比較して、より高いアニーリング特異性を有する。同様に、イソ塩基は、他の塩基または塩基置換と比較して、より有利に、相補的なイソ塩基と塩基対形成するため、IAPは、その後の増幅サイクルにおいても、従来のプライマーと比較して増加した感度を有する。
【0054】
一つの態様において、3'セグメントと5'セグメントとの間に位置する1個または複数個の非標準塩基の存在は、IAPアニーリングを3'セグメントに制限する。従って、プライマーのアニーリング配列が正確に制御され得、そのため、所望のアニーリング配列を含むプライマーを設計することが可能となる。別の態様において、プライマーのアニーリングセグメントが特異的に限定されなければならない時、例えば、SNP遺伝子型決定、DNAマイクロアレイスクリーニング、および差次的に発現された遺伝子の検出において、IAPは有用である。
【0055】
別の態様において、3'セグメントと5'セグメントとの間に位置する非標準塩基の存在は、3'セグメントが鋳型配列にアニーリングすることを可能にする条件の下で、5'セグメントの鋳型へのアニーリングを妨げる。従って、5'セグメントは、鋳型からの相補的なヌクレオチドと核形成部位を形成せず、それにより、3'セグメントのアニーリング特異性を増加させる。従って、プライマーアニーリングの特異性は高感度であり、単一塩基のミスマッチすら識別され得る。一つの態様において、IAPは、SNPおよび点変異を含む、標的核酸におけるヌクレオチド変動の同定のために特に有用である。
【0056】
A. 増幅のためのIAPの一般的な適用
本テクノロジーの一つの局面において、開示は、
(a)鋳型配列に相補的な3'セグメント;ならびに
(b)イソCおよびイソGからなる群より独立に選択される少なくとも2個の連続するかまたは連続しない非標準塩基を含み、かつプライマーのアニーリング位置を3'セグメントに制限し、それにより、3'セグメントのみを有するプライマーと比較して、3'セグメントのアニーリング特異性を増加させる、3'セグメントの5'末端にあるイソ領域;ならびに
(c)鋳型配列を含有している鋳型の任意の領域に相補的なヌクレオチド配列を含有している、イソ領域の5'末端にある5'セグメント
を含むが、これらに限定されない、増幅反応のアニーリング特異性を増加させる方法を企図する。本方法において、プライマーは、3'セグメントのみを有するプライマーと比較して増加した鋳型配列に対するアニーリング特異性を有する。
【0057】
一つの態様において、IAPは、少なくとも2個の連続するかまたは連続しない非標準塩基、即ち、イソCおよび/またはイソGを含有しているイソ領域により分離された明瞭な3'セグメントおよび5'セグメントを有するオリゴヌクレオチドプライマーを含む。IAPにおけるイソCおよび/またはイソGの存在は、従来のプライマーと比較して、より低いアニーリング温度を生じ、非標準塩基は天然塩基とのより弱い水素結合相互作用を有する。しかしながら、イソ領域内の連続するかまたは連続しない非標準塩基の存在は、3'セグメントと5'セグメントとの間に境界を形成し、それにより、各領域のアニーリング特異性に影響を与える。従って、3'セグメントは、標的核酸に特異的にアニールすることができるが、5'セグメントのアニーリングはイソ領域によって妨げられる。従って、IAPのアニーリング特異性は、従来のプライマーと比較して増加する。
【0058】
一つの態様において、IAPは、3'セグメントと5'セグメントとの間、即ち、イソ領域に、少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、または少なくとも10個の非標準塩基を含有している。一つの態様において、鋳型への5'セグメントのアニーリングを破壊するための最小数の非標準塩基が、イソ領域内に必要とされ得る。別の態様において、イソ領域は、最高15個の非標準塩基を含有している。いくつかの態様において、イソ領域はイソCまたはイソGのみを含有している。他の態様において、イソ領域はイソCおよびイソGの両方を含有している。他の態様において、イソ領域は、標的配列に結合することができない1個または複数個の標準塩基を含有していてもよい。一つの態様において、イソ領域は、即ち、連続しないIAPプライマーを形成するため、イソ塩基を分離する天然塩基を含有していてもよい。一つの態様において、少なくとも約1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、または10個の天然塩基が、連続しないIAPプライマーにおいて1個または複数個のイソ塩基を分離する。一つの態様において、単一の天然塩基、例えば、G、A、T、C、またはUが、連続しないIAPプライマーにおいて1個または複数個のイソ塩基を分離する。
【0059】
イソ領域は、以下の態様を含むが、これに限定されない、標準塩基および非標準塩基の特定の配置を有し得る。ここで、「I」は非標準塩基、即ち、イソ塩基を意味し、「N」は任意の標準塩基、即ち、G、A、T、C、またはUを意味する。

【0060】
一つの態様において、IAPまたはオリゴヌクレオチドプライマーの長さは、鋳型にハイブリダイズするために必要とされる所望のアニーリング特異性を決定することにより制限され得る。一つの態様において、20ヌクレオチドのIAPまたはオリゴヌクレオチドプライマーは、10ヌクレオチドを含有しているIAPまたはオリゴヌクレオチドプライマーより特異的であり、IAPまたはオリゴヌクレオチドプライマーへの各ヌクレオチドの付加は、アニーリング温度を増加させる。
【0061】
一つの態様において、3'セグメントおよび5'セグメントの長さは、各適用の目的に依って変動し得る。別の態様において、3'セグメントは、プライマーアニーリングのために必要とされる最小限の長さ、即ち、6ヌクレオチドである。さらに、3'セグメント配列は、10〜25ヌクレオチドで変動し得、最高で60ヌクレオチド長を含有し得る。別の態様において、3'セグメントはリボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチドを含み得る。
【0062】
一つの態様において、5'セグメントは、プライマーアニーリングのために必要とされる最小限の長さ、即ち、6ヌクレオチドである。別の態様において、5'セグメントは、最高60ヌクレオチド長であり得る。一つの態様において、5'セグメントは6〜60ヌクレオチドを含む。一つの態様において、IAP全体は35〜50ヌクレオチドを含有し得るが、最高で約100ヌクレオチド長を含有していてもよい。
【0063】
一つの態様において、5'セグメントは、鋳型上のいかなる部位にも相補的でない予め選択された任意のヌクレオチド配列を含有している。従って、予め選択された配列は、その後の増幅のためのプライミング部位として機能する。一つの態様において、5'セグメントの予め選択された任意のヌクレオチド配列は、T3プロモーター配列、T7プロモーター配列、SP6プロモーター配列、またはM13のフォワードもしくはリバースの配列から構成される。別の態様において、5'セグメントにおいて、より長い、即ち、およそ10〜60塩基の任意の配列が使用される。より長い配列は、IAPの増幅効率を低下させ得るが、より短い配列、即ち、およそ15〜17塩基は、ストリンジェントな条件の下でアニーリングの効率を低下させ得る。
【0064】
本テクノロジーの一つの態様において、修飾が、IAPの利点、即ち、アニーリング特異性の改善を無効にしない限り、5'セグメントの設計修飾が企図される。例えば、5'セグメントは、増幅産物をクローニングすることを可能にする、制限エンドヌクレアーゼにより認識される配列を含み得るが、これに限定されない。一つの態様において、5'セグメントは、増幅産物の検出または単離のための標識を含む少なくとも1個のヌクレオチドを含有していてもよい。標識には、フルオロフォア、発色団、化学発光団、磁性粒子、放射性同位体、マス標識(mass labels)、高電子密度粒子(electron dense particles)、酵素、補因子、酵素のための基質、ならびに特異的結合パートナーを有するハプテン、例えば、抗体、ストレプトアビジン、ビオチン、ジゴキシゲニン、およびキレート化基が含まれるが、これらに限定されない。一つの態様において、5'セグメントは、バクテリオファージRNAポリメラーゼプロモーター領域も含み得る。
【0065】
IAPの有利な特性は、核酸配列の増幅;標的核酸配列の増幅;多重DNA増幅;差次的に発現された遺伝子の同定;RACE(Rapid Amplification of cDNA Ends);全長cDNAの増幅;5'濃縮cDNAの増幅;DNAまたはRNAのフィンガープリント;多重遺伝子ファミリーにおける保存されたホモロジーセグメントの同定;ヌクレオチド配列変動の同定;変異誘発への適用;プライマー伸長反応;およびその他の適用を含むが、これらに限定されない、様々な増幅法に適用され得る。
【0066】
B. 標的核酸を増幅するための適用
一つの態様において、IAPはポリメラーゼ連鎖反応(「PCR」)増幅技術に適用される。PCRは、第一および第二のアニーリング温度の下で、即ち、異なるストリンジェンシーの下で実施され得る。一つの態様において、第一のアニーリング温度は、第二のアニーリング温度と等しくてもよいし、または第二のアニーリング温度より低くてもよい。従って、第二のアニーリング温度は、第一のアニーリング温度より高くてもよい。二つの異なるアニーリング温度で実施されるPCR過程においては、第一のアニーリング温度で、3'セグメントが鋳型配列にアニールし、第二増幅段階において、即ち、第二のアニーリング温度で、取り込まれた5'セグメントがプライミング部位として機能する。
【0067】
一つの態様において、イソ領域は、少なくとも2個の連続するかまたは連続しない非標準塩基から構成される。イソ領域は、イソ塩基と鋳型の標準塩基対との間のより弱い水素結合のため、3'セグメントまたは5'セグメントより低い融解温度(「Tm」)を有する。第一のアニーリング温度で3'セグメントがアニールすることを可能にする条件の下では、イソ領域の鋳型へのアニーリングはエネルギー的に有利でない。従って、イソ領域の存在は、第一のアニーリング温度で、プライマーアニーリングを3'セグメントに制限する。従って、5'セグメントは、第一のアニーリング温度では、鋳型からの相補的なヌクレオチドと核形成部位を形成せず、それにより、3'セグメントのアニーリングを妨害する。このように、3'セグメントが相補配列に選択的に結合するため、3'セグメントは、第一のアニーリング温度では、5'セグメントの存在下で、より特異的にアニーリングする。
【0068】
一つの態様において、5'セグメントは、増幅の第二段階、即ち、第二のアニーリング温度で、プライミング部位として機能する予め選択された任意のヌクレオチド配列を含む。これらの条件は、アニーリングから生成された反応産物のその後の増幅および3'セグメントの伸長を可能にする。従って、3'セグメント配列のアニーリングおよび伸長から生成された反応産物のみが、理論上の最適条件において増幅され得、即ち、第二のアニーリング温度では、各PCRサイクルで産物が2倍に増加する。このように、3'セグメントは、第一のアニーリング温度で、鋳型配列へのアニーリング部位として機能し、5'セグメントは、その後の産物の増幅のため、第二のアニーリング温度で、プライミング部位として使用される。IAPが、リガーゼ連鎖反応(「LCR」);ポリメラーゼリガーゼ連鎖反応;Gap-LCR;修復連鎖反応(Repair Chain Reaction);および核酸配列ベース増幅(Nucleic Acid Sequence-Based Amplification)(「NASBA」)を含むが、これらに限定されない、多様なプライマーに基づく核酸増幅法において有用であることは、熟練した当業者には容易に明白であろう。
【0069】
本テクノロジーの別の局面において、開示は、少なくとも一つのIAPを使用して、核酸の混合物から標的核酸を増幅する方法を提供する。一つの態様において、3'セグメントは、ハイブリダイズするための標的核酸に相補的な配列を含有している。
【0070】
一つの態様において、開示は、
(a)第一のアニーリング温度で、標的核酸に相補的な3'セグメントを含有している第一のIAPが標的核酸にアニールし、それにより、増幅産物を産生する条件の下で、プライマーアニーリング、プライマー伸長、および変性を少なくとも2サイクル含む、標的核酸の第一段階増幅を実施する工程;ならびに
(b)第二のアニーリング温度で、プライマーが増幅産物のそれぞれ3'末端および5'末端にアニールすることを可能にする条件の下で、工程(a)からの同一プライマー、即ち、IAP、または工程(a)において使用されたプライマーの各5'セグメントに対応する予め選択された任意のヌクレオチド配列を含有しているプライマーを使用して、プライマーアニーリング、プライマー伸長、および変性を少なくとも1サイクル含む、工程(a)から生成された産物の第二段階増幅を実施する工程
を含むが、これらに限定されない、核酸の混合物から標的核酸が増幅される、二段階増幅手順を使用した方法を企図する。従って、工程(a)からの増幅産物が再増幅される。
【0071】
一つの態様において、
(a)鋳型によって駆動されるDNA合成が起こるために十分な条件の下で、mRNAポリAテールとのハイブリダイゼーションのため、IAPであってもよいオリゴヌクレオチドdT(「オリゴdT」)プライマーまたはアンカードオリゴdTプライマーと、mRNAを接触させる工程;ならびに
(b)第一cDNA鎖を作製するため、mRNAを逆転写する工程;ならびに
(c)第一のアニーリング温度で、工程(b)から入手された第一cDNA鎖から、プライマーアニーリング、プライマー伸長、および変性を少なくとも2サイクル含む、標的核酸の第一段階増幅を実施する工程(IAPはハイブリダイズするための標的核酸の一領域に相補的な3'セグメントを含有している);ならびに
(d)第二のアニーリング温度で、プライマーが増幅産物のそれぞれ3'末端および5'末端にアニールすることを可能にする条件の下で、工程(c)において使用されたのと同一のプライマー、即ち、IAP、または工程(c)において使用されたプライマーの各5'セグメントに対応する予め選択された任意のヌクレオチド配列を含有しているプライマーを使用して、プライマーアニーリング、プライマー伸長、および変性を少なくとも1サイクル含む、工程(c)から生成された増幅産物の第二段階増幅を実施する工程
を含むが、これらに限定されない、標的mRNA配列を選択的に増幅するため、二段階増幅過程を利用する方法が提供される。従って、工程(c)からの増幅産物が再増幅される。
【0072】
一つの態様において、本テクノロジーは、任意の所望の核酸分子、即ち、DNAまたはRNAから標的核酸を増幅する方法を開示する。DNA分子またはRNA分子は、二本鎖または一本鎖の形態であり得る。核酸出発材料が二本鎖である場合には、二本の鎖を一本鎖または部分的に一本鎖の形態へと分離することができる。一つの態様において、ヌクレオチド鎖を分離する方法には、加熱、アルカリ、ホルムアミド、尿素、およびグリオキサール処理、酵素的方法、例えば、ヘリカーゼ作用、ならびに/または一本鎖結合タンパク質、即ち、SSBもしくはRPAの適用が含まれるが、これらに限定されない。例えば、鎖分離は、80℃〜105℃の範囲の温度でヌクレオチド分子を加熱することにより達成され得る。例えば、Sambrook,et al.,Molecular Cloning,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY(2001)を参照のこと。一つの態様において、標的核酸が特定の配列または長さを含有していることは必要とされない。
【0073】
別の態様において、増幅され得る分子には、天然に存在する原核生物、真核生物(即ち、原虫、寄生虫、真菌、酵母、高等植物、下等動物、ならびに哺乳動物およびヒトを含む高等動物)、ウイルス(即ち、ヘルペスウイルス、HIV、インフルエンザウイルス、エプスタインバーウイルス、肝炎ウイルス、ポリオウイルス等)、またはウイロイドの核酸が含まれるが、これらに限定されない。一つの態様において、核酸分子は、化学的に合成された、または化学的に合成され得る任意の配列を含有し得る。
【0074】
一つの態様において、IAPは、鋳型領域にハイブリダイズして二本鎖構造を形成する。例えば、Sambrook,et al.,Molecular Cloning,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY(2001);Haymes et al.,Nucleic Acid Hybridization,A Practical Approach,IRL Press,Washington,DC(1985)を参照のこと。一つの態様において、3'セグメントは安定的な二本鎖構造を形成することのみが可能である。従って、ハイブリダイゼーションが起こり、それにより、二本鎖構造が形成される限り、完全に相補的な3'セグメント配列は必要とされない。しかしながら、IAPの標的核酸へのハイブリダイゼーションは、鋳型依存性の重合のための必要条件である。例えば、Sambrook,et al.,Molecular Cloning,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY(2001);Haymes et.al.,Nucleic Acid Hybridization,A Practical Approach,IRL Press,Washington,DC(1985)を参照のこと。一つの態様において、IAPのヌクレオチド組成は、アニーリングが最適である温度に影響を与え、それにより、プライミング効率に影響を与え得る。
【0075】
多様なDNAポリメラーゼが、本発明の方法の増幅工程において使用され得る。一つの態様において、大腸菌DNAポリメラーゼIのクレノウ断片またはバクテリオファージT7 DNAポリメラーゼが使用され得る。別の態様において、ポリメラーゼは、サーマス・アクアティカス(Thermus aquaticus)(Taq);サーマス・サーモフィラス(thermophilus)(Tth);サーマス・フィリフォルミス(filiformis);サーミス・フラバス(Thermis flavus);サーモコッカス・リテラリス(Thermococcus literalis);またはピロコッカス・フリオサス(Pyrococcus furiosus)(Pfu)を含むが、これらに限定されない群より選択される熱安定性DNAポリメラーゼである。ポリメラーゼは、細菌から単離されてもよいし、または商業的に入手されてもよい。一つの態様において、ポリメラーゼは、ポリメラーゼを発現する細胞から入手され得る。一つの態様において、重合反応を実施する時、必要とされる成分は、各反応のために過剰に供給される。一つの態様において、反応混合物は、必要とされる量のMg2+のような補因子、所望の増幅の程度を支持するために十分な量の、dATP、dCTP、dGTP、dTTP、および/またはイソ領域に存在する非標準塩基に相補的な非標準ヌクレオチド三リン酸を含有している。
【0076】
第一段階増幅において使用される5'セグメントが、同一の配列を含有していてもよいし、または異なる配列を含有していてもよいことは、熟練した当業者により容易に理解されるであろう。一つの態様において、5'セグメント配列は同一であり、5'セグメント配列に対応する一つのプライマーが第二段階増幅において使用されるであろう。別の態様において、5'セグメント配列は異なり、各5'セグメントの配列に各々対応する二つのプライマーが、第二段階増幅において使用されるであろう。
【0077】
別の態様において、本テクノロジーは、IAPと、従来のプライマーまたは標準プライマーとを含有しているプライマーのセットが、第一増幅工程において使用され得る、IAPを使用して、標的核酸または鋳型またはそれらの混合物を選択的に増幅する過程を含む。従って、従来のプライマーまたは標準プライマーは、第一増幅工程にのみ、IAPと共に添加される。従って、IAPの5'セグメント配列に対応する一つの予め選択された任意のプライマーのみが、第二増幅工程に添加される。一つの態様において、第一増幅工程において使用されるIAPの3'セグメントが異なる融解温度を有する時、この過程が使用され得る。
【0078】
一つの態様において、第二段階増幅工程は、IAPの5'セグメントに対応するプライマーと反応に、第一段階増幅工程において使用された完全IAP配列の使用を要する。これに関して、本態様は、第一段階増幅工程の時点で、またはその後、IAPの5'セグメントに対応するプライマーの反応混合物へのさらなる添加を必要としない。
【0079】
一つの態様において、第一のアニーリング温度は、30℃〜68℃または40℃〜65℃の範囲である。一つの態様において、第二のアニーリング温度は、50℃〜72℃の範囲である。別の態様において、第一のアニーリング温度は、第二のアニーリング温度と等しいか、または第二のアニーリング温度より低い。一つの態様において、3'セグメントの長さまたはTmが、第一段階増幅のためのアニーリング温度を決定するであろう。
【0080】
一つの態様において、第一段階増幅において、そしてその後のサイクルを通して、プライマーアニーリングの特異性を改善するため、第一段階増幅は、アニーリング、伸長、および変性の少なくとも2サイクル、実施される。従って、第二段階増幅は、高度にストリンジェントな条件の下で、即ち、高温で、効率的に進行する。一つの態様において、第一段階増幅は2〜30サイクル実施され得る。別の態様において、第一段階産物が増幅される第二段階増幅は、少なくとも1サイクル、最高45サイクル実施され得る。一つの態様において、第二段階増幅は25〜35サイクル実施される。高ストリンジェンシーおよび低ストリンジェンシーの条件は、所望の適用のために変動し得ることが、熟練した当業者には容易に明白であろう。
【0081】
本テクノロジーは、特定の目標を達成するため、当技術分野において公知の他の過程と組み合わせられてもよい。一つの態様において、第二段階増幅の後、増幅産物は、ゲル電気泳動、カラムクロマトグラフィ、アフィニティクロマトグラフィ、またはハイブリダイゼーションにより単離または精製され得る。一つの態様において、増幅産物は、それらの適用のため、適当なクローニングベクターへ挿入され得る。別の態様において、増幅産物は、発現ベクターを保持している適当な宿主において発現され得る。一つの態様において、増幅産物は、プロモーターの制御下に置かれ得る。従って、プロモーターは、ベクター自体に由来してもよいし、または増幅産物のセグメント、即ち、IAPの5'セグメントに由来してもよい。一つの態様において、原核生物宿主プロモーターには、ラムダプロモーター、トリプトファンプロモーター、ラクトースプロモーター、および/またはT7プロモーターが含まれるが、これらに限定されない。別の態様において、真核生物宿主プロモーターには、メタロチオネインプロモーター、アデノウイルス後期プロモーター、ワクシニアウイルス7.5Kプロモーター、ならびにポリオーマ、アデノウイルス2型、SV40、および/またはサイトメガロウイルスに由来するプロモーターが含まれるが、これらに限定されない。一つの態様において、原核生物宿主の例には、大腸菌、B.スブチリス(subtilis)、ならびにネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)、霊菌(Serratia marcescens)、およびシュードモナス(Pseudomonas)のような腸内細菌科が含まれるが、これらに限定されない。微生物に加えて、多細胞生物に由来する細胞培養物も、宿主として利用され得る。一つの態様において、哺乳動物細胞宿主に加えて、組換えウイルス発現ベクター、例えば、バキュロウイルスにより感染された昆虫細胞系、および組換えウイルス発現ベクター、例えば、カリフラワーモザイクウイルスもしくはタバコモザイクウイルスにより感染された、または一つもしくは複数のコーディング配列を含有している組換えプラスミド発現ベクター、例えば、Tiプラスミドにより形質転換された植物細胞系が使用されてもよい。従って、増幅産物から発現されたポリペプチドは、当技術分野において周知の方法に従って精製され得る。
【0082】
C. 多重DNA増幅への適用
本テクノロジーの別の局面は、複数のプライマー対が同一反応において使用される、複数の標的核酸を増幅する方法を開示する。一つの態様において、アニーリングは、DNA-DNAハイブリダイゼーションが起こることを可能にする様々な温度で起こる。従って、IAPは、高温でのアニーリング/増幅の高い特異性のため、多重DNA増幅の最適化にとって理想的である。
【0083】
一つの態様において、同一反応において複数のプライマー対を使用することにより、複数の標的核酸を同時に増幅する方法が開示される。従って、本方法は、少なくとも一つのIAPが使用される増幅反応を含む。別の態様において、本明細書に記載されるような二段階増幅手順が、多重PCRに適用される。必要とされる使用に適合させるために手順を変動させる方法は、熟練した当業者には容易に明白であろう。
【0084】
別の態様において、各標的核酸からの増幅産物は、異なる分子量を有する。従って、多重標的核酸の増幅産物は、サイズ分離を介して分析され得る。一つの態様において、サイズ分離は、ポリアクリルアミドゲル電気泳動法(「PAGE」)またはアガロースゲル電気泳動、それに続く、ヌクレオチド配列決定、キャピラリー電気泳動、および/または質量分析のような(これらに限定されない)、当技術分野において公知の多様な方法を使用して実施され得る。
【0085】
D. 差次的に発現された遺伝子の同定のための適用
一つの態様において、本テクノロジーは、二つ以上の核酸試料において差次的に発現されたmRNAからのcDNAを検出しクローニングするためにIAPを使用する方法を開示する。テクノロジーの別の局面において、方法は、mRNAを逆転写し、少なくとも一つのIAPを使用して、増幅反応を実施することを要する。一つの態様において、IAPは、逆転写から生成されたcDNA鎖の一領域に相補的である。別の態様において、テクノロジーは、差次的に発現された遺伝子の同定に適用される、本明細書に記載された二段階増幅手順を利用する。
【0086】
一つの態様において、差次的に発現された遺伝子の同定のため、二段階増幅を使用する方法は、
(a)mRNA転写物の第一の集団を表す第一の核酸試料、およびmRNA転写物の第二の集団を表す第二の核酸試料;ならびに
(b)鋳型により駆動されるDNA合成が起こるために十分な条件の下で、第一の核酸試料および第二の核酸試料の各々を、別々に、IAPと接触させる工程(第一のプライマー、即ち、第一のIAPの3'セグメントは、ハイブリダイズするための差次的に発現されたmRNAの第一の部位に相補的な配列を含有している);ならびに
(c)第一のプライマーがハイブリダイズする第一の核酸試料における差次的に発現されたmRNAに相補的な第一cDNA鎖の集団を作製し、第一のプライマーがハイブリダイズする第二の核酸試料における差次的に発現されたmRNAに相補的な第一cDNA鎖の第二の集団を作製するため、差次的に発現されたmRNAを逆転写し、第一のプライマーをハイブリダイズさせる工程;ならびに
(d)第一cDNA鎖の第一の集団および第二の集団の各々を精製し定量化する工程;ならびに
(e)第一のアニーリング温度で、第二のプライマー、即ち、第二のIAPが、第一cDNA鎖の各集団における第二の部位にアニールし、第二cDNA鎖の第一の集団および第二の集団が生成される条件の下で、3'セグメントが第一cDNA鎖の第一の集団および第二の集団における第二の部位に相補的である第二のIAPを使用して、プライマーアニーリング、プライマー伸長、および変性を少なくとも1サイクル含む、工程(d)から入手された第一cDNA鎖の第一の集団および第二の集団の各々の第一段階増幅を実施する工程;ならびに
(f)第二のアニーリング温度で、プライマーが各第二cDNA鎖のそれぞれ3'末端および5'末端の配列にアニールし、第二cDNA鎖の増幅産物が生成される条件の下で、それぞれ工程(b)および(e)からの同一の第一のプライマーおよび第二のプライマー、即ち、第一のIAPおよび第二のIAP、または工程(b)および(e)において使用された第一のプライマーおよび第二のプライマーの各5'セグメントに対応する予め選択された任意のヌクレオチド配列を含有しているプライマーを使用して、プライマーアニーリング、プライマー伸長、および変性を少なくとも2サイクル含む、工程(e)から生成された各第二cDNA鎖の第二段階増幅を実施する工程;ならびに
(g)工程(f)から入手された増幅産物の第一の集団および第二の集団における個々の増幅産物の存在またはレベルを比較する工程
を含むが、これらに限定されない。
【0087】
一つの態様において、mRNA転写物の集団を表す核酸試料は、多様な生物学的材料から入手され得る。一つの態様において、第一の核酸試料は、第一の細胞において発現されたmRNAを含有しており、第二の核酸試料は、第二の細胞において発現されたmRNAを含有している。別の態様において、第一の核酸試料は、第一の発達段階で細胞において発現されたmRNAを含有しており、第二の核酸試料は、第二の発達段階、即ち、後期段階で細胞において発現されたmRNAを含有している。一つの態様において、第一の核酸試料は、腫瘍形成性細胞において発現されたmRNAを含有しており、第二の核酸試料は、正常細胞において発現されたmRNAを含有している。
【0088】
一つの態様において、上記のような工程(e)および(f)は、プライマーを除いて同一の反応混合物を使用して、単一のチューブにおいて実施され得る。従って、工程(e)および(f)は、時間に関してのみ異なる。5'セグメントに対応するプライマーは、第二cDNA鎖の合成の間、またはその後、反応混合物に添加され得ることが、熟練した当業者により理解されるであろう。一つの態様において、5'セグメントに対応するプライマーは、工程(e)の直後に反応混合物に添加され、続いて、第二cDNA鎖のPCR増幅が行われる。それぞれ、工程(b)および(e)において使用される第一のIAPおよび第二のIAPの5'セグメント配列は、本明細書に以前に記載されたように、同一の配列であってもよいしまたは異なる配列であってもよいことが、熟練した当業者により容易に理解されるであろう。
【0089】
一つの態様において、工程(d)において第一のIAPにより合成されたcDNAプールは、当技術分野において周知の技術によって精製され定量化され得る。一つの態様において、これらの産物の定量化は、増幅工程のインプットを制御するために必要であり、その後、最終増幅産物と比較され得る(即ち、二つ以上の試料の比較)。一つの態様において、cDNAの量は、当技術分野において公知の紫外(「UV」)分光法またはその他の分光測光技術を介して測定される。
【0090】
一つの態様において、工程(f)から入手された増幅産物の存在またはレベルの比較は、当技術分野において公知の様々な方法に従って実施され得る。一つの態様において、工程(f)からの増幅産物の第一の集団および第二の集団の各々が、差次的に発現されたmRNAを同定するため、電気泳動により分離される。別の態様において、得られたPCR-cDNA断片は、臭化エチジウムにより染色されたアガロースゲル上で検出される。プライマーアニーリング特異性の増加;稀少なmRNAの検出;長距離PCR産物の生成;分析のスピードの増加;および代表的なプライマーセットの合理的設計を可能にすること:に関係する、本明細書に開示された方法が、これらに限定されないが、mRNA、マイクロRNA(miRNA)、プレmiRNA、一次miRNA、rRNA、および/またはsnRNAの増幅および検出のような、意図された使用のために調整され得ることは、熟練した当業者により容易に理解されるであろう。
【0091】
II. 非標準塩基
本テクノロジーにより企図されるように、IAPは、標準塩基、即ち、天然塩基に加えて、少なくとも2個の連続するかまたは連続しない非標準塩基を含有している。天然塩基、即ち、DNAおよび/またはRNAは、それぞれ、ホスホジエステル結合により連結されたデオキシリボースまたはリボースを含むオリゴヌクレオチド鋳型を形成することができる。デオキシリボースまたはリボースは、各々、糖にカップリングされた塩基を含んでいる。天然に存在するDNAおよびRNAに取り込まれる天然塩基は、アデノシン(A)、グアノシン(G)、チミジン(T)、シチジン(C)、およびウリジン(U)である。GがCと対形成し、AがTまたはUと対形成する、WatsonおよびCrickにより詳述された塩基対形成の法則に従って、天然塩基は、ハイブリダイズして、プリン−ピリミジン塩基対を形成することができる。これらの対形成法則は、オリゴヌクレオチドの、相補的なオリゴヌクレオチドとの特異的なハイブリダイゼーションを容易にする。
【0092】
天然塩基によるこれらの塩基対の形成は、各塩基対の2個の塩基の間の2個または3個の水素結合の生成により容易になる。塩基は、各々、2個または3個の水素結合ドナーおよび水素結合アクセプターを含んでいる。塩基対の水素結合は、各々、一方の塩基の少なくとも1個の水素結合ドナーと、他方の塩基の水素結合アクセプターとの相互作用により形成される。水素結合ドナーには、少なくとも1個の水素が付着しているヘテロ原子、例えば、酸素または窒素が含まれる。水素結合アクセプターには、孤立電子対を有するヘテロ原子、例えば、酸素または窒素が含まれる。
【0093】
天然塩基であるA、G、C、T、およびUは、修飾型天然塩基を形成するため、非水素結合部位における置換により誘導体化され得る。例えば、天然塩基は、反応性官能基、例えば、チオール、ヒドラジン、アルコール、アミン等の、塩基の非水素結合原子へのカップリングにより、支持体への付着のため誘導体化され得る。他の可能な置換基には、例えば、ビオチン、ジゴキシゲニン、蛍光性基、アルキル基(メチルまたはエチル)等が含まれる。
【0094】
水素結合塩基対を形成する非天然塩基は、例えば、米国特許第5,432,272号;第5,965,364号;第6,001,983号;第6,037,120号;公開された米国出願第2002/0150900号;および米国特許出願第08/775,401号(これらは全て、参照により本明細書に組み入れられる)に記載されるように構築され得る。適当な塩基およびそれらの対応する塩基対は、以下の塩基を塩基対の組み合わせ(イソC/イソG、K/X、H/J、およびM/N)に含み得る。

【0095】
式中、Aは、ポリマー骨格の糖またはその他の部分への付着点であり、Rは、Hまたは置換型もしくは非置換型のアルキル基である。水素結合を利用したその他の非天然塩基が調製されてもよく、塩基の非水素結合原子における官能基の取り込みにより、上記の非天然塩基が修飾されてもよいことが認識されるであろう。
【0096】
別の態様において、非標準塩基対の水素結合は、天然塩基のものに類似しており、対形成する非標準塩基の水素結合アクセプターと水素結合ドナーとの間に2個または3個の水素結合が形成される。天然塩基と非標準塩基との違いのうちの一つは、水素結合アクセプターおよび水素結合ドナーの数および位置である。例えば、シトシンはドナー/アクセプター/アクセプター塩基、グアニンは相補的なアクセプター/ドナー/ドナー塩基と見なされ得る。参照により本明細書に組み入れられる米国特許第6,037,120号に例示されるように、イソCはアクセプター/アクセプター/ドナー塩基であり、イソGは相補的なドナー/ドナー/アクセプター塩基である。
【0097】
一つの態様において、本開示に係る非標準塩基の使用は、増幅反応のアニーリング特異性を増加させるためのIAPの調製および使用を越えて、拡張可能である。例えば、非標準塩基は、核酸に関連した反応を触媒する多くの酵素によって認識され得る。ポリメラーゼは伸長中のオリゴヌクレオチド鎖を重合し続けるために相補的なヌクレオチドを必要とするが、その他の酵素は相補的なヌクレオチドを必要としない。非標準塩基が鋳型に存在し、その相補的な非標準塩基が反応ミックス中に存在しない場合、ポリメラーゼは、典型的には、止まるか、または伸展中のプライマーを非標準塩基を過ぎて伸長することを試みて、十分な量の時間を与えた時には、塩基の誤取り込みをするであろう。しかしながら、リガーゼ、キナーゼ、ヌクレアーゼ、ポリメラーゼ、トポイソメラーゼ、ヘリカーゼ等のような核酸に関連した反応を触媒するその他の酵素は、非標準塩基を含む反応を触媒することができる。非標準塩基のそのような特色は、活用可能であり、本テクノロジーの範囲内である。
【0098】
上述のように、ポリメラーゼは、いくつかの場合において、非標準塩基の向かいに塩基の誤取り込みをし得る。この態様において、反応ミックスが相補的な非標準塩基を含んでいないために、誤取り込みが起こる。このように、十分な量の時間を与えられた時、ポリメラーゼは、いくつかのケースにおいて、非標準塩基の向かいに、反応混合物中に存在する塩基を誤取り込みし得る。
【0099】
III. IAPキット
本テクノロジーの一つの局面は、増加したアニーリング特異性を有する増幅反応を実施するための試薬および説明書を含有しているキットを開示する。一つの態様において、キットは、鋳型核酸に相補的な特異的な3'セグメント配列から、イソ領域により分離されている、核酸鋳型に相補的な5'セグメントを含むIAPを含有している。一つの態様において、キットは、少なくとも2個の連続するかまたは連続しない非標準塩基を含むイソ領域から構成されるIAPを含有している。別の態様において、キットは、非標準ヌクレオチド三リン酸、即ち、イソCおよび/またはイソGを含有している。本テクノロジーのキットは、緩衝液、DNAポリメラーゼ、DNAポリメラーゼ補因子、およびデオキシリボヌクレオチド5'三リン酸、即ち、dNTP、またはリボヌクレオチド5'三リン酸、即ち、NTPのような、PCR反応を実施するための試薬も含み得る。一つの態様において、キットは、逆転写酵素および/またはDNAポリメラーゼ活性を阻害する抗体のような様々なポリヌクレオチド分子も含み得る。
【0100】
一つの態様において、キットは、陽性対照反応および陰性対照反応を実施するために必要な試薬を含有している。別の態様において、キットは、別々のコンパートメントに、本明細書に記載される構成成分を含有するために適している。キットは、遺伝学的疾患および感染性疾患の診断、性別決定、遺伝連鎖分析、ならびに付加的な法医学的研究のための説明書も開示し得る。別の態様において、本テクノロジーの方法において利用される試薬は、診断キットへとパッケージングされ得る。診断キットは、標識された鋳型またはそれらの配列、IAP、および従来のプライマーを含み得る。一つの態様において、キットは、ポリメラーゼにより伸展中のオリゴヌクレオチドへ取り込まれ得る非標準塩基を含む。別の態様において、キットは、標識された非標準塩基を含有している。オリゴヌクレオチドおよび非標準塩基が未標識である場合、特異的な標識試薬もキットに含まれ得る。一つの態様において、キットは、本明細書に記載された方法、工程、手順、または態様のうちのいずれかを実施するかまたは作製するための試薬および説明書を開示する。
【実施例】
【0101】
以下の実施例により本テクノロジーをさらに例示するが、実施例は決して限定的なものと解釈されるべきでない。
【0102】
IAPプライマーを使用して標的核酸配列を増幅するための方法
本明細書に開示されたIAPを、標的核酸を増幅するために適用する。以下の実験を、一段階PCR増幅において実施する。IAP系が、バックグラウンドおよび非特異的産物増幅のような、従来のプライマーセットまたは標準プライマーセットから生じる主要な問題を克服し得ることを証明するため、IAPを、従来のプライマーセットまたは標準プライマーセットから改作する。そのため、様々な融解温度(Tm)を有し、かつ散在する標準塩基を含み、または含まずに、少なくとも2個の連続するかまたは連続しないイソ塩基を含有するよう、IAPプライマーを設計した。5'セグメントは、約50℃〜65℃のTmを保有するIAPを作製するため、可変数の塩基を含有している。以下のIAPプライマーの3'セグメントは、約4〜10塩基を含有している。
【0103】
PCR増幅において、標的核酸の断片を生成し、かつ/または検出するためにIAPプライマーセットを使用する。具体的には、25μlの最終容量で、10mM BTP緩衝液(50mM KCl、2.5mM MgCl2、0.1mM dNTP、80μMイソCTP)pH 9.1および1×TiTaqポリメラーゼ(Clontech,Palo Alto,CA)を含有している反応混合物に、1μlの5'IAP(10μM)および1μlの3'IAP(10μM)を添加することにより、一段階PCR増幅を実施した。PCRサイクリング条件は、94℃2分の反応物の予備加熱、それに続く、95℃5秒の変性、45℃または55℃20秒のアニーリング、および72℃30秒の伸長を含む50〜70反応サイクルを含んでいた。
【0104】
以下の実施例により証明されるように、標的ヌクレオチド増幅は、消光増幅産物の生成またはサイバーグリーン(SYBR Green)のアンプリコンへのインターカレーションによる(下記表中、カウントとして表示される)蛍光の変化により、リアルタイムで示された。増幅の後、得られた産物を、熱変性を介した鎖分離に供し、蛍光シグナルを再生させた。さらに、融解が起こる特定の温度を、増幅産物の同一性を確認するために使用した。即ち、高分解能融解分析を使用した(表1〜10を参照のこと)。対照として、標準プライマーを使用した標的DNAまたは標的RNAの増幅も行った。
【0105】
実施例1−連続するイソ塩基を含むIAPを使用した標的DNAの検出
2個の連続するイソG塩基を含むフォワードIAPプライマー、およびFAM(フルオレセイン)により標識された標準FluAリバースプライマーの存在下で、10,000×LoD FluA(FluA)DNA標的の増幅を行った。IAPプライマーは、60℃の5'セグメントTmを有し、3'末端に4〜7個の範囲の変動する数の塩基を有していた(表1を参照のこと)。PCR増幅反応のためのサイクリング条件は、94℃2分の反応物の予備加熱、それに続く、95℃5秒の変性、45℃20秒のアニーリング、および72℃30秒の伸長を含む70反応サイクルを含んでいた。表1に示されるように、蛍光(カウント)の減少は、リアルタイムで測定された、各増幅サイクルによる消光アンプリコンの生成によるものであり、標的DNA増幅の指標として機能した。増幅の後、得られたアンプリコンを熱変性を介した鎖分離に供し、蛍光シグナルを再生させた。融解が起こる特定の温度を、増幅産物の同一性を確認するために使用した(表1「Tm」を参照のこと)。
【0106】
(表1)5'末端のTmが60℃であるIAPプライマー

注:X=イソC、Y=イソG、FAM=フルオレセイン
【0107】
標準FluAフォワードプライマー、ならびに2個の連続するイソG塩基およびFAMにより標識されたイソC塩基を含有しているリバースIAPプライマーの存在下でも、FluA DNA標的の増幅を実施した。IAPプライマーは、55℃の5'セグメントTmを有し、3'末端に4〜7個の範囲の変動する数の塩基を有していた(表2を参照のこと)。サイクリング条件、検出、およびアンプリコン確認を、上記概説と同様に実施した。
【0108】
(表2)5'末端のTmが55℃であるIAPプライマー

注:X=イソC、Y=イソG、FAM=フルオレセイン
【0109】
これらの結果は、標準プライマーの存在下で、連続するイソ塩基を含有しているフォワードまたはリバースのIAPプライマーが、標的DNAを特異的かつ効率的に増幅し得ることをリアルタイムで示している。これらの結果は、連続するイソ塩基を含有しているIAPプライマーが、PCR反応においてフォワードプライマーとして使用されるかリバースプライマーとして使用されるかに関係なく、標的DNAを特異的かつ効率的に増幅し得ることをリアルタイムで示している。
【0110】
実施例2−連続するイソ塩基を有するIAPを使用した標的RNAの検出
2個の連続するイソG塩基を有するフォワードIAPプライマー、およびFAMにより標識された標準FluAリバースプライマーの存在下で、FluA RNA標的の増幅を行った。IAPプライマーは、50℃の5'セグメントTmを有し、3'末端に4〜7個の範囲の変動する数の塩基を有していた(表3を参照のこと)。RNAを、50℃で15分間、MMLV-RT(Promega,Madison,WI)を使用して逆転写した後、増幅した。PCR増幅反応のサイクリング条件は、94℃2分の反応物の予備加熱、それに続く、95℃5秒の変性、45℃20秒のアニーリング、および72℃30秒の伸長を含む70反応サイクルを含んでいた。表3に示されるように、蛍光(カウント)の減少は、消光アンプリコンの生成によるものであった。アンプリコン同定の確認も、上記と同様に実施した。
【0111】
(表3)5'末端のTmが50℃であるIAPプライマー

注:X=イソC、Y=イソG、FAM=フルオレセイン
【0112】
標準FluAフォワードプライマー、ならびに2個の連続するイソG塩基およびFAMにより標識されたイソC塩基を含有しているリバースIAPプライマーの存在下でも、FluA RNA標的の増幅を実施した。IAPプライマーは、55℃の5'セグメントTmを有し、3'末端に5〜7個の範囲の変動する数の塩基を有していた(表4を参照のこと)。サイクリング条件、検出、およびアンプリコン確認を、上記概説と同様に実施した。
【0113】
(表4)5'末端のTmが55℃であるIAPプライマー

注:X=イソC、Y=イソG、FAM=フルオレセイン
【0114】
これらの結果は、標準プライマーの存在下で、連続するイソ塩基を含有しているフォワードまたはリバースのIAPプライマーが、標的RNAを特異的かつ効率的に増幅し得ることをリアルタイムで示している。これらの結果は、連続するイソ塩基を含有しているIAPプライマーが、PCR反応においてフォワードプライマーとして使用されるかリバースプライマーとして使用されるかに関係なく、標的RNAを特異的かつ効率的に増幅し得ることをリアルタイムで示している。さらに、これらの結果は、IAPプライマー(フォワードプライマー)が逆転写反応のためRNAをプライミングし得ることを示している。
【0115】
実施例3−IAPを使用した標的DNAのサイバーグリーン検出
2個の連続するイソG塩基を有するフォワードIAPプライマー、および標準リバースプライマーの存在下で、FluA DNA標的の増幅を行った。IAPプライマーは、55℃の5'セグメントTmを有し、3'末端に4〜7個の範囲の変動する数の塩基を有していた(表5を参照のこと)。PCR増幅反応は、二本鎖(ds)DNAインターカレーティング色素サイバーグリーンを利用し、94℃2分の反応物の予備加熱、それに続く、95℃5秒の変性、55℃20秒のアニーリング、および72℃30秒の伸長を含む70反応サイクルを含むサイクリング条件を利用した。表5に示されるように、蛍光(カウント)の変化は、リアルタイムで測定されたdsアンプリコンへのサイバーグリーンのインターカレーションによるものであり、標的DNA増幅の指標として機能した。アンプリコン同定の確認も、上記と同様に実施した。
【0116】
(表5)5'末端のTmが55℃であるIAPプライマーおよびサイバー

注:X=イソC、Y=イソG
【0117】
実施例4−連続しないイソ塩基を有するIAPを使用したDNAのサイバーグリーン検出
1個の天然塩基により分離された2個の連続しないイソG塩基を有するリバースIAPプライマー、および標準フォワードプライマーの存在下で、FluA DNA標的の増幅を行った。IAPプライマーは、60℃の5'セグメントTmを有し、3'末端に4個の塩基を有していた(表6を参照のこと)。PCR増幅反応は、dsDNAインターカレーティング色素サイバーグリーンを使用し、94℃2分の反応物の予備加熱、それに続く、95℃5秒の変性、55℃20秒のアニーリング、および72℃30秒の伸長を含む70反応サイクルを含むサイクリング条件を使用した。表6に示されるように、蛍光(カウント)の変化は、リアルタイムで測定された、dsアンプリコンへのサイバーグリーンのインターカレーションによるものであり、標的DNA増幅の指標として機能した。アンプリコン同定の確認も、上記と同様に実施した。
【0118】
(表6)5'末端のTmが60℃であるIAPプライマーおよびサイバー

注:X=イソC、Y=イソG
【0119】
これらの結果は、標準プライマーの存在下で、連続しないイソ塩基を含有しているIAPプライマーが、標的DNAを特異的かつ効率的に増幅し得ることをリアルタイムで示している。これらの結果は、インターカレーティング色素が、増幅反応において、そして高分解能融解分析のため、適当な検出剤として使用され得ることを示している。特に、結果は、サイバーグリーンのようなインターカレーティング色素が、IAP増幅反応において使用するための適当な検出剤であることを示している。
【0120】
実施例5−フォワードIAPおよびリバースIAPを使用したDNAのサイバーグリーン検出
2個の連続するイソG塩基を各々有するフォワードIAPプライマーおよびリバースIAPプライマーの存在下で、FluA DNA標的の増幅を行った。IAPプライマーは、50℃、55℃、および60℃の5'セグメントTmを有し、3'末端に4〜7個の変動する数の塩基を有していた(それぞれ表7〜9を参照のこと)。PCR増幅反応は、dsDNAインターカレーティング色素サイバーグリーンを使用し、94℃2分の反応物の予備加熱、それに続く、95℃5秒の変性、55℃20秒のアニーリング、および72℃30秒の伸長を含む70反応サイクルを含むサイクリング条件を使用した。表7〜9に示されるように、蛍光(カウント)の変化は、リアルタイムで測定された、dsアンプリコンへのサイバーグリーンのインターカレーションによるものであり、標的DNA増幅の指標として機能した。アンプリコン同定の確認も、上記と同様に実施した。
【0121】
(表7)5'末端のTmが50℃であるIAPプライマーおよびサイバー

注:X=イソC、Y=イソG
【0122】
(表8)5'末端のTmが55℃であるIAPプライマーおよびサイバー

注:X=イソC、Y=イソG
【0123】
(表9)5'末端のTmが60℃であるIAPプライマーおよびサイバー

注:X=イソC、Y=イソG
【0124】
実施例6−IAPは非特異的相互作用を減少させる
2個の連続するイソG塩基を各々含むフォワードIAPプライマーおよびリバースIAPプライマーの存在下で、FluA DNA標的の増幅を実施し、標準プライマーを使用した対照反応と比較した。IAPプライマーは、50℃の5'セグメントTmを有し、3'末端に5個の塩基を有していた。PCR増幅反応は、dsDNAインターカレーティング色素サイバーグリーンを使用し、94℃2分の反応物の予備加熱、それに続く、95℃5秒の変性、55℃20秒のアニーリング、および72℃30秒の伸長を含む50反応サイクルを含むサイクリング条件を使用した。表10に示されるように、蛍光(カウント)の変化は、リアルタイムで測定された、dsアンプリコンへのサイバーグリーンのインターカレーションによるものであり、標的DNA増幅の指標として機能した。アンプリコン同定の確認も、上記と同様に実施した。IAPプライマー(表10を参照のこと)の存在下で実施された増幅は、フォワードおよびリバースの標準FluAプライマー(表10を参照のこと)を使用した対照反応と比較して、より少ない非特異的相互作用を有していたことが注目される。
【0125】
(表10)標準プライマーを使用した反応と比較された、IAPプライマーによるサイバーグリーンに基づくPCR反応

【0126】
以上の実施例は、IAPが、非特異的バックグラウンド産物を本質的に含まずに、標的ヌクレオチド配列を検出することができ、従って、従来のプライマーを使用した時に発生する非特異性のような問題を改善することを例証している。IAPアッセイは、遺伝子特異的プライマーの設計に関わらず、特異的な産物の生成を可能にすることも理解される。
【0127】
本開示は、個々の局面の単なる例示であるものとする、本願において記載された特定の態様に関して限定されない。当業者には明白であるように、多くの修飾および変動が、その本旨および範囲から逸脱することなく成され得る。本明細書において列挙されたものに加えて、開示の範囲内にある機能的に等価な方法および組成物が、以上の説明から、当業者には明白になるであろう。そのような修飾および変動は、添付の特許請求の範囲の範囲に内含されるものとする。本開示は、そのような特許請求の範囲が権利を有する等価物の完全な範囲と共に、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるべきである。本開示は、特定の方法、試薬、化合物、組成物、または生物学的系に限定されず、それらは当然変動し得ることが理解されるべきである。本明細書において使用された用語法は、特定の態様を記載するためのものに過ぎず、限定的なものではないことも理解されるべきである。
【0128】
当業者により理解されるように、全ての目的のため、特に、明細書の提供に関して、本明細書に開示された全ての範囲は、全ての可能な部分範囲およびそれらの部分範囲の組み合わせも包含する。リストされた範囲は、同範囲を十分に記載し、少なくとも等しい半分、3分の1、4分の1、5分の1、10分の1等へ分解することを可能にするものであることが容易に認識され得る。非限定的な例として、本明細書に記述された各範囲は、下方の3分の1、中央の3分の1、上方の3分の1等へと容易に分解され得る。やはり当業者により理解されるように、「最高」、「少なくとも」、「超」、または「未満」等のような語は、全て、挙げられた数を含み、上述のような部分範囲へと後に分解され得る範囲をさす。最後に、当業者により理解されるように、範囲は個々の各メンバーを含む。従って、例えば、1〜3個の「X」を有する群は、1個、2個、または3個の「X」を有する群をさす。同様に、1〜5個の「X」を有する群は、1個、2個、3個、4個、または5個の「X」を有する群をさし、他も同様である。
【0129】
様々な局面および態様を本明細書に開示したが、他の局面および態様が、当業者には明白になるであろう。本明細書に開示された様々な局面および態様は、例示のためのものに過ぎず、限定的なものではなく、真の範囲および本旨は、以下の特許請求の範囲により示される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
核酸試料を、増幅条件下で、
(a)鋳型配列に相補的な3'セグメント;
(b)イソCおよびイソGからなる群より独立に選択される少なくとも2個の連続するかまたは連続しない非標準塩基を含み、かつ少なくとも一つのプライマーのアニーリング位置を3'セグメントに制限する、3'セグメントの5'末端にあるイソ領域;
(c)鋳型配列に相補的なヌクレオチド配列を含む、イソ領域の5'末端にある5'セグメントであって、少なくとも一つのプライマーが3'セグメントのみを有するプライマーと比較して増加した鋳型配列に対するアニーリング特異性を有する、5'セグメント
を含む少なくとも一つのプライマーと接触させる工程
を含む、増幅反応のアニーリング特異性を増加させるための方法。
【請求項2】
前記少なくとも一つのプライマーが6〜60ヌクレオチド長である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記イソ領域が約1〜約15個の非標準塩基を含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
増幅反応が、
PCR;逆転写酵素PCR;リアルタイムPCR;ディファレンシャルディスプレイPCR;PCRに基づくゲノム分析;AP(Arbitrary Primed)-PCR;多重PCR;ロングレンジ(long-range)PCR;直線的(linear)PCR;逆PCR;定量的PCR;タッチダウンPCR;インサイチューPCR;ベクトレット(vectorette)PCR;TAIL(thermal asymmetric interlaced)PCR;MOPAC(mixed oligonucleotide-primed amplification of cDNA);3'-RACE;5'-RACE、高分解能融解分析、およびプライマー伸長反応
からなる群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記アニーリング工程が、3'セグメントのみを有するプライマーと比較して、前記少なくとも一つのプライマーのアニーリング特異性を増加させるために十分な温度で実施される、請求項1記載の方法。
【請求項6】
(a)鋳型配列の変性、少なくとも一つのプライマーのアニーリング、および少なくとも一つのプライマーの伸長を少なくとも2サイクル含む、第一増幅産物を形成させるために第一のアニーリング温度で鋳型配列の第一段階増幅を実施する工程であって、少なくとも一つのプライマーが、
(i)鋳型配列に相補的な3'セグメント;
(ii)イソCおよびイソGからなる群より独立に選択される少なくとも2個の連続するかまたは連続しない非標準塩基を含み、かつ少なくとも一つのプライマーのアニーリング位置を3'セグメントに制限する、3'セグメントの5'末端にあるイソ領域;ならびに
(iii)鋳型配列に相補的なヌクレオチド配列を含む、イソ領域の5'末端にある5'セグメント
を含む、工程と、
(b)第二のアニーリング温度で、
(i)工程(a)から生成された増幅産物の変性、少なくとも一つのプライマーのアニーリング、および少なくとも一つのプライマーの伸長;または
(ii)工程(a)から生成された増幅産物の変性、ならびに少なくとも一つのプライマーの5'セグメントに対応する配列を含むプライマーのアニーリングおよび伸長
を少なくとも1サイクル含む、第一増幅産物の第二段階増幅を実施する工程と
を含む、二段階反応において標的核酸を増幅するための方法。
【請求項7】
標的核酸が、
(a)オリゴヌクレオチドdTプライマーもしくはアンカード(anchored)オリゴヌクレオチドdTプライマーを標的mRNAのポリAテール領域にハイブリダイズさせるか、または六量体、七量体、および/もしくは八量体のランダムオリゴヌクレオチドを標的mRNAにハイブリダイズさせること;ならびに(b)cDNAを作製するために標的mRNAを逆転写すること
により形成されたcDNAである、請求項6記載の方法。
【請求項8】
二段階増幅手順が、
PCR;多重DNA増幅;差次的に発現された遺伝子の同定;3'-RACE;プライマー伸長反応;5'-RACE;全長cDNAの増幅;5'濃縮(enriched)cDNAの増幅;DNAフィンガープリント;RNAフィンガープリント;多重遺伝子ファミリーにおける保存されたホモロジーセグメントの同定;ヌクレオチド配列変動の同定;プレmiRNA増幅;rRNA増幅;PCR後の高分解能融解分析;および変異誘発
の群を含む方法に適用される、請求項6記載の方法。
【請求項9】
(a)3'セグメントが鋳型配列に相補的である少なくとも一つのプライマーを合成する工程;
(b)イソCおよびイソGからなる群より独立に選択される少なくとも2個の連続するかまたは連続しない非標準塩基を含むイソ領域を、3'セグメントの5'末端に組み入れる工程であって、該イソ領域が、少なくとも一つのプライマーのアニーリング位置を3'セグメントに制限し、それにより、3'セグメントのみを有するプライマーと比較して、3'セグメントのアニーリング特異性を増加させる、工程;
(c)鋳型配列を含有している鋳型の任意の領域に相補的なヌクレオチド配列を含む5'セグメントを、イソ領域の5'末端に組み入れる工程であって、それによって少なくとも一つのプライマーが、3'セグメントのみを有するプライマーと比較して増加した鋳型配列に対するアニーリング特異性を有する、工程
を含む、少なくとも一つのプライマーのアニーリング特異性を増加させるための方法。
【請求項10】
前記合成する工程が、固相合成;DNA複製;逆転写;制限消化;ランオフ(run-off)転写;PCR;PCRに基づく方法;プライマー伸長反応;およびライゲーションからなる群より選択される方法を含む、請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記少なくとも一つのプライマー配列が6〜60デオキシリボヌクレオチド長または6〜60リボヌクレオチド長である、請求項9記載の方法。
【請求項12】
前記イソ領域が約1〜約15個の非標準塩基を含む、請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記少なくとも一つのプライマーが増幅反応または二段階増幅反応において使用される、請求項9記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2013−507971(P2013−507971A)
【公表日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−535419(P2012−535419)
【出願日】平成22年10月22日(2010.10.22)
【国際出願番号】PCT/US2010/053773
【国際公開番号】WO2011/050278
【国際公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(500174502)ルミネックス コーポレーション (15)
【Fターム(参考)】