説明

反応触媒を有する通路を備えた示差ガス成分プローブ

第1のガス成分と、第1のガス成分から還元または酸化によって得られる第2のガス成分とを含む燃焼ガス中における第1のガス成分の量を測定するのに用いられるプローブであって、このプローブは、ガスの第1の試料を採取して、第1の試料中に存在する第1のガス成分を第2のガス成分に変換する第1の成分プローブを備え、第1の成分プローブは第1の試料を輸送するための第1の通路を有し、第1の試料に接触する第1の通路壁が、第1のガス成分を第2のガス成分に変換する材料から作られており、ガスの第2の試料を採取する第2の成分プローブを備え、第2の成分プローブは第2の試料を輸送するための第2の通路を有し、第2の試料に接触する第2の通路壁が、第1のガス成分から第2のガス成分への変換に関して不活性な材料から作られており、変換後の第1の試料中に存在する第2のガス成分の総量と、第2の試料中に存在する第2のガス成分の総量との差が、ガス中に存在する第1のガス成分の量の測定値を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス中における第1のガス成分の量を測定するのに用いられるプローブに関する。
【0002】
とりわけ、本発明は、第1のガス成分と、第1のガス成分から還元または酸化によって得られる第2のガス成分とを含むガス中における第1のガス成分の量を測定するのに用いられるプローブに関する。
【0003】
本発明は、NO2とNOとを含むガス中におけるNO2の量の測定に特定用途を見出すものである。
【0004】
環境基準を満たすことを確認するには、燃焼プラントによって生じるNOX(窒素酸化物)の放出を測定することが必要になる。NOXの2つの最も重要な成分はNO(一酸化窒素)およびNO2(二酸化窒素)である。NOは通常、主要種であるが、NO2ははるかに毒性及び反応性が強い。現在、低レベルで正確にNOXを測定するには抽出ガス分析を利用しなければならない。プローブによって、放出物の試料が抽出され、搬送ラインによって、NO及びNO2含有量を測定する計測器まで輸送される。プローブおよび搬送ラインを構成している材料によって、放出試料が変化し、計測器によってNO/NO2含有量の正確な測定値が得られなくなる可能性のあることが分っている。金属プローブによって、NO2がNOに変換され、その結果NO2の測定値が人為的に少なくなる可能性がある。これは、例えばガスタービンエンジンの排気ガスに見受けられるように、とりわけ高温すなわち500℃以上の温度で生じる。例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)で作られた搬送ラインの場合、搬送ラインの材料によってNO2が吸収される可能性がある。NO2と比較すると、NOは極めて安定している。要するに、NOXを測定する現在のアプローチは、NOX全体、及びとりわけNO2を過少に測定する傾向がある。
【0005】
本発明の第1の態様によれば、第1のガス成分と、第1のガス成分から還元または酸化によって得られる第2のガス成分とを含むガス中における第1のガス成分の量を測定するのに用いられるプローブが提供される。このプローブは、ガスの第1の試料を採取して、第1の試料中に存在する第1のガス成分を第2のガス成分に変換する第1の成分プローブと、ガスの第2の試料を採取する第2の成分プローブとを備え、変換後の第1の試料中に存在する第2のガス成分の総量と、第2の試料中に存在する第2のガス成分の総量との差が、そのガスに存在する第1のガス成分の量の測定値を形成する。
【0006】
第1のガス成分はNO2であり、第2のガス成分はNOであってよい。
【0007】
第1の成分プローブは第1の試料を輸送するための第1の通路を有し、第1の試料に接触する第1の通路壁が、NO2をNOに変換する材料から作られており、第2の成分プローブは第2の試料を輸送するための第2の通路を有し、第2の試料に接触する第2の通路壁が、NO2からNOへの変換に関して不活性な材料から作られていると望ましい。
【0008】
第1の成分プローブは、さらに、NO2をNOへ変換する変換装置を含んでいてもよい。変換装置は、第1の通路壁と同じ材料で作られており、第1の試料が第1の通路に沿って輸送される際に変換装置を通過するように第1の通路内に配置されている。
【0009】
第1の通路壁はNO2をNOへ変換する際に特に効率の良いニッケル合金から適切に構成され、第2の通路壁はガラスのようなセラミック材料から適切に構成されている。
【0010】
第1の成分プローブはニッケル合金から成る第1の管を含み、第2の成分プローブはセラミック材料から成る第2の管を含み、第1の管と第2の管とが平行に隣接して配置され、第1の管と第2の管とは第1の管が第2の管を支持するように互いに固定されると望ましい。
【0011】
第1の管はその全長に沿って間隔をあけた位置に第1の複数の穴を含み、第1の成分プローブは第1の複数の穴によって第1の試料を採取し、第2の管はその全長に沿って間隔をあけた位置に第2の複数の穴を含み、第2の成分プローブは第2の複数の穴によって第2の試料を採取すると望ましい。
【0012】
第1の複数の穴及び第2の複数の穴は、第1の管および第2の管の同じ側で、管の全長に沿って対応する位置に適切に形成されている。
【0013】
本発明の第2の態様によれば、第1のガス成分と、第1のガス成分から還元または酸化によって得られる第2のガス成分とを含むガス中における第1のガス成分の量を測定する方法が提供される。この方法は、ガスの第1の試料を採取して、第1の試料中に存在する第1のガス成分を第2のガス成分に変換し、変換後の第1のガス試料中に存在する第2のガス成分の総量を測定するステップと、ガスの第2の試料を採取して、第2の試料中に存在する第2のガス成分の総量を測定するステップと、第1の試料中に存在する第2のガス成分の総量から第2の試料中に存在する第2のガス成分の総量を引いて、そのガス中に存在する第1のガス成分の量を求めるステップとを含む。
【0014】
第1のガス成分はNO2であり、第2のガス成分はNOであってもよい。
【0015】
次に、例証として、添付の図面に関連して、本発明の説明を行う。
【0016】
図面を参照すると、プローブ1は第1の成分プローブ3と第2の成分プローブ5とを備えている。成分プローブ3はNO2をNOへ変換する際に特に効率の良いニッケル合金から成る管7を含んでいる。成分プローブ3は、さらに、やはりニッケル合金から成る多孔板11の間に保持され、管7と同じニッケル合金の薄片を含むNO2−NO変換装置9を含んでいる。成分プローブ5は例えばガラス管のようなセラミック管13を含んでいる。
【0017】
管7,13は平行に隣接して配置されている。管は、一方の端部近くで、取付け板15によって保持されている。管に沿って、この一方の端部からほぼ3/5の距離のところで、これらの管は、クランプ17を用いて互いに固定されている。クランプ17は、ナット21、ボルト23、及び、ワッシャ25を用いて互いに固定された2つの半部分19を含んでいる。前述のように管7,13を互いに固定することによって、より強いニッケル合金から成る成分プローブ3が、より弱いセラミックスから成る成分プローブ5を支持している。管7,13の同じ側で、管の全長に沿って対応する位置に、穴27が設けられている。
【0018】
プローブ1は、ガスタービンエンジンの排気ガス流を横切って延びて、穴27がガス流を直接取り入れるように取り付けられている。このため、取付け板15は固定具29を含んでいる。このようにプローブを取り付けることによって、排気ガス流の幅にわたって、効率の良い試料採取が行われる。ガス流の幅に渡る試料採取によって、ガス流の正確な特性が明らかになる。
【0019】
プローブ1の使用時、例えば、不活性材料製の加熱電磁弁のような加熱切換え装置が、成分プローブ3,5間における定期的切換えのため、プローブに接続される。加熱試料ポンプを含む加熱試料搬送ラインが、NOの測定に適した計測器に試料を搬送するために、加熱切換え装置からの共通出口に接続されている。試料の完全性(保全)は加熱要素を用いることによって計測器内で保たれる。
【0020】
成分プローブ3が計測器に接続されると、試料ポンプが、ガスタービンエンジンから排出される排気ガスをニッケル合金管7の穴27を介して吸引する。ガスは管7に沿って進み変換装置9を通る。管7及び変換装置9のニッケル合金が、排気ガス中に存在する全てのNO2をNOに変換する働きをする。この変換は排気ガスの温度によって支援されるという点に留意されたい。排気ガス中に元々存在するNOつまり原NOは、NO2を変換することによって得られたNOつまり変換NOと共に、計測器によって測定される。これによって、NO総量は原NO+変換NOに等しいという測定値が得られる。
【0021】
成分プローブ5が計測器に接続されると、排気ガスがセラミック管13の穴27を介して吸引される。セラミックはNO2からNOへの変換に関して不活性であるので、成分プローブ5においてNO2はNOに変換されない。従って、成分プローブ5の場合、計測器は、排気ガス中に元々存在するNOつまり原NOだけを測定する。
【0022】
存在するNO2の量と変換NOの量との間に直接的関係があるので、成分プローブ3,5の測定値の差は、排気ガス中に存在するNO2の測定量である。成分プローブ3の測定値つまり(原NO+変換NO)量から、成分プローブ5の測定値つまり原NO量を引くと、変換NO量が得られる。
【0023】
先行技術の場合、プローブによるNO2からNOへの変換は、結果として、NO2の測定値が人為的に少なくなる問題を有する。本発明による上述のプローブの場合、成分プローブ3において、この特性が利点に変わり、存在する全NO2をNOに変換するのに利用される。先行技術においては、搬送ラインの材料によるNO2の吸収が問題になる。本発明による上述のプローブにおいて、成分プローブ3の場合には、全NO2がNOに変換され、従ってNO2が搬送ラインによって吸収されることはなく、そして成分プローブ5の場合には、プローブ5の目的が原NOの測定に限られるので、搬送ラインによるNO2の吸収は重要ではない。
【0024】
本発明による上述のプローブは、ガスタービンエンジンの排気ガスに用いられ、このような排気ガスに生じる高温を利用して、成分プローブ3における全NO2からNOへの変換を支援する。プローブを利用して、こうした高温ではないガス中のNO2量を測定する場合、成分プローブ3における全NO2からNOへの変換を確実にするためにヒータを追加すると望ましい。
【0025】
極端な場合、本発明による上述のプローブを利用して、NOを含まないガス中のNO2量、すなわちガス中にNOが存在せずNO2だけが存在する場合のNO2量を測定することが可能である。この場合、成分プローブ5の測定値つまり原NO量はゼロになり、成分プローブ3の測定値つまり(原NO+変換NO)量は変換NO量すなわちガス中に存在するNO2の測定値に等しくなる。
【0026】
本発明の上記説明は、NO2とNOとを含むガス中におけるNO2量の測定に関して行われた。理解すべきことは、本発明は、ガスが、測定されるガス成分と、測定されるガス成分から還元によって得られる別のガス成分とが含まれる場合、NO2(測定されるガス成分)以外のガス成分量の測定に利用することも可能であることである。例えば、本発明を利用して、SO3(三酸化硫黄)とSO2(二酸化硫黄)とを含むガス中のSO3量を測定することが可能である。
【0027】
本発明の上記説明は、第1のガス成分と、第1のガス成分から還元によって得られる第2のガス成分とを含むガス中における第1のガス成分量の測定に関して行われた。理解すべきことは、本発明が、第1のガス成分と、第1のガス成分から還元とは逆の酸化によって得られる第2のガス成分とを含むガス中における第1のガス成分量の測定に利用することも可能であることである。もちろん、触媒は、酸化によって第2のガス成分を第1のガス成分に変換するように選択される。本発明のこの用途例はCO(一酸化炭素)とCO2(二酸化炭素)とを含むガス中のCO量の測定である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明によるプローブを例示した図
【図2】図1のプローブを右から見た、図1のプローブの端面図
【図3】図2のIII−III線に沿った断面図
【図4】図1のIV−IV線に沿った断面図
【符号の説明】
【0029】
1 プローブ
3 第1の成分プローブ
5 第2の成分プローブ
7 ニッケル合金製の管
9 変換装置
11 多孔板
13 セラミック管
15 取付け板
17 クランプ
19 半部分
21 ナット
23 ボルト
25 ワッシャ
27 穴
29 固定具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のガス成分と、第1のガス成分から還元または酸化によって得られる第2のガス成分とを含む燃焼ガス中における第1のガス成分の量を測定するのに用いられるプローブであって、
ガスの第1の試料を採取して、第1の試料中に存在する第1のガス成分を第2のガス成分に変換する第1の成分プローブを備え、第1の成分プローブは第1の試料を輸送するための第1の通路を有し、第1の試料に接触する第1の通路壁が、第1のガス成分を第2のガス成分に変換する材料から作られており、
ガスの第2の試料を採取する第2の成分プローブを備え、第2の成分プローブは第2の試料を輸送するための第2の通路を有し、第2の試料に接触する第2の通路壁が、第1のガス成分から第2のガス成分への変換に関して不活性な材料から作られており、
変換後の第1の試料中に存在する第2のガス成分の総量と、第2の試料中に存在する第2のガス成分の総量との差が、ガス中に存在する第1のガス成分の量の測定値を形成する
ことを特徴とするプローブ。
【請求項2】
第1のガス成分がNO2であり、第2のガス成分がNOであることを特徴とする請求項1に記載のプローブ。
【請求項3】
第1の成分プローブは、さらに、NO2をNOに変換するための変換装置を含み、変換装置は、前記第1の通路壁と同じ材料で作られており、第1の試料が第1の通路に沿って輸送される際に変換装置を通過するように第1の通路内に配置されていることを特徴とする請求項2に記載のプローブ。
【請求項4】
前記第1の通路壁はNO2をNOへ変換する際に特に効率の良いニッケル合金から成り、前記第2の通路壁はガラスのようなセラミック材料から成ることを特徴とする請求項2または3に記載のプローブ。
【請求項5】
前記第1の成分プローブは前記ニッケル合金から成る第1の管を含み、前記第2の成分プローブは前記セラミック材料から成る第2の管を含み、前記第1の管と第2の管とは平行に隣接して配置され、前記第1の管と第2の管とは、第1の管が第2の管を支持するように互いに固定されていることを特徴とする請求項4に記載のプローブ。
【請求項6】
第1の管はその全長に沿って間隔をおいた位置に第1の複数の穴を含み、第1の成分プローブは第1の複数の穴を介して第1の試料を採取し、第2の管はその全長に沿って間隔をおいた位置に第2の複数の穴を含み、第2の成分プローブは第2の複数の穴を介して第2の試料を採取することを特徴とする請求項5に記載のプローブ。
【請求項7】
第1の複数の穴及び第2の複数の穴が、第1の管および第2の管の同じ側で、管の全長に沿った対応する位置に形成されることを特徴とする請求項6に記載のプローブ。
【請求項8】
ガスタービンエンジンによって生じる排気ガス中に存在するNO2の量を測定するのに用いられる請求項2乃至7の1つに記載のプローブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−522176(P2008−522176A)
【公表日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−543839(P2007−543839)
【出願日】平成17年11月29日(2005.11.29)
【国際出願番号】PCT/EP2005/056292
【国際公開番号】WO2006/058877
【国際公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【出願人】(390039413)シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト (2,104)
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Wittelsbacherplatz 2, D−80333 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】