説明

収穫機の分草装置

【課題】夜間作業時においても分草体前方の分草位置を容易に確認することができるものとし、刈取作業の能率を高める。
【解決手段】立毛穀稈を左右に分草する分草体(11)の背部に前方に向けて照射する照明灯(16)を備え、分草体(11)の一部又は全部を透視可能な透明体(18)で構成すると共に、この分草体の前面中央部には分草される穀稈の上部側を押し上げ案内する分草ガイド杆(19)を前側上方へ突出させて設ける。また、分草体(11)を、上端側を支点として上下に揺動開閉可能に構成する。また、分草体(11)のうち最も既刈地側に位置する右分草体(11R)を、運転操作位置からの遠隔操作によって上下方向の縦軸芯(21)回りに左右回動する構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、立毛穀稈を分草するバインダやコンバイン等の収穫機の分草装置に関し、農業機械の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、特許文献1には、立毛穀稈を左右に分草する分草体に照明ランプを配設して、分草体位置が容易に確認でき、刈取作業を円滑にする収穫機が開示されている。
【特許文献1】実開平7−39312号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来構成のものでは、分草体の前面が穀稈によって覆われた場合、照明灯による前方への照射が妨げられ、分草位置の確認が容易にし難い問題があった。
本発明は、上記課題の解決を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この発明は、上記課題を解決すべく次のような技術的手段を講じた。
すなわち、請求項1記載の発明は、立毛穀稈を左右に分草する分草体(11)の背部に前方に向けて照射する照明灯(16)を備え、前記分草体(11)の一部又は全部を透視可能な透明体(18)で構成すると共に、この分草体の前面中央部には分草される穀稈の上部側を押し上げ案内する分草ガイド杆(19)を前側上方へ突出させて設けたことを特徴とする収穫機の分草装置とする。
【0005】
刈取作業にあたり、機体の進行に伴い立毛穀稈は分草体(11)によって左右に分草される。分草される穀稈の上部側は分草ガイド杆(19)によって分草体前面に覆い被さることなく左右上方に押し分け案内される。これにより、夜間作業時での照明灯による前方への照射が妨げられることがなくなり、分草体前方の分草位置を容易に確認することができる。
【0006】
請求項2記載の発明は、前記分草体(11)は、上端側を支点として上下に揺動開閉可能に構成したことを特徴とする請求項1記載の収穫機の分草装置とする。
分草体は、上端側の横軸を支点として上方に揺動開放することができるので、照明灯(16)のメンテナンスが容易に行える。
【0007】
請求項3記載の発明は、前記分草体(11)のうち最も既刈地側に位置する右分草体(11R)を、運転操作位置からの遠隔操作によって上下方向の縦軸芯(21)回りに左右回動する構成としたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の収穫機の分草装置とする。
【0008】
運転操作位置からの遠隔操作により、右分草体(11R)を左又は右へ回動操作し、分草幅を広くしたり狭めたりして穀稈の導入量を調整することができる。
夜間作業時にあっても、分草位置を確認しながら右分草体(11R)の回動操作により既刈地側の未刈穀稈を漏れなく確実に刈取圏内へ導入することができる。
【発明の効果】
【0009】
請求項1記載の発明によれば、分草体(11)前面の中央上方位置に突設する分草ガイド杆(19)の作用によって分草される穀稈が上方に押し分け案内されるので、倒伏穀稈であっても分草体(11)の前面に覆い被さることがなく、夜間作業時においても照明灯(16)による前方照射が良好に行え、分草体(11)前方の分草位置を容易に確認することができ、刈取作業の能率を高めることができる。
【0010】
請求項2記載の発明によれば、上記請求項1記載の発明の効果を奏するものでありながら、分草体(11)は上端側を支点として上方に揺動開放することができるので、照明灯(16)のメンテナンスを容易に行うことができる。
【0011】
請求項3記載の発明によれば、上記請求項1又は請求項2記載の発明の効果を奏するものでありながら、運転操作位置からの遠隔操作により右分草体(11R)を左右内外へ回動操作することができるので、夜間作業時にあっても、分草位置を確認しながら右分草体(11R)を回動操作して既刈地側の未刈穀稈を漏れなく確実に刈取圏内へ導入して刈り取ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
この発明の実施例を図面に基づき説明する。
図1は、コンバインの正面図を示すものであり、この走行車体1には、左右一対の走行クローラ2,2を備え、後部に搭載した脱穀装置3の前方部に刈取部4を設置し,刈取部4の横側部には運転席5や操作ボックス6等からなる運転操作部を備え、更に、その運転操作部の後方には脱穀粒を一時的に貯留するグレンタンクGを装備している。
【0013】
操作ボックス6上にはアーチ状の固定ハンドル杆7が突設され、この固定ハンドル杆7は、右側を上方に高くした高位ハンドル部7aと左側を下方に低くした低位ハンドル部7bとからなるように構成されている。操作ボックス6の右側には、前記高位ハンドル部7aの前側において左右方向の操作で機体の進行方向を操向制御し、前後方向の操作で刈取部4を昇降制御するパワステレバー8が設置されている。なお、パワステレバー8は前記高位ハンドル部7aに手首を載せた状態で左右又は前後に操作する。
【0014】
刈取部4は、立毛する穀稈を左右に分草する分草体11,11,11…と、分草後の穀稈を引き起す3条の穀稈引起し装置12,12,12と、引起し後の穀稈を刈り取る刈取装置13と、刈取後の穀稈を掻込搬送する掻込搬送部14a及び揚上搬送部14b等からなる。各分草体12,12…は、刈取装置13側から前方に突設する分草支持杆15の先端に取り付けられている。また、各分草体12…の背部には前方に向けて照射する照明灯16が前記分草支持杆15から突設する支持ステー17に装着支持されている。照明灯は強固な分草支持杆に支持ステーを介して支持されるので、照明灯自体の取り付けが強固に保持され、分草体が圃場に突っ込んだ場合でも照明灯の破損を回避することができる。また、この照明灯16は、図2及び図3に示すように、分草体前方の穀稈株元側で左右斜め前方に向けて照射するよう対向配置した構成としている。図例では分草体12の一部を透視可能な透明体18で構成すると共に、照明灯16を前方及び上方から覆う構成としている。この透明体18を例えばレンズで構成する場合には、図示のように、上方へ凸に屈曲形成することによりレンズ自体の剛性を高めることができる。
【0015】
分草体12の前面中央部には、分草される穀稈の上部側を押し上げ案内する棒状の分草ガイド杆19が分草体前面より前方上方に大きく突出するように設けられている。この分草ガイド杆は、穀稈の分草ガイドによって穀稈が分草体前面に覆い被さるのを防止するばかりでなく、透明体自体の防護を図ることもできる。
【0016】
また、分草体12は、図4に示すように、上端部を横軸20芯回りに揺動開閉可能に枢着して、照明灯のメンテナンスが容易に行えるように構成している。
運転席6側の既刈地側に位置する右分草体11Rは、先端側が左内側方又は右外側方に向けて回動するよう分草支持杆15の途中部に設けた上下方向の縦軸121回りに回動自在に枢着している。右分草体11Rと一体回動する操作アーム22と引起し装置の背部に設けられた遠隔操作レバー23とは、引張スプリング24及びワイヤ等の連結部材25を介して連動連結すると共に、該遠隔操作レバー23の操作により、右分草体11Rを左内側、又は右外側へ回動操作する構成としている。
【0017】
図5に示す実施例では、分草体11の前方を照射する照明灯16に対し、分草体の左右側方にも照射できる左照明灯16L及び右照明灯16Rを設けた構成としている。分草体の左右照明灯16L,16Rに対応する部分は透明体で構成するものとする。分草体の左右側面からも照射することができるので視認性が向上する。特に、既刈側分草体の右照明灯16Rは既刈株を照射でき、また、初回の回り刈り時は畔際を照射するので作業性が向上する。
【0018】
図1に示すように、右分草体11Rの後方に位置する操作ボックス6前面に前照灯26を設けることで、右分草体11R内の照明灯16による照射光の外側を広範囲に照射でき、照射範囲を拡大することができる。なお、図6に示す実施例のように、照明灯16による照射範囲LDと前照灯26による照明範囲FDとが重なる照明範囲WDを設けることで照明効果をより高めることができる。
【0019】
また、右分草体11Rの左側上方の刈取部に刈取前照灯29を設ける(実施例では引起しケースの上端部に設置)ことによっても右分草体11R内の照明灯16による照射光の内側を広範囲に照射でき、前記操作ボックス前面の前照灯26との共同により照射範囲を大幅に拡大することができる。
【0020】
図7に示す実施例では、分草体11内に対地方向に照射する下向照明灯16Dを設けたもので、これによって、刈取部を上昇させた場合でも、夜間作業で見えなかった刈取部下方を照明でき、機体旋回時には刈取部下方の障害物を容易に認識することができる。また、図8に示すように、引起し装置12の引起しケース背部に掻込搬送部を照射できる作業灯27を設けておくと、夜間作業時には掻込搬送状況を確認でき、作業を能率よく行うことができる。また、刈取部上げ時には地面も照射でき、穀稈詰りなどの解消作業が容易にできる。
【0021】
図9に示す実施例は、掻込搬送後の穀稈を脱穀部に揚上搬送する揚上搬送部を照射する搬送作業灯28を引起し装置12の背部に設置した構成例を示している。図例における引起し装置12は支軸Qを支点として上方にオープンできる構成になっており、夜間、引起し装置をオープンしてメンテを行う場合には、前記搬送作業灯28で掻込搬送部14aを照射でき、メンテナンスが容易に行える。
【0022】
各分草体内に設ける照明灯16は、他の前照灯や作業灯などの照明装置と同時にON、OFFすることができれば、夜間作業時、全ての照明装置を一斉に点灯、消灯することができて便利である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】コンバインの正面図
【図2】コンバイン要部の平面図
【図3】刈取部の要部の側面図
【図4】コンバイン要部の側面図
【図5】コンバイン要部の平面図
【図6】コンバインの要部の側面図
【図7】刈取部の要部の側面図
【図8】コンバインの側面図
【図9】コンバイン要部の側面図
【符号の説明】
【0024】
11 分草体
11R 既刈側右分草体
16 照明灯
18 透明体
19 分草ガイド杆
20 横軸
21 縦軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
立毛穀稈を左右に分草する分草体(11)の背部に前方に向けて照射する照明灯(16)を備え、前記分草体(11)の一部又は全部を透視可能な透明体(18)で構成すると共に、この分草体の前面中央部には分草される穀稈の上部側を押し上げ案内する分草ガイド杆(19)を前側上方へ突出させて設けたことを特徴とする収穫機の分草装置。
【請求項2】
前記分草体(11)は、上端側を支点として上下に揺動開閉可能に構成したことを特徴とする請求項1記載の収穫機の分草装置。
【請求項3】
前記分草体(11)のうち最も既刈地側に位置する右分草体(11R)を、運転操作位置からの遠隔操作によって上下方向の縦軸芯(21)回りに左右回動する構成としたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の収穫機の分草装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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