収穫機
【課題】搬送部を走行装置によって安定よく支持しながら、コンパクトで纏まりがよく取り扱い性に勝れた収穫機を提供することを課題とする。
【解決手段】作物を下方から後方上方に向けて挟持搬送する搬送路40を有する搬送部9を、走行装置5を有する走行機体2に傾斜姿勢で搭載する収穫機1であって、前記走行装置5を走行フレーム19を介して前後方向に連結した小径な従動輪23と径大な駆動輪6に、クローラ25を巻き掛けたクローラ型走行装置にすると共に、当該クローラ型の走行装置5を搬送部9の左右幅の略中央で、従動輪23側を搬送部9の下部に近接させて前後方向に入り込ませて設置すると共に、搬送部9を走行装置5のクローラ25がなす上側斜面に沿わせて設けた。
【解決手段】作物を下方から後方上方に向けて挟持搬送する搬送路40を有する搬送部9を、走行装置5を有する走行機体2に傾斜姿勢で搭載する収穫機1であって、前記走行装置5を走行フレーム19を介して前後方向に連結した小径な従動輪23と径大な駆動輪6に、クローラ25を巻き掛けたクローラ型走行装置にすると共に、当該クローラ型の走行装置5を搬送部9の左右幅の略中央で、従動輪23側を搬送部9の下部に近接させて前後方向に入り込ませて設置すると共に、搬送部9を走行装置5のクローラ25がなす上側斜面に沿わせて設けた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、圃場の作物を収穫する収穫機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、作物を下方から後方上方に向けて搬送する搬送路を有する搬送部(挟持搬送装置)を、走行装置を有する走行機体に傾斜姿勢で搭載する収穫機は、特許文献1で示されるように既に公知である。この特許文献1による収穫機は機体フレームの前後左右に車輪を有する走行機体(車体)の前部に、搬送部の支持フレームを水平軸で支持することにより搬送部を前低後高の傾斜姿勢で支持し、前端部に設けた地面接触体を接地させて走行し、地面接触体に備えるカッタで根が切断された作物を、搬送部によって後方上方に挟持搬送する構成にしている。
【特許文献1】特許第2898629号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1で示される収穫機は、左右の車輪を畝を跨いで畝溝を走行させながら、畝に複数の条列をなして栽培される作物を、水平軸に沿わせて横移動させることができる搬送部によって各条列の作物を順次収穫するため、機体を畝面に乗り上げることなく収穫作業を行うことができる。
然しながら、上記収穫機は車輪を畝溝に位置決めして走行させるものであり、畝面を走行させると車輪が沈下し易いことや小旋回走行が困難であるため、大規模な栽培収穫には適するものの、畝幅や条列間隔並びに条列数がさまざまで栽培される圃場には不向きになるものである。
また上記のように走行機体の左右に車輪(走行装置)を備える収穫機は、複雑でコスト高な左右走行装置の操向操作機構を必要としたり機体フレームが大型化すると共に、機体の前後長さに制約をうけて搬送部を急傾斜姿勢で設置される。このため急傾斜姿勢で挟持搬送される作物は、屈折したり乱れを生じて品質が損なわれ易く、ホウレン草やコマツ菜,小ネギ等の非結球葉菜等(軟弱野菜)の作物が栽培される栽培ハウス内での使用が困難になる等の課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するための本発明の収穫機は、第1に、作物を下方から後方上方に向けて挟持搬送する搬送路40を有する搬送部9を、走行装置5を有する走行機体2に傾斜姿勢で搭載する収穫機1において、前記走行装置5を走行フレーム19を介して前後方向に連結した小径な従動輪23と径大な駆動輪6に、クローラ25を巻き掛けたクローラ型走行装置にすると共に、当該クローラ型の走行装置5を搬送部9の左右幅の略中央で、従動輪23側を搬送部9の下部に近接させて前後方向に入り込ませて設置すると共に、搬送部9を走行装置5のクローラ25がなす上側斜面に沿わせて設けることを特徴と収穫機。
【0005】
第2に、搬送部9の中途部と走行フレーム19の後部とを、駆動輪6の駆動軸6aに回動可能に支持すると共に、搬送部9と走行フレーム19とを、両者の所定以上の離間を規制しながら駆動軸6aを支点とする回動を許容する回動規制機構17によって連結支持することを特徴としている。
【0006】
第3に、走行装置5又は搬送部9を駆動するモータ8,8aに給電するバッテリ7を、走行装置5の左右に振り分けて設置することを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明による収穫機は次のような効果を奏する。請求項1の発明によれば、走行装置は従動輪と駆動輪にクローラを前方を鋭角状にした三角形状に張設するため、従動輪側を搬送部の下部に可及的に接近させると共に、搬送部をクローラの上側斜面に沿わせた緩やかな傾斜で搭載することができる。これにより収穫機は搬送部を幅方向の略中央で、前後方向のクローラ接地長を大きくした走行装置によって、機体を安定よく支持しながら小旋回走行をスムーズに行うことができる。また搬送部の下部に走行装置を近接させたコンパクトで纏まりがよく取り扱い性に勝れた収穫機を廉価に提供することができる。
【0008】
請求項2の発明によれば、搬送部と走行フレームを駆動軸を支点とする回動を、回動規制機構によって所定以上の離間を規制して連結支持するため、走行装置及び搬送部を駆動軸を中心に前方側をスムーズに上下回動させると共に、搬送部の重量を回動規制機構を介して走行フレームに掛けることができる。これにより走行装置による安定的な走行を、搬送部と走行装置の大きな離間を規制して、地面の凹凸に対しても機体の振動を抑制させて能率よく行うことができる。また畦等を越えるとき搬送部と走行装置の大きな離間を規制するので、機体の衝撃を抑制した畦越え走行を行うことができる。
【0009】
請求項3の発明によれば、走行装置の左右に振り分けてバッテリを設置するため、走行装置の両側に形成されるスペースを利用して重量のあるバッテリを地面に近接させた状態でバランスよく設置することができると共に、機体の重心を低くし走行安定性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。この実施形態に関わる収穫機1は、主としてホウレン草やコマツ菜,小ネギ等の非結球葉菜等(以下単に作物と言う)を収穫するのに適応する軟弱野菜用の収穫機であり、走行機体2に圃場地面から作物を掻き取り搬送して回収する収穫装置3を搭載している。
この走行機体2は、機体フレーム4を後述するクローラ型の走行装置5に構成し、収穫装置3を前低後高状の傾斜姿勢で機体フレーム4に支持し、走行装置5の両側でその駆動輪6の設置位置に、略等しい重量のバッテリ7,7を設置している。
【0011】
上記走行装置5は駆動輪6を大径輪にしており後部側に配設しバッテリ7から給電されるモータ8の回転動力によって駆動するようにしている。バッテリ7は収穫装置3用のモータ8aにも給電しており、収穫装置3を構成する搬送部9の搬送帯10とカッタ11とを後述する搬送伝動機構12を介して駆動する。
機体フレーム4は後部に二股状のハンドル13を設けており、搬送部9の下方に沿わせて後方に延出し、把持部に前記モータ8,8aの正逆回転及び回転速度等の操作を司る各種操作スイッチ15,15a,15c・・を制御ボックス16を介して備えている。
これにより収穫機1は、モータ8を正逆及び回転調節をして機体の前後進と走行速度調節操作を行い、モータ8aを回転調節して搬送速度調節操作を行い、圃場や作物の状況に適応した走行速度と搬送速度を選定し収穫作業を行うことができる。
【0012】
以下各部の構成について説明する。先ず図1〜図4を参照し走行機体(車体)2及び走行装置5について詳述する。この走行機体2は機体フレーム4を、軸支部4aを介し前記駆動輪6の駆動軸6aを中心に回動可能に軸支している。即ち、機体フレーム4は駆動軸6aのやや前方で上部に収穫装置3の装置フレーム3aの中途部を後述する取付構造によって取付け、該装置フレーム3aの前側を回動規制支持機構17を介して、走行装置5の走行フレーム19に支持することにより、収穫装置3を前低後高の傾斜姿勢で設けている。
【0013】
機体フレーム4は前記駆動軸6aから後方に支持されるフレームの後部に、前記制御ボックス16とモータ8を上下に配設し、伝動機構を内装する伝動ケース21を介してモータ軸20から駆動軸6aを伝動する構成としている。そして、図3で示すように機体フレーム4は、バッテリ載置台22を駆動軸6aの両側端に近接させるように走行装置5の上方を跨いで左右に形成している。これにより重量のある左右のバッテリ7は、駆動軸6aの両側でやや前側寄りの適正位置に安定よく設置せしめ、機体フレーム4に支持される収穫装置3の重量バランスを図るウェイトとしても利用し、収穫装置3の重心位置を前記回動規制支持機構17の近傍に定め走行装置5に重量を掛けている。
【0014】
上記のように機体フレーム4を構成した収穫機1は、収穫装置3の前端部を地面に接地させて走行し収穫作業を行なうとき、地面の凹凸に応じた収穫装置3の上下回動を駆動軸6aを中心にスムーズに行う。また同様に走行装置5も駆動軸6aを中心に前方側を地表の凹凸に応じて上下回動するので、収穫装置3と走行装置5の単独的な回動を互いに妨げることなく許容することができる。これにより収穫機1は、機体振動を低減した走行が可能になり、作物の収穫を高い性能で行うことができる。
また左右のバッテリ載置台22を上方から逆コ字状に形成し走行装置5を股いで構成される機体フレーム4は、簡単な屈曲構造によってフレーム剛性を高めることができる等の特徴がある。
【0015】
走行装置5は図1,図2に示すように、駆動輪6と従動輪23とにゴム製の突起付無端帯(クローラ)25を巻き掛けており、この実施形態では駆動輪6を大径となし従動輪23を、駆動輪6の直径の約半分程度となして、駆動軸6aに軸支部19aを介して回動自在に軸支した走行フレーム19の先端部に遊転自在に軸支している。
これにより走行装置5は側面視において、クローラ25を前方が鋭角状の三角形状に張設することができ、小径の従動輪23側を装置フレーム3aの左右幅の中央部で、搬送部9のより前方下部に可及的に接近させることができる。
【0016】
そして、クローラ25の前後方向の接地長を大きくしながら、収穫機1の全長を抑制し機体をコンパクトに纏めている。
また接地長を長くしながら装置フレーム3aの下部に入り込ませるクローラ25は、従来のもののように敢えて機体の左右に複数の走行装置5を設けることなく、搬送経路が長く重量のある収穫装置3の中央部を、広い接地面で安定よく支持することができる。
そして、機体の左右バランスがよく前後方向の揺動を抑制したスムーズな走行を可能にしている。
【0017】
以上のように構成される収穫機1は、収穫装置3の搬送部9をクローラ25の上側傾斜面に沿わせて近接させて配置することができるため、搬送部9と走行機体2とを可及的に近接させたコンパクトで取り扱い性に勝れた構成となり、且つ1本のクローラ25を張設した単輪型の走行装置5により機体を安定よく支持するので、操向操作構造を省略しながら小旋回を簡単に行なうことができる収穫機1を廉価に提供することができる。
また搬送部9の傾斜を緩やかにすることができるため、作物の搬送姿勢を乱すことなく整然と搬送し収容姿勢も整えて収穫作業を行い易くすることができる。さらに後述するような上下方向に広幅になした搬送帯10の設置使用を、ベルト外れや大きな撓み等のトラブルの発生を防止し好適に行うことができる等の特徴がある。
【0018】
回動規制支持機構17は図1〜図3で示すように、走行フレーム19の中途部に横向きに取付支持される支持杆29と、該支持杆29の両端にスライド可能に嵌挿された状態で立設する連結杆31を有している。この左右の連結杆31は、共に先端を収穫装置3の両側に設けた支持部30に挿入した状態で、支持杆29と支持部30との間にコイルスプリングからなるバネ部材32を挿入設置している。
これにより左右に配置される回動規制支持機構17は、装置フレーム3aの左右を支持部30を介して緩衝構造を持って支持することができる。
【0019】
上記構成からなる回動規制支持機構17を備えた収穫機1は、収穫装置3の重量を前記駆動軸6aと回動規制支持機構17を介し走行装置5で分担支持し、且つ支持杆29及び支持部30に加わる衝撃的な負荷をバネ部材32によって緩衝支持することができる。
従って、収穫装置3及び走行装置5の駆動軸6aを支点とする互いの上下回動を、各構成部材の過負荷並びに大きな振動や騒音を抑制しスムーズに行うことができる。
また図示例の回動規制支持機構17は連結杆31の上部側に複数のピン孔33を穿設しており、選択したピン孔33にストッパピン35を挿入することにより、支持部30とストッパピン35を接当させて装置フレーム3aと走行装置5との駆動軸6aを支点とする大きな離間を規制し、且つ規制量を調節することができる。
【0020】
以上のように走行機体2を構成する収穫機1は、平面視において収穫装置3の装置幅、即ち、左右の搬送路40からなる搬送部9の左右幅の略中央部下方に走行装置5を位置させ、その駆動輪6側の両側にバッテリ7をクローラ25に近接させて装置幅より大きくはみ出すことなく配置している。これにより収穫機1は走行機体2側の幅、即ち左右のバッテリ7で定められる機体幅を後方上方に配置される二股状のハンドル13の幅より小さくしている。これにより収穫機1は左右バランスがよく前後の走行安定性を保持しつつ軽量化しているので、畝や軟弱地盤の作業においても機体の沈下を防止でき且つ操縦性に勝れた運転を簡単に行うことができる。
【0021】
次に図1,図3〜図10を参照し収穫装置3について説明する。収穫装置3は作物を地面側から後方に向けて搬送する搬送部9と、該搬送部9の終端で作物を収容する収容部36等から構成される。図示例の搬送部9は搬送始端側に前処理部として圃場地面に植生している作物を、切断又は掘り起こしをするカッタ11を備えている。また搬送部9は搬送終端側に、後処理部として搬送方向に直交する回転ブラシ体等からなる補助搬送体(元側搬送体)37を設けると共に、該補助搬送体37の後方下方に収容部36をハンドル13に設けた構成としている。
【0022】
図示例の収容部36は、ハンドル13から後方に向けて突設した左右の収容支持杆38に、ネット状又はスノコ状の可撓性を有する受部材39の左右端を係脱自在に取付けた構成にしている。これにより収容部36は、受部材39を湾曲面を形成して収容支持杆38に支持することができ、搬送部9及び補助搬送体37から排出送りされる作物を一定姿勢で集積させた集束状態で収容することができる。
【0023】
この収穫装置3の搬送部9は、装置幅内において左右2列条分の作物が植立される標準的な幅と等しい間隔を有することができ、左右にある作物を所定長さに亘って後方に向けて挟持搬送する搬送路40を構成している。この搬送路40は図3,10で示す断面構造の搬送帯10を左右に対向配置させることにより形成され、左右の搬送路40を形成する4本の搬送帯10は、断面視でL字状をなす外側搬送フレーム41,41と内側搬送フレーム42,42とに、それぞれ同一機構によってベルト張りをすることにより、ユニット構造の外側搬送部9aと内側搬送部9bを簡潔で廉価な構成にしている。
【0024】
即ち、外側搬送部9aと内側搬送部9bは、各搬送フレームの横板上部に対し、従動プーリ43と駆動プーリ45とを前後端に縦軸回転可能に軸支し、且つ両者の中間に所定のベルト支持間隔を有し複数の案内プーリ46を縦軸回転可能に軸支することにより、ベルト張りを行なう構造にしている。
この際に案内プーリ46は搬送帯10の搬送路40側の裏面に転接するように立設され、外側搬送部9aと内側搬送部9bに設ける案内プーリ46は互いに対向しないように配置することが望ましい。また上記従動プーリ43,駆動プーリ45,案内プーリ46には、その外周の所定位置に搬送帯10の後述するガイド突起47を突入させて案内させるプーリ溝48を形成している。
【0025】
上記搬送帯10は可撓性を有しながら縦向きの起立剛性(通直性)を有するベルト本体を、図1,図3,図10,図11で示すように搬送路40を形成する長さと幅を有する平ベルト部51にしており、実施形態の平ベルト部51は、例えば小ネギを好適に搬送するものとして、その根元側から葉の略全体主要部を挟持又は支持する幅にしている。この平ベルト部51は、その表面側の下部に作物(子ネギ)の根元側を滑りや圧潰しを防止し適切に挟持することができるように弾性挟持用突起52を設けている。この弾性挟持用突起52はスポンジや緩衝用ゴム或いはエアーチューブ等で形成し、且つ平ベルト部51の裏面側に、該弾性挟持用突起52の設置位置に対向させてガイド突起47を設けている。
【0026】
以上のように搬送帯10は、平ベルト部51と、該平ベルト部51の搬送面側にベルト方向に沿って作物に対する挟持箇所を弾力性を有して挟持する弾性挟持用突起52を設けると共に、平ベルト部51の裏面側に弾性挟持用突起52の設置部位に沿って、駆動プーリ45等の外周に形成した凹溝状のプーリ溝48に嵌挿させるガイド突起47を設けた構成にしている。
従って、駆動プーリ45のプーリ溝48にガイド突起47を嵌挿させた搬送帯10は、互いの弾性挟持用突起52によって作物の挟持箇所を押し潰したりすることなく柔らかく挟持して搬送を確実に行うことができる。また作物の非挟持部分を対向する平ベルト部51で形成される搬送路40の搬送支持間隔内で、側方への姿勢を規制した状態で整然と搬送する等の特徴がある。
【0027】
外側搬送フレーム41は図8〜図10で示すように、その縦板部の上下方向長さを内側搬送フレーム42の縦板部より長く形成している。そして、対をなす外側搬送部9aと内側搬送部9bは、互いの外側搬送フレーム41と内側搬送フレーム42の下部側を、前後に配置される杆状の連結フレーム53aと板状の連結フレーム53によって連結することにより一体的なユニット構造となし、左右の搬送路40をそれぞれ形成するユニット構造の左搬送部9cと右搬送部9dを構成し、全体として収穫装置3の装置フレーム3aを形成している。
【0028】
そして、左搬送部9cと右搬送部9dは各搬送フレームの略中央下部を、横向きの連結杆54によって機体フレーム4の上部前後に、着脱及び横方向にスライド可能に取付支持される。この際に内側搬送部9bは外側搬送部9aより後方に向けて設置位置をずらして設けることにより後退変位させて対設している。これにより両者の従動プーリ43及び駆動プーリ45を互いにずらした状態で搬送路40を形成することができ、両者の搬送帯10,10による搬送始端側と終端側での強い挟持を防止し作物の損傷等を防止することができる。
【0029】
また左右の搬送路40の内側に隣接して位置する内側搬送部9bの終端は、外側搬送部9aの終端より後方の収容部36側に位置させているので、作物は両者による挟持搬送が解除されたのちは、内側搬送部9bの搬送帯10による搬送支持を継続した状態で作物の機体内方側への傾倒を規制しながら収容部36に向けて確実に放出案内することができる。
従って、左右の搬送路40,40の終端で互いの作物が絡み合ったりすることなく、整然と分離された状態で、補助搬送体37による作物の元送り作用と相俟って、図1に2点鎖線で示す作物の搬送軌跡のように、受部材39内に整然と重ねながら収容することができる等の特徴がある。
【0030】
そして図1,図3,図10で示すように、対をなす外側搬送部9aと内側搬送部9bとを接続し、ユニット化させて搬送路40を形成するようにした左搬送部9cと右搬送部9dは、左右で互いの内側搬送フレーム42を近接させて並べた状態で、両フレームの後部を縦軸の蝶番構造からなる後部連結部(可動連結部)56で連結している。また上記左搬送部9cと右搬送部9dの前部側に両者の左右間隔を調節して位置決めをする間隔調節機構57を設けている。この間隔調節機構57は図4で示すように、例えば一方の左搬送部9cのフレームに設けたパイプ58に、他方の右搬送部9dのフレームに設けた調節支持杆59をスライド可能に遊嵌し、且つ上記パイプ58に調節ボルト61を設けた構成にしている。
【0031】
これによりは、左右の搬送路40,40の間隔を作物の植生間隔や畝幅等の栽培状況に応じ、図4で示す最小間隔から広げたい場合に、間隔調節機構57の調節ボルト61を緩め間隔固定を解除すると、後部連結部56を中心に左搬送部9cと右搬送部9dを外側に回動移動させることができ、所定の搬送路間隔に定め調節ボルト61を締めることにより位置決め固定を簡単に行うことができる。
即ち、搬送路40を有する左搬送部9cと右搬送部9dを左右に調節可能にした搬送部9は、後部側を定位置に支持した状態で前部側を左右に拡開調節することができるので、挟持搬送開始位置の異なる左右列の作物を確実に掻き込んで挟持搬送を確実に行うことができると共に、左右の搬送路40で挟持搬送される作物を搬送終端で定位置に集合させ、収容等の後処理作業を行い易くすることができる利点がある。
【0032】
次に上記のような収穫作業を可能とする収穫装置3の伝動構造について図4,図6〜図10を参照し説明する。この搬送伝動機構12は搬送部9の後方下部に設置されており、左側の外側搬送フレーム41の側方に突設されるモータ台41aにモータ8を下向きに設置し、このモータ軸に設けた駆動スプロケット62からチェン63を介して、各内側搬送部9bと外側搬送部9aに設ける入力スプロケット64に入力し、各搬送帯10を回転伝動するようにしている。
【0033】
入力スプロケット64は、左搬送部9cと右搬送部9dが有する各搬送フレームと前記連結フレーム53とで上下を軸支される入力軸65の下部側に設けており、連結フレーム53に設置される自動チェン張り機構66のテンションスプロケット66aと駆動スプロケット62に巻き掛けるチェン63によって回転伝動される。
図9に示すように、それぞれの入力軸65には上部に中間スプロケット67を設けており、各中間スプロケット67は対応する各搬送フレームの後部に軸支される前記各駆動プーリ45が有するプーリスプロケット68とに、チェン69を巻き掛けて伝動連結することにより、各搬送帯10を回転駆動するようにしている。従って、左搬送部9cと右搬送部9dを前記搬送路間隔を変えた場合でも、搬送帯10の駆動をチェンの張り調節をすることなく行うことができる。尚、搬送帯10のベルト張り調節は従動プーリ43の前調節により簡単に行うことができる。
【0034】
自動チェン張り機構66は、テンションスプロケット66aを連結フレーム53に穿設した長孔71にスライド自在に軸支し、左右に配置した引張りスプリング72によってチェン張り方向に付勢している。これにより各駆動プーリ45はそれぞれのプーリスプロケット68を介して回転駆動され各搬送帯10を搬送方向に回動することができ、且つチェン63に緩みを生じた場合には自動チェン張り機構66のテンションスプロケット66aが自動的にチェン張りを行う。また前記左右の搬送帯10を間隔調節機構57を介して後部連結部56を支点に拡開作動させる際のチェン63の緩み変位をテンションスプロケット66aが自動的に修正する。
【0035】
さらに、搬送伝動機構12は左右の外側搬送部9aが有する駆動プーリ45のプーリスプロケット68の下部に設けたギヤ73から、左右の補助搬送体37をそれぞれ伝動することにより、上記左右の搬送帯10の間隔調節時に適応した搬送を行うことができる。
即ち、補助搬送体37は、回転軸74を対をなす左搬送部9cと右搬送部9dの、各外側搬送フレーム41と内側搬送フレーム42の後部に軸支部を介して回転可能に軸支しており、該回転軸74の中途部に搬送路40に対応する下方に臨ませる元送り部材76を設けると共に、その外側寄りに前記ギヤ73に噛合させるギヤ77を設けている。
この構成により左右の補助搬送体37は、駆動プーリ45の回転に伴いギヤ73,ギヤ77を介して回転軸74が回転すると、元送り部材76が搬送帯10の終端から作物の根元側を支持して引継ぎ搬送し収容部36に収容案内をすることができる。
【0036】
また図示例の元送り部材76は、回転軸74を中心に多数の線材を放射状に植設した円形状のブラシ体にしている。これによりブラシ線材の先端が作物の下端部に滑りを生じさせることなく接触し、搬送帯10終端において作物下端部を押し上げるように後続の作物と分離せしめ、自然落下を防止しながら作物先端部に円弧軌跡を描かせながら、収容部36内に整然と確実に送り案内し集積させることができる。尚、元送り部材76はブラシ体に限ることなく、例えばスポンジ部材を円柱状に形成した回転体にすることもできる。
そして、元側搬送体37は前方(搬送方向上流側)に、作物の根元側に接当して葉茎側を後方に傾倒させる払い部材76aを設けることが望ましく、この場合には搬送路40に臨む棒状の元払い部材76aが根元に搬送抵抗を付与して予め傾倒させるので、収容姿勢にした作物を元送り部材76によって収容部36に整然と集積させることができる。
【0037】
次に収穫装置3の前部の構成について説明する。収穫装置3の左右に位置する外側搬送フレーム41と装置中央部の内側搬送フレーム42は、その先端に作物(葉菜)を掻き分けるためのデバイダ78をそれぞれ設けていると共に、カッタ11を地表から所定深さ(例えば10〜20ミリ程度)だけ地中に埋没するように設けている。
これにより機体の進行に伴い各デバイダ78は作物を各搬送路40側に分草誘導することができ、分草誘導される作物が内向き回転する両側の搬送帯10によって挟持搬送を開始するとき、カッタ11が根元部を切断し搬送帯10による搬送をスムーズに行うことができる。
【0038】
実施形態のカッタ11は正面視でL字状をなし、その縦片部を各搬送フレームに対し取付軸79を支点に刃部を前後揺動可能に取付けており、且つ縦片部の上部と前記搬送伝動機構12側に構成される図示しない前後揺動駆動機構とを駆動杆81によって連結している。これにより駆動杆81が前後揺動駆動機構によって前後作動すると、カッタ11は取付軸79を支点に刃部を地中で前後揺動させて作物の根元部或いは根を確実に切断することができる。尚、カッタ11は刃部の上下高さを調節したり、作動を固定したものにすることもできる。
【0039】
次に以上のように構成された収穫機1による作業態様及び作用等について、小ネギ(以下単にネギと言う)を収穫する作業例を説明する。先ず収穫機1は間隔調節機構57を調節操作し圃場のネギ列の幅に適応させて左搬送部9cと右搬送部9dを左右に調節し、圃場のネギ列の幅に適応させて左右の搬送路40の始端部を位置決めし作業開始状態にする。次いで、モータ8を駆動すると駆動輪6が矢印方向に回転し、収穫装置3の略中央部を支持するクローラ25を介して走行させることができる。またモータ8aを駆動すると前記したように搬送伝動機構12を介し搬送路40の両側に設置される搬送帯10を互いに内向き回転させることができる。
【0040】
これにより収穫機1はネギ栽培圃場を進行して、デバイダ78で掻き分けたネギの根元部をカッタ11で切り、切断されたネギを搬送帯10で後方上方に向けて挟持搬送する。
そして、搬送路40の終端から挟持搬送を解除されたネギは補助搬送体37により下向きの収容搬送を受けて収容部36内に順次集積して収容される。
こののち作業者は左右の収容支持杆38から受部材39を外し、該受部材39を集積したネギを包むように丸めた状態で両側を重ねて地面に置くと共に、新たな受部材39を収容支持杆38に再びセットして前記作業を再開することにより収穫作業を連続して能率よく行うことができる。
【0041】
上記のような収穫作業を行う収穫機1は、走行装置5をクローラ25を前方を鋭角状にした三角形状に張設して従動輪23側を搬送部9の下部に接近させた状態で、搬送部9をクローラ25の上側斜面に沿わせた緩やかな傾斜で搭載しているので、搬送部9を幅方向の中央部で機体を安定よく支持しながら小旋回走行をスムーズに行うことができる。
また搬送部9と走行フレーム19を駆動軸6aを支点とする回動を、回動規制機構17によって所定以上の離間を規制して連結支持するため、走行装置5及び搬送部9を駆動軸6aを中心に前方側をスムーズに上下回動させると共に、搬送部9の重量を回動規制機構17を介して走行フレーム19に掛けることができ、クローラ25を前進方向に回転させる際に生ずる駆動反力の打ち消しを効果的にすることができる。従って、搬送部9と走行装置5の大きな離間を規制した走行装置5による安定的な走行を行う。
【0042】
即ち、収穫作業時に収穫機1が地面の凹部を走行するとき、収穫装置3の前部を地面に接地させた状態で、走行装置5の前部が駆動軸6aを支点に下方に回動して凹部に沿って通過したのちに、元の姿勢に復帰回動すると共に、凸部を走行するとき走行装置5は駆動軸6aを支点に前記回動規制支持機構17で設定された融通作動域内で上方回動したのち凸部を通過して元の姿勢にスムーズに復帰回動する。また同様に畦や畝等の高い隆起部を走行するときは、収穫装置3と走行装置5とは互いに大きく離間する方向に回動しようとするが、当該回動が前記融通作動域を超える時点で回動規制支持機構17が離間を規制するので、機体が不安定になることを防止すると共に、走行をスムーズにすることができる。
【0043】
また収穫機1は重量のあるバッテリ7を走行装置5の左右に振り分け地面に近接させて設けているので、機体の重心を低くするように作用し且つ左右バランスを改善するので、1本の単体型の走行装置5によっても収穫装置3を安定よく支持して走行安定性を向上させることができる。またバッテリ7の重量は走行装置5に直接的に掛かるので、クローラ25を前進方向に回転させる際に生ずる駆動反力の打ち消し方向に作用する。
上記のように機体バランスを改善した単体型の走行装置5を備える収穫機1は、操行及び操作構造を簡略化することができ、機体の軽量化を図りつつ狭い畦や畝溝でも走行し易く、また畝の上でも機体の小旋回を容易に行うことができる。
従って、搬送部9の下部に走行装置5を近接させたコンパクトで纏まりがよく取り扱い性に勝れた収穫機1を廉価に提供することができると共に、機体の振動を低減した安定的な走行を可能にし収穫作業を能率よく行うことができる。
【0044】
また収穫機1は搬送部9に設けるベルト搬送装置を、搬送帯10を前記形状の平ベルト部51と、弾性挟持用突起52とガイド突起31からなる構成にしているため、ベルト外れを防止しながら対向する互いの弾性挟持用突起52の間で作物の挟持箇所を弾力性を有して挟持するので、作物を押し潰したり傷めることなく柔らかく挟持しながら搬送を確実に行い、また作物の非挟持部分(葉茎部)を対向する平ベルト部51で形成される搬送路40の搬送支持間隔内で、側方への姿勢を規制し倒れ等を防止し整然と搬送し回収を容易にする。従って、葉茎部の傷みを生じさせることなく収容部36に整然と収容し品質よく収穫することができる。また機体の小旋回走行や作業の高速化を図る場合でも品質を損なうことのない収穫作業を行うことができる等の特徴がある。
【0045】
さらに収穫機1は搬送路40の終端に補助搬送体37を設置しているため、搬送帯10の終端から作物の根元側を支持した引継ぎ搬送をして収容部36への作物の収容をスムーズに行うことができる。即ち、搬送路40の終端から挟持搬送が解除されて略直立姿勢で自然落下をしようとする作物に対し、回転軸74を中心に回転する元送り部材76の周面が、搬送帯10終端において作物下端部を押し上げるように回転接触するので、後続の作物と分離することができ、次いで自然落下を防止しながら作物先端部に後方に向けて回転軸74を略中心とする円弧軌跡を描かせながら収容部36に案内して、収容部36内に作物を整然と集積させることができる。従って、搬送路40終端での作物の搬送詰まりや作物の絡み合いを防止することができると共に、作物回収時における品質低下を阻止することができ、またその後行なわれるネギの仕分けや集束梱包等の出荷作業を行い易くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明を適用した軟弱野菜収穫機の構成及び作業状態を示す全体側面図である。
【図2】図1の走行装置の構成を破断をして示す平面図である。
【図3】図1のA−A線断面図である。
【図4】図1の平面図である。
【図5】図4の軟弱野菜収穫機の左右搬送路を広げた状態を簡略化して示す平面図である。
【図6】図1の搬送伝動機構の構成を示す平面図である。
【図7】図6の搬送伝動機構の作用を示す平面図である。
【図8】外側搬送部の構成を示す側面図である。
【図9】内側搬送部及び搬送伝動機構の構成を示す側面図である。
【図10】図1のB−B線断面図である。
【図11】搬送帯の形状及び作用を示す断面図である。
【符号の説明】
【0047】
1 収穫機(軟弱野菜収穫機)
2 走行機体
3 収穫装置
5 走行装置
6 駆動輪
6a 駆動軸
7 バッテリ
8,8a 駆動するモータ
9 搬送部
17 回動規制機構(融通支持機構)
19 走行フレーム
23 従動輪
25 クローラ
40 搬送路
【技術分野】
【0001】
この発明は、圃場の作物を収穫する収穫機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、作物を下方から後方上方に向けて搬送する搬送路を有する搬送部(挟持搬送装置)を、走行装置を有する走行機体に傾斜姿勢で搭載する収穫機は、特許文献1で示されるように既に公知である。この特許文献1による収穫機は機体フレームの前後左右に車輪を有する走行機体(車体)の前部に、搬送部の支持フレームを水平軸で支持することにより搬送部を前低後高の傾斜姿勢で支持し、前端部に設けた地面接触体を接地させて走行し、地面接触体に備えるカッタで根が切断された作物を、搬送部によって後方上方に挟持搬送する構成にしている。
【特許文献1】特許第2898629号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1で示される収穫機は、左右の車輪を畝を跨いで畝溝を走行させながら、畝に複数の条列をなして栽培される作物を、水平軸に沿わせて横移動させることができる搬送部によって各条列の作物を順次収穫するため、機体を畝面に乗り上げることなく収穫作業を行うことができる。
然しながら、上記収穫機は車輪を畝溝に位置決めして走行させるものであり、畝面を走行させると車輪が沈下し易いことや小旋回走行が困難であるため、大規模な栽培収穫には適するものの、畝幅や条列間隔並びに条列数がさまざまで栽培される圃場には不向きになるものである。
また上記のように走行機体の左右に車輪(走行装置)を備える収穫機は、複雑でコスト高な左右走行装置の操向操作機構を必要としたり機体フレームが大型化すると共に、機体の前後長さに制約をうけて搬送部を急傾斜姿勢で設置される。このため急傾斜姿勢で挟持搬送される作物は、屈折したり乱れを生じて品質が損なわれ易く、ホウレン草やコマツ菜,小ネギ等の非結球葉菜等(軟弱野菜)の作物が栽培される栽培ハウス内での使用が困難になる等の課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するための本発明の収穫機は、第1に、作物を下方から後方上方に向けて挟持搬送する搬送路40を有する搬送部9を、走行装置5を有する走行機体2に傾斜姿勢で搭載する収穫機1において、前記走行装置5を走行フレーム19を介して前後方向に連結した小径な従動輪23と径大な駆動輪6に、クローラ25を巻き掛けたクローラ型走行装置にすると共に、当該クローラ型の走行装置5を搬送部9の左右幅の略中央で、従動輪23側を搬送部9の下部に近接させて前後方向に入り込ませて設置すると共に、搬送部9を走行装置5のクローラ25がなす上側斜面に沿わせて設けることを特徴と収穫機。
【0005】
第2に、搬送部9の中途部と走行フレーム19の後部とを、駆動輪6の駆動軸6aに回動可能に支持すると共に、搬送部9と走行フレーム19とを、両者の所定以上の離間を規制しながら駆動軸6aを支点とする回動を許容する回動規制機構17によって連結支持することを特徴としている。
【0006】
第3に、走行装置5又は搬送部9を駆動するモータ8,8aに給電するバッテリ7を、走行装置5の左右に振り分けて設置することを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明による収穫機は次のような効果を奏する。請求項1の発明によれば、走行装置は従動輪と駆動輪にクローラを前方を鋭角状にした三角形状に張設するため、従動輪側を搬送部の下部に可及的に接近させると共に、搬送部をクローラの上側斜面に沿わせた緩やかな傾斜で搭載することができる。これにより収穫機は搬送部を幅方向の略中央で、前後方向のクローラ接地長を大きくした走行装置によって、機体を安定よく支持しながら小旋回走行をスムーズに行うことができる。また搬送部の下部に走行装置を近接させたコンパクトで纏まりがよく取り扱い性に勝れた収穫機を廉価に提供することができる。
【0008】
請求項2の発明によれば、搬送部と走行フレームを駆動軸を支点とする回動を、回動規制機構によって所定以上の離間を規制して連結支持するため、走行装置及び搬送部を駆動軸を中心に前方側をスムーズに上下回動させると共に、搬送部の重量を回動規制機構を介して走行フレームに掛けることができる。これにより走行装置による安定的な走行を、搬送部と走行装置の大きな離間を規制して、地面の凹凸に対しても機体の振動を抑制させて能率よく行うことができる。また畦等を越えるとき搬送部と走行装置の大きな離間を規制するので、機体の衝撃を抑制した畦越え走行を行うことができる。
【0009】
請求項3の発明によれば、走行装置の左右に振り分けてバッテリを設置するため、走行装置の両側に形成されるスペースを利用して重量のあるバッテリを地面に近接させた状態でバランスよく設置することができると共に、機体の重心を低くし走行安定性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。この実施形態に関わる収穫機1は、主としてホウレン草やコマツ菜,小ネギ等の非結球葉菜等(以下単に作物と言う)を収穫するのに適応する軟弱野菜用の収穫機であり、走行機体2に圃場地面から作物を掻き取り搬送して回収する収穫装置3を搭載している。
この走行機体2は、機体フレーム4を後述するクローラ型の走行装置5に構成し、収穫装置3を前低後高状の傾斜姿勢で機体フレーム4に支持し、走行装置5の両側でその駆動輪6の設置位置に、略等しい重量のバッテリ7,7を設置している。
【0011】
上記走行装置5は駆動輪6を大径輪にしており後部側に配設しバッテリ7から給電されるモータ8の回転動力によって駆動するようにしている。バッテリ7は収穫装置3用のモータ8aにも給電しており、収穫装置3を構成する搬送部9の搬送帯10とカッタ11とを後述する搬送伝動機構12を介して駆動する。
機体フレーム4は後部に二股状のハンドル13を設けており、搬送部9の下方に沿わせて後方に延出し、把持部に前記モータ8,8aの正逆回転及び回転速度等の操作を司る各種操作スイッチ15,15a,15c・・を制御ボックス16を介して備えている。
これにより収穫機1は、モータ8を正逆及び回転調節をして機体の前後進と走行速度調節操作を行い、モータ8aを回転調節して搬送速度調節操作を行い、圃場や作物の状況に適応した走行速度と搬送速度を選定し収穫作業を行うことができる。
【0012】
以下各部の構成について説明する。先ず図1〜図4を参照し走行機体(車体)2及び走行装置5について詳述する。この走行機体2は機体フレーム4を、軸支部4aを介し前記駆動輪6の駆動軸6aを中心に回動可能に軸支している。即ち、機体フレーム4は駆動軸6aのやや前方で上部に収穫装置3の装置フレーム3aの中途部を後述する取付構造によって取付け、該装置フレーム3aの前側を回動規制支持機構17を介して、走行装置5の走行フレーム19に支持することにより、収穫装置3を前低後高の傾斜姿勢で設けている。
【0013】
機体フレーム4は前記駆動軸6aから後方に支持されるフレームの後部に、前記制御ボックス16とモータ8を上下に配設し、伝動機構を内装する伝動ケース21を介してモータ軸20から駆動軸6aを伝動する構成としている。そして、図3で示すように機体フレーム4は、バッテリ載置台22を駆動軸6aの両側端に近接させるように走行装置5の上方を跨いで左右に形成している。これにより重量のある左右のバッテリ7は、駆動軸6aの両側でやや前側寄りの適正位置に安定よく設置せしめ、機体フレーム4に支持される収穫装置3の重量バランスを図るウェイトとしても利用し、収穫装置3の重心位置を前記回動規制支持機構17の近傍に定め走行装置5に重量を掛けている。
【0014】
上記のように機体フレーム4を構成した収穫機1は、収穫装置3の前端部を地面に接地させて走行し収穫作業を行なうとき、地面の凹凸に応じた収穫装置3の上下回動を駆動軸6aを中心にスムーズに行う。また同様に走行装置5も駆動軸6aを中心に前方側を地表の凹凸に応じて上下回動するので、収穫装置3と走行装置5の単独的な回動を互いに妨げることなく許容することができる。これにより収穫機1は、機体振動を低減した走行が可能になり、作物の収穫を高い性能で行うことができる。
また左右のバッテリ載置台22を上方から逆コ字状に形成し走行装置5を股いで構成される機体フレーム4は、簡単な屈曲構造によってフレーム剛性を高めることができる等の特徴がある。
【0015】
走行装置5は図1,図2に示すように、駆動輪6と従動輪23とにゴム製の突起付無端帯(クローラ)25を巻き掛けており、この実施形態では駆動輪6を大径となし従動輪23を、駆動輪6の直径の約半分程度となして、駆動軸6aに軸支部19aを介して回動自在に軸支した走行フレーム19の先端部に遊転自在に軸支している。
これにより走行装置5は側面視において、クローラ25を前方が鋭角状の三角形状に張設することができ、小径の従動輪23側を装置フレーム3aの左右幅の中央部で、搬送部9のより前方下部に可及的に接近させることができる。
【0016】
そして、クローラ25の前後方向の接地長を大きくしながら、収穫機1の全長を抑制し機体をコンパクトに纏めている。
また接地長を長くしながら装置フレーム3aの下部に入り込ませるクローラ25は、従来のもののように敢えて機体の左右に複数の走行装置5を設けることなく、搬送経路が長く重量のある収穫装置3の中央部を、広い接地面で安定よく支持することができる。
そして、機体の左右バランスがよく前後方向の揺動を抑制したスムーズな走行を可能にしている。
【0017】
以上のように構成される収穫機1は、収穫装置3の搬送部9をクローラ25の上側傾斜面に沿わせて近接させて配置することができるため、搬送部9と走行機体2とを可及的に近接させたコンパクトで取り扱い性に勝れた構成となり、且つ1本のクローラ25を張設した単輪型の走行装置5により機体を安定よく支持するので、操向操作構造を省略しながら小旋回を簡単に行なうことができる収穫機1を廉価に提供することができる。
また搬送部9の傾斜を緩やかにすることができるため、作物の搬送姿勢を乱すことなく整然と搬送し収容姿勢も整えて収穫作業を行い易くすることができる。さらに後述するような上下方向に広幅になした搬送帯10の設置使用を、ベルト外れや大きな撓み等のトラブルの発生を防止し好適に行うことができる等の特徴がある。
【0018】
回動規制支持機構17は図1〜図3で示すように、走行フレーム19の中途部に横向きに取付支持される支持杆29と、該支持杆29の両端にスライド可能に嵌挿された状態で立設する連結杆31を有している。この左右の連結杆31は、共に先端を収穫装置3の両側に設けた支持部30に挿入した状態で、支持杆29と支持部30との間にコイルスプリングからなるバネ部材32を挿入設置している。
これにより左右に配置される回動規制支持機構17は、装置フレーム3aの左右を支持部30を介して緩衝構造を持って支持することができる。
【0019】
上記構成からなる回動規制支持機構17を備えた収穫機1は、収穫装置3の重量を前記駆動軸6aと回動規制支持機構17を介し走行装置5で分担支持し、且つ支持杆29及び支持部30に加わる衝撃的な負荷をバネ部材32によって緩衝支持することができる。
従って、収穫装置3及び走行装置5の駆動軸6aを支点とする互いの上下回動を、各構成部材の過負荷並びに大きな振動や騒音を抑制しスムーズに行うことができる。
また図示例の回動規制支持機構17は連結杆31の上部側に複数のピン孔33を穿設しており、選択したピン孔33にストッパピン35を挿入することにより、支持部30とストッパピン35を接当させて装置フレーム3aと走行装置5との駆動軸6aを支点とする大きな離間を規制し、且つ規制量を調節することができる。
【0020】
以上のように走行機体2を構成する収穫機1は、平面視において収穫装置3の装置幅、即ち、左右の搬送路40からなる搬送部9の左右幅の略中央部下方に走行装置5を位置させ、その駆動輪6側の両側にバッテリ7をクローラ25に近接させて装置幅より大きくはみ出すことなく配置している。これにより収穫機1は走行機体2側の幅、即ち左右のバッテリ7で定められる機体幅を後方上方に配置される二股状のハンドル13の幅より小さくしている。これにより収穫機1は左右バランスがよく前後の走行安定性を保持しつつ軽量化しているので、畝や軟弱地盤の作業においても機体の沈下を防止でき且つ操縦性に勝れた運転を簡単に行うことができる。
【0021】
次に図1,図3〜図10を参照し収穫装置3について説明する。収穫装置3は作物を地面側から後方に向けて搬送する搬送部9と、該搬送部9の終端で作物を収容する収容部36等から構成される。図示例の搬送部9は搬送始端側に前処理部として圃場地面に植生している作物を、切断又は掘り起こしをするカッタ11を備えている。また搬送部9は搬送終端側に、後処理部として搬送方向に直交する回転ブラシ体等からなる補助搬送体(元側搬送体)37を設けると共に、該補助搬送体37の後方下方に収容部36をハンドル13に設けた構成としている。
【0022】
図示例の収容部36は、ハンドル13から後方に向けて突設した左右の収容支持杆38に、ネット状又はスノコ状の可撓性を有する受部材39の左右端を係脱自在に取付けた構成にしている。これにより収容部36は、受部材39を湾曲面を形成して収容支持杆38に支持することができ、搬送部9及び補助搬送体37から排出送りされる作物を一定姿勢で集積させた集束状態で収容することができる。
【0023】
この収穫装置3の搬送部9は、装置幅内において左右2列条分の作物が植立される標準的な幅と等しい間隔を有することができ、左右にある作物を所定長さに亘って後方に向けて挟持搬送する搬送路40を構成している。この搬送路40は図3,10で示す断面構造の搬送帯10を左右に対向配置させることにより形成され、左右の搬送路40を形成する4本の搬送帯10は、断面視でL字状をなす外側搬送フレーム41,41と内側搬送フレーム42,42とに、それぞれ同一機構によってベルト張りをすることにより、ユニット構造の外側搬送部9aと内側搬送部9bを簡潔で廉価な構成にしている。
【0024】
即ち、外側搬送部9aと内側搬送部9bは、各搬送フレームの横板上部に対し、従動プーリ43と駆動プーリ45とを前後端に縦軸回転可能に軸支し、且つ両者の中間に所定のベルト支持間隔を有し複数の案内プーリ46を縦軸回転可能に軸支することにより、ベルト張りを行なう構造にしている。
この際に案内プーリ46は搬送帯10の搬送路40側の裏面に転接するように立設され、外側搬送部9aと内側搬送部9bに設ける案内プーリ46は互いに対向しないように配置することが望ましい。また上記従動プーリ43,駆動プーリ45,案内プーリ46には、その外周の所定位置に搬送帯10の後述するガイド突起47を突入させて案内させるプーリ溝48を形成している。
【0025】
上記搬送帯10は可撓性を有しながら縦向きの起立剛性(通直性)を有するベルト本体を、図1,図3,図10,図11で示すように搬送路40を形成する長さと幅を有する平ベルト部51にしており、実施形態の平ベルト部51は、例えば小ネギを好適に搬送するものとして、その根元側から葉の略全体主要部を挟持又は支持する幅にしている。この平ベルト部51は、その表面側の下部に作物(子ネギ)の根元側を滑りや圧潰しを防止し適切に挟持することができるように弾性挟持用突起52を設けている。この弾性挟持用突起52はスポンジや緩衝用ゴム或いはエアーチューブ等で形成し、且つ平ベルト部51の裏面側に、該弾性挟持用突起52の設置位置に対向させてガイド突起47を設けている。
【0026】
以上のように搬送帯10は、平ベルト部51と、該平ベルト部51の搬送面側にベルト方向に沿って作物に対する挟持箇所を弾力性を有して挟持する弾性挟持用突起52を設けると共に、平ベルト部51の裏面側に弾性挟持用突起52の設置部位に沿って、駆動プーリ45等の外周に形成した凹溝状のプーリ溝48に嵌挿させるガイド突起47を設けた構成にしている。
従って、駆動プーリ45のプーリ溝48にガイド突起47を嵌挿させた搬送帯10は、互いの弾性挟持用突起52によって作物の挟持箇所を押し潰したりすることなく柔らかく挟持して搬送を確実に行うことができる。また作物の非挟持部分を対向する平ベルト部51で形成される搬送路40の搬送支持間隔内で、側方への姿勢を規制した状態で整然と搬送する等の特徴がある。
【0027】
外側搬送フレーム41は図8〜図10で示すように、その縦板部の上下方向長さを内側搬送フレーム42の縦板部より長く形成している。そして、対をなす外側搬送部9aと内側搬送部9bは、互いの外側搬送フレーム41と内側搬送フレーム42の下部側を、前後に配置される杆状の連結フレーム53aと板状の連結フレーム53によって連結することにより一体的なユニット構造となし、左右の搬送路40をそれぞれ形成するユニット構造の左搬送部9cと右搬送部9dを構成し、全体として収穫装置3の装置フレーム3aを形成している。
【0028】
そして、左搬送部9cと右搬送部9dは各搬送フレームの略中央下部を、横向きの連結杆54によって機体フレーム4の上部前後に、着脱及び横方向にスライド可能に取付支持される。この際に内側搬送部9bは外側搬送部9aより後方に向けて設置位置をずらして設けることにより後退変位させて対設している。これにより両者の従動プーリ43及び駆動プーリ45を互いにずらした状態で搬送路40を形成することができ、両者の搬送帯10,10による搬送始端側と終端側での強い挟持を防止し作物の損傷等を防止することができる。
【0029】
また左右の搬送路40の内側に隣接して位置する内側搬送部9bの終端は、外側搬送部9aの終端より後方の収容部36側に位置させているので、作物は両者による挟持搬送が解除されたのちは、内側搬送部9bの搬送帯10による搬送支持を継続した状態で作物の機体内方側への傾倒を規制しながら収容部36に向けて確実に放出案内することができる。
従って、左右の搬送路40,40の終端で互いの作物が絡み合ったりすることなく、整然と分離された状態で、補助搬送体37による作物の元送り作用と相俟って、図1に2点鎖線で示す作物の搬送軌跡のように、受部材39内に整然と重ねながら収容することができる等の特徴がある。
【0030】
そして図1,図3,図10で示すように、対をなす外側搬送部9aと内側搬送部9bとを接続し、ユニット化させて搬送路40を形成するようにした左搬送部9cと右搬送部9dは、左右で互いの内側搬送フレーム42を近接させて並べた状態で、両フレームの後部を縦軸の蝶番構造からなる後部連結部(可動連結部)56で連結している。また上記左搬送部9cと右搬送部9dの前部側に両者の左右間隔を調節して位置決めをする間隔調節機構57を設けている。この間隔調節機構57は図4で示すように、例えば一方の左搬送部9cのフレームに設けたパイプ58に、他方の右搬送部9dのフレームに設けた調節支持杆59をスライド可能に遊嵌し、且つ上記パイプ58に調節ボルト61を設けた構成にしている。
【0031】
これによりは、左右の搬送路40,40の間隔を作物の植生間隔や畝幅等の栽培状況に応じ、図4で示す最小間隔から広げたい場合に、間隔調節機構57の調節ボルト61を緩め間隔固定を解除すると、後部連結部56を中心に左搬送部9cと右搬送部9dを外側に回動移動させることができ、所定の搬送路間隔に定め調節ボルト61を締めることにより位置決め固定を簡単に行うことができる。
即ち、搬送路40を有する左搬送部9cと右搬送部9dを左右に調節可能にした搬送部9は、後部側を定位置に支持した状態で前部側を左右に拡開調節することができるので、挟持搬送開始位置の異なる左右列の作物を確実に掻き込んで挟持搬送を確実に行うことができると共に、左右の搬送路40で挟持搬送される作物を搬送終端で定位置に集合させ、収容等の後処理作業を行い易くすることができる利点がある。
【0032】
次に上記のような収穫作業を可能とする収穫装置3の伝動構造について図4,図6〜図10を参照し説明する。この搬送伝動機構12は搬送部9の後方下部に設置されており、左側の外側搬送フレーム41の側方に突設されるモータ台41aにモータ8を下向きに設置し、このモータ軸に設けた駆動スプロケット62からチェン63を介して、各内側搬送部9bと外側搬送部9aに設ける入力スプロケット64に入力し、各搬送帯10を回転伝動するようにしている。
【0033】
入力スプロケット64は、左搬送部9cと右搬送部9dが有する各搬送フレームと前記連結フレーム53とで上下を軸支される入力軸65の下部側に設けており、連結フレーム53に設置される自動チェン張り機構66のテンションスプロケット66aと駆動スプロケット62に巻き掛けるチェン63によって回転伝動される。
図9に示すように、それぞれの入力軸65には上部に中間スプロケット67を設けており、各中間スプロケット67は対応する各搬送フレームの後部に軸支される前記各駆動プーリ45が有するプーリスプロケット68とに、チェン69を巻き掛けて伝動連結することにより、各搬送帯10を回転駆動するようにしている。従って、左搬送部9cと右搬送部9dを前記搬送路間隔を変えた場合でも、搬送帯10の駆動をチェンの張り調節をすることなく行うことができる。尚、搬送帯10のベルト張り調節は従動プーリ43の前調節により簡単に行うことができる。
【0034】
自動チェン張り機構66は、テンションスプロケット66aを連結フレーム53に穿設した長孔71にスライド自在に軸支し、左右に配置した引張りスプリング72によってチェン張り方向に付勢している。これにより各駆動プーリ45はそれぞれのプーリスプロケット68を介して回転駆動され各搬送帯10を搬送方向に回動することができ、且つチェン63に緩みを生じた場合には自動チェン張り機構66のテンションスプロケット66aが自動的にチェン張りを行う。また前記左右の搬送帯10を間隔調節機構57を介して後部連結部56を支点に拡開作動させる際のチェン63の緩み変位をテンションスプロケット66aが自動的に修正する。
【0035】
さらに、搬送伝動機構12は左右の外側搬送部9aが有する駆動プーリ45のプーリスプロケット68の下部に設けたギヤ73から、左右の補助搬送体37をそれぞれ伝動することにより、上記左右の搬送帯10の間隔調節時に適応した搬送を行うことができる。
即ち、補助搬送体37は、回転軸74を対をなす左搬送部9cと右搬送部9dの、各外側搬送フレーム41と内側搬送フレーム42の後部に軸支部を介して回転可能に軸支しており、該回転軸74の中途部に搬送路40に対応する下方に臨ませる元送り部材76を設けると共に、その外側寄りに前記ギヤ73に噛合させるギヤ77を設けている。
この構成により左右の補助搬送体37は、駆動プーリ45の回転に伴いギヤ73,ギヤ77を介して回転軸74が回転すると、元送り部材76が搬送帯10の終端から作物の根元側を支持して引継ぎ搬送し収容部36に収容案内をすることができる。
【0036】
また図示例の元送り部材76は、回転軸74を中心に多数の線材を放射状に植設した円形状のブラシ体にしている。これによりブラシ線材の先端が作物の下端部に滑りを生じさせることなく接触し、搬送帯10終端において作物下端部を押し上げるように後続の作物と分離せしめ、自然落下を防止しながら作物先端部に円弧軌跡を描かせながら、収容部36内に整然と確実に送り案内し集積させることができる。尚、元送り部材76はブラシ体に限ることなく、例えばスポンジ部材を円柱状に形成した回転体にすることもできる。
そして、元側搬送体37は前方(搬送方向上流側)に、作物の根元側に接当して葉茎側を後方に傾倒させる払い部材76aを設けることが望ましく、この場合には搬送路40に臨む棒状の元払い部材76aが根元に搬送抵抗を付与して予め傾倒させるので、収容姿勢にした作物を元送り部材76によって収容部36に整然と集積させることができる。
【0037】
次に収穫装置3の前部の構成について説明する。収穫装置3の左右に位置する外側搬送フレーム41と装置中央部の内側搬送フレーム42は、その先端に作物(葉菜)を掻き分けるためのデバイダ78をそれぞれ設けていると共に、カッタ11を地表から所定深さ(例えば10〜20ミリ程度)だけ地中に埋没するように設けている。
これにより機体の進行に伴い各デバイダ78は作物を各搬送路40側に分草誘導することができ、分草誘導される作物が内向き回転する両側の搬送帯10によって挟持搬送を開始するとき、カッタ11が根元部を切断し搬送帯10による搬送をスムーズに行うことができる。
【0038】
実施形態のカッタ11は正面視でL字状をなし、その縦片部を各搬送フレームに対し取付軸79を支点に刃部を前後揺動可能に取付けており、且つ縦片部の上部と前記搬送伝動機構12側に構成される図示しない前後揺動駆動機構とを駆動杆81によって連結している。これにより駆動杆81が前後揺動駆動機構によって前後作動すると、カッタ11は取付軸79を支点に刃部を地中で前後揺動させて作物の根元部或いは根を確実に切断することができる。尚、カッタ11は刃部の上下高さを調節したり、作動を固定したものにすることもできる。
【0039】
次に以上のように構成された収穫機1による作業態様及び作用等について、小ネギ(以下単にネギと言う)を収穫する作業例を説明する。先ず収穫機1は間隔調節機構57を調節操作し圃場のネギ列の幅に適応させて左搬送部9cと右搬送部9dを左右に調節し、圃場のネギ列の幅に適応させて左右の搬送路40の始端部を位置決めし作業開始状態にする。次いで、モータ8を駆動すると駆動輪6が矢印方向に回転し、収穫装置3の略中央部を支持するクローラ25を介して走行させることができる。またモータ8aを駆動すると前記したように搬送伝動機構12を介し搬送路40の両側に設置される搬送帯10を互いに内向き回転させることができる。
【0040】
これにより収穫機1はネギ栽培圃場を進行して、デバイダ78で掻き分けたネギの根元部をカッタ11で切り、切断されたネギを搬送帯10で後方上方に向けて挟持搬送する。
そして、搬送路40の終端から挟持搬送を解除されたネギは補助搬送体37により下向きの収容搬送を受けて収容部36内に順次集積して収容される。
こののち作業者は左右の収容支持杆38から受部材39を外し、該受部材39を集積したネギを包むように丸めた状態で両側を重ねて地面に置くと共に、新たな受部材39を収容支持杆38に再びセットして前記作業を再開することにより収穫作業を連続して能率よく行うことができる。
【0041】
上記のような収穫作業を行う収穫機1は、走行装置5をクローラ25を前方を鋭角状にした三角形状に張設して従動輪23側を搬送部9の下部に接近させた状態で、搬送部9をクローラ25の上側斜面に沿わせた緩やかな傾斜で搭載しているので、搬送部9を幅方向の中央部で機体を安定よく支持しながら小旋回走行をスムーズに行うことができる。
また搬送部9と走行フレーム19を駆動軸6aを支点とする回動を、回動規制機構17によって所定以上の離間を規制して連結支持するため、走行装置5及び搬送部9を駆動軸6aを中心に前方側をスムーズに上下回動させると共に、搬送部9の重量を回動規制機構17を介して走行フレーム19に掛けることができ、クローラ25を前進方向に回転させる際に生ずる駆動反力の打ち消しを効果的にすることができる。従って、搬送部9と走行装置5の大きな離間を規制した走行装置5による安定的な走行を行う。
【0042】
即ち、収穫作業時に収穫機1が地面の凹部を走行するとき、収穫装置3の前部を地面に接地させた状態で、走行装置5の前部が駆動軸6aを支点に下方に回動して凹部に沿って通過したのちに、元の姿勢に復帰回動すると共に、凸部を走行するとき走行装置5は駆動軸6aを支点に前記回動規制支持機構17で設定された融通作動域内で上方回動したのち凸部を通過して元の姿勢にスムーズに復帰回動する。また同様に畦や畝等の高い隆起部を走行するときは、収穫装置3と走行装置5とは互いに大きく離間する方向に回動しようとするが、当該回動が前記融通作動域を超える時点で回動規制支持機構17が離間を規制するので、機体が不安定になることを防止すると共に、走行をスムーズにすることができる。
【0043】
また収穫機1は重量のあるバッテリ7を走行装置5の左右に振り分け地面に近接させて設けているので、機体の重心を低くするように作用し且つ左右バランスを改善するので、1本の単体型の走行装置5によっても収穫装置3を安定よく支持して走行安定性を向上させることができる。またバッテリ7の重量は走行装置5に直接的に掛かるので、クローラ25を前進方向に回転させる際に生ずる駆動反力の打ち消し方向に作用する。
上記のように機体バランスを改善した単体型の走行装置5を備える収穫機1は、操行及び操作構造を簡略化することができ、機体の軽量化を図りつつ狭い畦や畝溝でも走行し易く、また畝の上でも機体の小旋回を容易に行うことができる。
従って、搬送部9の下部に走行装置5を近接させたコンパクトで纏まりがよく取り扱い性に勝れた収穫機1を廉価に提供することができると共に、機体の振動を低減した安定的な走行を可能にし収穫作業を能率よく行うことができる。
【0044】
また収穫機1は搬送部9に設けるベルト搬送装置を、搬送帯10を前記形状の平ベルト部51と、弾性挟持用突起52とガイド突起31からなる構成にしているため、ベルト外れを防止しながら対向する互いの弾性挟持用突起52の間で作物の挟持箇所を弾力性を有して挟持するので、作物を押し潰したり傷めることなく柔らかく挟持しながら搬送を確実に行い、また作物の非挟持部分(葉茎部)を対向する平ベルト部51で形成される搬送路40の搬送支持間隔内で、側方への姿勢を規制し倒れ等を防止し整然と搬送し回収を容易にする。従って、葉茎部の傷みを生じさせることなく収容部36に整然と収容し品質よく収穫することができる。また機体の小旋回走行や作業の高速化を図る場合でも品質を損なうことのない収穫作業を行うことができる等の特徴がある。
【0045】
さらに収穫機1は搬送路40の終端に補助搬送体37を設置しているため、搬送帯10の終端から作物の根元側を支持した引継ぎ搬送をして収容部36への作物の収容をスムーズに行うことができる。即ち、搬送路40の終端から挟持搬送が解除されて略直立姿勢で自然落下をしようとする作物に対し、回転軸74を中心に回転する元送り部材76の周面が、搬送帯10終端において作物下端部を押し上げるように回転接触するので、後続の作物と分離することができ、次いで自然落下を防止しながら作物先端部に後方に向けて回転軸74を略中心とする円弧軌跡を描かせながら収容部36に案内して、収容部36内に作物を整然と集積させることができる。従って、搬送路40終端での作物の搬送詰まりや作物の絡み合いを防止することができると共に、作物回収時における品質低下を阻止することができ、またその後行なわれるネギの仕分けや集束梱包等の出荷作業を行い易くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明を適用した軟弱野菜収穫機の構成及び作業状態を示す全体側面図である。
【図2】図1の走行装置の構成を破断をして示す平面図である。
【図3】図1のA−A線断面図である。
【図4】図1の平面図である。
【図5】図4の軟弱野菜収穫機の左右搬送路を広げた状態を簡略化して示す平面図である。
【図6】図1の搬送伝動機構の構成を示す平面図である。
【図7】図6の搬送伝動機構の作用を示す平面図である。
【図8】外側搬送部の構成を示す側面図である。
【図9】内側搬送部及び搬送伝動機構の構成を示す側面図である。
【図10】図1のB−B線断面図である。
【図11】搬送帯の形状及び作用を示す断面図である。
【符号の説明】
【0047】
1 収穫機(軟弱野菜収穫機)
2 走行機体
3 収穫装置
5 走行装置
6 駆動輪
6a 駆動軸
7 バッテリ
8,8a 駆動するモータ
9 搬送部
17 回動規制機構(融通支持機構)
19 走行フレーム
23 従動輪
25 クローラ
40 搬送路
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作物を下方から後方上方に向けて挟持搬送する搬送路(40)を有する搬送部(9)を、走行装置(5)を有する走行機体(2)に傾斜姿勢で搭載する収穫機(1)において、前記走行装置(5)を走行フレーム(19)を介して前後方向に連結した小径な従動輪(23)と径大な駆動輪(6)に、クローラ(25)を巻き掛けたクローラ型走行装置にすると共に、当該クローラ型の走行装置(5)を搬送部(9)の左右幅の略中央で、従動輪(23)側を搬送部(9)の下部に近接させて前後方向に入り込ませて設置すると共に、搬送部(9)を走行装置(5)のクローラ(25)がなす上側斜面に沿わせて設けることを特徴とする収穫機。
【請求項2】
搬送部(9)の中途部と走行フレーム(19)の後部とを、駆動輪(6)の駆動軸(6a)に回動可能に支持すると共に、搬送部(9)と走行フレーム(19)とを、両者の所定以上の離間を規制しながら駆動軸(6a)を支点とする回動を許容する回動規制機構(17)によって連結支持する請求項1記載の収穫機。
【請求項3】
走行装置(5)又は搬送部(9)を駆動するモータ(8),(8a)に給電するバッテリ(7)を、走行装置(5)の左右に振り分けて設置する請求項1又は2記載の収穫機。
【請求項1】
作物を下方から後方上方に向けて挟持搬送する搬送路(40)を有する搬送部(9)を、走行装置(5)を有する走行機体(2)に傾斜姿勢で搭載する収穫機(1)において、前記走行装置(5)を走行フレーム(19)を介して前後方向に連結した小径な従動輪(23)と径大な駆動輪(6)に、クローラ(25)を巻き掛けたクローラ型走行装置にすると共に、当該クローラ型の走行装置(5)を搬送部(9)の左右幅の略中央で、従動輪(23)側を搬送部(9)の下部に近接させて前後方向に入り込ませて設置すると共に、搬送部(9)を走行装置(5)のクローラ(25)がなす上側斜面に沿わせて設けることを特徴とする収穫機。
【請求項2】
搬送部(9)の中途部と走行フレーム(19)の後部とを、駆動輪(6)の駆動軸(6a)に回動可能に支持すると共に、搬送部(9)と走行フレーム(19)とを、両者の所定以上の離間を規制しながら駆動軸(6a)を支点とする回動を許容する回動規制機構(17)によって連結支持する請求項1記載の収穫機。
【請求項3】
走行装置(5)又は搬送部(9)を駆動するモータ(8),(8a)に給電するバッテリ(7)を、走行装置(5)の左右に振り分けて設置する請求項1又は2記載の収穫機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−148387(P2010−148387A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−328106(P2008−328106)
【出願日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【出願人】(391052127)株式会社ニシザワ (14)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【出願人】(391052127)株式会社ニシザワ (14)
【Fターム(参考)】
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