説明

収納体及び収納体の開封明示用チャック

【課題】内容物を入れた後、収納体を溶着などで封止せずとも、チャックを閉じるだけで、その後の開封の痕跡を明示することができるチャック及び収納体の提供を図る。
【解決手段】一対のチャック半部11、21を備え、各チャック半部には嵌合部12、23と支持部を備え、上記両チャック半部の嵌合部12、23同士を強制嵌合することによって上記チャック半部同士が閉ざされ、強制嵌合を解除することによって上記チャック半部同士が開くようにした合成樹脂製のチャックであり、両チャック半部11、21の少なくともいずれか一方に、弱め部16、26が設けられる。嵌合部12、23同士の嵌合強度が、上記弱め部16、26が破断する強度よりも大きい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、収納体及び収納体の開封明示用チャックに関するものである。
【背景技術】
【0002】
線上の嵌合部を揺する開閉用チャックは、袋の開閉を繰り返し行うことができる点で、極めて有用なものとして、従来より広く用いられている。ところが、この開閉用チャックの利点は、袋内部への悪戯を改竄の痕跡を明示が困難であるという欠点になる。そのため、開封されたことを明示する観点から、特許文献1及び2に示すような提案がなされている。これらの提案は、開閉用チャック以外の袋の一部を溶着などで封をすると共に、その封止部分の近くに開閉用のミシン目等の弱め線を設けたものであり、袋を開くためには、開閉用チャックを開くと共に、その弱め線を破るようにしたものである。
また、特許文献3は、スライダ付きの開閉チャックにあって、スライダは、一回だけ破断可能ないたずら証明特徴部が破断されるまでは、上記閉位置から動くことができず、あるいは、スライダが上記閉位置から動くことにより、いたずら証明特徴部が破断されるようにしたものが提案されている。
ところが、これらの提案は、内容物を袋に収納した後に、溶着や接着剤などで袋の封止を行うか(特許文献1、2)、チャックを溶着などで取り付けるようにする必要があり(特許文献3)、内容物の収納後に封止のための手間がかかったり、特別な装置が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−225889号公報
【特許文献2】特開2006−76619号公報
【特許文献3】特表2000−516182号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願発明は、内容物を入れた後、収納体を溶着などで封止せずとも、チャックを閉じるだけで、その後の開封の痕跡を明示することができるチャック及び収納体の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願の請求項1に係る発明は、
一対のチャック半部を備え、各チャック半部には嵌合部とこの嵌合部を支持する支持部を備え、上記両チャック半部の嵌合部同士を強制嵌合することによって上記チャック半部同士が閉ざされ、強制嵌合を解除することによって上記チャック半部同士が開くようにした合成樹脂製のチャックにおいて、
上記チャックが設けられる収納体に、上記支持部が取り付け又は一体成形されるものであり、
上記両チャック半部の少なくともいずれか一方に、弱め部が設けられ、
上記嵌合部同士の嵌合強度が、上記弱め部が破断する強度よりも大きいことを特徴とする収納体の開封明示用チャックを提供する。
本願の請求項2に係る発明は、
上記各チャック半部のそれぞれには複数の対となる嵌合部が設けられ、上記対となる嵌合部の少なくとも1つの対となる嵌合部を支持する支持部の少なくとも一つのに弱め部が設けられ、上記対となる嵌合部の少なくとも他の1つの対となる嵌合部を支持する支持部には弱め部が設けられていないことを特徴とする収納体の開封明示用チャックを提供する。
本願の請求項3に係る発明は、
請求項1又は2記載の開封明示用チャックによって開口部が閉ざされたことを特徴とする収納体を提供する。
本願の請求項4に係る発明は、
請求項1又は2記載の開封明示用チャックと、弱め部を設けられていない開閉用チャックとによって開口部が閉ざされたことを特徴とする収納体を提供する。
【発明の効果】
【0006】
本願発明の開封明示用のチャックにあっては、これを取り付け又は一体成形した収納体の内部に内容物を収納し、この収納後に、一対のチャック半部を閉じる。この一対のチャック半部同士を嵌合してチャックを閉じるという簡単な作業のみで、再度されたことを明示することが可能となる。具体的には、閉じたチャックを開こうとすると、嵌合部同士の嵌合強度が、上記弱め部が破断する強度よりも大きいため、チャックの嵌合部が開く前に、弱め部が破断してしまう。よって、本願発明は、内容物を入れた後、収納体を溶着などで封止せずとも、チャックを閉じるだけで、その後の開封を明示することを可能にしたチャック及び収納体を提供することができたものである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】(A)第1の実施の形態に係る開封明示用チャックの断面を示した斜視図、(B)第2の実施の形態に係る開封明示用チャックの断面を示した斜視図。
【図2】第3の実施の形態に係る開封明示用チャックの断面を示した斜視図。
【図3】第4の実施の形態に係る開封明示用チャックの断面を示した斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面に基づき本願発明の実施の形態を説明する。
図1に示す開封明示用チャック10は、一対の合成樹脂製の第1チャック半部11と第2チャック半部21とからなる。
【0009】
第1チャック半部11は、雄嵌合部12と、この雄嵌合部12を支持する雄用支持部13とを備える。雄用支持部13は基部14と中間部15とを備える。雄嵌合部12と基部14とをつなぐ部分が中間部15である。基部14の少なくとも一部は溶着や接着剤等の接着部分17によって、収納袋31を構成するシートに固定される。また収納袋31と第1チャック半部11とを一体に形成することもできる。これらの形状は、その機能を果たし得る範囲で適宜変更して実施できるが、この例では、基部14は上下方向(内容物の出し入れ方向)に幅のある帯状をなし、この基部14の上下方向の中程から細幅の中間部15が左右方向(内容物の出し入れ方向と交わる方向)に伸び、その先端に中間部15よりも上下幅の大きな雄嵌合部12が形成されている。なお、中間部15を設ける位置は適宜変更でき、基部14の中程に限らず、上下方向にずれていてもよい。また雄嵌合部12の嵌合機能が果たせる場合には、中間部15を省略して、基部14に雄嵌合部12を直接形成するようにしてもよい。接着部分17は、基部14の上下に1箇所ずつとしているが、基部14の全体を接着してもよく、適宜変更し得る。
【0010】
第2チャック半部21は、雌嵌合部22と、この雌嵌合部22を支持する雌用支持部23とを備える。雌嵌合部22は、弾性変形することによって、雄嵌合部12を受容し強制嵌合する。雌用支持部23は基部24と中間部25とを備える。雌嵌合部22と基部24とをつなぐ部分が中間部25である。基部24の少なくとも一部は溶着や接着剤等の接着部分27によって収納袋31を構成するシートに固定される。また収納袋31と第2チャック半部21とを一体に形成することもできる。これらの形状は、その機能を果たし得る範囲で適宜変更して実施できるが、この例では、基部24は上下方向(内容物の出し入れ方向)に幅のある帯状をなし、この基部24の上下方向の中程から細幅の中間部25が左右方向(内容物の出し入れ方向と交わる方向)に伸び、その先端に上下方向に二股状に分かれた雌嵌合部22が形成され、この雌嵌合部22に雄嵌合部12が強制嵌合される。なお、中間部25を設ける位置は適宜変更でき、基部24の中程に限らず、上下方向にずれていてもよい。また雌嵌合部22の嵌合機能が果たせる場合には、中間部25を省略して、基部24に雌嵌合部22を直接形成するようにしてもよい。なお、接着部分27は、基部24の上下に1箇所ずつとしているが、基部24の全体を接着してもよく、適宜変更し得る。
【0011】
第1チャック半部11及び第2チャック半部21の少なくとも何れか一箇所に、弱め線16、26が設けられている。この弱め線16、26は、雄嵌合部12、雄用支持部13、雌嵌合部22、雌用支持部23のいずれに設けてもよいが、開封の確認の容易性からは雄用支持部13、雌用支持部23に設ける方が有利であり、図1(A)に示す例では、ミシン目からなる弱め線16、26が基部14、24に設けられている。詳しくは、接着部分17と接着部分17との間(図では、第1チャック半部11の基部14の下端寄り)と、接着部分27と接着部分27との間(第2チャック半部21の基部24の上端寄り)に設けられている。この例では、両弱め線16、26を、第1チャック半部11と第2チャック半部21との双方に設けているが、いずれか一方にのみ設ければ足りる。また、第1チャック半部11の基部14の上端寄りと、第2チャック半部21の基部24の下端寄りに設けることもできる。
【0012】
また、図1(B)に示すように、ミシン目からなる弱め線16に限らず、凹溝からなる弱め線26を形成することもできる。この例では雄用支持部13の中間部15及び雌用支持部23の中間部25に設けている。これらの弱め線16、26の形状・構造は、種々変更して実施できる。図1(B)の例では、弱め線16を、第1チャック半部11に対する貫通部分を断続的に設けたミシン目としており、弱め線26を、肉厚を薄くした破れやすくした凹溝状部分としているが、ミシン目の貫通部分間を凹溝状部分で繋ぐような併用型としてもよい。貫通部分の形状も適宜変更でき、破れ方向に沿った長孔でもよく、方向性のない丸孔でもよく、破れ方向と交わる方向に伸びる孔でもよい。凹溝の断面形状も楔形、U字状など適宜変更できる。また、弱め部は、線状のものに限らず、例えば、中間部15、25の厚みを全体的に薄いものとして、破断しやすいものとしてもよい。また、基部14、24を収納袋31のシートと接着する接着部分17、27を、脆弱なものとしてもよい。
【0013】
重要なことは、弱め部(弱め線16、26)の破断強度よりも、雄嵌合部12と雌嵌合部22との嵌合強度の方が大きくなるように設計することである。簡単に言えば、収納袋31を開封しようとして収納袋31のシート又は開封明示用チャック10を引っ張ったとき、雄嵌合部12と雌嵌合部22との嵌合が外れる前に、弱め線16、26が破れることである。この嵌合強度は、破断強度よりも僅かにでも大きければ足りるが、加工や材質のばらつきによる不安定性を排除する観点からは、1.5倍以上の差を設けることが望ましい。
【0014】
次に、図2は、上記の開封明示用チャック10と、通常の開閉用チャック33を併用した例である。この開閉用チャック33は、上記の開封明示用チャック10と実質的に同じものを用いることができるが、弱め線16、26が設けられていない点が、相違する。図の例では、収納袋31の開口部32付近において、上方(収納袋31の開口端に近い方)に開封明示用チャック10を取り付け、その下方(収納袋31の奥の方)に開閉用チャック33を取り付けたものである。これによって、故意又は過失によって、開封明示用チャック10の弱め線16、26を破った場合にも、開閉用チャック33が開かれない限り、袋の密封性を維持することができる。但し、開閉用チャック33を開封明示用チャック10よりも上方に設けることもでき、場合によっては、開封明示用チャック10の上下両側に開閉用チャック33を設けてもよい。
【0015】
また、開封明示用チャック10のみで実施した場合、移送中の振動や衝撃によって内容物が開口から飛び出そうとしたり、袋の内圧が上昇したりして、弱め線16、26が破れてしまう場合があり得る。これに対して、開閉用チャック33を収納袋31の内部側に設けておくことによって、弱め線16、26が不用意に破れてしまうことを防止する。これによって、弱め線16、26が破られた原因が、外部からの悪戯や不正使用の目的か、移送中などの衝撃や内圧上昇によるものかが、わからなくなってしまうことを防止する。
特に、この例では、開閉用チャック33のシートに対する固定に関して、一方の基部34の接着については、上方側の第1接着部分36と下方側の第2接着部分37との双方で固定しているのに対して、他方の基部35の接着については、上方側の第3接着部分38のみとし、下方側はシートと接着されていない。これによって、収納袋31の密封性が高い場合に、収納袋31が圧縮される等して袋の内圧が高まった際、開閉用チャック33の嵌合が外れることを防止できる。即ち、接着箇所を、上方側の第3接着部分38のみとしておくことによって、収納袋31の内圧が高まった場合に、他方の基部35の下方側が収納袋31のシートから離れて、一方の基部34に近づく形となる。その結果、内圧は第3接着部分38に直接かかり易くなり、開閉用チャック33の嵌合部分を分離させる方向には直接働き難くなり、他方の基部35の下方を接着する場合に比して、嵌合部分の強度が増加する。
【0016】
次に、図3は、上記の開封明示用チャック10と開閉用チャック33とを一つのチャックとして形成した併用チャック41の例である。具体的には、第1チャック半部11と第2チャック半部21のそれぞれに、雄嵌合部12、雌嵌合部22及び中間部15、25を上下に2組設ける。これらの雌雄の嵌合部12、22と中間部15、25に対する基部は上下に連続した併用基部42、43とする。そして、上下何れかの一方のチャックの嵌合部に対して、弱め線16、26を設ける。弱め線16、26を設ける位置は、先の例と同様、適宜変更できるが、この例では、上方の雄用支持部13(及び/又は雌用支持部23)の中間部15、25に設けている。この弱め線は、基部42、43に設けることもできるが、その場合、弱め線が破断された後にも、一つの嵌合部は機能するように設ける必要がある。具体的には、基部42、43の一部を、収納袋31のシートに対する接着部分とした場合、その接着部分から一つの中間部15、25とこれにつながる雄嵌合部12、雌嵌合部22とを除いた部分に、弱め線を設ける。これによって、弱め線が破断された後にも、少なくともひとつの雌雄の嵌合部12、22は、接着部分とつながっている状態を維持することができ、開閉可能なチャックとして機能することができる。
【0017】
以上、本願の開封明示用チャックを用いた収納体にあっては、収納袋31等の収納体の開口部32等から、内容物(物品に限らず、液体、気体なども含む)を収納した後、開封明示用チャック10を閉じる。この簡単で素早い作業のみで、収納袋31の封緘が完了する。悪戯などの不正行為が収納体の内容物に対して行なわれようとして、開口部32を開くと、雌雄の嵌合部12、23が外れる前に、弱め線16、26が破れる。その結果、予定外の不正なアクセスの痕跡が残るものであり、安全性の向上に寄与することができるものである。
【符号の説明】
【0018】
10 開封明示用チャック
11 第1チャック半部
12 雄嵌合部
13 雄用支持部
14 基部
15 中間部
16 弱め線
17 接着部分
21 第2チャック半部
22 雌嵌合部
23 雌用支持部
24 基部
25 中間部
26 弱め線
27 接着部分
31 収納袋
32 開口部
33 開閉用チャック
34 一方の基部
35 他方の基部
36 第1接着部分
37 第2接着部分
38 第3接着部分
41 併用チャック
42 併用基部
43 併用基部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のチャック半部を備え、各チャック半部には嵌合部とこの嵌合部を支持する支持部を備え、上記両チャック半部の嵌合部同士を強制嵌合することによって上記チャック半部同士が閉ざされ、強制嵌合を解除することによって上記チャック半部同士が開くようにした合成樹脂製のチャックにおいて、
上記チャックが設けられる収納体に、上記支持部が取り付け又は一体成形されるものであり、
上記両チャック半部の少なくともいずれか一方に、弱め部が設けられ、
上記嵌合部同士の嵌合強度が、上記弱め部が破断する強度よりも大きいことを特徴とする収納体の開封明示用チャック。
【請求項2】
上記各チャック半部のそれぞれには複数の対となる嵌合部が設けられ、上記対となる嵌合部の少なくとも1つの対となる嵌合部を支持する支持部の少なくとも一つのに弱め部が設けられ、上記対となる嵌合部の少なくとも他の1つの対となる嵌合部を支持する支持部には弱め部が設けられていないことを特徴とする収納体の開封明示用チャック。
【請求項3】
請求項1又は2記載の開封明示用チャックによって開口部が閉ざされたことを特徴とする収納体。
【請求項4】
請求項1又は2記載の開封明示用チャックと、弱め部を設けられていない開閉用チャックとによって開口部が閉ざされたことを特徴とする収納体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2011−229798(P2011−229798A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−104691(P2010−104691)
【出願日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【特許番号】特許第4729640号(P4729640)
【特許公報発行日】平成23年7月20日(2011.7.20)
【出願人】(000153683)株式会社柏原製袋 (12)
【Fターム(参考)】