説明

収納庫

【課題】 引出を完全に引き出さなくとも、引出の手前側から順次、収納された被収納物が上昇し、引出内部の被収納物を容易に取り出せることで、使用者の体への負荷の低減を維持することが可能な収納庫を提供することを目的とする。
【解決手段】 本発明にかかる収納庫の代表的な構成は、被収納物を収納可能な引出120と、引出120内に配置され、被収納物を載置可能なポケット140と、引出120をスライド自在に収納可能なベースキャビネット100と、ベースキャビネット110に収納された引出120がベースキャビネット100から引き出されることによってポケット140を上昇させ、また、引出120がベースキャビネット100へ押し込まれることによってポケット140を下降させる昇降機構150とを備え、ポケット140の上縁は、奥側が低く、手前側が高いことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、システムキッチンに設けられ、被収納物を収納する引出を有する収納庫に関するものである。
【背景技術】
【0002】
システムキッチンにおいて使用される調理器具は、ボールやざる等の丸型形状のもの、レードルや菜ばし等の長手形状のもの、包丁、ナイフ等の刃物類、ラップ・ホイル類等、多岐にわたる。これらの調理器具等の被収納物を収納するために、天板(システムキッチンにおいてはワークトップ)の下には、引出や開き戸が設けられるのが通常である。
【0003】
上記の中でも、引出を有する収納庫は、被収納物を引出へ容易に収納でき、複数の引出を水平もしくは垂直方向のいずれか一方向または両方向に並列に設けることにより、高い空間効率を得ることができる。このため、上記の調理器具以外にも、上記調理器具より大きいフライパン、鍋等の調理器具、塩、胡椒等の調味料類、食品の瓶詰め等、大小様々な被収納物を上方から収納することができる。
【0004】
しかし、天板の下に収納スペースを設けるために、必然的に引出等は、足元などの低い位置となる。このため一般の成人使用者の腰以下の低位置に設けられた引出は、使用者が当該引出の被収納物を利用する際には腰をかがめるか、しゃがみ込むことによって被収納物を出し入れすることになる。このことは、長時間キッチンで立ち仕事をする場合や、高齢により体の自由がきかなくなってきた場合など、使用者によっては負担に感じる場合も想定される。
【0005】
そこで従来からも、低い位置の引出に対して、被収納物の出し入れを容易とするための工夫が検討されていた。
【0006】
例えば特許文献1および特許文献2には、引出に設けられ、摺動機構により完全に引き出した状態の引出を引出高さから使用高さまで上昇させ、その後引出高さまで下降させる昇降機構を有するキャビネットが開示されている。
【0007】
特許文献1あるいは特許文献2に記載のキャビネットによれば、使用者は、昇降機構により引出を使用高さまで上昇させた状態で、被収納物を取り出すことが可能であるため、取出し時に使用者が屈む等の体勢の負担を軽減することができるとしている。
【0008】
また、特許文献3では、引出内部の収納棚を昇降させることで、特許文献1および特許文献2と同様の効果を奏するとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−215678号公報
【特許文献2】特開2007−215679号公報
【特許文献3】特開2007−330564号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
例えば上記特許文献1および特許文献2に開示された構成においては、引出の位置が高くなるために確かに被収納物を取り出しやすくなると考えられるが、引出の全体を回転させながら上昇させる構成である。しかしながら、引出は木製や金属製の前板や、底板、側板などから構成されていて、何も収容していなくてもかなりの重量を有している。まして引出の中に様々な被収納物を収納すると、これを回転させるために必要な労力は、逐一屈むよりも多大なものとなってしまいかねない。
【0011】
とりわけ、引出の手前側に収納された被収納物は、引出をわずかに引き出した時点で露出するので、取り出すことは可能である。しかし、特許文献1および特許文献2に記載のキャビネットでは、引出をキャビネット外に完全に引き出した状態まで水平方向に摺動させてからでないと、引出を使用高さまで持ち上げることができない。するとキッチンで作業している使用者は1歩下がって引出を大きく引き出さなければならないことになり、たび重なれば煩わしく感じられるおそれがある。
【0012】
また、特許文献3に記載のフロアーキャビネットにおいても同様に、引出をキャビネット外に引き出した状態まで水平方向に摺動させてからでないと、収納棚を使用高さまで上昇させることができない。したがって、引出をわずかに引き出した時点では、使用者は、屈む体勢をとらなければ引出の手前側に収納された被収納物を取り出すことができない。
【0013】
そこで、例えば特許文献3に記載の収納棚を、引出をわずかに引き出した早期の時点で上昇させることが対策として考えられる。しかし、かかる収納棚を早期に上昇させると、収納棚は上段の引出に衝突してしまうという問題が生じる。
【0014】
本発明は、このような問題に鑑み、引出を完全に引き出さなくとも、引出の手前側から順次、収納された被収納物が上昇し、引出内部の被収納物を容易に取り出せることで、使用者の体への負荷の低減を維持することが可能な収納庫を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために、本発明にかかる収納庫の代表的な構成は、被収納物を収納可能な引出をスライド自在に収容可能な収納庫であって、引出は、内部に被収納物を載置可能な載置部材をさらに有し、収納庫に収容された引出が収納庫から引き出される動作に連動して載置部材を上昇させ、また、引出が収納庫へ押し込まれる動作に連動して載置部材を下降させる昇降機構とを備え、載置部材の上縁は、奥側が低く、手前側が高いことを特徴とする。
【0016】
上記構成によれば、引出を引き出すだけで載置部材が上昇し、載置部材に載置された被収納物も上昇するため、使用者は被収納物を出し入れする際に極端に屈む必要がなく、楽な姿勢で作業でき、体への負荷が低減される。また、収納時には引出を押し込むだけで載置部材が降下するため、上昇した被収納物は収納庫内に問題なく収納される。
【0017】
しかも載置部材は、その上縁の奥側が低く、手前側が高くなっているため、被収納物は、引出の手前側から順次、優先的に上昇することとなる。したがって、引出を完全に引き出さなくても、引出の手前側の早期に上昇した被収納物を容易に出し入れすることが可能である。なお、載置部材の上縁の高さに規定はなく、収納時および引き出し時に、上部引出に衝突しなければよい。
【0018】
上記の載置部材の底面は、奥側が高く、手前側が低いとよい。載置部材の奥側は、もともと上縁が低いことから、手前側より上昇が遅れ、引出を完全に引き出しても、手前側より被収納物の取り出し易さの面で劣る。そこで奥側の底面の位置を高くし、すなわち上げ底にすれば、被収納物の出し入れのしにくさが一定程度解消される。使用者が被収納物を出し入れする際の出し入れのし易さは、使用者がどの程度屈む必要があるかによって決定される。つまり、被収納物の高さは、載置部材の底面の高さによって決定され、この高さが高いほど取り出しやすくなる。その一方、上げ底にすれば、載置部材の容積が失われるというデメリットもあるため、無制限に上げ底にすべきでなく、被収納物の大きさに応じて決定するとよい。
【0019】
上記の載置部材は、天面が開放された階段状のポケットであるとよい。かかる構成によれば、引出が収納庫から引き出されることによってポケットが上昇すると、引出内に収納された被収納物のうち、ポケットに収納された被収納物のみが上昇することとなる。したがって、昇降機構によって上昇させる被収納物の重量が低減されるため、引出を引き出すために要する力を低下させることができる。また、ポケットに被収納物を収納することができ、引出内の整理整頓が可能となる。
【0020】
上記の載置部材は、引出の前板の背面に隣接する位置に設けられるとよい。被収納物を可能な限り早期に露出させ、少ない引き出し量(ストローク)で被収納物を取り出しやすくするためである。
【0021】
上記課題を解決するために、本発明にかかる収納庫の他の構成は、被収納物を収納可能な引出をスライド自在に収容可能な収納庫であって、引出の内部に設けられた、被収納物を載置可能な、手前側の第1載置部材および奥側の第2載置部材と、当該収納庫に収容された前記引出が該収納庫から引き出される動作に連動して第1載置部材および第2載置部材を上昇させ、また、引出が当該収納庫へ押し込まれる動作に連動して第1載置部材および第2載置部材を下降させる昇降機構とを備え、第2載置部材は、第1載置部材の上昇開始時より遅延して上昇を開始することを特徴とする。
【0022】
かかる構成により、引出を完全に引き出さなくても引出の手前側の第1載置部材上の被収納物を容易に出し入れ可能となるだけでなく、奥側の第2載置部材も手前側の第1載置部材と同様に深い容量を備えることができ、より高い空間効率を得ることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、引出を完全に引き出さなくとも、引出の手前側から順次、収納された被収納物が上昇し、引出内部の被収納物を容易に取り出せることで、使用者の体への負荷の低減を維持することが可能な収納庫を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本実施形態に係る収納庫を備えたシステムキッチン全体を示す斜視図である。
【図2】図1のベースキャビネットをシステムキッチンの長手方向に見た図である。
【図3】図2のベースキャビネットの概略構造を示す断面図である。
【図4】載置部材の例としてのポケットの構成を説明する図である。
【図5】第1実施形態における引出を収納庫からわずかに引き出した時点の状態を示す断面図である。
【図6】第1実施形態における収納庫外に引出を引き出した状態を示す断面図である。
【図7】第2実施形態におけるベースキャビネットの概略構造を示す図である。
【図8】第2実施形態に引出を収納庫からわずかに引き出した時点の状態を示す図である。
【図9】第2実施形態における収納庫外に引出を引き出した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0026】
図1は本実施形態に係る収納庫を備えたシステムキッチン全体を示す斜視図である。システムキッチン10は1枚の天板11(ワークトップ)の下の複数の収納庫で構成されている。本実施形態は収納庫は3つであり、コンロ13が設置されているコンロキャビネット20と、調理スペース12に対応したシンク31が設置されているシンクキャビネット30と、調理スペース12に対応したベースキャビネット100とである。天板11は合成樹脂(人工大理石)やステンレスなどからなり、システムキッチン10の全体の上面を覆っている。
【0027】
各キャビネットは、被収納物を収納するために、様々な大きさの引出をスライド自在に設けている。例えばコンロキャビネット20は、上部にコンロ13のグリル13aおよび操作パネル13bを備え、その脇には調味料などの小物を収納するための小さな引出であるスパイスボックス21が配設されている。コンロキャビネット20の中央部、すなわちグリル13aの下には幅の広い大きな引出22が配設され、鍋やボウルなどの比較的大きな調理器具を収納することが可能になっている。またコンロキャビネット20の下部の床近傍には、引出式の足元収納であるフロアコンテナ23が配設されている。
【0028】
同様に、ベースキャビネット100には複数の比較的小さな引出101、120およびフロアコンテナ104が備え付けられている。シンクキャビネット30にはフロアコンテナ33と、フロアコンテナ33から天板11に到る高い前板を備えた引出32が備え付けられている。
【0029】
次に、本実施形態の特徴である収納庫(キャビネット)について説明する。上記したコンロキャビネット20、シンクキャビネット30、ベースキャビネット100のうち、ベースキャビネット100を例にとって説明する。
【0030】
図2は、図1のベースキャビネット100をシステムキッチン10の長手方向に見た図である。図3は、図2のA−A断面図であり、第1実施形態におけるベースキャビネット100の概略構造を示す。図4は載置部材の例としてのポケットの構成を説明する図である。ベースキャビネット100は被収納物(図示は省略)を収納可能な引出120をスライド自在に収納可能である。
【0031】
引出120には、引出自体とは別に、被収納物を載置可能な載置部材の例として、ポケット140が設けられている。ポケット140は、調理器具や調味料など、頻繁に使用するものを収容することを目的としている。例えば、ボールやざる、鍋などの比較的大きなものは引出120本体に収納し、レードルや菜ばし、ラップ・ホイル類等の長手形状のもの、調味料などの小さなものなどをポケット140に収納することが想定される。
【0032】
本実施形態においてポケット140は、天面が開放され、上縁が階段状に形成されている。階段状のポケット140は、図3および図4に示すように、上縁の奥側が低く、手前側が高くなっている。より具体的には、ポケット140は、複数(本実施形態では2つ)の小ポケット140a、140bで一体的に構成されていて、手前側の小ポケット140aの上縁141が、奥側の小ポケット140bの上縁142より高い位置にある。
【0033】
引出120の内部には、さらに、引出120内にポケット140を装着するための支持部材130が設置されている。ポケット140は、図2に示すように、支持部材130の梁190に、手前側の小ポケット140aの上縁141にて、着脱可能に懸架される。
【0034】
ベースキャビネット100はさらに、昇降機構150を備え、これは、ベースキャビネット100に収納された引出120がベースキャビネット100から引き出されることによってポケット140を支持部材130ごと上昇させ、また、引出120が当該ベースキャビネット100へ押し込まれることによってポケット140を支持部材130ごと下降させる。
【0035】
昇降機構150は、より具体的には、支持部材130とレール180とから構成される。支持部材130は、摺動部材164と、梁190と、摺動部材164から奥側に向かって連結されたアーム170と、アーム170の奥側に設けられた複数のプーリ171、172とを有している。一方、レール180は、ベースキャビネット100内の壁板100aに配置されている。支持部材130の各要素およびレール180は引出120の左右方向に対称に構成されていて、梁190を除いて左右両側にそれぞれ2つ(鏡面対称に)配置されている。なお、引出101、102、120そのものを出し入れするためのレール機構は一般的なものでよいため、図示を省略している。
【0036】
支持部材130にはアーム170が配置されている。さらにアーム170にレール180を上下から挟み込むように2つのプーリ171、172が取り付けられていて、引出120をスライド自在に移動可能である。レール180の形状は、図示したように、平行四辺形であり、アーム170はレール180上をスライドすると共に、上昇あるいは下降することが可能である。
【0037】
アーム170が上昇する際に、支持部材130と引出120とを接続するバネ(図示は省略)によって、支持部材130を上方に付勢することにより、支持部材130を上方へ引き上げる力を要せず、単純に引出120を引き出すだけで、簡便にポケット140を上昇させることが可能となる。
【0038】
図5は図3の引出120をベースキャビネット100の外に引き出し始めた図であり、図6は、引出120を当該ベースキャビネット100の外に引き出した状態を示す。昇降機構150は既に説明した構成を有するため、引出120を引き出すと、図4〜図5に示すように、アーム170はレール180に沿って、水平な姿勢を保ちつつ、上昇しながらスライドする。
【0039】
引出140を引き出すとき、階段状の形状を有するポケット140のうち、最も早く露出する手前側の小ポケット140aの上縁が最も高い位置まで上昇し、引出120の手前側から順次、被収納物が上昇することとなる。言い換えれば、図4に示すように、引出120を完全に引き出さなくとも、引き出し始めた直後に、既にポケット140は上昇を開始するため、小ポケット140aに収容されている被収納物は早期に高い位置まで上昇する。
【0040】
しかも、ポケット140は、引出120の前板160の背面に隣接する位置に設けられている。したがって、図5に示すように、引出140を引き出し始めた直後に昇降機構150による上昇を開始させても、露出したポケット140aは上部引出300に衝突することなく、上部引出300の下端より高い位置まで、早期に上昇可能である。
【0041】
なお、ポケット140の上縁の高さに規定はなく、引出120が当該ベースキャビネット100に収納できうる高さで、かつ収納時にポケット140およびその被収納物が上部引出300に衝突しなければよい。
【0042】
すなわちポケット140に被収納物を収納したとき、ある程度突出することが想定される。むろん何を収納するかは使用者次第ではあるが、一般的に想定される被収納物の長さはある程度特定される。そこでポケット140の底面から被収納物の長さを考慮して、ポケット140の上方に被収納物の突出高さ領域146を設定する。図5および図6において、突出高さ領域146を斜線にて示している。そして突出高さ領域146が上部引出300やベースキャビネット100に衝突しないように、奥側の小ポケット140bの上縁の高さを決定することができる。
【0043】
上記の構成によれば、ポケット140の奥行き方向の大きさを大きくしつつ、上部引出300と衝突することなく、早期にポケット140の上昇を開始することができる。したがって、引出120をわずかに引き出した状態でも、引出120の手前側の、早期に上昇する小ポケット140aに収納されている被収納物を、屈むことなく容易に取り出すことができる。したがって使用者の体への負荷の低減が維持されるし、奥側の小ポケット140bよりも、手前側の優先的に上昇する小ポケット140aに頻繁に使用する被収納物を収容しておけば、逐一引出120を完全に引き出す必要もなくなり、作業能率も向上する。
【0044】
また第1実施形態において、ポケット140の底面のうち、奥側の小ポケット140bの底面144を高く、手前側の小ポケット140aの底面143を低く形成している。ポケット140が完全に上昇した場合であっても、奥側の小ポケット140bは、手前側の小ポケット140aよりも上縁が低い。そのため一見すると使用者から遠くなるように思われる。しかし実際は、被収納物の高さを決めるのはポケット140の底面であって上縁でなく、使用者から遠くなってしまうのは奥側にあるからである。
【0045】
そこで上記のように、奥側の小ポケット140bの底面144の位置を高く、すなわち上げ底にすることにより、奥側の小ポケット140bに収納された被収納物を使用者に近づけることができる。当然に奥側の小ポケット140bに収納できる被収納物の高さは低くなる(長さが短くなる)が、頻繁に使用する物、例えば塩、胡椒等の調味料類、食品の瓶詰め等背の低い被収納物を、手前側の収納物、例えばレードルや菜ばし等の長手形状の被収納物と、同等の高さとすることができる。このため、使用者は手前側と奥側のポケット140a、140bのいずれに収納された被収納物も取りやすくなり、使用者が極端に屈む必要がなくなる。
【0046】
(第2実施形態)
本発明に係る収納庫の第2実施形態について説明する。図7は第2実施形態にかかるベースキャビネットの概略構造を示す図であって、上記第1実施形態と説明の重複する部分は同一の符号を付して説明を省略する。
【0047】
上記第1実施形態において、載置部材の例としてのポケット140は上縁が階段状であると説明した。これに対し本実施形態は、載置部材として複数の別体のポケット200、210を備え、別々に昇降動作させる例である。
【0048】
図7に示すベースキャビネット100の引出120内には、手前側に第1ポケット200、奥側に第2ポケット210を有している。
【0049】
第1ポケット200および第2ポケット210の特徴は、引出120の幅方向に並べられた図2に示す複数のポケット140と異なり、引出120の奥行き方向に並べられていることである。また、一体成形され、当初から階段状となっている第1の実施形態のポケット140と異なり、第1ポケット200および第2ポケット210は、別体であり、しかも、それらの高さは等しい。
【0050】
本実施形態においても、ベースキャビネット100に収納された引出120が引き出されることによって第1ポケット200および第2ポケット210が上昇し、また、引出120が当該ベースキャビネット100へ押し込まれることによって第1ポケット200および第2ポケット210が下降する。その昇降機構250を、以下、詳細に説明する。
【0051】
図7に示すように、本実施形態の昇降機構250について、第1の実施形態と異なる点について説明する。昇降機構250を構成するアーム240は、図7に示すように、内側に向かって突出した短い突起230を有している。一方、第2ポケット210には、突起230を上下移動自在に受け入れるスリット220が形成されている。この構造のため、第2ポケット210が幅方向に設置可能な数は1個である。
【0052】
アーム240はその手前側の先端にて、第1ポケット200に固定されている。
【0053】
引出120が閉まった状態では、図7に示すように、スリット220の下端に突起230が位置している。引出120を引き出す際、アーム170の上昇とともに第1ポケット200も上昇するが、第2ポケット210は、当初、スリット220と突起230が当接しないために、上昇しない。やがて、図8に示すように、アーム170が有する突起230がスリット220の上端まで到達すると、スリット220を介して第2ポケット210を支持するため、さらにアーム170が上昇すると、第2ポケット210も上昇を開始する。このように、図9に示すように、アーム170はスリット220の長さ分遅延して、第2ポケット210を上昇させることとなる。
【0054】
上記説明したように、本実施形態では、第2ポケット210が第1ポケット200に遅延して上昇を開始するため、図8および9に示すように、引出120を引き出す際、完全に引き出さなくても、引出120の手前側の優先的に上昇する第1ポケット200上の被収納物を容易に出し入れ可能となる。また、第2ポケット210は遅延して上昇するため、引出120の引き出し時に、被収納物が上部引出300へ衝突するのを避けることも可能である。さらに、第1の実施形態と異なり、奥側の第2ポケット210も手前側の第1ポケット200と同様に深い容量を備えることができ、菜ばしやレードル等の長手形状のものを多数収納でき、使用者の利便性が高まる。
【0055】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、被収納物を収納する引出を有する収納庫に利用することができる。
【符号の説明】
【0057】
10…システムキッチン、11…天板、12…調理スペース、13…コンロ、13a…グリル、13b…操作パネル、20…コンロキャビネット、21…スパイスボックス、22…引出、23…足元収納庫、30…シンクキャビネット、31…シンク、32…引出、33…足元収納庫、100…ベースキャビネット、101…引出、102…足元収納庫、120…引出、130…支持部材、140…ポケット、146…突出高さ領域、150…昇降機構、160…前板、164…摺動部材、170…アーム、171…上プーリ、172…下プーリ、180…レール、190…梁、200…第1ポケット、210…第2ポケット、220…スリット、230…突起、240…アーム、250…昇降機構、300…上部引出

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被収納物を収納可能な引出をスライド自在に収容可能な収納庫であって、
前記引出は、内部に被収納物を載置可能な載置部材をさらに有し、
前記収納庫に収容された前記引出が当該収納庫から引き出される動作に連動して前記載置部材を上昇させ、また、該引出が当該収納庫へ押し込まれる動作に連動して該載置部材を下降させる昇降機構を備え、
前記載置部材の上縁は、奥側が低く、手前側が高いことを特徴とする収納庫。
【請求項2】
前記載置部材の底面は、奥側が高く、手前側が低いことを特徴とする請求項1に記載の収納庫。
【請求項3】
前記載置部材は、天面が開放された階段状のポケットであることを特徴とする請求項1または2に記載の収納庫。
【請求項4】
前記載置部材は、前記引出の前板の背面に隣接する位置に設けられることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の収納庫。
【請求項5】
被収納物を収納可能な引出をスライド自在に収容可能な収納庫であって、
前記引出の内部に設けられた、被収納物を載置可能な、手前側の第1載置部材および奥側の第2載置部材と、
当該収納庫に収容された前記引出が該収納庫から引き出される動作に連動して前記第1載置部材および第2載置部材を上昇させ、また、該引出が当該収納庫へ押し込まれる動作に連動して該第1載置部材および第2載置部材を下降させる昇降機構と、
を備え、
前記第2載置部材は、前記第1載置部材の上昇開始時より遅延して上昇を開始することを特徴とする収納庫。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−183982(P2010−183982A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−29044(P2009−29044)
【出願日】平成21年2月10日(2009.2.10)
【出願人】(000104973)クリナップ株式会社 (341)
【出願人】(390013321)株式会社ダイドー (30)
【Fターム(参考)】