説明

収納箱

【課題】 底面の長さ寸法が大きい場合にも容易に底上げすることができるシート状収納物の収納箱を提供する。
【解決手段】 本発明に収納箱1は、中空の直方体状を呈し、長方形状の天面2及び底面3と、天面2及び底面3とそれらの長辺2a,3aで交わる一対の長側面4,4と、天面2及び底面3とそれらの短辺2b,3bで交わる一対の短側面5,5とを備え、中空内部にティッシュペーパーTが積層状態で収納されるとともに、天面2にティッシュペーパーTの取出口6が形成され、切込みの形成を容易とする切込線9,10が、底面3の長辺3aから中心部3dに向けて設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ティッシュペーパーやウェットティッシュ、ペーパータオル、ポリ袋等のシート状の収納物を内部に収納する収納箱に関する。
【背景技術】
【0002】
ティッシュペーパー等のシート状の収納物を積層状態で収納し、このシート状収納物の取出口が上部に形成された収納箱として、例えば特許文献1に記載のものが知られている。この収納箱では、収納物の残量が少なくなったときに、矩形状の底面の角部を頂点とする錐体状の部分を切離線に沿って切り離すか、あるいは、その底面の角部付近に接する側面の角部を切込線又は折込線に沿って切り込み又は折り込んで開口を形成することにより(同文献における図9乃至図12参照)、底面と二側面が交わる底面の角部周辺の剛性を低下させることができる。その上で、側面に形成された折込線に沿って、側面を底面との交線に略平行に折り曲げ、底面を上方に押し上げることにより、底面を底上げして収納物を取出口に近づけ、残量が少なくなった収納物の取出しを容易としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−91015号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の収納箱では、底面が全体的に底上げされるので、例えば収納物がティッシュペーパーのように薄手で柔らかいものである場合にも、その一部だけが持ち上げられて他部が持ち上げられずに取り出しにくいといったような不都合は解消される。一方、使用者により底面が全体的に底上げされるためには、使用者が折込みを容易に行える必要があり、もしこの折込作業が使用者にとって難しいものであると、結局は収納物の残量が少なくなっても収納箱は底上げされることなく使用され続けることになる。
【0005】
しかしながら、上記従来の収納箱では、特に底面の長さ寸法(辺の長さ)が大きい場合に折込みにくさを伴うことがあり、使用者の折込作業が容易となるように実用性を高める必要があった。
【0006】
すなわち、上記従来の収納箱の折込作業時に、使用者は、左右の親指で側面又は底面周縁部の(使用者から見て)左右両端に力を加え、これを収納箱の向きを変えながら各側面又は各底面周縁部について変形量のバランスをとりつつ順次行い、底上げを最終的に完了させる。よって、使用者が底上げを容易に行うためには、左右の親指の力が不用意な変形を生じさせない程度に効率的に側面又は底面周縁部に伝達されることを要するが、上記従来の収納箱では、底面の長さ寸法が大きいと、左右の親指による力の作用点が離れ、側面又は底面周縁部を長さ寸法全域に亘って変形させるために大きな力を加える必要がある一方、その大きな力の作用点付近だけ不用意に変形してしまうおそれもあり、誰もが習熟を要することなく簡単に底上げすることができる構造とは必ずしもいえない場合があった。
【0007】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたもので、底面の長さ寸法が大きい場合にも容易に底上げすることができるシート状収納物の収納箱を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1に係る発明は、中空の直方体状を呈し、長方形状の天面及び底面と、前記天面及び前記底面とそれらの長辺で交わる一対の長側面と、前記天面及び前記底面とそれらの短辺で交わる一対の短側面とを備え、中空内部にシート状収納物が積層状態で収納されるとともに、前記天面に前記シート状収納物の取出口が形成された収納箱であって、切込みの形成を容易とする切込線が、前記底面の長辺から前記底面の中心部に向けて設けられ、前記切込線により切込みが形成され、前記一対の長側面及び前記一対の短側面の下部が前記底面との交線に略平行な直線に沿って前記中空内部の側に折り込まれ、前記底面が前記天面に向けて押し上げられることによって、前記底面が底上げ可能であることを特徴とする。
【0009】
ここで、収納箱は、切込線の形成や長側面及び短側面の折込み、底面の押上げを可能とするものであればどのようなものでもよく、その材質はティッシュペーパー等の収納箱に広く用いられている紙材に限られない。
【0010】
また、「底面の中心部」とは、底面において2本の対角線が交差する点を含む広がりをもった領域を意味し、「底面の中心部に向けて」とは、切込線がその2本の対角線の交点に向いていることまでを要件とするものではなく、切込線が長辺から離れる方向に向かって延在し、かつ、切込線が長辺の端部を通る場合には底面の短辺に沿っていなければ、この要件は満たされる。
【0011】
請求項1に係る発明によれば、切込みの形成を容易とする切込線が底面の長辺から中心部に向けて設けられ、使用者は、その切込線により切込みを形成した上で底上げすることができるので、底上げ時に長側面とともに折り込まなければならない底面の長さが切込みにより分断・短縮され、底面を押し込むための使用者の左右の親指は、分断・短縮された中での両端位置において底面又は長側面に力を作用させる。よって、使用者の左右の親指による押込力の作用点が、切込線により接近することになり、たとえ底面の長さ寸法が底上げ前は大きくても、容易に底上げすることができる。
【0012】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の収納箱において、前記切込線が、前記長側面から前記底面にかけて設けられていることを特徴とする。
【0013】
請求項2に係る発明によれば、切込線が長側面から底面にかけて設けられているので、切込線により形成される切込みが長辺を横切る。よって、底上げ時に折り込まなければならない長側面の長さが底面の長さと同様に切込みにより分断・短縮され、長側面と底面が交わってなる稜線周辺の剛性も低下するので、底上げが容易となる。
【0014】
請求項3に係る発明は、請求項1に記載の収納箱において、前記切込線が、前記長辺の端部から前記底面の中心部に向けて設けられ、前記長辺の端部から前記長側面と前記短側面との交線に沿って、及び、前記長辺の端部から前記底面と前記長側面又は前記短側面との交線に沿って、切込みの形成を容易とする補助切込線が設けられ、前記切込線及び前記補助切込線により切込みが形成され、該切込みを外縁として前記底面及び前記長側面又は前記短側面に形成される折込片が前記中空内部の側又は外側に折り込まれ、前記一対の長側面及び前記一対の短側面の下部が前記底面との交線に略平行な直線に沿って前記中空内部の側に折り込まれ、前記底面が前記天面に向けて押し上げられることによって、前記底面が底上げ可能であることを特徴とする。
【0015】
請求項3に係る発明によれば、切込線が長辺の端部から底面の中心部に向けて設けられているので、底上げ時に折り込まなければならない底面の長さ、すなわち、底上げ時の左右の親指による押込力の作用点間距離が、切込線が中心部に向かい短辺から離れる分だけ小さくなる。また、長辺の端部から長側面と短側面との交線に沿って、及び、長辺の端部から底面と長側面又は短側面との交線に沿って、切込みの形成を容易とする補助切込線が設けられ、切込線及び補助切込線による切込みを外縁として折込片が形成されるので、底上げ時には、その折込片を中空内部の側又は収納箱の外側に折り込むことにより、底面、長側面及び短側面が集まる長辺の端部(底面の角部)周辺の剛性を低下させることができ、底上げが容易となる。
【0016】
請求項4に係る発明は、請求項1に記載の収納箱において、前記切込線が、前記長側面から前記底面にかけて設けられるとともに、前記長辺の端部から前記底面の中心部に向けて設けられ、前記長辺の端部から前記長側面と前記短側面との交線に沿って、及び、前記長辺の端部から前記底面と前記長側面又は前記短側面との交線に沿って、切込みの形成を容易とする補助切込線が設けられ、前記切込線及び前記補助切込線により切込みが形成され、該切込みを外縁として前記底面及び前記長側面又は前記短側面に形成される折込片が前記中空内部の側又は外側に折り込まれ、前記一対の長側面及び前記一対の短側面の下部が前記底面との交線に略平行な直線に沿って前記中空内部の側に折り込まれ、前記底面が前記天面に向けて押し上げられることによって、前記底面が底上げ可能であることを特徴とする。
【0017】
請求項4に係る発明によれば、請求項2に係る発明及び請求項3に係る発明の作用が兼備され、底上げが容易となる。
【0018】
請求項5に係る発明は、請求項3又は請求項4に記載の収納箱において、前記切込線が、前記底面の一対の長辺の両端部それぞれから前記底面の中心部に向けて設けられて4つの角部切込線を構成し、折込みを容易とする折込線が、前記4つの角部切込線を構成する切込線のうち隣接するもの同士について、その底面の中心部側の端部を結ぶように設けられていることを特徴とする。
【0019】
請求項5に係る発明によれば、折込みを容易とする折込線が、4つの角部切込線を構成する切込線のうち隣接するもの同士について、その底面の中心部側の端部を結ぶように設けられているので、使用者は底面についての折込作業を折込線に沿って行えばよく、底上げが容易となる。
【0020】
請求項6に係る発明は、請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の収納箱において、折込みを容易とする折込線が、前記一対の長側面及び前記一対の短側面においてそれらと前記底面との交線に略平行に設けられていることを特徴とする。
【0021】
請求項6に係る発明によれば、折込みを容易とする折込線が、一対の長側面及び一対の短側面においてそれらと底面との交線に略平行に設けられているので、使用者は長側面及び短側面についての折込作業を折込線に沿って行えばよく、底上げが容易となる。
【0022】
請求項7に係る発明は、請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の収納箱において、切込みの形成を容易とする補助切込線が、前記長辺の端部から前記長側面の中心部に向けて設けられていることを特徴とする。ここで、「長側面の中心部」とは、長側面において2本の対角線が交差する点を含む広がりをもった領域を意味し、「長側面の中心部に向けて」とは、補助切込線がその2本の対角線の交点に向いていることまでを要件とするものではなく、補助切込線が長側面において底面の長辺から離れる方向に向かって延在し、かつ、長側面と短側面との交線に沿っていなければ、この要件は満たされる。
【0023】
請求項7に係る発明によれば、切込みの形成を容易とする補助切込線が、前記長辺の端部から前記長側面の中心部に向けて設けられているので、底上げ時に折り込まなければならない長側面の長さが、補助切込線が長側面と短側面との交線から離れる分だけ小さくなる。特に、切込線が長辺の端部から底面の中心部に向けて設けられている場合には、底上げ時に折り込まなければならない底面の長さも小さくなるので、長側面及び底面の折込箇所の短縮化が相俟って底上げが極めて容易となる。
【0024】
請求項8に係る発明は、請求項1に記載の収納箱において、前記切込線が、前記長辺の端部から前記底面の中心部に向けて設けられ、前記長辺の端部から前記長側面と前記短側面との交線に沿って、切込みの形成を容易とする補助切込線が設けられるとともに、折込みを容易とする折込線が、前記一対の長側面及び前記一対の短側面においてそれらと前記底面との交線と略平行に、かつ、前記底面において前記各交線と略平行に、それぞれ設けられており、前記各折込線に沿って、前記一対の長側面及び前記一対の短側面の下部が前記中空内部の側に折り込まれることを特徴とする。
【0025】
請求項8に係る発明によれば、前記切込線及び前記補助切込線により切込みが形成され、当該切込みが離間することにより、底面を容易に凸条に変形させた後に、さらに、底面を凹状に変形させることができるため、二段階の作業で容易に底上げをすることができることになる。
【0026】
また、折込みを容易とする折込線が、一対の長側面及び一対の短側面においてそれらと底面との交線に略平行となるように設けられており、かつ、前記底面において前記各交線と略平行となるように、他の折込線が設けられているため、使用者は長側面及び短側面についての折込作業と、底面についての折込作業を各折込線に沿って行えばよいことから、底上げを容易に行うことができる。
【0027】
請求項9に係る発明によれば、請求項8に記載の収納箱において、前記折込線は、裏面側から見て凹状となるように設けられていることを特徴としている。ここで、裏面側とは、収納箱におけるティッシュペーパーが収納される内部側の面をいう。
【0028】
請求項9に係る発明によれば、前記折込線は、裏面側から見て凹状となるように設けられているため、底面、長側面及び短側面の折り込みを容易に行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、底面の長さ寸法が大きい場合にも、収納箱を容易に底上げすることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】発明を実施するための形態(第1実施形態)に係る収納箱を上方側から見た斜視図である。
【図2】図1の収納箱を下方側から見た斜視図である。
【図3】図1の収納箱を組み立てるためのシート材の平面図である。
【図4】図1の収納箱の底上げ時に切込線により切込みを形成した状態を示す説明図である。
【図5】図1の収納箱の底上げ時に切込みを外縁とする折込片を折り込んだ状態を示す説明図である。
【図6】図1の収納箱の底上げ時に使用者が左右の親指で力を加えている状態を示す説明図である。
【図7】図1の収納箱が底上げされた状態を示す斜視図である。
【図8】発明を実施するための形態に係る収納箱の他の例(第2実施形態)を示す斜視図である。
【図9】図8の収納箱を組み立てるためのシート材の平面図である。
【図10】図8の収納箱の底上げ時の第一段階の状態を示す斜視図である。
【図11】図8の収納箱の底上げ時の第二段階の状態を示す斜視図である。
【図12】図11に続く状態を示す斜視図である。
【図13】図12に続く状態を示す斜視図である。
【図14】発明を実施するための形態に係る収納箱の他の例(第3実施形態)を示す斜視図である。
【図15】図14の収納箱を組み立てるためのシート材の平面図である。
【図16】発明を実施するための形態に係る収納箱のさらに他の例(第4実施形態)を示す斜視図である。
【図17】図16の収納箱を組み立てるためのシート材の平面図である。
【図18】図17のシート材の変形例である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明を実施するための形態について、図面を用いて説明する。なお、各実施形態の説明において、同一の構成要素に関しては同一の符号を付し、重複した説明は省略する。
【0032】
(第1実施形態)
図1及び図2に示すように、本実施の形態(第1実施形態)に係る収納箱1は、紙製で中空の直方体状を呈し、その中空内部S(図7参照)にはシート状収納物としてのティッシュペーパーTが積層状態で収納される。
【0033】
この収納箱1は、長方形状の天面2及び底面3と、天面2及び底面3とそれらの長辺2a,3aで交わる一対の長側面4と、天面2及び底面3とそれらの短辺2b,3bで交わる一対の短側面5とを備える。天面2には、ティッシュペーパーTの取出口6が形成されている。
【0034】
長側面4及び短側面5には、底上げ時における折込みを容易とするための裏面側から見て凹状にプレス加工された折込線7,8が、長側面4及び短側面5と底面3との交線(長辺3a、短辺3b)に略平行に設けられている。
【0035】
長側面4から底面3にかけては、収納箱1の長さ方向(長辺2a,3aに沿う方向:図1におけるX方向)の略中央に位置するように、底上げ時における切込みの形成を容易とするためのミシン目状に加工された切込線9が設けられている。切込線9は、中間点9aにおいて長辺3aと直交してこれを横切る。切込線9の長側面4における端部9bは折込線7上にあり、切込線9の端部9bと反対側の端部9cは、中間点9aから端部9bまでの距離と中間点9aから端部9cまでの距離とが等しくなるように、底面3上に位置している。
【0036】
底面3には、長辺3a,3aの各両端部3c,3cから中心部3dに向けて、切込線9と同様にミシン目状に加工された4つの切込線(角部切込線)10が設けられている。各切込線10が長辺3a及び短辺3bとなす角度は、それぞれ45°である。なお、中心部3dは、底面3において2本の対角線が交差する点3eを含む広がりをもった領域であり、例えば次述の折込線11,12に囲まれた領域全体を中心部3dとしてもよい。
【0037】
また、底面3には、折込線7,8と同様に、裏面側から見て凹状にプレス加工された折込線11,12が設けられている。折込線11は、切込線9の端部9cを通ってX方向に延在し、その両端が切込線10の中心部3d側の端部10aと一致する。折込線12は、切込線10の端部10aを通って収納箱1の幅方向(短辺2b,3bに沿う方向:図1におけるY方向)に延在し、その両端が長辺3aとの交点3fである。
【0038】
底面3の角に当たる長辺3aの端部3cからは、切込線9,10と同様にミシン目状に加工された補助切込線13が、長側面4と短側面5との交線に沿って、折込線7の折込線8との衝合点7aまで延設されている。さらに、端部3cからは、切込線9,10及び補助切込線13と同様にミシン目状に加工された補助切込線14が、底面3と長側面4との交線である長辺3aに沿って、交点3fまで延設されている。衝合点7aと交点3fとの間には、折込線7,8,11,12と同様に凹状にプレス加工された折込線15が設けられている。
【0039】
収納箱1の生産に供する紙製のシート材は、例えば図3に示すように加工されている(同図において、図1及び図2の各所と対応する箇所には同一の符号を付して説明を省略する。)。このシート材16は、収納箱1の展開図様のもので、これに対して所定の手順で折曲げ及び貼着を行うことにより収納箱1になる。
【0040】
シート材16では、長側面4、天面2、長側面4、底面3及び貼代17がこの順で連設され、これらを区画する長辺2a,3aは凹状にプレス加工されている。
【0041】
また、天面2の長さ方向の両端部に隣接して短側面上片18,18が形成され、底面3の長さ方向の両端部に隣接して短側面下片19,19が形成され、短側面下片19,19の先端には貼代20,20が設けられている。天面2と短側面上片18とを区画する短辺2b、及び、底面3と短側面下片19とを区画する短辺3bは、凹状にプレス加工されている。
【0042】
さらに、長側面4の長さ方向の両端部には、これに隣接して耳部21,21が形成されている。長側面4と耳部21との境界には、凹状にプレス加工された折込線22及び補助切込線13が設けられている。
【0043】
このシート材16を組み立てて収納箱1とするには、まず、長辺2a,3aを山折りし、貼代17に糊付けしてこれを図3における上方の長側面4の裏面に貼着する。なお、貼代17には、その長側面4における折込線15と重なり合う位置に、凹状にプレス加工された折込線23が形成されており、後述する底上げ時に、その折込線15の折込みが阻害されないようになっている。
【0044】
次に、天面2、底面3及び2つの長側面4で囲まれた中空内部にティッシュペーパーTを入れ、折込線22を山折りして耳部21を内方に折り曲げる。
【0045】
続いて、短辺3bを山折りして短側面下片19を上方に折り曲げ、短辺2bを山折りして短側面上片18を下方に折り曲げ、貼代20に糊付けした上でこれを短側面上片18の裏面に貼着する。これにより、短側面5が形成され、収納箱1が完成する。
【0046】
この収納箱1において、ティッシュペーパーTの残量が少なくなった場合には、使用者は、ティッシュペーパーTを取り出しやすくするために、底上げをすればよい。
【0047】
この底上げ時の手順は、まず、図4に示すように、切込線9,10及び補助切込線13,14のすべてについてミシン目を破断し、切込みを形成する(切込みには、対応する切込線と同一の符号を付す。)。
【0048】
次に、図5に示すように、切込み13,14を外縁として形成される三角形状の折込片24を、折込線15を山折りして収納箱1の内側に折り込むとともに、切込み10,14を外縁として形成される三角形状の折込片25を、折込線12を山折りして収納箱1の内側に折り込む。
【0049】
そして、図6に示すように、左右の親指F,Fを、長辺3a上の交点3fと中間点9a(ここでは、中間点9aは、切込み9の中間点とする。)との間でなるべく離間した位置(一方の指を交点3fの近く、他方の指を中間点9aの近く)に当て、そこに押込力を加える。すると、その交点3fと中間点9aとの間の部分が、折込線7,8が山折りとなるように、かつ、長辺3a、短辺3b及び折込線11,12が谷折りとなるように変形するので、このような押込みをその長辺3aの残り半分及びもう一方の長辺3aについて順次行う。
【0050】
以上の手順により、図7に示すように、長側面4及び短側面5の下部4a,5aが折込線7,8に沿って中空内部Sの側に折り込まれ、底面3は略全面的に底上げされ、積層状態にあるティッシュペーパーTは全体的に取出口6に接近するので、その取出しが容易となる。
【0051】
この実施の形態に係る収納箱1によれば、切込みの形成を容易とする切込線9,10が底面3の長辺3aから中心部3dに向けて設けられ、使用者は、その切込線9,10により切込み9,10を形成した上で底上げすることができるので、底上げ時に長側面4とともに折り込まなければならない底面3の長さが、切込み9,10によりLからL(図2参照)に分断・短縮され、使用者の左右の親指F,Fは、分断・短縮された中での両端位置において底面3又は長側面4に押込力を作用させる。
【0052】
詳細には、切込線10が長辺3aの端部3cから底面3の中心部3dに向けて設けられているので、底上げ時に折り込まなければならない底面3の長さ、すなわち、底上げ時の左右の親指F,Fによる押込力の作用点間距離は、切込線10が中心部3dに向かい短辺3bから離れる分(端部3cと交点3fとの離間距離分)だけ小さくなる。その上、ここでは切込線9が長側面4から底面3にかけて設けられ、切込線9により形成される切込み9が長辺3aを横切る。よって、底上げ時に折り込まなければならない長側面4の長さが底面3の長さと同様に切込み9により分断・短縮され、長側面4と底面3が交わってなる稜線周辺の剛性も低下する。
【0053】
さらに、長辺3aの端部3cから長側面4と短側面5との交線(折込線22)に沿って衝合点7aまで、及び、長辺3aの端部3cから底面3と長側面4との交線(長辺3a)に沿って交点3fまで、切込みの形成を容易とする補助切込線13,14が設けられ、切込線10及び補助切込線13,14による切込み10,13,14を外縁として折込片24,25が形成されるので、底上げ時には、その折込片24,25を中空内部Sの側に折り込むことにより、底面3、長側面4及び短側面5が集まる長辺3aの端部3c(底面3の角部)周辺の剛性を低下させることができる。
【0054】
したがって、収納箱1は、切込線9,10により押込力の作用点間距離の分断・短縮が図られるとともに長側面4と底面3が交わってなる稜線周辺の剛性低下も図られ、加えて、補助切込線13,14により底面3の角部周辺の剛性低下も図られることによって、底上げが容易となっている。
【0055】
また、収納箱1では、折込みを容易とする折込線7,8が、長側面4及び短側面5においてそれらと底面3との交線に略平行に設けられ、折込線11,12が、4つの切込線10のうち隣接するもの同士について、その底面3の中心部3d側の端部10aを結ぶように設けられ、折込線15が、折込片24について設けられているので、底面3、長側面4、短側面5及び折込片24,25の折込みが容易で、底上げの容易性を高めている。
【0056】
なお、折込片24,25の折込みについては、強い力を加えてしっかり行うのではなく軽く行えばよい。こうすることにより、底上げの完了時には紙の復元力も作用してそれらの折込みにより生じた開口が塞がれるような状態となり(図7参照)、例えばティッシュペーパーTが保湿性を有するものである場合に、開口を通じた通気を防止して乾燥を抑制することができる。
【0057】
(第2実施形態)
図8は、実施の形態の他の例(第2実施形態)としての収納箱1’を示しており、図9は、当該収納箱1’の生産に供する紙製のシート材16’を示している。
【0058】
本実施の形態の収納箱1’は、以下の点を除き、第1実施形態の収納箱1とほぼ同様の構成である。すなわち、収納箱1における各長側面4から底面3にかけて、同収納箱1の長さ方向の略中央に位置するように設けられている切込線9と、長辺3aの端部3cから、底面3と長側面4との交線である長辺3aに沿って設けられている補助切込線14が、第2実施形態の収納箱1’では存在していない点が異なっている。
【0059】
したがって、底面3には、長辺3a,3aの各両端部3c,3cから中心部3dに向けて、切込線9と同様にミシン目状に加工された4本の切込線(角部切込線)10が設けられているとともに、長辺3a,3aの各両端部3c,3cを起点として長側面4と短側面5の交線に沿って補助切込線13が設けられている。なお、この場合の補助切込線13は、長辺3aのやや中央部側となるように、短辺3bと平行となるように形成されていれば、切込線10と干渉しないため、折り込みをしやすくなるため好適である。
【0060】
また、折込みを容易とするために、裏面側から見て凹状にプレス加工された折込線7,8が、長側面4及び短側面5においてそれらと底面3との交線である長辺3a及び短辺3bと略平行になるように設けられている。底面3には、折込線7,8と同様に、裏面側から見て凹状にプレス加工された折込線11,12が、底面3と、長側面4及び短側面5との各交線である長辺3a及び短辺3bと略平行になるように設けられている。
【0061】
続いて、本実施の形態における収納箱1’の使用法について説明する。
【0062】
図10に示すように、左右の親指(図示せず)を、各長辺3aの略中間点に当て、そこに押込力を加えて、折込線7,8,11,12が表面側から見て山折りとなり、かつ、長辺3a、短辺3bが表面側から見て谷折りとなるように、すなわち、底面3が凸状となるように変形させる。そして、図11に示すように、左右の親指(図示せず)を各短辺3bの略中間点に当て、そこに押込力を加え、折込線7,8が山折りとなり、長辺3a、短辺3bがそれぞれ長側面4及び短側面5に当接するとともに、折込線11,12が底面3に対して略フラットとなるように、底面3を凹状に変形させる(図12,図13)。
【0063】
このような二段階の手順により、第1実施形態の収納箱1と同様に、長側面4及び短側面5の下部4a,5aが折込線7,8を境に中空内部Sの側に折り込まれ、長側面4及び短側面5の壁面に当接することによって、当該折込線7,8が新たな長辺及び短辺となるように変形することになる。これにより、底面3は略全面的に底上げされ、積層状態にあるティッシュペーパーTは全体的に取出口6に接近するので、その取出しが容易となる。
【0064】
この実施の形態に係る収納箱1’によれば、まず底面3の両長辺3aに押込力を加えることにより、底面3が容易に凸条に変形することになる。このとき、切込みの形成を容易とする切込線10と補助切込線13が設けられており、また、底面3に折込線11,12が設けられているため、当該切込線10及び補助切込線13により形成されている切込部分が離間し、当該折込線11、12に沿って、長側面4及び底面3の長辺3aを容易に変形させることができる。そして、その後に、短側面5及び底面3の短辺3bに押込力を加え、底面3の凸部を下方に押し込むことによって、折込線11,12が底面3に対して略フラットとなるように、底面3を凹状に変形させることができる。このように、二段階の作業で容易に収納箱1’を底上げすることができることになる。
【0065】
なお、折込線7,8,11,12は、事前のプレス加工により、裏面側から見て凹状となるように加工されているため、裏面側から谷折りとなるように容易に折り込み変形させることができる。
【0066】
(第3実施形態)
図14は、実施の形態の他の例(第3実施形態)として収納箱26を示し、図15は、その生産に供するシート材27を示す。収納箱26は、収納箱1と略同様の構成を有するが、切込線10の代わりに補助切込線13,14と同一長さの補助切込線28が端部3cから短辺3bに沿って設けられ、かつ、この補助切込線28の端部28aと交点3fとの間に凹状にプレス加工された折込線29が設けられている点が異なる。収納箱26の底上げ時には、折込片25の代わりに、切込線14,28により形成される切込み14,28を外縁とする三角形状の折込片30が折り込まれる。
【0067】
この収納箱26では、底上げ時に折り込まれなければならない底面3の長さが、切込み9によりLからL(図14参照)に分断・短縮される。
【0068】
(第4実施形態)
図16は、実施の形態のさらに他の例(第4実施形態)として収納箱31を示し、図17は、その生産に供するシート材32を示す。シート材32は、シート材16の折込線15に代えてミシン目状に加工された補助切込線33が設けられたもので、補助切込線33は、長辺3aに対して切込線10と線対称な形状を呈する。すなわち、補助切込線33は、長辺3aの端部3cから長側面4の中心部4b(長側面4において2本の対角線が交差する点を含む広がりをもった領域)に向けて設けられ、補助切込線33の端部33aは折込線7上に位置する。収納箱31の底上げ時には、補助切込線33のミシン目を破断して切込み33を形成し、切込み13,33で囲まれた三角形状の折込片を折り込めばよい。
【0069】
この収納箱31では、底上げ時に折り込まなければならない長側面4の下部4aの折込線7に沿った長さ(2つの端部33a,33aで区画される折込線7の長さ)が、補助切込線33が長側面4と短側面5との交線から離れる分(L/2−L)だけ小さくなる。ここでは、特に、切込線10が長辺3aの端部3cから底面3の中心部3dに向けて設けられており、底上げ時に折り込まなければならない底面3の折込線11に沿った長さも小さくなるので、長側面4及び底面3の折込箇所(折込線7,11で挟まれた領域)の短縮化が相俟って底上げが極めて容易となる。
【0070】
なお、図18に示すように、補助切込線33を設けた際に、補助切込線13を廃してもかまわない。この場合、長側面4において、切込み33により分断されて短側面5側に残る三角形状の部分(上記切込み13,33で囲まれた三角形状の折込片に対応する部分)は、短側面5の下部5aとともに折り込まれる。
【0071】
以上、本発明を実施するための形態について例示したが、本発明の実施形態は上述したものに限られず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更等してもよい。
【0072】
例えば、収納箱は、切込線の形成や長側面及び短側面の折込み、底面の押上げを可能とするものであればどのようなものでもよく、その材質を紙ではなく薄いプラスチックとしてもよい。
【0073】
また、切込線9を底面3及び長側面4の長手方向に沿って1箇所のみに設けるのではなく、2箇所以上に設けてもよいし、補助切込線14を長辺3aの端部3cから底面3と長側面4との交線に沿って設けるのではなく、底面3と短側面5との交線に沿って設けてもよい。
【0074】
さらに、底上げ時に折込片を収納箱の内側ではなく外側に折り込んでもよいが、中空内部の側に折り曲げた方が長側面の裏面に押し戻される等して開口を塞ぐように復元しやすい場合には、その方が密閉性を保つ(通気性を抑える)上では望ましいことは上記のとおりである。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明は、積層状態のシート状の収納物で、上層のシートから順次取り出されて残量が減っていくものを収納する場合であれば、用途を問わず利用することができる。
【符号の説明】
【0076】
1,1’,26,31 収納箱
2 天面
2a (天面の)長辺
3 底面
3a (底面の)長辺
3c (長辺の)端部
3d (底面の)中心部
4 長側面
4a (長側面の)下部
4b (長側面の)中心部
5 短側面
5a (短側面の)下部
6 取出口
7,8 折込線
9 切込線
10 切込線(角部切込線)
11,12 折込線
13,14,28 補助切込線
24,25,30 折込片
33 補助切込線
S 中空内部
T ティッシュペーパー(シート状収納物)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空の直方体状を呈し、長方形状の天面及び底面と、前記天面及び前記底面とそれらの長辺で交わる一対の長側面と、前記天面及び前記底面とそれらの短辺で交わる一対の短側面とを備え、中空内部にシート状収納物が積層状態で収納されるとともに、前記天面に前記シート状収納物の取出口が形成された収納箱であって、
切込みの形成を容易とする切込線が、前記底面の長辺から前記底面の中心部に向けて設けられ、
前記切込線により切込みが形成され、前記一対の長側面及び前記一対の短側面の下部が前記底面との交線に略平行な直線に沿って前記中空内部の側に折り込まれ、前記底面が前記天面に向けて押し上げられることによって、前記底面が底上げ可能であることを特徴とする収納箱。
【請求項2】
前記切込線が、前記長側面から前記底面にかけて設けられていることを特徴とする請求項1に記載の収納箱。
【請求項3】
前記切込線が、前記長辺の端部から前記底面の中心部に向けて設けられ、
前記長辺の端部から前記長側面と前記短側面との交線に沿って、及び、前記長辺の端部から前記底面と前記長側面又は前記短側面との交線に沿って、切込みの形成を容易とする補助切込線が設けられ、
前記切込線及び前記補助切込線により切込みが形成され、該切込みを外縁として前記底面及び前記長側面又は前記短側面に形成される折込片が前記中空内部の側又は外側に折り込まれ、前記一対の長側面及び前記一対の短側面の下部が前記底面との交線に略平行な直線に沿って前記中空内部の側に折り込まれ、前記底面が前記天面に向けて押し上げられることによって、前記底面が底上げ可能であることを特徴とする請求項1に記載の収納箱。
【請求項4】
前記切込線が、前記長側面から前記底面にかけて設けられるとともに、前記長辺の端部から前記底面の中心部に向けて設けられ、
前記長辺の端部から前記長側面と前記短側面との交線に沿って、及び、前記長辺の端部から前記底面と前記長側面又は前記短側面との交線に沿って、切込みの形成を容易とする補助切込線が設けられ、
前記切込線及び前記補助切込線により切込みが形成され、該切込みを外縁として前記底面及び前記長側面又は前記短側面に形成される折込片が前記中空内部の側又は外側に折り込まれ、前記一対の長側面及び前記一対の短側面の下部が前記底面との交線に略平行な直線に沿って前記中空内部の側に折り込まれ、前記底面が前記天面に向けて押し上げられることによって、前記底面が底上げ可能であることを特徴とする請求項1に記載の収納箱。
【請求項5】
前記切込線が、前記底面の一対の長辺の両端部それぞれから前記底面の中心部に向けて設けられて4つの角部切込線を構成し、
折込みを容易とする折込線が、前記4つの角部切込線を構成する切込線のうち隣接するもの同士について、その底面の中心部側の端部を結ぶように設けられていることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の収納箱。
【請求項6】
折込みを容易とする折込線が、前記一対の長側面及び前記一対の短側面においてそれらと前記底面との交線に略平行に設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の収納箱。
【請求項7】
切込みの形成を容易とする補助切込線が、前記長辺の端部から前記長側面の中心部に向けて設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の収納箱。
【請求項8】
前記切込線が、前記長辺の端部から前記底面の中心部に向けて設けられ、
前記長辺の端部から前記長側面と前記短側面との交線に沿って、切込みの形成を容易とする補助切込線が設けられるとともに、
折込みを容易とする折込線が、前記一対の長側面及び前記一対の短側面においてそれらと前記底面との交線と略平行に、かつ、前記底面において前記各交線と略平行に、それぞれ設けられており
前記折込線に沿って、前記一対の長側面及び前記一対の短側面の下部が前記中空内部の側に折り込まれることを特徴とする請求項1に記載の収納箱。
【請求項9】
前記折込線は、裏面側から見て凹状となるように設けられていることを特徴とする請求項8に記載の収納箱。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2011−148545(P2011−148545A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−44768(P2010−44768)
【出願日】平成22年3月1日(2010.3.1)
【出願人】(000148977)株式会社大貴 (43)
【Fターム(参考)】