説明

収納装置

【課題】無線タグが取り付けられる物品を収納箱内に収納した場合でも、空気中に置かれた場合と同様に良好なタグ特性が得られるようにする。
【解決手段】蓋体5によって開閉される収納箱2を有し、ICチップとタグアンテナからなる無線タグ4を取り付ける物品3を収納箱2内に収納する収納装置であって、収納箱2内に設けられ、収納箱2内に収納された物品3の無線タグ4のタグアンテナに対し容量性結合し、タグアンテナの周波数特性を可変する補助アンテナ17を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RFID(Radio Frequency Identification)タグなどの無線タグを取り付ける管理媒体の収納装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、無線を利用して非接触で無線IDの読み出し等ができる無線タグが、物品や配送物などの管理媒体に取り付けられて物流管理に利用されている。
【0003】
ところで、無線タグを取り付けた管理媒体は、蓋体によって開閉自在に閉じられるトランク(収納箱)内に収納されて運搬され、トランク(収納箱)内に収納されたままの状態でその無線タグが無線タグ読取装置によって読み取られることがある。
【0004】
一般に、管理媒体に取り付けられる無線タグのアンテナはその長さにより周波数が決まり、所定の周波数に共振するようにチューニングされており、管理媒体が空気中に置かれた場合には、無線タグが最適に機能するようになっている。
【0005】
このように管理媒体の無線タグが空気中に置かれた場合には、問題はないが、トランク(収納箱)内に収納された場合には、トランクの影響を受けて無線タグのアンテナの周波数特性が変化し、無線タグが最適に機能しなくなるという不都合がある。
【0006】
そこで、従来おいては、無線タグ読取装置側のアンテナの電力にマージンを持たせて無線タグを良好に機能させるようにしている(例えば、特許文献1参照。)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、無線タグ読取装置側のアンテナの電力にマージンを持たせる方法では、制御が難しく、無線タグのタグアンテナの周波数特性を可変することが困難なものとなっていた。
【特許文献1】特開2006−270813号公報 本発明は上記事情によりなされたもので、無線タグを取り付ける管理媒体を収納箱内に収納した場合でも、タグアンテナの周波数特性を可変して空気中に置かれた場合と同様なタグ特性を容易に得られるようにした管理媒体用の収納装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の管理媒体の収納装置は、蓋体によって開閉される収納箱を有し、ICチップとタグアンテナからなる無線タグを取り付ける管理媒体を前記収納箱内に収納する収納装置であって、前記収納箱内に設けられ、前記収納箱内に収納された前記管理媒体の無線タグのタグアンテナに対し容量性結合し、前記タグアンテナの周波数特性を可変する補助アンテナを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、無線タグを取り付ける管理媒体を収納箱内に収納した場合でも、タグアンテナの周波数特性を可変して空気中に置かれた場合と同様なタグ特性を容易に得られるようにした収納装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
【0011】
図1は本発明の一実施の形態であるトランクなどの収納装置1を示す斜視図で、図2はその側断面図で、図3は正断面図である。
【0012】
収納装置1は収納箱2を備え、この収納箱2の上面開口部は蓋体5によって開閉されるようになっている。収納箱2内には管理媒体としての物品3が複数個並列に収納されている。複数個の物品3の上面部には、無線タグ4が貼り付けられている。
【0013】
図5は上記した無線タグ4を無線タグ読取装置6によって読み取る読取システムの構成を示すブロック図である。
【0014】
無線タグ4はICチップ11と電波を受けるタグアンテナ12を有し、ICチップ11とタグアンテナ12とは互いに接続されている。ICチップ11は通信制御を行う無線通信部13とデータを格納する記憶部14を含んでいる。
【0015】
無線タグ読取装置6は、送受信を制御する送受信部7とこの送受信部7を制御する制御部8を有し、送受信部7は同軸ケーブル9を介して無線タグ4のアンテナ12との間で電波の送受信を行うアンテナ10に接続されている。
【0016】
このシステムにおいて無線タグ読取装置6から物品3の無線タグ4に送信データを送る場合は、まず、無線タグ読取装置6の制御部8から送信データが送受信部7に伝達される。送受信部7では、送信データを変調して高周波信号に変換し、同軸ケーブル9に出力する。同軸ケーブル9に出力された高周波信号は、アンテナ10から無線信号として空間に放射される。
【0017】
放射された無線信号は、物品3の無線タグ4のアンテナ12によって受信され、高周波信号としてICチップ11に伝達される。ICチップ11は無線通信部13で受信した高周波信号を復調してデータに戻し、データを記憶部14に記憶するとともにデータの内容に従った処理を行う。
【0018】
また、無線タグ4から無線タグ読取装置6に応答データを送り返す場合は、ICチップ4の無線通信部13からアンテナ12に応答データを変調した高周波信号が伝達され、アンテナ12から無線信号として空間に放射される。空間に放射された無線信号は、無線タグ読取装置6のアンテナ10によって受信され、高周波信号として同軸ケーブル9を介して送受信部7に伝達される。送受信部7は受信した高周波信号を復調し、復調した応答データを制御部8に伝達する。
【0019】
このようにして、無線タグ読取装置6は無線タグ4と無線通信を行い、無線タグ4の記憶部14に記憶しているデータを取得し、また、無線タグ4の記憶部14にデータを記憶させることができる。
【0020】
ところで、上記したタグアンテナ12の長さは、ICチップ11とタグアンテナ12の整合が空気中で良好となる長さに設定されている。すなわち、物品3が収納箱2から取り出されて外部に置かれ、物品3の近傍に空気以外の物質が無い状態で良好な整合特性が得られるようになっている。
【0021】
ICチップ11とタグアンテナ12の整合特性が良好であるということは、タグアンテナ12からICチップ11へ電力を効率よく伝達できることになり、これにより、無線タグ4と無線タグ読取装置6のアンテナ10との通信距離を長くすることが可能になる。
【0022】
このように物品3が外部に置かれた場合には、その無線タグ4は良好に機能するが、物品3が収納箱2内に収納されて蓋体5が閉じられた場合には、無線タグ1に送信される電波が収納箱2及び蓋体5の影響を受けて良好に機能しなくなる。
【0023】
即ち、電波は誘電率の高い物質の中では波長が短くなる。
【0024】
また、誘電率が同じ物質で厚さが異なるものをアンテナから同じ距離に置いたときには、厚さが厚いものほどアンテナの共振周波数を低くする傾向がある。さらに、同じ物質であっても、アンテナに近づけるほどアンテナの共振周波数を低くする傾向がある。そのため、実際に無線タグ4を使用する際に近接する収納箱2及び蓋体5の誘電率や厚さや予想されるアンテナとの距離により、アンテナの長さを決定することが望ましい。
【0025】
そこで、この実施の形態では、上記した収納箱2の蓋体5の内面側に、図1〜図3に示すように、複数個の補助アンテナ17を配設している。補助アンテナ17は、上記した複数個の物品3の無線タグ4のタグアンテナ12に対応してそれぞれ配置されている。収納箱2の蓋体5が閉じられると、図3に示すように、補助アンテナ17と無線タグ4とが重ね合わされ、図4に示すように無線タグ4のタグアンテナ12に対して補助アンテナ17が接触、若しくは非接触で結合、即ち、容量性結合するようになっている。そして、タグアンテナ12と補助アンテナ17とを接触して結合した場合には、無線タグ4のタグアンテナ12と蓋体5の補助アンテナ17の合計した長さは収納箱2及び蓋体5を伝搬する電波の波長に合う長さにされている。
【0026】
このようにタグアンテナ12と補助アンテナ17とを接触して結合した場合には、無線タグ4のタグアンテナ12と蓋体5の補助アンテナ17の合計した長さを、収納箱2及び蓋体5を伝搬する電波の波長に合う長さとするため、ICチップ11とアンテナ(タグアンテナ12と補助アンテナ17とからなるアンテナ)との整合特性を良好にできる。
【0027】
従って、無線タグ4を取り付けた物品3が収納箱2内に収納されて蓋体5が閉じられた状態でも、無線タグ4のタグアンテナ12の周波数特性を可変でき、タグ性能を良好に維持できる。
【0028】
また、物品3が収納箱2から取り出されて外部に置かれた場合にも、上記したように、その無線タグ4は良好に機能する。
【0029】
即ち、この実施の形態によれば、無線タグ4を取り付けた物品3が収納箱2内に収納された場合でも、収納箱2から取り出された場合でも、それぞれ無線タグ4を良好に機能させることができる利点がある。
【0030】
また、収納箱2の蓋体5の内面側に補助アンテナ17を設けるため、収納箱2の蓋体5を閉じるだけで、物品3の無線タグ4と補助アンテナ17とを容易に容量性結合することが可能となる。
【0031】
また、収納箱2の蓋体5の内面側に複数個の補助アンテナ17を配設するため、収納箱2内に複数個の物品3が収納された場合でも、収納箱2の蓋体5を閉じるだけで、複数個の物品3の無線タグ4と複数個の補助アンテナ17とを容易に容量性結合させることができる。
【0032】
なお、上記収納箱2の内底面には図2及び図3に示すように、複数の位置決め部としての位置決め用の凹部2aが所定間隔を存して形成され、これら位置決め用の凹部2a内に物品3の下端部が嵌合されて位置決めされている。この位置決めにより、蓋体5が閉じられたときに物品3の無線タグ4とこの無線タグ4に対応する補助アンテナ17とを確実に接続できるようになっている。
【0033】
位置決め部としては、凹部2aに限られることなく、収納箱2の内底面に枠状の凸部や係合部を形成し、これら凸部や係合部によって物品3の下端部を嵌合して位置決め保持するようにしても良く、また、収納箱2の内底面に多数のフックを有するテープを設け、物品3の下面側に多数のパイルを有するテープを設け、これらテープのフックとパイルを噛み合わせて物品3を位置決め保持するようにしても良い。
【0034】
なお、この発明は、上述した実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上述した実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより種々の発明を形成できる。例えば、上述した実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除しても良い。更に、異なる実施の形態に亘る構成要素を適宜組み合わせても良い。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の一実施の形態である蓋体が開放された状態の収納装置を示す斜視図。
【図2】図1の収納装置の蓋体が閉じられる状態を示す側断面図。
【図3】図1の収納装置の蓋体が閉じられた状態を示す正断面図。
【図4】図3のタグアンテナと補助アンテナとが接続された状態を示す図。
【図5】図1の収納装置内に収納される物品の無線タグを読み取る読取システムを示すブロック図。
【符号の説明】
【0036】
1…収納装置、2…収納箱、2a…位置決め用凹部(位置決め部)、3…物品(管理媒体)、4…無線タグ、5…蓋体、11…ICチップ、12…タグアンテナ、17…補助アンテナ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓋体によって開閉される収納箱を有し、ICチップとタグアンテナからなる無線タグを取り付ける管理媒体を前記収納箱内に収納する収納装置であって、
前記収納箱内に設けられ、前記収納箱内に収納された前記管理媒体の無線タグのタグアンテナに対し容量性結合し、前記タグアンテナの周波数特性を可変する補助アンテナを備えたことを特徴とする収納装置。
【請求項2】
前記補助アンテナは、前記収納箱の蓋体の内面側に設けられたことを特徴とする請求項1記載の収納装置。
【請求項3】
前記補助アンテナは前記複数の管理媒体に対応して複数配設されることを特徴とする請求項1または2記載の収納装置。
【請求項4】
前記収納箱の内底面部に前記管理媒体を位置決めする位置決め部を形成したことを特徴とする請求項3記載の収納装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−73065(P2010−73065A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−241665(P2008−241665)
【出願日】平成20年9月19日(2008.9.19)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】