説明

取付用クリップ

【課題】幅の狭いU字状断面形態を有するダクト等への他の部材の取付に寄与する部品取付け用クリップ。
【解決手段】円筒状の形態からなるベース部1と、ベース部1を基礎にして下方へ向って垂直状に設けられる支柱部2と、支柱部2の下端部23のところから上方へ向ってV字状に開くように設けられるものであって所定の弾発力を有するように形成された2本の係合爪3、3と、ベース部1の上方部のところから左右にハ字状に開くように設けられるものであって所定の弾発力を有するように形成された抑え部6と、抑え部6の中央部のところから上方へ向って直立状に設けられるものであってTスタッド状の形態からなるとともに円盤状の平面形態を有するように形成された取付部5と、からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダクト等、U字状断面形態を有するものであって、特に、その幅の値が小さなものを他の部材に取付ける際に用いられる取付用クリップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、U字状断面形態を有するチャンネル状部材等を、基礎となる他の部材に取付けるに当っては、当該基礎となる部材の表面側にスタッドボルト等を溶接手段等を介して設けるとともに、このようなスタッドボルトのところに取付部材を装着し、更には、このような取付部材の上側から、上記スタッドボルトのネジ山のところに係合する係合爪の設けられたクリップを取付け、これによって、取付部材を上記基礎となる部材上に固定するようにしているものである。なお、このようなスタッドボルトを介しての取付方法に関しては、例えば特開2006−70975号公報記載のもの等が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−70975号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来のものは、上記クリップのスタッドボルトのところへの取付け(装着)に当っては、作業者が手指等にて上記クリップを摘んだ状態で、その装着作業(取付作業)が行なわれるようになっているものである。しかしながら、この取付作業において、場合によっては、幅の狭いチャンネル状部材等であって手指の挿入が困難であるような場合もある。そのような状況に対応するために、まず、スタッドボルト等を設ける必要の無いものであって、基礎となる部材と取付部材との両方に設けられた取付穴のところへ本取付用クリップを、一般的な6角レンチ等を用いた簡単な押込み操作をすることによって両者の結合等を行なわせることのできるようにした取付用クリップを提供しようとするのが、本発明の目的(課題)である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明においては次のような手段を講ずることとした。すなわち、請求項1記載の発明である第一の発明においては、所定の横断面形態を有する部材等への取付け等に用いられる取付用クリップに関して、円筒状の形態からなるベース部と、当該ベース部を基礎にして下方へ向って垂直状に設けられる支柱部と、当該支柱部の下端部のところから上方へ向ってV字状に開くように設けられるものであって所定の弾発力を有するように形成された2本の係合爪と、上記ベース部の上方部のところから左右にハ字状に開くように設けられるものであって所定の弾発力を有するように形成された抑え部と、当該抑え部の中央部のところから上方へ向って直立状に設けられるものであってTスタッド状の形態からなるとともに円盤状の平面形態を有するように形成された取付部と、からなるようにした構成を採ることとした。
【0006】
次に、請求項2記載の発明である第二の発明においては、請求項1記載の取付用クリップに関して、円盤状の平面形態からなる上記取付部を、その平面視において正六角形に内接する円と同等か、または、それよりも大きめの円形形態からなるようにした構成を採ることとした。
【0007】
次に、請求3記載の発明である第三の発明においては、所定の横断面形態を有する部材等への取付け等に用いられる取付用クリップに関して、円筒状の形態からなるベース部と、当該ベース部を基礎にして下方へ向って垂直状に設けられる支柱部と、当該支柱部の下端部のところから上方へ向ってV字状に開くように設けられるものであって所定の弾発力を有するように形成された2本の係合爪と、上記ベース部の上方部のところから左右にハ字状に開くように設けられるものであって所定の弾発力を有するように形成された抑え部と、当該抑え部の中央部のところであって、その上端面のところから上方へ向って左右対称形を成すように設けられるものであって、その各々の縦断面形状は逆L字状形態からなるとともに、その上端面のところが半円形状の平面形態を有するように形成された二つの取付部と、からなるようにした構成を採ることとした。
【0008】
次に、請求項4記載の発明である第四の発明においては、請求項3記載の取付用クリップに関して、上記2つの取付部を、その平面視において正六角形に内接する円と同等か、または、それよりも大きめの円形形態からなるようにした構成を採ることとした。
【0009】
次に、請求5記載の発明である第五の発明においては、請求項1ないし請求項4記載の取付用クリップに関して、全体をポリアミド系樹脂を含む難燃性熱可塑性合成樹脂材にて一体的に形成させるようにした構成を採ることとした。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の発明である第一の発明について説明する。本発明によれば、上記構成を採ることにより、取付部材の他の部材への取付作業が簡単な操作にて行われるようになる。すなわち、本取付用クリップの装着に当っては、まず、作業者等が本取付用クリップを手指にて摘んだ状態にて、下方部に設けられた係合爪を取付部材の取付穴等へ挿入して仮装着させる。このような状態において、本取付用クリップの上方部に設けられた円盤状の平面形態からなる取付部のところを手指等にて下方へと押し込むことによって、本取付用クリップの基礎を成すベース部のところが取付穴内に嵌り込むこととなる。そして、このような状態において、所定の弾発力を有する係合爪は取付穴内に完全に嵌り込むようになり、その先端部に形成された係止端面のところが所定の弾発力を有した状態で取付穴の端面に係合することとなる。このように、本取付用クリップの取付作業(装着作業)は、円滑に、かつ、効率良く行なわれることとなる。
【0011】
次に、請求項2記載の発明である第二の発明のものにおいては、上記請求項1記載のものに加えて、更に、次のような効果が発揮されることとなる。すなわち、このものにおいては、取付部の平面形態が、6角形ボックスレンチの内面側の形状である正六角形を基礎に、これに内接する円と同等か、または、それよりも若干大きめの円形形態を有するようになっているので、本取付用クリップの装着(取付け)に当っては、本取付用クリップの頭部を上記6角形ボックスレンチのホルダ部内に所定の緊迫力を有した状態で装着して作業を進めることができるようになる。その結果、このような6角形ボックスレンチを用いて幅の狭いチャンネル状部材内に本取付用クリップを装着するような場合に、6角形ボックスレンチのホルダ部から本取付用クリップが脱落したりするのを懸念することなく、装着作業(取付作業)を進めることができるようになる。その結果、作業全体の効率化を図ることができるようになる。
【0012】
次に、請求項3記載の発明である第三の発明のものにおいては、次のような効果が発揮されることとなる。すなわち、このものにおいては、2つの取付部の全体の形状が、その平面視において、6角形ボックスレンチの内面側の形状である正六角形を基礎に、これに内接する円と同等か、または、それよりも若干大きめの円形形態を有するようになっているので、本取付用クリップの装着(取付け)に当って、本取付用クリップの頭部を上記6角形ボックスレンチのホルダ部内に装着した場合に、逆L字状の縦断面形態を有する取付部周りのところが開いた状態となり、ボックスレンチの縦壁部のところに所定の緊迫力を有した状態で確実に装着されることとなる。その結果、このような6角形ボックスレンチを用いての幅の狭いチャンネル状部材内への本取付用クリップの装着作業は、本6角形ボックスレンチのホルダ部からの本取付用クリップの脱落等を懸念することなく進めることができるようになり、作業全体の効率化を図ることができるようになる。
【0013】
次に、請求項4記載の発明である第四の発明のものにおいては、次のような効果が発揮されることとなる。すなわち、このものにおいては、2つの取付部の全体の形状が、その平面視において、6角形ボックスレンチの内面側の形状である正六角形を基礎に、これに内接する円と同等か、または、それよりも若干大きめの円形形態を有するようになっているので、本取付用クリップの取付けに当っては、本取付用クリップの頭部を上記6角形ボックスレンチのホルダ部内に所定の緊迫力を有した状態で装着して、その作業を進めることができるようになる。その結果、このような6角形ボックスレンチを用いて幅の狭いチャンネル状部材内に本取付用クリップを装着するような場合に、6角形ボックスレンチのホルダ部から本取付用クリップが脱落したりするのを懸念することなく装着作業(取付作業)を進めることができるようになる。その結果、作業全体の効率化を図ることができるようになる。
【0014】
次に、請求項5記載の発明である第五の発明のものにおいては、本取付用クリップを、ポリアミド系樹脂を含む難燃性熱可塑性合成樹脂材にて一体的に形成させるようにしたので、本取付用クリップは絶縁性において優れたものとなり、電気配線用のダクトの取付用クリップ等として優れた機能を発揮させることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明にかかる基本的な実施の形態に関するものの全体構成を示す斜視図である。
【図2】本発明にかかる基本的な実施の形態に関するものの具体的構成を示す半断面図である。
【図3】本発明にかかる取付用クリップとその取付基盤となる取付部材との関係を示す図である。
【図4】本発明にかかる取付用クリップの取付状態を示す縦断面図である。
【図5】本発明にかかる取付用クリップと取付工具との関係を示す図である。
【図6】本発明にかかる取付用クリップについて、取付部周りの構成を変えた第一の変形例の全体構成を示す斜視図である。
【図7】本発明にかかる取付用クリップについて、取付部周りの構成を変えた第二の変形例の全体構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明を実施するための形態について、図1ないし図7を基に説明する。本実施の形態に関するものは、ダクト等、U字状断面形態を有するものであって、特に、その幅の狭い形状からなる部材を他の部材に取付ける際に用いられる取付用クリップに関するものである。その具体的構成は、例えば図1に示す如く、円盤状の形態からなるベース部1と、当該ベース部1を基礎にして下方へ向って垂直状に設けられる支柱部2と、当該支柱部2の下端部23(図2参照)のところから上方へ向ってV字状に開くように設けられるものであって所定の弾発力を有するように形成された2本の係合爪3、3と、上記ベース部1の上方部のところから左右にハ字状に開くように設けられるものであって所定の弾発力を有するように形成された抑え部6と、上記円盤状のベース部1の上端面のところから上方へ向ってT字状縦断面形態を有するように形成されるものであって、その上端面のところが円形の平面形態を有するように形成された取付部5と、からなることを基本とするものである。なお、このような構成からなるものにおいて、各構成部はポリアミド系樹脂を含む難燃性の熱可塑性合成樹脂材にて、更にはインジェクション成形手段等にて一体的に形成されるようになっているものである。
【0017】
次に、このような構成からなる本取付用クリップの取付手順(装着手順)について、図3ないし図5を基に説明する。一般的な取付手順について、図3を基に説明する。この場合、まず、本取付用クリップの取付部5のところを手指等にて摘んだ状態にて、本取付用クリップの下方部に設けられた係合爪3のところを取付部材81等に設けられた取付穴811内へ挿入し、本取付用クリップを仮装着させる。次に、このような状態において本取付用クリップの上方部に形成された取付部5のところを手指等で下方へと押込む。これによって、係合爪3の先端部のところに形成された係止端面31のところが、例えば図4に示す如く、他の部材82に設けられた係合穴821内に嵌まり込むようになる。これによって、本取付用クリップ取付けの基礎となる他の部材82及び取付部材81への係合が行なわれることとなる。すなわち、本取付用クリップによる取付部材81の他部材82への取付けが成されることとなる。なお、このような二部材81、82の結合に当って、両者の合算された厚み(図4におけるDの値)に多少の変化があるような場合においても、上記抑え部6、6の撓み変形に基づく弾発力によって両部材81、82は確実に結合されることとなる。
【0018】
このような取付作業において、取付部材81がチャンネル状の部材等からなるものであって手指等の挿入が難しい幅の狭い部材からなるものである場合には、所定の工具、本実施の形態においては六角形のボックスレンチ(以下6角形ボックスレンチ9と言う)を用いての取付作業が進められることとなる。この6角形ボックスレンチ9を用いての装着作業(取付作業)について図5を基に説明する。まず、本取付用クリップの頭部に形成された取付部5のところを、例えば図5に示す如く、所定の6角形ボックスレンチ9のボックス内へ挿入させる(嵌め込ませる)。
【0019】
このとき、上記取付部5は、その周辺部52のところが6角形ボックスレンチ9の縦壁にて下方へと引きずり込まれるようになる。その結果、左右の周辺部52、52のところが、図5に示す如く、外側へ開くように弾性変形をする。この弾性変形に基づく弾発力によって取付部5の周辺部52、52のところは6角形ボックスレンチ9の縦壁との間に所定の緊迫力をもって係合することとなる。この緊迫力によって、本取付用クリップ全体は6角形ボックスレンチ9のボックス内に納まるようになり、このような状態で本取付用クリップの取付部材81、82に設けられた係合穴811、821内への係合作業(取付作業)が円滑に行なわれることとなる(図4参照)。このように、本実施の形態のものにおいては、本取付用クリップの取付作業、特に、手指の入り難いチャンネル状部材内への取付作業が、既存の一般的な6角形ボックスレンチ等を用いることによって円滑に行なわれることとなる。
【0020】
次に、このような基本構成からなるものにおいて、上記取付部5の変形例として、例えば図6または図7に示すようなものが挙げられる。その一例として、例えば図6に示すようなものについて説明する。このものは、取付部のそれぞれが、ほぼ半円形状の形態からなるものであり、これら二つの取付部5、5を上方から見た場合の平面視においては、間にスリット51を挟んだ状態において二つの取付部5、5の外周部は円形を形成するようになっているものである。そして、この円は、六角形の横断面形状を有するボックスレンチの、その六角形に内接する円とほぼ同等か、または、それよりも若干大きめの径を有するようになっているものである。このような円径を有することによって、本取付用クリップを所定の6角形ボックスレンチ等を用いて取付作業を行なおうとする場合において、上記取付部5、5のところが6角形ボックスレンチ内に所定の緊迫力をもって納まることとなる。
【0021】
また、その他の変形例として、例えば図7に示すようなものが挙げられる。このものは、取付部5のところに設けられるスリット51の形態が異なっているものである。具体的には、図7に示す如く、取付部5の平面視がH字状の形態からなるものである。そして、このような取付部5の外径側からは中心点に向かうように切込状のスリット51、51が、相対向するように設けられるようになっている。このようなスリット51、51が設けられることによって、当該スリット51、51を有する取付部5のところが6角形ボックスレンチ内に挿入された場合に、各スリット51、51のところが、その幅方向に弾性変形をし、ボックスレンチ内に所定の緊迫力を有した状態で納まることとなる。その結果、本クリップは6角形ボックスレンチ内に安定した状態で納まることとなり、6角形ボックスレンチからの脱落等が生じないようになる。
【符号の説明】
【0022】
1 ベース部
2 支柱部
23 下端部
3 係合爪
31 係止端面
5 取付部
51 スリット
52 周辺部
53 連結部
55 付け根部
6 抑え部
81 取付部材
811 取付穴
82 他の部材
821 取付穴
9 工具(6角形ボックスレンチ)





【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の形態からなるベース部と、当該ベース部を基礎にして下方へ向って垂直状に設けられる支柱部と、当該支柱部の下端部のところから上方へ向ってV字状に開くように設けられるものであって所定の弾発力を有するように形成された2本の係合爪と、上記ベース部の上方部のところから左右にハ字状に開くように設けられるものであって所定の弾発力を有するように形成された抑え部と、当該抑え部の中央部のところから上方へ向って直立状に設けられるものであってTスタッド状の形態からなるとともに円盤状の平面形態を有するように形成された取付部と、からなることを特徴とする取付用クリップ。
【請求項2】
請求項1記載の取付用クリップにおいて、円盤状の平面形態からなる上記取付部を、その平面視において正六角形に内接する円と同等か、または、それよりも大きめの円形形態からなるようにしたことを特徴とする取付用クリップ。
【請求項3】
円筒状の形態からなるベース部と、当該ベース部を基礎にして下方へ向って垂直状に設けられる支柱部と、当該支柱部の下端部のところから上方へ向ってV字状に開くように設けられるものであって所定の弾発力を有するように形成された2本の係合爪と、上記ベース部の上方部のところから左右にハ字状に開くように設けられるものであって所定の弾発力を有するように形成された抑え部と、当該抑え部の中央部のところであって、その上端面のところから上方へ向って左右対称形を成すように設けられるものであって、その各々の縦断面形状は逆L字状形態からなるとともに、その上端面のところが半円形状の平面形態を有するように形成された二つの取付部と、からなるようにしたことを特徴とする取付用クリップ。
【請求項4】
請求項3記載の取付用クリップにおいて、上記2つの取付部を、その平面視において正六角形に内接する円と同等か、または、それよりも大きめの円形形態からなるようにしたことを特徴とする取付用クリップ。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4記載の取付用クリップにおいて、全体をポリアミド系樹脂を含む難燃性熱可塑性合成樹脂材にて一体的に形成させるようにしたことを特徴とする取付用クリップ。



























【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−226578(P2011−226578A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−97581(P2010−97581)
【出願日】平成22年4月21日(2010.4.21)
【出願人】(000228981)日本スタッドウェルディング株式会社 (31)
【Fターム(参考)】