説明

受信回路及び通信装置

【課題】回路特性のばらつき等が生じてもRFフィルタ及びLOフィルタの中心周波数がばらつきにくい受信回路及び通信装置を提供することにある。
【解決手段】位相比較回路104は、LOフィルタ回路120に入力される信号とLOフィルタ回路120から出力される信号との位相を比較し、位相差を示す信号を出力する。周波数設定回路105は、位相比較回路104からの信号に基づいて、RFフィルタ回路110及びLOフィルタ回路120の同調周波数を調整する制御信号を生成し、RFフィルタ回路110及びLOフィルタ回路120の両方へと出力する。制御信号は、位相比較回路104からの信号が示す位相差に基づいて、RFフィルタ回路110及びLOフィルタ回路120において中心周波数が所定値に保持されるように生成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、局部発振信号に基づいてRF信号に周波数変換を施す受信回路及びこれを備えた通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
受信装置において発生するノイズ要因の一つに受信装置の混変調特性がある。かかる混変調特性を改善する最適な方法の一つは、受信されたRF(Radio Frequency)信号の周波数選択度を向上させることである。例えばテレビチューナ用の受信装置においては、VHF(Very High Frequency)からUHF(Ultra High Frequency)に至るチャンネル割り当てが広い。このため、所望のチャンネルを選局する際にRFフィルタ回路において帯域制限を施すことで、周波数選択度を向上させている。
【0003】
そして、RFフィルタ回路において所望のチャンネルに合わせた周波数選択を施す方法は数多く提案されている。例えば、特許文献1においては、RFフィルタ回路が周波数調整の機能を有しており、RFフィルタ回路に制御信号を入力することで所望のチャンネルに調整している。
【0004】
一方、特許文献1には、RFフィルタ回路に加えてさらにLO(Local Oscillator)フィルタ回路が設けられている。つまり、RFフィルタ回路においてRF信号に周波数選択が施されると共に、LOフィルタ回路においてもLO信号に周波数選択が施される。LOフィルタ回路は局部発振信号に発生するスプリアス雑音や高調波雑音を抑えるため、所望のチャンネルを受信する際の雑音抑制に効果がある。特許文献1のLOフィルタ回路も周波数調整の機能を有している。図7は、かかるRFフィルタ回路及びLOフィルタ回路を有する特許文献1の回路構成を示している。
【0005】
図7の回路は、RFフィルタ回路901、LOフィルタ回路903、ミキサ回路902、制御部906、並びに、可変電圧回路904及び905を有している。RFフィルタ回路901にはRF信号が、LOフィルタ回路903には局部信号発信器(不図示)からのLO信号が入力される。ミキサ回路902は、LOフィルタ回路903及びRFフィルタ回路901から入力された信号から中間周波数信号を生成する。可変電圧回路904及び905は、制御部906からの信号をRFフィルタ回路901及びLOフィルタ回路903のそれぞれに合わせた電圧信号に変換し、これらのフィルタ回路へと出力する。つまり、図7の回路においては可変電圧回路904及び405が、制御部906において所望のチャンネルに合わせた信号を、RFフィルタ回路901及びLOフィルタ回路903に供給するための制御信号電圧に変換する。これによって、RFフィルタ回路901及びLOフィルタ回路903のそれぞれが、所望のチャンネルに応じた周波数に調整されている。
【0006】
【特許文献1】特開平10−41844号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一方で、RFフィルタ回路及びLOフィルタ回路において、所望のチャンネル周波数を選局するためには、これらのフィルタ回路の同調周波数を設定する必要がある。図7の回路構成によると、LO信号を生成する局部信号発振器の周波数に合わせて、RFフィルタ回路901又はLOフィルタ回路903の中心周波数を合わせる必要がある。制御部906はあらかじめ設定された局部信号発振器の周波数に応じてフィルタ回路ごとに制御信号を出力することで、RFフィルタ回路901及びLOフィルタ回路903において制限帯域の中心周波数を制御する。
【0008】
しかし、RFフィルタ回路901やLOフィルタ回路903において、回路特性のプロセスばらつきや温度などの環境変動によって、フィルタ回路の回路定数がばらつくことがある。回路定数がばらつくと、フィルタ回路において制限帯域の中心周波数が変動する場合がある。図7の構成によると、あらかじめ設定された値に応じて制御信号を生成するので、上記のような周波数の変動に対処しにくいという問題がある。
【0009】
本発明の目的は、回路特性のばらつき等によってRFフィルタ及びLOフィルタの中心周波数がばらつきにくい受信回路及び通信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0010】
本発明の受信回路は、第1の同調周波数に基づいてRF(Radio Frequency)信号を第1の周波数帯域に制限するRFフィルタ回路と、第2の同調周波数に基づいて局部発振信号を第2の周波数帯域に制限する局部発振フィルタ回路と、前記第1及び第2の同調周波数をそれぞれ変更する第1及び第2の周波数変更手段と、前記局部発振フィルタ回路からの信号に基づいて前記RFフィルタ回路からの信号に周波数変換処理を施すミキサ回路と、前記局部発振フィルタ回路が前記第2の周波数帯域に制限する前の局部発振信号と、前記局部発振フィルタ回路が前記第2の周波数帯域に制限した後の局部発振信号との位相差を示す信号を生成する位相比較回路と、前記位相比較回路が生成した信号に基づいて、前記RFフィルタ回路及び局部発振フィルタ回路において前記第1及び第2の周波数帯域の中心周波数がそれぞれ所定値に保持されるように前記第1及び第2の周波数変更手段を制御する制御手段とを備えている。
【0011】
本発明の受信回路によると、局部発振(LO)フィルタ回路において回路特性のばらつき等による周波数変動が発生しても、位相比較回路においてその周波数変動の程度が把握される。そして、制御手段が周波数変動の程度に応じて、RFフィルタ回路及び局部発振フィルタ回路の周波数が一定に保持されるように同調周波数の制御がなされる。したがって、回路特性のばらつきや温度などの環境変動がある場合にも各フィルタ回路において制限帯域の中心周波数の変動が抑制される。また、局部発振フィルタ回路のみに位相比較回路を設ければよいため、簡易に構成することができる。なお、局部発振フィルタ回路によって、局部発振信号に発生するスプリアス雑音や高調波雑音が抑えられ、所望チャネル受信時の雑音が抑制され得る。
【0012】
また、本発明においては、前記第1及び第2の同調周波数の上限及び下限をそれぞれ示す上限信号及び下限信号が入力される入力部をさらに有しており、前記制御手段が、前記入力部からの前記上限信号及び下限信号に基づいて前記第1及び第2の周波数変更手段を制御することが好ましい。この構成によると、同調周波数を大きく変更する場合にも、あらかじめ大雑把に周波数調整を行ってから周波数を微調整することができる。したがって、同調周波数が大幅にずれるのを防ぐことができる。
【0013】
また、本発明においては、前記RFフィルタ回路及び局部発振フィルタ回路からの出力信号の振幅をそれぞれ変更する第1及び第2の振幅変更手段と、前記局部発振フィルタ回路が前記第2の周波数帯域に制限した後の局部発振信号の振幅を示す信号を生成する振幅参照回路とをさらに備えており、前記制御手段が、前記振幅参照回路が生成した信号と前記位相比較回路が生成した信号とに基づいて、前記RFフィルタ回路及び局部発振フィルタ回路において前記第1及び第2の周波数帯域の中心周波数がそれぞれ所定値に保持され、且つ、前記RF信号及び局部発振フィルタ回路からの出力信号の振幅が所定値に保持されるように、前記第1及び第2の周波数変更手段と前記第1及び第2の振幅変更手段とを制御することが好ましい。例えばバラクタダイオードなどの可変容量によってRFフィルタ回路及びLOフィルタ回路が周波数を変更できるように構成されている場合に、周波数によってフィルタ回路の利得が変化することがある。上記の構成によると、振幅を一定に保持するような調整がなされるので、フィルタ回路の利得が変化する場合の振幅の変動を抑制することができる。また、回路特性のプロセスばらつきや温度等の環境変動によって局部発振信号の振幅がばらついても振幅が調整されるので、RFフィルタ回路の帯域制限にも十分な性能を与えることができる。また、局部発振フィルタ回路のみに振幅比較回路を設ければよいため、簡易に構成することができる。
【0014】
また、本発明においては、前記RFフィルタ回路及び局部発振フィルタ回路が、いずれもバンドパスフィルタ回路であることが好ましい。この構成によると、RFフィルタ回路において所望のチャンネル周波数以外にある妨害信号を抑圧することができる。また、局部発振フィルタ回路において局部発振信号に発生するスプリアス雑音や高調波雑音を抑えることから、所望のチャンネルを受信する際の雑音抑制に効果がある。
【0015】
また、本発明においては、前記RFフィルタ回路及び局部発振フィルタ回路の回路構成が同一であり、前記制御手段が、前記第1及び第2の周波数変更手段のそれぞれへと同一の制御信号を出力することが好ましい。この構成によると、いずれのフィルタ回路へも同一の制御信号を出力するため、回路構成が簡易になる。なお、例えばダイレクトコンバージョン方式が採用された場合には、RFフィルタ回路と局部発振フィルタ回路とを同一構成、及び、同一の設定値の回路によって実現できる。
【0016】
ところで、ダブルコンバージョン方式が採用された場合や、Low−IF(Intermediate Frequency)方式が採用された場合のように、RF信号と局部発振信号とが互いに異なる周波数帯域である場合には、本発明においてRFフィルタ回路及び局部発振フィルタ回路の同調周波数を決めるL、Cなどの値だけを互いにずらして設定すればよく、その他の回路構成を同一に構成することができる。
【0017】
また、本発明においては、前記局部発振フィルタ回路へと局部発振信号を出力する局部発信器をさらに備えており、前記RFフィルタ回路、局部発振フィルタ回路、位相比較器、ミキサ回路及び局部発振回路が、いずれも同一の基板上に構築されていることが好ましい。この構成により、外付け部品の削減につながり、部品の小型化に貢献できる。
【0018】
また、本発明においては、前記RFフィルタ回路及び局部発振フィルタ回路の両方が、負性抵抗回路を含むL−Cフィルタから構成されていることが好ましい。この構成によると、負性抵抗回路が含まれていることにより、L−CフィルタのQが高められている。
【0019】
また、本発明の受信回路は、携帯電話機やデジタル受像装置などの種々の通信装置に適用可能である。本発明の受信回路をこれらの通信装置に適用することにより、受信回路内のプロセスばらつき等による周波数選択度の低下が抑制された通信性能の高い通信装置が実現する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面を参照しつつ本発明の好適な一実施形態について説明する。図1は、第1の実施形態の受信装置1000の概略的な構成を示すブロック図である。
【0021】
[第1の実施形態]
受信装置1000はチューナ部100、復調部700及びデータ処理部800を有している。チューナ部100にはアンテナ等から受信されたRF信号が入力される。チューナ部100は、入力されたRF信号に選局処理を施して復調部700へと出力する。復調部700は選局処理が施された信号に復調処理を施してデータ列信号に復調し、データ処理部800へと出力する。データ処理部800は、データ列信号に基づいて種々のデータ処理を実行する。例えば、データ列信号が示す画像、音声及び文字を再現する処理を実行する。
【0022】
図2はチューナ部100において選局処理を施す回路(受信回路)の構成を示す図である。かかる回路構成には、RFフィルタ回路110、LOフィルタ回路120及びミキサ回路102が含まれている。これらの回路の回路構成は全て同一の基板上に構築されている。
【0023】
RFフィルタ回路110には、入力端子I1を介してRF信号が入力される。RFフィルタ回路110は、入力されたRF信号を所定の周波数帯域(第1の周波数帯域)に制限して出力する。LOフィルタ回路120には、入力端子I2を介してLO信号が入力される。このLO信号は、電圧制御発信器(VCO;Voltage Controlled Oscillator)などの局部発振器(不図示)において生成される。あるいは、かかる局部発振器から周波数分周器を通じて入力端子I2へと入力されてもよい。LOフィルタ回路120は、入力されたLO信号を所定の周波数帯域(第2の周波数帯域)に制限して出力する。ミキサ回路102は、RFフィルタ回路110が帯域制限を施したRF信号に、LOフィルタ回路120からの信号に基づいて周波数変換を施し、出力端子O1を介して出力する。
【0024】
本実施形態においては、受信回路にダイレクトコンバージョン方式を採用した場合が想定されている。したがって、LO信号の中心周波数が所望のチャンネルの中心周波数と同じ大きさに設定される。また、RFフィルタ回路110とLOフィルタ回路120とが互いに同一の回路構成を有している。
【0025】
RF信号には妨害波など、所望の周波数以外の広い帯域の周波数が含まれることがある。RFフィルタ回路110が設けられることにより妨害波などの所望の周波数以外の周波数が除去され、所望のチャンネルの周波数に関して周波数選択度が向上する。また、LOフィルタ回路120が設けられていることによって、所望のチャンネルの周波数に関する周波数選択度がさらに向上する。
【0026】
また、図2の受信回路は、位相比較回路104及び周波数設定回路(制御手段)105を有している。位相比較回路104には入力端子I2を介してLO信号が入力されると共に、LOフィルタ回路120からの出力信号が入力される。そして、入力された信号同士の位相を比較する。つまり、位相比較回路104は、LOフィルタ回路120が周波数帯域を制限する前のLO信号とLOフィルタ回路120が周波数帯域を制限した後のLO信号との位相を比較する。位相比較回路104は、位相を比較した結果を示す信号を周波数設定回路105へと出力する。周波数設定回路105は位相比較回路104からの信号に基づいて、RFフィルタ回路110及びLOフィルタ回路120の同調周波数(後述)を制御するための制御信号を生成する。そして、生成した制御信号をRFフィルタ回路110及びLOフィルタ回路120へとそれぞれ出力する。RFフィルタ回路110及びLOフィルタ回路120は、周波数設定回路105からの制御信号に基づいて同調周波数を変更するように構成されている。
【0027】
図3は、RFフィルタ回路110及びLOフィルタ回路120のさらに詳細な構成を示すものである。上記のとおり本実施形態においてはダイレクトコンバージョン方式が採用されている場合が想定されているため、RFフィルタ回路110及びLOフィルタ回路120は同一の回路構成を有している。つまり、図3は、両フィルタ回路に共通の構成を示している。以下においては、RFフィルタ回路110の構成として説明する。
【0028】
RFフィルタ回路110は、gm回路112、可変インダクタ113、容量114及び抵抗115を有している。gm回路112には入力端子I3を介してRF信号に相当する電圧信号が入力される。gm回路112は、入力された電圧を電流に変換して出力する。なお、LOフィルタ回路120の場合には、LO信号に相当する電圧信号が入力される。可変インダクタ113、容量114及び抵抗115は互いに並列に接続されている。これらの並列接続の一端には、gm回路112から出力された電流が入力される。並列接続の他端はグランド接続されている。可変インダクタ113、容量114及び抵抗115に入力された電流は、これらの合成負荷によって電圧信号に変換され、出力端子O2を介してミキサ回路102へと出力される。
【0029】
上記のように、RFフィルタ回路110及びLOフィルタ回路120は、インダクタ値を変更することができるL−Cバンドパスフィルタである。つまり、RFフィルタ回路110及びLOフィルタ回路120には可変インダクタが設けられており、これによって同調周波数(第1及び第2の同調周波数)が変更される(変更手段)。可変インダクタ113のインダクタ値は、周波数設定回路105からの制御信号に基づいて制御される。可変インダクタ113のインダクタ値をL、容量114の静電容量値をC、抵抗115の抵抗値をRとすると、図3のL―Cフィルタの伝達関数は以下のように表される。なお、s=jωである。
【0030】
【数1】

【0031】
以上の構成において周波数設定回路105の制御信号は、RFフィルタ回路110及びLOフィルタ回路120による制限帯域の中心周波数が所定値、すなわち局部発振信号の周波数に保持されるように調整されている。具体的には周波数設定回路105は、位相比較回路104からの信号に基づいて、入力端子I2からの信号の位相がLOフィルタ回路120からの位相より進んでいる場合には、同調周波数を減少させるような制御信号を出力する。一方、入力端子I2からの信号の位相がLOフィルタ回路120からの位相より遅れている場合には、同調周波数を増加させるような制御信号を出力する。
【0032】
これによって、LOフィルタ回路120においてLO信号に帯域制限が施される際の周波数のずれが防止される。一方で、RFフィルタ回路110にもLOフィルタ回路120と同一の制御信号が周波数設定回路105から入力される。上記の通り、RFフィルタ回路110はLOフィルタ回路120と同一の回路構成を有しているため、RFフィルタ回路110の制限帯域の中心周波数においてもLO信号からのずれが回避され、所定値に保持される。
【0033】
以上の構成により第1の実施形態においては、温度の変動、プロセスばらつき、フィルタの回路構成ごとに発生するばらつきが抑制され、所望のチャンネル周波数においてフィルタにおける制限帯域の中心周波数を所定値に保持することが可能になる。
【0034】
また、上記の構成においては、Lを変更することによって、温度の変動やプロセスばらつきに関わらず同調周波数が一定になるように調整されている。一方で、同調周波数が一定であることはLCが一定に保持されることにほぼ相当する。したがって、上記の数式1により同調周波数がω0のときのT(ω0)が一定に保持される。つまり、第1の実施形態においては同調周波数を一定になるように調整することによって、利得も一定に保持される。
【0035】
なお、図2の入力端子106を介して、同調周波数の上限値及び下限値を示す信号が入力されることが好ましい。例えば周波数設定回路105は、まず、入力端子106からの信号に基づいてRFフィルタ回路110及びLOフィルタ回路120の同調周波数をおおよそ入力端子106からの信号が示す範囲に調整する。ここで、入力端子106からの信号は、フィルタ回路において所望のチャンネルに相当する帯域制限がなされるようにあらかじめ算出された上限値及び下限値を示している。次に、周波数設定回路105は、位相比較回路104からの信号に基づいてRFフィルタ回路110及びLOフィルタ回路120の同調周波数を、上記のように詳細に調整する。このような構成を受信装置1000が有していることが好ましい。
【0036】
例えばテレビチューナにおいてはVHF信号やUHF信号が受信され、同調周波数が大きく変化する。上記の構成によると、このように同調周波数が大きく変更された場合にも、あらかじめ大雑把に周波数が調整されてから微調整がなされる。したがって、同調周波数が大幅にずれるのが抑制され、位相比較回路104および周波数設定回路105による同調周波数の設定に伴う誤作動が抑制される。
【0037】
[第2の実施形態]
以下、図4及び図5に基づいて第2の実施形態について説明する。第2の実施形態において第1の実施形態と同様の構成には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0038】
第2の実施形態は、第1の実施形態において図2の回路構成を図4の回路構成に置き換えたものである。また、第2の実施形態においてもダイレクトコンバージョン方式が想定されている。図4の受信回路は、RFフィルタ回路210及びLOフィルタ回路220を有している。これらの回路構成は同一である。RFフィルタ回路210及びLOフィルタ回路220は、後述のように同調周波数を調整しつつ出力信号の振幅も調整することができる構成を有している。
【0039】
図4の受信回路は、位相比較回路104及び周波数設定回路105を有している。位相比較回路104は、LOフィルタ回路210の出力信号と入力端子I2を介して入力されるLO信号との位相差を示す信号を周波数設定回路105へと出力する。周波数設定回路105は、位相比較回路104からの信号に基づいて、RFフィルタ回路210及びLOフィルタ回路220へと同調周波数を制御するための制御信号を出力する。これによって、第1の実施形態と同様に、第2の実施形態においてもこれらのフィルタ回路において同調周波数が調整されている。
【0040】
図4の受信回路には、さらに振幅参照回路206及び振幅設定回路207が設けられている。振幅参照回路206には、LOフィルタ回路220からの出力信号が入力される。振幅参照回路206は、入力された信号の振幅を示す信号を生成し、振幅設定回路207へと出力する。振幅設定回路207は、振幅参照回路206からの出力信号が示す振幅に基づいて、LOフィルタ回路220の出力信号の振幅が一定になるような制御信号を生成する。そして、かかる制御信号をLOフィルタ回路220と共にRFフィルタ回路210へと出力する。
【0041】
図5(a)は、RFフィルタ回路210及びLOフィルタ回路220の詳細な回路構成を示す図である。なお、RFフィルタ回路210及びLOフィルタ回路220は互いに同一の回路構成を有している。以下は、RFフィルタ回路210の構成として説明する。
【0042】
RFフィルタ回路210は、gm回路112、インダクタ213、可変容量214及び可変抵抗215を有している。インダクタ213は、インダクタ値がLのインダクタ成分と抵抗値がrの直列抵抗成分とを有している。可変容量214は、例えばバラクタダイオードから構成されている。
【0043】
gm回路112には入力端子I4を介してRF信号に相当する電圧信号が入力される。gm回路112は、入力された電圧を電流に変換して出力する。なお、LOフィルタ回路220には、LO信号に相当する電圧信号が入力される。インダクタ213、可変容量214及び可変抵抗215は互いに並列に接続されている。これらの並列接続の一端には、gm回路112から出力された電流が入力される。並列接続の他端はグランド接続されている。インダクタ213、可変容量214及び可変抵抗215に入力された電流は、これらの合成負荷によって電圧信号に変化され、出力端子O3を介してミキサ回路102へと出力される。このように、RFフィルタ回路210及びLOフィルタ回路220は、可変抵抗215が負性抵抗回路として付加されることによりフィルタのQが高められたL−Cバンドパスフィルタである。
【0044】
可変容量214の静電容量値をC、可変抵抗215の抵抗値をRとするとき、RFフィルタ回路210の伝達関数は以下のように表される。なお、s=jωである。
【0045】
【数2】

【0046】
そして、R>>rであると仮定したときの同調時、つまり数式3が成立しているときの利得は、数式4のように表される。
【0047】
【数3】

【0048】
【数4】

【0049】
したがって、同調時の伝達関数はCに依存する。つまり、同調周波数ω0を調整するためにCの値を変えると利得が変動する。
【0050】
そこで、上記の構成において振幅設定回路207は、振幅参照回路206からの信号が示す振幅と所定値とを比較する。そして、振幅が所定値を上回っている場合には振幅を減少させることを示す制御信号を、振幅が所定値を下回っている場合には振幅を増加させることを示す制御信号を生成し、RFフィルタ回路210及びLOフィルタ回路220へと出力する。
【0051】
RFフィルタ回路210及びLOフィルタ回路220は、振幅設定回路207からの制御信号に基づいて、可変抵抗215の抵抗を変更することによって利得を増加させたり減少させたりする(第1及び第2の振幅変更手段)。RFフィルタ回路210及びLOフィルタ回路220は、このように同調周波数を調整することによりT(ω0)が変化しても、その変化に応じて可変抵抗215の抵抗値を変えることで、T(ω0)の値が所定値に保持されるように補正する。
【0052】
以上の構成により第2の実施形態においては、温度の変動、プロセスばらつき、フィルタの回路構成ごとに発生するばらつきが抑制され、所望のチャンネル周波数においてフィルタにおける制限帯域の中心周波数を所定値に保持することが可能になるのみならず、フィルタの利得を一定にすることが可能になる。
【0053】
なお、さらに以下の数式5で表される帯域ωbが一定になるようにRFフィルタ回路210等の同調周波数を調整するためには、Cの大きさを変更して同調周波数ω0を調整すると共に、ωbの値が一定になるようにRの大きさも変更すればよい。そして、さらに利得も一定にするために、gm回路112のgm値を変更してもよい。
【0054】
【数5】

【0055】
図5(b)はRFフィルタ回路210及びLOフィルタ回路220の変形例である、RFフィルタ回路210’及びLOフィルタ回路220’の回路構成を示している。RFフィルタ回路210’及びLOフィルタ回路220’は互いに同一の回路構成を有している。RFフィルタ回路210’及びLOフィルタ回路220’はrの値が小さく、インダクタのQの値をそのままバンドパスフィルタのQに用いることができる場合の構成を示している。したがって、図5(b)のフィルタ回路において可変抵抗215は設けられていない。図5(b)のフィルタ回路において伝達関数は以下のように表される。
【0056】
【数6】

【0057】
したがって、数式3が成立する同調時の利得は以下のように表される。
【0058】
【数7】

【0059】
この場合も同調周波数ω0を調整するためにCの値を変えると、同調時の利得が変化する。したがって、RFフィルタ回路210’及びLOフィルタ回路220’を用いる場合には、同調時の利得を一定にするために、つまりT(ω0)の値を一定にするようにgm回路112のgm値を変更して補正するような構成を受信装置1000が有していることが好ましい。
【0060】
<その他の変形例>
以上は、本発明の好適な実施の形態についての説明であるが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、課題を解決するための手段に記載された内容の限りにおいて様々な変更が可能なものである。
【0061】
例えば上述の第1及び第2の実施形態においては、入力端子からRFフィルタ回路を通してミキサ回路にRF信号を受け渡している。しかし、RFフィルタ回路の前段やRFフィルタ回路とミキサ回路との間に、別途RFアンプ回路を設けてもよい。例えば図6(a)の回路においては、RFアンプ回路501及びRFフィルタ回路110を順に通じてミキサ回路102にRF信号が受け渡される。また、図6(b)の回路においては、RFフィルタ回路110及びRFアンプ回路501を順に通じてミキサ回路102にRF信号が受け渡される。
【0062】
また、上述の第2の実施形態においては、抵抗215及びgm回路112のいずれかを可変にすることで同調時の利得一定が実現されてもよいし、抵抗215及びgm回路112のいずれも可変にすることで利得が調整されてもよい。
【0063】
また、上述の実施形態においては、受信回路におけるインダクタ、容量、抵抗、トランジスタ等、すべての構成回路が同一の基板上に構成されている。しかし、別の基板上に構成されていてもよい。また、上述の実施形態においては、ジャイレータなどで作製した可変インダクタか可変容量を用いて同調周波数の可変機構が実現されているが、同調周波数を変更できる構成であれば、どのような構成であってもよい。
【0064】
また上述の第1及び第2の実施形態においては、RFフィルタ回路及びLOフィルタ回路がバンドパスフィルタとして構成されている。しかし、ローパスフィルタ、バンドリジェクションフィルタ、ハイパスフィルタとして構成されていてもよい。
【0065】
また上述の第1及び第2の実施形態においては、受信回路にダイレクトコンバージョン方式が採用されている。しかし、ダイレクトコンバージョン方式以外にダブルコンバージョン方式やLow−IF方式などが採用されてもよい。これらの方式によると、RF信号の中心周波数とLO信号の周波数とが同一ではないが、上記の実施形態においてRFフィルタ回路及びLOフィルタ回路の選択周波数を変更した構成であればよい。つまり、RFフィルタおよびLOフィルタにおいてLやCなどの回路定数を変更すればよい。そして、周波数設定回路105や振幅設定回路207においてRFフィルタ回路への制御信号を生成する場合には、RFフィルタ回路とLOフィルタ回路との回路特性の違いを加味した上で制御信号を生成するようにあらかじめ構成されていればよい。
【0066】
また、上述の第1及び第2の実施形態において周波数設定回路105は、位相比較回路104からの信号が示す位相のずれに基づいて同調周波数を減少させたり増加させたりするような制御信号を生成している。かかる制御信号は、位相比較回路104からの信号が示す位相のずれが大きいほど同調周波数の増加幅又は減少幅が大きくなるように生成されてもよい。また、周波数設定回路105が位相比較回路104からの信号が示す位相のずれ量に関連付けて同調周波数の変更量を記憶しており、位相比較回路104からの信号に基づいて同調周波数が上記変更量だけ変更されるような制御信号が生成されてもよい。さらに、振幅設定回路207においても上記のように制御信号が生成されてもよい。
【0067】
なお、本実施形態の受信回路を、無線通信機器や有線通信機器に搭載することにより、所望チャネル周波数においてフィルタの周波数選択度が向上される。例えばテレビ受像機、携帯電話、無線通信機器などに適用することにより、これらの通信機器の性能が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の一実施形態である第1の実施形態の受信装置の概略的な構成を示すブロック図である。
【図2】図1のチューナ部が有する受信回路の構成を示す回路図である。
【図3】図2のRFフィルタ回路及びLOフィルタ回路の構成を示す回路図である。
【図4】第2の実施形態の受信回路の構成を示す回路図である。
【図5】図4のRFフィルタ回路及びLOフィルタ回路の構成を示す回路図である。
【図6】図1の受信回路の変形例の構成を示す回路図である。
【図7】従来例の受信回路の構成を示す回路図である。
【符号の説明】
【0069】
100 チューナ部
102 ミキサ回路
104 位相比較回路
105 周波数設定回路
106 入力端子
110 RFフィルタ回路
120 LOフィルタ回路
206 振幅参照回路
207 振幅設定回路
210 RFフィルタ回路
213 インダクタ
214 可変容量
215 可変抵抗
220 LOフィルタ回路
700 復調部
800 データ処理部
901 RFフィルタ回路
902 ミキサ回路
903 LOフィルタ回路
904 可変電圧回路
906 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の同調周波数に基づいてRF(Radio Frequency)信号を第1の周波数帯域に制限するRFフィルタ回路と、
第2の同調周波数に基づいて局部発振信号を第2の周波数帯域に制限する局部発振フィルタ回路と、
前記第1及び第2の同調周波数をそれぞれ変更する第1及び第2の周波数変更手段と、
前記局部発振フィルタ回路からの信号に基づいて前記RFフィルタ回路からの信号に周波数変換処理を施すミキサ回路と、
前記局部発振フィルタ回路が前記第2の周波数帯域に制限する前の局部発振信号と、前記局部発振フィルタ回路が前記第2の周波数帯域に制限した後の局部発振信号との位相差を示す信号を生成する位相比較回路と、
前記位相比較回路が生成した信号に基づいて、前記RFフィルタ回路及び局部発振フィルタ回路において前記第1及び第2の周波数帯域の中心周波数がそれぞれ所定値に保持されるように前記第1及び第2の周波数変更手段を制御する制御手段とを備えていることを特徴とする受信回路。
【請求項2】
前記第1及び第2の同調周波数の上限及び下限をそれぞれ示す上限信号及び下限信号が入力される入力部をさらに有しており、
前記制御手段が、
前記入力部からの前記上限信号及び下限信号に基づいて前記第1及び第2の周波数変更手段を制御することを特徴とする請求項1に記載の受信回路
【請求項3】
前記RFフィルタ回路及び局部発振フィルタ回路からの出力信号の振幅をそれぞれ変更する第1及び第2の振幅変更手段と、
前記局部発振フィルタ回路が前記第2の周波数帯域に制限した後の局部発振信号の振幅を示す信号を生成する振幅参照回路とをさらに備えており、
前記制御手段が、
前記振幅参照回路が生成した信号と前記位相比較回路が生成した信号とに基づいて、前記RFフィルタ回路及び局部発振フィルタ回路において前記第1及び第2の周波数帯域の中心周波数がそれぞれ所定値に保持され、且つ、前記RF信号及び局部発振フィルタ回路からの出力信号の振幅が所定値に保持されるように、前記第1及び第2の周波数変更手段と前記第1及び第2の振幅変更手段とを制御することを特徴とする請求項1又は2に記載の受信回路。
【請求項4】
前記RFフィルタ回路及び局部発振フィルタ回路が、いずれもバンドパスフィルタ回路であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の受信回路。
【請求項5】
前記RFフィルタ回路及び局部発振フィルタ回路の回路構成が同一であり、
前記制御手段が、
前記第1及び第2の周波数変更手段のそれぞれへと同一の制御信号を出力することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の受信回路。
【請求項6】
前記局部発振フィルタ回路へと局部発振信号を出力する局部発信器をさらに備えており、
前記RFフィルタ回路、局部発振フィルタ回路、位相比較器、ミキサ回路及び局部発振回路が、いずれも同一の基板上に構築されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の受信回路。
【請求項7】
前記RFフィルタ回路及び局部発振フィルタ回路の両方が、負性抵抗回路を含むL−Cフィルタから構成されていることを特徴とする請求項6に記載の受信回路。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の受信回路を有していることを特徴とする通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−227824(P2008−227824A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−61832(P2007−61832)
【出願日】平成19年3月12日(2007.3.12)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】