説明

受信機

【課題】低周波におけるBPFを適切な回路規模で実現でき、ミクサの1/f雑音の影響による感度劣化を回避できる受信機を得る。
【解決手段】複数の局部発振波に基づき、複数の通信システムの受信信号のうち、信号帯域の広い通信システムの受信信号を直交する2つのベースバンド信号に周波数変換するとともに、信号帯域の狭い通信システムの受信信号を直交する2つのIF信号に変換して出力する直交ミクサ4と、前記2つのベースバンド信号から不要信号を除去するLPF6a、6bと、前記2つのIF信号から不要信号を除去するBPF7a、7bと、BPF7a、7bから出力された2つのIF信号のうち、一方の位相を90度変える90度移相器8と、LPF6a、6bから出力された2つのベースバンド信号を復調するとともに、BPF7b及び90度移相器8からそれぞれ出力され合成された2つのIF信号を復調する復調器11とを設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複数の異なる帯域の通信システムの信号を受信するマルチモードの受信機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のマルチモードの受信機について図14から図17までを参照しながら説明する(例えば、特許文献1参照)。図14は、従来のマルチモードの受信機の構成を示す図である。なお、以降では、各図中、同一符号は同一又は相当部分を示す。
【0003】
図14において、従来のマルチモードの受信機は、アンテナ1と、高周波増幅器2と、通信システムに応じた3つの局部発振源3a、3b、3cと、周波数変換用のミクサ4Aと、低域通過フィルタ(LPF)6と、可変利得増幅器(VGA)9と、AD変換器(A/D)10と、通信システムに応じた帯域通過フィルタ(BPF)21a、21b、21cと、通信システム内のチャネル選択用の帯域通過フィルタ(BPF)22a、22b、22cと、復調器11とが設けられている。
【0004】
つぎに、従来のマルチモードの受信機の動作について図面を参照しながら説明する。
【0005】
図15は、従来のマルチモードの受信機の受信信号のスペクトラムを示す図である。また、図16は、従来のマルチモードの受信機のミクサ4Aの出力信号のスペクトラムを示す図である。図17は、従来のマルチモードの受信機のミクサ4Aから出力される雑音のスペクトラムを示す図である。
【0006】
アンテナ1で受信した複数の通信システムの信号は高周波増幅器2で増幅され、ミクサ4Aに入力する。このミクサ4Aには、通信システムに応じた複数の局部発振源3a〜3cより局部発振波が供給される。ミクサ4Aにおける受信信号と局部発振波の周波数関係を図15に、ミクサ4Aから出力されるIF信号の周波数関係を図16にそれぞれ示す。
【0007】
図15において、第1、第2、第3の通信システムの受信信号101a、101b、101cが描かれており、それぞれ1ないしはそれ以上の複数のチャネルが存在する。
【0008】
図16において、図15に示す第1、第2、第3の通信システムの受信信号101a、101b、101cが局部発振源3a〜3bからの局部発振波によって周波数変換されたIF信号101a'、101b'、101c'が描かれている。
【0009】
図15中の、周波数frf1を中心に帯域BWを有し、3つのチャネルからなる第1の通信システムの受信信号101aは、第1の通信システムに対応した局部発振源3aより出力され、第1の通信システムが占有する周波数帯域(BW)内の最高周波数よりΔfだけ低い周波数flo1の局部発振波(図中、LO1と記載)により、ミクサ4Aにおいて周波数変換されて、図16中の第1の通信システムに対応したIF信号101a'として出力される。ここで、ΔfはBWよりもわずかに大きい周波数として設定される。
【0010】
同様に、図15において、周波数frf2を中心に帯域BWを有し、3つのチャネルからなる第2の通信システムの受信信号101bは、第2の通信システムに対応した局部発振源3bより出力され、第2の通信システムが占有する周波数帯域(BW)内の最高周波数よりΔf+Δfだけ低い周波数flo2の局部発振波(図中、LO2と記載)により、ミクサ4Aにおいて周波数変換されて、図16中の第2の通信システムに対応したIF信号101b'として出力される。ここで、ΔfはBWよりもわずかに大きい周波数として設定される。
【0011】
同様に、図15において、周波数frf3を中心に帯域BWを有し、1つのチャネルからなる第3の通信システムの受信信号101cは、第3の通信システムに対応した局部発振源3cより出力され、第3の通信システムが占有する周波数帯域(BW)内の最高周波数よりΔf+Δf+Δfだけ低い周波数flo3の局部発振波(図中、LO3と記載)により、ミクサ4Aにおいて周波数変換されて、図16中の第3の通信システムに対応したIF信号101c'として出力される。ここで、ΔfはBWよりもわずかに大きい周波数として設定される。
【0012】
ミクサ4Aの出力を、LPF6によりろ波し、VGA9で増幅し、AD変換器10によってディジタル信号に変換して、第1〜第3の通信システムに対応したBPF21a〜21cにより、各通信システムごとに分離し、さらにチャネル選択用のBPF22a〜22cによってチャネルごとに分離して復調器11により復調する。本構成により、マルチモードの通信システムを同時に受信可能な受信機を実現できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2004−357025号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、従来技術には、以下のような課題がある。従来のマルチモードの受信機は、上記のように構成されているため、ミクサ4Aによる周波数変換後にシステム選択及びチャネル選択に帯域通過フィルタ(BPF)が必要である。BPFの中心周波数に対する帯域幅の割合、すなわち比帯域については、その値が極端に大きかったり、小さかったりすると、回路規模が大きくなる場合がある。特に、AD変換するような低い周波数において広帯域な変調波をろ波する場合は、回路規模が大きくなる可能性がある。これは、従来の受信機のように、AD変換後にディジタルフィルタを用いる場合でなく、AD変換前にアナログフィルタを用いてシステム選択及びチャネル選択を行う場合でも同様である。
【0015】
さらに、周波数変換用ミクサやIF帯の回路においては、一般に1/f雑音の問題が発生する。1/f雑音はフリッカ雑音とも呼ばれ、デバイスを構成する半導体に依存する雑音で、周波数が低いDC近傍に近づくほど、そのレベルが高くなる。半導体デバイスが発する雑音のスペクトラムを図17に示す。雑音において1/f雑音が支配的な周波数領域から、熱雑音が支配的な周波数領域へと変化するコーナー周波数は、受信機のIC化に有効なSi系のデバイスでは、数十kHzから数百kHz以上となる場合があり、ミクサから出力される信号が数MHz以下の場合は1/f雑音の影響を受けて、感度が劣化する。
【0016】
本発明は、前記のような課題を解決するためになされたものであり、低周波におけるBPFを適切な回路規模で実現することができ、ミクサの1/f雑音の影響による感度劣化を回避することができる受信機を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明に係る受信機は、複数の局部発振波を供給する局部発振器と、前記複数の局部発振波に基づき、複数の通信システムの受信信号のうち、信号帯域の広い通信システムの受信信号を直交する2つのベースバンド信号に周波数変換するとともに、信号帯域の狭い通信システムの受信信号を直交する2つのIF信号に変換して出力する直交ミクサと、前記2つのベースバンド信号から不要信号を除去する低域通過フィルタと、前記2つのIF信号から不要信号を除去する帯域通過フィルタと、前記帯域通過フィルタから出力された2つのIF信号のうち、一方の位相を90度変える90度移相器と、前記低域通過フィルタから出力された2つのベースバンド信号を復調するとともに、前記帯域通過フィルタ及び前記90度移相器からそれぞれ出力され合成された2つのIF信号を復調する復調器とを備えるものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る受信機によれば、広帯域な変調信号に対してはダイレクトコンバージョン方式によりベースバンド信号に変換するので、ベースバンドのフィルタを低域通過フィルタ(LPF)とすることができる。このLPFはBPFと同様、通過特性の急峻性によっては回路規模が変わるものの、通過帯域幅による回路規模の変化はほとんどなく、広帯域な通過特性はBPFに比べて比較的容易に実現できるので、受信機の低周波におけるフィルタの回路規模を小さくできる効果がある。また、狭帯域な変調信号を使用する通信システムの受信信号に対しては低IF方式によって低いIF信号に変換するので、その周波数を、ミクサやIF回路の1/f雑音のコーナー周波数よりも高く設定することで、1/f雑音の影響を回避して感度劣化を抑制できる効果がある。さらに、信号帯域が狭いので低周波におけるフィルタの回路規模も小さくすることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】この発明の実施の形態1に係る受信機の構成を示す図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係る受信機の受信信号のスペクトラムを示す図である。
【図3】この発明の実施の形態1に係る受信機の直交ミクサの出力信号のスペクトラムを示す図である。
【図4】この発明の実施の形態1に係る受信機の別の構成を示す図である。
【図5】この発明の実施の形態1に係る受信機の別の構成を示す図である。
【図6】この発明の実施の形態1に係る受信機の別の構成を示す図である。
【図7】この発明の実施の形態1に係る受信機の別の構成を示す図である。
【図8】この発明の実施の形態1に係る受信機の別の構成を示す図である。
【図9】この発明の実施の形態2に係る受信機の構成を示す図である。
【図10】この発明の実施の形態3に係る受信機の構成を示す図である。
【図11】この発明の実施の形態4に係る受信機の構成を示す図である。
【図12】この発明の実施の形態4に係る受信機の直交ミクサの出力信号のスペクトラムを示す図である。
【図13】この発明の実施の形態5に係る受信機の構成を示す図である。
【図14】従来のマルチモードの受信機の構成を示す図である。
【図15】従来のマルチモードの受信機の受信信号のスペクトラムを示す図である。
【図16】従来のマルチモードの受信機のミクサの出力信号のスペクトラムを示す図である。
【図17】従来のマルチモードの受信機のミクサから出力される雑音のスペクトラムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の受信機の好適な実施の形態につき図面を用いて説明する。
【0021】
実施の形態1.
この発明の実施の形態1に係る受信機について図1から図8までを参照しながら説明する。図1は、この発明の実施の形態1に係る受信機の構成を示す図である。
【0022】
図1において、この発明の実施の形態1に係る受信機は、アンテナ1と、高周波増幅器2と、通信システムに応じた局部発振源3a、3bと、直交ミクサ4と、低域通過フィルタ(LPF)6a、6bと、帯域通過フィルタ(BPF)7a、7bと、IF帯の90度移相器8と、可変利得増幅器(VGA)9a、9b、9cと、AD変換器(A/D)10a、10b、10cと、復調器11とが設けられている。
【0023】
また、直交ミクサ4は、単位ミクサ4a、4bと、局部発振波用の90度移相器5とが設けられている。
【0024】
つぎに、この実施の形態1に係る受信機の動作について図面を参照しながら説明する。
【0025】
図2は、この発明の実施の形態1に係る受信機の受信信号のスペクトラムを示す図である。また、図3は、この発明の実施の形態1に係る受信機の直交ミクサの出力信号のスペクトラムを示す図である。
【0026】
図2において、広帯域な変調信号を使う第1の通信システムの受信信号101a(周波数帯域はBW)と、狭帯域な変調信号を使う第2の通信システムの受信信号101b(周波数帯域はBW)と、第2の通信システムの受信信号101bを周波数変換する際のミクサ4a、4bにおけるイメージ信号に相当する帯域の雑音102とが描かれている。
【0027】
それぞれ帯域内が複数のチャネルに分割され、それぞれのチャネルに信号が存在する。チャネル帯域はそれぞれ、bw、bwである。第1の通信システムにおける所望のチャネルの信号の中心周波数をfrf1とし、第2の通信システムにおける所望のチャネルの信号の中心周波数をfrf2とした場合、本実施の形態1では直交ミクサ4により、第1の通信システムの所望のチャネルの信号を、図1中の局部発振源3aから出力され、中心周波数frf1と同じ周波数flo1を有する局部発振波(図中、LO1と記載)を用いてダイレクトコンバージョン方式によりベースバンド信号に変換するとともに、第2の通信システムの所望のチャネルの信号を、局部発振源3bから出力され、周波数flo2を有する局部発振波(図中、LO2と記載)により低IF方式で、AD変換できるような周波数の低いIF信号に周波数変換する。
【0028】
周波数変換された後のミクサ4a、4bの出力信号のスペクトラムを図3に示す。ダイレクトコンバージョン方式によりベースバンド信号に変換された第1の通信システムの信号101a'は、DCからBWの1/2の周波数まで存在し、所望の信号はチャネル帯域bwの1/2の帯域幅を有する。また、低IF方式により周波数の低いIF信号に変換された第2の通信システムの信号101b'は、ダイレクトコンバージョン方式により変換されたベースバンド信号よりも高い周波数に変換される。第2の通信システムの信号を周波数変換する際に、ミクサ4a、4bによって同一の周波数に変換されたイメージ信号帯域の雑音102'が図示されている。
【0029】
ミクサ4a、4bから出力された第1の通信システムの信号101a'は、通過帯域をチャネル帯域bwの1/2に設定されたLPF6a、6bにより不要信号を除去され、後段のVGA9a、9bにより適切なレベルまで増幅されてAD変換器10a、10bによりディジタル信号に変換されて復調される。
【0030】
一方、ミクサ4a、4bから出力された第2の通信システムの信号101b'は、通過帯域をチャネル帯域bwと等しく設定されたBPF7a、7bにより不要信号を除去され、BPF7aの出力のみ、90度移相器8により、90度の移相変化を受けた後、BPF7bの出力と合成される。これにより、図2中の第2の通信システムの信号を周波数変換する際に、同時に周波数変換されたイメージ信号帯域の雑音102'が抑制され、所望のチャネルの信号のみが得られる。その後、VGA9cにより適切なレベルまで増幅されてAD変換器10cによりディジタル信号に変換されて復調される。
【0031】
本実施の形態1では、広帯域の変調信号はダイレクトコンバージョン方式により、狭帯域の変調信号は低IF方式により、それぞれベースバンド信号と周波数の低いIF信号に変換している。前者はろ波にLPFを用いるので、変調信号の帯域に合わせて通過帯域を広くしなくてはならない場合でも容易に実現できる。後者は帯域が狭いので、これをろ波するためのBPFの比帯域はそれほど大きくならず、比較的容易にフィルタを実現できる。これにより、受信機のフィルタを実現しやすくする効果を得ることができる。さらに、ミクサやその後段の回路において1/f雑音が高いレベルとなるDC近傍には、広帯域の変調信号が存在するので、狭帯域の変調信号に比べて1/f雑音の影響を受けにくく、感度劣化が生じにくい。すなわち、受信機の受信感度を高くし易い効果を得ることができる。
【0032】
図4は、この発明の実施の形態1に係る受信機の別の構成を示す図である。
【0033】
本実施の形態1では、直交ミクサ4を構成する90度移相器5は複数の通信システムにおいて共用しているが、本実施の形態1はこれに限らず、図4に示すように、局部発振源3a、3bが出力する局部発振波の周波数に合わせて90度移相器5a、5bを用いてもよい。この場合には、局部発振源3a、3bが出力する局部発振波の周波数に合わせて90度移相器5a、5bの周波数帯域を実現すればよいので、90度移相器を容易に実現できる。このように構成した場合においても、ベースバンド及びIF帯で使うフィルタの実現性を高めるとともに、ミクサやその後段の回路の1/f雑音の影響を受けにくく感度劣化を生じにくくするという効果を得ることができる。
【0034】
図5は、この発明の実施の形態1に係る受信機の別の構成を示す図である。
【0035】
また、本実施の形態1では、低IF方式によって受信する狭帯域の通信システムは1つであるとしたが、本実施の形態1はこれに限らず、3つ以上の無線通信システムの同時受信にも適用できる。図5はそのような実施の形態で、図5において、図1の構成に加えて、局部発振源3cと、BPF7c、7dと、90度移相器8bと、可変振幅増幅器9dと、AD変換器10dとが設けられている。
【0036】
追加した回路は、第3の通信システムに対応して動作する回路であり、局部発振源3cから供給する局部発振波により、ミクサ4a、4bにおいて周波数変換を行い、その出力をBPF7c、7dによりろ波し、BPF7cの出力を90度移相器8bにより移相して、BPF7dの出力と合成し、振幅可変増幅器9dにより増幅して、AD変換器10dによりディジタル信号に変換する。即ち、第3の通信システムに対しても低IF方式の受信機を構成することで、3つの通信システムを同時に受信することができる。このように構成した場合においても、ベースバンド及びIF帯で使うフィルタの実現性を高めるとともに、ミクサやその後段の回路の1/f雑音の影響を受けにくく感度劣化を生じにくくするという効果を得ることができる。
【0037】
もちろん、図5に示す構成においても、直交ミクサ4を構成する90度移相器5は、図4と同様、局部発振源3a、3b、3cそれぞれの出力に設けても同様の効果が得られることは言うまでもない。
【0038】
図6は、この発明の実施の形態1に係る受信機の別の構成を示す図である。
【0039】
また、本実施の形態1の別の構成として、図6に示すように、直交ミクサ4の出力を、AD変換器10a、10bを用いてディジタル信号に変換した後に、第1の通信システムの所望信号に対してはLPF6a、6bを用いて、第2の通信システムの所望信号に対してはBPF7a、7bを用いて不要波を除去し、90度移相器8による移相後に合成して、それぞれ、可変利得増幅器9a、9b及び9cにより所望の強度まで増幅してから復調器11により復調してもよい。この場合は、フィルタはディジタル回路により構成することになるため、アナログ回路により構成した場合に比べて中心周波数や通過帯域幅などを変更しやすく、あらかじめ定めた通信システムとは異なる他の通信システムを受信することも容易となる。
【0040】
また、図1に示す構成と図6に示す構成を組み合わせることで、ダイレクトコンバージョン方式と低IF方式のどちらか一方においてのみ、直交ミクサ4の出力をAD変換してから所望の信号のろ波を行い、他方は図1に示す構成と同じく、所望の信号のろ波を行った後にAD変換してディジタル信号に変換することも可能である。このように構成した場合においても、ベースバンド及びIF帯で使うフィルタの実現性を高めるとともに、ミクサやその後段の回路の1/f雑音の影響を受けにくく感度劣化を生じにくくするという効果を得ることができる。
【0041】
図7は、この発明の実施の形態1に係る受信機の別の構成を示す図である。
【0042】
また、本実施の形態1の別の構成として、ダイレクトコンバージョン方式と低IF方式においてAD変換器を共用することも可能である。図7はこのような受信機の構成を示す図であり、図中、低IF方式の受信機を構成するIF帯の可変利得増幅器9cの出力を、ダイレクトコンバージョン方式の受信機を構成する可変利得増幅器9aの出力と合成してAD変換器10aに入力している。
【0043】
可変利得増幅器9cから出力されるIF信号と、可変利得増幅器9aから出力されるベースバンド信号は、図3に示すように周波数が異なるため、これらを合成して同一のAD変換器10aにおいてディジタル信号に変換することが可能である。これによりAD変換器の数を削減することができる効果が得られる。
【0044】
図8は、この発明の実施の形態1に係る受信機の別の構成を示す図である。
【0045】
また、本実施の形態1の別の構成として、低IF方式において周波数変換後の2つのIF信号を90度位相差で合成した後に帯域通過フィルタでろ波することも可能である。図8はこのような受信機の構成を示す図であり、図中、直交ミクサ4から出力される2つのIF信号の一方は、90度移相器8で位相を90度変化させた後、他方のIF信号と合成され、その後、帯域通過フィルタ7aによりろ波される。
【0046】
帯域通過フィルタ7aによる所望のチャネルの信号のろ波と、一方のIF信号のみ位相を90度変化させて合成し、所望のチャネルの信号と同一のIF周波数に変換されたイメージ帯域の雑音を抑制することは、どちらを先に行ってもよい。従って、この構成によりIF帯の帯域通過フィルタの数を削減することができる効果が得られる。なお、この構成は本実施の形態にかかわらず、以下に示す他の実施の形態においても同様に実現でき、これにより、IF帯の帯域通過フィルタの数を削減することができる効果が得られる。
【0047】
実施の形態2.
この発明の実施の形態2に係る受信機について図9を参照しながら説明する。図9は、この発明の実施の形態2に係る受信機の構成を示す図である。
【0048】
本実施の形態2では、図9に示すように、複数の通信システムに応じた局部発振波flo1、flo2を出力する局部発振源3aを備え、出力する周波数を切り替えて直交ミクサ4に局部発振波を供給する。これにより、2つの通信システムを異なるタイミングにより受信することができる。このように構成した場合においても、低い周波数帯で使うフィルタの実現性を高めるとともに、ミクサやその後段の回路の1/f雑音の影響を受けにくく感度劣化を生じにくくするという効果を得ることができる。なお、図9は、本実施の形態2を上記の実施の形態1に適用した場合を示しているが、他の実施の形態にも適用できることは言うまでもない。
【0049】
実施の形態3.
この発明の実施の形態3に係る受信機について図10を参照しながら説明する。図10は、この発明の実施の形態3に係る受信機の構成を示す図である。
【0050】
本実施の形態3では、狭帯域である第2の通信システムの信号を受信する低IF方式の受信部において、図10に示すように、ミクサ4a、4bの出力をBPF7a、7bによりろ波した後、さらに局部発振源3cからの局部発振波を2分配後、一方はそのまま、他方は90度移相器8で位相を90度変えてからミクサ12a、12bに供給し、周波数変換を行ってから合成してもよい。なお、局部発振源3c、90度移相器8、及びミクサ12a、12bから周波数変換手段が構成される。
【0051】
この構成では、これまでに説明した実施の形態におけるIF信号に対する90度移相器8が不要となる。IF信号に対する移相器はIF信号帯域全域において90度の移相量を得る必要があり、帯域の端での移相量誤差が問題となる場合があるが、図10に示す構成ではあらかじめ定められた固定の局部発振周波数においてのみ90度の移相量を得られればよく、実現が容易となる。
【0052】
また、ミクサ12a、12bによる周波数変換において、後段の可変利得増幅器9cやAD変換器10cの構成が容易となる周波数を周波数変換後の周波数として選択することで、受信機の実現を容易にするという効果が得られる。
【0053】
また、可変利得増幅器9cをミクサ12a、12bの前段に配置することも可能である。この場合、ミクサ12a、12bによって所望波と同一周波数のIFに変換されるイメージ信号のレベルが所望波のレベルに比べて小さくなくてはならず、またIF可変利得増幅器は2つ必要となるが、ミクサ12a、12bの雑音指数の影響による感度劣化を抑制できるという効果が得られる。
【0054】
実施の形態4.
この発明の実施の形態4に係る受信機について図11及び図12を参照しながら説明する。図11は、この発明の実施の形態4に係る受信機の構成を示す図である。また、図12は、この発明の実施の形態4に係る受信機の直交ミクサの出力信号のスペクトラムを示す図である。
【0055】
図11において、直交ミクサ4に供給する局部発振波の振幅を制御する可変利得増幅器13a、13bが設けられている。
【0056】
ミクサ4a、4bは、局部発振波の電力を低めると変換利得が低下する。したがって、通信システムの受信信号のレベルに応じて局部発振波の電力を変えると、ミクサ4a、4bの出力での各通信システムの電力レベルを一定とすることができる。
【0057】
この様子を図12に示す。それぞれの通信システムにおいて、最大の強度を有する信号に合わせてミクサ4a、4bの変換利得を決定することで、各通信システムによらずミクサ4a、4bから出力される信号の強度は一定となる。その後、ダイレクトコンバージョン方式により受信する第1の通信システムの信号はLPF6a、6bにおいて、低IF方式にて受信する第2の通信システムの信号はBPF7a、7bにおいて、所望の帯域のみがろ波される。上記の実施の形態1にあった可変利得増幅器9a、9b、9cは、直交ミクサ4が利得可変の役割を果たしているので不要となり、LPF6a、6bから出力されるダイレクトコンバージョン方式で受信される第1の通信システムのベースバンド信号と、90度移相器8から出力される低IF方式で受信される第2の通信システムのIF信号はそのまま、AD変換器10a、10b、10cに入力することができ、ディジタル信号に変換された後、復調器11により復調される。したがって、IF帯の可変利得増幅器を削減するこができる。
【0058】
なお、本実施の形態4は、通信システムの受信信号のレベルに応じて局部発振波の電力を変えて、ミクサ4a、4bの出力での各通信システムの電力レベルを一定としたが、本実施の形態4はこれに限らず、RF帯の高周波増幅器2の利得も合わせて可変するようにしてもよい。これにより、直交ミクサ4に供給する局部発振波の振幅を制御する可変利得増幅器13a、13bの可変範囲を狭くすることができ、その製作を容易にすることができる。
【0059】
実施の形態5.
この発明の実施の形態5に係る受信機について図13を参照しながら説明する。図13は、この発明の実施の形態5に係る受信機の構成を示す図である。
【0060】
図13において、拡散符号を生成する拡散符号生成回路14a、14bと、局部発振源3a、3cからの局部発振波と拡散符号生成回路14a、14bからの拡散符号を混合する混合器15a、15bとが設けられている。
【0061】
広帯域な変調信号を有する第1の通信システム、狭帯域な変調信号を有する第2の通信システムの他に加えて、もうひとつの広帯域な変調信号を有する第3の通信システムを同時に受信する場合、図5に示すように、第3の通信システムに対応する低IF受信機を設ければよい。しかし、第3の通信システムが広帯域な変調信号を有する場合、低IF方式では対応できず、ダイレクトコンバージョン方式を適用しなければならない場合がある。しかし、ダイレクトコンバージョン方式を適用すると直交ミクサ4の出力であるベースバンドにおいて第1の通信システムの信号と重なり、分離できなくなってしまう。
【0062】
本実施の形態5は、第1、第3の2つの広帯域な変調信号を有する通信システムの受信信号をダイレクトコンバージョン方式を適用して直交ミクサ4においてベースバンド信号に変換しても分離できるようにするためのもので、具体的には、直交ミクサ4に供給する局部発振波flo1、flo3を拡散符号で拡散し、これを遣って受信信号をベースバンド信号に変換する。
【0063】
本実施の形態5では、異なる拡散符号により、広帯域な変調信号を有する、第1の通信システムの受信信号と第3の通信システムの受信信号とを、ベースバンド信号に変換するので、直交ミクサ4の出力で同一周波数に変換され、これをLPF6a、6bでろ波して可変利得増幅器9a、9bで適当な振幅まで増幅してAD変換器10a、10bでディジタル信号に変換後、復調器11において、逆拡散することで分離して元の2つの異なる信号に戻すことができる。これにより、複数の広帯域な変調信号を有する複数の通信システムの信号を同時に受信することができる。
【符号の説明】
【0064】
1 アンテナ、2 高周波増幅器、3a、3b、3c 局部発振源、4 直交ミクサ、4a、4b 単位ミクサ、5、5a、5b 90度移相器、6a、6b LPF、7a、7b、7c、7d BPF、8、8a、8b 90度移相器、9a、9b、9c、9d 可変利得増幅器、10a、10b、10c、10d AD変換器、11 復調器、12a、12b ミクサ、13a、13b 可変利得増幅器、14a、14b 拡散符号生成回路、15a、15b 混合器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の局部発振波を供給する局部発振器と、
前記複数の局部発振波に基づき、複数の通信システムの受信信号のうち、信号帯域の広い通信システムの受信信号を直交する2つのベースバンド信号に周波数変換するとともに、信号帯域の狭い通信システムの受信信号を直交する2つのIF信号に変換して出力する直交ミクサと、
前記2つのベースバンド信号から不要信号を除去する低域通過フィルタと、
前記2つのIF信号から不要信号を除去する帯域通過フィルタと、
前記帯域通過フィルタから出力された2つのIF信号のうち、一方の位相を90度変える90度移相器と、
前記低域通過フィルタから出力された2つのベースバンド信号を復調するとともに、前記帯域通過フィルタ及び前記90度移相器からそれぞれ出力され合成された2つのIF信号を復調する復調器と
を備えたことを特徴とする受信機。
【請求項2】
前記90度移相器の代わりに、位相が90度異なる2つの局部発振波に基づき、前記帯域通過フィルタから出力された2つのIF信号をそれぞれ周波数変換する周波数変換手段を備え、
前記復調器は、前記低域通過フィルタから出力された2つのベースバンド信号を復調するとともに、前記周波数変換手段から出力され合成された2つのIF信号を復調する
ことを特徴とする請求項1記載の受信機。
【請求項3】
前記局部発振器は、前記複数の通信システムに対応した複数の局部発振波を同時に供給する
ことを特徴とする請求項1又は2記載の受信機。
【請求項4】
前記局部発振器は、前記複数の通信システムに対応した複数の局部発振波を切り替えて供給する
ことを特徴とする請求項1又は2記載の受信機。
【請求項5】
前記直交ミクサから出力される全ての信号の強度が一定となるように、前記直交ミクサに供給する局部発振波の振幅を制御する可変利得増幅器をさらに備えた
ことを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかに記載の受信機。
【請求項6】
拡散符号を生成する拡散符号生成回路と、
信号帯域の広い通信システムに対応する局部発振波及び前記拡散符号を混合する混合器とをさらに備えた
ことを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれかに記載の受信機。
【請求項7】
局部発振波を入力し、複数の通信システムの受信信号のうち、信号帯域の広い通信システムの受信信号を直交する2つのベースバンド信号に周波数変換するとともに、信号帯域の狭い通信システムの受信信号を直交する2つのIF信号に変換して出力する直交ミクサ
を備えたことを特徴とする受信機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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