説明

受信装置および振幅制御方法並びにプログラム

【課題】D/A変換部およびそれに伴うアナログ部品を削除することができる受信装置を提供する。
【解決手段】受信増幅部1は受信アナログ信号を増幅し周波数変換して出力する。アナログ/デジタル変換部2は受信増幅部1の出力信号をデジタル信号に変換する。基準振幅メモリ部52には、所望のデジタル信号が記憶されている。比較制御部51は、アナログ/デジタル変換部2の出力と基準振幅メモリ部52に記憶されたデジタル信号とを比較し、比較結果に対応する差分制御情報S6を出力する。レベル補正部53は、アナログ/デジタル変換部2の出力を差分制御情報S6に基づいて補正して出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、W−CDMA(Wideband Code Division Multiple Access)方式を用いた携帯電話等の分野において用いられる受信装置および振幅制御方法並びにプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、W−CDMAの受信装置は、A/D変換部への受信アナログ入力を一定にし、受信デジタル信号の振幅が所望の値になるようにAGC(Auto Gain Control)を行っている。 この種の受信装置のAGCを図7を参照して説明する。
この図に示す受信装置は、受信増幅部71、アナログ/デジタル(A/D)変換部72及び演算部75を備える。
受信増幅部71はアンテナからの受信アナログ信号S71を増幅する。アナログ/デジタル(A/D)変換部72は受信増幅部71の出力を受信デジタル信号S72に変換する。演算部75は、所望のデジタル信号の振幅と受信デジタル信号S72の振幅の差分を算出し、デジタル/アナログ(D/A)変換部76に制御情報S76を出力する。D/A変換部76は、制御情報S76をアナログ信号に変換し、受信増幅部71の可変減衰部73へ出力する。
受信増幅部71は、増幅部11と帯域通過フィルタ12と可変減衰部73と周波数変換部13とから構成される。演算部75は、所望のデジタル信号の振幅をあらかじめ記憶した基準振幅メモリ部752と、受信デジタル信号S72と所望のデジタル信号の振幅を比較し、振幅の差分の制御情報S76をD/A変換部76に出力する比較制御部751とから構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−174623号公報
【特許文献2】特開2001−245008号公報
【特許文献3】特開2003−152479号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した受信装置にあっては、受信アナログ信号S71を所望の受信デジタル信号S75に補正するAGCを行うため、受信増幅部71の可変減衰部73をD/A変換部76から出力するアナログ信号によって制御するようになっているので、アナログ部品およびD/A変換部76が削除できない問題があった。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、D/A変換部およびそれに伴うアナログ部品を削除することができる受信装置および振幅制御方法並びにプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、受信アナログ信号を増幅し周波数変換して出力する受信増幅部と、前記受信増幅部の出力信号をデジタル信号に変換するアナログ/デジタル変換器と、所望のデジタル信号が記憶された基準振幅メモリ部と、前記アナログ/デジタル変換器の出力と前記基準振幅メモリ部に記憶されたデジタル信号とを比較し、比較結果に対応する差分制御情報を出力する比較制御部と、前記アナログ/デジタル変換器の出力を前記差分制御情報に基づいて補正し出力するレベル補正部とを具備することを特徴とする受信装置である。
【0007】
また、本発明は、受信したアナログ信号をA/D変換部にてアナログ/デジタル変換して得られた受信デジタル信号の振幅を所定の値に制御する受信装置における振幅制御方法において、前記受信デジタル信号と予め記憶された所望のデジタル信号との振幅の比較を行う比較処理と、前記比較処理において検出された振幅の差分が最小となるように前記受信デジタル信号の振幅を補正する補正処理とを有することを特徴とする受信装置における振幅制御方法である。
【0008】
また、本発明は、受信したアナログ信号をA/D変換部にてアナログ/デジタル変換して得られた受信デジタル信号の振幅を所定の値に制御するプログラムにおいて、前記受信デジタル信号と予め記憶された所望のデジタル信号との振幅の比較を行い差分を検出する比較処理と、前記比較処理において検出された振幅の差分が最小となるように前記受信デジタル信号の振幅を補正する補正処理とをコンピュータに実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、受信デジタル信号と予め記憶された所望のデジタル信号との差分が最小となるように受信デジタル信号の振幅を補正するようにしたので、従来、AGCのために必要となっていたアナログ部品およびD/A変換部を削除することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態による受信装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示すレベル補正部53の構成を示すブロック図である。
【図3】図1における比較制御部51の構成を示すブロック図である。
【図4】図2に示すレベル補正部53の動作を説明するための図である。
【図5】図1に示す比較制御部51から出力される差分制御情報S6を示す図である。
【図6】図1に示す演算部5の動作を説明するための図である。
【図7】従来の受信装置の構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態による受信装置の構成を示すブロック図である。この受信装置は、受信増幅部1、アナログ/デジタル(A/D)変換部2及び演算部5を備える。
受信増幅部1はアンテナからの受信アナログ信号S1を増幅し、受信アナログ信号S1aを出力する。アナログ/デジタル(A/D)変換部2は、受信アナログ信号S1aを受信デジタル信号S2に変換する。演算部5は、所望のデジタル信号の振幅と受信デジタル信号S2の振幅の差分を算出し、算出した差分に応じて受信デジタル信号S2を補正し受信デジタル信号S5として出力する。
【0012】
受信増幅部1は、増幅部11と帯域通過フィルタ12と周波数変換部13とから構成される。演算部5は、所望のデジタル信号の振幅をあらかじめ記憶した基準振幅メモリ部52と、受信デジタル信号S2と所望のデジタル信号の振幅を比較する比較制御部51と、受信デジタル信号S2の振幅と所望のデジタル信号の振幅差分を補正するレベル補正部53とから構成される。
【0013】
図2は、レベル補正部53の構成を示すブロック図である。このレベル補正部53は、ビットシフト部30、ビットシフト部31〜37、スイッチ40〜47及び加算部50を備える。
ビットシフト部30は入力した受信デジタル信号S2をそのまま出力する。ビットシフト部31〜37は、入力した受信デジタル信号S2の出力ビットを予めシフトさせ入力した振幅値に対して出力の振幅値を減衰させた受信デジタル信号を出力する。スイッチ40〜47は、比較制御部51からの差分制御情報S6によりオン/オフ制御される。加算部50は、オン/オフ制御されたスイッチ40〜47を介して入力されるビットシフト部30〜37の出力を加算し、一つの受信デジタル信号S5として出力する。
【0014】
図3は、比較制御部51の構成を示すブロック図である。この比較制御部51は、平均処理部182、比較器184及び制御部185を備える。
平均処理部182は、入力される受信デジタル信号S2を任意の一定時間蓄積し平均化した平均受信電力データS31を出力する。比較器184は、平均受信電力データS31と基準振幅メモリ部52にあらかじめ設定された基準電力データS32との比較を行い、差分を示す振幅情報S33を出力する。制御部185は、振幅情報S33を元に8ビットの差分制御情報S6を出力する。
【0015】
次に、上述した受信装置の動作について説明する。
アンテナから受信した受信アナログ信号S1は、受信増幅部1で増幅、帯域制限、および周波数変換され、A/D変換部2で受信デジタル信号S2に変換される。受信デジタル信号S2が、演算部5に入力され、演算部5は受信デジタル信号S2を所望の振幅の受信デジタル信号にレベル補正し、受信デジタル信号S5として出力する。演算部5では、比較制御部51およびレベル補正部53に受信デジタル信号S2が入力される。比較制御部51は、基準振幅メモリ部52に予め記憶された所望のデジタル信号と受信デジタル信号S2を比較して差分制御情報S6を出力する。
【0016】
次に、図2に示すレベル補正部53の動作について説明する。ビットシフト部30は、入力された受信デジタル信号S1をそのまま出力し、ビットシフト部31〜37は、入力された受信デジタル信号S1を、それぞれ1、2、3、4、5、6、7ビットだけLSB側へシフトして出力している。スイッチ40〜47は、差分制御情報S6によりオン/オフ制御され、ビットシフト部30〜37の出力を選択して加算部50に出力する。
【0017】
ここで、デジタル信号化された受信デジタル信号の振幅値は2進数で表現されている。2進数は桁が1つ下がるとその数字は今までの1/2倍、桁が1つ上がるとその数字は今までの2倍の大きさを示すことになる。よって、2進数で表現された振幅値は、nビット下がると1/2倍、nビット上がると2倍の振幅値になる。例えば、受信信号出力を補正して、2dB分のRF信号出力電圧を減衰させる(−2dB)場合、振幅比で“0.794328234”となる。1以下の数を2進数で表現した場合、少数点以下のそれぞれの桁は、図4(a)に示すような値となる。よって、“−2dB”を2進数で表現すると、図4(b)に示すように“0.1100110”となる。したがって、レベル補正部53では、受信デジタル信号を補正するためには、1ビットシフト部31、2ビットシフト部32、5ビットシフト部35、6ビットシフト部36の組み合わせを加算部50で加算すればよい。ここで、加算部50の出力ビット数は、入力するベースバンド信号の最大振幅値に対して2ビット以上大きなビット数とする。
【0018】
図5は、レベル補正部53で設定される補正値に対するスイッチ部40〜47の組み合わせを示している。スイッチ部40〜47の制御により加算部50に入力されるビットシフト部30〜37が選択され、加算部50の出力が補正後の受信デジタル信号S5となる。ここでは、設定したいレベル補正値を理想dB値、その理想dB値を比にした値を真値として表現する。そしてこのレベル補正部53により実際に設定される補正値を近似dB値とする。例えば、補正値“−2dB”は、近似dB値として、“−1.972dB”という値で実現することができる。ビットシフト部を設ける数を増やせば増やすほど、理想dB値と近似dB値の間の誤差は小さくなるが、ビットシフト部が7つの場合でも、この誤差は、実用上問題ないほど小さくなっている。
【0019】
ここで、図6(a)に示す受信レベル信号S2の振幅のレベル補正値“ΔαdB”が“−0.8dB”の場合の補正について説明する。図3の比較制御部51の制御部185から、レベル補正値“−0.8dB”を設定する差分制御情報S6を出力する。制御部185には、あらかじめ図5に示すレベル補正値に対するスイッチ40〜47の組み合わせが設定されており、この場合、差分制御情報S6として"01110101“が出力される。この差分制御情報S6により、図2のレベル補正部53のスイッチ41、42、43、45、47がオンとされる。従って、加算部50から出力される受信デジタル信号S5の振幅は、入力信号を1/2、1/4、1/8、1/32、1/64倍したデジタル信号を加算した値で出力される。レベル補正部53から出力される受信デジタル信号S5は、入力された受信デジタル信号S2の振幅に対して“−0.8dB”減衰されているので、受信デジタル信号S5は所望の受信振幅になる。
【0020】
同様に、図6(b)に示す振幅のレベル補正値“ΔβdB”が“+1.2dB”の場合の補正について説明する。この場合、比較制御部51から差分制御情報S6として"10010011“が出力される。この差分制御情報S6により、図2のレベル補正部53のスイッチ40、43、46、47がオンとされる。従って、加算部50から出力される受信デジタル信号S5の振幅は、入力信号を1、1/8、1/64、1/128倍したデジタル信号を加算した値で出力される。レベル補正部53から出力される受信デジタル信号S5は、入力された受信デジタル信号S2の振幅に対して“+1.2dB”増加されているので、受信デジタル信号S5は所望の受信振幅になる。
【0021】
次に、図3を参照し比較制御部51の動作について説明する。受信デジタル信号S2と基準振幅メモリ部52にあらかじめ設定された基準電力データS32はそれぞれ比較制御部51に入力され、受信デジタル信号S2は平均処理部182から平均受信電力データS31として出力される。比較器184には、平均受信電力データS31および基準電力データS32が入力される。比較器184は、平均受信電力データS31と基準電力データS32のデジタル信号の振幅差分を一定の基準に従って受信電力レベルに変換し、振幅情報S33として出力する。制御部185は、振幅情報S33から得られた振幅差分に応じた差分制御情報S6をレベル補正部53に出力する。
なお、上記実施形態は受信装置をハードウエアによって構成した場合であるが、この発明による受信装置をマイクロプロセッサを用いて構成することも勿論可能である。
この場合、図1のレベル補正部53、比較制御部51に代えてマイクロプロセッサを用いる。そして、このマイクロプロセッサによって、受信デジタル信号S2と予め基準振幅メモリ部51に記憶された所望のデジタル信号との振幅の比較を行い差分を検出する比較処理と、比較処理において検出された振幅の差分が最小となるように受信デジタル信号S2の振幅を補正する補正処理とを行う。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明は、W−CDMA(Wideband Code Division Multiple Access)方式を用いた携帯電話等の分野において用いられる。さらに、本発明は、今後AGC制御を適用する受信装置および振幅制御方法並びにプログラムに対しても適用できる。
【符号の説明】
【0023】
1…受信増幅部
2…A/D変換部
5…演算部
30〜37…ビットシフト部
40〜47…スイッチ
50…加算器
51…比較制御部
52…基準振幅メモリ部
53…レベル補正部
182…平均処理部
184…比較器
185…制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信アナログ信号を増幅し周波数変換して出力する受信増幅部と、
前記受信増幅部の出力信号をデジタル信号に変換するアナログ/デジタル変換器と、
所望のデジタル信号が記憶された基準振幅メモリ部と、
前記アナログ/デジタル変換器の出力と前記基準振幅メモリ部に記憶されたデジタル信号とを比較し、比較結果に対応する差分制御情報を出力する比較制御部と、
前記アナログ/デジタル変換器の出力を前記差分制御情報に基づいて補正し出力するレベル補正部と、
を具備することを特徴とする受信装置。
【請求項2】
前記レベル補正部は、
前記アナログ/デジタル変換器の出力をビットシフトする複数のビットシフト部と、
前記各ビットシフト部の出力を前記差分制御情報に従ってオン/オフ制御する制御手段と、
前記制御手段の出力を加算する加算器と、
から構成されていることを特徴とする請求項1に記載の受信装置。
【請求項3】
前記比較制御部は、前記アナログ/デジタル変換器の出力を受けて平均受信電力を示す平均受信電力データを出力する平均処理部と、
前記平均受信電力データと、前記基準振幅メモリ部の出力データの差分を示す差分データを出力する比較器と、
前記差分データに対応する差分制御情報を前記レベル補正部へ出力する制御部と、
から構成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の受信装置。
【請求項4】
受信したアナログ信号をA/D変換部にてアナログ/デジタル変換して得られた受信デジタル信号の振幅を所定の値に制御する受信装置における振幅制御方法において、
前記受信デジタル信号と予め記憶された所望のデジタル信号との振幅の比較を行う比較処理と、
前記比較処理において検出された振幅の差分が最小となるように前記受信デジタル信号の振幅を補正する補正処理と、
を有することを特徴とする受信装置における振幅制御方法。
【請求項5】
前記比較処理は、前記受信デジタル信号から平均受信電力を示す平均受信電力データを求め、該平均受信電力データと前記所望のデジタル信号との比較を行うことを特徴とする請求項4に記載の受信装置における振幅制御方法。
【請求項6】
前記補正処理は、前記受信デジタル信号を前記比較処理の結果に応じて複数回ビットシフトし、その結果を加算することによって補正後のデジタル信号を得ることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の受信装置における振幅制御方法。
【請求項7】
受信したアナログ信号をA/D変換部にてアナログ/デジタル変換して得られた受信デジタル信号の振幅を所定の値に制御するプログラムにおいて、
前記受信デジタル信号と予め記憶された所望のデジタル信号との振幅の比較を行い差分を検出する比較処理と、
前記比較処理において検出された振幅の差分が最小となるように前記受信デジタル信号の振幅を補正する補正処理と、
をコンピュータに実行させるためのプログラム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−206629(P2010−206629A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−50860(P2009−50860)
【出願日】平成21年3月4日(2009.3.4)
【出願人】(390010179)埼玉日本電気株式会社 (1,228)
【Fターム(参考)】