説明

受信装置及び受信方法

【課題】局部発振信号の位相調整の精度を向上させることができるようにする。
【解決手段】局部発振部は、局部発振信号を発生し、ミキサは、無線で送信される変調信号と、発生された局部発振信号とをミキシングし、状態検出部は、ミキシングにより得られるベースバンドの信号の状態を検出し、位相調整部は、検出された状態に応じて、局部発振信号の位相の調整を行うので、局部発振信号の位相調整の精度を向上させることができる。本発明は、例えば、ミリ波等の無線通信を行う受信装置に適用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、受信装置及び受信方法に関し、特に、局部発振信号の位相調整の精度を向上させることができるようにした受信装置及び受信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ミリ波帯などの無線通信を行う通信装置においては、局部発振器が用いられるが、局部発振器からの局部発振信号の位相がずれる場合がある。
【0003】
このような位相のずれを調整する技術としては、例えば、特許文献1が知られている。特許文献1には、モノリシック水晶フィルタを90度移相器として使用して、検出された位相誤差に応じて可変容量を調整することで、位相誤差を調整する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−352376号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された技術であると、2つのミキサに入力される信号が、局部発振器から直接入力されたものと、90度移相器を通過したものとで異なるため、入力信号にバラツキが生じて、位相誤差の調整の精度が悪化する場合がある。
【0006】
本技術はこのような状況に鑑みてなされたものであり、局部発振信号の位相調整の精度を向上させることができるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本技術の一側面の受信装置は、局部発振信号を発生する局部発振部と、無線で送信される変調信号と、発生された前記局部発振信号とをミキシングするミキサと、ミキシングにより得られる信号の状態を検出する状態検出部と、検出された前記信号の状態に応じて、前記局部発振信号の位相の調整を行う位相調整部とを備える。
【0008】
前記局部発振部は、直交変復調に用いられる90度位相のずれた局部発振信号を発生し、前記ミキサは、一方の局部発振信号と前記変調信号のI信号を、他方の局部発振信号と前記変調信号のQ信号を、それぞれミキシングする。
【0009】
前記状態検出部は、ミキシングにより得られる信号から、一方の局部発振信号と他方の局部発振信号の位相のずれを検出し、前記位相調整部は、LC共振回路を負荷とした差動増幅回路として構成され、検出された前記位相のずれに応じて、前記LC共振回路の容量値を変化させることで、前記局部発振信号の位相の調整を行う。
【0010】
前記局部発振部は、注入信号として注入された前記変調信号に同期した局部発振信号を発生し、前記ミキサは、前記変調信号と、発生された前記局部発振信号をミキシングすることにより、前記変調信号の注入同期検波を行う。
【0011】
前記状態検出部は、ミキシングにより得られる信号のレベルを検出し、前記位相調整部は、LC共振回路を負荷とした差動増幅回路として構成され、検出された前記信号のレベルに応じて、前記LC共振回路の容量値を変化させることで、前記局部発振信号の位相の調整を行う。
【0012】
前記変調信号は、ミリ波帯の信号である。
【0013】
受信装置は、独立した装置であってもよいし、1つの装置を構成している内部ブロックであってもよい。
【0014】
本技術の一側面の受信方法は、前述した本技術の一側面の受信装置に対応する方法である。
【0015】
本技術の一側面の受信装置及び方法においては、局部発振信号が発生され、無線で送信される変調信号と、発生された局部発振信号とがミキシングされ、ミキシングにより得られる信号の状態が検出され、検出された信号の状態に応じて、局部発振信号の位相の調整が行われる。
【発明の効果】
【0016】
本技術の一側面によれば、局部発振信号の位相調整の精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本技術を適用した無線通信システムの第1の実施の形態の構成を示す図である。
【図2】位相調整回路の構成例を示す図である。
【図3】LC共振回路の容量値の変化による出力振幅の変化を示す図である。
【図4】LC共振回路の容量値の変化による出力位相の変化を示す図である。
【図5】I信号とQ信号の直交性の調整の例を示す図である。
【図6】本技術を適用した無線通信システムの第2の実施の形態の構成を示す図である。
【図7】位相調整回路の他の構成例を示す図である。
【図8】位相調整回路の他の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら本技術の実施の形態について説明する。
1.第1の実施の形態(直交変復調におけるIQ位相調整)
2.第2の実施の形態(注入同期検波方式における位相調整)
3.変形例
【0019】
<1.第1の実施の形態(直交変復調におけるIQ位相調整)>
[無線通信システムの構成]
図1は、本技術を適用した無線通信システムの第1の実施の形態の構成を示す図である。
【0020】
無線通信システム1は、送信装置11及び受信装置12から構成される。
【0021】
送信装置11は、局部発振器31、ミキサ32、ミキサ33、アンプ34、及びアンテナ35から構成される。
【0022】
局部発振器31は、発振によって、90度位相のずれた局部発振信号を発生させて、一方の局部発振信号をミキサ32に供給し、他方の局部発振信号を、ミキサ33に供給する。例えば、局部発振器31は、56GHz等のミリ波帯のキャリアとなる局部発振信号を発生させる。
【0023】
ここで、ミリ波とは、周波数が30-300GHz程度、つまり、波長が、1-10mm程度の電波である。ミリ波帯の電波によれば、周波数が高いことから、高速のデータレートでのデータ伝送が可能であり、小さなアンテナで、無線通信を行うことができる。
【0024】
ミキサ32には、局部発振器31からの局部発振信号の他、不図示の回路からベースバンドのI信号(BBIN_I)が入力される。ミキサ32は、ベースバンドのI信号と、送信用の搬送波(キャリア)となる局部発振信号とをミキシング(乗算)することにより、局部発振器31からの局部発振信号を、ベースバンドのI信号に従って変調し、その結果得られた変調信号を、アンプ34に供給する。
【0025】
ミキサ33には、局部発振器31からの局部発振信号の他、不図示の回路からベースバンドのQ信号(BBIN_Q)が入力される。ミキサ33は、ベースバンドのQ信号と、送信用のキャリアとなる局部発振信号とをミキシングすることにより、局部発振信号を、ベースバンドのQ信号に従って変調し、その結果得られた変調信号を、アンプ34に供給する。
【0026】
アンプ34には、ミキサ32とミキサ33からの変調信号を増幅し、アンテナ35に供給する。
【0027】
アンテナ35は、アンプ34からの変調信号を、電波として出力する。
【0028】
受信装置12は、アンテナ51、アンプ52、ミキサ53、ミキサ54、局部発振器55、位相調整回路56、アンプ57、状態検出回路58、位相調整回路59、アンプ60、及び状態検出回路61から構成される。
【0029】
アンテナ51は、送信装置11から送信されてくる電波としての変調信号を受信して、アンプ52に供給する。
【0030】
アンプ52は、アンテナ51からの変調信号を増幅し、変調信号のI信号をミキサ53に供給し、変調信号のQ信号をミキサ54に供給する。
【0031】
局部発振器55は、90度位相のずれた局部発振信号を発生させて、一方の局部発振信号を位相調整回路56に供給し、他方の局部発振信号を、位相調整回路59に供給する。
【0032】
位相調整回路56は、状態検出回路58からの調整信号に基づいて、局部発振器55からの局部発振信号の位相を調整し、調整後の局部発振信号を、ミキサ53に供給する。
【0033】
ミキサ53には、アンプ52からの変調信号のI信号と、位相調整回路56からの調整後の局部発振信号が供給される。ミキサ53は、変調信号のI信号と局部発振信号(再生キャリア)をミキシング(乗算)することにより、変調信号のI信号を、局部発振信号に従って復調し、それにより得られるベースバンドのI信号を、アンプ57に供給する。
【0034】
アンプ57は、ミキサ53からのベースバンドのI信号を増幅し、それにより得られる信号(BBOUT_I)を、状態検出回路58と、後段の回路(不図示)に供給する。
【0035】
状態検出回路58は、アンプ57からのベースバンドのI信号(BBOUT_I)の状態を検出して、その信号の状態に応じた調整信号を、位相調整回路56に供給する。
【0036】
位相調整回路59は、状態検出回路61からの調整信号に基づいて、局部発振器55からの局部発振信号の位相を調整し、調整後の局部発振信号を、ミキサ54に供給する。
【0037】
ミキサ54には、アンプ52からの変調信号のQ信号と、位相調整回路59からの調整後の局部発振信号が供給される。ミキサ54は、変調信号のQ信号と局部発振信号(再生キャリア)をミキシングすることにより、変調信号のQ信号を、局部発振信号に従って復調し、それにより得られるベースバンドのQ信号を、アンプ60に供給する。
【0038】
アンプ60は、ミキサ54からのベースバンドのQ信号を増幅し、それにより得られる信号(BBOUT_Q)を、状態検出回路61と、後段の回路(不図示)に供給する。
【0039】
状態検出回路61は、アンプ60からのベースバンドのQ信号(BBOUT_Q)の状態を検出して、その信号の状態に応じた調整信号を、位相調整回路59に供給する。
【0040】
以上のようにして、無線通信システム1は構成される。
【0041】
[位相調整回路の構成]
図2は、位相調整回路56の構成例を示す図である。
【0042】
位相調整回路56は、LC共振回路を負荷とした差動増幅回路として構成され、その差動増幅回路を移相器として用いることで、出力位相の調整を行う。
【0043】
位相調整回路56は、図2に示すように、インダクタL1、インダクタL2、可変コンデンサC1、トランジスタQ1、トランジスタQ2、及び電流源I1を有する。
【0044】
インダクタL1は、その一端が電源Vccに接続され、その他端がトランジスタQ1のドレインに接続される。インダクタL2は、その一端が電源Vccに接続され、その他端がトランジスタQ2のドレインに接続される。
【0045】
可変コンデンサC1は、その一端がインダクタL1の他端とトランジスタQ1のドレインとの接続端に、その他端がインダクタL2の他端とトランジスタQ2の接続端にそれぞれ接続される。また、可変コンデンサC1には、状態検出回路58からの調整信号が供給される。
【0046】
トランジスタQ1は、nチャネルのMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)として構成される。トランジスタQ1において、そのゲートは入力端IN1を介して局部発振器55に接続され、そのドレインはインダクタL1の他端に接続され、ソースは電流源I1の一端に接続される。電流源I1は、その他端がグランドに接続される。
【0047】
トランジスタQ2は、nチャネルのMOSFETとして構成される。トランジスタQ2において、そのゲートは入力端IN2を介して局部発振器55に接続され、そのドレインはインダクタL2の他端に接続され、そのソースは電流源I1の一端に接続される。
【0048】
インダクタL1の他端とトランジスタQ1のドレインとの接続端と、インダクタL2の他端とトランジスタQ2のドレインとの接続端には、出力端OUT1,OUT2を介してミキサ53が接続される。
【0049】
以上のようにして、位相調整回路56は構成される。
【0050】
なお、位相調整回路59は、位相調整回路56と同様の構成を有するため、その説明は省略する。
【0051】
[位相調整回路の動作]
次に、図3乃至図5を参照して、図2の位相調整回路56,59の動作について説明する。
【0052】
図2の位相調整回路56,59においては、トランジスタQ1,Q2のゲートに、入力端IN1,IN2を介して、局部発振器55からの局部発振信号が供給される。位相調整回路56,59は、局部発振器55からの局部発振信号の位相調整を行い、調整後の局部発振信号を、出力端OUT1,OUT2を介してミキサ53,54に出力する。
【0053】
この位相調整は、インダクタL1,インダクタL2,及び可変コンデンサC1から構成されるLC共振回路における、インダクタL1,L2のインダクタンスと、可変コンデンサC1の容量値を変化させることで行われる。この容量値は、状態検出回路58,61から供給される調整信号に応じて変化される。
【0054】
図3は、LC共振回路の容量値の変化による出力振幅の変化を示す図である。
【0055】
図3に示すように、調整信号に応じてLC共振回路の容量値を変化させた場合、共振周波数が変化され、局部発振信号の出力振幅が変化することになるが、その変化量は数dB程度となる。
【0056】
一方、図4は、LC共振回路の容量値の変化による出力位相の変化を示す図である。
【0057】
図4に示すように、調整信号に応じてLC共振回路の容量値を変化させた場合、共振周波数が変化され、局部発振信号の出力位相が変化することになる。そして、この容量値の変化による出力位相の変化が、局部発振信号の位相調整に利用される。
【0058】
例えば、直交変復調において、局部発振器55から、ミキサ53,54に供給される局部発振信号は、その直交性を保つために、90度位相がずれている必要があるが、図5に示すように、その位相のずれが90度とならない場合がある。すなわち、図5のIQ平面上の点線で表されたI LocalとQ Localは、それぞれ、局部発振信号を表しており、直交性を保つためには、実線で表されたI' LocalとQ' Localのように調整する必要がある。
【0059】
状態検出回路58においては、アンプ57からのベースバンドのI信号の状態が検出され、その信号の状態に応じた調整信号が出力されるが、この調整信号は、I LocalからI' Localに調整させるための信号となる。同様に、状態検出回路61からは、ベースバンドのQ信号の状態に応じて、Q LocalからQ' Localに調整させるための調整信号が出力される。すなわち、状態検出回路58,61によって、一方の局部発振信号と、他方の局部発振信号の位相のずれが検出され、その位相のずれを調整するための調整信号が、位相調整回路56,59にそれぞれ供給される。
【0060】
そして、位相調整回路56,59では、状態検出回路58,61からの調整信号に基づいて、LC共振回路の容量値が変化されて、局部発振器55からの局部発振信号の位相が調整される。これにより、ミキサ53,54に供給される局部発振信号は、図5に示すように、I LocalからI' Localに、Q LocalからQ' Localにそれぞれ調整され、直交性が保たれることとなる。
【0061】
このように、位相調整回路56,59は、LC共振回路を負荷とした差動増幅回路として構成され、その差動増幅回路の入出力がバンドパスフィルタの通過特性を有しているため、調整信号に応じて、バラクタで構成されたLC共振回路の容量値が変化される。これにより、共振周波数が変化され、出力位相が変化されることとなる。
【0062】
以上のように、無線通信システム1においては、位相調整回路56,59によって、状態検出回路58,61からの調整信号に基づいた、局部発振器55からの局部発振信号の位相調整(補正)が行われ、ミキサ53,54に出力される。これにより、無線通信システム1では、90度移相器を用いることなく、直交変復調に必要となる90度位相のずれた局部発振信号の直交性保つことができるため、局部発振信号の位相調整の精度を向上させることができる。
【0063】
また、局部発振信号の位相差を90度付近に保つために補正回路を設ける場合がある。この場合、I信号とQ信号のそれぞれの信号を加減算し、ベクトル合成により調整を行うため、精度がよく、振幅誤差も発生しないが、回路規模が大きく、さらには消費電力も大きくなってしまう。無線通信システム1では、位相調整回路により局部発振信号の位相を調整するため、直交性の調整を、回路規模を抑えつつ、低消費電力で実現することができる。
【0064】
また、ミリ波帯のような高い周波数帯では、単純なバッファでも抵抗負荷では利得が得られないため、一般的にLC共振回路が用いられることが多く、その容量に可変容量を用いることで、位相の調整を行うことが可能となる。つまり、回路面積は増加しないこととなる。さらに、位相調整回路56,59は、局部発振器55とミキサ53,54のアイソレーションを確保するための、単純なバッファとしての機能も有する。
【0065】
<2.第2の実施の形態(注入同期検波方式における位相調整)>
ところで、周波数変換の複数の変換方式の1つとして、PLL(Phase Locked Loop)が不要で、回路構成が簡単な注入同期検波方式がある。
【0066】
注入同期検波方式では、変調信号(RF(Radio Frequency)信号)を、注入信号として、局部発振器に注入することで、局部発振器において、注入信号としての変調信号(のキャリア)に同期した局部発振信号(再生キャリア)が生成される。
【0067】
この注入同期検波方式により周波数変換を行う場合、ミリ波のような高周波帯では、波長が短いことによる配線長での位相遅延や、注入同期時の位相変動が発生しやすく、受信装置側のミキサの入力で、変調信号(RF信号)と、局部発振信号の位相を完全に同期させることは困難なものとなる。
【0068】
そこで、第2の実施の形態においては、注入同期検波方式を用いる場合において、位相調整回路を、局部発振器の後段に設けて、ミキサの入力で、変調信号と、局部発振信号の位相を同期させることができるようにした、無線通信システムについて説明する。
【0069】
[無線通信システムの構成]
図6は、本技術を適用した無線通信システムの第2の実施の形態の構成を示す図である。
【0070】
無線通信システム101は、送信装置111及び受信装置112から構成される。
【0071】
送信装置111は、局部発振器131、ミキサ132、アンプ133、及びアンテナ134から構成される。
【0072】
局部発振器131は、発振によって、例えば、56GHz等のミリ波帯のキャリアとなる局部発振信号を発生させて、ミキサ132に供給する。
【0073】
ミキサ132には、局部発振器131からの局部発振信号の他、不図示の回路からベースバンドの信号(BBIN)が供給される。ミキサ132は、ベースバンドの信号と、送信用の搬送波となる局部発振信号とをミキシングすることにより、局部発振器131からの局部発振信号を、ベースバンドの信号に従って変調し、その結果得られた変調信号を、アンプ133に供給する。
【0074】
アンプ133は、ミキサ132からの変調信号を増幅し、アンテナ134に供給する。
【0075】
アンテナ134は、アンプ133からの変調信号を、電波として出力する。
【0076】
受信装置112は、アンテナ151、アンプ152、アンプ153、ミキサ154、局部発振器155、位相調整回路156、アンプ157、及び状態検出回路158から構成される。
【0077】
アンテナ151は、送信装置111から送信されてくる電波としての変調信号を受信して、アンプ152に供給する。
【0078】
アンプ152は、アンテナ151からの変調信号を増幅し、増幅された変調信号を、アンプ153と、ミキサ154に供給する。アンプ153は、アンプ152からの変調信号を増幅し、局部発振器155に供給する。
【0079】
局部発振器155は、アンプ153からの注入信号としての変調信号に同期した局部発振信号を生成(発振)し、再生キャリアとして、位相調整回路156に供給する。
【0080】
位相調整回路156は、状態検出回路158からの調整信号に基づいて、局部発振器55からの局部発振信号の位相を調整し、調整後の局部発振信号を、ミキサ154に供給する。なお、位相調整回路156は、図2の位相調整回路56と同様の構成を有する。
【0081】
ミキサ154には、アンプ152からの変調信号と、位相調整回路156からの調整後の局部発振信号(再生キャリア)が供給される。ミキサ154は、変調信号と、調整後の局部発振信号をミキシングすることにより、変調信号の注入同期検波を行い、その結果得られるベースバンドの信号を、アンプ157に供給する。
【0082】
アンプ157は、ミキサ154からのベースバンドの信号を増幅し、それにより得られる信号(BBOUT)を、状態検出回路158と、後段の回路(不図示)に供給する。
【0083】
状態検出回路158は、アンプ157からのベースバンドの信号(BBOUT)の状態を検出して、その信号の状態に応じた調整信号を、位相調整回路156に供給する。
【0084】
以上のようにして、無線通信システム101は構成される。
【0085】
無線通信システム101においては、図1の無線通信システム1と同様に、ミキサ154と局部発振器155の間に、位相調整回路156が設けられ、状態検出回路158からの調整信号に基づいた、局部発振器155からの局部発振信号の位相調整が行われ、ミキサ154に出力される。
【0086】
ここで、状態検出回路158は、ベースバンドの信号の状態として、例えば、その信号のレベルを検出し、信号のレベルが高い場合には検波効率がよく、信号のレベルが低い場合には検波効率が悪いこととなるので、その状態に応じた調整信号を、位相調整回路156に供給する。これにより、位相調整回路156においては、状態検出回路158からの調整信号に応じて、バラクタで構成されたLC共振回路の容量値が変化されることで、その共振周波数が変化され、局部発振信号の出力位相が変化されることとなる。
【0087】
そして、位相調整回路156により局部発振信号が調整されることで、ミキサ154の入力で、変調信号(RF信号)と、局部発生信号の位相を同期させることが可能となる。換言すれば、位相調整回路156が状態検出回路158からの調整信号に応じて位相調整を行うことで、ミキサ154により変調信号とミキシングされる局部発振信号の位相調整の精度を向上させることができる。
【0088】
また、変調信号と、局部発生信号が同相となる場合、検波効率が最大となり、配線長での位相遅延や、注入同期時の位相ずれにより検波効率が低下し、位相差が90度となった場合には検波ができなくなってしまう。無線通信システム101では、位相調整回路によって、局部発振信号の位相調整が行われるため、位相ずれにより検波効率が劣化することを抑制することができる。
【0089】
このように、ミキサ154により変調信号とミキシングされる局部発振信号の位相調整の精度を向上させることができる。
【0090】
なお、位相調整回路156を注入同期検波方式に用いた場合、図3に示したように、振幅誤差が発生する場合があるが、振幅誤差については、ミキサ154又は後段のベースバンド回路(不図示)の利得を変えることにより、容易に調整することが可能である。すなわち、ミキサ154を駆動できるレベル以上の振幅が得られれば、位相調整で発生する振幅誤差の影響は小さく、仮に振幅誤差の補正が必要な場合であっても、ミキサ154等の利得調整で容易に、振幅誤差を補正することができる。
【0091】
<3.変形例>
前述した説明では、位相調整回路56,59,156において、差動増幅回路は、トランジスタQ1,Q2がnチャネルのMOSFETとして構成されるとして説明したが、LC共振回路を負荷にしていれば、他の構成を採用することができる。例えば、図7に示すように、トランジスタQ1とQ3及びトランジスタQ2とQ4が、カスコード接続された構成を採用することもできる。また、図8に示すように、トランジスタQ1,Q2として、例えば、pチャネルのMOSFETやバイポーラトランジスタなどの他のトランジスタを用いた構成を採用することもできる。これらの構成であっても、LC共振回路が負荷とされているため、前述した差動増幅回路と同様の機能を有することとなる。また、LC共振回路の容量を可変にする方法は、前述したバラクタに限らず、スイッチングにより容量を可変にしてもよい。
【0092】
また、前述した説明では、図1の受信装置12において、I信号用の状態検出回路58と、Q信号用の状態検出回路61の2つの状態検出回路を設けた場合を説明したが、1つの状態検出回路だけを設けて、入力されるベースバンドのI信号,Q信号から調整信号を生成し、位相調整回路56,59にそれぞれ供給するようにしてもよい。
【0093】
さらに、前述した説明では、位相調整回路56,59,156は、受信装置側に設けるとして説明したが、送信装置側に設けるようにしてもよい。例えば、図1の送信装置11において、局部発振器31と、ミキサ32及びミキサ33との間に、それぞれ位相調整回路を設けることが可能である。
【0094】
なお、本明細書において、システムとは、複数の装置により構成される装置全体を表すものである。
【0095】
さらに、本技術の実施の形態は、前述した実施の形態に限定されるものではなく、本技術の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0096】
1 無線通信システム, 11 送信装置, 12 受信装置, 31 局部発振器, 32,33 ミキサ, 53,54 ミキサ, 55 局部発振器, 56,59 位相調整回路, 58,61 状態検出回路, 101 無線通信システム, 131 局部発振器, 132 ミキサ, 154 ミキサ, 155 局部発振器, 156 位相調整回路, 158 状態検出回路, C1 可変コンデンサ, I1 電流源, L1,L2 インダクタ, Q1,Q2,Q3,Q4 トランジスタ, Vcc 電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
局部発振信号を発生する局部発振部と、
無線で送信される変調信号と、発生された前記局部発振信号とをミキシングするミキサと、
ミキシングにより得られる信号の状態を検出する状態検出部と、
検出された前記信号の状態に応じて、前記局部発振信号の位相の調整を行う位相調整部と
を備える受信装置。
【請求項2】
前記局部発振部は、直交変復調に用いられる90度位相のずれた局部発振信号を発生し、
前記ミキサは、一方の局部発振信号と前記変調信号のI信号を、他方の局部発振信号と前記変調信号のQ信号を、それぞれミキシングする
請求項1に記載の受信装置。
【請求項3】
前記状態検出部は、ミキシングにより得られる信号から、一方の局部発振信号と他方の局部発振信号の位相のずれを検出し、
前記位相調整部は、LC共振回路を負荷とした差動増幅回路として構成され、検出された前記位相のずれに応じて、前記LC共振回路の容量値を変化させることで、前記局部発振信号の位相の調整を行う
請求項2に記載の受信装置。
【請求項4】
前記局部発振部は、注入信号として注入された前記変調信号に同期した局部発振信号を発生し、
前記ミキサは、前記変調信号と、発生された前記局部発振信号をミキシングすることにより、前記変調信号の注入同期検波を行う
請求項1に記載の受信装置。
【請求項5】
前記状態検出部は、ミキシングにより得られる信号のレベルを検出し、
前記位相調整部は、LC共振回路を負荷とした差動増幅回路として構成され、検出された前記信号のレベルに応じて、前記LC共振回路の容量値を変化させることで、前記局部発振信号の位相の調整を行う
請求項4に記載の受信装置。
【請求項6】
前記変調信号は、ミリ波帯の信号である
請求項1に記載の受信装置。
【請求項7】
受信装置が、
局部発振信号を発生し、
無線で送信される変調信号と、発生された前記局部発振信号とをミキシングし、
ミキシングにより得られる信号の状態を検出し、
検出された前記信号の状態に応じて、前記局部発振信号の位相の調整を行う
ステップを含む受信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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