受光モジュール
【課題】受光モジュール内部における信号光の反射に起因するノイズが軽減されつつ、受光モジュールにおける受光感度の低下が抑制される、受光モジュールの提供。
【解決手段】外部より入力される信号光を内部へ出射する光学部材と、前記光学部材より出射する出射光を収束光に変換して出射するレンズと、前記収束光の光軸に対して法線方向が斜交して配置される反射面21を有するとともに、前記収束光を受光して電気信号に変換する受光素子4と、を備える受光モジュールであって、前記収束光が前記反射面で反射してなる反射光12の開口数は、前記反射光の光軸と垂直に交わる反射光垂直面において、前記反射光の光軸に対して異方性分布を有し、前記反射面から延びる法線の向きが前記反射光垂直面に正射影される向きである第1の向きの前記反射光の開口数より大きい開口数となる第2の向きが前記反射光垂直面に第1の向きと異なる向きに存在する。
【解決手段】外部より入力される信号光を内部へ出射する光学部材と、前記光学部材より出射する出射光を収束光に変換して出射するレンズと、前記収束光の光軸に対して法線方向が斜交して配置される反射面21を有するとともに、前記収束光を受光して電気信号に変換する受光素子4と、を備える受光モジュールであって、前記収束光が前記反射面で反射してなる反射光12の開口数は、前記反射光の光軸と垂直に交わる反射光垂直面において、前記反射光の光軸に対して異方性分布を有し、前記反射面から延びる法線の向きが前記反射光垂直面に正射影される向きである第1の向きの前記反射光の開口数より大きい開口数となる第2の向きが前記反射光垂直面に第1の向きと異なる向きに存在する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受光モジュールに関し、特に、受光モジュール内部における信号光の反射に起因するノイズの軽減と、受光モジュールにおける受光感度の低下抑制に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、光通信装置などに備えられる受光モジュールは、光ファイバ等の光学部材と、レンズと、受光素子とを備えるのが一般的である。ここで、光学部材は、受光モジュールの外部から入力される信号光を受光モジュール内部へ出射している。レンズは、光学部材より出射する出射光を収束光に変換し、受光素子へ出射している。さらに、受光素子は、レンズより出射する出射光を受光して電気信号に変換している。
【0003】
しかしながら、受光モジュールの内部に入射する信号光の一部が、受光モジュールの内部で反射され、その反射光が光学部材に戻ることで、受光モジュールが備えられる装置においてノイズの原因になり得る。
【0004】
信号光の反射に起因するノイズを抑制する従来技術が、特許文献1乃至特許文献3に記載されている。特許文献1及び特許文献2では、光ファイバより入射する入射光の光軸に対して、受光素子を搭載するサブマウントの面が傾斜しているサブマウントを配置することにより、受光素子の受光面からの反射光が光ファイバに戻ることを抑制している。また、特許文献3には、受光素子の受光面を加工して傾斜をつけることにより、反射光が光ファイバに戻ることを抑制している。
【0005】
例えば、受光素子が反射面を有しており、信号光の反射面における反射に起因するノイズを軽減するために、受光素子への入射光の光軸に対して、受光素子の反射面の法線方向が斜交するよう受光素子が配置される。ここで、入射光の光軸と反射面の法線方向とがなす角度(入射光傾斜角)を角度α[rad]とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−186321号公報
【特許文献2】特開平8−94887号公報
【特許文献3】特開平5−152599号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
光反射減衰量(Optical Return Loss:以下、ORLと記す)は、受光モジュール内部での信号光に起因するノイズと信号光のS/N比に対応している。ORLを軽減するためには、角度αを大きくすればよい。
【0008】
受光素子への入射光は、前述の通り、レンズによって集光されている収束光である。収束光の集まり具合を表す相対的な大きさとして、開口数(Numerical Aperture:以下、NAと記す)が用いられる。そして、入射光が収束光である場合、反射面によって反射される反射光は、反射面より遠くに進むにつれて広がる発散光であり、発散光の広がりを表す相対的な大きさとして、同じくNAが用いられる。
【0009】
入射光のNAに対して、ORLは、ORL∝−α2/NA2(数式1)の関係を有している。すなわち、入射光のNAが大きい場合、所望のORLを達成するためには、角度αもNAに応じて大きくする必要がある。
【0010】
しかし、角度αを大きくすると、所望のORLまでノイズを軽減出来るが、角度αを大きくするにつれ、入射光にコマ収差がより発生することにより、受光素子の受光感度が低下してしまう。それゆえ、ノイズの軽減と、受光素子の受光感度の両方を鑑みて、角度αが決定される。
【0011】
例えば、表面入射型受光素子の受光面(表面)や、裏面入射型受光素子の反射面(裏面)の金属形状は、入射光の光軸と当該面との交点から延びる法線が回転対称軸となり、回転に対して等方的に形成されるのが一般的である。このとき、当該面の反射率は、この交点に対して、等方的に分布している。これは、受光素子に電圧が印加される際に、素子内部に発生する電界が出来る限り等方的となるのが望ましいからである。
【0012】
受光素子の反射面の反射率が等方的に分布している場合、入射光のNAが光軸に対して等方的に分布しているならば、反射光のNAも同様に、光軸に対して等方的に分布している。すなわち、この場合、数式1に示すNAとは、入射光のNAであるが、同時に、反射光のNAであるとしてもよい。なお、反射光の光軸と反射面の法線方向がなす角度も、同様に角度αである。
【0013】
従来において、受光素子の反射面の反射率分布は一般には、等方的であり、反射光のNAも光軸に対して等方的に分布しているか、若しくは、等方的に分布していないとしても、その反射光のNA分布の異方性が問題となることは、ほとんどなかった。
【0014】
しかしながら、受光素子の発展に伴い、受光素子の反射面の金属形状などがより複雑となり、受光素子の反射面の反射率に、異方性分布を有する場合が生じる場合がある。また、より高性能な受光モジュールを実現するために、ORLを所望の値以下となるよう受光モジュールからのノイズを軽減しつつ、受光素子のより高い受光感度が望まれることになる。
【0015】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、受光モジュール内部における信号光の反射に起因するノイズが軽減されつつ、受光モジュールにおける受光感度の低下が抑制される、受光モジュールの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
(1)上記課題を解決するために、本発明に係る受光モジュールは、外部より入力される信号光を内部へ出射する光学部材と、前記光学部材より出射する出射光を収束光に変換して出射するレンズと、前記収束光の光軸に対して法線方向が斜交して配置される反射面を有するとともに、前記収束光を受光して電気信号に変換する受光素子と、を備える受光モジュールであって、前記収束光が前記反射面で反射してなる反射光の開口数は、前記反射光の光軸と垂直に交わる反射光垂直面において、前記反射光の光軸に対して異方性分布を有し、前記収束光及び前記反射光側へ前記反射面から延びる法線の向きが前記反射光垂直面に正射影される向きである第1の向きの前記反射光の開口数より、大きい開口数となる第2の向きが、前記反射光垂直面に第1の向きと異なる向きに存在する、ことを特徴とする。
【0017】
(2)本発明に係る受光モジュールは、外部より入力される信号光を内部へ出射する光学部材と、前記光学部材より出射する出射光を収束光に変換して出射するレンズと、前記収束光の光軸に対して法線方向が斜交して配置される反射面を有するとともに、前記収束光を受光して電気信号に変換する受光素子と、を備える受光モジュールであって、前記収束光の光軸と前記反射面との交点に対する前記反射面の反射率の異方性分布と、前記収束光の前記反射面上での強度及び波面と、の関係から算出される、前記収束光が前記反射面で反射してなる反射光の開口数は、前記反射光の光軸と垂直に交わる反射光垂直面において、前記反射光の光軸に対して異方性分布を有し、前記収束光及び前記反射光側へ前記反射面から延びる法線の向きが前記反射光垂直面に正射影される向きである第1の向きの前記反射光の開口数より、大きい開口数となる第2の向きが、前記反射光垂直面に第1の向きと異なる向きに存在していてもよい。
【0018】
(3)本発明に係る受光モジュールは、外部より入力される信号光を内部へ出射する光学部材と、前記光学部材より出射する出射光を収束光に変換して出射するレンズと、前記収束光の光軸に対して法線方向が斜交して配置される反射面を有するとともに、前記収束光を受光して電気信号に変換する受光素子と、を備える受光モジュールであって、前記収束光の光軸と前記反射面との交点に対する前記反射面の反射率の異方性分布の2次元フーリエ変換によって算出される、前記収束光が前記反射面で反射してなる反射光の開口数は、前記反射光の光軸と垂直に交わる反射光垂直面において、前記反射光の光軸に対して異方性分布を有し、前記収束光及び前記反射光側へ前記反射面から延びる法線の向きが前記反射光垂直面に正射影される向きである第1の向きの開口数より、大きい開口数となる第2の向きが、前記反射光垂直面に第1の向きと異なる向きに存在していてもよい。
【0019】
(4)上記(1)乃至(3)のいずれかに記載の受光モジュールであって、前記反射光垂直面において、前記反射光の開口数の前記異方性分布は、前記第1の向きで極小値となっていてもよい。
【0020】
(5)上記(1)乃至(4)のいずれかに記載の受光モジュールであって、前記受光素子は、表面入射型受光素子であり、前記反射面とは、前記受光素子の受光面であってもよい。
【0021】
(6)上記(1)乃至(4)のいずれかに記載の受光モジュールであって、前記受光素子は、裏面入射型受光素子であり、前記反射面とは、前記裏面入射型受光素子の表面に配置される反射面であってもよい。
【0022】
(7)上記(1)乃至(4)のいずれかに記載の受光モジュールであって、前記受光素子は、端面入射型受光素子であり、前記反射面とは、前記端面入射型受光素子の受光面であってもよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、受光モジュール内部における信号光の反射に起因するノイズが軽減されつつ、受光モジュールにおける受光感度の低下が抑制される、受光モジュールが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施形態に係る受光モジュールの全体断面図である。
【図2A】本発明の第1の実施形態に係る表面入射型PINフォトダイオードの入射光と反射光の関係を表す概念図である。
【図2B】本発明の第1の実施形態に係る表面入射型PINフォトダイオードの入射光と反射光の関係を表す概念図である。
【図3】入射光傾斜角である角度αに対する受光素子のORLを表す図である。
【図4】入射光傾斜角である角度αに対する受光素子の受光感度を表す図である。
【図5A】本発明の第2の実施形態に係る裏面入射型PINフォトダイオードの入射光と反射光の関係を表す概念図である。
【図5B】本発明の第2の実施形態に係る裏面入射型PINフォトダイオードの入射光と反射光の関係を表す概念図である。
【図6A】本発明の第3の実施形態に係る端面入射型PINフォトダイオードの入射光と反射光の関係を表す概念図である。
【図6B】本発明の第3の実施形態に係る端面入射型PINフォトダイオードの入射光と反射光の関係を表す概念図である。
【図7A】本発明の第4の実施形態に係る受光素子の反射面の反射率分布の一例を示す図である。
【図7B】図7Aに示す反射率分布を2次元フーリエ変換した像を示す像である。
【図7C】反射面の反射率が図7Aに示す分布を有する場合に望ましい第1の向きを示す図である。
【図8A】本発明の第4の実施形態に係る受光素子の反射面の反射率分布の他の一例を示す図である。
【図8B】図8Aに示す反射率分布を2次元フーリエ変換した像を示す像である。
【図8C】反射面の反射率が図8Aに示す分布を有する場合に望ましい第1の向きを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態に係る受光モジュールについて、図面を参照しながら以下に説明する。ただし、以下に示す図は、あくまで、各実施形態の実施例を説明するものであって、図の大きさと本実施例記載の縮尺は必ずしも一致するものではない。
【0026】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態に係る受光モジュールについて説明する。当該実施形態に係る受光モジュール1は、光ファイバ2と、集光レンズ3と、受光素子として表面入射型PINフォトダイオード4を備えている。
【0027】
図1は、当該実施形態に係る受光モジュール1の全体断面図である。光ファイバ2は、外部より入力される信号光を、受光モジュール1の内部へ出射する光学部材である。なお、光学部材は、受光モジュール1の外部からの信号光を内部へ伝達するものであれば、光ファイバ2に限定されることはなく、他の光学部材であってもよい。光ファイバ2の先端形状により、光ファイバ2からの出射光の光軸は、光ファイバ2の中心軸に対して平行ではなく、傾斜している。ここで、出射光の光軸とは、進行する光束の中心となる仮想的な光線を指している。以下、本明細書における出射光及び入射光などの光軸とは、この定義によって用いられる。
【0028】
光ファイバ2からの出射光は、集光レンズ3によって、集光する収束光に変換され、集光レンズ3は、収束光を表面入射型PINフォトダイオード4へ出射する。このとき、光ファイバ2からの出射光の光軸が、集光レンズ3の中心軸に対して傾斜しているので、集光レンズ3からの出射光も、同様に、集光レンズ3の中心軸に対して傾斜している。ここで、レンズの中心軸とは、レンズの回転対称軸を指している。以下、本明細書におけるレンズの中心軸とは、この定義によって用いられる。
【0029】
受光モジュール1には、さらに、ステム7が備えられ、受光素子サブマウント5がステム7上に配置され、表面入射型PINフォトダイオード4は受光素子サブマウント5上に配置されている。集光レンズ3からの出射光は、前述の通り、収束光であり、該出射光の光軸は、表面入射型PINフォトダイオード4の受光面(表面)を貫いている。言いかえると、表面入射型PINフォトダイオード4の受光面と、集光レンズ3からの出射光の光軸との交点が、受光面の所望の領域に含まれるよう調整され、表面入射型PINフォトダイオード4が配置される。
【0030】
図1に示す通り、集光レンズ3からの出射光の光軸に対して、表面入射型PINフォトダイオード4の受光面の法線方向が斜交するよう、表面入射型PINフォトダイオード4は配置されている。そして、集光レンズ3からの出射光が表面入射型PINフォトダイオード4の受光面で反射されるとき、その反射光の光軸は、集光レンズ3の中心軸に対して傾斜しており、同様に、光ファイバ2の中心軸に対しても傾斜している。よって、受光モジュール1の外部から入力される信号光が、表面入射型PINフォトダイオード4の受光面で反射される反射光が、再び、光ファイバ2に戻り、受光モジュール1を備える装置においてノイズとして発生されるのが抑制されている。
【0031】
集光レンズ3からの出射光の一部は、表面入射型PINフォトダイオード4の受光面を通過して、表面入射型PINフォトダイオード4の内部へ進行し、表面入射型PINフォトダイオード4は、この光を受光し、電気信号に変換する。受光モジュール1のステム7には、信号増幅用IC6が配置され、表面入射型PINフォトダイオード4から出力された電気信号を増幅する。表面入射型PINフォトダイオード4で変換された電気信号は、受光モジュール1のステム7の反対側に配置される電気信号出力ピン8より、外部へ出力される。
【0032】
図2A及び図2Bは、当該実施形態に係る表面入射型PINフォトダイオード4の入射光11と反射光12の関係を表す概念図である。集光レンズ3からの出射光が、表面入射型PINフォトダイオード4の受光面に入射する。よって、入射光11とは、集光レンズ3からの出射光を指している。入射光11の一部は、表面入射型PINフォトダイオード4の受光面で反射される。よって、受光面は反射面としても作用している。また、反射光12とは、入射光11が表面入射型PINフォトダイオード4の反射面で反射される光を指している。図2Aは、入射光11及び反射光12を、受光素子サブマウント5上に配置されている表面入射型PINフォトダイオード4の側方より見る場合を表しており、図2Bは、同様に、表面入射型PINフォトダイオード4の上方より見る場合を表している。図2Aには、入射光11の光軸と表面入射型PINフォトダイオード4との交点より伸びる法線が、法線15として示されている。ここで、入射光11の光軸13と法線15とがなす角、及び、反射光12の光軸14と法線15とがなす角は、ともに、角度α[rad]である。
【0033】
前述の通り、入射光11は、集光レンズ3より集光される収束光である。図2Aには、入射光11の光軸が、光軸13として示されている。実際には、集光レンズ3よりコマ収差が生じており、入射光11のNAは、入射光11の光軸13に対して、異方性分布を有することとなるが、説明をより簡単とするために、集光レンズ3による収差は無視できるほど小さいとし、入射光11のNAは、入射光11の光軸13に対して、等方的であるものとする。入射光11の光軸13に垂直な面を、入射光垂直面とすると、入射光11の光軸13は、回転対称軸となっており、入射光垂直面において、入射光11のNAは、光軸13を中心とする回転に対して、一定となる分布(等方性分布)を有している。よって、入射光垂直面における入射光11の強度分布は、光軸13を中心として、円形状をしている。図2A及び図2Bには、入射光11のNAが表されている。入射光垂直面は、表面入射型PINフォトダイオード4の反射面に対して、平行ではなく傾斜しているが、図2Bにおいて、簡単のために、入射光垂直面を光軸13の方向より見ているように示しており、入射光11のNAが円形状に表されている。
【0034】
当該実施形態に係る表面入射型PINフォトダイオード4の反射面21(受光面)は、反射面の反射率に、異方性分布を有している。すなわち、図2Bに示す通り、表面入射型PINフォトダイオード4の反射面21において、高い反射率を有する領域である高反射率領域22が、図中横方向に延びる楕円形状(長軸が図中横方向)をしており、高反射率領域22以外の領域の反射率は高反射率領域22の反射率より十分に低い反射率となっている。ここで、入射光11の光軸13は、表面入射型PINフォトダイオード4の反射面21と、高反射率領域22の中心(長軸方向と短軸方向の交点)で交わっているものとする。
【0035】
反射面の反射率が、異方性分布を有している場合、反射光のNAは、光軸に対して異方性分布を有する。すなわち、反射面における反射光の強度分布を近視野像(NFP)として、反射面における回折現象により、反射面より遠方における反射光の強度分布は遠視野像(FFP)となる。図2Bには、表面入射型PINフォトダイオード4の反射面21における入射光11が照射する領域が、破線で示す円形状の領域として示されており、該領域の中に、反射面21の高反射率領域22は含まれており、反射面21における反射光12の強度分布、すなわち、NFPの強度分布は、反射面21の高反射率領域22の形状に対応しており、図中横方向に延びる楕円形状に分布している。
【0036】
これに対して、反射面21より遠方における反射光12の強度分布、すなわち、FFPの強度分布は、図2Bに示す通り、図中縦方向に延びる楕円形状(長軸が図中縦方向)に分布しており、反射光12のNA分布に対応している。反射光12の光軸14に垂直な面を、反射光垂直面とする。入射光垂直面と同様に、反射光垂直面は、反射面21に対して、平行ではなく傾斜しているが、図2Bにおいて、簡単のために、反射光垂直面を光軸14の方向より見ているように示しており、反射光12のNAが図中縦方向に延びる楕円形状に表されている。
【0037】
反射面21の法線方向には、反射面21を境に互いに逆向きに延びる2つの向きが存在するが、そのうち、入射光及び反射光側へ反射面から延びる法線の向きを考える。すなわち、該法線の向きは、図2Aに示す、図中の法線15の上向きである。該法線の向きが反射光垂直面に正射影される向きを第1の向きとすると、第1の向きは、反射光垂直面において、入射光11及び反射光12からなる入射面と反射光垂直面とが交わる方向であって、入射光11及び反射光12が進行するに伴い、入射面が延びる向きに対向する向きである。反射面21の法線方向よりみると、入射光11及び反射光12が進行する向き(入射面が延びる向き)は、図2Bの右向きであり、第1の向きは、それに対向する向きであり、図2Bの左向きである。
【0038】
本発明の特徴は、入射光及び反射光に対する受光素子の反射面の配置にある。反射光のNAが反射光の光軸に対して異方性分布を有している場合に、入射光及び反射光側へ反射面から延びる法線の向きが反射光垂直面に正射影される向き(第1の向き)のNAが小さくなるよう、受光素子の反射面が配置されるのが望ましい。少なくとも、第1の向きのNAより大きいNAとなる第2の向きが、反射光垂直面に第1の向きとは異なる向きに存在している必要がある。反射光のNAが、第1の向きで、極小値(又は、最小値)を取るのが、さらに望ましい。実際には、プロセス上の誤差が生じるので、反射光のNAが、第1の向きからプロセス上の誤差の範囲内にある向きのいずれか、極小値(又は、最小値)を取っていればよい。
【0039】
入射光が収束光である場合、反射光は発散光となるが、反射光のうち、第1の向きに発散していく光は、受光モジュールの光学部材へ戻る光の強度上昇、すなわち、ノイズの上昇に、大きく寄与する。第1の向きのNAが小さい場合、上述の数式1に示す通り、所望のORLを得るために必要な角度αは小さくなり、受光モジュール内部における信号光の反射に起因するノイズを軽減しつつ、受光モジュールにおける受光感度の低下が抑制される。
【0040】
例えば、当該実施形態に係る表面入射型PINフォトダイオード4の場合、反射光12のNAは、図2Bに示す通り、図中縦方向に延びる楕円形状をしている。反射光垂直面において、入射面との交線に対して垂直な向き、すなわち、図2Bの図中上向き又は下向きを第2の向きとする。第1の向きのNA(楕円の短軸)は、第2の向きのNA(楕円の長軸)より小さくなっている。そして、図2Bに示す反射面21を90度回転させて、反射面21の高反射率領域22が図中縦方向に延びる楕円形状とする場合より、反射光12の図中左向きのNAを小さくすることが出来る。
【0041】
反射面より遠方における反射光の強度分布はFFPであり、これは、反射面における反射光の強度分布(NFP)に基づいている。FFPは、NFPから2次元フーリエ変換により算出することができる。
【0042】
入射光のNAが光軸に対して等方性分布を有しており、受光素子の反射面に入射光が照射する領域が、反射面の高反射領域より大きい場合、反射面における反射光の強度分布(NFP)は、受光素子の反射面の反射率分布に基づいている。よって、受光素子の反射面の反射率が、入射光の光軸と反射面との交点を中心とする回転に対して、異方性分布を有している場合、反射面における反射光の強度分布(NFP)は、その反射率の異方性分布に対応している。よって、反射光のNAの異方性分布は、反射面の反射率の異方性分布に基づいていることとなる。さらに、FFPは、NFPを略2次元フーリエ変換した像であるので、反射光のNA分布は、反射面の反射率の異方性分布の2次元フーリエ変換によって算出される。
【0043】
この場合、受光素子の反射面における反射率の異方性分布を、入射光の光軸と反射面との交点に対して、2次元フーリエ変換した像を算出し、その像の強度分布が、反射光のNA分布に対応しているので、像の中心からの強度(絶対値)が小さい向きが第1の向きとなるように、受光素子の反射面を配置すればよい。
【0044】
反射面における反射光の強度分布(NFP)は、受光素子の反射面に入射光が照射する領域にある反射率分布に対応している。それゆえ、反射光の高反射領域の一部が、入射光の照射領域の外側にも存在している場合であっても、NFPは、受光面の反射面に入射光が照射する領域にある反射率分布に対応しており、反射面より遠方の反射光の強度分布(FFP)は、この領域の反射率分布を2次元フーリエ変換した像に対応しており、反射光のNAの異方性分布もこの像に対応している。これは反射面の反射率分布が連続的に変化する場合も同様である。また、入射光のNAが異方性分布を有する場合、及び入射光が反射面において無視できない程の大きさの波面収差を持つ場合、NFPは、入射光の反射面での強度及び位相の分布に対し、その対応する反射率分布を掛け合わせた結果得られる強度分布となる。よって、反射光のNAの異方性分布は、反射面の反射率の異方性分布と、入射光の反射面での強度及び波面と、の関係から算出される。
【0045】
この場合、受光素子の反射面における反射率の異方性分布と、入射光の反射面での強度及び波面と、の関係から、反射光のNA分布を算出し、反射光のNAが小さい向きが第1の向きとなるように、受光素子の反射面を配置すればよい。ただし、光電変換効率を良くする為に入射光の反射面での波面収差は非常に小さく、また入射光の強度分布はほぼ等方的な略ガウス分布であるのが一般的なので、多くの場合においては反射面の反射率の異方性分布の2次元フーリエ変換により、反射光のNAの異方性分布を近似的に算出することができる。
【0046】
なお、ここで、当該実施形態に係る表面入射型PINフォトダイオード4において、反射面とは、主に、受光面を指すが、素子の構造によっては、他の反射面についても、本発明を適用することが可能である。
【0047】
次に、受光モジュール内部における信号光の反射に起因するノイズを軽減しつつ、受光モジュールにおける受光感度の低下が抑制される角度αについて説明する。
【0048】
本発明に係る受光素子の反射面の反射率は、異方性分布を有している。この場合、例えば、反射面の一部の領域が高い反射率となっているので、反射光のNAは入射光のNAと比較して大きくなる。さらに、前述の通り、反射面の反射率が異方性分布を有しているので、反射光のNAも異方性分布を有することとなる。
【0049】
例えば、1Gbit/s以上の高速の伝送速度で信号を伝送する高速・広帯域な受光モジュールに対して、ITU−T(国際標準規格)では、受光モジュールの入射端でのORLを−27dB以下となるよう規定されている。表面入射型受光素子の反射面の反射率が一様に分布している場合は、反射光のNAは、入射光のNAと等しい。この場合、反射面の反射率にもよるが、一般には、数式1に示す関係により、α>NAを満たすと、ORLの規定値を満たしている。
【0050】
これに対して、反射光のNAが、入射光のNAより大きくなる場合、同じ角度αに対して、ORLは上昇し、ORLの規定値を満たす入射光の傾斜角である角度αは大きくなる。すなわち、角度αに対するORLは、入射光のNAと反射光のNAの大小関係に依存する。
【0051】
図3は、入射光傾斜角である角度αに対する受光素子のORLを表す図である。横軸は、任意の単位による角度αを、縦軸は、ORL[dB]を示している。図3には、反射光のNAが入射光のNAと等しい場合について、曲線31を用いて、反射光のNAが入射光のNAの2倍である場合について、曲線32を用いて、示されている。
【0052】
図3にα1として示す角度αにおいて、反射光のNAと入射光のNAが等しい場合を示す曲線31では、ORLが−20dBとなるが、反射光のNAが入射光のNAの2倍である場合を示す曲線32では、ORLが−10dBと、大幅に上昇しており、特性が劣化している。反射面の反射率が例えば一般的な値である数%程度であるとき、反射光のNAと入射光のNAが等しい場合、角度αが入射光のNAと同程度であれば、ORLが−30dB以下となり、規定値以下である。この角度αは、図3にα2として示されている。しかし、反射光のNAが入射光のNAの2倍である場合、角度αをα2より更に大きくしなければ、ORLを規定値以下にすることが出来ない。
【0053】
反射光のNAが大きい場合であっても、それに応じて、角度αを大きくすればORLを規定値以下にすることは可能であるが、角度αを大きくすると、集光レンズ3からの出射光にコマ収差などが発生することによって、受光素子の受光感度が低下するという問題が生じる。
【0054】
図4は、入射光傾斜角である角度αに対する受光素子の受光感度(Receiving Sensitivity)を表す図である。横軸は、任意の単位による角度αを、縦軸は、受光感度[dB]を示している。図4には、受光素子の受光径が、入射光の照射領域の半径の2倍程度の場合を示しており、図4に示す角度αに対する受光感度は、受光モジュールとしては一般的な関係を示している。図4には、合焦点にフォーカスされる場合について曲線33を用いて、20μmデフォーカスされる場合について曲線34を用いて、40μmデフォーカスされる場合について曲線35を用いて、示されている。
【0055】
図4にα3として示す角度αの値は、入射光のNAと同程度に小さいものであり、角度α=0となる垂直入射と比較して、曲線33乃至曲線35のいずれも受光感度の低下は非常に小さいが、角度αが大きくなるにつれて、受光感度はより低下していく。合焦点にフォーカスされる場合を示す曲線33と比較して、特に、合焦点からデフォーカスされる場合を示す曲線34及び曲線35において、角度αが大きい値となった場合の受光感度の低下はより大きくなる。そして、よりデフォーカスされる場合に、受光感度の低下はより著しい。
【0056】
40μmデフォーカスされる場合を示す曲線35の角度αに対する受光感度[dB]の低下は、合焦点にフォーカスされる場合を示す曲線33と比較して、おおよそ4倍となっており、角度αが大きくなると、受光感度を良好に保つ幾何的な許容公差が大幅に縮小することを表している。
【0057】
受光素子の反射面の反射率に異方性分布を有する場合、反射光のNAは、反射率が等方的である場合よりも大きくなり、所望のORLを得るために必要な角度αはより大きくなる。しかし、反射光のNAの異方性分布を考慮して、第1の向きのNAが小さくなるように、受光素子の反射面を配置することにより、より小さい角度αで、所望のORLに達成することが出来、それにより、受光素子の受光感度の低下も抑制することが出来る。
【0058】
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態に係る受光モジュール1の基本的な構成は、第1の実施形態に係る受光モジュール1と同じである。当該実施形態に係る受光モジュール1において、受光モジュール1に備えられる受光素子が裏面入射型PINフォトダイオード9である点が、第1の実施形態と主に異なっている。
【0059】
図5A及び図5Bは、当該実施形態に係る裏面入射型PINフォトダイオード9の入射光11と反射光12の関係を表す概念図である。集光レンズ3からの出射光が、裏面入射型PINフォトダイオード9の裏面に入射する。すなわち、裏面入射型PINフォトダイオード9の裏面とは、図5Aに示す裏面入射型PINフォトダイオード9の図中上側の面を指している。出射光の多くは、裏面入射型PINフォトダイオード9の裏面より、裏面入射型PINフォトダイオード9の内部へ進行し、光吸収層にて電気信号に変換される。裏面入射型PINフォトダイオード9の表面、すなわち、図5Aに示す裏面入射型PINフォトダイオード9の図中下側の面には、反射面23が設けられている。裏面入射型PINフォトダイオード9の内部を通過する光は、反射面23で反射される。ここで、入射光11とは反射面23に入射する光を指しており、反射光12とは、反射面23から反射される光を指している。
【0060】
反射光12の一部は、裏面入射型PINフォトダイオード9の光吸収層で再び吸収され、残りの反射光12が、裏面入射型PINフォトダイオード9より出射される。この光が、光ファイバ2へ戻ることにより、ノイズが発生する。図5A及び図5Bは、図2A及び図2Bと同様に、裏面入射型PINフォトダイオード9の側方及び上方より見る場合を、それぞれ表している。ここで、入射光11の光軸13と法線15とがなす角、及び、反射光12の光軸14と法線15とがなす角は、ともに、角度α[rad]である。
【0061】
当該実施形態に係る裏面入射型PINフォトダイオード9の反射面23は、第1の実施形態に係る表面入射型PINフォトダイオード4の反射面21と同様に、反射面23の反射率に、異方性分布を有しており、図5Bに示す通り、裏面入射型PINフォトダイオード9の反射面23において、高い反射率を有する領域である高反射率領域24が、図中横方向に延びる楕円形状をしており、高反射率領域24以外の領域の反射率は高反射率領域24の反射率より十分に低い反射率となっている。ここで、入射光11の光軸13は、裏面入射型PINフォトダイオード9の反射面23と、高反射率領域24の中心で交わっているものとする。
【0062】
第1の実施形態と同様に、反射光12のNAは、反射光12の光軸14に対して異方性分布を有しており、図5Bの縦方向に延びる楕円形状をしている。よって、図5Bに示す通り、第1の向きのNAが小さくなるよう、裏面入射型PINフォトダイオード9の反射面23が配置されるのが望ましい。
【0063】
裏面入射型受光素子の反射面の反射率が一様に分布している場合は、反射光のNAは、入射光のNAと等しい。この場合、素子の吸収層での吸収率や反射面の反射率にもよるが、表面入射型受光素子と同様に、一般には、数式1に示す関係により、α>NAを満たすと、ORLの規定値を満たしている。
【0064】
これに対して、裏面入射型受光素子の反射面の反射率に異方性分布を有する場合も、同様に、反射光のNAは、反射率が等方的である場合よりも大きくなり、所望のORLを得るために必要な角度αはより大きくなる。しかし、反射光のNAの異方性分布を考慮して、第1の向きのNAが小さくなるように、受光素子の反射面を配置することにより、より小さい角度αで、所望のORLに達成することが出来、それにより、受光素子の受光感度の低下も抑制することが出来る。
【0065】
なお、当該実施形態に係る裏面入射型PINフォトダイオード9において、反射面とは、主に、図5Aに示す裏面入射型PINフォトダイオード9の下面に位置する反射面23を指す。裏面入射型PINフォトダイオード9の裏面(図5Aに示す上面)である受光面においても、光の反射はあり得る。受光面の反射率は、一般に、反射面23の高反射率領域24の反射率と比べて、非常に小さく、ノイズの主な要因は、反射面23における反射光12である。しかしながら、裏面入射型受光素子の受光面において、反射率が異方性分布を有しており、受光面の反射光が大きい場合には、受光面を反射面として、本発明を適用してもよい。
【0066】
[第3の実施形態]
本発明の第3の実施形態に係る受光モジュール1の基本的な構成は、第1の実施形態に係る受光モジュール1と同じである。当該実施形態に係る受光モジュール1において、受光モジュール1に備えられる受光素子が端面入射型PINフォトダイオード10である点が、第1の実施形態と主に異なっている。
【0067】
図6A及び図6Bは、当該実施形態に係る端面入射型PINフォトダイオード10の入射光11と反射光12の関係を表す概念図である。集光レンズ3からの出射光が、端面入射型PINフォトダイオード10の端面(側面)に入射する。すなわち、端面入射型PINフォトダイオード10の受光面は、端面である。集光レンズ3からの出射光がは端面入射型PINフォトダイオード10の受光面に入射し、受光面を通過し、電気信号に変換される。また、出射光の一部は、端面入射型PINフォトダイオード10の受光面で反射されるので、受光面は反射面25としても作用している。入射光11とは反射面25に入射する光を指しており、反射光12とは、反射面25から反射される光を指している。反射光12が光ファイバ2へ戻ることにより、ノイズが発生する。図6A及び図6Bは、ともに、端面入射型PINフォトダイオード10の側方より見る場合を表しており、図6Aは、入射光11及び反射光12からなる入射面に垂直な方向から、図6Bは、反射面25の法線15の方向から、それぞれ見る場合を表している。ここで、入射光11の光軸13と法線15とがなす角、及び、反射光12の光軸14と法線15とがなす角は、ともに、角度α[rad]である。
【0068】
当該実施形態に係る端面入射型PINフォトダイオード10の反射面25は、第1の実施形態に係る表面入射型PINフォトダイオード4の反射面21と同様に、反射面25の反射率に、異方性分布を有しており、図6Bに示す通り、裏面入射型PINフォトダイオード9の反射面25において、高い反射率を有する領域である高反射率領域26が、図中縦方向に延びる楕円形状をしており、高反射率領域26以外の領域の反射率は高反射率領域26の反射率より十分に低い反射率となっている。ここで、入射光11の光軸13は、端面入射型PINフォトダイオード10の反射面25と、高反射率領域26の中心で交わっているものとする。
【0069】
反射光12のNAは、反射光12の光軸14に対して異方性分布を有しており、図6Bの横方向に延びる楕円形状をしている。よって、図6Bに示す通り、第1の向きのNAが小さくなるよう、端面入射型PINフォトダイオード10の反射面25が配置されるのが望ましい。
【0070】
端面入射型受光素子の反射面の反射率が一様に分布している場合は、反射光のNAは、入射光のNAと等しい。この場合、反射面の反射率にもよるが、表面入射型受光素子と同様に、一般には、数式1に示す関係により、α>NAを満たすと、ORLの規定値を満たしている。
【0071】
これに対して、端面入射型受光素子の反射面の反射率に異方性分布を有する場合も、同様に、反射光のNAは、反射率が等方的である場合よりも大きくなり、所望のORLを得るために必要な角度αはより大きくなる。
【0072】
端面入射型受光素子においても、角度αが大きくなると、入射光と、端面入射型受光素子内部の導波路との結合効率ηが低下するのに伴い、受光感度も低下し、特性が劣化する。入射光と導波路との結合効率ηは、角度αが小さい場合においては、η∝−α2/NA2(数式2)の関係を有しており、端面入射型受光素子において、ORL及び結合効率ηは、ほぼ同じ割合で低下することとなる。
【0073】
しかし、反射光のNAの異方性分布を考慮して、第1の向きのNAが小さくなるように、受光素子の反射面を配置することにより、より小さい角度αで、所望のORLに達成することが出来、それにより、受光素子の受光感度の低下も抑制することが出来る。
【0074】
なお、当該実施形態に係る端面入射型PINフォトダイオード10において、反射面とは、主に、端面入射型PINフォトダイオード10の受光面である反射面25を指すが、素子の構造によっては、他の反射面についても、本発明を適用することが可能である。
【0075】
[第4の実施形態]
本発明の第4の実施形態に係る受光モジュール1の基本的な構成は、第1乃至第3の実施形態に係る受光モジュール1のいずれかと同じである。すなわち、受光素子は、表面入射型PINフォトダイオード4であっても、裏面入射型PINフォトダイオード9であっても、端面入射型PINフォトダイオード10であってもよい。第1乃至第3の実施形態において、受光素子の反射面の高反射率領域が楕円形状をしている場合において示したが、当該実施形態に係る受光モジュール1において、受光素子の反射面の反射率分布が、第1乃至第3の実施形態と主に異なっている。
【0076】
図7Aは、当該実施形態に係る受光素子の反射面の反射率分布の一例を示す図である。例えば、図7Aに示すように、反射面において、高反射率領域27が、十字形状をしており、高反射率領域27以外の領域の反射率は高反射率領域27の反射率より十分に低い反射率となっている。
【0077】
受光素子の反射面に入射光が照射する領域にある反射率分布が、図7Aに示す分布をしている場合、反射面における反射光の強度分布(NFP)は、図7Aに示す分布に対応している。それゆえ、反射面より遠方の反射光の強度分布(FFP)は、図7Aに示す分布を2次元フーリエ変換した像に対応しており、反射光のNAの異方性分布もこの像に対応している。
【0078】
図7Bは、図7Aに示す反射率分布を2次元フーリエ変換した像を示す像である。図7Bに示す2次元フーリエ変換像は、中心付近の振幅が大きく、中心から十字形の4つの向きそれぞれに進むのに伴い、振幅が小さくなっている。
【0079】
反射光のNA分布も、図7Bに示す像に対応しているので、反射光のNAの小さい向きを選択し、その向きが第1の向きとなるよう、受光素子の反射面を配置すればよい。
【0080】
図7Cは、反射面の反射率が図7Aに示す分布を有する場合に望ましい第1の向きを示す図である。前述した通り、反射光の光軸に対して反射光のNAが異方性分布を有する場合、反射光のNAの異方性分布は、図7Bに示す2次元フーリエ変換像に対応しており、図7Bに示す2次元フーリエ変換像の中心から、像の強度(絶対値)が小さい向きを第1の向きに選ぶとよい。図7Cには、第1の向きとして望ましい向きが、4つ示されている。これらの向きのいずれかを第1の向きとするのが、最も望ましく、プロセス上の誤差を鑑みて、これらの向きのいずれかの向きの近傍が第1の向きであってもよい。
【0081】
図8Aは、当該実施形態に係る反射面の反射率分布の他の一例を示す図である。例えば、図8Aに示すように、反射面において、高反射率領域27が、正三角形の形状をしていてもよい。この場合、高反射率領域27以外の領域の反射率は高反射率領域27の反射率より十分に低い反射率となっている。
【0082】
図8Bは、図8Aに示す反射率分布を2次元フーリエ変換した像を示す像である。図8Bに示す2次元フーリエ変換像は、中心付近の振幅が大きく、中心から6つの向きそれぞれに進むのに伴い、振幅が小さくなっている。
【0083】
反射光のNAの異方性分布も、図8Bに示す像に対応しているので、反射光のNAの小さい向きを選択し、その向きが第1の向きとなるよう、受光素子の反射面を配置すればよい。
【0084】
図8Cは、反射面の反射率が図8Aに示す分布を有する場合に望ましい第1の向きを示す図である。図8Cには、第1の向きとして望ましい向きが、6つ示されている。
【0085】
なお、以上、本発明の実施形態に係る受光モジュールについて説明した。以上の説明において、受光素子として、PINフォトダイオードを例に説明したが、PINフォトダイオードに限定されることはなく、アバランシェホトダイオード(Avalanche Photodiode:APD)など、他の受光素子であっても良いのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0086】
1 受光モジュール、2 光ファイバ、3 集光レンズ、4 表面入射型PINフォトダイオード、5 受光素子サブマウント、6 信号増幅用IC、7 ステム、8 電気信号出力ピン、9 裏面入射型PINフォトダイオード、10 端面入射型PINフォトダイオード、11 入射光、12 反射光、13,14 光軸、15 法線、21,23,25 反射面、22,24,26,27 高反射率領域、31,32,33,34,35 曲線。
【技術分野】
【0001】
本発明は、受光モジュールに関し、特に、受光モジュール内部における信号光の反射に起因するノイズの軽減と、受光モジュールにおける受光感度の低下抑制に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、光通信装置などに備えられる受光モジュールは、光ファイバ等の光学部材と、レンズと、受光素子とを備えるのが一般的である。ここで、光学部材は、受光モジュールの外部から入力される信号光を受光モジュール内部へ出射している。レンズは、光学部材より出射する出射光を収束光に変換し、受光素子へ出射している。さらに、受光素子は、レンズより出射する出射光を受光して電気信号に変換している。
【0003】
しかしながら、受光モジュールの内部に入射する信号光の一部が、受光モジュールの内部で反射され、その反射光が光学部材に戻ることで、受光モジュールが備えられる装置においてノイズの原因になり得る。
【0004】
信号光の反射に起因するノイズを抑制する従来技術が、特許文献1乃至特許文献3に記載されている。特許文献1及び特許文献2では、光ファイバより入射する入射光の光軸に対して、受光素子を搭載するサブマウントの面が傾斜しているサブマウントを配置することにより、受光素子の受光面からの反射光が光ファイバに戻ることを抑制している。また、特許文献3には、受光素子の受光面を加工して傾斜をつけることにより、反射光が光ファイバに戻ることを抑制している。
【0005】
例えば、受光素子が反射面を有しており、信号光の反射面における反射に起因するノイズを軽減するために、受光素子への入射光の光軸に対して、受光素子の反射面の法線方向が斜交するよう受光素子が配置される。ここで、入射光の光軸と反射面の法線方向とがなす角度(入射光傾斜角)を角度α[rad]とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−186321号公報
【特許文献2】特開平8−94887号公報
【特許文献3】特開平5−152599号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
光反射減衰量(Optical Return Loss:以下、ORLと記す)は、受光モジュール内部での信号光に起因するノイズと信号光のS/N比に対応している。ORLを軽減するためには、角度αを大きくすればよい。
【0008】
受光素子への入射光は、前述の通り、レンズによって集光されている収束光である。収束光の集まり具合を表す相対的な大きさとして、開口数(Numerical Aperture:以下、NAと記す)が用いられる。そして、入射光が収束光である場合、反射面によって反射される反射光は、反射面より遠くに進むにつれて広がる発散光であり、発散光の広がりを表す相対的な大きさとして、同じくNAが用いられる。
【0009】
入射光のNAに対して、ORLは、ORL∝−α2/NA2(数式1)の関係を有している。すなわち、入射光のNAが大きい場合、所望のORLを達成するためには、角度αもNAに応じて大きくする必要がある。
【0010】
しかし、角度αを大きくすると、所望のORLまでノイズを軽減出来るが、角度αを大きくするにつれ、入射光にコマ収差がより発生することにより、受光素子の受光感度が低下してしまう。それゆえ、ノイズの軽減と、受光素子の受光感度の両方を鑑みて、角度αが決定される。
【0011】
例えば、表面入射型受光素子の受光面(表面)や、裏面入射型受光素子の反射面(裏面)の金属形状は、入射光の光軸と当該面との交点から延びる法線が回転対称軸となり、回転に対して等方的に形成されるのが一般的である。このとき、当該面の反射率は、この交点に対して、等方的に分布している。これは、受光素子に電圧が印加される際に、素子内部に発生する電界が出来る限り等方的となるのが望ましいからである。
【0012】
受光素子の反射面の反射率が等方的に分布している場合、入射光のNAが光軸に対して等方的に分布しているならば、反射光のNAも同様に、光軸に対して等方的に分布している。すなわち、この場合、数式1に示すNAとは、入射光のNAであるが、同時に、反射光のNAであるとしてもよい。なお、反射光の光軸と反射面の法線方向がなす角度も、同様に角度αである。
【0013】
従来において、受光素子の反射面の反射率分布は一般には、等方的であり、反射光のNAも光軸に対して等方的に分布しているか、若しくは、等方的に分布していないとしても、その反射光のNA分布の異方性が問題となることは、ほとんどなかった。
【0014】
しかしながら、受光素子の発展に伴い、受光素子の反射面の金属形状などがより複雑となり、受光素子の反射面の反射率に、異方性分布を有する場合が生じる場合がある。また、より高性能な受光モジュールを実現するために、ORLを所望の値以下となるよう受光モジュールからのノイズを軽減しつつ、受光素子のより高い受光感度が望まれることになる。
【0015】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、受光モジュール内部における信号光の反射に起因するノイズが軽減されつつ、受光モジュールにおける受光感度の低下が抑制される、受光モジュールの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
(1)上記課題を解決するために、本発明に係る受光モジュールは、外部より入力される信号光を内部へ出射する光学部材と、前記光学部材より出射する出射光を収束光に変換して出射するレンズと、前記収束光の光軸に対して法線方向が斜交して配置される反射面を有するとともに、前記収束光を受光して電気信号に変換する受光素子と、を備える受光モジュールであって、前記収束光が前記反射面で反射してなる反射光の開口数は、前記反射光の光軸と垂直に交わる反射光垂直面において、前記反射光の光軸に対して異方性分布を有し、前記収束光及び前記反射光側へ前記反射面から延びる法線の向きが前記反射光垂直面に正射影される向きである第1の向きの前記反射光の開口数より、大きい開口数となる第2の向きが、前記反射光垂直面に第1の向きと異なる向きに存在する、ことを特徴とする。
【0017】
(2)本発明に係る受光モジュールは、外部より入力される信号光を内部へ出射する光学部材と、前記光学部材より出射する出射光を収束光に変換して出射するレンズと、前記収束光の光軸に対して法線方向が斜交して配置される反射面を有するとともに、前記収束光を受光して電気信号に変換する受光素子と、を備える受光モジュールであって、前記収束光の光軸と前記反射面との交点に対する前記反射面の反射率の異方性分布と、前記収束光の前記反射面上での強度及び波面と、の関係から算出される、前記収束光が前記反射面で反射してなる反射光の開口数は、前記反射光の光軸と垂直に交わる反射光垂直面において、前記反射光の光軸に対して異方性分布を有し、前記収束光及び前記反射光側へ前記反射面から延びる法線の向きが前記反射光垂直面に正射影される向きである第1の向きの前記反射光の開口数より、大きい開口数となる第2の向きが、前記反射光垂直面に第1の向きと異なる向きに存在していてもよい。
【0018】
(3)本発明に係る受光モジュールは、外部より入力される信号光を内部へ出射する光学部材と、前記光学部材より出射する出射光を収束光に変換して出射するレンズと、前記収束光の光軸に対して法線方向が斜交して配置される反射面を有するとともに、前記収束光を受光して電気信号に変換する受光素子と、を備える受光モジュールであって、前記収束光の光軸と前記反射面との交点に対する前記反射面の反射率の異方性分布の2次元フーリエ変換によって算出される、前記収束光が前記反射面で反射してなる反射光の開口数は、前記反射光の光軸と垂直に交わる反射光垂直面において、前記反射光の光軸に対して異方性分布を有し、前記収束光及び前記反射光側へ前記反射面から延びる法線の向きが前記反射光垂直面に正射影される向きである第1の向きの開口数より、大きい開口数となる第2の向きが、前記反射光垂直面に第1の向きと異なる向きに存在していてもよい。
【0019】
(4)上記(1)乃至(3)のいずれかに記載の受光モジュールであって、前記反射光垂直面において、前記反射光の開口数の前記異方性分布は、前記第1の向きで極小値となっていてもよい。
【0020】
(5)上記(1)乃至(4)のいずれかに記載の受光モジュールであって、前記受光素子は、表面入射型受光素子であり、前記反射面とは、前記受光素子の受光面であってもよい。
【0021】
(6)上記(1)乃至(4)のいずれかに記載の受光モジュールであって、前記受光素子は、裏面入射型受光素子であり、前記反射面とは、前記裏面入射型受光素子の表面に配置される反射面であってもよい。
【0022】
(7)上記(1)乃至(4)のいずれかに記載の受光モジュールであって、前記受光素子は、端面入射型受光素子であり、前記反射面とは、前記端面入射型受光素子の受光面であってもよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、受光モジュール内部における信号光の反射に起因するノイズが軽減されつつ、受光モジュールにおける受光感度の低下が抑制される、受光モジュールが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施形態に係る受光モジュールの全体断面図である。
【図2A】本発明の第1の実施形態に係る表面入射型PINフォトダイオードの入射光と反射光の関係を表す概念図である。
【図2B】本発明の第1の実施形態に係る表面入射型PINフォトダイオードの入射光と反射光の関係を表す概念図である。
【図3】入射光傾斜角である角度αに対する受光素子のORLを表す図である。
【図4】入射光傾斜角である角度αに対する受光素子の受光感度を表す図である。
【図5A】本発明の第2の実施形態に係る裏面入射型PINフォトダイオードの入射光と反射光の関係を表す概念図である。
【図5B】本発明の第2の実施形態に係る裏面入射型PINフォトダイオードの入射光と反射光の関係を表す概念図である。
【図6A】本発明の第3の実施形態に係る端面入射型PINフォトダイオードの入射光と反射光の関係を表す概念図である。
【図6B】本発明の第3の実施形態に係る端面入射型PINフォトダイオードの入射光と反射光の関係を表す概念図である。
【図7A】本発明の第4の実施形態に係る受光素子の反射面の反射率分布の一例を示す図である。
【図7B】図7Aに示す反射率分布を2次元フーリエ変換した像を示す像である。
【図7C】反射面の反射率が図7Aに示す分布を有する場合に望ましい第1の向きを示す図である。
【図8A】本発明の第4の実施形態に係る受光素子の反射面の反射率分布の他の一例を示す図である。
【図8B】図8Aに示す反射率分布を2次元フーリエ変換した像を示す像である。
【図8C】反射面の反射率が図8Aに示す分布を有する場合に望ましい第1の向きを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態に係る受光モジュールについて、図面を参照しながら以下に説明する。ただし、以下に示す図は、あくまで、各実施形態の実施例を説明するものであって、図の大きさと本実施例記載の縮尺は必ずしも一致するものではない。
【0026】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態に係る受光モジュールについて説明する。当該実施形態に係る受光モジュール1は、光ファイバ2と、集光レンズ3と、受光素子として表面入射型PINフォトダイオード4を備えている。
【0027】
図1は、当該実施形態に係る受光モジュール1の全体断面図である。光ファイバ2は、外部より入力される信号光を、受光モジュール1の内部へ出射する光学部材である。なお、光学部材は、受光モジュール1の外部からの信号光を内部へ伝達するものであれば、光ファイバ2に限定されることはなく、他の光学部材であってもよい。光ファイバ2の先端形状により、光ファイバ2からの出射光の光軸は、光ファイバ2の中心軸に対して平行ではなく、傾斜している。ここで、出射光の光軸とは、進行する光束の中心となる仮想的な光線を指している。以下、本明細書における出射光及び入射光などの光軸とは、この定義によって用いられる。
【0028】
光ファイバ2からの出射光は、集光レンズ3によって、集光する収束光に変換され、集光レンズ3は、収束光を表面入射型PINフォトダイオード4へ出射する。このとき、光ファイバ2からの出射光の光軸が、集光レンズ3の中心軸に対して傾斜しているので、集光レンズ3からの出射光も、同様に、集光レンズ3の中心軸に対して傾斜している。ここで、レンズの中心軸とは、レンズの回転対称軸を指している。以下、本明細書におけるレンズの中心軸とは、この定義によって用いられる。
【0029】
受光モジュール1には、さらに、ステム7が備えられ、受光素子サブマウント5がステム7上に配置され、表面入射型PINフォトダイオード4は受光素子サブマウント5上に配置されている。集光レンズ3からの出射光は、前述の通り、収束光であり、該出射光の光軸は、表面入射型PINフォトダイオード4の受光面(表面)を貫いている。言いかえると、表面入射型PINフォトダイオード4の受光面と、集光レンズ3からの出射光の光軸との交点が、受光面の所望の領域に含まれるよう調整され、表面入射型PINフォトダイオード4が配置される。
【0030】
図1に示す通り、集光レンズ3からの出射光の光軸に対して、表面入射型PINフォトダイオード4の受光面の法線方向が斜交するよう、表面入射型PINフォトダイオード4は配置されている。そして、集光レンズ3からの出射光が表面入射型PINフォトダイオード4の受光面で反射されるとき、その反射光の光軸は、集光レンズ3の中心軸に対して傾斜しており、同様に、光ファイバ2の中心軸に対しても傾斜している。よって、受光モジュール1の外部から入力される信号光が、表面入射型PINフォトダイオード4の受光面で反射される反射光が、再び、光ファイバ2に戻り、受光モジュール1を備える装置においてノイズとして発生されるのが抑制されている。
【0031】
集光レンズ3からの出射光の一部は、表面入射型PINフォトダイオード4の受光面を通過して、表面入射型PINフォトダイオード4の内部へ進行し、表面入射型PINフォトダイオード4は、この光を受光し、電気信号に変換する。受光モジュール1のステム7には、信号増幅用IC6が配置され、表面入射型PINフォトダイオード4から出力された電気信号を増幅する。表面入射型PINフォトダイオード4で変換された電気信号は、受光モジュール1のステム7の反対側に配置される電気信号出力ピン8より、外部へ出力される。
【0032】
図2A及び図2Bは、当該実施形態に係る表面入射型PINフォトダイオード4の入射光11と反射光12の関係を表す概念図である。集光レンズ3からの出射光が、表面入射型PINフォトダイオード4の受光面に入射する。よって、入射光11とは、集光レンズ3からの出射光を指している。入射光11の一部は、表面入射型PINフォトダイオード4の受光面で反射される。よって、受光面は反射面としても作用している。また、反射光12とは、入射光11が表面入射型PINフォトダイオード4の反射面で反射される光を指している。図2Aは、入射光11及び反射光12を、受光素子サブマウント5上に配置されている表面入射型PINフォトダイオード4の側方より見る場合を表しており、図2Bは、同様に、表面入射型PINフォトダイオード4の上方より見る場合を表している。図2Aには、入射光11の光軸と表面入射型PINフォトダイオード4との交点より伸びる法線が、法線15として示されている。ここで、入射光11の光軸13と法線15とがなす角、及び、反射光12の光軸14と法線15とがなす角は、ともに、角度α[rad]である。
【0033】
前述の通り、入射光11は、集光レンズ3より集光される収束光である。図2Aには、入射光11の光軸が、光軸13として示されている。実際には、集光レンズ3よりコマ収差が生じており、入射光11のNAは、入射光11の光軸13に対して、異方性分布を有することとなるが、説明をより簡単とするために、集光レンズ3による収差は無視できるほど小さいとし、入射光11のNAは、入射光11の光軸13に対して、等方的であるものとする。入射光11の光軸13に垂直な面を、入射光垂直面とすると、入射光11の光軸13は、回転対称軸となっており、入射光垂直面において、入射光11のNAは、光軸13を中心とする回転に対して、一定となる分布(等方性分布)を有している。よって、入射光垂直面における入射光11の強度分布は、光軸13を中心として、円形状をしている。図2A及び図2Bには、入射光11のNAが表されている。入射光垂直面は、表面入射型PINフォトダイオード4の反射面に対して、平行ではなく傾斜しているが、図2Bにおいて、簡単のために、入射光垂直面を光軸13の方向より見ているように示しており、入射光11のNAが円形状に表されている。
【0034】
当該実施形態に係る表面入射型PINフォトダイオード4の反射面21(受光面)は、反射面の反射率に、異方性分布を有している。すなわち、図2Bに示す通り、表面入射型PINフォトダイオード4の反射面21において、高い反射率を有する領域である高反射率領域22が、図中横方向に延びる楕円形状(長軸が図中横方向)をしており、高反射率領域22以外の領域の反射率は高反射率領域22の反射率より十分に低い反射率となっている。ここで、入射光11の光軸13は、表面入射型PINフォトダイオード4の反射面21と、高反射率領域22の中心(長軸方向と短軸方向の交点)で交わっているものとする。
【0035】
反射面の反射率が、異方性分布を有している場合、反射光のNAは、光軸に対して異方性分布を有する。すなわち、反射面における反射光の強度分布を近視野像(NFP)として、反射面における回折現象により、反射面より遠方における反射光の強度分布は遠視野像(FFP)となる。図2Bには、表面入射型PINフォトダイオード4の反射面21における入射光11が照射する領域が、破線で示す円形状の領域として示されており、該領域の中に、反射面21の高反射率領域22は含まれており、反射面21における反射光12の強度分布、すなわち、NFPの強度分布は、反射面21の高反射率領域22の形状に対応しており、図中横方向に延びる楕円形状に分布している。
【0036】
これに対して、反射面21より遠方における反射光12の強度分布、すなわち、FFPの強度分布は、図2Bに示す通り、図中縦方向に延びる楕円形状(長軸が図中縦方向)に分布しており、反射光12のNA分布に対応している。反射光12の光軸14に垂直な面を、反射光垂直面とする。入射光垂直面と同様に、反射光垂直面は、反射面21に対して、平行ではなく傾斜しているが、図2Bにおいて、簡単のために、反射光垂直面を光軸14の方向より見ているように示しており、反射光12のNAが図中縦方向に延びる楕円形状に表されている。
【0037】
反射面21の法線方向には、反射面21を境に互いに逆向きに延びる2つの向きが存在するが、そのうち、入射光及び反射光側へ反射面から延びる法線の向きを考える。すなわち、該法線の向きは、図2Aに示す、図中の法線15の上向きである。該法線の向きが反射光垂直面に正射影される向きを第1の向きとすると、第1の向きは、反射光垂直面において、入射光11及び反射光12からなる入射面と反射光垂直面とが交わる方向であって、入射光11及び反射光12が進行するに伴い、入射面が延びる向きに対向する向きである。反射面21の法線方向よりみると、入射光11及び反射光12が進行する向き(入射面が延びる向き)は、図2Bの右向きであり、第1の向きは、それに対向する向きであり、図2Bの左向きである。
【0038】
本発明の特徴は、入射光及び反射光に対する受光素子の反射面の配置にある。反射光のNAが反射光の光軸に対して異方性分布を有している場合に、入射光及び反射光側へ反射面から延びる法線の向きが反射光垂直面に正射影される向き(第1の向き)のNAが小さくなるよう、受光素子の反射面が配置されるのが望ましい。少なくとも、第1の向きのNAより大きいNAとなる第2の向きが、反射光垂直面に第1の向きとは異なる向きに存在している必要がある。反射光のNAが、第1の向きで、極小値(又は、最小値)を取るのが、さらに望ましい。実際には、プロセス上の誤差が生じるので、反射光のNAが、第1の向きからプロセス上の誤差の範囲内にある向きのいずれか、極小値(又は、最小値)を取っていればよい。
【0039】
入射光が収束光である場合、反射光は発散光となるが、反射光のうち、第1の向きに発散していく光は、受光モジュールの光学部材へ戻る光の強度上昇、すなわち、ノイズの上昇に、大きく寄与する。第1の向きのNAが小さい場合、上述の数式1に示す通り、所望のORLを得るために必要な角度αは小さくなり、受光モジュール内部における信号光の反射に起因するノイズを軽減しつつ、受光モジュールにおける受光感度の低下が抑制される。
【0040】
例えば、当該実施形態に係る表面入射型PINフォトダイオード4の場合、反射光12のNAは、図2Bに示す通り、図中縦方向に延びる楕円形状をしている。反射光垂直面において、入射面との交線に対して垂直な向き、すなわち、図2Bの図中上向き又は下向きを第2の向きとする。第1の向きのNA(楕円の短軸)は、第2の向きのNA(楕円の長軸)より小さくなっている。そして、図2Bに示す反射面21を90度回転させて、反射面21の高反射率領域22が図中縦方向に延びる楕円形状とする場合より、反射光12の図中左向きのNAを小さくすることが出来る。
【0041】
反射面より遠方における反射光の強度分布はFFPであり、これは、反射面における反射光の強度分布(NFP)に基づいている。FFPは、NFPから2次元フーリエ変換により算出することができる。
【0042】
入射光のNAが光軸に対して等方性分布を有しており、受光素子の反射面に入射光が照射する領域が、反射面の高反射領域より大きい場合、反射面における反射光の強度分布(NFP)は、受光素子の反射面の反射率分布に基づいている。よって、受光素子の反射面の反射率が、入射光の光軸と反射面との交点を中心とする回転に対して、異方性分布を有している場合、反射面における反射光の強度分布(NFP)は、その反射率の異方性分布に対応している。よって、反射光のNAの異方性分布は、反射面の反射率の異方性分布に基づいていることとなる。さらに、FFPは、NFPを略2次元フーリエ変換した像であるので、反射光のNA分布は、反射面の反射率の異方性分布の2次元フーリエ変換によって算出される。
【0043】
この場合、受光素子の反射面における反射率の異方性分布を、入射光の光軸と反射面との交点に対して、2次元フーリエ変換した像を算出し、その像の強度分布が、反射光のNA分布に対応しているので、像の中心からの強度(絶対値)が小さい向きが第1の向きとなるように、受光素子の反射面を配置すればよい。
【0044】
反射面における反射光の強度分布(NFP)は、受光素子の反射面に入射光が照射する領域にある反射率分布に対応している。それゆえ、反射光の高反射領域の一部が、入射光の照射領域の外側にも存在している場合であっても、NFPは、受光面の反射面に入射光が照射する領域にある反射率分布に対応しており、反射面より遠方の反射光の強度分布(FFP)は、この領域の反射率分布を2次元フーリエ変換した像に対応しており、反射光のNAの異方性分布もこの像に対応している。これは反射面の反射率分布が連続的に変化する場合も同様である。また、入射光のNAが異方性分布を有する場合、及び入射光が反射面において無視できない程の大きさの波面収差を持つ場合、NFPは、入射光の反射面での強度及び位相の分布に対し、その対応する反射率分布を掛け合わせた結果得られる強度分布となる。よって、反射光のNAの異方性分布は、反射面の反射率の異方性分布と、入射光の反射面での強度及び波面と、の関係から算出される。
【0045】
この場合、受光素子の反射面における反射率の異方性分布と、入射光の反射面での強度及び波面と、の関係から、反射光のNA分布を算出し、反射光のNAが小さい向きが第1の向きとなるように、受光素子の反射面を配置すればよい。ただし、光電変換効率を良くする為に入射光の反射面での波面収差は非常に小さく、また入射光の強度分布はほぼ等方的な略ガウス分布であるのが一般的なので、多くの場合においては反射面の反射率の異方性分布の2次元フーリエ変換により、反射光のNAの異方性分布を近似的に算出することができる。
【0046】
なお、ここで、当該実施形態に係る表面入射型PINフォトダイオード4において、反射面とは、主に、受光面を指すが、素子の構造によっては、他の反射面についても、本発明を適用することが可能である。
【0047】
次に、受光モジュール内部における信号光の反射に起因するノイズを軽減しつつ、受光モジュールにおける受光感度の低下が抑制される角度αについて説明する。
【0048】
本発明に係る受光素子の反射面の反射率は、異方性分布を有している。この場合、例えば、反射面の一部の領域が高い反射率となっているので、反射光のNAは入射光のNAと比較して大きくなる。さらに、前述の通り、反射面の反射率が異方性分布を有しているので、反射光のNAも異方性分布を有することとなる。
【0049】
例えば、1Gbit/s以上の高速の伝送速度で信号を伝送する高速・広帯域な受光モジュールに対して、ITU−T(国際標準規格)では、受光モジュールの入射端でのORLを−27dB以下となるよう規定されている。表面入射型受光素子の反射面の反射率が一様に分布している場合は、反射光のNAは、入射光のNAと等しい。この場合、反射面の反射率にもよるが、一般には、数式1に示す関係により、α>NAを満たすと、ORLの規定値を満たしている。
【0050】
これに対して、反射光のNAが、入射光のNAより大きくなる場合、同じ角度αに対して、ORLは上昇し、ORLの規定値を満たす入射光の傾斜角である角度αは大きくなる。すなわち、角度αに対するORLは、入射光のNAと反射光のNAの大小関係に依存する。
【0051】
図3は、入射光傾斜角である角度αに対する受光素子のORLを表す図である。横軸は、任意の単位による角度αを、縦軸は、ORL[dB]を示している。図3には、反射光のNAが入射光のNAと等しい場合について、曲線31を用いて、反射光のNAが入射光のNAの2倍である場合について、曲線32を用いて、示されている。
【0052】
図3にα1として示す角度αにおいて、反射光のNAと入射光のNAが等しい場合を示す曲線31では、ORLが−20dBとなるが、反射光のNAが入射光のNAの2倍である場合を示す曲線32では、ORLが−10dBと、大幅に上昇しており、特性が劣化している。反射面の反射率が例えば一般的な値である数%程度であるとき、反射光のNAと入射光のNAが等しい場合、角度αが入射光のNAと同程度であれば、ORLが−30dB以下となり、規定値以下である。この角度αは、図3にα2として示されている。しかし、反射光のNAが入射光のNAの2倍である場合、角度αをα2より更に大きくしなければ、ORLを規定値以下にすることが出来ない。
【0053】
反射光のNAが大きい場合であっても、それに応じて、角度αを大きくすればORLを規定値以下にすることは可能であるが、角度αを大きくすると、集光レンズ3からの出射光にコマ収差などが発生することによって、受光素子の受光感度が低下するという問題が生じる。
【0054】
図4は、入射光傾斜角である角度αに対する受光素子の受光感度(Receiving Sensitivity)を表す図である。横軸は、任意の単位による角度αを、縦軸は、受光感度[dB]を示している。図4には、受光素子の受光径が、入射光の照射領域の半径の2倍程度の場合を示しており、図4に示す角度αに対する受光感度は、受光モジュールとしては一般的な関係を示している。図4には、合焦点にフォーカスされる場合について曲線33を用いて、20μmデフォーカスされる場合について曲線34を用いて、40μmデフォーカスされる場合について曲線35を用いて、示されている。
【0055】
図4にα3として示す角度αの値は、入射光のNAと同程度に小さいものであり、角度α=0となる垂直入射と比較して、曲線33乃至曲線35のいずれも受光感度の低下は非常に小さいが、角度αが大きくなるにつれて、受光感度はより低下していく。合焦点にフォーカスされる場合を示す曲線33と比較して、特に、合焦点からデフォーカスされる場合を示す曲線34及び曲線35において、角度αが大きい値となった場合の受光感度の低下はより大きくなる。そして、よりデフォーカスされる場合に、受光感度の低下はより著しい。
【0056】
40μmデフォーカスされる場合を示す曲線35の角度αに対する受光感度[dB]の低下は、合焦点にフォーカスされる場合を示す曲線33と比較して、おおよそ4倍となっており、角度αが大きくなると、受光感度を良好に保つ幾何的な許容公差が大幅に縮小することを表している。
【0057】
受光素子の反射面の反射率に異方性分布を有する場合、反射光のNAは、反射率が等方的である場合よりも大きくなり、所望のORLを得るために必要な角度αはより大きくなる。しかし、反射光のNAの異方性分布を考慮して、第1の向きのNAが小さくなるように、受光素子の反射面を配置することにより、より小さい角度αで、所望のORLに達成することが出来、それにより、受光素子の受光感度の低下も抑制することが出来る。
【0058】
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態に係る受光モジュール1の基本的な構成は、第1の実施形態に係る受光モジュール1と同じである。当該実施形態に係る受光モジュール1において、受光モジュール1に備えられる受光素子が裏面入射型PINフォトダイオード9である点が、第1の実施形態と主に異なっている。
【0059】
図5A及び図5Bは、当該実施形態に係る裏面入射型PINフォトダイオード9の入射光11と反射光12の関係を表す概念図である。集光レンズ3からの出射光が、裏面入射型PINフォトダイオード9の裏面に入射する。すなわち、裏面入射型PINフォトダイオード9の裏面とは、図5Aに示す裏面入射型PINフォトダイオード9の図中上側の面を指している。出射光の多くは、裏面入射型PINフォトダイオード9の裏面より、裏面入射型PINフォトダイオード9の内部へ進行し、光吸収層にて電気信号に変換される。裏面入射型PINフォトダイオード9の表面、すなわち、図5Aに示す裏面入射型PINフォトダイオード9の図中下側の面には、反射面23が設けられている。裏面入射型PINフォトダイオード9の内部を通過する光は、反射面23で反射される。ここで、入射光11とは反射面23に入射する光を指しており、反射光12とは、反射面23から反射される光を指している。
【0060】
反射光12の一部は、裏面入射型PINフォトダイオード9の光吸収層で再び吸収され、残りの反射光12が、裏面入射型PINフォトダイオード9より出射される。この光が、光ファイバ2へ戻ることにより、ノイズが発生する。図5A及び図5Bは、図2A及び図2Bと同様に、裏面入射型PINフォトダイオード9の側方及び上方より見る場合を、それぞれ表している。ここで、入射光11の光軸13と法線15とがなす角、及び、反射光12の光軸14と法線15とがなす角は、ともに、角度α[rad]である。
【0061】
当該実施形態に係る裏面入射型PINフォトダイオード9の反射面23は、第1の実施形態に係る表面入射型PINフォトダイオード4の反射面21と同様に、反射面23の反射率に、異方性分布を有しており、図5Bに示す通り、裏面入射型PINフォトダイオード9の反射面23において、高い反射率を有する領域である高反射率領域24が、図中横方向に延びる楕円形状をしており、高反射率領域24以外の領域の反射率は高反射率領域24の反射率より十分に低い反射率となっている。ここで、入射光11の光軸13は、裏面入射型PINフォトダイオード9の反射面23と、高反射率領域24の中心で交わっているものとする。
【0062】
第1の実施形態と同様に、反射光12のNAは、反射光12の光軸14に対して異方性分布を有しており、図5Bの縦方向に延びる楕円形状をしている。よって、図5Bに示す通り、第1の向きのNAが小さくなるよう、裏面入射型PINフォトダイオード9の反射面23が配置されるのが望ましい。
【0063】
裏面入射型受光素子の反射面の反射率が一様に分布している場合は、反射光のNAは、入射光のNAと等しい。この場合、素子の吸収層での吸収率や反射面の反射率にもよるが、表面入射型受光素子と同様に、一般には、数式1に示す関係により、α>NAを満たすと、ORLの規定値を満たしている。
【0064】
これに対して、裏面入射型受光素子の反射面の反射率に異方性分布を有する場合も、同様に、反射光のNAは、反射率が等方的である場合よりも大きくなり、所望のORLを得るために必要な角度αはより大きくなる。しかし、反射光のNAの異方性分布を考慮して、第1の向きのNAが小さくなるように、受光素子の反射面を配置することにより、より小さい角度αで、所望のORLに達成することが出来、それにより、受光素子の受光感度の低下も抑制することが出来る。
【0065】
なお、当該実施形態に係る裏面入射型PINフォトダイオード9において、反射面とは、主に、図5Aに示す裏面入射型PINフォトダイオード9の下面に位置する反射面23を指す。裏面入射型PINフォトダイオード9の裏面(図5Aに示す上面)である受光面においても、光の反射はあり得る。受光面の反射率は、一般に、反射面23の高反射率領域24の反射率と比べて、非常に小さく、ノイズの主な要因は、反射面23における反射光12である。しかしながら、裏面入射型受光素子の受光面において、反射率が異方性分布を有しており、受光面の反射光が大きい場合には、受光面を反射面として、本発明を適用してもよい。
【0066】
[第3の実施形態]
本発明の第3の実施形態に係る受光モジュール1の基本的な構成は、第1の実施形態に係る受光モジュール1と同じである。当該実施形態に係る受光モジュール1において、受光モジュール1に備えられる受光素子が端面入射型PINフォトダイオード10である点が、第1の実施形態と主に異なっている。
【0067】
図6A及び図6Bは、当該実施形態に係る端面入射型PINフォトダイオード10の入射光11と反射光12の関係を表す概念図である。集光レンズ3からの出射光が、端面入射型PINフォトダイオード10の端面(側面)に入射する。すなわち、端面入射型PINフォトダイオード10の受光面は、端面である。集光レンズ3からの出射光がは端面入射型PINフォトダイオード10の受光面に入射し、受光面を通過し、電気信号に変換される。また、出射光の一部は、端面入射型PINフォトダイオード10の受光面で反射されるので、受光面は反射面25としても作用している。入射光11とは反射面25に入射する光を指しており、反射光12とは、反射面25から反射される光を指している。反射光12が光ファイバ2へ戻ることにより、ノイズが発生する。図6A及び図6Bは、ともに、端面入射型PINフォトダイオード10の側方より見る場合を表しており、図6Aは、入射光11及び反射光12からなる入射面に垂直な方向から、図6Bは、反射面25の法線15の方向から、それぞれ見る場合を表している。ここで、入射光11の光軸13と法線15とがなす角、及び、反射光12の光軸14と法線15とがなす角は、ともに、角度α[rad]である。
【0068】
当該実施形態に係る端面入射型PINフォトダイオード10の反射面25は、第1の実施形態に係る表面入射型PINフォトダイオード4の反射面21と同様に、反射面25の反射率に、異方性分布を有しており、図6Bに示す通り、裏面入射型PINフォトダイオード9の反射面25において、高い反射率を有する領域である高反射率領域26が、図中縦方向に延びる楕円形状をしており、高反射率領域26以外の領域の反射率は高反射率領域26の反射率より十分に低い反射率となっている。ここで、入射光11の光軸13は、端面入射型PINフォトダイオード10の反射面25と、高反射率領域26の中心で交わっているものとする。
【0069】
反射光12のNAは、反射光12の光軸14に対して異方性分布を有しており、図6Bの横方向に延びる楕円形状をしている。よって、図6Bに示す通り、第1の向きのNAが小さくなるよう、端面入射型PINフォトダイオード10の反射面25が配置されるのが望ましい。
【0070】
端面入射型受光素子の反射面の反射率が一様に分布している場合は、反射光のNAは、入射光のNAと等しい。この場合、反射面の反射率にもよるが、表面入射型受光素子と同様に、一般には、数式1に示す関係により、α>NAを満たすと、ORLの規定値を満たしている。
【0071】
これに対して、端面入射型受光素子の反射面の反射率に異方性分布を有する場合も、同様に、反射光のNAは、反射率が等方的である場合よりも大きくなり、所望のORLを得るために必要な角度αはより大きくなる。
【0072】
端面入射型受光素子においても、角度αが大きくなると、入射光と、端面入射型受光素子内部の導波路との結合効率ηが低下するのに伴い、受光感度も低下し、特性が劣化する。入射光と導波路との結合効率ηは、角度αが小さい場合においては、η∝−α2/NA2(数式2)の関係を有しており、端面入射型受光素子において、ORL及び結合効率ηは、ほぼ同じ割合で低下することとなる。
【0073】
しかし、反射光のNAの異方性分布を考慮して、第1の向きのNAが小さくなるように、受光素子の反射面を配置することにより、より小さい角度αで、所望のORLに達成することが出来、それにより、受光素子の受光感度の低下も抑制することが出来る。
【0074】
なお、当該実施形態に係る端面入射型PINフォトダイオード10において、反射面とは、主に、端面入射型PINフォトダイオード10の受光面である反射面25を指すが、素子の構造によっては、他の反射面についても、本発明を適用することが可能である。
【0075】
[第4の実施形態]
本発明の第4の実施形態に係る受光モジュール1の基本的な構成は、第1乃至第3の実施形態に係る受光モジュール1のいずれかと同じである。すなわち、受光素子は、表面入射型PINフォトダイオード4であっても、裏面入射型PINフォトダイオード9であっても、端面入射型PINフォトダイオード10であってもよい。第1乃至第3の実施形態において、受光素子の反射面の高反射率領域が楕円形状をしている場合において示したが、当該実施形態に係る受光モジュール1において、受光素子の反射面の反射率分布が、第1乃至第3の実施形態と主に異なっている。
【0076】
図7Aは、当該実施形態に係る受光素子の反射面の反射率分布の一例を示す図である。例えば、図7Aに示すように、反射面において、高反射率領域27が、十字形状をしており、高反射率領域27以外の領域の反射率は高反射率領域27の反射率より十分に低い反射率となっている。
【0077】
受光素子の反射面に入射光が照射する領域にある反射率分布が、図7Aに示す分布をしている場合、反射面における反射光の強度分布(NFP)は、図7Aに示す分布に対応している。それゆえ、反射面より遠方の反射光の強度分布(FFP)は、図7Aに示す分布を2次元フーリエ変換した像に対応しており、反射光のNAの異方性分布もこの像に対応している。
【0078】
図7Bは、図7Aに示す反射率分布を2次元フーリエ変換した像を示す像である。図7Bに示す2次元フーリエ変換像は、中心付近の振幅が大きく、中心から十字形の4つの向きそれぞれに進むのに伴い、振幅が小さくなっている。
【0079】
反射光のNA分布も、図7Bに示す像に対応しているので、反射光のNAの小さい向きを選択し、その向きが第1の向きとなるよう、受光素子の反射面を配置すればよい。
【0080】
図7Cは、反射面の反射率が図7Aに示す分布を有する場合に望ましい第1の向きを示す図である。前述した通り、反射光の光軸に対して反射光のNAが異方性分布を有する場合、反射光のNAの異方性分布は、図7Bに示す2次元フーリエ変換像に対応しており、図7Bに示す2次元フーリエ変換像の中心から、像の強度(絶対値)が小さい向きを第1の向きに選ぶとよい。図7Cには、第1の向きとして望ましい向きが、4つ示されている。これらの向きのいずれかを第1の向きとするのが、最も望ましく、プロセス上の誤差を鑑みて、これらの向きのいずれかの向きの近傍が第1の向きであってもよい。
【0081】
図8Aは、当該実施形態に係る反射面の反射率分布の他の一例を示す図である。例えば、図8Aに示すように、反射面において、高反射率領域27が、正三角形の形状をしていてもよい。この場合、高反射率領域27以外の領域の反射率は高反射率領域27の反射率より十分に低い反射率となっている。
【0082】
図8Bは、図8Aに示す反射率分布を2次元フーリエ変換した像を示す像である。図8Bに示す2次元フーリエ変換像は、中心付近の振幅が大きく、中心から6つの向きそれぞれに進むのに伴い、振幅が小さくなっている。
【0083】
反射光のNAの異方性分布も、図8Bに示す像に対応しているので、反射光のNAの小さい向きを選択し、その向きが第1の向きとなるよう、受光素子の反射面を配置すればよい。
【0084】
図8Cは、反射面の反射率が図8Aに示す分布を有する場合に望ましい第1の向きを示す図である。図8Cには、第1の向きとして望ましい向きが、6つ示されている。
【0085】
なお、以上、本発明の実施形態に係る受光モジュールについて説明した。以上の説明において、受光素子として、PINフォトダイオードを例に説明したが、PINフォトダイオードに限定されることはなく、アバランシェホトダイオード(Avalanche Photodiode:APD)など、他の受光素子であっても良いのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0086】
1 受光モジュール、2 光ファイバ、3 集光レンズ、4 表面入射型PINフォトダイオード、5 受光素子サブマウント、6 信号増幅用IC、7 ステム、8 電気信号出力ピン、9 裏面入射型PINフォトダイオード、10 端面入射型PINフォトダイオード、11 入射光、12 反射光、13,14 光軸、15 法線、21,23,25 反射面、22,24,26,27 高反射率領域、31,32,33,34,35 曲線。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部より入力される信号光を内部へ出射する光学部材と、
前記光学部材より出射する出射光を収束光に変換して出射するレンズと、
前記収束光の光軸に対して法線方向が斜交して配置される反射面を有するとともに、前記収束光を受光して電気信号に変換する受光素子と、
を備える受光モジュールであって、
前記収束光が前記反射面で反射してなる反射光の開口数は、前記反射光の光軸と垂直に交わる反射光垂直面において、前記反射光の光軸に対して異方性分布を有し、
前記収束光及び前記反射光側へ前記反射面から延びる法線の向きが前記反射光垂直面に正射影される向きである第1の向きの前記反射光の開口数より、大きい開口数となる第2の向きが、前記反射光垂直面に第1の向きと異なる向きに存在する、
ことを特徴とする、受光モジュール。
【請求項2】
外部より入力される信号光を内部へ出射する光学部材と、
前記光学部材より出射する出射光を収束光に変換して出射するレンズと、
前記収束光の光軸に対して法線方向が斜交して配置される反射面を有するとともに、前記収束光を受光して電気信号に変換する受光素子と、
を備える受光モジュールであって、
前記収束光の光軸と前記反射面との交点に対する前記反射面の反射率の異方性分布と、前記収束光の前記反射面上での強度及び波面と、の関係から算出される、前記収束光が前記反射面で反射してなる反射光の開口数は、前記反射光の光軸と垂直に交わる反射光垂直面において、前記反射光の光軸に対して異方性分布を有し、
前記収束光及び前記反射光側へ前記反射面から延びる法線の向きが前記反射光垂直面に正射影される向きである第1の向きの前記反射光の開口数より、大きい開口数となる第2の向きが、前記反射光垂直面に第1の向きと異なる向きに存在する、
ことを特徴とする、受光モジュール。
【請求項3】
外部より入力される信号光を内部へ出射する光学部材と、
前記光学部材より出射する出射光を収束光に変換して出射するレンズと、
前記収束光の光軸に対して法線方向が斜交して配置される反射面を有するとともに、前記収束光を受光して電気信号に変換する受光素子と、
を備える受光モジュールであって、
前記収束光の光軸と前記反射面との交点に対する前記反射面の反射率の異方性分布の2次元フーリエ変換によって算出される、前記収束光が前記反射面で反射してなる反射光の開口数は、前記反射光の光軸と垂直に交わる反射光垂直面において、前記反射光の光軸に対して異方性分布を有し、
前記収束光及び前記反射光側へ前記反射面から延びる法線の向きが前記反射光垂直面に正射影される向きである第1の向きの開口数より、大きい開口数となる第2の向きが、前記反射光垂直面に第1の向きと異なる向きに存在する、
ことを特徴とする、受光モジュール。
【請求項4】
前記反射光垂直面において、前記反射光の開口数の前記異方性分布は、前記第1の向きで極小値となっている、
ことを特徴とする、請求項1乃至請求項3に記載の受光モジュール。
【請求項5】
前記受光素子は、表面入射型受光素子であり、
前記反射面とは、前記受光素子の受光面である、
ことを特徴とする、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の受光モジュール。
【請求項6】
前記受光素子は、裏面入射型受光素子であり、
前記反射面とは、前記裏面入射型受光素子の表面に配置される反射面である、
ことを特徴とする、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の受光モジュール。
【請求項7】
前記受光素子は、端面入射型受光素子であり、
前記反射面とは、前記端面入射型受光素子の受光面である、
ことを特徴とする、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の受光モジュール。
【請求項1】
外部より入力される信号光を内部へ出射する光学部材と、
前記光学部材より出射する出射光を収束光に変換して出射するレンズと、
前記収束光の光軸に対して法線方向が斜交して配置される反射面を有するとともに、前記収束光を受光して電気信号に変換する受光素子と、
を備える受光モジュールであって、
前記収束光が前記反射面で反射してなる反射光の開口数は、前記反射光の光軸と垂直に交わる反射光垂直面において、前記反射光の光軸に対して異方性分布を有し、
前記収束光及び前記反射光側へ前記反射面から延びる法線の向きが前記反射光垂直面に正射影される向きである第1の向きの前記反射光の開口数より、大きい開口数となる第2の向きが、前記反射光垂直面に第1の向きと異なる向きに存在する、
ことを特徴とする、受光モジュール。
【請求項2】
外部より入力される信号光を内部へ出射する光学部材と、
前記光学部材より出射する出射光を収束光に変換して出射するレンズと、
前記収束光の光軸に対して法線方向が斜交して配置される反射面を有するとともに、前記収束光を受光して電気信号に変換する受光素子と、
を備える受光モジュールであって、
前記収束光の光軸と前記反射面との交点に対する前記反射面の反射率の異方性分布と、前記収束光の前記反射面上での強度及び波面と、の関係から算出される、前記収束光が前記反射面で反射してなる反射光の開口数は、前記反射光の光軸と垂直に交わる反射光垂直面において、前記反射光の光軸に対して異方性分布を有し、
前記収束光及び前記反射光側へ前記反射面から延びる法線の向きが前記反射光垂直面に正射影される向きである第1の向きの前記反射光の開口数より、大きい開口数となる第2の向きが、前記反射光垂直面に第1の向きと異なる向きに存在する、
ことを特徴とする、受光モジュール。
【請求項3】
外部より入力される信号光を内部へ出射する光学部材と、
前記光学部材より出射する出射光を収束光に変換して出射するレンズと、
前記収束光の光軸に対して法線方向が斜交して配置される反射面を有するとともに、前記収束光を受光して電気信号に変換する受光素子と、
を備える受光モジュールであって、
前記収束光の光軸と前記反射面との交点に対する前記反射面の反射率の異方性分布の2次元フーリエ変換によって算出される、前記収束光が前記反射面で反射してなる反射光の開口数は、前記反射光の光軸と垂直に交わる反射光垂直面において、前記反射光の光軸に対して異方性分布を有し、
前記収束光及び前記反射光側へ前記反射面から延びる法線の向きが前記反射光垂直面に正射影される向きである第1の向きの開口数より、大きい開口数となる第2の向きが、前記反射光垂直面に第1の向きと異なる向きに存在する、
ことを特徴とする、受光モジュール。
【請求項4】
前記反射光垂直面において、前記反射光の開口数の前記異方性分布は、前記第1の向きで極小値となっている、
ことを特徴とする、請求項1乃至請求項3に記載の受光モジュール。
【請求項5】
前記受光素子は、表面入射型受光素子であり、
前記反射面とは、前記受光素子の受光面である、
ことを特徴とする、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の受光モジュール。
【請求項6】
前記受光素子は、裏面入射型受光素子であり、
前記反射面とは、前記裏面入射型受光素子の表面に配置される反射面である、
ことを特徴とする、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の受光モジュール。
【請求項7】
前記受光素子は、端面入射型受光素子であり、
前記反射面とは、前記端面入射型受光素子の受光面である、
ことを特徴とする、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の受光モジュール。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【公開番号】特開2012−84714(P2012−84714A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−230274(P2010−230274)
【出願日】平成22年10月13日(2010.10.13)
【出願人】(301005371)日本オプネクスト株式会社 (311)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月13日(2010.10.13)
【出願人】(301005371)日本オプネクスト株式会社 (311)
【Fターム(参考)】
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