受熱体の受熱量演算方法と受熱体の受熱量演算装置、および室内の日射分配率変化演算システム
【課題】受熱体の受熱量演算と、日射分配率変化の演算を簡便に行う構成とした、受熱体の受熱量演算方法と受熱体の受熱量演算装置、および室内の日射分配率変化演算システム。
【解決手段】次の手順でプリ処理における室内の日射分配率変化の演算を行う。
S1:処理プログラムの開始
Sx:プリ処理中の演算プロセス
S2:平面図及び断面図の読み込み、S3:窓両端の指定、S4:受熱体数の設定、S5:受熱体中心の指定、S6:受熱体輻射幅の指定、S7:受熱体と熱回路網モデルの節点との対応付け、S8:日射分配率表の作成、
Sy:Δt毎の時間ループ計算
Sz:シミュレーション中の演算プロセス
S9:時々刻々の日射分配率の算出
S10:日射受熱量の算出
【解決手段】次の手順でプリ処理における室内の日射分配率変化の演算を行う。
S1:処理プログラムの開始
Sx:プリ処理中の演算プロセス
S2:平面図及び断面図の読み込み、S3:窓両端の指定、S4:受熱体数の設定、S5:受熱体中心の指定、S6:受熱体輻射幅の指定、S7:受熱体と熱回路網モデルの節点との対応付け、S8:日射分配率表の作成、
Sy:Δt毎の時間ループ計算
Sz:シミュレーション中の演算プロセス
S9:時々刻々の日射分配率の算出
S10:日射受熱量の算出
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内に配置された複数の受熱体に対する受熱量演算と、日射分配率変化の演算を簡便に行う、受熱体の受熱量演算法と受熱体の受熱量演算装置、および室内の日射分配率変化演算システムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両の室内や居住室内において、室内に複数配置された座席、ドアなどの各受熱体に対する、窓から入射する太陽光の入射熱量に対する受熱割合(日射分配率)は相違している。車両や居住室内に、窓から入ってきた直達日射は,座席,計器板やドア等の室内に配置された受熱体表面の受熱面に照射されるが、太陽位置によって各受熱体の受熱割合は変化する。このような、室内に配置された備品や設備などの各受熱体に対して、どのような受熱割合となっているか、また、各受熱体の受熱量はどの程度かの判断が車両や居住室内の環境の改善を図る観点から必要になる場合がある。
【0003】
特許文献1には、室内の日射解析方法の発明が記載されている。この発明は、予め建物外周の日射解析を行い、その結果を窓位置の日射エネルギーとして保存し、この日射エネルギーから室内の条件(壁面や床面の物性値)に基ずいて発熱量を演算するものである。前記発熱量は、床面などの単位面積当たりの日射量に各部材の吸収率を乗算して求めている。なお、図4に関連して、日射解析によりある時刻では領域A(室内の床面)にあるエネルギーの日射があり、別の時刻では、領域B(室内の壁面)にあるエネルギーの日射があることが判ると記載されている。
【0004】
特許文献2には、ナビゲーション装置を備え、道路情報を用いて車両に侵入する日射量を演算する発明が記載されている。日射量は車両独自の情報を用いて修正しており、車両独自の情報の例として、車両の座席位置、窓ガラスの位置などが記載されている。また、車内の複数の領域毎に乗員および車両が受熱する受熱量を演算するために、予め補正係数を記憶しておくことが記載されている。
【0005】
【特許文献1】特開2001−075946号公報
【特許文献2】特開2002−362129号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載され発明においては、予め建物外周の日射解析を行う必要があり、建物の立地条件(周辺建物の大きさ、地面の放射率など)毎に個別のデータが必要になり、汎用性がないという問題があった。また、受熱面毎の物性値(吸収率)に基ずく演算が必要となり、演算が煩雑になるという問題があった。さらに、図4に示されているように、領域A(室内の床面)または領域B(室内の壁面)にある量の日射エネルギー量があることが解析されるにとどまり、室内に複数の受熱体が配置された場合に、個別の各受熱体についての受熱割合は不明であるという問題があった。
【0007】
特許文献2に記載され発明においては、時々刻々と変化する各受熱体の受熱量を算出するために、大量の補正係数を記憶しておく必要があるので日射量演算の際に前段の処理が必要となり、メモリ資源(記憶手段の容量)も増大するという問題があった。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するものであって、室内に複数の受熱体が配置された場合に、個別の各受熱体に対する受熱体の受熱量演算の演算を簡便に行う構成とした、受熱体の受熱量演算方法と受熱体の受熱量演算装置、および太陽光の入射熱量に対する日射分配率変化の演算を簡便に行う構成とした、室内の日射分配率変化演算システムの提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような目的を達成するために、本発明の受熱体の受熱量演算方法は、
複数の受熱体を有する室内に窓から太陽光が入射したときの前記各受熱体の受熱割合に基づいて各受熱体の受熱量を算出する受熱体の受熱量演算方法であって、
前記室内に対する太陽の位置に基づく太陽光の入射角に関するパラメータで、太陽光の室内への入射角を検出し、
前記入射角に基づいて、前記複数の受熱体のうち、一方の受熱体が最大受熱状況になるときの太陽光の入射熱量に対する受熱割合と、その時の他方の受熱体の太陽光の入射熱量に対する受熱割合とを受熱割合ベクトルとして定義した日射分配率ベクトルで、前記各受熱体の最大受熱状況になるときの日射分配率ベクトルを求め、
前記各受熱体の日射分配率ベクトル間を補間演算にて演算することで、前記各受熱体の受熱量を求めることを特徴とする。
【0010】
本発明の受熱体の受熱量演算装置は、
複数の受熱体を有する室内に窓から太陽光が入射したときの前記各受熱体の受熱割合に基づいて各受熱体の受熱量を算出する受熱体の受熱量演算装置であって、
前記室内に対する太陽の位置に基づく太陽光の入射角に関するパラメータを検出する入射角検出手段と、
前記入射角検出手段によって検出された入射角に基づいて、前記複数の受熱体のうち、一方の受熱体が最大受熱状況になるときの太陽光の入射熱量に対する受熱割合と、その時の他方の受熱体の太陽光の入射熱量に対する受熱割合とを受熱割合ベクトルとして定義した日射分配率ベクトル演算手段と、
前記複数の受熱体の各日射分配率ベクトル間を補間演算にて演算する補間演算手段とを有することを特徴とする。
【0011】
また、本発明の室内の日射分配変化演算システムは、窓を透過して室内に入射する太陽光の方位と高度の変化により、室内に配置された複数の受熱体に対する日射分配率の変化を演算する際に、準備段階のプリ処理演算プロセスとシミュレーション演算プロセスを含み、前記プリ処理演算プロセスの実行で得られた処理結果を用いたシミュレーション演算プロセスを実行する室内の日射分配率変化演算システムであって、
入力部と記憶部と演算処理部とを備え、
前記プリ処理演算プロセスにおいて、
前記入力部から前記演算処理部に、前記太陽光の窓透過後の前記各受熱体に対する受熱状況を出力し、
前記演算処理部は、前記記憶部から前記各受熱体における最大受熱角度に依存する日射分配率を有するベクトルのマトリックスを読み出して、前記入力部から入力された前記受熱状況と、前記記憶部から読み出したベクトルのマトリックスに基づいて、最大受熱角度における各受熱体の受熱比率を演算し、
前記シミュレーション演算プロセスにおいて、
前記入力部から前記演算処理部に、前記窓を透過する太陽の太陽方位角度と見かけの太陽高度角度を出力し、
前記演算処理部は、前記記憶部から前記ベクトルのマトリックスを読み出して、前記入力部から入力された見かけの前記太陽方位角度と見かけの太陽高度角度から、各受熱体に
対して時々刻々変化する日射分配率を演算することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、受熱体の受熱量演算に際して、(1)受熱形状の計算ではなく日射分配率なる比率の計算に単純化している。(2)日射受熱の射影面積計算を矩形近似計算にしている。(3)実際の太陽位置と窓の向きにおける日射分配率ベクトルは,室内の異なる2断面に基づいて補間演算されるものとしている。このため、汎用伝熱計算プログラムの中に組み込まれる日射分配率の変化を計算するルーチンの簡素化、および計算時間の節約を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図により本発明の実施形態について説明する。図17〜図21は、本発明にかかる前提技術の説明図である。図17は、太陽11の位置と、対象とする車両室内や居住室内の受熱面12との位置関係を定義する説明図である。図17において、受熱面12の中心位置Cからみた東西南北の方位と、鉛直線を設定する。このときの受熱面12の中心位置Cにおいて、太陽11の位置に対する方位角度aと高度角度hが定められる。この方位角度aと高度角度hは、受熱対象位置の経度、緯度と、受熱体に対する受熱量を演算する際の日時により定まるので、データとして予め記憶手段などに保持しておくことができる。ここで、方位角度aと高度角度hは、太陽光の入射角として表すことができる。また、受熱対象位置の経度、緯度と、受熱体に対する受熱量を演算する際の日時は、当該入射角のパラメータとしてとらえることができる。したがって、このようなデータを読み出して方位角度aと高度角度hを求めることは、太陽光の入射角に関するパラメータを検出する入射角検出手段を設けることに相当する。
【0014】
室内に配置された受熱体の受熱面に、窓を通して太陽光を受熱する際に、図19に示すように、窓14が傾斜角Wtを有して設置される場合がある。この場合には、図17で示された受熱面の方位角度と高度角度の関係は、図18の説明図に示されるように修正される。図18において、受熱面13の方位角度は、Wa、高度角度は、(π/2)−Wt、となる。
【0015】
図18の例では、見かけの太陽方位角度φaは、(1)式で定義される。
【0016】
【数1】
【0017】
この時に、見かけの太陽高度角度(profile angle)φhは(2)式で計算される。
【0018】
【数2】
【0019】
次に、光線追跡について説明する。図20は、太陽光が窓面を透過して室内に配置された複数の受熱体に照射される例を模式化して示す説明図である。図20においては、X、Y、Z軸の直交座標系に矩形状の受熱体15を配置している。図20に示すような、単純
な直方体の室空間の場合には、窓の受熱面以外に、(a)から(e)までの5つの受熱面が存在している。
【0020】
ある角度で日射が室内に入射して各受熱面に当たった状況を、実際の3次元的な図では表現することが難かしいので、直方体の室内を2次元的に平たく延ばして表現するものとする。図21は、図20の直方体の室空間を平面図で模式化して示した説明図である。このようにして模式化された図21の状況では、受熱体(b)が最大の受熱をするものとしている。そして、受熱体(b)が最大の受熱をする状況で、同時に日射を一部受熱する受熱体(a)と(c)も含めた、(a)、(b)、(c)のそれぞれの太陽光の入射熱量に対する受熱割合(日射分配率)ra、rb、rc・・・が射影幅から求められる。なお、本発明においては、特許請求の範囲、明細書の説明の欄、図面において、受熱体の受熱割合を、日射分配率、受熱比率と表記することがある。これらの用語はいずれも同義語として用いている。
【0021】
図21の例では、各受熱体に対する受熱割合は、ra=0.3、rb=0.5、rc=0.2、rd=re=0、としている。この場合には、ra+rb+rc=1、となる。すなわち、本発明においては、各受熱体に対する日射分配率の総和は「1」になるように設定する。このように、特定の受熱体の最大受熱状況とは、室内に配置されたすべての受熱体の受熱量を「1」としたときに、当該受熱体が最も多くの受熱割合となる状況をいうものとする。射影幅と受熱割合(日射分配率)の詳細については後述する。
【0022】
同様にして、他の受熱体(a)、(c)、(d)、(e)のそれぞれが、室内のある面、例えば平面図における最大の日射分配率となる角度(各受熱体の最大受熱角度と呼ぶ)と、その時の他の面、例えば断面図の日射分配率が図面上で定められる。ここで、実際の最大受熱角度には、見かけの太陽方位角度と、見かけの太陽高度角度の2種類を考える。
【0023】
一般に発生する見かけの太陽位置の角度は、室内に離散的に配置されている各受熱体の最大受熱角度の間に多数発生するが、太陽位置の角度の線形補間の比率で日射分配率も線形補間で近似できる。説明のために、図21では図20で示した受熱する直方体の空間を平たく延ばした平面図で示している。しかしながら、実際の比較的に複雑な形状となっている室内状況を、図21に示すようなひとつの単純化された図で表すことは困難である。また、実際の最大受熱角は、見かけの太陽方位角度と、見かけの太陽高度角度の2つあるから、これらの最大受熱角度を表現するためには2つの図が最低限は必要である。
【0024】
このために、本発明の実施形態においては、受熱面を示す図として、室内の法線ベクトルが線形独立な3断面のいずれか2面の図面、を用いる。ここで、「法線ベクトルが線形独立な3断面」は、3次元空間で互いに交差する3断面を意味しており、3断面すべての図面を用いるのではなく、その中で任意の2面の図面を用いることとしている。例えば、図2に示すような平面図と、図3に示すような断面図の2つの図面を用いる。
【0025】
ここで、本発明における断面図について説明する。図24は、車両7の室内に座席などの複数の受熱体が配置されている例を示しており、後述する図16の車両の図でルーフを取り外して内部の受熱体の配置がわかるように表示している。受熱体として、例えばフロント左シート坐面Ta、フロント左シート背面Th、フロント右シート坐面Tb、フロント右シート背面Tf、リアシート坐面Te、リアシート背面Tcが示されている。ここで、本発明で用いている断面図の意義は、個別の受熱体、例えば、フロント左シート坐面Taについての縦方向断面を表すものではない。
【0026】
図24に示すように車両室内に配置された複数の受熱体が表示できるように、側面の窓の外部空間をXa―Xb線で切断し、車両の側面から(矢視Yb)あたかも室内を透視す
るようにみた図を示すものとする。すなわち、室内に複数の受熱体が配置されている場合に、各受熱体が表示できるような側面視の図面を、本発明においては便宜上断面図として説明する。
【0027】
また、実際に受熱する面積は、各受熱体の平面図での射影幅と、断面図の射影幅の積で、近似できる。ここで、(3)式の日射分配率rを有するベクトルvを定義する。(3)式の日射分配率rの添字(a〜10)は受熱体番号を表す。
【0028】
【数3】
【0029】
次に、図22、図23の説明図により本発明における各受熱体の射影幅の設定について説明する。最初に受熱体の射影受熱面積を定義する。射影受熱面積は、日射の平行光線に直交する平面を,受熱体の輪郭に沿った日射が区切ることで生じる面積とする。ある受熱体が最大に受熱する時の射影受熱面積をSとして、この時の平面図での射影幅をWh、断面図での射影幅をWvと定義するときに、射影受熱面積を、S=Wh・Wv、の演算により算出する。このようなWhとWvを、受熱体に最大受熱を与える射影幅と定めるものとする。正確な射影受熱面積Sの決定は、各受熱体に対するCG(コンピュータグラフィック)処理か、写真撮影が必要になる。
【0030】
図22は平面図であり、座席の座面17を受熱体とする場合の受熱体の受熱面積を算出する例を示している。窓14の面積重心Cxと、受熱体の面積重心17xを結んだ日射の向き(中心線Lx)がその受熱体17に最大受熱を与える。次に、窓の面積重心Cxと受熱体17の面積重心17xを結ぶ中心線を描画する。この場合の平面図における太陽光の射影幅Whbは、2本の直線Ls、Lt間の長さで示される。2本の直線Ls、Ltは、受熱体17における外表面位置情報とみることができる。したがって、受熱体17の太陽光の射影幅Whbは、図22の平面図における窓14の投影幅と、受熱体17の外表面位置情報に基づいて求められる。
【0031】
断面図での太陽光の射影幅Wv(図示を省略する)は、座面17の図視前側の辺(図23の辺l−r)と後ろ側の辺(図23の辺p−u)の方向が断面図に垂直に見なせることから、概略辺r−uの長さとして算出することができる。なお、窓14の面積重心Cxと、受熱体17の面積重心17xの位置は、窓の画像データ、および受熱体17の画像データを、例えばX−Y座標に展開し、X軸方向およびY軸方向の面積中心を演算することにより、容易に特定することができる。窓の画像データ、および受熱体17の画像データは、例えばCCDカメラなどで取得することができる。
【0032】
このようにして、平面図における射影幅Whbと断面図における射影幅Wvを設定することにより、前記射影受熱面積Sを算出する。しかしながら、図22の平面図での射影幅を射影受熱面積Sに一致するようにするためには,微妙な調整が必要になる。すなわち、中心線Lxに平行で受熱体17の端部付近を通る2本の線Lu、Lvの長さの射影幅Whaを設定すると、実際の射影受熱面積Sよりも大きな面積が算出されてしまうことになる。
【0033】
すなわち、図23において、前記2本の線Lu、Lvで設定される座席17の射影受熱面積Sxは、概略平行四辺形lwvuの面積に等しくなり、明らかに実際の射影受熱面積Sよりも大きな面積となる。そこで、中心線Lxに平行な2本の線Ls、Ltを描画する
。2本の線Ls、Lt間の長さは、受熱体17の辺l−rの長さとほぼ等しくする。この場合に、斜線で示した三角形mlkと、三角形mpnはほぼ相似形であり、三角形srqと、三角形sutはほぼ相似形である。このため、平行四辺形knqtの面積は、ほぼ射影受熱面積Sと等しくなる。
【0034】
このように、平面図の射影幅として、座席17の座面の横幅(概略l−rの長さ)程度の長さを射影幅にとれば、l−rの長さは2本の平行線Ls、Lt間の長さに概略等しいので、実際の射影受熱面積Sに近似できるが、これでも座面の四隅の曲線部による面積欠損は考慮されないことになる。受熱体の真の射影受熱面積を求めるためには、日射の平行光線の視点による窓透過室内CG画像が描ける程度の精密な計算が必要となるが、コンピュータ処理により必要な計算を短時間で実行することができる。また、平行光線と近似できる程度に遠方からの窓透過室内状況の写真撮影により平面図の受熱体を表示できるので、上記の手法で的確な射影幅を設定することができる。
【0035】
図22、図23では、受熱体が平面図ではほぼ矩形状に表示される例について、射影幅と射影受熱面積について説明した。本発明においては、受熱体の平面図の形状は、矩形状には限定されない。円形、楕円形、台形などの定形的な形状は勿論のこと、これらの定形的な形状以外の形状であっても、前記のように受熱体の形状をX−Y座標に展開することにより、面積重心位置の算出が可能である。このため、前記した中心線の描画と、平面図および断面図における射影幅が設定できるので、射影受熱面積を算出することができる。
【0036】
本発明においては、太陽位置の角度の線形補間の比率で各受熱体の日射分配率も線形補間近似できること、および実際に受熱する面積は、平面図での射影幅と、断面図の射影幅の積、すなわち異なる2つの断面に表示された射影幅の積で近似できるとすることを特徴としている。次に、このような本発明の特徴について説明する。本発明において、2つの図面は平面図と断面図には限定されず、後述するように、法線ベクトルが線形独立な3断面のいずれか2断面の図面で射影幅が表示されれば良い。
【0037】
(表1)は、「各最大受熱角度」依存の日射分配率rを要素に有するベクトルvのマトリックス、すなわち、複数の受熱体における最大受熱状況の日射分配率ベクトルをマトリックスで示している。このマトリックスは、太陽高度角度と太陽方位角度をパラメータとしている。
【0038】
【表1】
【0039】
ある日時の太陽位置と、受熱体演算位置に設定される窓の向きにおいて、見かけの太陽方位角度がφaで高度角度がφhとする。(表1)の日射分配率ベクトルのマトリックスでは、このときの状況が隣り合うj列とn列のφajとφanの間にあり、かつ隣り合うi行とm行のφhiとφhmの間にあるとする。この状態での日射分配率ベクトルは、(表1)では4点の各最大受熱角度での(vi,j),(vi,n),(vm,j),(vm,n)の線形補間で近似的に計算できると考える。すなわち、(表1)では、網掛けの4つのベクトル部分で線形補間を行う。
【0040】
(表1)のi行とm行各々において、φajとφanおよびφaによる線形補間は、次
の(4)式と(5)式で示される。ベクトルvの添え字の意味は、(表1)において、i行の高度角度、j列の方位角度の各最大受熱角度でのベクトルvをvi,jとして表すものである。なお(表1)で表すマトリックスの左右と上下の並び方は、各最大受熱角度について、左上隅から小さい順に並べた変えたものである.このようにして、例えば図20の受熱体記号a,b,c,・・・から、番号1,2,3・・・に変換する。
【0041】
【数4】
【0042】
【数5】
【0043】
次にφhiとφhmおよびφhにより、最終的な補間値Vは(6)式で計算される。
【0044】
【数6】
【0045】
次に、室内における各最大受熱角度による分配率の(表1)を作成するための、入力ユ
ーザーインターフェイスの例について説明する。室内への入射光による影の計算などは、本来は複雑な処理になるところを、本発明の実施形態においては極力簡単な処理プログラムになるように工夫している。また、室内の幾何的状況を描く機能を付加すると複雑になるので、一般的なbmpファイルの下絵として入力処理プログラムを受け取るようにする。図2、図3に示す室内の平面図と断面図は、bmpファイルとして既に作られたものを利用する。
【0046】
下絵には、図2の平面図と図3の断面図において、最大10個の受熱体を描くことができるが、この例では7個の各受熱体に面積重心(a)〜(g)を描いておく。また窓面の面積重心も描いておき、平面図と断面図での各面積重心の対応情報を処理プログラムに認識させる。断面図では、面積重心(b、c)のように図面奥行き方向に、複数の受熱体の面積重心が重なっている場合もある。
【0047】
図2の平面図において、窓の面積重心Cxと受熱体の面積重心(b)を直線で結び中心線Lxとする。図2の例では、室内の窓16に向かって右側の座席R−seatに前記面積重心(b)を設定し、窓の面積重心Cxと受熱体の面積重心(b)を結ぶ中心線Lxを引く。この時に、受熱体の面積重心(a)〜(g)のどれについての定義であるか、処理プログラムに認識させる。図2の例では、受熱体の面積重心(b)についての定義となる。
【0048】
この中心線Lxと平行な直線として、当該受熱体が受ける受熱量を考慮して適切な幅を表す2本の直線La、Lbを描く。2本の直線La、Lb間の長さは、受熱体の射影幅Wh(b)を示している。このとき処理プログラムは、この射影幅wh(b)を読み取ることができ、また窓を透過する窓射影幅(投影幅)Wh(0)も読み取ることができる。窓射影幅Wh(0)は、2本の直線Lc、Ld間の幅となる。窓の面積重心Cxを通らない他の受熱体についても、ユーザーは受熱体射影幅Whを定義するものとし、処理プログラムはこれらの射影幅も読み取る。
【0049】
窓の面積重心Cxと受熱体の面積重心(a)〜(g)を結ぶ中心線を引き、この中心線の両側に引かれる2本の線間の長さで射影幅を設定する。処理プログラムに射影幅を認識させる操作と処理は、全受熱体の中心点(a)〜(g)について行われるものとする。同様な射影幅を認識させる操作と処理は、図3の断面図においても行う。図3の例では、窓の面積重心Cxと受熱体の面積重心(b)、(c)を結ぶ中心線Lyを引く。また、中心線Lyの両側に2本の直線Le、Lfを引き、受熱体射影幅Wv(b,c)を描く。さらに、窓射影幅Wv(0)を、2本の直線Lg、Lhの幅で設定する。
【0050】
図2、図3の処理を行うことにより、(表2)で表す様な日射分配率rが計算される。(表2)では、受熱体の平面図射影幅Wh(a)〜Wh(g)、受熱体の断面図射影幅Wv(a)〜Wv(g)、前記Wh(a)〜Wh(g)とWv(a)〜Wv(g)との積f(a)〜f(g)、日射分配率が示されている。ここで、各受熱体の日射分配率は、f(a)〜f(g)の総和Σfを分母に、各受熱体f(a)〜f(g)を分子として、演算で求められる
。一般的には、各受熱体の平面図射影幅と断面図射影幅の積(fi)をそれぞれ演算し、前記(fi)を、各受熱体の数nだけ加算したΣ(fn)で個別の(fi)を除算した(fi)/Σ(fn)、により各受熱体の日射分配率(受熱割合)が算出される。
【0051】
【表2】
【0052】
これらの各受熱体の日射分配率rを要素に持つベクトルvi,j=(ra,rb,・・・・・.r10)は、この例では平面図と断面図でそれぞれ(a)から最大10個の受熱体について作成できるから、合計で最大10×10のベクトルvが作成されることになる。各受熱体の面積重心(a)〜(g)のそれぞれについて、上記操作と処理が行われれば、それぞれで各最大受熱角度が決定される。受熱体の面積重心(a)から面積重心(g)まで順番に上記操作と処理を行えば、これらの各最大受熱角度は必ずしも大小順番には並ばない。従って日射分配率表を作成する際には、日射分配率表の左から右へ、また日射分配率表の上から下への順番で、比較的に小さい各最大受熱角度から大きな各最大受熱角度に
なるように並べ替える。こうして前述の各最大受熱角度による日射分配率表の(表2)が作成できる。
【0053】
一方、拡散日射分配率に対しては一定的なモデルとして算出できる。すなわち、ある窓を透過した直達日射が各受熱体に分配される割合を、日の出から日没まで平均した値を拡散日射分配率とする。これは、太陽光の直達に関して日射分配率が大きければ、拡散日射分配率に関しても大きいであろうと推察できることによる。
【0054】
表1、表2に関連して説明したように、本発明は、複数の受熱体を有する室内に窓から太陽光が入射したときの前記各受熱体の受熱割合に基づいて各受熱体の受熱量を算出する受熱体の受熱量演算を、以下のように実行している。
(1)前記室内に対する太陽の位置に基づく太陽光の入射角に関するパラメータで、太陽光の室内への入射角を検出する。
(2)前記入射角に基づいて、前記複数の受熱体のうち、一方の受熱体が最大受熱状況になるときの太陽光の入射熱量に対する受熱割合と、その時の他方の受熱体の太陽光の入射熱量に対する受熱割合とを受熱割合ベクトルとして定義した日射分配率ベクトルで、前記各受熱体の最大受熱状況になるときの日射分配率ベクトルを求める。
(3)前記各受熱体の日射分配率ベクトル間を補間演算にて演算することで、前記各受熱体の受熱量を求める。
【0055】
図4は、本発明の制御部の全体構成を示すブロック図である。図4において、パーソナルコンピュータなどで構成される制御部1は、マウスやキーボードなどの入力部2、CPUからなる演算処理部3、ROMやRAMなどの記憶部4、モニターやプリンタなどの出力部5を有している。入力部2の処理の例は、図5、図8に、記憶部4に記憶されているデータの例は図6、図9に、演算処理部3の処理例は、図7、図10に、出力部5の処理例は、図11にそれぞれ記載されている。
【0056】
本発明においては、(1)準備段階のプリ処理(初期設定を行う)演算を行う段階と、(2)対象とする室内の日射分配率についてシミュレーションを演算する段階、が含まれる。図5〜図7は、前記(1)プリ処理中の演算プロセスを示す説明図であり、図8〜図11は、(2)シミュレーション中の演算プロセスを示す説明図である。
【0057】
図5〜図7により、プリ処理中の演算プロセスについて説明する。図5において、入力部2から対象とする室内の窓透過後の日射受熱状況を入力する。この処理は、前記した図2の平面図における日射受熱状況と、図3の断面図における日射受熱状況の入力に相当する。図6では、記憶部4から前記(表1)で説明した「各最大受熱角度の日射分配率rを要素に持つベクトルvの表(マトリックス)」を読み出す。図7において、演算処理部3は、入力部5で入力された窓透過後の日射受熱状況と、記憶部4から読み出された「各最大受熱角度の日射分配率rを要素に持つベクトルvの表」から、(表2)の最大受熱角度における受熱比率(日射分配率)を算出する。
【0058】
次に、図8〜図11によりシミュレーション中の演算プロセスについて説明する。図8において、入力部2から、太陽の緯度、経度、受熱量演算の時刻により、太陽位置a(方位角度)とh(高度角度)を設定する。太陽位置aより前記(1)式の見かけの太陽方位角度φaを入力する。また、窓の方位、傾きから(2)式の見かけの太陽高度角度φhを入力する。
【0059】
図9の記憶部4から読みだされるデータは、図6のプリ処理中の演算プロセスと同様に(表1)の「各最大受熱角度の分配率rを要素に持つベクトルvの表」である。図10の演算処理部3は、入力部2から入力された(1)式と(2)式、および記憶部4から読み
だされた(表1)のデータに基づいて、(4)式〜(6)式を演算する。図11の出力部5は、演算処理部3の演算結果から(3)式を出力する。
【0060】
図12、図13は、出力部5のモニター6に表示される画像の例を示す説明図であり、ユーザーインターフェイスの例が示されている。図12(a)は、受熱体としての車両の平面図を表示し、図12(b)は、車両の室内に設置された各受熱体の見かけの方位角度、射影幅を表で表示している。ここで、車両の室内に設置された各受熱体は、例えば「右シート(b)」、「左ドア(g)」などであり、各受熱体の位置は、図12(a)に黒丸で表示している。この黒丸は、図12(b)では「熱回路網節点」として各受熱体に対応させている。図12(a)には、図2で説明したような、窓の面積重心と受熱体の面積重心を結ぶ中心線と、この中心線と平行な2本の線が表示されている。
【0061】
図13(a)は、受熱体としての車両の断面図を表示し、図13(b)は、車両の室内に設置された各受熱体の見かけの高度角度、射影幅を表で表示している。図13(b)においても、図12(b)と同様に、車両の室内に設置された各受熱体の位置を黒丸の「熱回路網節点」として表示している。図12、図13において、最初にbmp形式の車両の下絵(平面図と断面図の2つの図面)を読み込ませる。下絵には予め各受熱体の面積重心を印しておく。窓の両端を指定し窓の向きと幅を定め、各受熱体について受熱体の面積重心と窓の面積重心を中心線として結び、各受熱体の最大受熱角度を定める。そしてこの時の各受熱体の射影幅も定める。最後に各受熱体と熱回路網の節点との対応付けを行う。なお、図12(a)の平面図、および図13(a)の断面図においては、車両の長さや幅などの寸法の情報がモニタに表示させることができる。
【0062】
図14〜図16は、(表3)〜(表8)に示されている車両室内の日射分配率を得るための説明図である。(表3)〜(表8)では、室内日射分配率時間変化モデル(NETSのモデル)による日射分配率と、コンピュータグラフィックス(CG)により求められた各受熱体の日射分配率を、同一測定日の12時、15時、17時の3時点の太陽位置で比較している。NETS(Network Model Simulation Program)は、熱負荷計算プログラムとして知られており、建築物などの熱・換気回路網モデルの予測計算に用いられる。NETSのモデルについては、後述する。
【0063】
(表3)〜(表5)は、フロントガラスから太陽光が入射する例であり、(表6)〜(表8)は、右サイドガラスから太陽光が入射する例である。(表3)〜(表8)の各表において、車内受熱体の総和が全投影面積として表示されている。また、横軸には、12時、15時、17時の各時刻におけるCGのピクセル数、面積比(1)、面積比(2)、NETSの日射分配率(1)、日射分配率(2)が設定されている。
【0064】
【表3】
【0065】
【表4】
【0066】
【表5】
【0067】
【表6】
【0068】
【表7】
【0069】
【表8】
【0070】
図14は、ある測定位置における車両7の12時の太陽位置からみた画像を示している。また、図15は、前記車両7の12時におけるフロントガラスX、右サイドガラスYの射影面積算出のためのCGを示している。さらに、図16は、12時における右サイドガラスYから入射する日射で各受熱体射影面積算出のためのCGを示している。図16において、各受熱体は、(表3)〜(表8)に示されているように、インパネTx、フロント右シート座面Tb、フロント左シート座面Ta、フロント右シート背面Tf、フロント左シート背面、リアシート座面Te、リアシート背面Tc、右ドアTd、左ドア、左サイドガラス、フロア、フロント左ピラー、が設定されている。
【0071】
図14〜図16では、12時におけるCG画像の例を示しているが、(表3)〜(表8)に示されているように、CG画像は、15時,17時の受熱体についても作成される。これらのCG画像により、窓の射影面積および車内の受熱体の射影面積を、それぞれピクセル数のカウント値として代表させ、日射分配率は窓の射影ピクセル数に対する各受熱体射影ピクセル数の比率で算出する。
【0072】
一方、NETSではシミュレーション結果の中に日射分配率は含まれない。しかしながら、日射を受ける節点の発熱量は出力される。そこで車両伝熱モデルの傍らに同一面積で同一向きの窓をモデル化し、この窓を透過する日射を受熱する節点を設けた。また、この
発熱量を分母として、車内の各受熱体の発熱量を分子とし、日射分配率を算出した。この場合に使用した日射量は理想化し、太陽光の直達分のエネルギー換算で1kwだけで拡散日射と地表面反射日射は0とした。
【0073】
こうして日射分配率のCGの結果とNETSの結果を比較したのが(表3)〜(表8)である。各時点での窓日射射影面積に対する日射分配率(1)だけを見ると大きく異なる所もある。しかし結局は熱量的な影響の比較が重要であるので、12時のフロントガラス射影面積を分母にした日射分配率(2)も算出して比較した。
【0074】
このように、(表3)〜(表8)に示されている射影面積比(1)と日射分配率(1)は、各時刻での窓ガラスの射影面積を分母にした比率であるのに対して、射影面積比(2)と日射分配率(2)は12時のフロントガラス日射射影面積を分母としたものである。これらにより、仮に射影面積比(1)と日射分配率(1)において大きな差異があっても、射影面積比(2)と日射分配率(2)の値が小さければ影響は少ない。(表3)を見ると射影面積比(1)と日射分配率(1)、射影面積比(2)と日射分配率(2)は概ね一致している。
【0075】
太陽高度が高い12時の場合は、前記射影面積比(1)と日射分配率(1)は、射影面積比(2)と日射分配率(2)によく一致しているが、15時から17時へと太陽位置が低くなってくると両者の違いが目立つようになる。比較的に大きく違うのは、17時のフロント窓から日射が入った場合の左ドアの日射分配率で、CGでは0%であるのに対してNETSでは44%である。しかしながら、これはNETSの日射分配率(2)で見ると7%と小さく、熱量的には影響が少ない。また窓を透過した日射は、車室内のどこかの受熱体に受熱する実現象であり受熱のモデルであるから、窓面積と太陽光透過の性能が正確であれば、大局的な室内表面での総受熱量は正確に算出される。
【0076】
NETSでは、窓ガラス透過後に室内で受熱する場所は、計算量の関係で最大10個所までとし、各受熱体の各々の日射分配率ra,rb,re−rjの総和は一定値「1」という制約がある。しかしながら、太陽位置等の移動に従って日射分配率も本来は変化するので、この変化を考慮できる様にする必要がある。日射分配率ra−rjを、見かけの太陽方位角度φaと見かけの太陽高度角度φhの余弦と正弦の3次幕級数の積から成る回帰式で表し、予め光線追跡プログラム等による計算結果により回帰することが考えられる。しかしながら、高次の幕級数とはいえ角度変化に関して滑らかな変化しか扱えないのに対し、実際は見かけの太陽方位角度と見かけの太陽高度角度によって日射受熱の有無の面が異なるので、全く別の回帰関数に変えなければならず、このような回帰式では対応できない。
【0077】
そこで、本発明においては煩雑な光線追跡プログラムを使用せず、紙上の簡単な図面作成で係数等を用意できるモデルにしている。これまで、窓からの日射室内分配率の変化を光線追跡計算法等で精密に追う方法はあったが、比較的長期間の熱負荷計算の中でも使える簡易法は不十分だった。本発明においては、前記した線形補間による近似等から実用的な工学モデルを提案している。
【0078】
図1は、本発明の実施形態を示すフローチャートである。図1においては、次のステップ(手順)で必要な処理を行う。
S1:処理プログラムの開始
Sx:プリ処理中の演算プロセス
S2:平面図及び断面図の読み込み(図2、図3)
S3:窓両端の指定
S4:受熱体数の設定
S5:受熱体面積重心(中心)の指定(図2、図3)
S6:受熱体射影幅の指定(図2、図3)
S7:受熱体と熱回路網モデルの節点との対応付け
S8:日射分配率表の作成(表1)
Sy:Δt毎の時間ループ計算
Sz:シミュレーション中の演算プロセス
S9:時々刻々の日射分配率の算出
S10:日射受熱量の算出
【0079】
ここで、前記S10:日射受熱量の算出について説明する。窓の法線面直達日射量と天空拡散日射量は、日射量センサにより別途得られているものとする。対象とする室内の緯度と経度、および計測時刻から、図17で説明したように太陽高度と方位は計算される。従って太陽位置のベクトルも定められる。−方、窓面の方位と傾きから、図19で説明したように窓面の法線ベクトルも定められる。従って、太陽位置のベクトルと窓面の法線ベクトルの両者のベクトルの内積から、入射角度余弦が計算される。予め、窓ガラスの日射に対する入射角依存の透過率と反射率は、入射角度余弦の5次幕級数の係数として最小二乗回帰されているものとする。これらの情報から、窓を透過する日射量が計算される。以上により、室内の各受熱体の受熱量は、S1〜S9の前プロセスから得られている日射分配率をその透過日射量に乗じることにより、算出される。
【0080】
前記した図20においては、X、Y、Z軸の直交座標系に矩形状の受熱体15を配置した例について説明している。本発明の実施形態においては、受熱体の配置を、X、Y、Z軸の直交座標系の二つの図面で表示することには限定されない。一般に、室内の法線ベクトルが線形独立な3断面のいずれか2断面の図面、換言すれば、3次元空間で互いに交差する3断面のいずれか2断面の図面を用いる際に適用できる。したがって、図2の例は平面図として説明しているが、これを水平方向の断面図(H断面図)として表すこともできる。この場合に、図2のH断面図は、図3の垂直方向の断面図(V断面図)と法線ベクトルが線形独立である。このように、図2、図3の例では、H断面図とV断面図の2断面の図面を読み込んでいると考えることができる。
【0081】
本発明の特徴は、次のように説明することができる。
(1)各受熱体の受熱量は、受熱形状の計算ではなく、日射分配率という比率計算に単純化している。すなわち、受熱体の射影形状の複雑な計算ではなく、受熱体射影面積の窓射影面積に対する比率の計算に単純化した。この比率は、日射分配率と定義しているが、各々の受熱体の分配率を要素に有している。また、サイズが総受熱体数に等しいベクトルを日射分配率ベクトルとして定義する。本発明において、射影とは直達日射に対する法線面における日射としている。
【0082】
(2)日射受熱の射影面積計算を矩形近似計算にしている。
ある受熱体の射影受熱面積は,線形独立な2断面図(H断面図とV断面図)に投影された各々の射影幅の積で近似されるものとした。すなわち、H断面図の射影幅をWh、V断面図の影幅をWvとするときに、射影受熱面積Sは、S=Wh×Wv、で演算される。
【0083】
(3)日射分配率ベクトルのマトリックスであらゆる受熱状況を表現可能にしている。
a)面において,各々の受熱体が最大受熱する日射入射角度状態でH断面に投影された射影幅を定める。これらの総受熱体数分の各受熱体射影幅セットを角度の大きさの順に並べ替える。V断面において、各々の受熱体が最大受熱する日射入射角度状態でV断面に投影された射影幅を定める。これらの総受熱体数分の各受熱体射影幅セットを角度の大きさの順に並べ替える。これらH断面に投影された射影幅とV断面に投影された射影幅により、全て受熱体において積を計算して近似射影面積を得る。全ての受熱体の射影面積により分配率が計算され、日射分配率ベクトルが作成できる。
【0084】
b)次に、横方向にH断面での総受熱体数分の各受熱体射影幅セットが対応し、縦方向にV断面での総受熱体数分の各受熱体射影幅セットが対応する表軸(横方向軸と縦方向軸)を定めた時に、これら2種のセット間の全ての組み合わせによる日射分配率ベクトルを表の中身として持つマトリックスが生成される。そして、太陽位置により日射分配率ベクトルが取り得る任意の状況は、前記のようにして予め準備される日射分配率ベクトルから成るマトリックスにおいて、行、列で隣り合う4つの日射分配率ベクトルの線形結合(補間演算)で表現できるとしている。
【0085】
(4)実際の太陽位置と窓の向きにおける日射分配率ベクトルは、H断面とV断面における見かけの日射入射角度(ラジアン)に関して線形補間されるものとしている。すなわち、前記(4)式〜(6)式により線形補間している。ここで、受熱体の形状は、例えば光線追跡的な計算によって形状を捕捉することが考えられるが、計算量が膨大になり、現実的ではない。また、形状計算を実行する場合には、すべての数値について演算するので、線形補間という概念は導入できない。
【0086】
本発明においては、各受熱体について、日射分配率という比率計算に単純化しており、線形補間が可能となっている。このように、本発明の線形補間は、単に一般的な数学上の演算の概念としての線形補間ではなく、室内に複数の受熱体が存在する場合に、日射分配率を演算するという特有の構成において、線形補間の概念を巧みに導入することにより、演算の単純化、処理速度の向上を図るものである。
【0087】
上記したように、本発明は、室内に配置された複数の受熱体の異なる2つの断面図、例えば平面図と断面図における窓を透過した太陽光の角度的関係に関して、実際の太陽位置変化によりこれらの角度関係の変化が多数生じるので、計算量を低減するために離散的な最大受熱角度の間の線形補間近似を行った。さらに受熱面積は、平面図と断面図各々の日射の射影幅の積で近似できるとしたことで、複雑な演算を必要としない実用的な工学モデルを導いた。なお、本発明の実施形態においてはこれまで説明したように、各受熱体の受熱量演算は、日射分配率ベクトルに基づいて実行される。したがって、「受熱体の受熱量演算方法と受熱体の受熱量演算装置」および「室内の日射分配率変化演算システム」は、相互に関連性を有しており、同一の課題解決を図るものである。
【産業上の利用可能性】
【0088】
以上説明したように、本発明は、受熱体の受熱量演算と日射分配率の変化の演算を簡便に行う構成とした、受熱体の受熱量演算方法と受熱体の受熱量演算装置、および室内の日射分配率変化演算システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明の実施形態を示すフローチャートである。
【図2】本発明の実施形態を示す説明図である。
【図3】本発明の実施形態を示す説明図である。
【図4】本発明の制御部の全体構成を示すブロック図である。
【図5】図4の入力部の処理例を示す説明図である。
【図6】図4の記憶部の処理例を示す説明図である。
【図7】図4の演算処理部の処理例を示す説明図である。
【図8】図4の入力部の処理例を示す説明図である。
【図9】図4の記憶部の処理例を示す説明図である。
【図10】図4の演算処理部の処理例を示す説明図である。
【図11】図4の出力部の処理例を示す説明図である。
【図12】本発明の実施形態を示す説明図である。
【図13】本発明の実施形態を示す説明図である。
【図14】本発明の実施形態を示す説明図である。
【図15】本発明の実施形態を示す説明図である。
【図16】本発明の実施形態を示す説明図である。
【図17】本発明の前提技術を示す説明図である。
【図18】本発明の前提技術を示す説明図である。
【図19】本発明の前提技術を示す説明図である。
【図20】本発明の前提技術を示す説明図である。
【図21】本発明の前提技術を示す説明図である。
【図22】本発明の実施形態を示す説明図である。
【図23】本発明の実施形態を示す説明図である。
【図24】本発明の実施形態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0090】
1・・・制御部、2・・・入力部、3・・・演算処理部、4・・・記憶部、5・・・出力部、6・・・モニター、7・・・車両、11・・・太陽、12、13・・・受熱面、14・・・窓、15・・・矩形で表示された受熱体、16・・・平面で表示された受熱体、Cx・・・窓の面積重心、(b)〜(g)・・・受熱体の面積重心
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内に配置された複数の受熱体に対する受熱量演算と、日射分配率変化の演算を簡便に行う、受熱体の受熱量演算法と受熱体の受熱量演算装置、および室内の日射分配率変化演算システムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両の室内や居住室内において、室内に複数配置された座席、ドアなどの各受熱体に対する、窓から入射する太陽光の入射熱量に対する受熱割合(日射分配率)は相違している。車両や居住室内に、窓から入ってきた直達日射は,座席,計器板やドア等の室内に配置された受熱体表面の受熱面に照射されるが、太陽位置によって各受熱体の受熱割合は変化する。このような、室内に配置された備品や設備などの各受熱体に対して、どのような受熱割合となっているか、また、各受熱体の受熱量はどの程度かの判断が車両や居住室内の環境の改善を図る観点から必要になる場合がある。
【0003】
特許文献1には、室内の日射解析方法の発明が記載されている。この発明は、予め建物外周の日射解析を行い、その結果を窓位置の日射エネルギーとして保存し、この日射エネルギーから室内の条件(壁面や床面の物性値)に基ずいて発熱量を演算するものである。前記発熱量は、床面などの単位面積当たりの日射量に各部材の吸収率を乗算して求めている。なお、図4に関連して、日射解析によりある時刻では領域A(室内の床面)にあるエネルギーの日射があり、別の時刻では、領域B(室内の壁面)にあるエネルギーの日射があることが判ると記載されている。
【0004】
特許文献2には、ナビゲーション装置を備え、道路情報を用いて車両に侵入する日射量を演算する発明が記載されている。日射量は車両独自の情報を用いて修正しており、車両独自の情報の例として、車両の座席位置、窓ガラスの位置などが記載されている。また、車内の複数の領域毎に乗員および車両が受熱する受熱量を演算するために、予め補正係数を記憶しておくことが記載されている。
【0005】
【特許文献1】特開2001−075946号公報
【特許文献2】特開2002−362129号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載され発明においては、予め建物外周の日射解析を行う必要があり、建物の立地条件(周辺建物の大きさ、地面の放射率など)毎に個別のデータが必要になり、汎用性がないという問題があった。また、受熱面毎の物性値(吸収率)に基ずく演算が必要となり、演算が煩雑になるという問題があった。さらに、図4に示されているように、領域A(室内の床面)または領域B(室内の壁面)にある量の日射エネルギー量があることが解析されるにとどまり、室内に複数の受熱体が配置された場合に、個別の各受熱体についての受熱割合は不明であるという問題があった。
【0007】
特許文献2に記載され発明においては、時々刻々と変化する各受熱体の受熱量を算出するために、大量の補正係数を記憶しておく必要があるので日射量演算の際に前段の処理が必要となり、メモリ資源(記憶手段の容量)も増大するという問題があった。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するものであって、室内に複数の受熱体が配置された場合に、個別の各受熱体に対する受熱体の受熱量演算の演算を簡便に行う構成とした、受熱体の受熱量演算方法と受熱体の受熱量演算装置、および太陽光の入射熱量に対する日射分配率変化の演算を簡便に行う構成とした、室内の日射分配率変化演算システムの提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような目的を達成するために、本発明の受熱体の受熱量演算方法は、
複数の受熱体を有する室内に窓から太陽光が入射したときの前記各受熱体の受熱割合に基づいて各受熱体の受熱量を算出する受熱体の受熱量演算方法であって、
前記室内に対する太陽の位置に基づく太陽光の入射角に関するパラメータで、太陽光の室内への入射角を検出し、
前記入射角に基づいて、前記複数の受熱体のうち、一方の受熱体が最大受熱状況になるときの太陽光の入射熱量に対する受熱割合と、その時の他方の受熱体の太陽光の入射熱量に対する受熱割合とを受熱割合ベクトルとして定義した日射分配率ベクトルで、前記各受熱体の最大受熱状況になるときの日射分配率ベクトルを求め、
前記各受熱体の日射分配率ベクトル間を補間演算にて演算することで、前記各受熱体の受熱量を求めることを特徴とする。
【0010】
本発明の受熱体の受熱量演算装置は、
複数の受熱体を有する室内に窓から太陽光が入射したときの前記各受熱体の受熱割合に基づいて各受熱体の受熱量を算出する受熱体の受熱量演算装置であって、
前記室内に対する太陽の位置に基づく太陽光の入射角に関するパラメータを検出する入射角検出手段と、
前記入射角検出手段によって検出された入射角に基づいて、前記複数の受熱体のうち、一方の受熱体が最大受熱状況になるときの太陽光の入射熱量に対する受熱割合と、その時の他方の受熱体の太陽光の入射熱量に対する受熱割合とを受熱割合ベクトルとして定義した日射分配率ベクトル演算手段と、
前記複数の受熱体の各日射分配率ベクトル間を補間演算にて演算する補間演算手段とを有することを特徴とする。
【0011】
また、本発明の室内の日射分配変化演算システムは、窓を透過して室内に入射する太陽光の方位と高度の変化により、室内に配置された複数の受熱体に対する日射分配率の変化を演算する際に、準備段階のプリ処理演算プロセスとシミュレーション演算プロセスを含み、前記プリ処理演算プロセスの実行で得られた処理結果を用いたシミュレーション演算プロセスを実行する室内の日射分配率変化演算システムであって、
入力部と記憶部と演算処理部とを備え、
前記プリ処理演算プロセスにおいて、
前記入力部から前記演算処理部に、前記太陽光の窓透過後の前記各受熱体に対する受熱状況を出力し、
前記演算処理部は、前記記憶部から前記各受熱体における最大受熱角度に依存する日射分配率を有するベクトルのマトリックスを読み出して、前記入力部から入力された前記受熱状況と、前記記憶部から読み出したベクトルのマトリックスに基づいて、最大受熱角度における各受熱体の受熱比率を演算し、
前記シミュレーション演算プロセスにおいて、
前記入力部から前記演算処理部に、前記窓を透過する太陽の太陽方位角度と見かけの太陽高度角度を出力し、
前記演算処理部は、前記記憶部から前記ベクトルのマトリックスを読み出して、前記入力部から入力された見かけの前記太陽方位角度と見かけの太陽高度角度から、各受熱体に
対して時々刻々変化する日射分配率を演算することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、受熱体の受熱量演算に際して、(1)受熱形状の計算ではなく日射分配率なる比率の計算に単純化している。(2)日射受熱の射影面積計算を矩形近似計算にしている。(3)実際の太陽位置と窓の向きにおける日射分配率ベクトルは,室内の異なる2断面に基づいて補間演算されるものとしている。このため、汎用伝熱計算プログラムの中に組み込まれる日射分配率の変化を計算するルーチンの簡素化、および計算時間の節約を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図により本発明の実施形態について説明する。図17〜図21は、本発明にかかる前提技術の説明図である。図17は、太陽11の位置と、対象とする車両室内や居住室内の受熱面12との位置関係を定義する説明図である。図17において、受熱面12の中心位置Cからみた東西南北の方位と、鉛直線を設定する。このときの受熱面12の中心位置Cにおいて、太陽11の位置に対する方位角度aと高度角度hが定められる。この方位角度aと高度角度hは、受熱対象位置の経度、緯度と、受熱体に対する受熱量を演算する際の日時により定まるので、データとして予め記憶手段などに保持しておくことができる。ここで、方位角度aと高度角度hは、太陽光の入射角として表すことができる。また、受熱対象位置の経度、緯度と、受熱体に対する受熱量を演算する際の日時は、当該入射角のパラメータとしてとらえることができる。したがって、このようなデータを読み出して方位角度aと高度角度hを求めることは、太陽光の入射角に関するパラメータを検出する入射角検出手段を設けることに相当する。
【0014】
室内に配置された受熱体の受熱面に、窓を通して太陽光を受熱する際に、図19に示すように、窓14が傾斜角Wtを有して設置される場合がある。この場合には、図17で示された受熱面の方位角度と高度角度の関係は、図18の説明図に示されるように修正される。図18において、受熱面13の方位角度は、Wa、高度角度は、(π/2)−Wt、となる。
【0015】
図18の例では、見かけの太陽方位角度φaは、(1)式で定義される。
【0016】
【数1】
【0017】
この時に、見かけの太陽高度角度(profile angle)φhは(2)式で計算される。
【0018】
【数2】
【0019】
次に、光線追跡について説明する。図20は、太陽光が窓面を透過して室内に配置された複数の受熱体に照射される例を模式化して示す説明図である。図20においては、X、Y、Z軸の直交座標系に矩形状の受熱体15を配置している。図20に示すような、単純
な直方体の室空間の場合には、窓の受熱面以外に、(a)から(e)までの5つの受熱面が存在している。
【0020】
ある角度で日射が室内に入射して各受熱面に当たった状況を、実際の3次元的な図では表現することが難かしいので、直方体の室内を2次元的に平たく延ばして表現するものとする。図21は、図20の直方体の室空間を平面図で模式化して示した説明図である。このようにして模式化された図21の状況では、受熱体(b)が最大の受熱をするものとしている。そして、受熱体(b)が最大の受熱をする状況で、同時に日射を一部受熱する受熱体(a)と(c)も含めた、(a)、(b)、(c)のそれぞれの太陽光の入射熱量に対する受熱割合(日射分配率)ra、rb、rc・・・が射影幅から求められる。なお、本発明においては、特許請求の範囲、明細書の説明の欄、図面において、受熱体の受熱割合を、日射分配率、受熱比率と表記することがある。これらの用語はいずれも同義語として用いている。
【0021】
図21の例では、各受熱体に対する受熱割合は、ra=0.3、rb=0.5、rc=0.2、rd=re=0、としている。この場合には、ra+rb+rc=1、となる。すなわち、本発明においては、各受熱体に対する日射分配率の総和は「1」になるように設定する。このように、特定の受熱体の最大受熱状況とは、室内に配置されたすべての受熱体の受熱量を「1」としたときに、当該受熱体が最も多くの受熱割合となる状況をいうものとする。射影幅と受熱割合(日射分配率)の詳細については後述する。
【0022】
同様にして、他の受熱体(a)、(c)、(d)、(e)のそれぞれが、室内のある面、例えば平面図における最大の日射分配率となる角度(各受熱体の最大受熱角度と呼ぶ)と、その時の他の面、例えば断面図の日射分配率が図面上で定められる。ここで、実際の最大受熱角度には、見かけの太陽方位角度と、見かけの太陽高度角度の2種類を考える。
【0023】
一般に発生する見かけの太陽位置の角度は、室内に離散的に配置されている各受熱体の最大受熱角度の間に多数発生するが、太陽位置の角度の線形補間の比率で日射分配率も線形補間で近似できる。説明のために、図21では図20で示した受熱する直方体の空間を平たく延ばした平面図で示している。しかしながら、実際の比較的に複雑な形状となっている室内状況を、図21に示すようなひとつの単純化された図で表すことは困難である。また、実際の最大受熱角は、見かけの太陽方位角度と、見かけの太陽高度角度の2つあるから、これらの最大受熱角度を表現するためには2つの図が最低限は必要である。
【0024】
このために、本発明の実施形態においては、受熱面を示す図として、室内の法線ベクトルが線形独立な3断面のいずれか2面の図面、を用いる。ここで、「法線ベクトルが線形独立な3断面」は、3次元空間で互いに交差する3断面を意味しており、3断面すべての図面を用いるのではなく、その中で任意の2面の図面を用いることとしている。例えば、図2に示すような平面図と、図3に示すような断面図の2つの図面を用いる。
【0025】
ここで、本発明における断面図について説明する。図24は、車両7の室内に座席などの複数の受熱体が配置されている例を示しており、後述する図16の車両の図でルーフを取り外して内部の受熱体の配置がわかるように表示している。受熱体として、例えばフロント左シート坐面Ta、フロント左シート背面Th、フロント右シート坐面Tb、フロント右シート背面Tf、リアシート坐面Te、リアシート背面Tcが示されている。ここで、本発明で用いている断面図の意義は、個別の受熱体、例えば、フロント左シート坐面Taについての縦方向断面を表すものではない。
【0026】
図24に示すように車両室内に配置された複数の受熱体が表示できるように、側面の窓の外部空間をXa―Xb線で切断し、車両の側面から(矢視Yb)あたかも室内を透視す
るようにみた図を示すものとする。すなわち、室内に複数の受熱体が配置されている場合に、各受熱体が表示できるような側面視の図面を、本発明においては便宜上断面図として説明する。
【0027】
また、実際に受熱する面積は、各受熱体の平面図での射影幅と、断面図の射影幅の積で、近似できる。ここで、(3)式の日射分配率rを有するベクトルvを定義する。(3)式の日射分配率rの添字(a〜10)は受熱体番号を表す。
【0028】
【数3】
【0029】
次に、図22、図23の説明図により本発明における各受熱体の射影幅の設定について説明する。最初に受熱体の射影受熱面積を定義する。射影受熱面積は、日射の平行光線に直交する平面を,受熱体の輪郭に沿った日射が区切ることで生じる面積とする。ある受熱体が最大に受熱する時の射影受熱面積をSとして、この時の平面図での射影幅をWh、断面図での射影幅をWvと定義するときに、射影受熱面積を、S=Wh・Wv、の演算により算出する。このようなWhとWvを、受熱体に最大受熱を与える射影幅と定めるものとする。正確な射影受熱面積Sの決定は、各受熱体に対するCG(コンピュータグラフィック)処理か、写真撮影が必要になる。
【0030】
図22は平面図であり、座席の座面17を受熱体とする場合の受熱体の受熱面積を算出する例を示している。窓14の面積重心Cxと、受熱体の面積重心17xを結んだ日射の向き(中心線Lx)がその受熱体17に最大受熱を与える。次に、窓の面積重心Cxと受熱体17の面積重心17xを結ぶ中心線を描画する。この場合の平面図における太陽光の射影幅Whbは、2本の直線Ls、Lt間の長さで示される。2本の直線Ls、Ltは、受熱体17における外表面位置情報とみることができる。したがって、受熱体17の太陽光の射影幅Whbは、図22の平面図における窓14の投影幅と、受熱体17の外表面位置情報に基づいて求められる。
【0031】
断面図での太陽光の射影幅Wv(図示を省略する)は、座面17の図視前側の辺(図23の辺l−r)と後ろ側の辺(図23の辺p−u)の方向が断面図に垂直に見なせることから、概略辺r−uの長さとして算出することができる。なお、窓14の面積重心Cxと、受熱体17の面積重心17xの位置は、窓の画像データ、および受熱体17の画像データを、例えばX−Y座標に展開し、X軸方向およびY軸方向の面積中心を演算することにより、容易に特定することができる。窓の画像データ、および受熱体17の画像データは、例えばCCDカメラなどで取得することができる。
【0032】
このようにして、平面図における射影幅Whbと断面図における射影幅Wvを設定することにより、前記射影受熱面積Sを算出する。しかしながら、図22の平面図での射影幅を射影受熱面積Sに一致するようにするためには,微妙な調整が必要になる。すなわち、中心線Lxに平行で受熱体17の端部付近を通る2本の線Lu、Lvの長さの射影幅Whaを設定すると、実際の射影受熱面積Sよりも大きな面積が算出されてしまうことになる。
【0033】
すなわち、図23において、前記2本の線Lu、Lvで設定される座席17の射影受熱面積Sxは、概略平行四辺形lwvuの面積に等しくなり、明らかに実際の射影受熱面積Sよりも大きな面積となる。そこで、中心線Lxに平行な2本の線Ls、Ltを描画する
。2本の線Ls、Lt間の長さは、受熱体17の辺l−rの長さとほぼ等しくする。この場合に、斜線で示した三角形mlkと、三角形mpnはほぼ相似形であり、三角形srqと、三角形sutはほぼ相似形である。このため、平行四辺形knqtの面積は、ほぼ射影受熱面積Sと等しくなる。
【0034】
このように、平面図の射影幅として、座席17の座面の横幅(概略l−rの長さ)程度の長さを射影幅にとれば、l−rの長さは2本の平行線Ls、Lt間の長さに概略等しいので、実際の射影受熱面積Sに近似できるが、これでも座面の四隅の曲線部による面積欠損は考慮されないことになる。受熱体の真の射影受熱面積を求めるためには、日射の平行光線の視点による窓透過室内CG画像が描ける程度の精密な計算が必要となるが、コンピュータ処理により必要な計算を短時間で実行することができる。また、平行光線と近似できる程度に遠方からの窓透過室内状況の写真撮影により平面図の受熱体を表示できるので、上記の手法で的確な射影幅を設定することができる。
【0035】
図22、図23では、受熱体が平面図ではほぼ矩形状に表示される例について、射影幅と射影受熱面積について説明した。本発明においては、受熱体の平面図の形状は、矩形状には限定されない。円形、楕円形、台形などの定形的な形状は勿論のこと、これらの定形的な形状以外の形状であっても、前記のように受熱体の形状をX−Y座標に展開することにより、面積重心位置の算出が可能である。このため、前記した中心線の描画と、平面図および断面図における射影幅が設定できるので、射影受熱面積を算出することができる。
【0036】
本発明においては、太陽位置の角度の線形補間の比率で各受熱体の日射分配率も線形補間近似できること、および実際に受熱する面積は、平面図での射影幅と、断面図の射影幅の積、すなわち異なる2つの断面に表示された射影幅の積で近似できるとすることを特徴としている。次に、このような本発明の特徴について説明する。本発明において、2つの図面は平面図と断面図には限定されず、後述するように、法線ベクトルが線形独立な3断面のいずれか2断面の図面で射影幅が表示されれば良い。
【0037】
(表1)は、「各最大受熱角度」依存の日射分配率rを要素に有するベクトルvのマトリックス、すなわち、複数の受熱体における最大受熱状況の日射分配率ベクトルをマトリックスで示している。このマトリックスは、太陽高度角度と太陽方位角度をパラメータとしている。
【0038】
【表1】
【0039】
ある日時の太陽位置と、受熱体演算位置に設定される窓の向きにおいて、見かけの太陽方位角度がφaで高度角度がφhとする。(表1)の日射分配率ベクトルのマトリックスでは、このときの状況が隣り合うj列とn列のφajとφanの間にあり、かつ隣り合うi行とm行のφhiとφhmの間にあるとする。この状態での日射分配率ベクトルは、(表1)では4点の各最大受熱角度での(vi,j),(vi,n),(vm,j),(vm,n)の線形補間で近似的に計算できると考える。すなわち、(表1)では、網掛けの4つのベクトル部分で線形補間を行う。
【0040】
(表1)のi行とm行各々において、φajとφanおよびφaによる線形補間は、次
の(4)式と(5)式で示される。ベクトルvの添え字の意味は、(表1)において、i行の高度角度、j列の方位角度の各最大受熱角度でのベクトルvをvi,jとして表すものである。なお(表1)で表すマトリックスの左右と上下の並び方は、各最大受熱角度について、左上隅から小さい順に並べた変えたものである.このようにして、例えば図20の受熱体記号a,b,c,・・・から、番号1,2,3・・・に変換する。
【0041】
【数4】
【0042】
【数5】
【0043】
次にφhiとφhmおよびφhにより、最終的な補間値Vは(6)式で計算される。
【0044】
【数6】
【0045】
次に、室内における各最大受熱角度による分配率の(表1)を作成するための、入力ユ
ーザーインターフェイスの例について説明する。室内への入射光による影の計算などは、本来は複雑な処理になるところを、本発明の実施形態においては極力簡単な処理プログラムになるように工夫している。また、室内の幾何的状況を描く機能を付加すると複雑になるので、一般的なbmpファイルの下絵として入力処理プログラムを受け取るようにする。図2、図3に示す室内の平面図と断面図は、bmpファイルとして既に作られたものを利用する。
【0046】
下絵には、図2の平面図と図3の断面図において、最大10個の受熱体を描くことができるが、この例では7個の各受熱体に面積重心(a)〜(g)を描いておく。また窓面の面積重心も描いておき、平面図と断面図での各面積重心の対応情報を処理プログラムに認識させる。断面図では、面積重心(b、c)のように図面奥行き方向に、複数の受熱体の面積重心が重なっている場合もある。
【0047】
図2の平面図において、窓の面積重心Cxと受熱体の面積重心(b)を直線で結び中心線Lxとする。図2の例では、室内の窓16に向かって右側の座席R−seatに前記面積重心(b)を設定し、窓の面積重心Cxと受熱体の面積重心(b)を結ぶ中心線Lxを引く。この時に、受熱体の面積重心(a)〜(g)のどれについての定義であるか、処理プログラムに認識させる。図2の例では、受熱体の面積重心(b)についての定義となる。
【0048】
この中心線Lxと平行な直線として、当該受熱体が受ける受熱量を考慮して適切な幅を表す2本の直線La、Lbを描く。2本の直線La、Lb間の長さは、受熱体の射影幅Wh(b)を示している。このとき処理プログラムは、この射影幅wh(b)を読み取ることができ、また窓を透過する窓射影幅(投影幅)Wh(0)も読み取ることができる。窓射影幅Wh(0)は、2本の直線Lc、Ld間の幅となる。窓の面積重心Cxを通らない他の受熱体についても、ユーザーは受熱体射影幅Whを定義するものとし、処理プログラムはこれらの射影幅も読み取る。
【0049】
窓の面積重心Cxと受熱体の面積重心(a)〜(g)を結ぶ中心線を引き、この中心線の両側に引かれる2本の線間の長さで射影幅を設定する。処理プログラムに射影幅を認識させる操作と処理は、全受熱体の中心点(a)〜(g)について行われるものとする。同様な射影幅を認識させる操作と処理は、図3の断面図においても行う。図3の例では、窓の面積重心Cxと受熱体の面積重心(b)、(c)を結ぶ中心線Lyを引く。また、中心線Lyの両側に2本の直線Le、Lfを引き、受熱体射影幅Wv(b,c)を描く。さらに、窓射影幅Wv(0)を、2本の直線Lg、Lhの幅で設定する。
【0050】
図2、図3の処理を行うことにより、(表2)で表す様な日射分配率rが計算される。(表2)では、受熱体の平面図射影幅Wh(a)〜Wh(g)、受熱体の断面図射影幅Wv(a)〜Wv(g)、前記Wh(a)〜Wh(g)とWv(a)〜Wv(g)との積f(a)〜f(g)、日射分配率が示されている。ここで、各受熱体の日射分配率は、f(a)〜f(g)の総和Σfを分母に、各受熱体f(a)〜f(g)を分子として、演算で求められる
。一般的には、各受熱体の平面図射影幅と断面図射影幅の積(fi)をそれぞれ演算し、前記(fi)を、各受熱体の数nだけ加算したΣ(fn)で個別の(fi)を除算した(fi)/Σ(fn)、により各受熱体の日射分配率(受熱割合)が算出される。
【0051】
【表2】
【0052】
これらの各受熱体の日射分配率rを要素に持つベクトルvi,j=(ra,rb,・・・・・.r10)は、この例では平面図と断面図でそれぞれ(a)から最大10個の受熱体について作成できるから、合計で最大10×10のベクトルvが作成されることになる。各受熱体の面積重心(a)〜(g)のそれぞれについて、上記操作と処理が行われれば、それぞれで各最大受熱角度が決定される。受熱体の面積重心(a)から面積重心(g)まで順番に上記操作と処理を行えば、これらの各最大受熱角度は必ずしも大小順番には並ばない。従って日射分配率表を作成する際には、日射分配率表の左から右へ、また日射分配率表の上から下への順番で、比較的に小さい各最大受熱角度から大きな各最大受熱角度に
なるように並べ替える。こうして前述の各最大受熱角度による日射分配率表の(表2)が作成できる。
【0053】
一方、拡散日射分配率に対しては一定的なモデルとして算出できる。すなわち、ある窓を透過した直達日射が各受熱体に分配される割合を、日の出から日没まで平均した値を拡散日射分配率とする。これは、太陽光の直達に関して日射分配率が大きければ、拡散日射分配率に関しても大きいであろうと推察できることによる。
【0054】
表1、表2に関連して説明したように、本発明は、複数の受熱体を有する室内に窓から太陽光が入射したときの前記各受熱体の受熱割合に基づいて各受熱体の受熱量を算出する受熱体の受熱量演算を、以下のように実行している。
(1)前記室内に対する太陽の位置に基づく太陽光の入射角に関するパラメータで、太陽光の室内への入射角を検出する。
(2)前記入射角に基づいて、前記複数の受熱体のうち、一方の受熱体が最大受熱状況になるときの太陽光の入射熱量に対する受熱割合と、その時の他方の受熱体の太陽光の入射熱量に対する受熱割合とを受熱割合ベクトルとして定義した日射分配率ベクトルで、前記各受熱体の最大受熱状況になるときの日射分配率ベクトルを求める。
(3)前記各受熱体の日射分配率ベクトル間を補間演算にて演算することで、前記各受熱体の受熱量を求める。
【0055】
図4は、本発明の制御部の全体構成を示すブロック図である。図4において、パーソナルコンピュータなどで構成される制御部1は、マウスやキーボードなどの入力部2、CPUからなる演算処理部3、ROMやRAMなどの記憶部4、モニターやプリンタなどの出力部5を有している。入力部2の処理の例は、図5、図8に、記憶部4に記憶されているデータの例は図6、図9に、演算処理部3の処理例は、図7、図10に、出力部5の処理例は、図11にそれぞれ記載されている。
【0056】
本発明においては、(1)準備段階のプリ処理(初期設定を行う)演算を行う段階と、(2)対象とする室内の日射分配率についてシミュレーションを演算する段階、が含まれる。図5〜図7は、前記(1)プリ処理中の演算プロセスを示す説明図であり、図8〜図11は、(2)シミュレーション中の演算プロセスを示す説明図である。
【0057】
図5〜図7により、プリ処理中の演算プロセスについて説明する。図5において、入力部2から対象とする室内の窓透過後の日射受熱状況を入力する。この処理は、前記した図2の平面図における日射受熱状況と、図3の断面図における日射受熱状況の入力に相当する。図6では、記憶部4から前記(表1)で説明した「各最大受熱角度の日射分配率rを要素に持つベクトルvの表(マトリックス)」を読み出す。図7において、演算処理部3は、入力部5で入力された窓透過後の日射受熱状況と、記憶部4から読み出された「各最大受熱角度の日射分配率rを要素に持つベクトルvの表」から、(表2)の最大受熱角度における受熱比率(日射分配率)を算出する。
【0058】
次に、図8〜図11によりシミュレーション中の演算プロセスについて説明する。図8において、入力部2から、太陽の緯度、経度、受熱量演算の時刻により、太陽位置a(方位角度)とh(高度角度)を設定する。太陽位置aより前記(1)式の見かけの太陽方位角度φaを入力する。また、窓の方位、傾きから(2)式の見かけの太陽高度角度φhを入力する。
【0059】
図9の記憶部4から読みだされるデータは、図6のプリ処理中の演算プロセスと同様に(表1)の「各最大受熱角度の分配率rを要素に持つベクトルvの表」である。図10の演算処理部3は、入力部2から入力された(1)式と(2)式、および記憶部4から読み
だされた(表1)のデータに基づいて、(4)式〜(6)式を演算する。図11の出力部5は、演算処理部3の演算結果から(3)式を出力する。
【0060】
図12、図13は、出力部5のモニター6に表示される画像の例を示す説明図であり、ユーザーインターフェイスの例が示されている。図12(a)は、受熱体としての車両の平面図を表示し、図12(b)は、車両の室内に設置された各受熱体の見かけの方位角度、射影幅を表で表示している。ここで、車両の室内に設置された各受熱体は、例えば「右シート(b)」、「左ドア(g)」などであり、各受熱体の位置は、図12(a)に黒丸で表示している。この黒丸は、図12(b)では「熱回路網節点」として各受熱体に対応させている。図12(a)には、図2で説明したような、窓の面積重心と受熱体の面積重心を結ぶ中心線と、この中心線と平行な2本の線が表示されている。
【0061】
図13(a)は、受熱体としての車両の断面図を表示し、図13(b)は、車両の室内に設置された各受熱体の見かけの高度角度、射影幅を表で表示している。図13(b)においても、図12(b)と同様に、車両の室内に設置された各受熱体の位置を黒丸の「熱回路網節点」として表示している。図12、図13において、最初にbmp形式の車両の下絵(平面図と断面図の2つの図面)を読み込ませる。下絵には予め各受熱体の面積重心を印しておく。窓の両端を指定し窓の向きと幅を定め、各受熱体について受熱体の面積重心と窓の面積重心を中心線として結び、各受熱体の最大受熱角度を定める。そしてこの時の各受熱体の射影幅も定める。最後に各受熱体と熱回路網の節点との対応付けを行う。なお、図12(a)の平面図、および図13(a)の断面図においては、車両の長さや幅などの寸法の情報がモニタに表示させることができる。
【0062】
図14〜図16は、(表3)〜(表8)に示されている車両室内の日射分配率を得るための説明図である。(表3)〜(表8)では、室内日射分配率時間変化モデル(NETSのモデル)による日射分配率と、コンピュータグラフィックス(CG)により求められた各受熱体の日射分配率を、同一測定日の12時、15時、17時の3時点の太陽位置で比較している。NETS(Network Model Simulation Program)は、熱負荷計算プログラムとして知られており、建築物などの熱・換気回路網モデルの予測計算に用いられる。NETSのモデルについては、後述する。
【0063】
(表3)〜(表5)は、フロントガラスから太陽光が入射する例であり、(表6)〜(表8)は、右サイドガラスから太陽光が入射する例である。(表3)〜(表8)の各表において、車内受熱体の総和が全投影面積として表示されている。また、横軸には、12時、15時、17時の各時刻におけるCGのピクセル数、面積比(1)、面積比(2)、NETSの日射分配率(1)、日射分配率(2)が設定されている。
【0064】
【表3】
【0065】
【表4】
【0066】
【表5】
【0067】
【表6】
【0068】
【表7】
【0069】
【表8】
【0070】
図14は、ある測定位置における車両7の12時の太陽位置からみた画像を示している。また、図15は、前記車両7の12時におけるフロントガラスX、右サイドガラスYの射影面積算出のためのCGを示している。さらに、図16は、12時における右サイドガラスYから入射する日射で各受熱体射影面積算出のためのCGを示している。図16において、各受熱体は、(表3)〜(表8)に示されているように、インパネTx、フロント右シート座面Tb、フロント左シート座面Ta、フロント右シート背面Tf、フロント左シート背面、リアシート座面Te、リアシート背面Tc、右ドアTd、左ドア、左サイドガラス、フロア、フロント左ピラー、が設定されている。
【0071】
図14〜図16では、12時におけるCG画像の例を示しているが、(表3)〜(表8)に示されているように、CG画像は、15時,17時の受熱体についても作成される。これらのCG画像により、窓の射影面積および車内の受熱体の射影面積を、それぞれピクセル数のカウント値として代表させ、日射分配率は窓の射影ピクセル数に対する各受熱体射影ピクセル数の比率で算出する。
【0072】
一方、NETSではシミュレーション結果の中に日射分配率は含まれない。しかしながら、日射を受ける節点の発熱量は出力される。そこで車両伝熱モデルの傍らに同一面積で同一向きの窓をモデル化し、この窓を透過する日射を受熱する節点を設けた。また、この
発熱量を分母として、車内の各受熱体の発熱量を分子とし、日射分配率を算出した。この場合に使用した日射量は理想化し、太陽光の直達分のエネルギー換算で1kwだけで拡散日射と地表面反射日射は0とした。
【0073】
こうして日射分配率のCGの結果とNETSの結果を比較したのが(表3)〜(表8)である。各時点での窓日射射影面積に対する日射分配率(1)だけを見ると大きく異なる所もある。しかし結局は熱量的な影響の比較が重要であるので、12時のフロントガラス射影面積を分母にした日射分配率(2)も算出して比較した。
【0074】
このように、(表3)〜(表8)に示されている射影面積比(1)と日射分配率(1)は、各時刻での窓ガラスの射影面積を分母にした比率であるのに対して、射影面積比(2)と日射分配率(2)は12時のフロントガラス日射射影面積を分母としたものである。これらにより、仮に射影面積比(1)と日射分配率(1)において大きな差異があっても、射影面積比(2)と日射分配率(2)の値が小さければ影響は少ない。(表3)を見ると射影面積比(1)と日射分配率(1)、射影面積比(2)と日射分配率(2)は概ね一致している。
【0075】
太陽高度が高い12時の場合は、前記射影面積比(1)と日射分配率(1)は、射影面積比(2)と日射分配率(2)によく一致しているが、15時から17時へと太陽位置が低くなってくると両者の違いが目立つようになる。比較的に大きく違うのは、17時のフロント窓から日射が入った場合の左ドアの日射分配率で、CGでは0%であるのに対してNETSでは44%である。しかしながら、これはNETSの日射分配率(2)で見ると7%と小さく、熱量的には影響が少ない。また窓を透過した日射は、車室内のどこかの受熱体に受熱する実現象であり受熱のモデルであるから、窓面積と太陽光透過の性能が正確であれば、大局的な室内表面での総受熱量は正確に算出される。
【0076】
NETSでは、窓ガラス透過後に室内で受熱する場所は、計算量の関係で最大10個所までとし、各受熱体の各々の日射分配率ra,rb,re−rjの総和は一定値「1」という制約がある。しかしながら、太陽位置等の移動に従って日射分配率も本来は変化するので、この変化を考慮できる様にする必要がある。日射分配率ra−rjを、見かけの太陽方位角度φaと見かけの太陽高度角度φhの余弦と正弦の3次幕級数の積から成る回帰式で表し、予め光線追跡プログラム等による計算結果により回帰することが考えられる。しかしながら、高次の幕級数とはいえ角度変化に関して滑らかな変化しか扱えないのに対し、実際は見かけの太陽方位角度と見かけの太陽高度角度によって日射受熱の有無の面が異なるので、全く別の回帰関数に変えなければならず、このような回帰式では対応できない。
【0077】
そこで、本発明においては煩雑な光線追跡プログラムを使用せず、紙上の簡単な図面作成で係数等を用意できるモデルにしている。これまで、窓からの日射室内分配率の変化を光線追跡計算法等で精密に追う方法はあったが、比較的長期間の熱負荷計算の中でも使える簡易法は不十分だった。本発明においては、前記した線形補間による近似等から実用的な工学モデルを提案している。
【0078】
図1は、本発明の実施形態を示すフローチャートである。図1においては、次のステップ(手順)で必要な処理を行う。
S1:処理プログラムの開始
Sx:プリ処理中の演算プロセス
S2:平面図及び断面図の読み込み(図2、図3)
S3:窓両端の指定
S4:受熱体数の設定
S5:受熱体面積重心(中心)の指定(図2、図3)
S6:受熱体射影幅の指定(図2、図3)
S7:受熱体と熱回路網モデルの節点との対応付け
S8:日射分配率表の作成(表1)
Sy:Δt毎の時間ループ計算
Sz:シミュレーション中の演算プロセス
S9:時々刻々の日射分配率の算出
S10:日射受熱量の算出
【0079】
ここで、前記S10:日射受熱量の算出について説明する。窓の法線面直達日射量と天空拡散日射量は、日射量センサにより別途得られているものとする。対象とする室内の緯度と経度、および計測時刻から、図17で説明したように太陽高度と方位は計算される。従って太陽位置のベクトルも定められる。−方、窓面の方位と傾きから、図19で説明したように窓面の法線ベクトルも定められる。従って、太陽位置のベクトルと窓面の法線ベクトルの両者のベクトルの内積から、入射角度余弦が計算される。予め、窓ガラスの日射に対する入射角依存の透過率と反射率は、入射角度余弦の5次幕級数の係数として最小二乗回帰されているものとする。これらの情報から、窓を透過する日射量が計算される。以上により、室内の各受熱体の受熱量は、S1〜S9の前プロセスから得られている日射分配率をその透過日射量に乗じることにより、算出される。
【0080】
前記した図20においては、X、Y、Z軸の直交座標系に矩形状の受熱体15を配置した例について説明している。本発明の実施形態においては、受熱体の配置を、X、Y、Z軸の直交座標系の二つの図面で表示することには限定されない。一般に、室内の法線ベクトルが線形独立な3断面のいずれか2断面の図面、換言すれば、3次元空間で互いに交差する3断面のいずれか2断面の図面を用いる際に適用できる。したがって、図2の例は平面図として説明しているが、これを水平方向の断面図(H断面図)として表すこともできる。この場合に、図2のH断面図は、図3の垂直方向の断面図(V断面図)と法線ベクトルが線形独立である。このように、図2、図3の例では、H断面図とV断面図の2断面の図面を読み込んでいると考えることができる。
【0081】
本発明の特徴は、次のように説明することができる。
(1)各受熱体の受熱量は、受熱形状の計算ではなく、日射分配率という比率計算に単純化している。すなわち、受熱体の射影形状の複雑な計算ではなく、受熱体射影面積の窓射影面積に対する比率の計算に単純化した。この比率は、日射分配率と定義しているが、各々の受熱体の分配率を要素に有している。また、サイズが総受熱体数に等しいベクトルを日射分配率ベクトルとして定義する。本発明において、射影とは直達日射に対する法線面における日射としている。
【0082】
(2)日射受熱の射影面積計算を矩形近似計算にしている。
ある受熱体の射影受熱面積は,線形独立な2断面図(H断面図とV断面図)に投影された各々の射影幅の積で近似されるものとした。すなわち、H断面図の射影幅をWh、V断面図の影幅をWvとするときに、射影受熱面積Sは、S=Wh×Wv、で演算される。
【0083】
(3)日射分配率ベクトルのマトリックスであらゆる受熱状況を表現可能にしている。
a)面において,各々の受熱体が最大受熱する日射入射角度状態でH断面に投影された射影幅を定める。これらの総受熱体数分の各受熱体射影幅セットを角度の大きさの順に並べ替える。V断面において、各々の受熱体が最大受熱する日射入射角度状態でV断面に投影された射影幅を定める。これらの総受熱体数分の各受熱体射影幅セットを角度の大きさの順に並べ替える。これらH断面に投影された射影幅とV断面に投影された射影幅により、全て受熱体において積を計算して近似射影面積を得る。全ての受熱体の射影面積により分配率が計算され、日射分配率ベクトルが作成できる。
【0084】
b)次に、横方向にH断面での総受熱体数分の各受熱体射影幅セットが対応し、縦方向にV断面での総受熱体数分の各受熱体射影幅セットが対応する表軸(横方向軸と縦方向軸)を定めた時に、これら2種のセット間の全ての組み合わせによる日射分配率ベクトルを表の中身として持つマトリックスが生成される。そして、太陽位置により日射分配率ベクトルが取り得る任意の状況は、前記のようにして予め準備される日射分配率ベクトルから成るマトリックスにおいて、行、列で隣り合う4つの日射分配率ベクトルの線形結合(補間演算)で表現できるとしている。
【0085】
(4)実際の太陽位置と窓の向きにおける日射分配率ベクトルは、H断面とV断面における見かけの日射入射角度(ラジアン)に関して線形補間されるものとしている。すなわち、前記(4)式〜(6)式により線形補間している。ここで、受熱体の形状は、例えば光線追跡的な計算によって形状を捕捉することが考えられるが、計算量が膨大になり、現実的ではない。また、形状計算を実行する場合には、すべての数値について演算するので、線形補間という概念は導入できない。
【0086】
本発明においては、各受熱体について、日射分配率という比率計算に単純化しており、線形補間が可能となっている。このように、本発明の線形補間は、単に一般的な数学上の演算の概念としての線形補間ではなく、室内に複数の受熱体が存在する場合に、日射分配率を演算するという特有の構成において、線形補間の概念を巧みに導入することにより、演算の単純化、処理速度の向上を図るものである。
【0087】
上記したように、本発明は、室内に配置された複数の受熱体の異なる2つの断面図、例えば平面図と断面図における窓を透過した太陽光の角度的関係に関して、実際の太陽位置変化によりこれらの角度関係の変化が多数生じるので、計算量を低減するために離散的な最大受熱角度の間の線形補間近似を行った。さらに受熱面積は、平面図と断面図各々の日射の射影幅の積で近似できるとしたことで、複雑な演算を必要としない実用的な工学モデルを導いた。なお、本発明の実施形態においてはこれまで説明したように、各受熱体の受熱量演算は、日射分配率ベクトルに基づいて実行される。したがって、「受熱体の受熱量演算方法と受熱体の受熱量演算装置」および「室内の日射分配率変化演算システム」は、相互に関連性を有しており、同一の課題解決を図るものである。
【産業上の利用可能性】
【0088】
以上説明したように、本発明は、受熱体の受熱量演算と日射分配率の変化の演算を簡便に行う構成とした、受熱体の受熱量演算方法と受熱体の受熱量演算装置、および室内の日射分配率変化演算システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明の実施形態を示すフローチャートである。
【図2】本発明の実施形態を示す説明図である。
【図3】本発明の実施形態を示す説明図である。
【図4】本発明の制御部の全体構成を示すブロック図である。
【図5】図4の入力部の処理例を示す説明図である。
【図6】図4の記憶部の処理例を示す説明図である。
【図7】図4の演算処理部の処理例を示す説明図である。
【図8】図4の入力部の処理例を示す説明図である。
【図9】図4の記憶部の処理例を示す説明図である。
【図10】図4の演算処理部の処理例を示す説明図である。
【図11】図4の出力部の処理例を示す説明図である。
【図12】本発明の実施形態を示す説明図である。
【図13】本発明の実施形態を示す説明図である。
【図14】本発明の実施形態を示す説明図である。
【図15】本発明の実施形態を示す説明図である。
【図16】本発明の実施形態を示す説明図である。
【図17】本発明の前提技術を示す説明図である。
【図18】本発明の前提技術を示す説明図である。
【図19】本発明の前提技術を示す説明図である。
【図20】本発明の前提技術を示す説明図である。
【図21】本発明の前提技術を示す説明図である。
【図22】本発明の実施形態を示す説明図である。
【図23】本発明の実施形態を示す説明図である。
【図24】本発明の実施形態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0090】
1・・・制御部、2・・・入力部、3・・・演算処理部、4・・・記憶部、5・・・出力部、6・・・モニター、7・・・車両、11・・・太陽、12、13・・・受熱面、14・・・窓、15・・・矩形で表示された受熱体、16・・・平面で表示された受熱体、Cx・・・窓の面積重心、(b)〜(g)・・・受熱体の面積重心
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の受熱体を有する室内に窓から太陽光が入射したときの前記各受熱体の受熱割合に基づいて各受熱体の受熱量を算出する受熱体の受熱量演算方法であって、
前記室内に対する太陽の位置に基づく太陽光の入射角に関するパラメータで、太陽光の室内への入射角を検出し、
前記入射角に基づいて、前記複数の受熱体のうち、一方の受熱体が最大受熱状況になるときの太陽光の入射熱量に対する受熱割合と、その時の他方の受熱体の太陽光の入射熱量に対する受熱割合とを受熱割合ベクトルとして定義した日射分配率ベクトルで、前記各受熱体の最大受熱状況になるときの日射分配率ベクトルを求め、
前記各受熱体の日射分配率ベクトル間を補間演算にて演算することで、前記各受熱体の受熱量を求めることを特徴とする受熱体の受熱量演算方法。
【請求項2】
前記室内の異なる2断面をもとに、各断面への窓の投影幅と各部材の外表面位置情報に基づいて太陽光の射影幅を求め、前記各断面の射影幅に基づいて前記各受熱体の日射分配率ベクトルを算出することを特徴とする請求項1に記載の受熱体の受熱量演算方法。
【請求項3】
前記日射分配率ベクトルは、前記各一方の断面の射影幅と他の断面の射影幅の積を演算することで算出することを特徴とする請求項2に記載の受熱体の受熱量演算方法。
【請求項4】
前記日射分配率ベクトルは、太陽高度角度と太陽方位角度をパラメータとしたマトリツクスとして演算することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の受熱体の受熱量演算方法。
【請求項5】
複数の受熱体を有する室内に窓から太陽光が入射したときの前記各受熱体の受熱割合に基づいて各受熱体の受熱量を算出する受熱体の受熱量演算装置であって、
前記室内に対する太陽の位置に基づく太陽光の入射角に関するパラメータを検出する入射角検出手段と
前記入射角検出手段によって検出された入射角に基づいて、前記複数の受熱体のうち、一方の受熱体が最大受熱状況になるときの太陽光の入射熱量に対する受熱割合と、その時の他方の受熱体の太陽光の入射熱量に対する受熱割合とを受熱割合ベクトルとして定義した日射分配率ベクトル演算手段と、
前記複数の受熱体の各日射分配率ベクトル間を補間演算にて演算する補間演算手段とを有することを特徴とする受熱体の受熱量演算装置。
【請求項6】
窓を透過して室内に入射する太陽光の方位と高度の変化により、室内に配置された複数の受熱体に対する日射分配率の変化を演算する際に、
準備段階のプリ処理演算プロセスとシミュレーション演算プロセスを含み、前記
プリ処理演算プロセスの実行後に、前記プリ処理演算プロセスの実行で得られた処理結果を用いたシミュレーション演算プロセスを実行する室内の日射分配率変化演算システムであって、
入力部と記憶部と演算処理部とを備え、
前記プリ処理演算プロセスにおいて、
前記入力部から前記演算処理部に、前記太陽光の窓透過後の前記各受熱体に対する受熱状況を出力し、
前記演算処理部は、前記記憶部から前記各受熱体における最大受熱角度に依存する日射分配率を有するベクトルのマトリックスを読み出して、前記入力部から入力された前記受熱状況と、前記記憶部から読み出したベクトルのマトリックスに基づいて、最大受熱角度における各受熱体の日射分配率を演算し、
前記シミュレーション演算プロセスにおいて、
前記入力部から前記演算処理部に、前記窓を透過する見かけの太陽の太陽方位角度と見かけの太陽高度角度を出力し、
前記演算処理部は、前記記憶部から前記ベクトルのマトリックスを読み出して、前記入力部から入力された前記見かけの太陽方位角度と見かけの太陽高度角度から、各受熱体に対して時々刻々変化する日射分配率を演算することを特徴とする、室内の日射分配率変化演算システム。
【請求項7】
前記演算処理部の演算結果を出力する出力部を備え、前記
日射分配率を出力することを特徴とする、請求項6に記載の室内の日射分配率変化演算システム。
【請求項8】
前記プリ処理演算プロセスおいて実行される前記各受熱体に対する受熱状況は、前記室内の法線ベクトルが線形独立な3断面のいずれか2面の図面における前記室内に配置される各受熱体の射影幅と、前記窓の射影幅を設定して処理されることを特徴とする、請求項6または請求項7に記載の室内の日射分配率変化演算システム。
【請求項1】
複数の受熱体を有する室内に窓から太陽光が入射したときの前記各受熱体の受熱割合に基づいて各受熱体の受熱量を算出する受熱体の受熱量演算方法であって、
前記室内に対する太陽の位置に基づく太陽光の入射角に関するパラメータで、太陽光の室内への入射角を検出し、
前記入射角に基づいて、前記複数の受熱体のうち、一方の受熱体が最大受熱状況になるときの太陽光の入射熱量に対する受熱割合と、その時の他方の受熱体の太陽光の入射熱量に対する受熱割合とを受熱割合ベクトルとして定義した日射分配率ベクトルで、前記各受熱体の最大受熱状況になるときの日射分配率ベクトルを求め、
前記各受熱体の日射分配率ベクトル間を補間演算にて演算することで、前記各受熱体の受熱量を求めることを特徴とする受熱体の受熱量演算方法。
【請求項2】
前記室内の異なる2断面をもとに、各断面への窓の投影幅と各部材の外表面位置情報に基づいて太陽光の射影幅を求め、前記各断面の射影幅に基づいて前記各受熱体の日射分配率ベクトルを算出することを特徴とする請求項1に記載の受熱体の受熱量演算方法。
【請求項3】
前記日射分配率ベクトルは、前記各一方の断面の射影幅と他の断面の射影幅の積を演算することで算出することを特徴とする請求項2に記載の受熱体の受熱量演算方法。
【請求項4】
前記日射分配率ベクトルは、太陽高度角度と太陽方位角度をパラメータとしたマトリツクスとして演算することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の受熱体の受熱量演算方法。
【請求項5】
複数の受熱体を有する室内に窓から太陽光が入射したときの前記各受熱体の受熱割合に基づいて各受熱体の受熱量を算出する受熱体の受熱量演算装置であって、
前記室内に対する太陽の位置に基づく太陽光の入射角に関するパラメータを検出する入射角検出手段と
前記入射角検出手段によって検出された入射角に基づいて、前記複数の受熱体のうち、一方の受熱体が最大受熱状況になるときの太陽光の入射熱量に対する受熱割合と、その時の他方の受熱体の太陽光の入射熱量に対する受熱割合とを受熱割合ベクトルとして定義した日射分配率ベクトル演算手段と、
前記複数の受熱体の各日射分配率ベクトル間を補間演算にて演算する補間演算手段とを有することを特徴とする受熱体の受熱量演算装置。
【請求項6】
窓を透過して室内に入射する太陽光の方位と高度の変化により、室内に配置された複数の受熱体に対する日射分配率の変化を演算する際に、
準備段階のプリ処理演算プロセスとシミュレーション演算プロセスを含み、前記
プリ処理演算プロセスの実行後に、前記プリ処理演算プロセスの実行で得られた処理結果を用いたシミュレーション演算プロセスを実行する室内の日射分配率変化演算システムであって、
入力部と記憶部と演算処理部とを備え、
前記プリ処理演算プロセスにおいて、
前記入力部から前記演算処理部に、前記太陽光の窓透過後の前記各受熱体に対する受熱状況を出力し、
前記演算処理部は、前記記憶部から前記各受熱体における最大受熱角度に依存する日射分配率を有するベクトルのマトリックスを読み出して、前記入力部から入力された前記受熱状況と、前記記憶部から読み出したベクトルのマトリックスに基づいて、最大受熱角度における各受熱体の日射分配率を演算し、
前記シミュレーション演算プロセスにおいて、
前記入力部から前記演算処理部に、前記窓を透過する見かけの太陽の太陽方位角度と見かけの太陽高度角度を出力し、
前記演算処理部は、前記記憶部から前記ベクトルのマトリックスを読み出して、前記入力部から入力された前記見かけの太陽方位角度と見かけの太陽高度角度から、各受熱体に対して時々刻々変化する日射分配率を演算することを特徴とする、室内の日射分配率変化演算システム。
【請求項7】
前記演算処理部の演算結果を出力する出力部を備え、前記
日射分配率を出力することを特徴とする、請求項6に記載の室内の日射分配率変化演算システム。
【請求項8】
前記プリ処理演算プロセスおいて実行される前記各受熱体に対する受熱状況は、前記室内の法線ベクトルが線形独立な3断面のいずれか2面の図面における前記室内に配置される各受熱体の射影幅と、前記窓の射影幅を設定して処理されることを特徴とする、請求項6または請求項7に記載の室内の日射分配率変化演算システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【公開番号】特開2010−39963(P2010−39963A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−204999(P2008−204999)
【出願日】平成20年8月8日(2008.8.8)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年8月8日(2008.8.8)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
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