受電装置を用いた電子機器および非接触充電装置
【課題】電磁誘導で受電側に発生する渦電流を抑えることによって、渦電流に起因する発熱や充電効率の低下を抑制する。
【解決手段】電子機器1は受電装置2と電子機器本体3とを具備する。受電装置2はスパイラルコイルを有する受電コイル11と整流器12と二次電池13とを備える。電子機器本体3は電子デバイス14と回路基板15とを備える。スパイラルコイル11と二次電池13、整流器12、電子デバイス14、回路基板15との間の少なくとも1箇所には磁性箔体16が配置されている。
【解決手段】電子機器1は受電装置2と電子機器本体3とを具備する。受電装置2はスパイラルコイルを有する受電コイル11と整流器12と二次電池13とを備える。電子機器本体3は電子デバイス14と回路基板15とを備える。スパイラルコイル11と二次電池13、整流器12、電子デバイス14、回路基板15との間の少なくとも1箇所には磁性箔体16が配置されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は非接触充電に適用される受電装置を用いた電子機器並びに非接触充電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯型通信機器の発展は目覚ましいものがあり、とりわけ携帯電話機の小型軽薄化は急速に進められている。携帯電話機以外にも、ビデオカメラ(ハンディカメラ等)、コードレス電話機、ラップトップパソコン(ノート型パソコン)等の電子機器も小型軽薄化が進められている。これらは電子機器本体に二次電池を搭載することで、コンセントに繋ぐことなく使用可能とされており、携帯性や利便性を高めている。現在のところ、二次電池には容量に限界があり、数日〜数週間に1回は充電を行わなければならない。
【0003】
充電方法には接触充電方式と非接触充電方式とがある。接触充電方式は、受電装置の電極と給電装置の電極とを直接接触させて充電を行う方式である。接触充電方式はその装置構造が単純であることから一般的に用いられている。しかし、近年の電子機器の小型軽薄化に伴って電子機器の重さが軽くなり、受電装置の電極と給電装置の電極との接触圧が不足し、充電不良を起こすといった問題が生じている。さらに、二次電池は熱に弱いため、電池の温度上昇を防ぐために過放電や過充電を起こさないように回路を設計する必要がある。このような点から非接触充電方式の適用が検討されている。
【0004】
非接触充電方式は受電装置と給電装置の両方にコイルを設け、電磁誘導を利用して充電する方式である。非接触充電方式は電極同士の接触圧を考慮する必要がない。このため、電極同士の接触状態に左右されずに安定して充電電圧を供給することができる。非接触充電装置のコイルとしては、フェライトコアの周りにコイルを巻回した構造が知られている(特許文献1、2参照)。フェライト粉やアモルファス粉を混合した樹脂基板にコイルを実装した構造も知られている(特許文献3参照)。しかし、フェライトは薄く加工すると脆くなるため、耐衝撃性に弱く、機器の落下等で受電装置に不具合が生じやすい。
【0005】
さらに、機器の薄型化に対応して受電部分を薄型化するために、基板に金属粉ペーストをスパイラル状に印刷して形成された平面コイルの採用が検討されている。しかしながら、平面コイルを通る磁束が機器内部の基板等と鎖交するため、電磁誘導により発生する渦電流で装置内が発熱するという問題がある。このため、大きな電力を送信することができず、充電時間が長くなってしまう。具体的には、携帯電話機の充電に接触充電装置であれば90分程度であるのに対して、非接触充電装置では120分程度かかってしまう。
【0006】
上述したように、従来の非接触充電方式を適用した受電装置は電磁誘導で発生する渦電流への対策が不十分である。特に、受電装置は二次電池を具備していることから、熱の発生を極力抑えることが求められる。さらに、受電装置は電子機器本体に取り付けられることから、熱の発生は回路部品等に悪影響を与える。これらに起因して充電時に大きな電力を送信することができず、充電時間が長いといった問題が生じている。さらに、渦電流の発生はノイズの発生につながり、充電効率の低下要因となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−265814公報
【特許文献2】特開2000−23393公報
【特許文献3】特開平9−190938公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、電磁誘導で受電側に発生する渦電流を抑えることによって、渦電流に起因する発熱や充電効率の低下を抑制することを可能にした受電装置を用いた電子機器および非接触充電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の態様に係る電子機器は、スパイラルコイルを有する受電コイルと、前記受電コイルに発生した交流電圧を整流する整流器と、前記整流器で整流された直流電圧が充電される二次電池とを備える受電装置と、前記二次電池から前記直流電圧が供給されて動作する電子デバイスと、前記電子デバイスが実装された回路基板とを備える電子機器本体と、前記スパイラルコイルと前記二次電池との間、前記スパイラルコイルと前記整流器との間、前記スパイラルコイルと前記電子デバイスとの間、および前記スパイラルコイルと前記回路基板との間の少なくとも1箇所に配置され、厚さが5〜50μmの範囲の磁性箔体とを具備し、前記磁性箔体は、アモルファス合金薄帯を1〜3枚有するもの、Fe基微結晶合金薄帯を1〜3枚有するもの、センダスト磁性粒子を樹脂フィルム中に分散させた磁性シートを1枚有するもの、または樹脂フィルム上にFe−Co系磁性合金薄膜を設けた磁性シートを1枚有するもののいずれか1種であることを特徴としている。
【0010】
本発明の態様に係る非接触充電装置は、本発明の態様に係る電子機器と、前記電子機器の前記受電コイルと非接触で配置される給電コイルと、前記給電コイルに交流電圧を印加する電源とを備える給電装置とを具備し、前記給電コイルに発生させた磁束を前記受電コイルに伝達して電力を非接触で伝送することを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明の態様に係る電子機器は、スパイラルコイルと二次電池、整流器、電子デバイス、回路基板等との間の1箇所以上に磁性箔体を配置し、電磁誘導に起因する渦電流の発生を抑制している。従って、渦電流による発熱、ノイズ発生、受電効率の低下等を抑制することが可能となる。このような電子機器は、非接触充電を適用した各種の電子機器に有効に利用されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は本発明の第1の実施形態による電子機器の構成を示す図である。
【図2】図2は図1に示す電子機器の変形例の構成を示す図である。
【図3】図3は本発明の第2の実施形態による電子機器の構成を示す図である。
【図4】図4は本発明の実施形態における磁性箔体の外周部にはみ出し部を設けた例を示す断面図である。
【図5】図5は本発明の実施形態における磁性箔体の外周部にはみ出し部を設けた他の例を示す断面図である。
【図6】図6は本発明の実施形態における磁性箔体の外周部にはみ出し部を設けたさらに他の例を示す断面図である。
【図7】図7は本発明の実施形態における磁性箔体の中央部に開放部を設けた例を示す断面図である。
【図8】図8は本発明の実施形態における磁性箔体の中央部に開放部を設けた他の例を示す断面図である。
【図9】図9は本発明の実施形態における磁性箔体の中央部に開放部を設けたさらに他の例を示す断面図である。
【図10】図10は本発明の実施形態における磁性箔体にスリットを形成した例を示す平面図である。
【図11】図11は本発明の実施形態における磁性箔体にスリットを形成した他の例を示す平面図である。
【図12】図12は本発明の実施形態における磁性箔体にスリットを形成したさらに他の例を示す平面図である。
【図13】図13は本発明の実施形態における磁性箔体にスリットを形成したさらに他の例を示す平面図である。
【図14】図14は本発明の実施形態における磁性箔体にスリットを形成したさらに他の例を示す平面図である。
【図15】図15は本発明の実施形態の電子機器に複数の磁性箔体を配置した例を示す断面図である。
【図16】図16は本発明の実施形態による非接触充電装置の構成を示す図である。
【図17】図17は図16に示す非接触充電装置の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。図1および図2は本発明の第1の実施形態による電子機器の構成を示している。図1および図2に示す電子機器1は非接触充電方式を適用した受電装置2と電子機器本体3とを具備している。受電装置2や電子機器本体3は筐体4内に配置されており、これらによって電子機器1が構成されている。
【0014】
受電装置2は、スパイラルコイルを有する受電コイル11と、受電コイル11に発生した交流電圧を整流する整流器12と、整流器12で整流された直流電圧が充電される二次電池13とを備えている。電子機器本体3は、受電装置2の二次電池13に充電された直流電圧が供給されて動作する電子デバイス14と、電子デバイス14が実装された回路基板15とを備えている。電子機器本体3は電子デバイス14や回路基板15以外に電子機器1の機能や動作等に応じた部品や装置を備えていてもよい。
【0015】
受電コイル11を構成するスパイラルコイルとしては、銅線等の金属ワイヤを平面状態で巻回した平面コイル、金属粉ペーストをスパイラル状に印刷して形成した平面コイル等が用いられる。スパイラルコイルの巻回形状は、円形、楕円、四角形、多角形等、特に限定されるものではない。スパイラルコイルの巻回数も要求特性に応じて適宜設定される。
【0016】
整流器12としては、トランジスタやダイオード等の半導体素子が挙げられる。整流器12の個数は任意であり、必要に応じて1個または2個以上の整流器12が用いられる。整流器12はTFT等の成膜技術で形成したものであってもよい。図1および図2において、整流器12は回路基板15の受電コイル11側に設置される。整流器12は回路基板15の受電コイル11とは反対側の面に設けてもよい。二次電池13は充放電が可能なものであり、平板型やボタン型等の種々の形状のものを使用することができる。
【0017】
電子デバイス14には、抵抗素子、容量素子、インダクタンス素子、制御素子、記憶素子等、回路を構成する各種の素子や部品が含まれる。さらに、これら以外の部品や装置であってもよい。回路基板15は樹脂基板やセラミックス基板等の絶縁基板の表面や内部に回路を形成したものである。電子デバイス14は回路基板15に実装されている。電子デバイス14は回路基板15に実装されていないものを含んでいてもよい。
【0018】
第1の実施形態の電子機器1は、例えば図1に示すように、スパイラルコイル(受電コイル)11と二次電池13との間に設置された磁性箔体16を具備している。すなわち、スパイラルコイル11と二次電池13とは磁性箔体16を挟んで配置されている。スパイラルコイル11はその少なくとも一部として平面部を有し、この平面部は磁性箔体16の表面に沿って配置されている。受電装置2として見た場合、それを構成するスパイラルコイル11と二次電池13との間に磁性箔体16が配置されていることになる。
【0019】
磁性箔体16は図2に示すように、二次電池13と回路基板15との間に設置してもよい。この場合、磁性箔体16はスパイラルコイル11と回路基板15との間に配置されていることになる。さらに、磁性箔体16はスパイラルコイル11と整流器12との間やスパイラルコイル11と電子デバイス14との間に配置してもよい。磁性箔体16はこれら各箇所のうち1箇所以上に配置される。磁性箔体16は2箇所もしくはそれ以上の箇所に配置されていてもよい。
【0020】
図3は第2の実施形態による電子機器を示している。図3に示す電子機器1において、スパイラルコイル11は二次電池13の周囲に設置されている。言い換えると、二次電池13はスパイラルコイル11の中央付近に設けられた空洞部内に設置されている。磁性箔体16はスパイラルコイル11と回路基板15との間に加えて、スパイラルコイル11と二次電池13との間にも存在するように、中央付近を突出させた形状を有している。なお、図3では整流器12や電子デバイス13の図示を省略している。
【0021】
第2の実施形態の電子機器1においても、磁性箔体16はスパイラルコイル11と回路基板15との間、スパイラルコイル11と整流器12との間、スパイラルコイル11と電子デバイス14との間に配置してもよい。磁性箔体16はこれら各箇所のうち1箇所以上に配置される。磁性箔体16は2箇所もしくはそれ以上の箇所に配置されていてもよい。
【0022】
電子機器1の横幅を小さくするためには第1の実施形態の構造が好ましい。電子機器1の厚さを薄くするためには第2の実施形態の構造が好ましい。これらの形態は適用する電子機器1の構造等に併せて適宜選択される。電子機器1の構成は図1ないし図3に限られるものではない。スパイラルコイル11と二次電池13と回路基板15との配置は種々に変更が可能である。例えば、上側から二次電池、回路基板、スパイラルコイルを順に配置してもよい。磁性箔体は例えば回路基板とスパイラルコイルとの間に配置される。
【0023】
スパイラルコイル11と回路基板15との間に磁性箔体16を配置する場合、単にスパイラルコイル11/磁性箔体16/回路基板15を積層するだけでもよいし、これらの間を接着剤やろう材で固定してもよい。他の場合も同様であり、各構成要素を積層するだけでもよいし、それらの間を接着剤やろう材で固定してもよい。
【0024】
上述したように、スパイラルコイル11と二次電池13との間、スパイラルコイル11と整流器12との間、スパイラルコイル11と電子デバイス14との間、スパイラルコイル11と回路基板15との間の少なくとも1箇所に磁性箔体16を配置することによって、充電時にスパイラルコイル11を通る磁束を磁性箔体16でシールドすることができる。従って、電子機器1内部の回路基板15等と鎖交する磁束が減少するため、電磁誘導による渦電流の発生を抑制することが可能となる。磁性箔体16の厚さは設置性や磁束の遮断性等を考慮して5〜500μmの範囲とすることが好ましい。この厚さは複数の磁性シートを積層した際の絶縁層や基材等の厚さを含めたものである。
【0025】
渦電流の影響を抑制することによって、回路基板15に実装された電子デバイス14や整流器12の発熱、また回路基板15の回路の発熱、さらに渦電流に起因するノイズの発生を抑制することができる。電子機器1内部における発熱の抑制は、二次電池13の性能や信頼性の向上に寄与する。さらに、渦電流による発熱を抑制することで、受電装置2に供給する電力を増大させることができる。磁性箔体16はスパイラルコイル11に対する磁心としても機能するため、受電効率ひいては充電効率を高めることが可能となる。これらは電子機器1に対する充電時間の短縮に寄与する。
【0026】
磁性箔体16としては、磁性合金薄帯(磁性合金リボン)、磁性粒子を樹脂フィルム中に分散させた磁性シート、樹脂フィルムのようなフレキシブル基材上に磁性薄膜を設けた磁性シート等が用いられる。磁性合金薄帯は樹脂フィルムのようなフレキシブル基材と接着して磁性シートとして用いてもよい。磁性箔体16には各種の軟磁性材料を適用することができる。磁性箔体16の具体的な構成としては以下に示すようなものが挙げられる。
【0027】
磁性合金薄帯は、Co基アモルファス合金、Fe基アモルファス合金、またはFe基微結晶合金で構成することが好ましい。これら磁性材料はいずれもロール急冷法(単ロールまたは双ロール)で作製できることから、平均板厚が50μm以下の薄帯を容易に得ることができる。平均板厚が50μm以下の磁性合金薄帯は、後述する折曲部や開放部の形成加工が行いやすいために好ましい。折曲等の加工性を考慮すると、平均板厚は35μm以下がさらに好ましい。平均板厚は5μm以上とすることが好ましい。平均板厚が5μm未満の磁性合金薄帯は、折曲加工を行った際に薄帯の破断等の不具合が生じやすい。
【0028】
磁性合金薄帯を構成するアモルファス合金は、
一般式:(T1−aMa)100−bXb …(1)
(式中、TはCoおよびFeから選ばれる少なくとも1種の元素を、MはNi、Mn、Cr、Ti、Zr、Hf、Mo、V、Nb、W、Ta、Cu、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、ReおよびSnから選ばれる少なくとも1種の元素を、XはB、Si、CおよびPから選ばれる少なくとも1種の元素を示し、aおよびbは0≦a≦0.3、10≦b≦35at%を満足する数である)
で表される組成を有することが好ましい。(1)式において、元素TがCoとFeの両方を含んでいる場合、Coが多ければCo基アモルファス合金、Feが多ければFe基アモルファス合金と呼称する。
【0029】
(1)式において、元素Tは磁束密度、磁歪値、鉄損等の要求される磁気特性に応じて組成比率を調整するものとする。元素Mは熱安定性、耐食性、結晶化温度の制御等のために添加される元素である。元素Mの添加量はaの値として0.3以下とすることが好ましい。元素Mの添加量があまり多すぎると相対的に元素Tの量が減少することから、アモルファス磁性合金薄帯の磁気特性が低下する。元素Mの添加量を示すaの値は実用的には0.01以上とすることが好ましい。aの値は0.15以下とすることがより好ましい。
【0030】
元素Xはアモルファス合金を得るために必須の元素である。特に、B(ホウ素)は磁性合金のアモルファス化に有効な元素である。Si(けい素)はアモルファス相の形成を助成したり、また結晶化温度の上昇に有効な元素である。元素Xの含有量があまり多すぎると透磁率の低下や脆さが生じ、逆に少なすぎるとアモルファス化が困難になる。このようなことから、元素Xの含有量は10〜35at%の範囲とすることが好ましい。元素Xの含有量は15〜25at%の範囲とすることがさらに好ましい。
【0031】
Fe基微結晶合金薄帯としては、
一般式:Fe100−c−d−e−f−g−hAcDdEeSifBgZh …(2)
(式中、AはCuおよびAuから選ばれる少なくとも1種の元素を、DはTi、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Ni、Coおよび希土類元素から選ばれる少なくとも1種の元素を、EはMn、Al、Ga、Ge、In、Snおよび白金族元素から選ばれる少なくとも1種の元素を、ZはC、NおよびPから選ばれる少なくとも1種の元素を示し、c、d、e、f、gおよびhは0.01≦c≦8at%、0.01≦d≦10at%、0≦e≦10at%、10≦f≦25at%、3≦g≦12at%、15≦f+g+h≦35at%を満足する数である)
で実質的に表される組成を有するFe基合金からなり、かつ面積比で金属組織の20%以上が粒径50nm以下の微結晶粒からなるものが挙げられる。
【0032】
(2)式において、元素Aは耐食性を高め、結晶粒の粗大化を防ぐと共に、鉄損や透磁率等の磁気特性を改善する元素である。元素Aの含有量があまり少ないと結晶粒の粗大化抑制効果を十分に得ることができず、逆にあまり多すぎると磁気特性が劣化する。従って、元素Aの含有量は0.01〜8at%の範囲とすることが好ましい。元素Dは結晶粒径の均一化や磁歪の低減等に有効な元素である。元素Dの含有量は0.01〜10at%の範囲とすることが好ましい。
【0033】
元素Eは軟磁気特性や耐食性の改善に有効な元素である。元素Eの含有量は10at%以下とすることが好ましい。SiおよびBは薄帯製造時における合金のアモルファス化を助成する元素である。Siの含有量は10〜25at%の範囲、Bの含有量は3〜12at%の範囲とすることが好ましい。SiおよびB以外のアモルファス化助成元素として元素Zを含んでいてもよい。その場合、Si、Bおよび元素Zの合計含有量は15〜35at%の範囲とすることが好ましい。微結晶構造は、特に粒径が5〜30nmの結晶粒を合金中に面積比で50〜90%の範囲で存在させた形態とすることが好ましい。
【0034】
アモルファス合金薄帯は、例えばロール急冷法(溶湯急冷法)により作製される。具体的には、所定の組成比に調整した合金素材を溶融状態から急冷することにより作製される。微結晶合金薄帯は、例えば液体急冷法によりアモルファス合金薄帯を作製した後、その結晶化温度に対して−50〜+120℃の範囲の温度で1分〜5時間の熱処埋を行い、微結晶粒を析出させることにより得ることができる。液体急冷法の急冷速度を制御して微結晶粒を直接析出させる方法によっても、微結晶合金薄帯を得ることができる。
【0035】
アモルファス合金薄帯やFe基微結晶合金薄帯からなる磁性合金薄帯の平均厚さは5〜50μmの範囲とすることが好ましい。磁性合金薄帯の平均厚さが50μmを超えると透磁率が低くなり、また損失が大きくなるおそれがある。磁性合金薄帯の平均厚さを5μm未満としても、それ以上の効果が得られないばかりでなく、逆に製造コストの増加を招くことになる。磁性合金薄帯の厚さは5〜35μmの範囲とすることがより好ましく、さらに好ましくは10〜25μmの範囲である。
【0036】
磁性粒子を樹脂フィルム中に分散させた磁性シートを磁性箔体16として用いる場合、磁性粒子としてはセンダスト粉末(Fe−Si−Al系磁性合金粉末)、Fe−Ni系磁性合金粉末、Fe−Cr系磁性合金粉末、Co基アモルファス合金粉末、Fe基アモルファス合金粉末等の金属系磁性粉末や、フェライト粉末等の酸化物系磁性粉末が用いられる。磁性粒子を分散させる樹脂としては、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂、塩化ビニル樹脂等が用いられる。必要に応じてビヒクルやSiO2粒子のような無機充填材等を添加してもよい。
【0037】
樹脂フィルム上に磁性薄膜を形成した磁性シートを磁性箔体16として用いる場合、磁性薄膜としてはFe68Co17Zr15等のFe−Co系合金、Co35.6Fe50B14.4のようなCo−Fe−B系合金、Fe−Ni系合金等の薄膜が用いられる。磁性薄膜には軟磁性を示す各種材料が適用可能である。磁性薄膜はスパッタ法、蒸着法、CVD法、メッキ法等で形成される。膜構造はアモルファス、グラニュラ、ナノクリスタル、ヘテロアモルファス等、特に限定されるものではない。磁性薄膜を形成する樹脂フィルムには、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂等が用いられる。樹脂フィルム上に磁性薄膜をスパッタ法等の成膜することによって、磁性箔体16を薄型化することができる。
【0038】
磁性粒子を有する磁性シートにおいて、磁性粒子の平均粒子径は30μm以下であることが好ましい。平均粒子径とは粒子体積と同等の体積を有する球状粒子の粒子径の平均値を示すものである。平均粒子径が30μm以下の磁性粒子によれば、薄い可塑性を有する磁性シートを作製しやすい。磁性シートを構成する樹脂フィルムの厚さは20〜500μmの範囲とすることが好ましい。また、磁性薄膜を有する磁性シートにおいて、磁性薄膜の厚さは2〜100μmの範囲とすることが好ましい。磁性薄膜を形成する樹脂フィルムの厚さは5〜50μmの範囲とすることが好ましい。
【0039】
次に、渦電流による不具合をさらに抑制する方法および構造について説明する。磁性箔体16は図4に示すように、その外周端部をスパイラルコイル11の外周部より外側まで延在させることが好ましい。図4において、doは磁性箔体16のスパイラルコイル11の外側にはみ出した部分(はみ出し部)である。このような構造とすることによって、スパイラルコイル11に生じた磁束をより効果的に磁性箔体16で遮断することができる。これは基板等と鎖交する磁束に基づく渦電流の抑制、さらに渦電流による発熱や受電効率の低下の抑制に大きく寄与するものである。
【0040】
磁性箔体16のはみ出し部分doは図5や図6に示すように、回路基板15とは反対側(スパイラルコイル11側)に折り曲げてもよい。図5および図6において、磁性箔体16はその外周端部を回路基板15とは反対側に折り曲げた折曲部16aを有している。折曲部16aの形状は、図5に示すように複数回折り曲げてもよいし、図6に示すように1回折り曲げるだけでもよい。磁性箔体16の外周部をスパイラルコイル11側に折り曲げることによって、渦電流の抑制効果をさらに高めることができる。
【0041】
さらに、磁性箔体16はスパイラルコイル11の磁心としても機能する。この場合、磁性箔体16の外周端部をスパイラルコイル11側に折り曲げることによって、磁心としての磁性箔体16と給電コイル(1次コイル)とのギャップを小さくすることができる。これによって、受電効率を高めることが可能となる。この際、給電コイルに近接させる磁性箔体16の面積が大きいほど効果がある。このため、図5に示すように、磁性箔体16の外周端部を給電コイルの巻回面法線と略平行な方向に向けることによって、より効果的に磁気回路を形成して受電効率を高めることが可能となる。
【0042】
磁性箔体16の中央部には、図7、図8および図9に示すように開放部16bを設けてもよい。磁性箔体16の開放部16bは、スパイラルコイル11の中心部に対応する位置に設けられる。開放部16bの形状は、図7に示すような磁性箔体16の中央部をスパイラルコイル11の方向に窪ませた形状(凸形状)、図8に示すような磁性箔体16の中央部に穴を開けた形状、図9に示すような磁性箔体16の中央部を折り曲げた形状等が挙げられる。開放部16bを設けて給電コイル(1次コイル)とのギャップを小さくすることによって、より効果的に磁気回路を形成して受電効率を高めることが可能となる。
【0043】
図8において、diは磁性箔体16のスパイラルコイル11より内側に存在させた部分を示している。図9に示す折り曲げ部分は、磁性箔体16のスパイラルコイル11より内側に存在させた部分diをスパイラルコイル11の方向に折り曲げたものである。磁性箔体16の外周部をスパイラルコイル11の外側にはみ出させた構造と中央部に開放部を設けた構造はそれぞれ単独で用いてもよいし、また両方を採用してもよい。これらの構造を両方採用した方が受電効率の向上効果がより顕著になる。なお、図4ないし図9では整流器12、二次電池13、電子デバイス13の図示を省略している。図15も同様である。
【0044】
さらに、磁性箔体16内の渦電流を抑制するために、磁性箔体16にはスリットを設けることが好ましい。磁性箔体16はスリットで複数に分割し、電気路(または電流路)を分断することがより有効である。スリットを設けた磁性箔体16の例を図10ないし図14に示す。これらの図において、符号17はスリットを示している。スリット17が磁性箔体16を切断している場合、それは磁性箔体16の分割線に相当する。
【0045】
図10は磁性箔体16の縦横に直交するスリット17を形成した状態を示している。図10に示す磁性箔体16は四分割されている。図11は磁性箔体16の縦横にそれぞれ複数本のスリット17を形成した状態を示している。図11に示すように、複数本のスリット17を形成する場合、スリット17のサイズやスリット17同士の間隔は任意である。図12は磁性箔体16の対角線方向に直交するスリット17を形成した状態を示している。このように、スリット17は水平や垂直に限らず、角度を付けて形成してもよい。図示しないが、スリットは放射線状に形成してもよい。
【0046】
図13は磁性箔体16の片方の端から途中までスリット17を設けた状態を示している。スリット17は対向する辺の両方から反対側の辺に向けてそれぞれ形成されている。図14は磁性箔体16の両端から途中までのスリット17を形成し、さらに中央付近にもスリット17を形成した状態を示している。電気路を分断する際、スパイラルコイル11の中央部になるほど磁束が大きくなるため、分割後の磁性箔体16の面積が中央部になるほど小さくなるように、スリット17を設けることが効果的である。ただし、スリット数(分割数)を多くすると磁気抵抗が大きくなるために受電効率は低下する。このため、渦電流の抑制効果と受電効率の両方を考慮してスリット17を設けることが好ましい。
【0047】
渦電流の抑制効果と受電効率の両方を向上させためには、複数枚の磁性箔体を用いることが有効である。複数枚の磁性箔体を用いた例を図15に示した。図15に示す電子機器1においては、スパイラルコイル11と回路基板15との間に3枚の磁性箔体16A、16B、16Cを配置している。磁性箔体16Aは図10に示したようなスリット17を有している。磁性箔体16Bは図11に示したスリット17を有している。磁性箔体16Cはスリットを有しておらず、外周部を折り曲げたものである。
【0048】
このように、折曲部16aを設けた磁性箔体16Cとスリット17を設けた磁性箔体16A、16Bの両方を用いることによって、渦電流の抑制効果と受電効率の両方を高めることができる。スリット17を形成した磁性箔体16は開放部16bを設けた磁性箔体16組合せてもよいし、折曲部16aと開放部16bの両方を具備する磁性箔体16とスリット17を形成した磁性箔体16とを組合せてもよい。3枚以上(n枚以上)の磁性箔体16を用いる場合、そのうち2枚((n−1)枚)を同一形状(構造)の磁性箔体16としてもよいし、3枚(n枚)の磁性箔体16全てに同じものを用いてもよい。
【0049】
上述した実施形態の受電装置2とそれを用いた電子機器1においては、スパイラルコイル11を鎖交した磁束に起因する渦電流が抑制されるため、機器内部の発熱を低下させることができると共に、受電効率を向上させることが可能となる。これによって、給電時の電力を大きくすることができ、充電時間の短縮を図ることができる。この実施形態の電子機器1は携帯電話機、携帯型オーディオ機器、デジタルカメラ、ゲーム機等に好適である。このような電子機器1は給電装置にセットして非接触充電が行われる。
【0050】
図16は本発明の実施形態による非接触充電装置の構成を示している。図17は図16に示す非接触充電装置の回路図である。図16および図17に示す非接触充電装置20において、電子機器1は前述した実施形態で示したものである。図16において、矢印は磁束の流れを示している。図17において、符号21は平滑用のコンデンサである。給電装置30は給電コイル31と給電コイル用磁心32と給電コイル31に交流電圧を印加する電源33とを備えている。電子機器1を給電装置30上にセットした際、給電コイル31は受電コイル11と非接触で配置される。
【0051】
非接触充電装置20による充電は以下のようにして行われる。まず、給電装置30の給電コイル31に電源33から交流電圧を印加し、給電コイル31に磁束を生じさせる。給電コイル31に発生させた磁束は、給電コイル31と非接触で配置された受電コイル11に伝達される。受電コイル11では磁束を受けて電磁誘導で交流電圧が生じる。この交流電圧は整流器12で整流される。整流器12で整流された直流電圧は二次電池13に充電される。このように、非接触充電装置20においては非接触で電力の伝送が行われる。
【0052】
次に、本発明の具体的な実施例およびその評価結果について述べる。
【0053】
(充電システム)
非接触充電システムとして携帯電話機用の充電システムを用意した。給電装置はAC電源からの電力を制御回路を通して一定の電磁波に変換し、この電磁波を送信する一次コイル(給電コイル)を置き台の近傍に配置したものである。携帯電話機は受電装置としてスパイラルコイルからなる二次コイル(受電コイル)と二次コイルに生じた交流電力を整流する整流器が実装された回路基板と二次電池とを具備している。二次コイルは銅線を外周30mm、内周23mmに平面状に巻回したものである。
【0054】
(比較例1)
上記した携帯電話機において、磁性箔体を用いずに受電装置を構成した。これを用いた携帯電話機と非接触充電装置を比較例1とした。
【0055】
(比較例2)
回路基板にフェライト粉を含有させた樹脂基板を用いる以外は、比較例1と同様の受電装置を構成した。これを用いた携帯電話機と非接触充電装置を比較例2とした。
【0056】
(実施例1)
磁性箔体として、平均厚さが15μmで、組成がCo74Fe4Si8B14(原子比)のアモルファス合金薄帯を用意した。アモルファス合金薄帯の外周部のはみ出し量をdo=6mmとし、これを3枚積層して配置した。3枚のアモルファス合金薄帯は図1に示したように、二次コイル(受電コイル11)と二次電池13との間に配置した。このような磁性箔体を有する受電装置を用いた携帯電話機と非接触充電装置を実施例1とした。
【0057】
(実施例2〜5)
実施例2では外周部のはみ出し量がdo=3mmのアモルファス合金薄帯を3枚積層した。実施例3ではdo=0mmのアモルファス合金薄帯を3枚積層した。実施例4では外周部のはみ出し量がdo=−3mmのアモルファス合金薄帯を3枚積層した。実施例5では外周部のはみ出し量がdo=6mmのアモルファス合金薄帯を単層で用いた。これらアモルファス合金薄帯を実施例1と同様に、二次コイル(受電コイル11)と回路基板15との間に配置して受電装置をそれぞれ構成した。これらの受電装置を用いた携帯電話機と非接触充電装置を実施例2〜5とした。
【0058】
(実施例6)
実施例1と同一のアモルファス合金薄帯のはみ出し部(do=6mm)を、図5に示したように折り曲げて折曲部を形成した。このようなアモルファス合金薄帯を3枚積層し、実施例1と同様に二次コイル(受電コイル11)と回路基板15との間に配置して受電装置を構成した。この受電装置を用いた携帯電話機と非接触充電装置を実施例6とした。
【0059】
(実施例7)
平均粒子径が20μmのセンダスト粉末を体積占有率が50%となるようにシリコーン樹脂に分散させ、これを厚さ50μmのシート状に成形した。このような磁性シートを磁性箔体として用いる以外は、実施例6と同様にして受電装置を構成した。この受電装置を用いた携帯電話機と非接触充電装置を実施例7とした。
【0060】
(実施例8)
厚さ25μmのポリイミドフィルム上にスパッタ法でSiO2膜とTi膜を順に成膜した。次いで、Fe68Co17Zr15(原子比)組成のスパッタターゲットとSiO2ターゲットとを用いて、RFスパッタ法で磁性薄膜を成膜し、さらにその上にSiO2膜を成膜した。磁性薄膜の成膜とSiO2膜の成膜を4回繰り返した。成膜した膜の構造は、[SiO2(0.05)/FeCoZrSiO(0.5)]×4/Ti(0.01)/SiO2(0.03)/ポリイミドフィルム(25)/SiO2(0.03)/Ti(0.01)/[FeCoZrSiO(0.5)/SiO2(0.05)]×4である。括弧内の数字は厚さ(μm)である。
【0061】
上述した成膜工程をポリイミドフィルムの両面に対して行って磁性シートを作製した。このような磁性シートを磁性箔体として用いる以外は、実施例6と同様にして受電装置を構成した。この受電装置を用いた携帯電話機と非接触充電装置を実施例8とした。
【0062】
(実施例9)
実施例8と同一構成の磁性シートの中央部に、図7に示したような開放部を設けた。これを磁性箔体として用いる以外は、実施例8と同様にして受電装置を構成した。この受電装置を用いた携帯電話機と非接触充電装置を実施例9とした。
【0063】
(実施例10)
実施例8と同一構成の磁性シートの中央部に、図8に示したような開放部を設けた。中央部のはみ出し量はdi=3mmとした。このような磁性シートを磁性箔体として用いる以外は、実施例8と同様にして受電装置を構成した。この受電装置を用いた携帯電話機と非接触充電装置を実施例9とした。
【0064】
(実施例11)
実施例10による磁性シートの中央部のはみ出し量をdi=0mmとする以外は、実施例8と同様にして受電装置を構成した。この受電装置を用いた携帯電話機と非接触充電装置を実施例11とした。
【0065】
(実施例12)
実施例10による磁性シートの中央部のはみ出し量をdi=−3mmとする以外は、実施例8と同様にして受電装置を構成した。この受電装置を用いた携帯電話機と非接触充電装置を実施例12とした。
【0066】
(実施例13)
実施例10による磁性シートの中央のはみ出し部(di=3mm)を、図9に示したように折り曲げた。これを磁性箔体として用いる以外は、実施例8と同様にして受電装置を構成した。この受電装置を用いた携帯電話機と非接触充電装置を実施例13とした。
【0067】
(実施例14)
実施例8と同一構成の磁性シートに、図10に示したように縦横にスリットを1本ずつ形成した。スリットの幅は100μmとした。このようなスリットを有する磁性シートを磁性箔体として用いる以外は、実施例8と同様にして受電装置を構成した。この受電装置を用いた携帯電話機と非接触充電装置を実施例14とした。
【0068】
(実施例15)
実施例8と同一構成の磁性シートに、図11に示したように縦横それぞれに複数のスリットを形成した。スリットは中央に行くにしたがって周期(形成ピッチ)が狭くなるようにした。スリットの幅は50〜1000μmの範囲とした。このようなスリットを有する磁性シートを磁性箔体として用いる以外は、実施例8と同様にして受電装置を構成した。この受電装置を用いた携帯電話機と非接触充電装置を実施例15とした。
【0069】
(実施例16)
実施例8と同一構成の磁性シートに複数本のスリットを放射状に形成した。この磁性シートを磁性箔体として用いる以外は、実施例8と同様にして受電装置を構成した。この受電装置を用いた携帯電話機と非接触充電装置を実施例16とした。
【0070】
(実施例17)
実施例8と同一構成の磁性シートに、図13に示したように箔体の端部から途中までのスリットを複数本形成した。このようなスリットを有する磁性シートを磁性箔体として用いる以外は、実施例8と同様にして受電装置を構成した。この受電装置を用いた携帯電話機と非接触充電装置を実施例17とした。
【0071】
(実施例18)
実施例8と同一構成の磁性シートに、図14に示したように箔体の端部から途中までのスリットと独立したスリットの両方を複数本形成した。このようなスリットを有する磁性シートを磁性箔体として用いる以外は、実施例8と同様にして受電装置を構成した。この受電装置を用いた携帯電話機と非接触充電装置を実施例18とした。
【0072】
(実施例19)
実施例1で用いた3枚のアモルファス合金薄帯のうち、2枚はそのままとし、1枚は外周部を折り曲げて折曲部を形成した(図15参照)。このような3枚のアモルファス合金薄帯を用いる以外は、実施例1と同様にして受電装置を構成した。この受電装置を用いた携帯電話機と非接触充電装置を実施例19とした。
【0073】
(実施例20)
図3に示したように、スパイラルコイルを二次電池の周囲に配置した。さらに、実施例1と同一構成の3枚のアモルファス合金薄帯を、図3に示したようにスパイラルコイルと回路基板との間とスパイラルコイルと二次電池との間に存在するように折り曲げて配置した。このようなアモルファス合金薄帯を用いる以外は、実施例1と同様にして受電装置を構成した。この受電装置を用いた携帯電話機と非接触充電装置を実施例20とした。
【0074】
上述した実施例1〜20および比較例1〜2の構成を表1にまとめて示す。さらに、各実施例および比較例について、受電効率、発熱量、厚さ・自由度を測定並びに評価した。その結果を表2に示す。受電効率は、比較例1の充電時間を100としたとき、充電時間が比較例1に対して改善を確認できなかったものを×、充電時間が10%未満の範囲で短くなったものを△、充電時間が10%以上50%未満の範囲で短くなったものを○、充電時間が50%以上の範囲で短くなったものを◎と表示した。なお、充電時間の測定の際には給電側の電力を一定にして比較を行った。
【0075】
発熱量は、比較例1を100としたとき、熱ロスの改善が確認できなかったものを×、熱ロスの改善が5%未満のものを△、熱ロスの改善が5%以上20%未満のものを○、熱ロスの改善が20%以上のものを◎と表記した。なお、発熱量の測定は上記した充電効率を測定した際の発熱量を測定した。すなわち、渦電流による不具合が生じない程度に電力を大きくしたときの発熱量である。「厚さ・自由度」については、磁性箔体や磁性基板の厚さを50μm以下と薄型にできるか、回路基板や二次電池等の各パーツの配置に制限がないかについて検討した。薄型化が可能で各パーツの配置に制限がないものを○、どちらか一方または両方が制限されるものを×と表記した。
【0076】
【表1】
【0077】
【表2】
【0078】
表2から明らかなように、磁性箔体を配置することで発熱量を抑制できると共に、受電効率を高めることが可能となる。さらに、磁性箔体の外周部にはみ出し部を設けたり、はみ出し部に折曲部を形成したり、また磁性箔体の中央部に開放部を設ける等によって、発熱量の抑制効果や受電効率の向上効果をさらに高めることができる。磁性箔体にスリットを形成することも有効である。これらは組合せることで効果が向上する。
【0079】
なお、本発明は上記した実施形態に限られるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は可能な範囲で適宜組合せて実施することができ、その場合には組合せた効果が得られる。さらに、上記実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組合せにより種々の発明が抽出され得る。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明の態様に係る電子機器は、スパイラルコイルと二次電池、整流器、電子デバイス、回路基板等との間の1箇所以上に磁性箔体を配置し、電磁誘導に起因する渦電流の発生を抑制している。従って、渦電流による発熱、ノイズ発生、受電効率の低下等を抑制することが可能となる。このような受電装置および電子機器は、非接触充電を適用した各種の電子機器に有効に利用されるものである。
【符号の説明】
【0081】
1…電子機器、2…受電装置、3…電子機器本体、4…筐体、11…スパイラルコイル(受電コイル)、12…整流器、13…二次電池、14…電子デバイス、15…回路基板、16…磁性箔体、16a…折曲部、16b…開放部、17…スリット、20…非接触充電装置、30…給電装置、31…給電コイル、32…磁心、33…電源。
【技術分野】
【0001】
本発明は非接触充電に適用される受電装置を用いた電子機器並びに非接触充電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯型通信機器の発展は目覚ましいものがあり、とりわけ携帯電話機の小型軽薄化は急速に進められている。携帯電話機以外にも、ビデオカメラ(ハンディカメラ等)、コードレス電話機、ラップトップパソコン(ノート型パソコン)等の電子機器も小型軽薄化が進められている。これらは電子機器本体に二次電池を搭載することで、コンセントに繋ぐことなく使用可能とされており、携帯性や利便性を高めている。現在のところ、二次電池には容量に限界があり、数日〜数週間に1回は充電を行わなければならない。
【0003】
充電方法には接触充電方式と非接触充電方式とがある。接触充電方式は、受電装置の電極と給電装置の電極とを直接接触させて充電を行う方式である。接触充電方式はその装置構造が単純であることから一般的に用いられている。しかし、近年の電子機器の小型軽薄化に伴って電子機器の重さが軽くなり、受電装置の電極と給電装置の電極との接触圧が不足し、充電不良を起こすといった問題が生じている。さらに、二次電池は熱に弱いため、電池の温度上昇を防ぐために過放電や過充電を起こさないように回路を設計する必要がある。このような点から非接触充電方式の適用が検討されている。
【0004】
非接触充電方式は受電装置と給電装置の両方にコイルを設け、電磁誘導を利用して充電する方式である。非接触充電方式は電極同士の接触圧を考慮する必要がない。このため、電極同士の接触状態に左右されずに安定して充電電圧を供給することができる。非接触充電装置のコイルとしては、フェライトコアの周りにコイルを巻回した構造が知られている(特許文献1、2参照)。フェライト粉やアモルファス粉を混合した樹脂基板にコイルを実装した構造も知られている(特許文献3参照)。しかし、フェライトは薄く加工すると脆くなるため、耐衝撃性に弱く、機器の落下等で受電装置に不具合が生じやすい。
【0005】
さらに、機器の薄型化に対応して受電部分を薄型化するために、基板に金属粉ペーストをスパイラル状に印刷して形成された平面コイルの採用が検討されている。しかしながら、平面コイルを通る磁束が機器内部の基板等と鎖交するため、電磁誘導により発生する渦電流で装置内が発熱するという問題がある。このため、大きな電力を送信することができず、充電時間が長くなってしまう。具体的には、携帯電話機の充電に接触充電装置であれば90分程度であるのに対して、非接触充電装置では120分程度かかってしまう。
【0006】
上述したように、従来の非接触充電方式を適用した受電装置は電磁誘導で発生する渦電流への対策が不十分である。特に、受電装置は二次電池を具備していることから、熱の発生を極力抑えることが求められる。さらに、受電装置は電子機器本体に取り付けられることから、熱の発生は回路部品等に悪影響を与える。これらに起因して充電時に大きな電力を送信することができず、充電時間が長いといった問題が生じている。さらに、渦電流の発生はノイズの発生につながり、充電効率の低下要因となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−265814公報
【特許文献2】特開2000−23393公報
【特許文献3】特開平9−190938公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、電磁誘導で受電側に発生する渦電流を抑えることによって、渦電流に起因する発熱や充電効率の低下を抑制することを可能にした受電装置を用いた電子機器および非接触充電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の態様に係る電子機器は、スパイラルコイルを有する受電コイルと、前記受電コイルに発生した交流電圧を整流する整流器と、前記整流器で整流された直流電圧が充電される二次電池とを備える受電装置と、前記二次電池から前記直流電圧が供給されて動作する電子デバイスと、前記電子デバイスが実装された回路基板とを備える電子機器本体と、前記スパイラルコイルと前記二次電池との間、前記スパイラルコイルと前記整流器との間、前記スパイラルコイルと前記電子デバイスとの間、および前記スパイラルコイルと前記回路基板との間の少なくとも1箇所に配置され、厚さが5〜50μmの範囲の磁性箔体とを具備し、前記磁性箔体は、アモルファス合金薄帯を1〜3枚有するもの、Fe基微結晶合金薄帯を1〜3枚有するもの、センダスト磁性粒子を樹脂フィルム中に分散させた磁性シートを1枚有するもの、または樹脂フィルム上にFe−Co系磁性合金薄膜を設けた磁性シートを1枚有するもののいずれか1種であることを特徴としている。
【0010】
本発明の態様に係る非接触充電装置は、本発明の態様に係る電子機器と、前記電子機器の前記受電コイルと非接触で配置される給電コイルと、前記給電コイルに交流電圧を印加する電源とを備える給電装置とを具備し、前記給電コイルに発生させた磁束を前記受電コイルに伝達して電力を非接触で伝送することを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明の態様に係る電子機器は、スパイラルコイルと二次電池、整流器、電子デバイス、回路基板等との間の1箇所以上に磁性箔体を配置し、電磁誘導に起因する渦電流の発生を抑制している。従って、渦電流による発熱、ノイズ発生、受電効率の低下等を抑制することが可能となる。このような電子機器は、非接触充電を適用した各種の電子機器に有効に利用されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は本発明の第1の実施形態による電子機器の構成を示す図である。
【図2】図2は図1に示す電子機器の変形例の構成を示す図である。
【図3】図3は本発明の第2の実施形態による電子機器の構成を示す図である。
【図4】図4は本発明の実施形態における磁性箔体の外周部にはみ出し部を設けた例を示す断面図である。
【図5】図5は本発明の実施形態における磁性箔体の外周部にはみ出し部を設けた他の例を示す断面図である。
【図6】図6は本発明の実施形態における磁性箔体の外周部にはみ出し部を設けたさらに他の例を示す断面図である。
【図7】図7は本発明の実施形態における磁性箔体の中央部に開放部を設けた例を示す断面図である。
【図8】図8は本発明の実施形態における磁性箔体の中央部に開放部を設けた他の例を示す断面図である。
【図9】図9は本発明の実施形態における磁性箔体の中央部に開放部を設けたさらに他の例を示す断面図である。
【図10】図10は本発明の実施形態における磁性箔体にスリットを形成した例を示す平面図である。
【図11】図11は本発明の実施形態における磁性箔体にスリットを形成した他の例を示す平面図である。
【図12】図12は本発明の実施形態における磁性箔体にスリットを形成したさらに他の例を示す平面図である。
【図13】図13は本発明の実施形態における磁性箔体にスリットを形成したさらに他の例を示す平面図である。
【図14】図14は本発明の実施形態における磁性箔体にスリットを形成したさらに他の例を示す平面図である。
【図15】図15は本発明の実施形態の電子機器に複数の磁性箔体を配置した例を示す断面図である。
【図16】図16は本発明の実施形態による非接触充電装置の構成を示す図である。
【図17】図17は図16に示す非接触充電装置の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。図1および図2は本発明の第1の実施形態による電子機器の構成を示している。図1および図2に示す電子機器1は非接触充電方式を適用した受電装置2と電子機器本体3とを具備している。受電装置2や電子機器本体3は筐体4内に配置されており、これらによって電子機器1が構成されている。
【0014】
受電装置2は、スパイラルコイルを有する受電コイル11と、受電コイル11に発生した交流電圧を整流する整流器12と、整流器12で整流された直流電圧が充電される二次電池13とを備えている。電子機器本体3は、受電装置2の二次電池13に充電された直流電圧が供給されて動作する電子デバイス14と、電子デバイス14が実装された回路基板15とを備えている。電子機器本体3は電子デバイス14や回路基板15以外に電子機器1の機能や動作等に応じた部品や装置を備えていてもよい。
【0015】
受電コイル11を構成するスパイラルコイルとしては、銅線等の金属ワイヤを平面状態で巻回した平面コイル、金属粉ペーストをスパイラル状に印刷して形成した平面コイル等が用いられる。スパイラルコイルの巻回形状は、円形、楕円、四角形、多角形等、特に限定されるものではない。スパイラルコイルの巻回数も要求特性に応じて適宜設定される。
【0016】
整流器12としては、トランジスタやダイオード等の半導体素子が挙げられる。整流器12の個数は任意であり、必要に応じて1個または2個以上の整流器12が用いられる。整流器12はTFT等の成膜技術で形成したものであってもよい。図1および図2において、整流器12は回路基板15の受電コイル11側に設置される。整流器12は回路基板15の受電コイル11とは反対側の面に設けてもよい。二次電池13は充放電が可能なものであり、平板型やボタン型等の種々の形状のものを使用することができる。
【0017】
電子デバイス14には、抵抗素子、容量素子、インダクタンス素子、制御素子、記憶素子等、回路を構成する各種の素子や部品が含まれる。さらに、これら以外の部品や装置であってもよい。回路基板15は樹脂基板やセラミックス基板等の絶縁基板の表面や内部に回路を形成したものである。電子デバイス14は回路基板15に実装されている。電子デバイス14は回路基板15に実装されていないものを含んでいてもよい。
【0018】
第1の実施形態の電子機器1は、例えば図1に示すように、スパイラルコイル(受電コイル)11と二次電池13との間に設置された磁性箔体16を具備している。すなわち、スパイラルコイル11と二次電池13とは磁性箔体16を挟んで配置されている。スパイラルコイル11はその少なくとも一部として平面部を有し、この平面部は磁性箔体16の表面に沿って配置されている。受電装置2として見た場合、それを構成するスパイラルコイル11と二次電池13との間に磁性箔体16が配置されていることになる。
【0019】
磁性箔体16は図2に示すように、二次電池13と回路基板15との間に設置してもよい。この場合、磁性箔体16はスパイラルコイル11と回路基板15との間に配置されていることになる。さらに、磁性箔体16はスパイラルコイル11と整流器12との間やスパイラルコイル11と電子デバイス14との間に配置してもよい。磁性箔体16はこれら各箇所のうち1箇所以上に配置される。磁性箔体16は2箇所もしくはそれ以上の箇所に配置されていてもよい。
【0020】
図3は第2の実施形態による電子機器を示している。図3に示す電子機器1において、スパイラルコイル11は二次電池13の周囲に設置されている。言い換えると、二次電池13はスパイラルコイル11の中央付近に設けられた空洞部内に設置されている。磁性箔体16はスパイラルコイル11と回路基板15との間に加えて、スパイラルコイル11と二次電池13との間にも存在するように、中央付近を突出させた形状を有している。なお、図3では整流器12や電子デバイス13の図示を省略している。
【0021】
第2の実施形態の電子機器1においても、磁性箔体16はスパイラルコイル11と回路基板15との間、スパイラルコイル11と整流器12との間、スパイラルコイル11と電子デバイス14との間に配置してもよい。磁性箔体16はこれら各箇所のうち1箇所以上に配置される。磁性箔体16は2箇所もしくはそれ以上の箇所に配置されていてもよい。
【0022】
電子機器1の横幅を小さくするためには第1の実施形態の構造が好ましい。電子機器1の厚さを薄くするためには第2の実施形態の構造が好ましい。これらの形態は適用する電子機器1の構造等に併せて適宜選択される。電子機器1の構成は図1ないし図3に限られるものではない。スパイラルコイル11と二次電池13と回路基板15との配置は種々に変更が可能である。例えば、上側から二次電池、回路基板、スパイラルコイルを順に配置してもよい。磁性箔体は例えば回路基板とスパイラルコイルとの間に配置される。
【0023】
スパイラルコイル11と回路基板15との間に磁性箔体16を配置する場合、単にスパイラルコイル11/磁性箔体16/回路基板15を積層するだけでもよいし、これらの間を接着剤やろう材で固定してもよい。他の場合も同様であり、各構成要素を積層するだけでもよいし、それらの間を接着剤やろう材で固定してもよい。
【0024】
上述したように、スパイラルコイル11と二次電池13との間、スパイラルコイル11と整流器12との間、スパイラルコイル11と電子デバイス14との間、スパイラルコイル11と回路基板15との間の少なくとも1箇所に磁性箔体16を配置することによって、充電時にスパイラルコイル11を通る磁束を磁性箔体16でシールドすることができる。従って、電子機器1内部の回路基板15等と鎖交する磁束が減少するため、電磁誘導による渦電流の発生を抑制することが可能となる。磁性箔体16の厚さは設置性や磁束の遮断性等を考慮して5〜500μmの範囲とすることが好ましい。この厚さは複数の磁性シートを積層した際の絶縁層や基材等の厚さを含めたものである。
【0025】
渦電流の影響を抑制することによって、回路基板15に実装された電子デバイス14や整流器12の発熱、また回路基板15の回路の発熱、さらに渦電流に起因するノイズの発生を抑制することができる。電子機器1内部における発熱の抑制は、二次電池13の性能や信頼性の向上に寄与する。さらに、渦電流による発熱を抑制することで、受電装置2に供給する電力を増大させることができる。磁性箔体16はスパイラルコイル11に対する磁心としても機能するため、受電効率ひいては充電効率を高めることが可能となる。これらは電子機器1に対する充電時間の短縮に寄与する。
【0026】
磁性箔体16としては、磁性合金薄帯(磁性合金リボン)、磁性粒子を樹脂フィルム中に分散させた磁性シート、樹脂フィルムのようなフレキシブル基材上に磁性薄膜を設けた磁性シート等が用いられる。磁性合金薄帯は樹脂フィルムのようなフレキシブル基材と接着して磁性シートとして用いてもよい。磁性箔体16には各種の軟磁性材料を適用することができる。磁性箔体16の具体的な構成としては以下に示すようなものが挙げられる。
【0027】
磁性合金薄帯は、Co基アモルファス合金、Fe基アモルファス合金、またはFe基微結晶合金で構成することが好ましい。これら磁性材料はいずれもロール急冷法(単ロールまたは双ロール)で作製できることから、平均板厚が50μm以下の薄帯を容易に得ることができる。平均板厚が50μm以下の磁性合金薄帯は、後述する折曲部や開放部の形成加工が行いやすいために好ましい。折曲等の加工性を考慮すると、平均板厚は35μm以下がさらに好ましい。平均板厚は5μm以上とすることが好ましい。平均板厚が5μm未満の磁性合金薄帯は、折曲加工を行った際に薄帯の破断等の不具合が生じやすい。
【0028】
磁性合金薄帯を構成するアモルファス合金は、
一般式:(T1−aMa)100−bXb …(1)
(式中、TはCoおよびFeから選ばれる少なくとも1種の元素を、MはNi、Mn、Cr、Ti、Zr、Hf、Mo、V、Nb、W、Ta、Cu、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、ReおよびSnから選ばれる少なくとも1種の元素を、XはB、Si、CおよびPから選ばれる少なくとも1種の元素を示し、aおよびbは0≦a≦0.3、10≦b≦35at%を満足する数である)
で表される組成を有することが好ましい。(1)式において、元素TがCoとFeの両方を含んでいる場合、Coが多ければCo基アモルファス合金、Feが多ければFe基アモルファス合金と呼称する。
【0029】
(1)式において、元素Tは磁束密度、磁歪値、鉄損等の要求される磁気特性に応じて組成比率を調整するものとする。元素Mは熱安定性、耐食性、結晶化温度の制御等のために添加される元素である。元素Mの添加量はaの値として0.3以下とすることが好ましい。元素Mの添加量があまり多すぎると相対的に元素Tの量が減少することから、アモルファス磁性合金薄帯の磁気特性が低下する。元素Mの添加量を示すaの値は実用的には0.01以上とすることが好ましい。aの値は0.15以下とすることがより好ましい。
【0030】
元素Xはアモルファス合金を得るために必須の元素である。特に、B(ホウ素)は磁性合金のアモルファス化に有効な元素である。Si(けい素)はアモルファス相の形成を助成したり、また結晶化温度の上昇に有効な元素である。元素Xの含有量があまり多すぎると透磁率の低下や脆さが生じ、逆に少なすぎるとアモルファス化が困難になる。このようなことから、元素Xの含有量は10〜35at%の範囲とすることが好ましい。元素Xの含有量は15〜25at%の範囲とすることがさらに好ましい。
【0031】
Fe基微結晶合金薄帯としては、
一般式:Fe100−c−d−e−f−g−hAcDdEeSifBgZh …(2)
(式中、AはCuおよびAuから選ばれる少なくとも1種の元素を、DはTi、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Ni、Coおよび希土類元素から選ばれる少なくとも1種の元素を、EはMn、Al、Ga、Ge、In、Snおよび白金族元素から選ばれる少なくとも1種の元素を、ZはC、NおよびPから選ばれる少なくとも1種の元素を示し、c、d、e、f、gおよびhは0.01≦c≦8at%、0.01≦d≦10at%、0≦e≦10at%、10≦f≦25at%、3≦g≦12at%、15≦f+g+h≦35at%を満足する数である)
で実質的に表される組成を有するFe基合金からなり、かつ面積比で金属組織の20%以上が粒径50nm以下の微結晶粒からなるものが挙げられる。
【0032】
(2)式において、元素Aは耐食性を高め、結晶粒の粗大化を防ぐと共に、鉄損や透磁率等の磁気特性を改善する元素である。元素Aの含有量があまり少ないと結晶粒の粗大化抑制効果を十分に得ることができず、逆にあまり多すぎると磁気特性が劣化する。従って、元素Aの含有量は0.01〜8at%の範囲とすることが好ましい。元素Dは結晶粒径の均一化や磁歪の低減等に有効な元素である。元素Dの含有量は0.01〜10at%の範囲とすることが好ましい。
【0033】
元素Eは軟磁気特性や耐食性の改善に有効な元素である。元素Eの含有量は10at%以下とすることが好ましい。SiおよびBは薄帯製造時における合金のアモルファス化を助成する元素である。Siの含有量は10〜25at%の範囲、Bの含有量は3〜12at%の範囲とすることが好ましい。SiおよびB以外のアモルファス化助成元素として元素Zを含んでいてもよい。その場合、Si、Bおよび元素Zの合計含有量は15〜35at%の範囲とすることが好ましい。微結晶構造は、特に粒径が5〜30nmの結晶粒を合金中に面積比で50〜90%の範囲で存在させた形態とすることが好ましい。
【0034】
アモルファス合金薄帯は、例えばロール急冷法(溶湯急冷法)により作製される。具体的には、所定の組成比に調整した合金素材を溶融状態から急冷することにより作製される。微結晶合金薄帯は、例えば液体急冷法によりアモルファス合金薄帯を作製した後、その結晶化温度に対して−50〜+120℃の範囲の温度で1分〜5時間の熱処埋を行い、微結晶粒を析出させることにより得ることができる。液体急冷法の急冷速度を制御して微結晶粒を直接析出させる方法によっても、微結晶合金薄帯を得ることができる。
【0035】
アモルファス合金薄帯やFe基微結晶合金薄帯からなる磁性合金薄帯の平均厚さは5〜50μmの範囲とすることが好ましい。磁性合金薄帯の平均厚さが50μmを超えると透磁率が低くなり、また損失が大きくなるおそれがある。磁性合金薄帯の平均厚さを5μm未満としても、それ以上の効果が得られないばかりでなく、逆に製造コストの増加を招くことになる。磁性合金薄帯の厚さは5〜35μmの範囲とすることがより好ましく、さらに好ましくは10〜25μmの範囲である。
【0036】
磁性粒子を樹脂フィルム中に分散させた磁性シートを磁性箔体16として用いる場合、磁性粒子としてはセンダスト粉末(Fe−Si−Al系磁性合金粉末)、Fe−Ni系磁性合金粉末、Fe−Cr系磁性合金粉末、Co基アモルファス合金粉末、Fe基アモルファス合金粉末等の金属系磁性粉末や、フェライト粉末等の酸化物系磁性粉末が用いられる。磁性粒子を分散させる樹脂としては、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂、塩化ビニル樹脂等が用いられる。必要に応じてビヒクルやSiO2粒子のような無機充填材等を添加してもよい。
【0037】
樹脂フィルム上に磁性薄膜を形成した磁性シートを磁性箔体16として用いる場合、磁性薄膜としてはFe68Co17Zr15等のFe−Co系合金、Co35.6Fe50B14.4のようなCo−Fe−B系合金、Fe−Ni系合金等の薄膜が用いられる。磁性薄膜には軟磁性を示す各種材料が適用可能である。磁性薄膜はスパッタ法、蒸着法、CVD法、メッキ法等で形成される。膜構造はアモルファス、グラニュラ、ナノクリスタル、ヘテロアモルファス等、特に限定されるものではない。磁性薄膜を形成する樹脂フィルムには、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂等が用いられる。樹脂フィルム上に磁性薄膜をスパッタ法等の成膜することによって、磁性箔体16を薄型化することができる。
【0038】
磁性粒子を有する磁性シートにおいて、磁性粒子の平均粒子径は30μm以下であることが好ましい。平均粒子径とは粒子体積と同等の体積を有する球状粒子の粒子径の平均値を示すものである。平均粒子径が30μm以下の磁性粒子によれば、薄い可塑性を有する磁性シートを作製しやすい。磁性シートを構成する樹脂フィルムの厚さは20〜500μmの範囲とすることが好ましい。また、磁性薄膜を有する磁性シートにおいて、磁性薄膜の厚さは2〜100μmの範囲とすることが好ましい。磁性薄膜を形成する樹脂フィルムの厚さは5〜50μmの範囲とすることが好ましい。
【0039】
次に、渦電流による不具合をさらに抑制する方法および構造について説明する。磁性箔体16は図4に示すように、その外周端部をスパイラルコイル11の外周部より外側まで延在させることが好ましい。図4において、doは磁性箔体16のスパイラルコイル11の外側にはみ出した部分(はみ出し部)である。このような構造とすることによって、スパイラルコイル11に生じた磁束をより効果的に磁性箔体16で遮断することができる。これは基板等と鎖交する磁束に基づく渦電流の抑制、さらに渦電流による発熱や受電効率の低下の抑制に大きく寄与するものである。
【0040】
磁性箔体16のはみ出し部分doは図5や図6に示すように、回路基板15とは反対側(スパイラルコイル11側)に折り曲げてもよい。図5および図6において、磁性箔体16はその外周端部を回路基板15とは反対側に折り曲げた折曲部16aを有している。折曲部16aの形状は、図5に示すように複数回折り曲げてもよいし、図6に示すように1回折り曲げるだけでもよい。磁性箔体16の外周部をスパイラルコイル11側に折り曲げることによって、渦電流の抑制効果をさらに高めることができる。
【0041】
さらに、磁性箔体16はスパイラルコイル11の磁心としても機能する。この場合、磁性箔体16の外周端部をスパイラルコイル11側に折り曲げることによって、磁心としての磁性箔体16と給電コイル(1次コイル)とのギャップを小さくすることができる。これによって、受電効率を高めることが可能となる。この際、給電コイルに近接させる磁性箔体16の面積が大きいほど効果がある。このため、図5に示すように、磁性箔体16の外周端部を給電コイルの巻回面法線と略平行な方向に向けることによって、より効果的に磁気回路を形成して受電効率を高めることが可能となる。
【0042】
磁性箔体16の中央部には、図7、図8および図9に示すように開放部16bを設けてもよい。磁性箔体16の開放部16bは、スパイラルコイル11の中心部に対応する位置に設けられる。開放部16bの形状は、図7に示すような磁性箔体16の中央部をスパイラルコイル11の方向に窪ませた形状(凸形状)、図8に示すような磁性箔体16の中央部に穴を開けた形状、図9に示すような磁性箔体16の中央部を折り曲げた形状等が挙げられる。開放部16bを設けて給電コイル(1次コイル)とのギャップを小さくすることによって、より効果的に磁気回路を形成して受電効率を高めることが可能となる。
【0043】
図8において、diは磁性箔体16のスパイラルコイル11より内側に存在させた部分を示している。図9に示す折り曲げ部分は、磁性箔体16のスパイラルコイル11より内側に存在させた部分diをスパイラルコイル11の方向に折り曲げたものである。磁性箔体16の外周部をスパイラルコイル11の外側にはみ出させた構造と中央部に開放部を設けた構造はそれぞれ単独で用いてもよいし、また両方を採用してもよい。これらの構造を両方採用した方が受電効率の向上効果がより顕著になる。なお、図4ないし図9では整流器12、二次電池13、電子デバイス13の図示を省略している。図15も同様である。
【0044】
さらに、磁性箔体16内の渦電流を抑制するために、磁性箔体16にはスリットを設けることが好ましい。磁性箔体16はスリットで複数に分割し、電気路(または電流路)を分断することがより有効である。スリットを設けた磁性箔体16の例を図10ないし図14に示す。これらの図において、符号17はスリットを示している。スリット17が磁性箔体16を切断している場合、それは磁性箔体16の分割線に相当する。
【0045】
図10は磁性箔体16の縦横に直交するスリット17を形成した状態を示している。図10に示す磁性箔体16は四分割されている。図11は磁性箔体16の縦横にそれぞれ複数本のスリット17を形成した状態を示している。図11に示すように、複数本のスリット17を形成する場合、スリット17のサイズやスリット17同士の間隔は任意である。図12は磁性箔体16の対角線方向に直交するスリット17を形成した状態を示している。このように、スリット17は水平や垂直に限らず、角度を付けて形成してもよい。図示しないが、スリットは放射線状に形成してもよい。
【0046】
図13は磁性箔体16の片方の端から途中までスリット17を設けた状態を示している。スリット17は対向する辺の両方から反対側の辺に向けてそれぞれ形成されている。図14は磁性箔体16の両端から途中までのスリット17を形成し、さらに中央付近にもスリット17を形成した状態を示している。電気路を分断する際、スパイラルコイル11の中央部になるほど磁束が大きくなるため、分割後の磁性箔体16の面積が中央部になるほど小さくなるように、スリット17を設けることが効果的である。ただし、スリット数(分割数)を多くすると磁気抵抗が大きくなるために受電効率は低下する。このため、渦電流の抑制効果と受電効率の両方を考慮してスリット17を設けることが好ましい。
【0047】
渦電流の抑制効果と受電効率の両方を向上させためには、複数枚の磁性箔体を用いることが有効である。複数枚の磁性箔体を用いた例を図15に示した。図15に示す電子機器1においては、スパイラルコイル11と回路基板15との間に3枚の磁性箔体16A、16B、16Cを配置している。磁性箔体16Aは図10に示したようなスリット17を有している。磁性箔体16Bは図11に示したスリット17を有している。磁性箔体16Cはスリットを有しておらず、外周部を折り曲げたものである。
【0048】
このように、折曲部16aを設けた磁性箔体16Cとスリット17を設けた磁性箔体16A、16Bの両方を用いることによって、渦電流の抑制効果と受電効率の両方を高めることができる。スリット17を形成した磁性箔体16は開放部16bを設けた磁性箔体16組合せてもよいし、折曲部16aと開放部16bの両方を具備する磁性箔体16とスリット17を形成した磁性箔体16とを組合せてもよい。3枚以上(n枚以上)の磁性箔体16を用いる場合、そのうち2枚((n−1)枚)を同一形状(構造)の磁性箔体16としてもよいし、3枚(n枚)の磁性箔体16全てに同じものを用いてもよい。
【0049】
上述した実施形態の受電装置2とそれを用いた電子機器1においては、スパイラルコイル11を鎖交した磁束に起因する渦電流が抑制されるため、機器内部の発熱を低下させることができると共に、受電効率を向上させることが可能となる。これによって、給電時の電力を大きくすることができ、充電時間の短縮を図ることができる。この実施形態の電子機器1は携帯電話機、携帯型オーディオ機器、デジタルカメラ、ゲーム機等に好適である。このような電子機器1は給電装置にセットして非接触充電が行われる。
【0050】
図16は本発明の実施形態による非接触充電装置の構成を示している。図17は図16に示す非接触充電装置の回路図である。図16および図17に示す非接触充電装置20において、電子機器1は前述した実施形態で示したものである。図16において、矢印は磁束の流れを示している。図17において、符号21は平滑用のコンデンサである。給電装置30は給電コイル31と給電コイル用磁心32と給電コイル31に交流電圧を印加する電源33とを備えている。電子機器1を給電装置30上にセットした際、給電コイル31は受電コイル11と非接触で配置される。
【0051】
非接触充電装置20による充電は以下のようにして行われる。まず、給電装置30の給電コイル31に電源33から交流電圧を印加し、給電コイル31に磁束を生じさせる。給電コイル31に発生させた磁束は、給電コイル31と非接触で配置された受電コイル11に伝達される。受電コイル11では磁束を受けて電磁誘導で交流電圧が生じる。この交流電圧は整流器12で整流される。整流器12で整流された直流電圧は二次電池13に充電される。このように、非接触充電装置20においては非接触で電力の伝送が行われる。
【0052】
次に、本発明の具体的な実施例およびその評価結果について述べる。
【0053】
(充電システム)
非接触充電システムとして携帯電話機用の充電システムを用意した。給電装置はAC電源からの電力を制御回路を通して一定の電磁波に変換し、この電磁波を送信する一次コイル(給電コイル)を置き台の近傍に配置したものである。携帯電話機は受電装置としてスパイラルコイルからなる二次コイル(受電コイル)と二次コイルに生じた交流電力を整流する整流器が実装された回路基板と二次電池とを具備している。二次コイルは銅線を外周30mm、内周23mmに平面状に巻回したものである。
【0054】
(比較例1)
上記した携帯電話機において、磁性箔体を用いずに受電装置を構成した。これを用いた携帯電話機と非接触充電装置を比較例1とした。
【0055】
(比較例2)
回路基板にフェライト粉を含有させた樹脂基板を用いる以外は、比較例1と同様の受電装置を構成した。これを用いた携帯電話機と非接触充電装置を比較例2とした。
【0056】
(実施例1)
磁性箔体として、平均厚さが15μmで、組成がCo74Fe4Si8B14(原子比)のアモルファス合金薄帯を用意した。アモルファス合金薄帯の外周部のはみ出し量をdo=6mmとし、これを3枚積層して配置した。3枚のアモルファス合金薄帯は図1に示したように、二次コイル(受電コイル11)と二次電池13との間に配置した。このような磁性箔体を有する受電装置を用いた携帯電話機と非接触充電装置を実施例1とした。
【0057】
(実施例2〜5)
実施例2では外周部のはみ出し量がdo=3mmのアモルファス合金薄帯を3枚積層した。実施例3ではdo=0mmのアモルファス合金薄帯を3枚積層した。実施例4では外周部のはみ出し量がdo=−3mmのアモルファス合金薄帯を3枚積層した。実施例5では外周部のはみ出し量がdo=6mmのアモルファス合金薄帯を単層で用いた。これらアモルファス合金薄帯を実施例1と同様に、二次コイル(受電コイル11)と回路基板15との間に配置して受電装置をそれぞれ構成した。これらの受電装置を用いた携帯電話機と非接触充電装置を実施例2〜5とした。
【0058】
(実施例6)
実施例1と同一のアモルファス合金薄帯のはみ出し部(do=6mm)を、図5に示したように折り曲げて折曲部を形成した。このようなアモルファス合金薄帯を3枚積層し、実施例1と同様に二次コイル(受電コイル11)と回路基板15との間に配置して受電装置を構成した。この受電装置を用いた携帯電話機と非接触充電装置を実施例6とした。
【0059】
(実施例7)
平均粒子径が20μmのセンダスト粉末を体積占有率が50%となるようにシリコーン樹脂に分散させ、これを厚さ50μmのシート状に成形した。このような磁性シートを磁性箔体として用いる以外は、実施例6と同様にして受電装置を構成した。この受電装置を用いた携帯電話機と非接触充電装置を実施例7とした。
【0060】
(実施例8)
厚さ25μmのポリイミドフィルム上にスパッタ法でSiO2膜とTi膜を順に成膜した。次いで、Fe68Co17Zr15(原子比)組成のスパッタターゲットとSiO2ターゲットとを用いて、RFスパッタ法で磁性薄膜を成膜し、さらにその上にSiO2膜を成膜した。磁性薄膜の成膜とSiO2膜の成膜を4回繰り返した。成膜した膜の構造は、[SiO2(0.05)/FeCoZrSiO(0.5)]×4/Ti(0.01)/SiO2(0.03)/ポリイミドフィルム(25)/SiO2(0.03)/Ti(0.01)/[FeCoZrSiO(0.5)/SiO2(0.05)]×4である。括弧内の数字は厚さ(μm)である。
【0061】
上述した成膜工程をポリイミドフィルムの両面に対して行って磁性シートを作製した。このような磁性シートを磁性箔体として用いる以外は、実施例6と同様にして受電装置を構成した。この受電装置を用いた携帯電話機と非接触充電装置を実施例8とした。
【0062】
(実施例9)
実施例8と同一構成の磁性シートの中央部に、図7に示したような開放部を設けた。これを磁性箔体として用いる以外は、実施例8と同様にして受電装置を構成した。この受電装置を用いた携帯電話機と非接触充電装置を実施例9とした。
【0063】
(実施例10)
実施例8と同一構成の磁性シートの中央部に、図8に示したような開放部を設けた。中央部のはみ出し量はdi=3mmとした。このような磁性シートを磁性箔体として用いる以外は、実施例8と同様にして受電装置を構成した。この受電装置を用いた携帯電話機と非接触充電装置を実施例9とした。
【0064】
(実施例11)
実施例10による磁性シートの中央部のはみ出し量をdi=0mmとする以外は、実施例8と同様にして受電装置を構成した。この受電装置を用いた携帯電話機と非接触充電装置を実施例11とした。
【0065】
(実施例12)
実施例10による磁性シートの中央部のはみ出し量をdi=−3mmとする以外は、実施例8と同様にして受電装置を構成した。この受電装置を用いた携帯電話機と非接触充電装置を実施例12とした。
【0066】
(実施例13)
実施例10による磁性シートの中央のはみ出し部(di=3mm)を、図9に示したように折り曲げた。これを磁性箔体として用いる以外は、実施例8と同様にして受電装置を構成した。この受電装置を用いた携帯電話機と非接触充電装置を実施例13とした。
【0067】
(実施例14)
実施例8と同一構成の磁性シートに、図10に示したように縦横にスリットを1本ずつ形成した。スリットの幅は100μmとした。このようなスリットを有する磁性シートを磁性箔体として用いる以外は、実施例8と同様にして受電装置を構成した。この受電装置を用いた携帯電話機と非接触充電装置を実施例14とした。
【0068】
(実施例15)
実施例8と同一構成の磁性シートに、図11に示したように縦横それぞれに複数のスリットを形成した。スリットは中央に行くにしたがって周期(形成ピッチ)が狭くなるようにした。スリットの幅は50〜1000μmの範囲とした。このようなスリットを有する磁性シートを磁性箔体として用いる以外は、実施例8と同様にして受電装置を構成した。この受電装置を用いた携帯電話機と非接触充電装置を実施例15とした。
【0069】
(実施例16)
実施例8と同一構成の磁性シートに複数本のスリットを放射状に形成した。この磁性シートを磁性箔体として用いる以外は、実施例8と同様にして受電装置を構成した。この受電装置を用いた携帯電話機と非接触充電装置を実施例16とした。
【0070】
(実施例17)
実施例8と同一構成の磁性シートに、図13に示したように箔体の端部から途中までのスリットを複数本形成した。このようなスリットを有する磁性シートを磁性箔体として用いる以外は、実施例8と同様にして受電装置を構成した。この受電装置を用いた携帯電話機と非接触充電装置を実施例17とした。
【0071】
(実施例18)
実施例8と同一構成の磁性シートに、図14に示したように箔体の端部から途中までのスリットと独立したスリットの両方を複数本形成した。このようなスリットを有する磁性シートを磁性箔体として用いる以外は、実施例8と同様にして受電装置を構成した。この受電装置を用いた携帯電話機と非接触充電装置を実施例18とした。
【0072】
(実施例19)
実施例1で用いた3枚のアモルファス合金薄帯のうち、2枚はそのままとし、1枚は外周部を折り曲げて折曲部を形成した(図15参照)。このような3枚のアモルファス合金薄帯を用いる以外は、実施例1と同様にして受電装置を構成した。この受電装置を用いた携帯電話機と非接触充電装置を実施例19とした。
【0073】
(実施例20)
図3に示したように、スパイラルコイルを二次電池の周囲に配置した。さらに、実施例1と同一構成の3枚のアモルファス合金薄帯を、図3に示したようにスパイラルコイルと回路基板との間とスパイラルコイルと二次電池との間に存在するように折り曲げて配置した。このようなアモルファス合金薄帯を用いる以外は、実施例1と同様にして受電装置を構成した。この受電装置を用いた携帯電話機と非接触充電装置を実施例20とした。
【0074】
上述した実施例1〜20および比較例1〜2の構成を表1にまとめて示す。さらに、各実施例および比較例について、受電効率、発熱量、厚さ・自由度を測定並びに評価した。その結果を表2に示す。受電効率は、比較例1の充電時間を100としたとき、充電時間が比較例1に対して改善を確認できなかったものを×、充電時間が10%未満の範囲で短くなったものを△、充電時間が10%以上50%未満の範囲で短くなったものを○、充電時間が50%以上の範囲で短くなったものを◎と表示した。なお、充電時間の測定の際には給電側の電力を一定にして比較を行った。
【0075】
発熱量は、比較例1を100としたとき、熱ロスの改善が確認できなかったものを×、熱ロスの改善が5%未満のものを△、熱ロスの改善が5%以上20%未満のものを○、熱ロスの改善が20%以上のものを◎と表記した。なお、発熱量の測定は上記した充電効率を測定した際の発熱量を測定した。すなわち、渦電流による不具合が生じない程度に電力を大きくしたときの発熱量である。「厚さ・自由度」については、磁性箔体や磁性基板の厚さを50μm以下と薄型にできるか、回路基板や二次電池等の各パーツの配置に制限がないかについて検討した。薄型化が可能で各パーツの配置に制限がないものを○、どちらか一方または両方が制限されるものを×と表記した。
【0076】
【表1】
【0077】
【表2】
【0078】
表2から明らかなように、磁性箔体を配置することで発熱量を抑制できると共に、受電効率を高めることが可能となる。さらに、磁性箔体の外周部にはみ出し部を設けたり、はみ出し部に折曲部を形成したり、また磁性箔体の中央部に開放部を設ける等によって、発熱量の抑制効果や受電効率の向上効果をさらに高めることができる。磁性箔体にスリットを形成することも有効である。これらは組合せることで効果が向上する。
【0079】
なお、本発明は上記した実施形態に限られるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は可能な範囲で適宜組合せて実施することができ、その場合には組合せた効果が得られる。さらに、上記実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組合せにより種々の発明が抽出され得る。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明の態様に係る電子機器は、スパイラルコイルと二次電池、整流器、電子デバイス、回路基板等との間の1箇所以上に磁性箔体を配置し、電磁誘導に起因する渦電流の発生を抑制している。従って、渦電流による発熱、ノイズ発生、受電効率の低下等を抑制することが可能となる。このような受電装置および電子機器は、非接触充電を適用した各種の電子機器に有効に利用されるものである。
【符号の説明】
【0081】
1…電子機器、2…受電装置、3…電子機器本体、4…筐体、11…スパイラルコイル(受電コイル)、12…整流器、13…二次電池、14…電子デバイス、15…回路基板、16…磁性箔体、16a…折曲部、16b…開放部、17…スリット、20…非接触充電装置、30…給電装置、31…給電コイル、32…磁心、33…電源。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スパイラルコイルを有する受電コイルと、前記受電コイルに発生した交流電圧を整流する整流器と、前記整流器で整流された直流電圧が充電される二次電池とを備える受電装置と、
前記二次電池から前記直流電圧が供給されて動作する電子デバイスと、前記電子デバイスが実装された回路基板とを備える電子機器本体と、
前記スパイラルコイルと前記二次電池との間、前記スパイラルコイルと前記整流器との間、前記スパイラルコイルと前記電子デバイスとの間、および前記スパイラルコイルと前記回路基板との間の少なくとも1箇所に配置され、厚さが5〜50μmの範囲の磁性箔体とを具備し、
前記磁性箔体は、アモルファス合金薄帯を1〜3枚有するもの、Fe基微結晶合金薄帯を1〜3枚有するもの、センダスト磁性粒子を樹脂フィルム中に分散させた磁性シートを1枚有するもの、または樹脂フィルム上にFe−Co系磁性合金薄膜を設けた磁性シートを1枚有するもののいずれか1種であることを特徴とする電子機器。
【請求項2】
請求項1記載の電子機器において、
前記磁性箔体は前記スパイラルコイルと前記回路基板との間に配置されていることを特徴とする電子機器。
【請求項3】
請求項1記載の電子機器において、
前記スパイラルコイルは前記二次電池の周囲に配置されており、かつ前記磁性箔体は前記スパイラルコイルと前記回路基板との間に配置されていることを特徴とする電子機器。
【請求項4】
請求項1記載の電子機器において、
前記磁性箔体はその外周端部を前記回路基板と反対方向に折り曲げた折曲部を有することを特徴とする電子機器。
【請求項5】
請求項1記載の電子機器において、
前記磁性箔体の外周端部は前記スパイラルコイルの外周部より外側まで延在していることを特徴とする電子機器。
【請求項6】
請求項1記載の電子機器において、
前記磁性箔体は前記スパイラルコイルの中心部に対応する位置に設けられた開放部を有することを特徴とする電子機器。
【請求項7】
請求項1記載の電子機器において、
前記磁性箔体はスリットを有することを特徴とする電子機器。
【請求項8】
請求項1記載の電子機器において、
前記磁性箔体は複数に分割されていることを特徴とする電子機器。
【請求項9】
請求項1記載の電子機器において、
前記磁性箔体は、前記アモルファス合金薄帯または前記Fe基微結晶合金薄帯を樹脂フィルムと接着した磁性シートからなることを特徴とする受電装置。
【請求項10】
請求項1記載の電子機器と、
前記電子機器の前記受電コイルと非接触で配置される給電コイルと、前記給電コイルに交流電圧を印加する電源とを備える給電装置とを具備し、
前記給電コイルに発生させた磁束を前記受電コイルに伝達して電力を非接触で伝送することを特徴とする非接触充電装置。
【請求項1】
スパイラルコイルを有する受電コイルと、前記受電コイルに発生した交流電圧を整流する整流器と、前記整流器で整流された直流電圧が充電される二次電池とを備える受電装置と、
前記二次電池から前記直流電圧が供給されて動作する電子デバイスと、前記電子デバイスが実装された回路基板とを備える電子機器本体と、
前記スパイラルコイルと前記二次電池との間、前記スパイラルコイルと前記整流器との間、前記スパイラルコイルと前記電子デバイスとの間、および前記スパイラルコイルと前記回路基板との間の少なくとも1箇所に配置され、厚さが5〜50μmの範囲の磁性箔体とを具備し、
前記磁性箔体は、アモルファス合金薄帯を1〜3枚有するもの、Fe基微結晶合金薄帯を1〜3枚有するもの、センダスト磁性粒子を樹脂フィルム中に分散させた磁性シートを1枚有するもの、または樹脂フィルム上にFe−Co系磁性合金薄膜を設けた磁性シートを1枚有するもののいずれか1種であることを特徴とする電子機器。
【請求項2】
請求項1記載の電子機器において、
前記磁性箔体は前記スパイラルコイルと前記回路基板との間に配置されていることを特徴とする電子機器。
【請求項3】
請求項1記載の電子機器において、
前記スパイラルコイルは前記二次電池の周囲に配置されており、かつ前記磁性箔体は前記スパイラルコイルと前記回路基板との間に配置されていることを特徴とする電子機器。
【請求項4】
請求項1記載の電子機器において、
前記磁性箔体はその外周端部を前記回路基板と反対方向に折り曲げた折曲部を有することを特徴とする電子機器。
【請求項5】
請求項1記載の電子機器において、
前記磁性箔体の外周端部は前記スパイラルコイルの外周部より外側まで延在していることを特徴とする電子機器。
【請求項6】
請求項1記載の電子機器において、
前記磁性箔体は前記スパイラルコイルの中心部に対応する位置に設けられた開放部を有することを特徴とする電子機器。
【請求項7】
請求項1記載の電子機器において、
前記磁性箔体はスリットを有することを特徴とする電子機器。
【請求項8】
請求項1記載の電子機器において、
前記磁性箔体は複数に分割されていることを特徴とする電子機器。
【請求項9】
請求項1記載の電子機器において、
前記磁性箔体は、前記アモルファス合金薄帯または前記Fe基微結晶合金薄帯を樹脂フィルムと接着した磁性シートからなることを特徴とする受電装置。
【請求項10】
請求項1記載の電子機器と、
前記電子機器の前記受電コイルと非接触で配置される給電コイルと、前記給電コイルに交流電圧を印加する電源とを備える給電装置とを具備し、
前記給電コイルに発生させた磁束を前記受電コイルに伝達して電力を非接触で伝送することを特徴とする非接触充電装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2012−169633(P2012−169633A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−39746(P2012−39746)
【出願日】平成24年2月27日(2012.2.27)
【分割の表示】特願2007−553884(P2007−553884)の分割
【原出願日】平成19年1月9日(2007.1.9)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(303058328)東芝マテリアル株式会社 (252)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年2月27日(2012.2.27)
【分割の表示】特願2007−553884(P2007−553884)の分割
【原出願日】平成19年1月9日(2007.1.9)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(303058328)東芝マテリアル株式会社 (252)
【Fターム(参考)】
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