説明

口腔乾燥症の治療のためのベタネコールの使用

ベタネコールは、口腔乾燥症の治療のために局所的に(使用)投与される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベタネコールの口腔粘膜に対する局所適用による唾液腺機能不全の治療に関する。
【背景技術】
【0002】
口腔乾燥症は、口の乾燥の主観的感覚として定義することができる。これは、通常、分泌される唾液量の減少の結果だが、唾液の組成の変化による場合もある。唾液腺機能低下は、全体又は個別の腺の流量の実証可能な減少として定義される。唾液腺機能不全は、口腔乾燥症及び/又は唾液腺機能低下の患者を表す包括的用語として使用されている。一般集団における口腔乾燥症の罹患率は、22乃至26%であり、慢性疾患を有する患者に多く、例えば、緩和ケアの集団において、罹患率は82乃至83%である。唾液腺機能低下の最も一般的な原因は、薬物療法であり、別の原因は、シェーグレン症候群である。
【0003】
口腔乾燥症は、癌患者において重要な状態である。頭頸部癌患者において、口腔乾燥症は、唾液腺に対する付帯的な放射線損傷により発生する。頭頸部癌患者は全ての癌の5%未満ではあるが、95%もの患者が著しい口腔乾燥症に悩まされている。口腔乾燥症は、より広い範囲の癌患者集団でも問題となる。こうした患者は、主に、受けている薬剤の結果として口腔乾燥症になっている。こうした薬剤には、5-フルオロウラシル、パクリタキセル、白金化合物及びブスルファン、アナストロゾール及びビカルタミドを含む抗腫瘍ホルモン剤といった、細胞毒性を有する化学療法薬剤と、癌専用に与えられるわけではないが、特に進行癌患者において一般的な、抗鬱剤、オピオイド鎮痛剤、抗ヒスタミン剤、コルチコステロイド、H2ブロッカ、睡眠薬、及び他の多くの併用薬とが含まれる場合がある。口腔乾燥症は、化学療法の副作用として4番目に一般的であり、3番目に苦痛であると報告されている(Zanni, Pharmacy Times August, 2007)。補助化学療法を受けている乳癌患者の1研究では、44%に唾液腺の著しい機能低下があり、39%が化学療法後1年で口腔乾燥症を訴えている(Jensen et al., 2008. Oral Oncology 44:162-173)。骨髄移植患者では、唾液流の劇的な減少を伴う唾液腺機能の障害が移植から1ヶ月後に見られており、4ヶ月後でも部分的にしか回復していない(Jacobson et al. 1996, Oral Surg Oral Med Oral Pathol Oral Radiol Endod, 81:38-43)。唾液腺細胞に損傷を与えることで、化学療法剤は、生産される唾液量とその組成との両方に影響を与える恐れがある。
【0004】
進行癌患者、即ち、不治と見做された癌を有する患者では、緩和的化学療法を用いて、生活の質及び生存期間を改善する場合が多い。このような化学療法が引き起こす何らかの口腔乾燥症に加え、こうした患者は、単独で40%までの唾液流減少の一因となり得る加齢と、口内乾燥に関係する他の複数の薬剤との影響に対抗しなければならない恐れがある。120人の進行癌患者を対象としたある調査では、117人が、口腔乾燥症を引き起こすことが知られている他の薬剤を摂取しており、こうした薬物の平均数は、患者1人当たり4種類となった(Davies et al. 2002, Oral Oncology, 38:680-685)。この一連の調査では、82%で無刺激の全唾液流量が異常に低く、78%が口腔乾燥症を訴えた。99人の継続進行癌患者を対象とした、別の公表された一連の調査では、88%の割合で口の乾燥が報告されている(Oneschuk et al. 2000, Support Care Cancer 8:372-376)。
【0005】
唾液腺機能低下の管理には、原因の処置、対症療法、及び合併症の治療が含まれる。対症療法には、唾液代用物又は唾液刺激剤の使用が含まれる。
【0006】
ヨヒンビン及びニコチンアミドを含め、多数の薬理物質が、唾液刺激剤として使用されてきた。最も広く使用されているものは、副交感神経作用薬、コリンエステル、又は抗コリンエステラーゼ薬である。最も広く知られているものは、主にムスカリン受容体に作用するピロカルピンである。全身投与された時、ムスカリン作動薬は、発汗及び心血管変化を含む副作用を引き起こす傾向にある。
【0007】
塩化ベタネコールは、塩化カルバミルメチルコリンとも呼ばれ、長年に渡って臨床的に使用されてきた公知の薬物である。錠剤及び注射として入手可能であり、消化管及び、特に膀胱の、平滑筋の刺激剤として使用されている。術後の腹部膨満及び胃不全麻痺の特定のケースにおいても有用となる場合がある。投与は、経口(内服)で、好ましくは、吐き気及び嘔吐を最低限に抑えるため、空腹時に行われる。急性の術後若しくは分娩後の非閉塞性尿貯留、又は貯留を伴う神経性膀胱弛緩の治療には、10乃至50mgの塩化ベタネコールを1日3乃至4回経口(内服)投薬することが推奨される。
【0008】
1日4回の塩化ベタネコール25mg投与により、腹部痙攣、かすみ目、疲労、及び尿頻度の増加といった顕著な副作用が生じる恐れがあることが報告されている。この薬物は、皮下注射でも投与されてきたが、しかしながら、非経口の剤形は、現在、米国では入手できなくなっている。静脈又は筋肉内経路により投与した場合、重度のコリン作動性反応が生じる可能性が高いことが報告されている。重度の反応は、皮下注射の後にも報告されている。ベタネコールは、甲状腺機能亢進症、消化性潰瘍、潜在性又は活動性気管支喘息、冠動脈疾患、消化管又は膀胱頸部の機械的閉塞、著しい迷走神経緊張症、癲癇、パーキンソン症候群、痙攣性胃腸障害、腹膜炎又は消化管の急性炎症状態、顕著な徐脈又は低血圧、又は血管運動不安定を有する患者には禁忌である。小児患者におけるベタネコールの安全性及び有効性は、確立されていない。
【0009】
ベタネコールの経口(内服)投与は、少数の臨床研究で、口腔乾燥症の治療において試験されている。この薬物は、唾液流を増加させることが報告されている。入手可能なデータでは、唾液分泌に対する効果は、経口(内服)経路を介して安全に投与し得る最大用量まで、用量関連となることが示唆されている。頭頸部癌に随伴する口腔乾燥症患者における1研究では、参加が検討された合計55人の患者のうち、12人(22%)が、全身状態のため、ベタネコールを経口(内服)摂取する条件を満たしていなかったことが報告されている(Jham et al. 2007, Oral Oncol. 43:137-142)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Jham et al. 2007, Oral Oncol. 43:137-142
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
有効性を高めつつ副作用の増加を回避するための潜在的な方法の1つは、口腔粘膜への局所適用により薬物を与え、下層の小唾液腺を直接標的にすることであった。これを機能させるためには、薬物が口腔粘膜を越えることが可能である必要がある。頬側薬物送達の概念は、周知であると共に、これに関する多数の報告が公表されており、例えば、Buccal Drug Delivery by John Smart (2005), Expert Opin. Drug Deliv., 2(3):507-517を参照されたい。この論文の要約では、「しかしながら、頬側粘膜は、初回通過効果を回避するものの、薬物吸収の強力な障害となる」と結論付けている。更に、その後、「現在、この経路は、頬側粘膜を容易に通過可能な限られた数の親油性小分子の送達に限定されている」としている。一般に、頬組織の薬物透過性は、親油性、分子量、及び生理的pHにおける電離度等、薬物の物理化学的特性に依存する。口腔粘膜の扁平重層上皮を介した吸収には、2つの経路が考えられ、これらは経細胞(細胞内、即ち細胞を通過)及び傍細胞(細胞間、即ち細胞の周囲を通過)の経路である。透過は、主に、被膜果粒により生産された細胞内脂質を介した傍細胞経路によることが報告されてきたが、しかしながら、利用される経路は、薬物の物理化学的特性に依存する。一般に、Log P範囲が1.6乃至3.3である主に親油性の小分子は、最も迅速に吸収され、頬又は舌下経路を介した送達に成功する殆どの薬物が親油性である。0未満又は1未満のLog P値を有する化合物は、特に、親油性の生体膜を越えて活性を示す必要がある場合、通常、親水性が高すぎるため薬物候補にはならないと見做される。
【0012】
化学的に、塩化ベタネコールは、四級アンモニウム化合物であり、本質的に極性が非常に強く、高い水溶解度(親水性)を有し、Log P値は、-4.0程度と計算される。これは、臨床的に使用される医薬品としては、文献で報告された最も低い値である。こうした物理化学的特性の通り、ベタネコールは、治療用量ではCNSに有意に滲透せず、消化管から僅かに吸収されるのみとなる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、口腔乾燥症の治療として、口腔粘膜に局所的に投与される時の、例えば塩化物としてのベタネコールの、好ましくはヒトにおける使用に関する。特定の製剤において、このように投与される時、経口(内服)投与時の副作用を伴うことが知られているものを下回る用量であっても、塩化ベタネコールは、予想と異なり、前記状態の効果的な治療となることが分かった。薬物の粘膜通過が活性に必要となる場合、この薬物の局所適用での使用を考慮することが非常に困難であるような物理化学的特性を塩化ベタネコールが有することを考えると、これは特に驚くべきことである。これは特に、ベタネコールの頬側粘膜を介した滲透が、下層の唾液腺への薬物の到達に必要となる、口腔乾燥症の治療における局所使用のケースに該当する。
【0014】
本発明の他の態様によれば、新規の製剤は、ベタネコールを含む液状又は半固体製剤を包含し且つその分注が可能なパッケージの形態となる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の目的として、ベタネコールは、一般に、唾液腺に対する直接的作用を提供するために頬側経路を介して投与され、これにより、口腔乾燥症に関連した状態の改善をもたらす。本発明の1実施形態において、ベタネコールの投与用量は、小唾液腺に対する局所的作用を促進するために、特定期間に渡り頬側口腔内に保持される。頬の内容物は、その後、嚥下され、頬側粘膜を介して吸収されなかった全ての薬物が消化管吸収を介して体循環に入る機会を得るようになり、これにより、大腺からのものを含む唾液流の2次刺激が達成される。製剤が嚥下前に口内に保持される期間は、30秒乃至5分間、好ましくは1乃至3分間、より好ましくは2分間にしてよい。
【0016】
本発明の製剤は、一般に、単一の単位用量の形態となる。製剤は、例えば、小包、バイアル、ブローフィルシール容器、例えば注射器を用いて個別の用量が手動で投与される多用量容器、ユニドースポンプ又はスプレ等の単位用量分注器付きの多用量容器、適量を押し出すことが可能なチューブ内の半固体としてパッケージし得る。製剤は、治療的使用のため、通常は無菌であり、好ましくは、自己保存系(例えば、エタノール又は他のアルコール)及び/又は適切な保存料を含む。
【0017】
ベタネコールが頬側口腔内での滞留時間後に嚥下されることが意図される場合、液状又は半固体製剤の投薬体積は、一般に0.1ml乃至1.0ml、好ましくは0.25ml乃至0.75ml、より好ましくは0.3ml乃至0.6mlとなる。
【0018】
ベタネコールが小唾液腺に到達するのを促進するために、ベタネコールは、飽和溶液として製剤中に存在し得る。
【0019】
薬物を頬側粘膜へ送達するための様々な送達システムが存在する(Smart 2005参照、この参考文献は、その開示内容全体を本願明細書の一部とする)。これらには、錠剤、パッチ、フィルム、半固体、液体、及び粒子となり得る頬側生体接着システムが含まれる。半固体製剤は、ゲル及び軟膏を含む。適切な投与量レベルは、当業者に公知の任意の適切な方法により決定し得る。塩化ベタネコールの好適な用量(単一投与)は、1mg乃至50mg、好ましくは2mg乃至25mg、より好ましくは3mg乃至9mgの範囲である。2回以上の投与を毎日行ってもよい。本発明の製品を、他のクラスの薬物と組み合わせる或いは同時投与することが有利となる場合がある。同時投与し得る薬物には、限定ではないが、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤が含まれる。
【0020】
以下の研究は、本発明の有用性を示す証拠を提供し得る。
【0021】
前臨床研究
【0022】
以下に概要を述べる実験において、頬側投与用の塩化ベタネコールは、PEG400、グリセロール、エタノール、及びリン酸ナトリウム緩衝液を含む溶媒混合物において飽和溶液として調製した。具体的な溶媒の量は、PEG400 30%、グリセロール30%、エタノール20%、及びリン酸ナトリウム緩衝液20%(50mlの0.1M塩基性リン酸ナトリウム(1水和物)を十分な0.1M二塩基性リン酸ナトリウム(7水和物)と混合し、pHを5.5にすることにより生成)とした。塩化ベタネコールは、最大33%とした。
【0023】
塩化ベタネコールの飽和溶液を調製するために、以下の方法を用いた。磁力撹拌子(magnetic flea)を20mlシンチレーションバイアルに入れ、両方の重量を記録した。正確に0.8gのpH5.5緩衝溶液を容器に入れた。塩化ベタネコールは、ベタネコールが緩衝液に溶解する時間をとりながら、飽和溶液となるまで、容器に徐々に追加した。ベタネコールの流動性懸濁液の剤形を確保するために、追加の緩衝液0.235gの添加が必要となった。飽和溶液(非溶解ベタネコールを含む)の完成後、バイアルを天秤に載せ、総重量を記録した。磁力撹拌子及び空のバイアルの重量を総重量から差し引き、飽和溶液の最終重量を求めた。この重量は、最終製剤の20%に相当する。エタノール、グリセロール、及びPEG400の量を計算して、30%のPEG400、30%のグリセロール、20%のエタノール、及び20%の緩衝液及びベタネコールを含有する溶液を作成した。次に、磁力撹拌子を用いて、溶液を30分間、室温で混合した。飽和状態を確保するため、更に塩化ベタネコールの2つのアリコートを添加して更に混合し、少量の非溶解ベタネコールが存在する粘性のある透明な溶液とした。最終製剤のpHは、6.7となった。
【0024】
有効性の研究では、オスのSprague-Dawleyラット(350乃至400g)をペントバルビトン40mg/kgの腹腔内投与により麻酔した。15乃至30分後、パラフィルムのボールを口腔後部に挿入して、食道及び気道へ入る溶液及び唾液の損失を防止した。T-10に、綿球を口腔に挿入し、10分後に取り除いて、余分な唾液を拭き取った。T=0分に、薬物又は溶媒を口腔内に、ピペットを用いて滴下注入した。10マイクロリットルを口の片側に、10マイクロリットルを反対側に滴下注入した。T+20分に、別の綿球を口腔内に挿入し、10分後、取り除いて、余分な唾液を拭き取った。次の球を挿入し、これを10分後に取り出し、この手順を70分間繰り返した。球の中の唾液量は、最初の球重量を、頬側口腔から取り出した後の最終重量から減算することにより計算した。
【0025】
結果は、局所適用した際のベタネコールが70分に渡り持続的且つ有意な唾液産出量の増加をもたらすことを示した。唾液生産データは、反復測定2元配置分散分析法(repeated measures two-way ANOVA)、及びその後のボンフェローニの事後検定(GraphPad Prismバージョン5.0、GraphPad Software、米国カリフォルニア州サンディエゴ)により分析した。総唾液生産データ及び唾液生産曲線の下の面積は、1元配置分散分析法(One-way ANOVA)、及びその後のダネットの多重比較検定及び/又は独立スチューデントt検定(GraphPad Prism)により分析した。ベタネコールは、総唾液生産量を、70分の採取期間中、溶媒の効果を72%上回って増加させ、これは0.01未満のPで有意となった(n=4)。
【0026】
別の実験では、ラットの頬側口腔に適用した際の心血管及び呼吸パラメータについて、ベタネコール(飽和溶液、上記参照)の影響をフィゾスチグミン(生理食塩水中の1%溶液)のものと比較した。ウレタン(1.75g/kg腹腔内投与)により動物の麻酔を誘導した。各動物には、Fleisch型(サイズ00)呼吸流量計及び圧力トランスデューサー(圧力範囲±2cm H2O)に接続された気管カニューレを介して、人工呼吸を行った。肺機能データ取得システム(Powerlab、AD Instruments)を用いて、肺膨張圧の変化を記録し、パソコンにリアルタイムで表示した。左頸動脈にはカニューレを挿入して血圧及び心拍数を記録し、左頸静脈には薬物投与のためにカニューレを挿入した。局所投与のため、15乃至30分後に、パラフィルムのボールを口腔後部に挿入して、食道及び気道へ入る溶液の損失を防止した。T-10に、綿球を口腔に挿入し、10分後に取り除いて、余分な唾液を拭き取った。T=0分に、フィゾスチグミン(1%、左右それぞれの側に10マイクロリットル)又はベタネコール(左右それぞれの側に10マイクロリットル)をピペットにより滴下注入した。T=10分に、別の綿球を口腔内に挿入し、10分後、取り除いて、余分な唾液を拭き取った。ベースラインの心血管及び呼吸パラメータに対する影響を、90分間に渡って記録した。フィゾスチグミンは、全ての測定パラメータに変化をもたらし、観察期間中に見られた平均最大効果は、肺膨張圧で44%の増加、平均動脈圧で17%の減少、心拍数で9.3%の減少となった(全てn=2)。一方、ベタネコールでは、これらのパラメータで何れも最小限の(有意ではない)効果が生じ、平均最大変化は、肺膨張圧、平均動脈圧、及び心拍数で、それぞれ0%の変化、3%の減少、及び1%の減少となった(n=3)。
【0027】
追加の比較として、静脈内投与した0.3マイクログラム/kg乃至300マイクログラム/kgの用量範囲でのベタネコール(生理食塩水中で調製、投与量0.1ml)の影響をラットにおいて研究した。用量は、各動物(n=3)に昇順で投与し、心血管及び呼吸の影響を5分間又は記録パラメータがベースラインに戻るまで(何れか遅い方)観測した。ベタネコールは、最も少ない投与用量である0.3マイクログラム/kgでも、平均動脈圧(31%減少)及び心拍数(6%減少)の有意な減少を発生させ、一方、肺膨張圧の増加が、3マイクログラム/kg以上で見られた。300マイクログラム/kgにおいてベタネコールで観察された影響は、平均動脈圧の72%減少、心拍数の69%減少、及び肺膨張圧の30%増加となった。これらのデータは、上述した有効性データと合わせて、局所適用したベタネコールが、頬側吸収により有害な全身的作用を発生させることなく、唾液流の刺激を達成可能であることを示している。対照的に、データは、悪影響を発生させる上で充分となるフィゾスチグミンが頬側粘膜から吸収されることを示している。
【0028】
臨床研究
【0029】
口腔乾燥症を有する略20人の患者群を無作為化し、プラセボ又はベタネコール製剤或いはその逆を、治療セグメント間に少なくとも3日間の洗い流し期間を挟んで与えた。各治療では、少量(略0.5ml)の溶液を頬側粘膜に対して1乃至2分間保持し、その後嚥下した。臨床検査には、生命兆候、血液学/化学、及び頬側粘膜の外観を含めた。有効性の測定には、標準的手法を用いた唾液流と大腺及び小腺の組成の測定(例えば、Ferguson 1999, Archives of Oral Biol., 44:S11-S14; Boros et al., Archives of Oral Biol., 44:S59-S62を参照)及び検証済みの尺度を用いた主観的な口腔の乾燥度/快適さの評価(例えば、Chainani-Wu et al., 2006, Spec. Care Dentist 26(4):164-170を参照)を含めた。ベタネコールは、唾液流を増加させ、主観的な口腔の乾燥度/快適さのスコアを改善することが明らかとなった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
口腔乾燥症の治療のための局所投与用のベタネコール。
【請求項2】
前記口腔乾燥症は、頭頸部癌に随伴する、請求項1記載のベタネコール。
【請求項3】
前記口腔乾燥症は、薬物療法に随伴する、請求項1記載のベタネコール。
【請求項4】
前記口腔乾燥症は、癌の化学療法処置に随伴する、請求項1記載のベタネコール。
【請求項5】
前記口腔乾燥症は、シェーグレン症候群に随伴する、請求項1記載のベタネコール。
【請求項6】
前記口腔乾燥症は、後期癌に随伴する、請求項1記載のベタネコール。
【請求項7】
塩化物の形態である、請求項1乃至6の何れかに記載のベタネコール。
【請求項8】
S鏡像異性体の形態である、請求項1乃至7の何れかに記載のベタネコール。
【請求項9】
嚥下される前に一定期間に渡って頬側口腔内に維持されるべき製剤において投与される、請求項1乃至8の何れかに記載のベタネコール。
【請求項10】
ベタネコールを含む液状又は半固体製剤を包含し且つその分注が可能なパッケージの形態である単位用量。
【請求項11】
前記製剤は、保存料を含む、請求項10記載の単位用量。
【請求項12】
前記製剤は、無菌である、請求項10又は11記載の単位用量。

【公表番号】特表2013−510840(P2013−510840A)
【公表日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−538414(P2012−538414)
【出願日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際出願番号】PCT/GB2010/051887
【国際公開番号】WO2011/058366
【国際公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(509294346)アカシア ファーマ リミテッド (3)
【氏名又は名称原語表記】ACACIA PHARMA LIMITED
【Fターム(参考)】