口腔内の細菌群を改善するラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95(LactobacillusfermentumSG−A95)及びその保健組成物
【課題】口腔内細菌群を改善する保健組成物の提供。
【解決手段】本発明の口腔内の細菌群を改善する寄託番号CGMCC3248のラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95(Lactobacillus fermentum)、SEQ ID NO:1に示されるヌクレオチド配列のコードを含むラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95、及び前記ラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95を培地で発酵させて得た発酵産物は口腔内の歯周病細菌の成長を効果的に抑制し、ラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95(Lactobacillus fermentum SG−A95)及びその発酵産物から作成した保健組成物は、口腔の歯周病細菌の成長抑制に用いる。
【解決手段】本発明の口腔内の細菌群を改善する寄託番号CGMCC3248のラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95(Lactobacillus fermentum)、SEQ ID NO:1に示されるヌクレオチド配列のコードを含むラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95、及び前記ラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95を培地で発酵させて得た発酵産物は口腔内の歯周病細菌の成長を効果的に抑制し、ラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95(Lactobacillus fermentum SG−A95)及びその発酵産物から作成した保健組成物は、口腔の歯周病細菌の成長抑制に用いる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は口腔内の細菌成長を抑制するラクトバシラス・ファーメンタム及びその発酵物に関する。
【背景技術】
【0002】
正常な人の口腔内には多くの細菌、黴菌、さらにはウイルスが存在し、そのうち細菌の数が最も多く、1mlの唾液中に1億個もの細菌が存在し、口腔内全体の細菌の種類は600種を超えるが、これら細菌の全てが病原細菌というわけではなく、中には一部プロバイオティックスも含まれる。通常これらの細菌は相互に細菌集落の相対的平衡を維持しており、直接人を病気に至らしめることはないが、体の免疫力または抵抗力が低下したり、口腔環境が変化したり、薬物の服用または全身的な疾病がある等の状況においては、病原細菌が過度に成長して口腔疾患を引き起こし、軽いものでは口臭、歯垢の発生、歯肉炎の発生など、重いものでは虫歯、歯周病などを引き起こすことがあり、さらには細菌が血管内に侵入して大量に繁殖し、菌血症を発生することさえある。
【0003】
台湾歯科医師公会全国連合会の年度健康保険資料の統計によると、台湾地区の成人の歯周病罹患率は9割にも達しており、歯の保健の重要性が分かる。
【0004】
歯周病は一般に歯肉炎(gingivitis)と歯周炎(Periodontitis)の2種類に分けることができる。歯肉炎の主な症状は歯肉の出血、腫れ、赤み等である。歯周炎は歯肉支持組織と歯の歯槽骨(alveolar bone)が破壊された状態を指す。
【0005】
歯周病にかかると、歯と歯肉間の溝が深くなり、「歯周ポケット」(periodontal pocket)が形成される。通常の歯が健康な人の歯周ポケットの深さは約1mm〜2mmの間であり、軽度の歯周炎患者の歯周ポケットの深さは約3〜4mm、中度の患者は4〜6mm、重度の患者の歯周ポケットの深さは6mm以上である。歯周ポケットが深くなると、歯肉そのものが短くなる。歯の外観が長く見えるようになったり、歯にぐらつきが生じ始めたりすることは、重度の歯周病の警告であることがある。
【0006】
歯肉炎及び歯周炎はいずれも「歯周病細菌」(periodontal bacteria)に感染して引き起こされるものであり、代表的な細菌にはポルフィロモナス・ジンジバリス(Porphyromonas gingivalis)がある。
【0007】
唾液中の糖タンパク質(glycoprotein)が歯の表面で薄膜を形成し、細菌はここに付着して食べ物の中の糖分を吸い取ると、薄膜が大きく厚くなり、歯垢が形成される。さらに、歯周ポケット中に歯垢が形成されると、歯周病細菌が歯垢中で大量に繁殖する。歯周病細菌は嫌気性であるため、酸素が到達しにくい歯周ポケットは成長に最適な環境となる。歯垢もストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)の温床であり、90%以上の成人の口腔内にこの細菌があり、この菌は虫歯を引き起こす主要な細菌でもある。ストレプトコッカス・ミュータンスが糖分を分解して発生する酸性物質が歯のエナメル質(enamel)と象牙質(dentin)を侵蝕すると、虫歯となる。
【0008】
歯周病については、歯周病細菌が歯肉に侵入すると、免疫反応が引き起こされる。歯周病細菌は酵素を分泌して歯肉細胞を溶解し、歯肉内部に侵入する。歯周病細菌の数量がまだ少ないときはその侵入を阻止することができるが、大量に繁殖すると抑制できなくなる。
【0009】
現在、虫歯または歯周病の発生を予防する方法がいくつかあり、例えば歯の表面に細菌が付着するのを防ぐ抗付着剤を使用し、歯垢の形成を減少して細菌による歯の侵蝕を防ぐ方法(台湾特許出願第094144377号)、抗菌剤を使用して細菌の成長を抑制する方法(米国特許第5368845号;WO92/14475)、または現在広く用いられているフッ素を利用して、エナメル質の酸性物質に対する溶解度を低下させて虫歯を予防する方法などがある。しかしながら、現在乳酸菌及びその口腔疾患治療に対する効果に関する研究は非常に少ない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】台湾特許出願第094144377号
【特許文献2】米国特許第5368845号
【特許文献3】WO92/14475
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、寄託番号CGMCC3248のラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95(Lactobacillus fermentum)、さらにSEQ ID NO:1に示されるヌクレオチド配列のコードを含む前記ラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95を提供することにある。
【0012】
本発明のもう一つの目的は、前記ラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95を培地で発酵させて得た発酵産物を提供することにある。
【0013】
本発明のさらなる目的は、前述のラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95(Lactobacillus fermentum)またはその発酵産物を口腔保健に応用し、個体口腔内の歯周病細菌の成長を効果的に抑制して、口腔内細菌群を改善する保健組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明のSEQ ID NO:1は既知のラクトバシラス・ファーメンタムの遺伝物質と明らかな差異がある(図1参照)。このほか、API 50 CHL照合で本発明のラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95と欧州特許第0154549号の開示する菌株AD0002(寄託番号FERM P−7539)にも明らかな差異があることが示されており、表1に示すとおりである。
【0015】
本発明のラクトバシラス・ファーメンタムと欧州特許第0154549号の開示する菌株AD0002(寄託番号FERM P−7539)のAPI 50 CHL 照合
【表1】
【0016】
また、本発明のいう個体とは哺乳動物であり、ヒトを最良とする。
【0017】
体外実験または生体実験から分かるように、よく見受けられる歯周病細菌、例えばストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)、ストレプトコッカス・サンギス(Streptococcus sanguis)、ポルフィロモナス・ジンジバリス(Porphyromonas gingivalis)及びアクチノマイセス・ビスコーサス(Actinomyces viscosus)等は皆ラクトバシラス・ファーメンタム生菌またはその発酵産物の影響を受けて成長を停止し、さらには死亡する。ラクトバシラス・ファーメンタムの口腔内細菌成長を抑制する特性により、ラクトバシラス・ファーメンタムを次に示す口腔細菌性疾患の予防または治療に応用することができる。
【0018】
(a)ポルフィロモナス・ジンジバリスに関連する疾患:歯周疾患(Periodontal disease)、骨粗鬆症、海綿静脈洞血栓性静脈炎(Cavernous sinus thrombophlebitis)、歯周病(Periodontitis)、心血管疾患、感染性心内膜炎(Infective endocarditis)、糖尿病、呼吸系疾患、動脈硬化、冠状動脈心臓病、脳卒中、リウマチ性関節炎。
(b)ストレプトコッカス・サンギスに関連する疾患:虫歯、感染性心内膜炎、急性感染性関節炎(Acute septic arthritis)、心血管疾患。
(c)ストレプトコッカス・ミュータンスに関連する疾患:虫歯、感染性心内膜炎。
(d)アクチノマイセス・ビスコーサスに関連する疾患:歯周病。
【0019】
本発明の開示するラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95生菌そのものが、細菌成長を抑制する能力を備えているため、実際の使用上、ラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95菌株を直接口腔に塗布する方式で使用することができる。そして、菌株の活性を破壊せず口腔内でそれが復原可能であることを前提として、本発明の菌株を冷凍または乾燥して錠剤またはスプレー剤にしたり、液体に溶解させたり、食品または医薬品或いは口腔洗浄剤の添加剤とする方式で製造して使用することもできる。ラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95生菌の細菌抑制能力を破壊しないあらゆる方式が本発明の適用可能な方式である。
【0020】
本発明のラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95発酵産物は、ラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95成分を培養できる培地でラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95を発酵させた後の産物を指す。前記培地の主要成分はブドウ糖、プロテアーゼ、肉エキス、酵母菌エキス、塩類等の物質である。ラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95発酵後の産物は、透析膜による純化を経ても、例えばSpectra/Por(登録商標)透析膜(MWCO:3500)を使用して透析を行っても、その細菌抑制効果には影響せず、その抑菌能力は完全にラクトバシラス・ファーメンタム生菌菌体に依存しているのではなく、その発酵過程で発生する代謝物に依存していることが示されている。このため、本発明のラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95を有効成分とした口腔保健物は、ラクトバシラス・ファーメンタム生菌体を除去したラクトバシラス・ファーメンタム発酵産物のみを含むことができる。
【0021】
実際の応用上、本発明はラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95発酵産物を口腔に塗布したり、錠剤またはスプレー剤としたり、液体に溶解させたり、食品または医薬品、或いは口腔洗浄剤に加えて製造し、使用することもできる。ラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95発酵産物の細菌抑制能力を破壊しないあらゆる方式が本発明の適用可能な方式である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明のSEQ ID NO:1と既知のラクトバシラス・ファーメンタム(米国特許公開第2002/0094328号中の菌株ATCC14931)のヌクレオチド配列を示す照合図(NCBI blastプログラム使用)である。QueryはATCC 14931の配列、Sbjctは本発明のSEQ ID NO:1の配列。
【図2】ラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95治療群(tLFP4)肝臓組織切片(200X)である。
【図3】ラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95治療群(tLFP4)腎臓組織切片(200X)である。
【図4】ラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95治療群(tLFBH)肝臓組織切片(200X)である。
【図5】ラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95治療群(tLFBH)腎臓組織切片(200X)である。
【図6】対照群のテトラサイクリン治療群(tTC)肝臓組織切片(200X)である。
【図7】対照群のテトラサイクリン治療群(tTC)腎臓組織切片(200X)である。
【図8】対照群の無治療(蒸留水)群(tMT)肝臓組織切片(200X)である。
【図9】対照群の無治療(蒸留水)群(tMT)腎臓組織切片(200X)である。
【図10】ラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95予防群(pLFP4)肝臓組織切片(200X)である。
【図11】ラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95予防群(pLFP4)腎臓組織切片(200X)である。
【図12】ラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95予防群(pLFBH)肝臓組織切片(200X)である。
【図13】ラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95予防群(pLFBH)肝臓組織切片(200X)である。
【図14】対照群のテトラサイクリン予防群(pTC)肝臓組織切片(200X)である。
【図15】対照群のテトラサイクリン予防群(pTC)腎臓組織切片(200X)である。
【図16】対照群の無予防(蒸留水)群(pMT)肝臓組織切片(200X)である。
【図17】対照群の無予防(蒸留水)群(pMT)腎臓組織切片(200X)である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の口腔細菌性疾患の予防または治療に用いる保健組成物は、そのうちの有効成分がラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95(Lactobacillus fermentum)またはその発酵産物であり、ここでは体外(in vitro)または生体(in vivo)実験で前記菌体またはその発酵物の歯周病に対する効果を検証する。
【実施例1】
【0024】
体外実験(in vitro study)
ラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95を液体培地(本実施例はMRS培地を採用)で、30〜37℃で15〜24時間培養後、発酵菌液を30倍の濃度に濃縮し、透析膜(Spectra/Por(登録商標)Dialysis Membrane;MWCO:3500、Spectrum Laboratories Inc,CA)を使用して48時間透析し、さらに実験の必要に応じてラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95と濃縮した発酵産物を異なる濃度に希釈した。それぞれストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)(ATCC 25175)、ストレプトコッカス・サンギス(Streptococcus sanguis)(ATCC 49295)、ポルフィロモナス・ジンジバリス(Porphyromonas gingivalis)(ATCC 33277)、アクチノマイセス・ビスコーサス(Actinomyces viscosus)(ATCC 15987)とディスク寒天拡散試験(Disc agar diffusion test)、ブロス希釈法(Broth dilution method)、ラクトバシラス・ファーメンタム生菌と病原菌の共同培養試験を行い、病原菌成長の抑制状況を調べた。以上4株の病原菌の菌株は財団法人食品工業発展研究所生物資源保存及び研究中心またはATCCから購入した。
【0025】
MRS培地は乳酸菌の培養に常用され、その主な成分はブドウ糖、プロテアーゼ、肉エキス、酵母菌エキス、塩類等の物質である。
【0026】
(a)ディスク寒天拡散試験
濁度が0.5比濁度に相当するまで培養したストレプトコッカス・ミュータンス、ストレプトコッカス・サンギス、ポルフィロモナス・ジンジバリス、アクチノマイセス・ビスコーサス菌液に、無菌棉棒を3秒間浸漬し、寒天表面に3方向に均等に塗布して接種材料を均一に分布させた。ラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95の30倍発酵産物を透析した後、濃縮4倍(LFP4)、濃縮2倍(LFP2)及び1倍(LFP1)(未濃縮の発酵菌液)に調整し、ラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95生菌をそれぞれ1×109(LFBL)、2×109(LFBM)、5×109(LFBH)の異なる菌数に希釈した。直径6mmの消毒滅菌済みペーパーディスクを異なる濃度のラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95の発酵産物または異なる生菌数の菌液中に3秒間浸漬させた後、ディスクを取り出して寒天表面に貼り付け、37℃の嫌気培養ボックス中に入れて24時間培養した後、その阻止円の大きさを測定した。
【0027】
(b)ブロス希釈法(Broth dilution method)
ラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95の30倍発酵産物を透析した後、濃縮4倍(LFP4)、濃縮2倍(LFP2)及び1倍(LFP1)(未濃縮の発酵菌液)に調整し、また別途ストレプトコッカス・ミュータンス、ストレプトコッカス・サンギス、ポルフィロモナス・ジンジバリス、アクチノマイセス・ビスコーサス菌液を無菌標準液体培地(BHI Broth)で濁度が0.5比濁度に相当するまで培養し、それぞれ50μLの菌液を試験管中に加え、37℃の嫌気培養ボックス中に入れて48時間培養した後、平板計数法で細菌集落数を計算し、サンプルの発育阻止濃度を推算した。
【0028】
(c)ラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95と病原菌の共同培養試験
ラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95生菌をストレプトコッカス・ミュータンス、ストレプトコッカス・サンギス、ポルフィロモナス・ジンジバリスと共に試験管に入れ、37℃で共同培養した。異なる時間点でサンプリングをそれぞれ行い、平板計数法で細菌集落数を計算し、サンプルの病原菌成長抑制状況を調べた。
【実施例2】
【0029】
動物生体実験(in vivo study)
実験群と対照群をそれぞれ設定した。ラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95実験群は、それぞれ濃縮4倍、濃縮2倍及び1倍(未濃縮発酵菌液)の透析後のラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95発酵産物濃縮液3組と、それぞれ1×109、2×109、5×109の異なる菌数のラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95 3組の6組に分けた。対照群は2組(テトラサイクリン(tetracycline)0.267mg/mL及び蒸留水(distilled water)とした。
【0030】
(a)動物歯周病予防効果の評価
八週齢の雌Balb/cマウス各組12匹(表2)を選び、毎日異なる濃度のラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95発酵産物またはラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95生菌、テトラサイクリン0.267mg/mLまたは蒸留水各1mlを投与し、かつその下顎前歯に歯列矯正用ワイヤ(ligature wire)を取り付け、歯周組織に歯周病病原細菌ストレプトコッカス・ミュータンスを接種して、マウスを人工的に歯周組織病変の状態にした。この操作は全部の動物が犠牲になるまで行われ、その病理表徴を観察、記録した。歯科医師による診断で対照群(蒸留水を与えた模擬処置群(mock−treated group))の歯肉に赤い腫れ及び歯垢の出現が開始したら、ワイヤの束縛を解除し、歯周病病原細菌の接種を停止した。ワイヤの束縛を解除した後、4、8、12、16日目にマウスの歯周ポケット深度(pocket depth)を測定し、各組3匹を犠牲にして採血し、検体を取得して組織学的観察を行った。
【0031】
動物実験予防群のグループ分け(注:ヒトに使用するテトラサイクリン剤量は体重75kgで1日当たり1000mgであり、これに基づきマウスの1日に使用する剤量を体重20gで約0.267mgと算出)
【表2】
【0032】
(b)動物歯周病治療効果の評価
八週齢の雌Balb/cマウス各組12匹(表3)を選び、その下顎前歯に歯列矯正用ワイヤを取り付け、対照群の歯肉に赤みと腫れ及び歯垢が出現するまで、歯周組織に歯周病病原細菌ストレプトコッカス・ミュータンスを接種し、マウスを人工的に歯周組織病変の状態にした。それぞれ歯科医師による組織病変の診断後、毎日異なる濃度のラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95発酵産物またはラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95生菌、テトラサイクリン0.267mg/mLまたは蒸留水各1mlを投与し、その病理表徴を観察、記録した。治療開始日からワイヤの束縛を解除し、歯周病病原細菌の接種を停止した。ワイヤ束縛解除後4、8、12、16日目にマウスの歯周ポケットの深さを測定し、各組3匹を犠牲にして採血し、検体を取得して組織学的観察を行った。
【0033】
動物実験治療群のグループ分け
【表3】
【0034】
(c)歯周ポケット深度(periodontal pocket depth)の改善割合
対照群を標準として、マン・ホイットニー検定(Mann−Whitney test)を使用し、各群中の各個体の検査を行い、有意差のある個体を改善個体と呼ぶこととした。(改善個体数/群の全個体数)×100%=歯周ポケット深度改善割合である。
【0035】
(d)臨床病理及び生化学検査
死亡していない動物を犠牲にして頚動脈から取った血液を3000r.p.m.、4℃の条件下で10分間遠心処理し、上層の血清を取得して自動生化学分析装置でそのALT、AST、クレアチニン、BUN生化学指標を測定した。且つ、その重要な臓器(肝臓、腎臓)を10%ホルマリン液で固定し、組織切片のパラフィン包埋後にH.E.染色を行い、病理学的観察を行った。
【0036】
(統計分析)
実験数値は平均値±標準偏差(mean±S.D.)で表示する。マウスの歯周ポケット状況の実験群と対照群間の統計差異は、縦断的(longitudinal)研究では一元配置分散分析(One‐way ANOVA)とDunnett多重事後比較法(Dunnett multiple post hoc comparison)を採用して測定し、横断的(cross−sectional)研究では一元配置分散分析とLSD多重事後比較法(LSD multiple post hoc comparison)を採用して測定した。また、マン・ホイットニー検定を採用して歯周ポケット改善の個体数を調べた。統計有意水準のp値は0.05である。
【0037】
(結果)
1.体外実験(in vitro study)
(a)ディスク寒天拡散試験
表4にディスク寒天拡散試験の抗菌効果を示す。無菌ペーパーディスクの直径は6mmであり、阻止円が>6mmであれば抗菌効果があることを示し、そうでなければ抗菌効果がないことを示す。培養温度及び時間は37℃、24時間であり、対照群はテトラサイクリンを含むペーパーディスクで、阻止円の数値は平均値±標準偏差で表す(n=3)。
【0038】
ディスク寒天拡散試験の抗菌効果
【表4】
【0039】
表4は、ラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95濃縮2倍以上の発酵産物及び生菌がアクチノマイセス・ビスコーサス、ポルフィロモナス・ジンジバリス、ストレプトコッカス・ミュータンス、ストレプトコッカス・サンギスの4種類の病原菌に対して阻止円を形成したことを示している。
【0040】
(b)ブロス希釈法
【0041】
最低発育阻止濃度及び抗菌割合(100% − (実験群 ÷ 対照群) × 100%)
【表5】
【0042】
表5はラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95の発酵産物濃度の歯周病原細菌に対する48時間処理後の異なる抑制効果を示している。全体的にみて、高濃度のラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95産物が比較的よい抑制効果を有しているといえる。歯周病原細菌について見ると、ラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95の発酵産物のポルフィロモナス・ジンジバリスに対する抑制効果が最も顕著であり、剤量に依存する現象が見られ、次がアクチノマイセス・ビスコーサスである。ラクトバシラス・ファーメンタムの2倍以上の濃縮産物はこれら4株の病原菌に対してすべて抑制作用がある。
【0043】
(c)ラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95と病原菌の共同培養試験
【0044】
ラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95生菌(略称LF)とストレプトコッカス・ミュータンスの共同培養、病原菌成長抑制状況。
【表6】
【0045】
表6はラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95生菌とストレプトコッカス・ミュータンスの共同培養では、低菌数群(7乗)、中菌数群(8乗)、高菌数群(9乗)のいずれも、共同培養48時間内はストレプトコッカス・ミュータンス病原菌が存在せず、すべてストレプトコッカス・ミュータンス成長抑制の効果があることを示している。
【0046】
ラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95生菌とストレプトコッカス・サンギスの共同培養、病原菌成長抑制状況。
【表7】
【0047】
表7はラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95生菌とストレプトコッカス・サンギスの共同培養では、高菌数群(9乗)が共同培養10時間ですでにストレプトコッカス・サンギス病原菌が存在せず、中菌数群(8乗)と低菌数群(7乗)が共同培養14時間でストレプトコッカス・サンギス病原菌が存在しなくなっており、すべてストレプトコッカス・サンギス成長抑制の効果があることを示している。
【0048】
ラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95生菌とポルフィロモナス・ジンジバリスの共同培養、病原菌成長抑制状況。
【表8】
【0049】
表8はラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95生菌とポルフィロモナス・ジンジバリスの共同培養では、高菌数群(9乗)が共同培養6時間ですでにポルフィロモナス・ジンジバリス病原菌が存在せず、中菌数群(8乗)が共同培養8時間でポルフィロモナス・ジンジバリス病原菌が存在せず、低菌数群(7乗)が共同培養14時間でポルフィロモナス・ジンジバリス病原菌が存在しなくなっており、すべてポルフィロモナス・ジンジバリス成長抑制の効果があることを示している。
【0050】
2.動物生体実験(in vivo study)
(a)動物歯周病予防効果の評価
【0051】
ラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95予防群(pLF)のマウスの歯周ポケット深度(mm)(一元配置分散分析とDunnett多重事後比較法)の異なる時間点における各群と対照群(pMT)の比較。(*p<0.05;**p<0.01)
【表9】
【0052】
予防群ラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95発酵産物及び生菌数の評価では、各群に異なる濃度のサンプルを与えたときの歯周ポケット深度に対する影響は、異なる時間点で各群共蒸留水を与えた対照群(pMT)に対してすべての時間点で有意差があった。テトラサイクリンを与えた予防対照群(pTC)はすべての時間点で有意差があった。
【0053】
ラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95予防群(pLF)のマウスの歯周ポケット深度(mm)(一元配置分散分析とLSD多重事後比較法)、各濃度群別の異なる時間点と4日目の比較。(*p<0.05; **p<0.01)。
【表10】
【0054】
ラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95予防群発酵産物と生菌数の各濃度群別、異なる時間点の群内での比較は、4倍(pLFP4)濃度、高濃度生菌群(pLFBH)及びテトラサイクリン群(pTC)が12日目及び16日目の歯周ポケットの改善程度は4日目と比較して有意差があった。
【0055】
(b)動物歯周病治療効果の評価
【0056】
ラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95治療群(tLF)のマウスの歯周ポケット深度(mm)(一元配置分散分析とDunnett多重事後比較法)の異なる時間点における、各群と対照群(tMT)の比較。(*p<0.05; **p<0.01)
【表11】
【0057】
治療群ラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95発酵産物及び生菌数の評価では、各群に異なる濃度を与えたときの歯周ポケット深度に対する影響は、異なる時間点の各群間にすべて有意差があった。各時間点で対照群(tMT)と比較すると、4倍濃度群(tLFP4)、高濃度生菌群(tLFBH)及びテトラサイクリン群(tTC)が各時間点すべてで有意差があった。1倍及び2倍の発酵産物を与えた群(tLFP1とtLFP2)及び低濃度生菌群(tLFBL)は、8日目を除き、残りの時間点すべてで有意差があった。中濃度生菌群(tLFBM)は12日目のみで有意差があった。
【0058】
ラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95治療群(tLF)のマウスの歯周ポケット深度(mm)(一元配置分散分析とLSD多重事後比較法)各濃度群別の異なる時間点と4日目の比較。(*p<0.05; **p<0.01)
【表12】
【0059】
治療群のラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95発酵産物投与及び生菌数各群では、異なる時間点の群内比較で、高濃度生菌群(tLFBH)は8、12、16日目に(4日目と比較して)有意差があり、テトラサイクリンの組(tTC)は12日目と16日目に有意差があった。
【0060】
(c)歯周ポケット深度(periodontal pocket depth)改善割合
【0061】
ラクトバシラス・ファーメンタム予防群SG−A95(pLF)歯周ポケット改善割合(予防群中の無処理対照群(pMT)と比較して有意差のある(マン・ホイットニー検定、p<0.05)改善が見られた個体割合)。
【表13】
【0062】
ラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95予防群歯周ポケット深度改善割合は16日目に、2倍と4倍濃度群及び低濃度生菌群(pLFP2、pLFP4及びpLFBL)を除き、各群すべて100%に達した。
【0063】
ラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95治療群(tLF)歯周ポケット改善割合(無治療対照群(tMT)と比較して有意差のある(マン・ホイットニー検定,p<0.05)改善が見られた個体割合)。
【表14】
【0064】
ラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95治療群は、中濃度生菌群を除き、16日目にすべて33%〜100%の改善率が見られた。
【0065】
(d)臨床病理検査
SG−A95発酵産物を与えた群または生菌数が最高濃度の各群は16日目の肝臓、腎臓組織切片(図2〜図5と図10〜図13)において、各群の肝臓及び腎臓組織細胞に顕著な毒性傷害の表徴はなく、炎症細胞浸潤もなく、無治療対照群(tMTまたはpMT)(図6〜図9と図14〜図17)と比較して明らかな差異はなかった。
【0066】
(結論)
体外実験のディスク寒天拡散試験から、ラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95濃縮2倍以上の発酵産物はこれら4種類の病原菌に対してすべて阻止円の形成があり、生菌は1×109(LFBL)、2×109(LFBM)または5×109(LFBH)のいずれもアクチノマイセス・ビスコーサス、ポルフィロモナス・ジンジバリス、ストレプトコッカス・ミュータンス、ストレプトコッカス・サンギスの4種類の歯周病原細菌に対してすべて9〜10mmの阻止円が形成された。ブロス希釈法試験においては、ラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95の発酵産物濃度が歯周病原細菌に対して異なる程度の抑制効果があることが示された。共同培養のデータから、ラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95生菌のポルフィロモナス・ジンジバリスに対する抑制効果が最も優れており、ストレプトコッカス・ミュータンス、ストレプトコッカス・サンギスに対しても抑制作用があり、且つ生菌数が高いほど抑制効果も良好であることが示された。
【0067】
歯周病動物モデル生体実験はラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95の発酵産物及び生菌の歯周状況に対する改善を示し、予防の効果は治療の効果より優れていた。予防効果について言うと、各群の異なる濃度投与の歯周ポケット深度に対する影響は、異なる時間点で各群とも対照群(pMT)に対してすべて有意差のある改善を示した。治療効果の部分は、発酵産物4倍濃度群(tLFP4)、高濃度生菌群(tLFBH)の効果が最良であった。
【0068】
ラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95発酵産物投与または生菌数が最高濃度の各群は、16日目に動物を犠牲にしたとき取り出した肝臓と腎臓組織に対して病理切片を行い、各群の肝臓及び腎臓組織細胞には顕著な毒性傷害の表徴はなく、安全性が極めて高いことが示された。
【0069】
体外及び動物生体実験を組み合わせ、ラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95の発酵産物及び生菌は歯周炎の発生を予防でき、歯周炎症の状況を改善することができる。
【技術分野】
【0001】
本発明は口腔内の細菌成長を抑制するラクトバシラス・ファーメンタム及びその発酵物に関する。
【背景技術】
【0002】
正常な人の口腔内には多くの細菌、黴菌、さらにはウイルスが存在し、そのうち細菌の数が最も多く、1mlの唾液中に1億個もの細菌が存在し、口腔内全体の細菌の種類は600種を超えるが、これら細菌の全てが病原細菌というわけではなく、中には一部プロバイオティックスも含まれる。通常これらの細菌は相互に細菌集落の相対的平衡を維持しており、直接人を病気に至らしめることはないが、体の免疫力または抵抗力が低下したり、口腔環境が変化したり、薬物の服用または全身的な疾病がある等の状況においては、病原細菌が過度に成長して口腔疾患を引き起こし、軽いものでは口臭、歯垢の発生、歯肉炎の発生など、重いものでは虫歯、歯周病などを引き起こすことがあり、さらには細菌が血管内に侵入して大量に繁殖し、菌血症を発生することさえある。
【0003】
台湾歯科医師公会全国連合会の年度健康保険資料の統計によると、台湾地区の成人の歯周病罹患率は9割にも達しており、歯の保健の重要性が分かる。
【0004】
歯周病は一般に歯肉炎(gingivitis)と歯周炎(Periodontitis)の2種類に分けることができる。歯肉炎の主な症状は歯肉の出血、腫れ、赤み等である。歯周炎は歯肉支持組織と歯の歯槽骨(alveolar bone)が破壊された状態を指す。
【0005】
歯周病にかかると、歯と歯肉間の溝が深くなり、「歯周ポケット」(periodontal pocket)が形成される。通常の歯が健康な人の歯周ポケットの深さは約1mm〜2mmの間であり、軽度の歯周炎患者の歯周ポケットの深さは約3〜4mm、中度の患者は4〜6mm、重度の患者の歯周ポケットの深さは6mm以上である。歯周ポケットが深くなると、歯肉そのものが短くなる。歯の外観が長く見えるようになったり、歯にぐらつきが生じ始めたりすることは、重度の歯周病の警告であることがある。
【0006】
歯肉炎及び歯周炎はいずれも「歯周病細菌」(periodontal bacteria)に感染して引き起こされるものであり、代表的な細菌にはポルフィロモナス・ジンジバリス(Porphyromonas gingivalis)がある。
【0007】
唾液中の糖タンパク質(glycoprotein)が歯の表面で薄膜を形成し、細菌はここに付着して食べ物の中の糖分を吸い取ると、薄膜が大きく厚くなり、歯垢が形成される。さらに、歯周ポケット中に歯垢が形成されると、歯周病細菌が歯垢中で大量に繁殖する。歯周病細菌は嫌気性であるため、酸素が到達しにくい歯周ポケットは成長に最適な環境となる。歯垢もストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)の温床であり、90%以上の成人の口腔内にこの細菌があり、この菌は虫歯を引き起こす主要な細菌でもある。ストレプトコッカス・ミュータンスが糖分を分解して発生する酸性物質が歯のエナメル質(enamel)と象牙質(dentin)を侵蝕すると、虫歯となる。
【0008】
歯周病については、歯周病細菌が歯肉に侵入すると、免疫反応が引き起こされる。歯周病細菌は酵素を分泌して歯肉細胞を溶解し、歯肉内部に侵入する。歯周病細菌の数量がまだ少ないときはその侵入を阻止することができるが、大量に繁殖すると抑制できなくなる。
【0009】
現在、虫歯または歯周病の発生を予防する方法がいくつかあり、例えば歯の表面に細菌が付着するのを防ぐ抗付着剤を使用し、歯垢の形成を減少して細菌による歯の侵蝕を防ぐ方法(台湾特許出願第094144377号)、抗菌剤を使用して細菌の成長を抑制する方法(米国特許第5368845号;WO92/14475)、または現在広く用いられているフッ素を利用して、エナメル質の酸性物質に対する溶解度を低下させて虫歯を予防する方法などがある。しかしながら、現在乳酸菌及びその口腔疾患治療に対する効果に関する研究は非常に少ない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】台湾特許出願第094144377号
【特許文献2】米国特許第5368845号
【特許文献3】WO92/14475
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、寄託番号CGMCC3248のラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95(Lactobacillus fermentum)、さらにSEQ ID NO:1に示されるヌクレオチド配列のコードを含む前記ラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95を提供することにある。
【0012】
本発明のもう一つの目的は、前記ラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95を培地で発酵させて得た発酵産物を提供することにある。
【0013】
本発明のさらなる目的は、前述のラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95(Lactobacillus fermentum)またはその発酵産物を口腔保健に応用し、個体口腔内の歯周病細菌の成長を効果的に抑制して、口腔内細菌群を改善する保健組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明のSEQ ID NO:1は既知のラクトバシラス・ファーメンタムの遺伝物質と明らかな差異がある(図1参照)。このほか、API 50 CHL照合で本発明のラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95と欧州特許第0154549号の開示する菌株AD0002(寄託番号FERM P−7539)にも明らかな差異があることが示されており、表1に示すとおりである。
【0015】
本発明のラクトバシラス・ファーメンタムと欧州特許第0154549号の開示する菌株AD0002(寄託番号FERM P−7539)のAPI 50 CHL 照合
【表1】
【0016】
また、本発明のいう個体とは哺乳動物であり、ヒトを最良とする。
【0017】
体外実験または生体実験から分かるように、よく見受けられる歯周病細菌、例えばストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)、ストレプトコッカス・サンギス(Streptococcus sanguis)、ポルフィロモナス・ジンジバリス(Porphyromonas gingivalis)及びアクチノマイセス・ビスコーサス(Actinomyces viscosus)等は皆ラクトバシラス・ファーメンタム生菌またはその発酵産物の影響を受けて成長を停止し、さらには死亡する。ラクトバシラス・ファーメンタムの口腔内細菌成長を抑制する特性により、ラクトバシラス・ファーメンタムを次に示す口腔細菌性疾患の予防または治療に応用することができる。
【0018】
(a)ポルフィロモナス・ジンジバリスに関連する疾患:歯周疾患(Periodontal disease)、骨粗鬆症、海綿静脈洞血栓性静脈炎(Cavernous sinus thrombophlebitis)、歯周病(Periodontitis)、心血管疾患、感染性心内膜炎(Infective endocarditis)、糖尿病、呼吸系疾患、動脈硬化、冠状動脈心臓病、脳卒中、リウマチ性関節炎。
(b)ストレプトコッカス・サンギスに関連する疾患:虫歯、感染性心内膜炎、急性感染性関節炎(Acute septic arthritis)、心血管疾患。
(c)ストレプトコッカス・ミュータンスに関連する疾患:虫歯、感染性心内膜炎。
(d)アクチノマイセス・ビスコーサスに関連する疾患:歯周病。
【0019】
本発明の開示するラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95生菌そのものが、細菌成長を抑制する能力を備えているため、実際の使用上、ラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95菌株を直接口腔に塗布する方式で使用することができる。そして、菌株の活性を破壊せず口腔内でそれが復原可能であることを前提として、本発明の菌株を冷凍または乾燥して錠剤またはスプレー剤にしたり、液体に溶解させたり、食品または医薬品或いは口腔洗浄剤の添加剤とする方式で製造して使用することもできる。ラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95生菌の細菌抑制能力を破壊しないあらゆる方式が本発明の適用可能な方式である。
【0020】
本発明のラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95発酵産物は、ラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95成分を培養できる培地でラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95を発酵させた後の産物を指す。前記培地の主要成分はブドウ糖、プロテアーゼ、肉エキス、酵母菌エキス、塩類等の物質である。ラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95発酵後の産物は、透析膜による純化を経ても、例えばSpectra/Por(登録商標)透析膜(MWCO:3500)を使用して透析を行っても、その細菌抑制効果には影響せず、その抑菌能力は完全にラクトバシラス・ファーメンタム生菌菌体に依存しているのではなく、その発酵過程で発生する代謝物に依存していることが示されている。このため、本発明のラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95を有効成分とした口腔保健物は、ラクトバシラス・ファーメンタム生菌体を除去したラクトバシラス・ファーメンタム発酵産物のみを含むことができる。
【0021】
実際の応用上、本発明はラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95発酵産物を口腔に塗布したり、錠剤またはスプレー剤としたり、液体に溶解させたり、食品または医薬品、或いは口腔洗浄剤に加えて製造し、使用することもできる。ラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95発酵産物の細菌抑制能力を破壊しないあらゆる方式が本発明の適用可能な方式である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明のSEQ ID NO:1と既知のラクトバシラス・ファーメンタム(米国特許公開第2002/0094328号中の菌株ATCC14931)のヌクレオチド配列を示す照合図(NCBI blastプログラム使用)である。QueryはATCC 14931の配列、Sbjctは本発明のSEQ ID NO:1の配列。
【図2】ラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95治療群(tLFP4)肝臓組織切片(200X)である。
【図3】ラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95治療群(tLFP4)腎臓組織切片(200X)である。
【図4】ラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95治療群(tLFBH)肝臓組織切片(200X)である。
【図5】ラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95治療群(tLFBH)腎臓組織切片(200X)である。
【図6】対照群のテトラサイクリン治療群(tTC)肝臓組織切片(200X)である。
【図7】対照群のテトラサイクリン治療群(tTC)腎臓組織切片(200X)である。
【図8】対照群の無治療(蒸留水)群(tMT)肝臓組織切片(200X)である。
【図9】対照群の無治療(蒸留水)群(tMT)腎臓組織切片(200X)である。
【図10】ラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95予防群(pLFP4)肝臓組織切片(200X)である。
【図11】ラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95予防群(pLFP4)腎臓組織切片(200X)である。
【図12】ラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95予防群(pLFBH)肝臓組織切片(200X)である。
【図13】ラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95予防群(pLFBH)肝臓組織切片(200X)である。
【図14】対照群のテトラサイクリン予防群(pTC)肝臓組織切片(200X)である。
【図15】対照群のテトラサイクリン予防群(pTC)腎臓組織切片(200X)である。
【図16】対照群の無予防(蒸留水)群(pMT)肝臓組織切片(200X)である。
【図17】対照群の無予防(蒸留水)群(pMT)腎臓組織切片(200X)である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の口腔細菌性疾患の予防または治療に用いる保健組成物は、そのうちの有効成分がラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95(Lactobacillus fermentum)またはその発酵産物であり、ここでは体外(in vitro)または生体(in vivo)実験で前記菌体またはその発酵物の歯周病に対する効果を検証する。
【実施例1】
【0024】
体外実験(in vitro study)
ラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95を液体培地(本実施例はMRS培地を採用)で、30〜37℃で15〜24時間培養後、発酵菌液を30倍の濃度に濃縮し、透析膜(Spectra/Por(登録商標)Dialysis Membrane;MWCO:3500、Spectrum Laboratories Inc,CA)を使用して48時間透析し、さらに実験の必要に応じてラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95と濃縮した発酵産物を異なる濃度に希釈した。それぞれストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)(ATCC 25175)、ストレプトコッカス・サンギス(Streptococcus sanguis)(ATCC 49295)、ポルフィロモナス・ジンジバリス(Porphyromonas gingivalis)(ATCC 33277)、アクチノマイセス・ビスコーサス(Actinomyces viscosus)(ATCC 15987)とディスク寒天拡散試験(Disc agar diffusion test)、ブロス希釈法(Broth dilution method)、ラクトバシラス・ファーメンタム生菌と病原菌の共同培養試験を行い、病原菌成長の抑制状況を調べた。以上4株の病原菌の菌株は財団法人食品工業発展研究所生物資源保存及び研究中心またはATCCから購入した。
【0025】
MRS培地は乳酸菌の培養に常用され、その主な成分はブドウ糖、プロテアーゼ、肉エキス、酵母菌エキス、塩類等の物質である。
【0026】
(a)ディスク寒天拡散試験
濁度が0.5比濁度に相当するまで培養したストレプトコッカス・ミュータンス、ストレプトコッカス・サンギス、ポルフィロモナス・ジンジバリス、アクチノマイセス・ビスコーサス菌液に、無菌棉棒を3秒間浸漬し、寒天表面に3方向に均等に塗布して接種材料を均一に分布させた。ラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95の30倍発酵産物を透析した後、濃縮4倍(LFP4)、濃縮2倍(LFP2)及び1倍(LFP1)(未濃縮の発酵菌液)に調整し、ラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95生菌をそれぞれ1×109(LFBL)、2×109(LFBM)、5×109(LFBH)の異なる菌数に希釈した。直径6mmの消毒滅菌済みペーパーディスクを異なる濃度のラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95の発酵産物または異なる生菌数の菌液中に3秒間浸漬させた後、ディスクを取り出して寒天表面に貼り付け、37℃の嫌気培養ボックス中に入れて24時間培養した後、その阻止円の大きさを測定した。
【0027】
(b)ブロス希釈法(Broth dilution method)
ラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95の30倍発酵産物を透析した後、濃縮4倍(LFP4)、濃縮2倍(LFP2)及び1倍(LFP1)(未濃縮の発酵菌液)に調整し、また別途ストレプトコッカス・ミュータンス、ストレプトコッカス・サンギス、ポルフィロモナス・ジンジバリス、アクチノマイセス・ビスコーサス菌液を無菌標準液体培地(BHI Broth)で濁度が0.5比濁度に相当するまで培養し、それぞれ50μLの菌液を試験管中に加え、37℃の嫌気培養ボックス中に入れて48時間培養した後、平板計数法で細菌集落数を計算し、サンプルの発育阻止濃度を推算した。
【0028】
(c)ラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95と病原菌の共同培養試験
ラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95生菌をストレプトコッカス・ミュータンス、ストレプトコッカス・サンギス、ポルフィロモナス・ジンジバリスと共に試験管に入れ、37℃で共同培養した。異なる時間点でサンプリングをそれぞれ行い、平板計数法で細菌集落数を計算し、サンプルの病原菌成長抑制状況を調べた。
【実施例2】
【0029】
動物生体実験(in vivo study)
実験群と対照群をそれぞれ設定した。ラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95実験群は、それぞれ濃縮4倍、濃縮2倍及び1倍(未濃縮発酵菌液)の透析後のラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95発酵産物濃縮液3組と、それぞれ1×109、2×109、5×109の異なる菌数のラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95 3組の6組に分けた。対照群は2組(テトラサイクリン(tetracycline)0.267mg/mL及び蒸留水(distilled water)とした。
【0030】
(a)動物歯周病予防効果の評価
八週齢の雌Balb/cマウス各組12匹(表2)を選び、毎日異なる濃度のラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95発酵産物またはラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95生菌、テトラサイクリン0.267mg/mLまたは蒸留水各1mlを投与し、かつその下顎前歯に歯列矯正用ワイヤ(ligature wire)を取り付け、歯周組織に歯周病病原細菌ストレプトコッカス・ミュータンスを接種して、マウスを人工的に歯周組織病変の状態にした。この操作は全部の動物が犠牲になるまで行われ、その病理表徴を観察、記録した。歯科医師による診断で対照群(蒸留水を与えた模擬処置群(mock−treated group))の歯肉に赤い腫れ及び歯垢の出現が開始したら、ワイヤの束縛を解除し、歯周病病原細菌の接種を停止した。ワイヤの束縛を解除した後、4、8、12、16日目にマウスの歯周ポケット深度(pocket depth)を測定し、各組3匹を犠牲にして採血し、検体を取得して組織学的観察を行った。
【0031】
動物実験予防群のグループ分け(注:ヒトに使用するテトラサイクリン剤量は体重75kgで1日当たり1000mgであり、これに基づきマウスの1日に使用する剤量を体重20gで約0.267mgと算出)
【表2】
【0032】
(b)動物歯周病治療効果の評価
八週齢の雌Balb/cマウス各組12匹(表3)を選び、その下顎前歯に歯列矯正用ワイヤを取り付け、対照群の歯肉に赤みと腫れ及び歯垢が出現するまで、歯周組織に歯周病病原細菌ストレプトコッカス・ミュータンスを接種し、マウスを人工的に歯周組織病変の状態にした。それぞれ歯科医師による組織病変の診断後、毎日異なる濃度のラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95発酵産物またはラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95生菌、テトラサイクリン0.267mg/mLまたは蒸留水各1mlを投与し、その病理表徴を観察、記録した。治療開始日からワイヤの束縛を解除し、歯周病病原細菌の接種を停止した。ワイヤ束縛解除後4、8、12、16日目にマウスの歯周ポケットの深さを測定し、各組3匹を犠牲にして採血し、検体を取得して組織学的観察を行った。
【0033】
動物実験治療群のグループ分け
【表3】
【0034】
(c)歯周ポケット深度(periodontal pocket depth)の改善割合
対照群を標準として、マン・ホイットニー検定(Mann−Whitney test)を使用し、各群中の各個体の検査を行い、有意差のある個体を改善個体と呼ぶこととした。(改善個体数/群の全個体数)×100%=歯周ポケット深度改善割合である。
【0035】
(d)臨床病理及び生化学検査
死亡していない動物を犠牲にして頚動脈から取った血液を3000r.p.m.、4℃の条件下で10分間遠心処理し、上層の血清を取得して自動生化学分析装置でそのALT、AST、クレアチニン、BUN生化学指標を測定した。且つ、その重要な臓器(肝臓、腎臓)を10%ホルマリン液で固定し、組織切片のパラフィン包埋後にH.E.染色を行い、病理学的観察を行った。
【0036】
(統計分析)
実験数値は平均値±標準偏差(mean±S.D.)で表示する。マウスの歯周ポケット状況の実験群と対照群間の統計差異は、縦断的(longitudinal)研究では一元配置分散分析(One‐way ANOVA)とDunnett多重事後比較法(Dunnett multiple post hoc comparison)を採用して測定し、横断的(cross−sectional)研究では一元配置分散分析とLSD多重事後比較法(LSD multiple post hoc comparison)を採用して測定した。また、マン・ホイットニー検定を採用して歯周ポケット改善の個体数を調べた。統計有意水準のp値は0.05である。
【0037】
(結果)
1.体外実験(in vitro study)
(a)ディスク寒天拡散試験
表4にディスク寒天拡散試験の抗菌効果を示す。無菌ペーパーディスクの直径は6mmであり、阻止円が>6mmであれば抗菌効果があることを示し、そうでなければ抗菌効果がないことを示す。培養温度及び時間は37℃、24時間であり、対照群はテトラサイクリンを含むペーパーディスクで、阻止円の数値は平均値±標準偏差で表す(n=3)。
【0038】
ディスク寒天拡散試験の抗菌効果
【表4】
【0039】
表4は、ラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95濃縮2倍以上の発酵産物及び生菌がアクチノマイセス・ビスコーサス、ポルフィロモナス・ジンジバリス、ストレプトコッカス・ミュータンス、ストレプトコッカス・サンギスの4種類の病原菌に対して阻止円を形成したことを示している。
【0040】
(b)ブロス希釈法
【0041】
最低発育阻止濃度及び抗菌割合(100% − (実験群 ÷ 対照群) × 100%)
【表5】
【0042】
表5はラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95の発酵産物濃度の歯周病原細菌に対する48時間処理後の異なる抑制効果を示している。全体的にみて、高濃度のラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95産物が比較的よい抑制効果を有しているといえる。歯周病原細菌について見ると、ラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95の発酵産物のポルフィロモナス・ジンジバリスに対する抑制効果が最も顕著であり、剤量に依存する現象が見られ、次がアクチノマイセス・ビスコーサスである。ラクトバシラス・ファーメンタムの2倍以上の濃縮産物はこれら4株の病原菌に対してすべて抑制作用がある。
【0043】
(c)ラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95と病原菌の共同培養試験
【0044】
ラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95生菌(略称LF)とストレプトコッカス・ミュータンスの共同培養、病原菌成長抑制状況。
【表6】
【0045】
表6はラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95生菌とストレプトコッカス・ミュータンスの共同培養では、低菌数群(7乗)、中菌数群(8乗)、高菌数群(9乗)のいずれも、共同培養48時間内はストレプトコッカス・ミュータンス病原菌が存在せず、すべてストレプトコッカス・ミュータンス成長抑制の効果があることを示している。
【0046】
ラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95生菌とストレプトコッカス・サンギスの共同培養、病原菌成長抑制状況。
【表7】
【0047】
表7はラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95生菌とストレプトコッカス・サンギスの共同培養では、高菌数群(9乗)が共同培養10時間ですでにストレプトコッカス・サンギス病原菌が存在せず、中菌数群(8乗)と低菌数群(7乗)が共同培養14時間でストレプトコッカス・サンギス病原菌が存在しなくなっており、すべてストレプトコッカス・サンギス成長抑制の効果があることを示している。
【0048】
ラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95生菌とポルフィロモナス・ジンジバリスの共同培養、病原菌成長抑制状況。
【表8】
【0049】
表8はラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95生菌とポルフィロモナス・ジンジバリスの共同培養では、高菌数群(9乗)が共同培養6時間ですでにポルフィロモナス・ジンジバリス病原菌が存在せず、中菌数群(8乗)が共同培養8時間でポルフィロモナス・ジンジバリス病原菌が存在せず、低菌数群(7乗)が共同培養14時間でポルフィロモナス・ジンジバリス病原菌が存在しなくなっており、すべてポルフィロモナス・ジンジバリス成長抑制の効果があることを示している。
【0050】
2.動物生体実験(in vivo study)
(a)動物歯周病予防効果の評価
【0051】
ラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95予防群(pLF)のマウスの歯周ポケット深度(mm)(一元配置分散分析とDunnett多重事後比較法)の異なる時間点における各群と対照群(pMT)の比較。(*p<0.05;**p<0.01)
【表9】
【0052】
予防群ラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95発酵産物及び生菌数の評価では、各群に異なる濃度のサンプルを与えたときの歯周ポケット深度に対する影響は、異なる時間点で各群共蒸留水を与えた対照群(pMT)に対してすべての時間点で有意差があった。テトラサイクリンを与えた予防対照群(pTC)はすべての時間点で有意差があった。
【0053】
ラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95予防群(pLF)のマウスの歯周ポケット深度(mm)(一元配置分散分析とLSD多重事後比較法)、各濃度群別の異なる時間点と4日目の比較。(*p<0.05; **p<0.01)。
【表10】
【0054】
ラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95予防群発酵産物と生菌数の各濃度群別、異なる時間点の群内での比較は、4倍(pLFP4)濃度、高濃度生菌群(pLFBH)及びテトラサイクリン群(pTC)が12日目及び16日目の歯周ポケットの改善程度は4日目と比較して有意差があった。
【0055】
(b)動物歯周病治療効果の評価
【0056】
ラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95治療群(tLF)のマウスの歯周ポケット深度(mm)(一元配置分散分析とDunnett多重事後比較法)の異なる時間点における、各群と対照群(tMT)の比較。(*p<0.05; **p<0.01)
【表11】
【0057】
治療群ラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95発酵産物及び生菌数の評価では、各群に異なる濃度を与えたときの歯周ポケット深度に対する影響は、異なる時間点の各群間にすべて有意差があった。各時間点で対照群(tMT)と比較すると、4倍濃度群(tLFP4)、高濃度生菌群(tLFBH)及びテトラサイクリン群(tTC)が各時間点すべてで有意差があった。1倍及び2倍の発酵産物を与えた群(tLFP1とtLFP2)及び低濃度生菌群(tLFBL)は、8日目を除き、残りの時間点すべてで有意差があった。中濃度生菌群(tLFBM)は12日目のみで有意差があった。
【0058】
ラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95治療群(tLF)のマウスの歯周ポケット深度(mm)(一元配置分散分析とLSD多重事後比較法)各濃度群別の異なる時間点と4日目の比較。(*p<0.05; **p<0.01)
【表12】
【0059】
治療群のラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95発酵産物投与及び生菌数各群では、異なる時間点の群内比較で、高濃度生菌群(tLFBH)は8、12、16日目に(4日目と比較して)有意差があり、テトラサイクリンの組(tTC)は12日目と16日目に有意差があった。
【0060】
(c)歯周ポケット深度(periodontal pocket depth)改善割合
【0061】
ラクトバシラス・ファーメンタム予防群SG−A95(pLF)歯周ポケット改善割合(予防群中の無処理対照群(pMT)と比較して有意差のある(マン・ホイットニー検定、p<0.05)改善が見られた個体割合)。
【表13】
【0062】
ラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95予防群歯周ポケット深度改善割合は16日目に、2倍と4倍濃度群及び低濃度生菌群(pLFP2、pLFP4及びpLFBL)を除き、各群すべて100%に達した。
【0063】
ラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95治療群(tLF)歯周ポケット改善割合(無治療対照群(tMT)と比較して有意差のある(マン・ホイットニー検定,p<0.05)改善が見られた個体割合)。
【表14】
【0064】
ラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95治療群は、中濃度生菌群を除き、16日目にすべて33%〜100%の改善率が見られた。
【0065】
(d)臨床病理検査
SG−A95発酵産物を与えた群または生菌数が最高濃度の各群は16日目の肝臓、腎臓組織切片(図2〜図5と図10〜図13)において、各群の肝臓及び腎臓組織細胞に顕著な毒性傷害の表徴はなく、炎症細胞浸潤もなく、無治療対照群(tMTまたはpMT)(図6〜図9と図14〜図17)と比較して明らかな差異はなかった。
【0066】
(結論)
体外実験のディスク寒天拡散試験から、ラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95濃縮2倍以上の発酵産物はこれら4種類の病原菌に対してすべて阻止円の形成があり、生菌は1×109(LFBL)、2×109(LFBM)または5×109(LFBH)のいずれもアクチノマイセス・ビスコーサス、ポルフィロモナス・ジンジバリス、ストレプトコッカス・ミュータンス、ストレプトコッカス・サンギスの4種類の歯周病原細菌に対してすべて9〜10mmの阻止円が形成された。ブロス希釈法試験においては、ラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95の発酵産物濃度が歯周病原細菌に対して異なる程度の抑制効果があることが示された。共同培養のデータから、ラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95生菌のポルフィロモナス・ジンジバリスに対する抑制効果が最も優れており、ストレプトコッカス・ミュータンス、ストレプトコッカス・サンギスに対しても抑制作用があり、且つ生菌数が高いほど抑制効果も良好であることが示された。
【0067】
歯周病動物モデル生体実験はラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95の発酵産物及び生菌の歯周状況に対する改善を示し、予防の効果は治療の効果より優れていた。予防効果について言うと、各群の異なる濃度投与の歯周ポケット深度に対する影響は、異なる時間点で各群とも対照群(pMT)に対してすべて有意差のある改善を示した。治療効果の部分は、発酵産物4倍濃度群(tLFP4)、高濃度生菌群(tLFBH)の効果が最良であった。
【0068】
ラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95発酵産物投与または生菌数が最高濃度の各群は、16日目に動物を犠牲にしたとき取り出した肝臓と腎臓組織に対して病理切片を行い、各群の肝臓及び腎臓組織細胞には顕著な毒性傷害の表徴はなく、安全性が極めて高いことが示された。
【0069】
体外及び動物生体実験を組み合わせ、ラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95の発酵産物及び生菌は歯周炎の発生を予防でき、歯周炎症の状況を改善することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95であって、寄託番号がCGMCC3248のラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95(Lactobacillus fermentum,SG−A95)。
【請求項2】
請求項1に記載のラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95であって、SEQ ID NO:1に示されるヌクレオチド配列のコードを含むことを特徴とする、ラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95。
【請求項3】
ラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95の発酵産物であって、請求項1に記載のラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95を培地で発酵させて得たことを特徴とする、ラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95の発酵産物。
【請求項4】
口腔内細菌群を改善する保健組成物であって、請求項1に記載のラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95または請求項3に記載の発酵産物を含むことを特徴とする、保健組成物。
【請求項5】
請求項4に記載の保健組成物であって、そのうちラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95が生菌であり、発酵産物が発酵液であることを特徴とする、保健組成物。
【請求項6】
請求項4に記載の保健組成物であって、個体口腔内の歯周病細菌の成長を抑制するために用いることを特徴とする、保健組成物。
【請求項7】
請求項6に記載の保健組成物であって、そのうち前記歯周病細菌がストレプトコッカス・ミュータンスまたはストレプトコッカス・サンギス、ポルフィロモナス・ジンジバリス、アクチノマイセス・ビスコーサスを含むことを特徴とする、保健組成物。
【請求項8】
請求項6に記載の保健組成物であって、そのうち前記個体が哺乳動物であることを特徴とする、保健組成物。
【請求項9】
請求項4に記載の保健組成物であって、そのうち発酵産物が、ラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95成分を培養できる培地でラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95を発酵させた後の産物であることを特徴とする、保健組成物。
【請求項10】
請求項4に記載の保健組成物であって、錠剤、スプレー剤、溶液、食品、医薬品または口腔洗浄剤の添加剤のいずれかの態様であることを特徴とする、保健組成物。
【請求項1】
ラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95であって、寄託番号がCGMCC3248のラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95(Lactobacillus fermentum,SG−A95)。
【請求項2】
請求項1に記載のラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95であって、SEQ ID NO:1に示されるヌクレオチド配列のコードを含むことを特徴とする、ラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95。
【請求項3】
ラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95の発酵産物であって、請求項1に記載のラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95を培地で発酵させて得たことを特徴とする、ラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95の発酵産物。
【請求項4】
口腔内細菌群を改善する保健組成物であって、請求項1に記載のラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95または請求項3に記載の発酵産物を含むことを特徴とする、保健組成物。
【請求項5】
請求項4に記載の保健組成物であって、そのうちラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95が生菌であり、発酵産物が発酵液であることを特徴とする、保健組成物。
【請求項6】
請求項4に記載の保健組成物であって、個体口腔内の歯周病細菌の成長を抑制するために用いることを特徴とする、保健組成物。
【請求項7】
請求項6に記載の保健組成物であって、そのうち前記歯周病細菌がストレプトコッカス・ミュータンスまたはストレプトコッカス・サンギス、ポルフィロモナス・ジンジバリス、アクチノマイセス・ビスコーサスを含むことを特徴とする、保健組成物。
【請求項8】
請求項6に記載の保健組成物であって、そのうち前記個体が哺乳動物であることを特徴とする、保健組成物。
【請求項9】
請求項4に記載の保健組成物であって、そのうち発酵産物が、ラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95成分を培養できる培地でラクトバシラス・ファーメンタムSG−A95を発酵させた後の産物であることを特徴とする、保健組成物。
【請求項10】
請求項4に記載の保健組成物であって、錠剤、スプレー剤、溶液、食品、医薬品または口腔洗浄剤の添加剤のいずれかの態様であることを特徴とする、保健組成物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2012−44951(P2012−44951A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−191773(P2010−191773)
【出願日】平成22年8月30日(2010.8.30)
【出願人】(509013611)生展生物科技股▲分▼有限公司 (3)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月30日(2010.8.30)
【出願人】(509013611)生展生物科技股▲分▼有限公司 (3)
【Fターム(参考)】
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