説明

口腔内崩壊錠及びその製造方法

【課題】口腔内崩壊錠としての成形性及び崩壊性に優れた口腔内崩壊錠、ならびにその製造方法を提供する。
【解決手段】薬物造粒粒子を含有する口腔内崩壊錠であって、該薬物造粒粒子が、薬物を含有する粉体に、単糖を含む水溶液を添加して湿式造粒された薬物造粒粒子であることを特徴とする口腔内崩壊錠。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口腔内崩壊錠としての成形性及び崩壊性に優れた口腔内崩壊錠及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
口腔内崩壊錠の製造方法としては、特殊な製造装置を用いる方法として懸濁液を鋳型に流し減圧乾燥又は凍結乾燥させる方法(特許文献1,2参照)、湿式造粒物を湿潤したまま打錠した後乾燥する方法(特許文献3,4参照)、ならびに乾式打錠後温度管理が必要なエージング工程を経て口腔内崩壊錠を得る方法(特許文献5,6参照)等がある。しかしながら、特殊な製造装置を使用すると錠剤物性と崩壊性の両立は可能であるが、多くの賦形剤が必要で、さらに設備投資が必要である。錠剤の成形方法として一般的な乾式打錠により口腔内崩壊錠を製造する方法としては、崩壊性・溶解性の高い賦形剤を組み合わせる方法(特許文献7〜10参照)、糖又は糖アルコールを用いる方法として、成形性の高い糖類により成形性の低い糖類を造粒して成形性と崩壊性とをあわせ持つ賦形剤として利用する方法(特許文献11参照)、クエン酸の結合力による打錠障害を回避するための潤滑剤・粘着防止剤として非常に水に溶け易い糖を用いて賦形剤を製造する方法(特許文献12参照)が知られている。しかしながら、これらの方法では、賦形剤量が多くなってしまう、崩壊剤が別途必要である等、有効成分量が多い錠剤では錠剤質量が増え大型になるという問題点があった。以上のことから、特殊な装置を必要とせず、少量の賦形剤でも口腔内崩壊錠としての成形性及び崩壊性に優れた口腔内崩壊錠を得る技術が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第93/12769号パンフレット
【特許文献2】特公昭62−50445号公報
【特許文献3】特開平8−19589号公報
【特許文献4】特開平8−19590号公報
【特許文献5】特開2001−342128号公報
【特許文献6】特開平11−263723号公報
【特許文献7】特開平10−182436号公報
【特許文献8】特開2001−58944号公報
【特許文献9】特開2006−70046号公報
【特許文献10】特開2005−132788号公報
【特許文献11】国際公開第95/20380号パンフレット
【特許文献12】特表2006−501234号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、特殊な装置を必要とせず、口腔内崩壊錠としての成形性及び崩壊性に優れた口腔内崩壊錠、ならびにその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、薬物を含有する粉体に、単糖を含む水溶液を添加して湿式造粒された薬物造粒粒子を、口腔内崩壊錠に配合することにより、特殊な装置を必要とせず、口腔内崩壊錠としての成形性及び崩壊性に優れた口腔内崩壊錠が得られることを知見し、本発明をなすに至ったものである。
【0006】
従って、本発明は下記口腔内崩壊錠及び口腔内崩壊錠の製造方法を提供する。
[1].薬物造粒粒子を含有する口腔内崩壊錠であって、該薬物造粒粒子が、薬物を含有する粉体に、単糖を含む水溶液を添加して湿式造粒された薬物造粒粒子であることを特徴とする口腔内崩壊錠。
[2].単糖が、果糖又はブドウ糖である[1]記載の口腔内崩壊錠。
[3].単糖の含有量が、薬物造粒粒子に対して1〜30質量%である[1]又は[2]記載の口腔内崩壊錠。
[4].薬物の含有量が、薬物造粒粒子に対して45〜99質量%である[1]、[2]又は[3]記載の口腔内崩壊錠。
[5].薬物造粒粒子の含有量が、口腔内崩壊錠に対して10〜100質量%である[1]〜[4]のいずれかに記載の口腔内崩壊錠。
[6].薬物造粒粒子が、さらに結晶セルロースを含むことを特徴とする[1]〜[5]のいずれかに記載の口腔内崩壊錠。
[7].薬物を含有する粉体に、単糖を含む水溶液を噴霧又は滴下しながら撹拌造粒した後、乾燥して薬物造粒粒子を得る工程、得られた薬物造粒粒子又は薬物造粒粒子と他の錠剤成分との混合物を打錠する工程を有する[1]記載の口腔内崩壊錠の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、特殊な装置を必要とせず、口腔内崩壊錠としての成形性(摩損度)及び崩壊性に優れた口腔内崩壊錠、ならびにその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の口腔内崩壊錠は、薬物を含有する粉体に、単糖を含む水溶液を添加して湿式造粒された薬物造粒粒子を含有するものである。
【0009】
[薬物を含有する粉体]
本発明の口腔内崩壊錠に使用する薬物造粒粒子に配合される薬物は特に制限はなく、各種の薬物粉体(薬物単品粉体、倍散薬物粉体、担持粒子に担持された薬物粒子等の造粒用薬物原料として用いることができるもの)を使用することができる。
【0010】
上記薬物としては、タンニン酸ベルベリン、ロートエキス3倍散、ロートエキス散、ロートエキス、エンゴサク末、エンゴサク乾燥エキス、アルジオキサ、塩化ベルベリン、次硝酸ビスマス、塩酸プソイドエフェドリン、塩酸フェニレフリン、d−マレイン酸クロルフェニラミン、dl−マレイン酸クロルフェニラミン、ベラドンナ総アルカロイド、アスピリン、アセトアミノフェン、エテンザミド、イソプロピルアンチピリン、イブプロフェン、ケトプロフェン、ナプロキセン、ロキソプロフェンナトリウム、塩酸ジフェンヒドラミン、マレイン酸カルビノキサミン、臭化水素酸デキストメトルファン、無水カフェイン、スクラルファート水和物、合成ヒドロタルサイト、タンニン酸アルブミン、オオバク、ゲンオショウコウ、オウレン、センブリ、塩酸ロペラミド、銅クロロフィリンカリウム、アカメガシワ、カンゾウ、グリチルリチン酸及びその塩類、硫酸プソイドエフェドリン、ベラドンナエキス、ノスカピン、シャクヤク乾燥エキス等が挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。中でも、不溶性粒子の割合が高いと崩壊性の効果が高くなるため、タンニン酸ベルベリン、イブプロフェン、アルジオキサ、ナプロキセン、スクラルファート水和物、合成ヒドロタルサイト等の水不溶性又は水難溶性のもの(1g又は1mLを溶かすのに要する溶媒量が100mL以上、好ましくは1000mL以上、より好ましくは10000mL以上;第15改正日本薬局方)が好ましい。
【0011】
薬物の含有量は特に限定されないが、薬物造粒粒子中、つまり薬物造粒粒子に対して45〜99質量%が好ましく、薬物を口腔内崩壊錠中により多く配合する点から、下限は50質量%以上がより好ましく、55質量%以上がさらに好ましい。上限は95質量%以下とすることがより好ましく、さらに好ましくは90質量%以下である。また、口腔内崩壊錠に対しては、薬物を口腔内崩壊錠中により多く配合する点から、10質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、30質量%以上がさらに好ましい。上限は99質量%以下が好ましく、95質量%以下とすることがより好ましく、さらに好ましくは90質量%以下である。本発明においては、少量の賦形剤でも口腔内崩壊錠としての成形性及び崩壊性に優れた口腔内崩壊錠を得ることができ、口腔内崩壊錠中に薬物を多く配合することができる。
【0012】
[単糖を含む水溶液]
本発明の単糖を含む水溶液は単糖を含むものである。薬物を含有する粉体を、水溶性である単糖を含む水溶液で湿式造粒することにより、口腔内崩壊錠としての優れた成形性及び崩壊性を得ることができる。前記単糖としては、ブドウ糖、果糖、ガラクトース、アラビノースが挙げられ、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。中でも、結合力と、飽和水溶液の粘度のバランスの点から、ブドウ糖、果糖が好ましく、結合力の点から、果糖がより好ましい。
【0013】
単糖濃度は、捏和物を形成しない範囲において、単糖を含む水溶液に対して0.01〜75質量%が好ましく、1〜55質量%がより好ましく、4〜40質量%がさらに好ましい。薬物造粒粒子中の単糖の含有量は、薬物造粒粒子に対して1〜30質量%が好ましく、2〜25質量%がより好ましく、3〜10質量%がさらに好ましい。薬物造粒粒子中の単糖の含有量が少なすぎると、薬物の結合が不十分となり、造粒性と崩壊性のバランスが保てないおそれがあり、3質量%以上配合すると、錠剤の摩損度をより改善することができる。含有量が多すぎると、崩壊性に影響がでるおそれがあり、錠剤が硬くなり溶解性が悪くなるおそれがある。
【0014】
単糖を含む水溶液には、本発明の効果を損なわない範囲で、他の成分を加えることができる。他の成分として、多糖、糖アルコール、水溶性高分子化合物、安定化剤、色素、矯味剤等が挙げられる。
【0015】
多糖としては、オリゴ糖、乳糖、マルトトリオース、マルトース、ショ糖等が挙げられる。糖アルコールとしては、エリスリトール、キシリトール、ソルビトール、マンニトール等が挙げられる。
【0016】
水溶性高分子化合物としては、50質量%水溶液又は飽和水溶液のうち、低濃度の方の粘度が1000mPa・s以下(BL型粘度計(例、東機産業株式会社RB80L型)、36℃、ローターNo.2、30rpm)になるものを用いることができ、水溶性セルロース誘導体(ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース等)、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。
【0017】
安定化剤としては、エデト酸ナトリウム、安息香酸等が挙げられる。
色素としては、酸化チタン、三二酸化鉄、食用黄色5号等が挙げられる。
矯味剤としては、アスパルテーム、スクラロース、アセスルファムカリウム、サッカリン、サッカリンナトリウム、トレハロース、ソーマチン等の甘味剤、リンゴ酸、酒石酸等の酸味剤が挙げられる。
【0018】
前記他の成分の含有量は、本発明の効果を損なわない範囲で添加できるが、単糖を含有する水溶液に対して30質量%以下とすることが好ましい。また、単糖の量に対して50質量%以下とすることが好ましく、より好ましくは40質量%以下である。
【0019】
単糖水溶液の溶媒としては、水単独の他、水と親水性溶媒(好ましくはエタノール)との混合溶媒とすることができる。この場合、水/親水性溶媒=1/0〜1/1(質量比)の範囲が好ましい。
【0020】
単糖を含む水溶液の粘度は、BL型粘度計(例、東機産業株式会社RB80L型)で測定したとき(測定条件:36℃、ローターNo.2、60rpm)、500mPa・s以下とすることが好ましい。より好ましくは300mPa・s以下であり、さらに好ましくは100mPa・s以下である。
【0021】
[薬物造粒粒子]
薬物造粒粒子は、薬物を含有する粉体に単糖を含む水溶液を添加して湿式造粒されたものであるが、薬物を含有する粉体には、本発明の効果を損なわない範囲で他の粒子成分を配合することができる。他の粒子成分としては、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、合成ヒドロタルサイト等の無機粉体、結晶セルロース、エチルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース類及びその誘導体、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、ヒドロキシプロピルスターチ等のスターチ及びその誘導体、乳糖、マンニトール等の糖、糖アルコール類等が挙げられ、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。中でも、1g又は1mLを溶かすのに要する溶媒量が100mL以上の難溶性成分が好ましく、製造性を改善させる点から、結晶セルロース、トウモロコシデンプンが好ましく、結晶セルロースがより好ましい。特に結晶セルルースは少量の配合で、錠剤の摩損度を改善できる性質を有するため、好適に用いることができる。結晶セルロースとしては、粉体500mgを直径(φ)11mmの杵を用いて打錠圧1kNで打錠したとき硬度60N以上を示すものが好ましい。具体例としてセオラスKG−1000(100N)、セオラスKG−802(78N)(旭化成ケミカルズ株式会社製)又は相当品が好ましく、セオラスKG−1000がさらに好ましい。
【0022】
造粒粒子中に他の粒子成分は配合しなくてもよく、その含有量は薬物造粒粒子に対して0〜35質量%が好ましく、3〜25質量%がより好ましい。他の粒子成分の含有量が少なすぎると機械付着等、製造性に課題を生じ易くなるおそれがあり、多すぎると崩壊時間が長くなるおそれがある。
【0023】
薬物造粒粒子の平均粒子径は1〜1000μmが好ましく、500μm以下がより好ましい。なお、平均粒子径は、質量累積粒度分布の50%径とし、例えば、ロボットシフターRPS−95C((株)セイシン企業製)により測定することができる。平均粒子径が小さすぎると分級し均一性を損ねるおそれがあり、大きすぎると服用時に粒子のざらつきを感じるおそれがある。
【0024】
[薬物造粒粒子の製造方法]
薬物造粒粒子は、薬物を含有する粉体に、単糖を含む水溶液を噴霧又は滴下しながら撹拌造粒した後、乾燥することにより得ることができる。装置は、造粒に用いられる撹拌装置、例えば、高速撹拌造粒機、転動流動造粒装置等を用いることができる。好適な製造条件は、例えば、高速撹拌造粒機ハイスピードミキサーLFS−2(深江パウテック(株)製)を用いる場合、撹拌の回転数は200〜1500rpm、好ましくは500〜2000rpm、チョッパー500〜4000rpm、好ましくは2000〜3000rpmである。単糖を含む水溶液の噴霧又は滴下は、液速が20〜50g/minになるように調整し、撹拌しながら添加する。撹拌後乾燥を行う。乾燥は、棚型乾燥・流動層乾燥等、通常、乾燥に用いられる方法を採用することができ、特に限定されないが、例えば、棚型乾燥機であれば60〜80℃で、薬物造粒粒子の水分含有量が0〜10質量%になるように乾燥するとよい。その後、適宜粉砕機等を用いて、篩等で目的の粒径の造粒物を得る。ただし、本発明の造粒粒子の製造方法は、これに限定されるものではなく、当業者に公知の方法により製造することができる。
【0025】
なお、薬物造粒粒子に他の粒子成分を配合する場合は、薬物を含有する粉体と他の粒子成分を混合した後、単糖を含む水溶液により造粒する方法、又は単糖を含む水溶液に添加可能な他の成分を水溶液中に添加し、薬物を含有する粉体を造粒する方法、により添加される。
【0026】
[口腔内崩壊錠]
本発明の口腔内崩壊錠は上記造粒粒子を含有するものである。口腔内崩壊錠とは、口腔内で咀嚼又は唾液により崩壊して服用でき、錠剤の服用後、口腔内で速やかに崩壊する機能を有した錠剤をいう。口腔内崩壊錠に対する薬物造粒粒子の含有量は、薬物や、単糖の含有量にあわせ適宜選定されるが、10〜100質量%が好ましく、20〜100質量%がより好ましく、30〜100質量%がさらに好ましい。
【0027】
口腔内崩壊錠には、本発明の効果を損なわない範囲で、造粒粒子以外に、賦形剤、崩壊性を付与する崩壊剤等の他の錠剤成分を配合することができる。
【0028】
賦形剤としては、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、合成ヒドロタルサイト等の無機粉体、結晶セルロース、エチルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース類及びその誘導体、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、ヒドロキシプロピルスターチ等のスターチ及びその誘導体、乳糖、マンニトール等の糖及び糖アルコール類等が挙げられ、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0029】
賦形剤は口腔内崩壊錠に含まれなくてもよく、口腔内崩壊錠に対して0〜40質量%が好ましく、10〜25質量%がより好ましい。賦形剤が40質量%を超えると崩壊性に影響が出るおそれがある。なお、この含有量には、薬物造粒粒子中に含まれる賦形剤を含む。本発明の薬物造粒粒子を用いることで、少ない賦形剤でも口腔内崩壊錠としての優れた成形性及び崩壊性を得ることが可能であり、結果として口腔内崩壊錠中の薬物量を多くすることができる。
【0030】
崩壊剤としては、クロスポビドン、カルメロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルスターチナトリウム、ヒドロキシプロピルスターチ等が挙げられ、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。中でも、クロスポビドンが好ましい。クロスポビドンとしては、市販品を用いることができ、コリドンCL、コリドンCL−SF(いずれもBASF(ドイツ)製)等が挙げられる。
【0031】
崩壊剤は口腔内崩壊錠に含まれなくてもよいが、本発明において、さらに崩壊剤を配合することにより、錠剤内部からの崩壊を得られるため、単糖による顆粒内での速やかな崩壊効果と相乗効果を得られる。崩壊剤の含有量は、口腔内崩壊錠に対して0〜20質量%が好ましく、0〜10質量%がより好ましく、2.5〜10質量%がさらに好ましい。崩壊剤の含有量が多すぎると摩損が悪化するおそれがある。
【0032】
口腔内崩壊錠には、本発明の効果を損なわない範囲において、通常用いられる添加剤が使用できる。例えば、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、サッカリン、サッカリンナトリウム等の甘味料、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、フマル酸等の酸味剤、メントール、カンフル、ボルネオール、リモネン等のモノテルペン類、それらを含有する精油等の香味剤(グレープフルーツ香料、アップル香料、ピーチ香料等)、三二酸化鉄、黄色三二酸化鉄、酸化チタン、食用黄色5号等の着色剤、ステアリン酸マグネシウム、ショ糖脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール、タルク、ステアリン酸等の滑沢剤が挙げられる。
【0033】
口腔内崩壊錠の換算摩損度は、後述の実施例における換算摩損度の項目に示す方法により求められ、1.0質量%未満が好ましく、0.5質量%未満がより好ましく、0.2質量%未満がさらに好ましい。また、口腔内崩壊錠の崩壊時間は、錠剤を口腔内に入れ、舌で転がしながら錠剤を崩壊させ、錠剤が完全に崩壊するまでの時間であり、40秒未満が好ましく、30秒未満がより好ましく、20秒未満がさらに好ましい。
【0034】
口腔内崩壊錠の質量は20〜2000mg/錠とすることが望ましい。錠剤の形状は特に制限されないが円形型、キャプレット型、ドーナツ型、オブロング型等の形状及び積層錠、有核錠等であってもよく、識別性のためのマーク、文字、さらには分割用の割線を付すこともある。医薬製剤分野の慣用的な粉体の量に基づいた径の錠剤とするとよく、目的とする錠剤強度となるように打錠を行う。なお、錠剤強度は、錠剤破壊強度測定器 TH203CP(富山産業株式会社製)により測定することができる。
【0035】
[口腔内崩壊錠の製造方法]
口腔内崩壊錠は、得られた薬物造粒粒子、又は薬物造粒粒子と他の錠剤成分とを混合した混合物を打錠することにより得ることができる。打錠には一般に錠剤の成形に用いられる装置が用いられる。例えば、単発打錠機、ロータリー式打錠機が用いられる。打錠の際の成形圧力は、目的とする錠剤硬度になるよう適宜選定される。硬度は錠剤サイズにより異なるが、およそ3kgf(錠剤硬度測定器(ヤマト科学製))以上にすると好適である。
【実施例】
【0036】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、表中の量は成分名の場合は成分の量であり、( )内は使用した製品名である。表中の単糖を含む水溶液中の精製水は製造時に必要とした量であり、乾燥時に蒸発するため錠剤中には含まれない。
【0037】
[実施例1〜22、比較例1,2]
[造粒粒子の調製]
予め、表1〜6の単糖を含む水溶液又は造粒用溶液1000錠分を調製した。単糖を含む水溶液又は造粒用溶液以外の薬物造粒粒子欄に記載した成分1000錠分をハイスピードミキサーLFS−2(深江パウテック(株)製)に入れ、予備混合を1分間行った後、回転数をアジテーター1000rpm、チョッパー2000rpmに設定し、単糖を含む水溶液又は造粒用溶液を2分間かけて滴下しながら撹拌した。その後、2分間撹拌を行った。得られた造粒物をバットにひろげ、棚型乾燥機DN−93(ヤマト科学製)にて80℃で5時間(実施例20については60℃で7時間)通風乾燥を行った。同じ操作を繰り返して得られた造粒物をあわせ、目開き1000μmの篩で篩過し、薬物造粒粒子(平均粒子径150〜300μm)を得た。
【0038】
[口腔内崩壊錠の調製]
得られた薬物造粒粒子と、滑沢剤以外の成分とを表所定の比(2000錠分)にとり、ビニール袋に入れ20回程度手で振って混合したのち、滑沢剤(2000錠分)を入れさらに10回混合した。この混合粉体を、クリーンプレス12HUK(菊水製作所製)を用いてオープンフィードシューにて打錠し、表に示す成分質量部、合計量のφ9.0mmの円形錠(錠剤)を得た。なお、錠剤破壊強度測定器TH−203CP(富山産業株式会社製)にて硬度3〜5kgfになるように打錠圧を調整した(回転盤回転数:20rpm、杵本数:12本)。得られた錠剤について、下記評価を行った。結果を表中に併記する。
【0039】
[実施例23]
[造粒粒子の調製]
タンニン酸ベルベリン1875g及びロートエキス3倍散1125gを撹拌造粒機(深江工業(株)製,ハイスピードミキサーFS.GS.10J型)に投入した。投入後、アジテーター400rpm、チョッパー2500rpmの条件で撹拌を開始し、1分間混合後、果糖の7質量%水溶液を1700g/分の流速で1700g添加した。その後、8分間撹拌操作を継続し、撹拌造粒物(温度40℃)を造粒機から排出した。得られた撹拌造粒物を、予め吸気温度80℃で予熱し、排気温度が50℃となったスパイラフローSFC−5型(フロイント産業(株)製)に投入し、吸気温度80℃、排気風量2.5m3/分、ローター回転数200rpmの条件で流動層乾燥操作を開始した。約30分間乾燥操作を継続し、排気温度が45℃となった時点でスパイラフローSFC−5型から排出し、粒状乾燥物(温度55℃)を得た。該粒状乾燥物を、目開き850μmの篩を用いて全量篩過し(篩を通過しなかった粒子は篩上でへらですりつぶした)、造粒粒子を得た。
【0040】
[混合工程]
表7に示した組成になるように、合計量3500gとして各成分を測りとった。これらのうち、ステアリン酸マグネシウムを除く成分を混合機(寿工業(株)製、ボーレコンテナミキサー20L LM−20型)に投入した。20rpmの条件で20分間混合した後、ステアリン酸マグネシウムを投入し、20rpmの条件で5分間混合した。
【0041】
[打錠工程]
前記混合工程で得られた混合物を、直径11mm(スミ角平)の杵・臼を装着したロータリー式打錠機((株)菊水製作所製、LIBRA2)を用いて、ターンテーブル回転数20rpm、オープンフィードシュー、予圧1kN、本圧7kNの条件で打錠し、錠剤を得た。得られた錠剤の硬度を錠剤破壊強度測定器TH−203CP(富山産業株式会社製)にて測定した結果、5kgfであった。その他の評価を実施例1〜22と同様に行い、結果は表7に示した。
【0042】
[実施例24]
打錠工程において直径9mm(スミ角平)の杵・臼を用いて予圧1kN、本圧5kNの条件で打錠したことを除いて実施例23と同様にして錠剤を得た。得られた錠剤の硬度を錠剤破壊強度測定器TH−203CP(富山産業株式会社製)にて測定した結果、7kgfであった。その他の評価を実施例1〜22と同様に行い、結果は表7に示した。
【0043】
[実施例25]
[造粒粒子の調製]
タンニン酸ベルベリン1500g、ロートエキス3倍散900g、及びシャクヤク乾燥エキス360gを撹拌造粒機(深江工業(株)製,ハイスピードミキサーFS.GS.10J型)に投入した。投入後、アジテーター400rpm、チョッパー2500rpmの条件で撹拌を開始し、1分間混合後、果糖の7質量%水溶液を1136g/分の流速で1136g添加した。その後、10分間撹拌操作を継続し、撹拌造粒物(温度40℃)を造粒機から排出した。得られた撹拌造粒物を、予め吸気温度80℃で予熱し、排気温度が50℃となったスパイラフローSFC−5型(フロイント産業(株)製)に投入し、吸気温度80℃、排気風量2.5m3/分、ローター回転数200rpmの条件で流動層乾燥操作を開始した。約50分間乾燥操作を継続し、排気温度が60℃となった時点でスパイラフローSFC−5型から排出し、粒状乾燥物(温度72℃)を得た。該粒状乾燥物を、目開き850μmの篩を用いて全量篩過し(篩を通過しなかった粒子は篩上でへらですりつぶした)、造粒粒子を得た。
【0044】
[混合工程及び打錠工程]
得られた造粒粒子を実施例23と同様にして混合、打錠し、錠剤を得た。得られた錠剤の硬度を錠剤破壊強度測定器TH−203CP(富山産業株式会社製)にて測定した結果、5kgfであった。その他の評価を実施例1〜22と同様に行い、結果は表7に示した。
【0045】
[換算摩損度]
日局参考情報 錠剤の摩損度試験法に従い試験を行った。摩損度試験に並行し、あらたに製剤を同時間・同測定試験室にて放置し、質量変化を測定した。摩損度から質量変化率を差し引き、換算摩損度を算出し、下記基準で評価した。△以上を許容範囲とする。
〈基準〉
◎ :0.2質量%未満
○ :0.2質量%以上0.5質量%未満
△ :0.5質量%以上1.0質量%未満
× :1.0質量%以上6.0質量%未満
××:6.0質量%以上
【0046】
[口中崩壊時間]
成人男性3人及び成人女性2人により、口中崩壊性を評価した。錠剤を口腔内に入れ、舌で転がしながら錠剤を崩壊させ、錠剤が完全に崩壊するまでの時間を測定した。5人の崩壊時間の平均値から、下記基準に基づいて評価した。△以上を許容範囲とする。
〈基準〉
◎:20秒未満
○:20秒以上30秒未満
△:30秒以上40秒未満
×:40秒以上
【0047】
【表1】

【0048】
【表2】

【0049】
【表3】

【0050】
【表4】

【0051】
【表5】

【0052】
【表6】

【0053】
【表7】

【0054】
実施例及び比較例で使用した原料はそれぞれ以下のとおりである。
<使用原料>
タンニン酸ベルベリン:アルプス薬品工業(株)製、日本薬局方適合品
ロートエキス3倍散:アルプス薬品工業(株)製、ロートエキス3倍散C(ロートエキス:トウモロコシデンプン=1:2の混合物)
シャクヤク乾燥エキス:日本粉末薬品(株)製、日本薬局方適合品シャクヤクの水製乾燥エキス(7倍濃縮)
無水カフェイン:白鳥製薬(株)製、日本薬局方適合品
ノスカピン:白鳥製薬(株)製、日本薬局方適合品
合成ヒドロタルサイト:協和化学工業(株)製、VF、日本薬局方適合品
イブプロフェン:BASF社製、日本薬局方適合品
アルジオキサ:(株)パーマケム・アジア製、日本薬局方適合品
果糖:加藤化学(株)製、日本薬局方適合品
ブドウ糖:日本食品化工(株)製、日食メディカロース、日本薬局方適合品
ブドウ糖オリゴ糖混合物:JRS PHARMA製、EMDEXR、(ブドウ糖95質量%、その他成分としてオリゴ糖を含む)
エリスリトール:カーギルセレスターグループ社製、エリスリトール(微粉)、薬品添加物規格適合品
HPC−L:日本曹達(株)製、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC−L)、日本薬局方適合品
酸化チタン:フロイント産業(株)製、日本薬局方適合品
トウモトコシデンプン:松谷化学工業(株)製、日本薬局方トウモロコシデンプン
結晶セルロース:セオラスKG−1000、旭化成ケミカルズ(株)製、日本薬局方適合品
結晶セルロース:セオラスKG−802、旭化成ケミカルズ(株)製、日本薬局方適合品
クロスポビドン:BASF社製、Kollidon CL−SF、薬品添加物規格適合品
D−マンニトール:ロケット・ジャパン(株)製、ペアリトール200SD、日本薬局方適合品
アスパルテーム:アルプス薬品工業(株)製、日本薬局方適合品
l−メントール:東洋薄荷工業(株)製、スーパーメントール3003、日本薬局方適合品
グレープフルーツ香料:塩野香料(株)製、フレープフルーツパウダーSY−1512
ピーチ香料:ジボダンジャパン(株)製、ピーチフレーバーGIVO 55774
アップル香料:ジボダンジャパン(株)製、アップルフレーバーGIVO 55772
黄色三二酸化鉄:癸巳化成(株)製、黄色三二酸化鉄、薬品添加物規格適合品
ステアリン酸マグネシウム:太平化学産業(株)製、ステアリン酸マグネシウム 植物性、日本薬局方適合品
精製水:小堺製薬(株)製、日本薬局方適合品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬物造粒粒子を含有する口腔内崩壊錠であって、該薬物造粒粒子が、薬物を含有する粉体に、単糖を含む水溶液を添加して湿式造粒された薬物造粒粒子であることを特徴とする口腔内崩壊錠。
【請求項2】
単糖が、果糖又はブドウ糖である請求項1記載の口腔内崩壊錠。
【請求項3】
単糖の含有量が、薬物造粒粒子に対して1〜30質量%である請求項1又は2記載の口腔内崩壊錠。
【請求項4】
薬物の含有量が、薬物造粒粒子に対して45〜99質量%である請求項1、2又は3記載の口腔内崩壊錠。
【請求項5】
薬物造粒粒子の含有量が、口腔内崩壊錠に対して10〜100質量%である請求項1〜4のいずれか1項記載の口腔内崩壊錠。
【請求項6】
薬物造粒粒子が、さらに結晶セルロースを含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載の口腔内崩壊錠。
【請求項7】
薬物を含有する粉体に、単糖を含む水溶液を噴霧又は滴下しながら撹拌造粒した後、乾燥して薬物造粒粒子を得る工程、得られた薬物造粒粒子又は薬物造粒粒子と他の錠剤成分との混合物を打錠する工程を有する請求項1記載の口腔内崩壊錠の製造方法。

【公開番号】特開2011−37840(P2011−37840A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−159874(P2010−159874)
【出願日】平成22年7月14日(2010.7.14)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】