説明

口腔内崩壊錠

【課題】特殊な装置を必要とせず、口腔内崩壊錠としての成形性及び崩壊性に優れた口腔内崩壊錠、ならびにその製造方法を提供する。
【解決手段】薬物造粒粒子を含有する口腔内崩壊錠であって、該薬物造粒粒子が、薬物及び乾燥水酸化アルミニウムゲルを含有する粉体に、結合剤水溶液を添加して湿式造粒されたものであることを特徴とする口腔内崩壊錠。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、噛み砕くことなく口中の唾液により容易に崩壊し、成分が放出される口腔内崩壊錠に関するものである。
【背景技術】
【0002】
口腔内崩壊錠の製造方法としては、特殊な製造装置を用いる方法として懸濁液を鋳型に流し減圧乾燥又は凍結乾燥させる方法(特許文献1:国際公開第93−12769号,特許文献2:特公昭62−50445号公報参照)、湿式造粒物を湿潤したまま打錠した後、乾燥する方法(特許文献3:特開平8−19589号公報,特許文献4:特開平8−19590号公報参照)、及び乾式打錠後温度管理が必要なエージング工程を経て口腔内崩壊錠を得る方法(特許文献5:特開2001−342128号公報,特許文献6:特開平11−263723号公報参照)等がある。しかしながら、特殊な製造装置を使用すると、多くの賦形剤が必要で、さらに設備投資が必要である。錠剤の成形方法として一般的な乾式打錠により口腔内崩壊錠を製造する方法としては、崩壊性・溶解性の高い賦形剤を組み合わせる方法、成形性の高い糖類により成形性の低い糖類を造粒して成形性と崩壊性とをあわせ持つ賦形剤として利用する方法が知られている。しかしながら、これらの方法では、賦形剤量が多くなってしまう、崩壊剤が別途必要である等、薬物量が多い錠剤では錠剤質量が増え、大型になるという問題点があった。また結晶セルロース等を賦形剤として用いる方法が一般的に知られているが、結晶セルロース等を多量に配合すると、粉っぽくなり食感が悪くなるという問題があった。以上のことから、特殊な装置を必要とせず、口腔内崩壊錠としての成形性及び崩壊性に優れ、粉っぽさがなく良好な食感である口腔内崩壊錠を得る技術が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第93−12769号
【特許文献2】特公昭62−50445号公報
【特許文献3】特開平8−19589号公報
【特許文献4】特開平8−19590号公報
【特許文献5】特開2001−342128号公報
【特許文献6】特開平11−263723号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、特殊な装置を必要とせず、口腔内崩壊錠としての成形性及び崩壊性に優れた口腔内崩壊錠、ならびにその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、薬物及び乾燥水酸化アルミニウムゲルを含有する粉体に、結合剤水溶液を添加して湿式造粒された薬物造粒粒子を、口腔内崩壊錠に配合することにより、特殊な装置を必要とせず、薬物量が多い錠剤でも、口腔内崩壊錠としての成形性及び崩壊性に優れ、粉っぽさがなく良好な食感である口腔内崩壊錠が得られることを知見し、本発明をなすに至ったものである。
【0006】
従って、本発明は下記口腔内崩壊錠及び口腔内崩壊錠の製造方法を提供する。
[1].薬物造粒粒子を含有する口腔内崩壊錠であって、該薬物造粒粒子が、薬物及び乾燥水酸化アルミニウムゲルを含有する粉体に、結合剤水溶液を添加して湿式造粒されたものであることを特徴とする口腔内崩壊錠。
[2].薬物粒子中の乾燥水酸化アルミニウムゲルの含有量が、1〜50質量%であることを特徴とする[1]記載の口腔内崩壊錠。
[3].薬物の含有量が、口腔内崩壊錠に対して1〜70質量%であることを特徴とする[1]又は[2]記載の口腔内崩壊錠。
[4].薬物及び乾燥水酸化アルミニウムゲルを含有する粉体に、結合剤水溶液を噴霧又は滴下しながら撹拌造粒した後、乾燥して薬物造粒粒子を得る工程と、得られた薬物造粒粒子又は薬物造粒粒子と他の錠剤成分との混合物を打錠する工程とを有する[1]記載の口腔内崩壊錠の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、特殊な装置を必要とせず、薬物量が多い錠剤でも、口腔内崩壊錠としての成形性及び崩壊性に優れ、粉っぽさがなく良好な食感である口腔内崩壊錠、及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明について詳細に説明する。本発明の口腔内崩壊錠は、薬物及び乾燥水酸化アルミニウムゲルを含有する粉体に、結合剤水溶液を添加して湿式造粒された薬物造粒粒子を含有するものである。
【0009】
[薬物]
本発明の薬物は特に限定されず、粒子状の原料(薬物粒子:薬物単品、倍散された倍散薬物粒子、担持粒子に担持された薬物担持粒子等の粒子状薬物)等を使用することができる。上記薬物としては、ノスカピン、タンニン酸ベルベリン、ロートエキス3倍散、ロートエキス散、ロートエキス、エンゴサク末、エンゴサク乾燥エキス、アルジオキサ、塩化ベルベリン、次硝酸ビスマス、塩酸プソイドエフェドリン、塩酸フェニレフリン、d−マレイン酸クロルフェニラミン、dl−マレイン酸クロルフェニラミン、ベラドンナ総アルカロイド、アスピリン、アセトアミノフェン、エテンザミド、イソプロピルアンチピリン、イブプロフェン、ケトプロフェン、ナプロキセン、ロキソプロフェンナトリウム、塩酸ジフェンヒドラミン、マレイン酸カルビノキサミン、臭化水素酸デキストメトルファン、無水カフェイン、スクラルファート水和物、合成ヒドロタルサイト、タンニン酸アルブミン、オオバク、ゲンオショウコウ、オウレン、センブリ、塩酸ロペラミド、銅クロロフィリンカリウム、アカメガシワ、カンゾウ、グリチルリチン酸及びその塩類、硫酸プソイドエフェドリン、ベラドンナエキス等が挙げられ、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。中でも、不溶性粒子の割合が高いと崩壊性の効果が高くなるため、タンニン酸ベルベリン、イブプロフェン、アルジオキサ、ナプロキセン、スクラルファート水和物、合成ヒドロタルサイト等の水不溶性又は水難溶性のもの(1g又は1mLを溶かすのに要する溶媒量が100mL以上、好ましくは1000mL以上、より好ましくは10000mL以上;第15改正日本薬局方)が好ましい。
【0010】
薬物の含有量は特に限定されないが、薬物造粒粒子に対して1〜70質量%が好ましく、30〜70質量%がより好ましく、35〜60質量%がさらに好ましい。また、口腔内崩壊錠に対して、本発明においては、少量の賦形剤でも口腔内崩壊錠としての成形性及び崩壊性に優れた口腔内崩壊錠を得ることができ、薬物を口腔内崩壊錠により多く配合する点から、薬物の含有量は、1質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましく、錠剤の成形性の点から、70質量%以下が好ましく、35〜60質量%がより好ましい。
【0011】
[乾燥水酸化アルミニウムゲル]
乾燥水酸化アルミニウムゲルを用いることで、口腔内崩壊錠の摩損を改善し、結晶セルロース等を多量に用いた場合に比べ、粉っぽさが減少して食感が改善される。ただし、乾燥水酸化アルミニウムゲルが、薬物と共に結合剤水溶液を添加して湿式造粒されず、口腔内崩壊錠に薬物造粒粒子とは別に配合されても、目的とする崩壊性を得ることができない。
【0012】
乾燥水酸化アルミニウムゲルの含有量は特に限定されないが、口腔内崩壊錠の摩損改善の点から、薬物造粒粒子に対して1質量%以上が好ましく、7質量%以上が好ましく、12質量%以上がさらに好ましい。また、崩壊性の点から、薬物造粒粒子に対して50質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましい。また、口腔内崩壊錠に対して1〜50質量%が好ましく、7〜30質量%がより好ましい。
【0013】
[結合剤]
結合剤としては、造粒時の結合力や打錠時の結合力の付与ができるものであれば、特に限定されないが、本発明は結合剤水溶液として用いるものであるため、下記水溶性の結合剤を1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。例えば、結合剤としては、ゼラチン、寒天、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、キタンサンガム、アラビアゴム末、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、部分けん化ポリビニルアルコール、メチルセルロース、プルラン、部分α化デンプン、糖類、糖アルコール類等が挙げられる。
【0014】
中でも、低粘度のもの、50質量%溶液が作製できるものに関しては50質量%溶液の粘度が、10000mPa・s以下(BL型粘度計(例、東機産業(株)製RB80L型)、36℃、ローターNo.2、30rpm)のもの、50質量%溶液が作製できないものに関しては、飽和溶液の粘度が10000mPa・s以下(B型粘度計・36℃)であるものが好適に用いられる。上記粘度が高すぎる結合剤を用いた場合、崩壊性が悪くなるおそれがある。このような条件を満たす結合剤としては、糖類、糖アルコール類、コポリピドン、マクロゴール4000(第15改正日本薬局方)、ヒドロキシプロピルセルロースHPC−SSL(商品名:日本曹達(株)製)等が挙げられ、成形性と崩壊性とのバランスの点から、特に単糖が好ましい。
【0015】
結合剤の含有量は特に限定されないが、少なすぎると薬物の結合力が不十分となる点から、薬物造粒粒子に対して1質量%以上が好ましく、多すぎると錠剤が硬くなり崩壊性が悪くなる点から、30質量%以下が好ましく、2.5〜10質量%がより好ましく、2.5〜7質量%がさらに好ましい。また、口腔内崩壊錠に対して0.7〜30質量%が好ましく、2.5〜10質量%がより好ましく、1〜7質量%がさらに好ましい。
【0016】
[結合剤水溶液]
結合剤水溶液中の結合剤の含有量は、0.01〜75質量%が好ましく、1〜55質量%がより好ましい。また、結合剤水溶液の粘度は、BL型粘度計(例、東機産業(株)製RB80L型)で測定したとき(測定条件:36℃、ローターNo.2、60rpm)、500mPa・s以下とすることが好ましい。より好ましくは300mPa・s以下であり、さらに好ましくは100mPa・s以下である。
【0017】
結合剤水溶液の溶媒としては、水単独の他、水と親水性溶媒(好ましくはエタノール)との混合溶媒とすることができる。この場合、水/親水性溶媒=1/0〜1/1(質量比)の範囲が好ましい。
【0018】
薬物造粒粒子中の下記質量比は、口腔内崩壊錠としての成形性及び崩壊性のバランスの点から、薬物:乾燥水酸化アルミニウムゲルが100:1〜150が好ましく、100:10〜100がより好ましく、100:10〜50がさらに好ましい。
【0019】
[薬物造粒粒子]
本発明の薬物造粒粒子は、薬物及び乾燥水酸化アルミニウムゲルを含有する粉体に、結合剤水溶液を添加して湿式造粒されたものであるが、本発明の効果を損なわない範囲で、通常の任意成分を配合してもよい。任意成分としては、例えば、結晶セルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース及びその誘導体、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、ヒドロキシプロピルスターチ等のスターチ及びその誘導体、乳糖、マンニトール等の糖及び糖アルコール類等の賦形剤、クロスポビドン、カルメロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルスターチナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、ヒドロキシプロピルスターチ等の崩壊剤等、エデト酸ナトリウム、安息香酸等の安定化剤、酸化チタン、三二酸化鉄、食用黄色5号等の色素、アスパルテーム、スクラロース、アセスルファムカリウム、サッカリン、サッカリンナトリウム、トレハロース、ソーマチン等の甘味剤、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、コハク酸、フマル酸等の酸味剤、メントール、カンフル、ボルネオール、リモネン等のモノテルペン類、それらを含有する精油等の香味剤が挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。任意成分の配合方法は特に限定されないが、粉体は、薬物及び乾燥水酸化アルミニウムゲルを含有する粉体に混合してもよく、水溶液に溶けるものは、結合剤水溶液に添加してもよく、また、湿式造粒後に混合してもよい。
【0020】
中でも、結晶セルロースやトウモロコシデンプンは、換算摩損度が減り、成形性が向上するため用いることが好ましいが、これらの含有量が多すぎると粉っぽさが出るため、薬物造粒粒子に対して25質量%以下が好ましく、また、口腔内崩壊錠の摩損改善の点から1質量%以上が好ましく、4〜20質量%がより好ましい。同様に、口腔内崩壊錠に対して0〜25質量%が好ましく、4〜20質量%がより好ましい。さらに、薬物造粒粒子中の乾燥水酸化アルミニウムゲル:結晶セルロースの質量比は、成形性、崩壊性及び食感のバランスから、1:8〜8:1が好ましく、1:2〜3:1がより好ましく、1:1〜1.5:1がさらに好ましい。
【0021】
薬物造粒粒子の平均粒子径は1〜1000μmが好ましく、500μm以下がより好ましい。なお、平均粒子径は、質量累積粒度分布の50%径とし、例えば、レーザー散乱回析法粒度分布測定装置LS 13 320(BECKMAN COULTER社製)により測定することができる。平均粒子径が小さすぎると分級し均一性を損ねるおそれがあり、大きすぎると服用時に粒子のざらつきを感じるおそれがある。
【0022】
[薬物造粒粒子の製造方法]
薬物造粒粒子は、薬物及び乾燥水酸化アルミニウムゲルを含有する粉体に、結合剤水溶液を噴霧又は滴下しながら撹拌造粒した後、乾燥することにより得ることができる。装置は、造粒に用いられる撹拌装置、例えば、高速撹拌造粒機、転動流動造粒装置等を用いることができる。好適な製造条件は、例えば、高速撹拌造粒機ハイスピードミキサーFS−10(深江パウテック(株)製)を用いる場合、撹拌の回転数は200〜500rpm、好ましくは300〜400rpm、チョッパーは1000〜4000rpm、好ましくは2000〜3000rpmである。結合剤水溶液の噴霧又は滴下は、液速が200〜250g/minになるように調整し、撹拌しながら添加する。撹拌後乾燥を行う。乾燥は、棚型乾燥・流動層乾燥等、通常、乾燥に用いられる方法を採用することができ、特に限定されないが、例えば、棚型乾燥機であれば60〜80℃で、薬物造粒粒子の水分含有量が0〜5質量%になるように乾燥するとよい。その後、適宜粉砕機等を用いて、篩等で目的の粒径の造粒物を得る。ただし、本発明の薬物造粒粒子の製造方法は、薬物及び乾燥水酸化アルミニウムゲルを含有する粉体に、結合剤水溶液を添加して湿式造粒するのであれば、これに限定されるものではなく、当業者に公知の方法により製造することができる。
【0023】
なお、上述したように、薬物造粒粒子に上記任意成分を配合する場合は、粉体は、薬物及び乾燥水酸化アルミニウムゲルを含有する粉体に混合してもよく、水溶液に溶けるものは、結合剤水溶液に添加してもよい。また、湿式造粒後に混合してもよい。
【0024】
[口腔内崩壊錠]
本発明の口腔内崩壊錠は上記薬物造粒粒子を含有するものである。口腔内崩壊錠とは、噛み砕いて口中で崩壊させ、成分が放出されるものや、噛み砕くことなく口中の唾液により容易に崩壊し、成分が放出されるものをいい、特に、後述する実施例の[口中崩壊時間]測定方法において、40秒未満のものが好ましく、30秒未満のものがより好ましい。特に、口腔内崩壊錠に対する薬物造粒粒子の含有量は、上記したように、薬物や、単糖の含有量にあわせ適宜選定されるが、50〜100質量%が好ましく、70〜100質量%がより好ましい。
【0025】
口腔内崩壊錠には、本発明の効果を損なわない範囲で、薬物造粒粒子以外に、賦形剤、崩壊性を付与する崩壊剤、滑沢剤等の他の錠剤成分を1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせ、適量配合することができる。
【0026】
賦形剤としては通常用いられる賦形剤が使用できる。例えば、結晶セルロース、エチルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース及びその誘導体、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、ヒドロキシプロピルスターチ等のスターチ及びその誘導体、乳糖、マンニトール等の糖類及び糖アルコール等が挙げられる。中でも、粉っぽさが減少して食感が向上する点から、マンニトールを配合することが好ましい。賦形剤の含有量は、口腔内崩壊錠に対して0〜50質量%の範囲でもよく、1〜30質量%が好ましい。マンニトールの含有量は、少なすぎると食感向上効果が不十分になるため、口腔内崩壊錠に対して7質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましい。一方、多すぎると崩壊性が悪くなるおそれがあるので、30質量%以下が好ましく、25質量%以下がより好ましい。
【0027】
崩壊剤は口腔内崩壊錠に含まれなくてもよいが、崩壊剤を配合することにより、錠剤内部からの崩壊を得られ、錠剤全体の崩壊性を向上させることができる。崩壊剤としては、例えば、クロスポビドン(ポリビニルピロリドン)、カルメロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルスターチナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、ヒドロキシプロピルスターチ等が挙げられる。中でも、クロスポビドンが好ましい。崩壊剤の含有量は、口腔内崩壊錠の摩損改善、食感の点から、口腔内崩壊錠に対して20質量%以下が好ましく、1.7〜10質量%がより好ましく、2.5〜10質量%がさらに好ましい。
【0028】
滑沢剤としては常用いられる滑沢剤が使用できる。例えば、ステアリン酸マグネシウム、ショ糖脂肪酸エステル、フマル酸ステアリルナトリウム、ポリエチレングリコール、タルク、ステアリン酸等が挙げられる。滑沢剤の含有量は、口腔内崩壊錠に対して0.1〜1質量%が好ましい。
【0029】
その他、本発明の口腔内崩壊錠には、エデト酸ナトリウム、安息香酸等の安定化剤、酸化チタン、三二酸化鉄、食用黄色5号等の色素、アスパルテーム、スクラロース、アセスルファムカリウム、サッカリン、サッカリンナトリウム、トレハロース、ソーマチン等の甘味剤、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、コハク酸、フマル酸等の酸味剤、メントール、カンフル、ボルネオール、リモネン等のモノテルペン類、それらを含有する精油等の香味剤等も配合することができる。
【0030】
口腔内崩壊錠の換算摩損度は、後述の実施例における換算摩損度の項目に示す方法により求められ、0.5質量%未満が好ましく、0.2質量%未満がより好ましく、0.1質量%未満がさらに好ましい。
【0031】
口腔内崩壊錠の質量は、錠剤の直径や形状にもよるが、20〜2000mg/錠とすることが好ましい。中でも、直径がφ10.0mmの錠剤においては、崩壊性の点からは、350mg/錠以下が好ましく、320mg/錠以下がより好ましく、280mg/錠以下がさらに好ましい。また、錠剤の成形性の点から、150mg/錠以上が好ましく、180mg/錠以上がより好ましく、200mg/錠以上がさらに好ましい。錠剤の形状は特に制限されないが円形型、キャプレット型、ドーナツ型、オブロング型等の形状及び積層錠、有核錠等であってもよく、識別性のためのマーク、文字、さらには分割用の割線を付すこともある。医薬製剤分野の慣用的な粉体の量に基づいた径の錠剤とするとよく、目的とする錠剤強度となるように打錠を行う。なお、錠剤強度は、錠剤破壊強度測定器 TH203CP(富山産業(株)製)により測定することができる。
【0032】
[口腔内崩壊錠の製造方法]
口腔内崩壊錠は、得られた薬物造粒粒子、又は薬物造粒粒子と他の錠剤成分とを混合した混合物を打錠することにより得ることができる。打錠には一般に錠剤の成形に用いられる装置が用いられる。例えば、単発打錠機、ロータリー式打錠機が用いられる。打錠の際の成形圧力は、目的とする錠剤硬度になるよう適宜選定される。硬度は錠剤サイズにより異なるが、およそ3kgf(錠剤硬度測定器(ヤマト科学(株)製))以上にすると好適である。また、口腔内崩壊錠の包装は特に限定されないが、湿気防止のために、PTP(Press Through Package)包装するとよい。
【実施例】
【0033】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、表中の量は成分名の場合は記載された成分の量である。
【0034】
[実施例1〜17、比較例1〜3]
[薬物造粒粒子の調製]
予め、下記表中の結合剤欄に記載の結合剤を精製水に溶かし、結合剤水溶液を調製し(結合剤濃度10質量%)、結合剤以外の薬物造粒粒子欄に記載の成分を組成の比にとった粉体2000gを、ハイスピードミキサーFS−10(深江パウテック(株)製)に入れ、予備混合を1分間行った後、回転数をアジテーター300rpm、チョッパー2000rpmに設定し、表中の結合剤量に相当する結合剤水溶液を4分間かけて滴下しながら撹拌した。その後、2分間高速撹拌を行った。得られた造粒物をバットにひろげ、棚型乾燥機DN−93(ヤマト科学(株)製)にて80℃で5時間通風乾燥を行い、粒子を得た。得られた粒子を目開き1000μmの篩で篩過させ、目的とする薬物造粒粒子(平均粒子径150〜350μm)を得た。
【0035】
[口腔内崩壊錠の調製]
得られた薬物造粒粒子400gと、その他の崩壊剤・賦形剤を所定の比にとり、ビニール袋に入れ20回程度手で振って混合したのち、滑沢剤を入れてさらに10回混合した。この混合粉体を、LIBRA2((株)菊水製作所製)で打錠し、表1〜5に示す組成の円形錠(φ10.0mm)を得た。打錠圧は、錠剤硬度測定器(ヤマト科学(株)製)にて硬度3〜5kgfになるように調整した。(回転盤回転数:30rpm、杵本数:12本)、表1〜5に示す組成の錠剤を得た。得られた錠剤について下記評価を行った。結果を表中に併記する。
【0036】
[口中崩壊時間]
成人男性10人により、口中崩壊性を評価した。錠剤を口腔内に入れ、舌で転がしながら錠剤を崩壊させ、錠剤が完全に崩壊するまでの時間を測定した。10人の崩壊時間の平均値から、下記基準に基づいて評価した。△以上を許容範囲とする。
〈基準〉
◎:20秒未満
○:20秒以上30秒未満
△:30秒以上40秒未満
×:40秒以上
【0037】
[換算摩損度]
日局参考情報、錠剤の摩損度試験法に従い試験を行った。摩損度試験に並行し、別途錠剤を同時間・同測定試験室にて放置し、質量変化を測定した。摩損度から質量変化率を差し引き、換算摩損度を算出し下記基準で評価した。△以上を許容範囲とする。
〈基準〉
◎:0.1質量%未満
○:0.1質量%以上0.2質量%未満
△:0.2質量%以上0.5質量%未満
×:0.5質量%以上
【0038】
[食感]
成人男性10人により、食感を評価した。錠剤を口腔内に入れ、舌で転がしながら錠剤を崩壊させ、錠剤が完全に崩壊するまでの食感を評価した。下記基準で判断し、最も回答数の多かったものを示す。3以上を許容範囲とする。
〈基準〉
5:粉っぽさを感じない
4:粉っぽさをわずかに感じる
3:粉っぽさを少し感じる
2:粉っぽさを感じる
1:粉っぽさを非常に感じる
【0039】
【表1】

【0040】
比較例1の結果から明らかであるように、乾燥水酸化アルミニウムゲルを使用せず、乾燥水酸化アルミニウムゲルの代わりに結晶セルロースを用いた場合は、本発明に比べ食感が劣るものであった。また、比較例2の結果から明らかであるように、乾燥水酸化アルミニウムゲルを薬物造粒粒子外に含有する場合は、本発明に比べ、口中崩壊時間が劣るものであった。
【0041】
【表2】

【0042】
【表3】

【0043】
【表4】

【0044】
【表5】

【0045】
上記例で使用した原料を下記に示す。
1.タンニン酸ベルベリン:アルプス薬品工業(株)製
2.ロートエキス3倍散:アルプス薬品工業(株)製(商品名:ロートエキス3倍散C)
ロートエキス33.3質量%をトウモロコシデンプン66.7質量%に含浸させたもの
3.ロートエキス顆粒:ロートエキス66.6質量%をクロスポビドンCL−SF33.4質量%に吸着させたもの
4.乾燥水酸化アルミニウムゲル:協和化学工業(株)製(商品名:乾燥水酸化アルミニウムゲルS−100)
5.マンニトール:ロケットジャパン(株)製(商品名:ペアリトール100SD)
6.クロスポビドン:BASFジャパン(株)製(商品名:コリドンCL−SF)、クロスポビドン:BASFジャパン(株)製(商品名:コリドンCL)
7.ステアリン酸マグネシウム:太平化学産業(株)製(商品名:ステアリン酸マグネシウム)
8.果糖:協和発酵工業(株)製(商品名:果糖)
9.結晶セルロース:旭化成ケミカルズ(株)製(商品名:セオラスKG−1000)
10.ヒドロキシプロピルセルロース:日本曹達(株)製(商品名:HPC−SSL)
11.無水カフェイン:静岡カフェイン(株)製(商品名:無水カフェイン)
12.アルジオキサ:(株)パーマケムアジア製(商品名:アルジオキサ)
13.ノスカピン:白鳥製薬(株)製(商品名:ノスカピン)
14.合成ヒドロタルサイト:協和化学工業(株)製(商品名:合成ヒドロタルサイト)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬物造粒粒子を含有する口腔内崩壊錠であって、該薬物造粒粒子が、薬物及び乾燥水酸化アルミニウムゲルを含有する粉体に、結合剤水溶液を添加して湿式造粒されたものであることを特徴とする口腔内崩壊錠。
【請求項2】
薬物粒子中の乾燥水酸化アルミニウムゲルの含有量が、1〜50質量%であることを特徴とする請求項1記載の口腔内崩壊錠。
【請求項3】
薬物の含有量が、口腔内崩壊錠に対して1〜70質量%であることを特徴とする請求項1又は2記載の口腔内崩壊錠。
【請求項4】
薬物及び乾燥水酸化アルミニウムゲルを含有する粉体に、結合剤水溶液を噴霧又は滴下しながら撹拌造粒した後、乾燥して薬物造粒粒子を得る工程と、得られた薬物造粒粒子又は薬物造粒粒子と他の錠剤成分との混合物を打錠する工程とを有する請求項1記載の口腔内崩壊錠の製造方法。

【公開番号】特開2011−132190(P2011−132190A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−294443(P2009−294443)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】