説明

口腔内速崩性錠剤

【課題】通常の装置で成形が可能であり、実用上問題のない硬度を有し、口腔内で口当たりよく速崩する口腔内速崩性錠剤を提供する。
【解決手段】崩壊剤で被覆された顆粒を圧縮成形してなる錠剤であって、該顆粒の内部にも崩壊剤が含まれており、該顆粒の内部および/または外部に塩酸アンブロキソール以外の薬物が含まれている口腔内速崩性錠剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口腔内速崩性錠剤に関する。より具体的には、本発明は通常の装置を用いて成形することができ、実用上問題のない硬度を有し、口腔内で口当たり良く迅速に崩壊する口腔内速崩性錠剤に関する。
【背景技術】
【0002】
口腔内速崩性錠剤は口腔内で迅速に崩壊するので、薬物の飲みやすさを改善して患者のコンプライアンスを高める剤形として注目を集めている。多様な種類の口腔内速崩性錠剤が発明されている。口腔内速崩性錠剤は、口腔内での迅速な溶解を考慮に入れて、マンニトールなどの糖アルコールを賦形剤として含むことが多い。しかし、糖アルコールは錠剤成形中に打錠における困難(スティッキングなど)の主な原因となり、圧縮成形性を損なうので、実用上問題のない硬度の確保をしばしば困難にする。それゆえ、製造時に適切な量の水を含ませる打錠技術が開示されている(例えば特開平5−270154を参照)。しかし、一般にこの技術は特殊な装置を必要とし、またさらに低い圧縮レベルで打錠を実施するので硬度が限られる。また、平均粒径30μmまたはそれ以下の細かな糖アルコールを用い、乾燥条件下で錠剤を打錠成形する技術(米国特許公開番号2003/0215500を参照)も開示されている。この技術も主要な成分として糖アルコールを用いる。したがって、上述の打錠における困難を予防するために、滑沢剤の増量および打錠時の圧力の制限が不可避的に求められる。その結果、口腔内速崩性および硬度は制限される。さらに、セルロースなどの結合剤を添加する技術(例えば米国特許公開番号2003/0049315を参照)が提案されているものの、結合剤の添加は、口腔内で錠剤が崩壊する際の口当たりを悪くするなどの問題をもたらす。さらに、崩壊剤で被覆された、糖アルコールを含有する顆粒に打錠を施して錠剤を成形する技術(国際公開番号WO2004/064810)が提案されているものの、その技術は、口腔内崩壊時間が長いなどの問題を有している。さらに、米国特許公開番号2005/0112196は、その内部および外部に崩壊剤を含有する顆粒を含む錠剤を開示している。しかし、顆粒は崩壊剤でコーティングされていないので、崩壊剤の分布が本発明の錠剤と異なり、本発明の利点は実現されない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−270154号公報
【特許文献2】米国出願公開第2003/0215500号
【特許文献3】米国出願公開第2003/0049315号
【特許文献4】国際公開第2004/064810号明細書
【特許文献5】米国出願公開第2005/0112196号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、通常の装置を用いて成形することができ、実用上問題のない硬度を有し、および口腔内で口当たり良く迅速に崩壊する口腔内速崩性錠剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、その内部に崩壊剤を含みおよび崩壊剤で被覆された顆粒より錠剤が構成される場合、通常の装置で成形が可能であり、実用上問題のない硬度を有しかつ口腔内で口当たり良く迅速に崩壊することを見出した。
言い換えると、本発明は、崩壊剤で被覆された顆粒を圧縮成形してなされる錠剤であって、該顆粒がその内部にも崩壊剤を含んでおり、その内部および/または外部に薬物を含んでいる口腔内速崩性錠剤である。
【0006】
本発明は、少なくとも崩壊剤を含む粉末から顆粒を調製し、次にこれを崩壊剤で被覆し、さらにこれを圧縮成形してなされる錠剤であって、該顆粒の調製時および/または該圧縮成形時において薬物が加えられる口腔内速崩性錠剤としても、説明することができる。
本発明はまた、その内部に崩壊剤を含んでおり、さらに薬物を含んでいてもよく、かつ崩壊剤で被覆されている、錠剤成形用の顆粒である。
【発明の効果】
【0007】
本発明による錠剤は、通常の装置を用いて成形することができ、実用上問題のない硬度を有し、および口腔内で口当たり良く迅速に崩壊する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の錠剤に用いられる薬物は、アンブロキソールまたは製薬学的に許容されるその塩を除外する以外は、通常の製造方法によって本発明の錠剤を製造する際に特に困難を引き起こす性質がない限り、特に制限されない。薬物の例は、中枢神経系用薬、末梢神経系用薬、心血管系用薬、消化器官用薬、ホルモン剤、泌尿生殖器官用薬、血液・体液用薬、代謝性医薬品、痛風治療薬、腫瘍用薬、アレルギー用薬、気管支拡張剤、抗生物質、抗菌薬、抗ウイルス薬、創傷治療物質、鎮痙剤、抗コリン剤、抗ヒスタミン剤、抗炎症剤、抗コレステロール剤、抗脂質剤、食欲抑制剤、興奮剤、血液凝固剤、制酸剤、化学療法剤、栄養補助剤、診断剤、麻酔剤および覚醒剤、鎮痛剤、鎮咳剤、去痰剤などから選択される1種類または2種類以上の活性成分を含むことができる。
【0009】
より具体的な例は、例えばアスコルビン酸、アセトアミノフェン、エテンザミド、アレンドロネート、フェブキソスタット、塩酸クレンブテロール、イコサペンタン酸エチル、タカルシトール、ピコスルフェート、アルファカルシドール、国際公開番号WO99/26918に記載の化合物、国際公開番号WO01/53291に記載の化合物、および国際公開番号WO99/25686に記載の化合物およびその塩、ならびにこれらの化合物の水和物およびその塩などなる群から選択される1種類または2種類以上の活性成分を含むことができる。
【0010】
本発明の錠剤によると、薬物は、錠剤を構成する顆粒の内部または崩壊剤で被覆された顆粒の外部の少なくともどちらかに含有される。しかし、迅速な崩壊を確保するために、薬物は顆粒の外部にのみ含まれることが好ましい。
本発明の錠剤に用いられる薬物は、その性質に応じ、フィルムコーティング剤、賦形剤、結合剤、滑沢剤などで被覆されていてもよく、また可塑剤が加えられていてもよい。
【0011】
本発明の錠剤に用いられる崩壊剤は、医薬製剤に用いられる崩壊剤である限り特に制限されない。例えば、クロスポビドン、結晶セルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスカルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム、カルボキシスターチナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、バレイショデンプン、コムギデンプン、トウモロコシデンプン、コメデンプン、部分アルファ化デンプンおよびヒドロキシプロピルスターチなどを含むことができる。これらのうち1つまたは2つ以上を用いることができる。クロスポビドンは特に好ましい。本発明にしたがって顆粒を被覆するのに用いる崩壊剤の種類は顆粒の内部で用いるものと同一であっても異なっていてもよい。
【0012】
崩壊剤は本発明の錠剤を構成する顆粒の内部にも顆粒の被覆部中にも存在しなければならない。崩壊剤が顆粒の内部または顆粒の被覆部のいずれかにのみ存在する場合は、十分な口腔内速崩性が達成されない。口腔内速崩性は、口腔内で1分〜30秒以内に崩壊する性質を指す。もっとも、口腔内速崩性が目的に照らして十分であればよく、この絶対値に拘泥する必要はない。
崩壊剤によるコーティングは圧縮成形性の改善にも寄与する。すなわち、顆粒の内部にも顆粒の被覆部にも崩壊剤が存在することが良好な圧縮成形性のために必要とされる。
【0013】
なお、崩壊剤が顆粒の「内部」に存在するといっても、崩壊剤が顆粒の表面に近い部分にも存在する可能性は除外されない。速崩性を確保するという観点から、顆粒の内部に存在する崩壊剤は他の顆粒成分と共に顆粒内に均一に分散していることが好ましい。さらに、崩壊剤は顆粒の内部および顆粒の被覆部に加えて顆粒の外部に加えることもできる。
【0014】
本発明に用いられる崩壊剤は上記のように顆粒の内部または被覆部に存在すればよく、また崩壊剤の量は特に限定されない。しかし、顆粒の内部および被覆部の崩壊剤の量が多すぎる場合は、口当たり、食感、崩壊性および圧縮成形性が損なわれ、量が少なすぎる場合は崩壊性および/または圧縮成形性が損なわれる。
【0015】
好ましい崩壊剤の含有量は、薬物の種類、使用する崩壊剤の種類、錠剤が後述する賦形剤あるいは結合剤などの添加剤を含有する場合はその添加剤の種類、あるいはそれらの粒径、製造機器の材質などによって影響されるが、一般に、顆粒の内部に含有される崩壊剤の割合は錠剤全体の4〜20重量%を占め、顆粒の被覆部に含まれる崩壊剤の割合は錠剤全体の4〜20重量%を占める。
【0016】
量がこの範囲を超える場合、崩壊性の観点からは、恐らく錠剤または顆粒の表面が崩壊剤で完全に被覆されることにより導水機構が不完全となって崩壊性を損なうと推定される。しかし、後述する賦形剤を共に用いる場合は、顆粒の内部に含まれる賦形剤の種類および粒径によってその上限が影響されることもある。例えば、顆粒の内部の賦形剤が平均粒径約20μmのエリスリトールである場合、顆粒の被覆部および顆粒の内部の崩壊剤の割合が全体の30重量%を超える場合、崩壊性が低下することがある。同じエリスリトールを用いても、その平均粒径が約30μmから約35μmである場合、顆粒の被覆部および顆粒の内部の崩壊剤の割合が全体の20重量%を超える場合、崩壊性が低下することがある。賦形剤がマンニトールでその平均粒径が約50μmである場合、顆粒の被覆部および顆粒の内部の崩壊剤の割合が全体の30重量%を超える場合、崩壊性が低下することがある。
【0017】
食感を考慮に入れたより好ましい数値は、後述する賦形剤を併用する場合、顆粒の内部に含まれる賦形剤の種類によって異なる。エリスリトールを賦形剤として用いる場合、顆粒の内部には錠剤全体の4〜8重量%で、被覆部には錠剤全体の4〜8重量%で存在させることが特に好ましい。しかし、マンニトールを賦形剤として用いる場合、崩壊剤の含有量の好ましい範囲は、食感を考慮に入れても上記と同じである。
【0018】
本発明において使用される崩壊剤の典型的な平均粒径は、約10〜約100μmである。一般に、粒子が大きい方が崩壊性および浸透速度の点で有利である。その一方、粒子が小さく結合部分が多い方が、圧縮成形性は有利である。より小さな粒径は食感の点でも好ましい。
【0019】
好ましくは、本発明の顆粒は、実用上の硬度を損なわない範囲で、その内部に空隙を含む。顆粒の内部にそのような空隙を保持させることにより、圧縮成形性および/または速崩性が改善される。
【0020】
顆粒内にそのような空隙を保持させるために、錠剤は、例えば、水および/またはエタノールで膨潤させた崩壊剤を含む顆粒を調製し、次に顆粒を崩壊剤で被覆したのちに、乾燥し圧縮成形することにより製造すればよい。結合剤を添加しない場合、流動層乾燥法などの負荷の大きな乾燥方法を採用すると、圧縮成形前の顆粒の構造が破壊されるために、錠剤の所望の機能が失われることがある。この場合、負荷の小さい静置乾燥法を採用することが好ましい。
【0021】
本発明の錠剤に用いられる、製薬学的に許容される添加剤の例は、賦形剤、滑沢剤、pH調節剤、矯味剤、甘味料、酸味料、清涼剤、発泡剤、防腐剤、流動化剤、抗酸化剤、着色料、安定化剤、界面活性剤、緩衝剤、香料、結合剤および薬物溶解補助剤を含むことができる。当業者はこれらの添加剤の具体例を速やかに挙げることができよう。
【0022】
これらの添加剤は、本発明の効果を損なわない限り、顆粒の内部、崩壊剤で被覆された顆粒の外部、崩壊剤の被覆部、またはこれら全てに適宜配合することができる。しかし、口腔内での口当たりを損なわないため、または崩壊性を改善するため、結合剤を含まないことが好ましい。
【0023】
本発明の錠剤において使用される賦形剤としては、医薬製剤に使用される賦形剤であれば特に制限はないが、例えばエリスリトール、マンニトール、キシリトール、ソルビトール、ラクシトール、パラチニット、パラチノース、マルチトール、麦芽糖、トレハロース、乳糖、ショ糖、ブドウ糖、オリゴ糖、果糖および麦芽糖などの糖を含むことができる。これらの賦形剤のうち1種類または2種類以上を用いることができる。特に、エリスリトールおよびマンニトールより選択された1つ以上を使用することが好ましい。
【0024】
本発明で使用される賦形剤は、錠剤を構成する顆粒の内部および/または崩壊剤の被覆部および/または崩壊剤で被覆された顆粒の外部に含まれる。なお、薬物の種類によっては圧縮成形性を確保するために賦形剤の添加を必要とする場合があるが、こうした賦形剤の添加が必要であるか否かは当業者による通常の予備的検討によって容易に判定することができる。
【0025】
賦形剤の粒径の好ましい範囲は、必要に応じて当業者による条件の検討によって容易に確認することができる。賦形剤の典型的な粒径は約20〜約40μmである。一般に、より小さな粒径は崩壊性および食感の点から有利であるが、賦形剤の粒径は圧縮成形性にほとんど影響しない。
【0026】
本発明の錠剤に使用される滑沢剤としては、医薬製剤に用いられるものであれば特に制限なく使用することができる。そのようなものとしては例えば軽質無水ケイ酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、モノステアリン酸アルミニウム、ショ糖脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール、フマル酸ステアリルナトリウム、ステアリルアルコール、タルク、酸化チタン、含水二酸化ケイ素、ケイ酸マグネシウム、合成ケイ酸アルミニウム、リン酸水素カルシウム、硬化ヒマシ油、硬化ナタネ油、カルナウバロウ、ミツロウ、マイクロクリスタリンワックスおよびラウリル硫酸ナトリウムを挙げることができる。これらの滑沢剤のうち1種類または2種類以上を用いることができる。これらのうち、軽質無水ケイ酸およびステアリン酸マグネシウムより選択された1つ以上を用いるのが好ましい。特に、顆粒の内部に含まれた無水ケイ酸と顆粒の外部に含まれたステアリン酸マグネシウムの組合せが好ましい。
【0027】
本発明の錠剤の形状は、通常の製造機器または多少の改変を伴う製造機器を用いて困難を伴わずに製造できる限り、特に制限されない。錠剤についての一般的な概念である円盤状を、典型例として例示できる。全体のサイズは特に制限されない。例えば、短径(円盤形錠剤については直径)は約6〜20mm、好ましくは8〜12mmの範囲内である。厚さも特に制限されないが、約1〜10mm、好ましくは2〜8mmである。
【0028】
本発明の錠剤は、通常の製造機器または多少の改変をともなう製造機器を用いて困難を伴わずに製造することができる。例えば、錠剤は、1つの崩壊剤また必要に応じて1種類以上の製薬学的に許容される添加剤を含む顆粒を崩壊剤で被覆し、1種類以上の製薬学的に許容される添加剤とともに圧縮成形することにより製造される。
【0029】
1種類以上の製薬学的に許容される添加剤を顆粒の内部に含有させるために、顆粒調製前に崩壊剤と必要な添加剤とを混合した後で顆粒を製造すればよい。また、1種類以上の製薬学的に許容される添加剤を、崩壊剤で被覆された顆粒の外部に含有させるためには、崩壊剤で被覆した顆粒を、必要な添加剤と混合した後に、圧縮成形を施して錠剤を形成すればよい。
【0030】
本発明はまた、このような口腔内速崩性錠剤の成形に用いられる顆粒であって、顆粒はその内部に崩壊剤を含み、そして薬物を含んでいてもよく、および崩壊剤で被覆される。顆粒は1種類以上の製薬学的に許容される添加剤をその内部に含むことができる。これらの添加剤の具体例および好ましい例は前記したものをそのまま例示することができるが、エリスリトールおよびマンニトールが特に好ましい。
さらに、顆粒は好ましくはその内部に空隙を含み、また好ましくは結合剤を含まない。
クロスポビドンが、顆粒の内部および被覆部に含まれる崩壊剤として好ましい。
【実施例】
【0031】
本発明を実施例を引用して説明するが、本発明はこれらの実施例によって制限されない。
(評価法)
後述する実施例および比較例には以下の評価法を用いた。
a)「硬度」は富山産業株式会社の錠剤硬度計TH−203MPを用いて測定した。
b)「摩損度」は萱垣医理化工業の摩損度試験器を用いて測定した。具体的には、55錠の錠剤を試験器に投入し、100回転させた。摩損度は、(初期重量−試験後重量)/初期重量による百分率で表した。
c)「官能評価」は口腔内で咀嚼することなく錠剤が崩壊するのに要する時間を測定することにより実施した。実施例/比較例におけるプラセボ製剤については、成人男性1名からのN=6の平均を用いた。実施例における3つの実薬製剤については、成人男性3名からのN=3の平均を用いた。
d)「日本薬局方崩壊試験」は、「日本薬局方崩壊試験法」にしたがって実施した。試験液としてミリQ水を用いた。
e)「浸透時間」は青色1号で着色したミリQ水1mLをペトリ皿上に滴下し、その上に錠剤を置いた後に水が錠剤全体に浸透するのに要する時間として測定した。
【0032】
(実施例1)
D−マンニトール264.4g(東和化成工業(株)、商品名:マンニットP(平均粒径:約50μm)、以下の実施例でも同じ)、軽質無水ケイ酸14.2g(フロイント産業株式会社)およびクロスポビドン20.3g(ISP、商品名:ポリプラスドンXL−10(メーカーの情報による平均粒径:30μm)、以下の例で特に記載のない限り同じ)を流動層造粒乾燥機(株式会社パウレック、LAB−1)に仕込んだ。膨潤したクロスポビドン11.0gを含む精製水を該混合物に噴霧して、顆粒を得た。顆粒にはクロスポビドン48.8gを加え、膨潤したクロスポビドン1.2gを含む精製水により粉コーティングした。このように崩壊剤で被覆して得られた顆粒177.0gに、フェブキソスタット20.0g(帝人ファーマ株式会社)およびステアリン酸カルシウム3.0g(日油株式会社)を添加し、混合した。次にロータリー打錠機((株)畑鐵工所、HT−AP6SS−U)を用いて混合物に圧縮成形を施した。成形条件は以下の通りである。錠剤重量120mg、Φ8mm割線平フチ丸の杵で硬度約5kgfとなるよう打錠した。
【0033】
(実施例2)
D−マンニトール264.4g(東和化成工業(株))、軽質無水ケイ酸14.2g(フロイント産業株式会社)およびクロスポビドン20.3g(ISP)を流動層造粒乾燥機(株式会社パウレック、LAB−1)に仕込んだ。膨潤したクロスポビドン11.0gを含む精製水を該混合物に噴霧して、顆粒を得た。顆粒にはクロスポビドン48.8gを加え、膨潤したクロスポビドン1.2gを含む精製水により粉コーティングした。このように崩壊剤で被覆して得られた顆粒177.0gに、アスコルビン酸20.0g(武田薬品工業(株))およびステアリン酸カルシウム3.0g(日油株式会社)を添加し、混合した。次にロータリー打錠機((株)畑鐵工所、HT−AP6SS−U)を用いて混合物に圧縮成形を施した。成形条件は以下の通りである。錠剤重量120mg、Φ8mm割線平フチ丸の杵で硬度約5kgfとなるよう打錠した。
【0034】
(参照実施例1)
D−マンニトール264.4g(東和化成工業(株))、軽質無水ケイ酸14.2g(フロイント産業株式会社)およびクロスポビドン20.3g(ISP)を流動層造粒乾燥機(株式会社パウレック、LAB−1)に仕込んだ。膨潤したクロスポビドン11.0gを含む精製水を該混合物に噴霧して、顆粒を得た。顆粒にはクロスポビドン48.8gを加え、膨潤したクロスポビドン1.2gを含む精製水により粉コーティングした。このように崩壊剤で被覆して得られた顆粒177.0gに、塩酸アンブロキソール20.0g(日本バルク薬品株式会社)およびステアリン酸カルシウム3.0g(日油株式会社)を添加し、混合した。次にロータリー打錠機((株)畑鐵工所、HT−AP6SS−U)を用いて混合物に圧縮成形を施した。成形条件は以下の通りである。錠剤重量120mg、Φ8mm割線平フチ丸の杵で硬度約5kgfとなるよう打錠した。
実施例1〜2および参照実施例3の錠剤の評価の結果を表1に示す。
【0035】
【表1】

【0036】
この結果より、本発明の錠剤は、硬度、圧縮成形性(摩損度)および崩壊性の全ての評価項目を満たすことがわかる。さらに、これら全ての効果は、薬物の種類を問わず達成されことが示されている。
【0037】
(実施例3)
エリスリトール296.0g(日研化成株式会社、グレード100M(平均粒径:約15μm)、以下の比較例1および2も同じ)、軽質無水ケイ酸12.8g(フロイント産業株式会社)およびクロスポビドン18.3g(ISP)を流動層造粒乾燥機(株式会社パウレック、LAB−1)に仕込んだ。膨潤したクロスポビドン9.9gを含む精製水を該混合物に噴霧して、顆粒を得た。顆粒にはクロスポビドン21.9gを加え、膨潤したクロスポビドン1.1gを含む精製水で粉コーティングした。崩壊剤で被覆した顆粒を乾燥機内で静置乾燥した。このように崩壊剤で被覆して得られた顆粒197.1gに、ステアリン酸カルシウム3.0g(日油株式会社)を添加し、混合した。次にロータリー打錠機((株)畑鐵工所、HT−AP6SS−U)を用いて混合物に圧縮成形を施した。成形条件は以下の通りであった。錠剤重量200mg、Φ10mm割線平フチ丸の杵で硬度約3kgfとなるよう打錠した。
【0038】
(比較例1)
エリスリトール325.2g(日研化成株式会社)および軽質無水ケイ酸12.8g(フロイント産業株式会社)を流動層造粒乾燥機(株式会社パウレック、LAB−1)に仕込んだ。混合物に精製水を噴霧して顆粒を得た。顆粒にはクロスポビドン22.0gを加え、精製水により粉コーティングした。崩壊剤で被覆した顆粒を乾燥機内で静置乾燥した。このように崩壊剤で被覆して得られた顆粒197.0gに、ステアリン酸カルシウム3.0g(日油株式会社)を添加し、混合した。次にロータリー打錠機((株)畑鐵工所、HT−AP6SS−U)を用いて混合物に圧縮成形を施した。成形条件は以下の通りであった。錠剤重量200mg、Φ10mm割線平フチ丸の杵で硬度約3kgfとなるよう打錠した。この比較例は、顆粒の内部における崩壊剤の有無が成形性および速崩性に与える影響を確認するために実施し、顆粒中に崩壊剤を含まない錠剤を製造したものである。
【0039】
(比較例2)
エリスリトール310.8g(日研化成株式会社)、軽質無水ケイ酸12.8g(フロイント産業株式会社)およびヒドロキシプロピルセルロース14.6g(日本曹達株式会社、HPC−L)を流動層造粒乾燥機(株式会社パウレック、LAB−1)に仕込んだ。混合物に精製水を噴霧して顆粒を得た。顆粒にはクロスポビドン21.9gを加え、精製水により粉コーティングした。崩壊剤で被覆した顆粒を乾燥機内で静置乾燥した。このように崩壊剤で被覆して得られた顆粒197.0gに、ステアリン酸カルシウム3.0g(日油株式会社)を添加し、混合した。次にロータリー打錠機((株)畑鐵工所、HT−AP6SS−U)を用いて混合物に圧縮成形を施した。成形条件は以下の通りであった。錠剤重量200mg、Φ10mm割線平フチ丸の杵で硬度約3kgfとなるよう打錠した。この比較例は、比較例1で顆粒結合力の不足から成形ができず、速崩性が検証できなかったので、さらに結合剤を添加して実施したものである。実施例3、比較例1および比較例2の錠剤の評価の結果を、表2に示す。
【0040】
【表2】

【0041】
結果によれば、比較例1の錠剤は、実施例3の錠剤の約2倍の打錠圧力を適用した場合でも最大で0.6kgfに過ぎず、非常に崩壊しやすかったため摩損度試験器で摩損度を測定することができなかった。したがって比較例1の錠剤は実用には向かない。この結果より、顆粒内部の崩壊剤の存在は実施例3の錠剤の成形性にとって不可欠であることが示される。
【0042】
比較例2においては、比較例1の処方に結合剤を追加して錠剤を形成した。比較例2の錠剤は結合剤を含んでいるにもかかわらず、実施例3の錠剤より摩損度が高く、圧縮成形性がなお不十分であり、また崩壊時間は実施例3の錠剤の約2倍であった。この結果より、顆粒の内部での崩壊剤の存在は崩壊性と圧縮成形性を改善することが示される。
なお、顆粒内部およびコーティング中の崩壊剤の存在によって圧縮成形性が改善されるメカニズムは解明されていない。
【0043】
(実施例4)
D−マンニトール318.0g(東和化成工業(株))、軽質無水ケイ酸12.8g(フロイント産業株式会社)およびクロスポビドン9.2g(ISP)を流動層造粒乾燥機(株式会社パウレック、LAB−1)に仕込んだ。膨潤したクロスポビドン5.0gを含む精製水を該混合物に噴霧して、顆粒を得た。顆粒にはクロスポビドン14.6gを加え、膨潤したクロスポビドン0.6gを含む精製水により粉コーティングした。崩壊剤で被覆した顆粒を乾燥機内で静置乾燥した。このように崩壊剤で被覆して得られた顆粒197.0gに、ステアリン酸カルシウム2.9g(日油株式会社)を添加し、混合した。次にロータリー打錠機((株)畑鐵工所、HT−AP6SS−U)を用いて混合物に圧縮成形を施した。成形条件は以下の通りであった。錠剤重量120mg、Φ8mm割線平フチ丸の杵で硬度約5kgfとなるよう打錠した。
【0044】
(実施例5)
D−マンニトール303.4g(東和化成工業(株))、軽質無水ケイ酸12.8g(フロイント産業株式会社)およびクロスポビドン18.3g(ISP)を流動層造粒乾燥機(株式会社パウレック、LAB−1)に仕込んだ。膨潤したクロスポビドン9.9gを含む精製水を該混合物に噴霧して、顆粒を得た。顆粒にはクロスポビドン14.6gを加え、膨潤したクロスポビドン1.1gを含む精製水により粉コーティングした。崩壊剤で被覆した顆粒を乾燥機内で静置乾燥した。このように崩壊剤で被覆して得られた顆粒197.0gに、ステアリン酸カルシウム2.9g(日油株式会社)を添加し、混合した。次にロータリー打錠機((株)畑鐵工所、HT−AP6SS−U)を用いて混合物に圧縮成形を施した。成形条件は以下の通りであった。錠剤重量120mg、Φ8mm割線平フチ丸の杵で硬度約5kgfとなるよう打錠した。
【0045】
(実施例6)
D−マンニトール296.1g(東和化成工業(株))、軽質無水ケイ酸12.8g(フロイント産業株式会社)およびクロスポビドン18.3g(ISP)を流動層造粒乾燥機(株式会社パウレック、LAB−1)に仕込んだ。膨潤したクロスポビドン9.9gを含む精製水を該混合物に噴霧して、顆粒を得た。顆粒にはクロスポビドン21.9gを加え、膨潤したクロスポビドン1.1gを含む精製水で粉コーティングした。崩壊剤で被覆した顆粒を乾燥機内で静置乾燥した。このように崩壊剤で被覆して得られた顆粒197.0gに、ステアリン酸カルシウム3.0g(日油株式会社)を添加し、混合した。次にロータリー打錠機((株)畑鐵工所、HT−AP6SS−U)を用いて混合物に圧縮成形を施した。成形条件は以下の通りであった。錠剤重量120mg、Φ8mm割線平フチ丸の杵で硬度約5kgfとなるよう打錠した。
【0046】
(実施例7)
D−マンニトール288.8g(東和化成工業(株))、軽質無水ケイ酸12.8g(フロイント産業株式会社)およびクロスポビドン18.3g(ISP)を流動層造粒乾燥機(株式会社パウレック、LAB−1)に仕込んだ。膨潤したクロスポビドン9.9gを含む精製水を該混合物に噴霧して、顆粒を得た。顆粒にはクロスポビドン29.2gを加え、膨潤したクロスポビドン1.1gを含む精製水により粉コーティングした。崩壊剤で被覆した顆粒を乾燥機内で静置乾燥した。このように崩壊剤で被覆して得られた顆粒197.0gに、ステアリン酸カルシウム3.0g(日油株式会社)を添加し、混合した。次にロータリー打錠機((株)畑鐵工所、HT−AP6SS−U)を用いて混合物に圧縮成形を施した。成形条件は以下の通りである。錠剤重量120mg、Φ8mm割線平フチ丸の杵で硬度約5kgfとなるよう打錠した。
【0047】
(実施例8)
D−マンニトール281.5g(東和化成工業(株))、軽質無水ケイ酸12.8g(フロイント産業株式会社)およびクロスポビドン18.3g(ISP)を流動層造粒乾燥機(株式会社パウレック、LAB−1)に仕込んだ。膨潤したクロスポビドン9.9gを含む精製水を該混合物に噴霧して、顆粒を得た。顆粒にはクロスポビドン36.5gを加え、膨潤したクロスポビドン1.1gを含む精製水により粉コーティングした。崩壊剤で被覆した顆粒を乾燥機内で静置乾燥した。このように崩壊剤で被覆して得られた顆粒197.3gに、ステアリン酸カルシウム3.0g(日油株式会社)を添加し、混合した。次にロータリー打錠機((株)畑鐵工所、HT−AP6SS−U)を用いて混合物に圧縮成形を施した。成形条件は以下の通りであった。錠剤重量120mg、Φ8mm割線平フチ丸の杵で硬度約5kgfとなるよう打錠した。
【0048】
(実施例9)
D−マンニトール237.5g(東和化成工業(株))、軽質無水ケイ酸12.8g(フロイント産業株式会社)およびクロスポビドン18.3g(ISP)を流動層造粒乾燥機(株式会社パウレック、LAB−1)に仕込んだ。膨潤したクロスポビドン9.9gを含む精製水を該混合物に噴霧して、顆粒を得た。顆粒にはクロスポビドン80.4gを加え、膨潤したクロスポビドン1.1gを含む精製水により粉コーティングした。崩壊剤で被覆した顆粒を乾燥機内で静置乾燥した。このように崩壊剤で被覆して得られた顆粒197.0gに、ステアリン酸カルシウム3.0g(日油株式会社)を添加し、混合した。次にロータリー打錠機((株)畑鐵工所、HT−AP6SS−U)を用いて混合物に圧縮成形を施した。成形条件は以下の通りである。錠剤重量120mg、Φ8mm割線平フチ丸の杵で硬度約5kgfとなるよう打錠した。
【0049】
(実施例10)
D−マンニトール318.0g(東和化成工業(株))、軽質無水ケイ酸12.8g(フロイント産業株式会社)およびクロスポビドン9.1g(ISP)を流動層造粒乾燥機(株式会社パウレック、LAB−1)に仕込んだ。膨潤したクロスポビドン5.0gを含む精製水を該混合物に噴霧して、顆粒を得た。顆粒にはクロスポビドン14.6gを加え、膨潤したクロスポビドン0.6gを含む精製水により粉コーティングした。崩壊剤で被覆した顆粒を流動層造粒乾燥機内で乾燥した。このように崩壊剤で被覆して得られた顆粒196.9gに、ステアリン酸カルシウム2.9g(日油株式会社)を添加し、混合した。次にロータリー打錠機((株)畑鐵工所、HT−AP6SS−U)を用いて混合物に圧縮成形を施した。成形条件は以下の通りであった。錠剤重量120mg、Φ8mm割線平フチ丸の杵で硬度約5kgfとなるよう打錠した。
【0050】
(比較例3)
D−マンニトール318.0g(東和化成工業(株))、軽質無水ケイ酸12.8g(フロイント産業株式会社)およびクロスポビドン18.3g(ISP)を流動層造粒乾燥機(株式会社パウレック、LAB−1)に仕込んだ。膨潤したクロスポビドン11.0gを含む精製水を該混合物に噴霧して、顆粒を得た。顆粒を乾燥機内で静置乾燥した。このように崩壊剤で被覆して得られた顆粒196.8gに、ステアリン酸カルシウム2.9g(日油株式会社)を添加し、混合した。次にロータリー打錠機((株)畑鐵工所、HT−AP6SS−U)を用いて混合物に圧縮成形を施した。成形条件は以下の通りであった。錠剤重量120mg、Φ8mm割線平フチ丸の杵で硬度約5kgfとなるよう打錠した。
【0051】
(比較例4)
D−マンニトール318.0g(東和化成工業(株))および軽質無水ケイ酸12.8g(フロイント産業株式会社)を流動層造粒乾燥機(株式会社パウレック、LAB−1)に仕込んだ。混合物に精製水を噴霧して顆粒を得た。顆粒にはクロスポビドン29.3gを加え、精製水により粉コーティングした。崩壊剤で被覆した顆粒を乾燥機内で静置乾燥した。このように崩壊剤で被覆して得られた顆粒197.0gに、ステアリン酸カルシウム2.9g(日油株式会社)を添加し、混合した。次にロータリー打錠機((株)畑鐵工所、HT−AP6SS−U)を用いて混合物に圧縮成形を施した。成形条件は以下の通りである。錠剤重量120mg、Φ8mm割線平フチ丸の杵で硬度約5kgfとなるよう打錠した。
【0052】
(比較例5)
D−マンニトール331.3g(東和化成工業(株))、軽質無水ケイ酸13.2g(フロイント産業株式会社)およびクロスポビドン9.5g(ISP)を流動層造粒乾燥機(株式会社パウレック、LAB−1)に仕込んだ。膨潤したクロスポビドン5.7gを含む精製水を該混合物に噴霧して、顆粒を得た。顆粒を乾燥機内で静置乾燥した。このようにして得られた顆粒189.0gにクロスポビドン8.0g(ISP)を添加した後、一次混合した。次に、ステアリン酸カルシウム3.0g(日油株式会社)を添加した後、二次混合した。次にロータリー打錠機((株)畑鐵工所、HT−AP6SS−U)を用いて混合物に圧縮成形を施した。成形条件は以下の通りであった。錠剤重量120mg、Φ8mm割線平フチ丸の杵で硬度約5kgfとなるよう打錠した。
実施例4〜10および比較例3〜5の錠剤の評価の結果を、表3に示す。
【0053】
【表3】

【0054】
実施例4〜9においては、顆粒の内部には賦形剤としてマンニトールを用い、また顆粒の内部および被覆部中の崩壊剤の割合(重量%)を変化させた。これらの錠剤はすべて硬度、圧縮成形性(摩損度)および崩壊性についての全評価項目を満たすことが示された。この結果より、顆粒の内部および被覆部中の崩壊剤の割合が少なくとも4〜20重量%である場合に評価項目が満たされること、および被覆部中の崩壊剤の含有量が20重量%よりも高い場合は食感および崩壊性がわずかに低下することが示される(実施例9)。
【0055】
さらに、乾燥方法として静置乾燥の代わりに流動層乾燥を用いた場合も、本発明の効果は奏されるが、わずかに高い打錠圧を必要とした(実施例10)。したがって、流動層乾燥よりも静置乾燥の方がより望ましいことが示される。この理由は次のように考えられる。流動層乾燥により顆粒の構造になんらかの変化が引き起こされ、またその変化の1つは顆粒内の空隙の個数とサイズが静置乾燥の場合よりも低下し、圧縮成形性の低下を引き起こすことである。
【0056】
比較例3の錠剤は崩壊剤で被覆していないものである。該錠剤は崩壊性および圧縮成形性において本発明の錠剤より劣り、また打錠圧は、実用上の限界を超えている。
比較例4の錠剤は顆粒の内部に崩壊剤を含まないものである。該錠剤も崩壊性において本発明の錠剤より大きく劣り、また打錠圧は実用上の限界を超えている。
比較例5の錠剤は顆粒の内部、さらに顆粒の外部にも崩壊剤を含んでいるが、崩壊剤で被覆していないものである。この錠剤も本発明の錠剤よりも高い打錠圧を必要とし、また圧縮成形性が劣った。崩壊剤が顆粒の内部に加えて単に外部に含まれるだけでは不十分であり、さらに崩壊剤で被覆することが必要であることが確認された。
【0057】
したがって、顆粒の内部および顆粒の被覆部にも崩壊剤が存在することが、良好な圧縮成形性、崩壊性および十分な硬度のために必要であることが示される。錠剤の崩壊剤総含有量が同じであっても(表3の実施例4と比較例3〜5)、良好な圧縮成形性、崩壊性および十分な硬度を有していたのは本発明の錠剤(表3の実施例4)のみであった。このことは、本発明は速崩錠剤にとって必要な特性が、より少ない量の崩壊剤によって達成することができるという利点を有することが示される。
【0058】
(実施例11)
エリスリトール318.0g(日研化成株式会社、グレード50M(平均粒径:約35μm)、以下の実施例12〜15も同じ)、軽質無水ケイ酸12.7g(フロイント産業株式会社)およびクロスポビドン9.1g(ISP)を流動層造粒乾燥機(株式会社パウレック、LAB−1)に仕込んだ。膨潤したクロスポビドン5.0gを含む精製水を該混合物に噴霧して、顆粒を得た。顆粒にはクロスポビドン14.6gを加え、膨潤したクロスポビドン0.6gを含む精製水により粉コーティングした。崩壊剤で被覆した顆粒を乾燥機内で静置乾燥した。このように崩壊剤で被覆して得られた顆粒196.9gに、ステアリン酸カルシウム2.9g(日油株式会社)を添加し、混合した。次にロータリー打錠機((株)畑鐵工所、HT−AP6SS−U)を用いて混合物に圧縮成形を施した。成形条件は以下の通りである。錠剤重量120mg、Φ8mm割線平フチ丸の杵で硬度約5kgfとなるよう打錠した。硬度および摩損度を安定させるために、錠剤を密封容器内で3日間室温保存した後、評価を実施した。
【0059】
(実施例12)
エリスリトール303.4g(日研化成株式会社)、軽質無水ケイ酸12.9g(フロイント産業株式会社)およびクロスポビドン13.7g(ISP)を流動層造粒乾燥機(株式会社パウレック、LAB−1)に仕込んだ。膨潤したクロスポビドン7.4gを含む精製水を該混合物に噴霧して、顆粒を得た。顆粒にはクロスポビドン21.9gを加え、膨潤したクロスポビドン0.8gを含む精製水により粉コーティングした。崩壊剤で被覆した顆粒を乾燥機内で静置乾燥した。このように崩壊剤で被覆して得られた顆粒197.2gに、ステアリン酸カルシウム2.9g(日油株式会社)を添加し、混合した。次にロータリー打錠機((株)畑鐵工所、HT−AP6SS−U)を用いて混合物に圧縮成形を施した。成形条件は以下の通りである。錠剤重量120mg、Φ8mm割線平フチ丸の杵で硬度約5kgfとなるよう打錠した。硬度および摩損度を安定させるために、錠剤を密封容器内で3日間室温保存した後、評価を実施した。
【0060】
(実施例13)
エリスリトール288.7g(日研化成株式会社)、軽質無水ケイ酸12.8g(フロイント産業株式会社)およびクロスポビドン18.3g(ISP)を流動層造粒乾燥機(株式会社パウレック、LAB−1)に仕込んだ。膨潤したクロスポビドン9.9gを含む精製水を該混合物に噴霧して、顆粒を得た。顆粒にはクロスポビドン29.1gを加え、膨潤したクロスポビドン1.1gを含む精製水により粉コーティングした。崩壊剤で被覆した顆粒を乾燥機内で静置乾燥した。このように崩壊剤で被覆して得られた顆粒197.1gに、ステアリン酸カルシウム2.9g(日油株式会社)を添加し、混合した。次にロータリー打錠機((株)畑鐵工所、HT−AP6SS−U)を用いて混合物に圧縮成形を施した。成形条件は以下の通りであった。錠剤重量120mg、Φ8mm割線平フチ丸の杵で硬度約5kgfとなるよう打錠した。硬度および摩損度を安定させるために、錠剤を密封容器内で3日間室温保存した後、評価を実施した。
【0061】
(実施例14)
エリスリトール274.1g(日研化成株式会社)、軽質無水ケイ酸12.8g(フロイント産業株式会社)およびクロスポビドン18.3g(ISP)を流動層造粒乾燥機(株式会社パウレック、LAB−1)に仕込んだ。膨潤したクロスポビドン9.9gを含む精製水を該混合物に噴霧して、顆粒を得た。顆粒にはクロスポビドン43.8gを加え、膨潤したクロスポビドン1.1gを含む精製水により粉コーティングした。崩壊剤で被覆した顆粒を乾燥機内で静置乾燥した。このように崩壊剤で被覆して得られた顆粒197.1gに、ステアリン酸カルシウム2.9g(日油株式会社)を添加し、混合した。次にロータリー打錠機((株)畑鐵工所、HT−AP6SS−U)を用いて混合物に圧縮成形を施した。成形条件は以下の通りである。錠剤重量120mg、Φ8mm割線平フチ丸の杵で硬度約5kgfとなるよう打錠した。硬度および摩損度を安定させるために、錠剤を密封容器内で3日間室温保存した後、評価を実施した。
【0062】
(実施例15)
エリスリトール237.5g(日研化成株式会社)、軽質無水ケイ酸12.8g(フロイント産業株式会社)およびクロスポビドン69.6g(ISP)を流動層造粒乾燥機(株式会社パウレック、LAB−1)に仕込んだ。膨潤したクロスポビドン9.9gを含む精製水を該混合物に噴霧して、顆粒を得た。顆粒にはクロスポビドン29.3gを加え、膨潤したクロスポビドン1.1gを含む精製水により粉コーティングした。崩壊剤で被覆した顆粒を乾燥機内で静置乾燥した。このように崩壊剤で被覆して得られた顆粒197.2gに、ステアリン酸カルシウム3.0g(日油株式会社)を添加し、混合した。次にロータリー打錠機((株)畑鐵工所、HT−AP6SS−U)を用いて混合物に圧縮成形を施した。成形条件は以下の通りである。錠剤重量120mg、Φ8mm割線平フチ丸の杵で硬度約5kgfとなるよう打錠した。硬度および摩損度を安定させるために、錠剤を密封容器内で3日間室温保存した後、評価を実施した。
実施例11〜15の錠剤の評価結果を表4に示す。
【0063】
【表4】

【0064】
実施例11〜15においては、顆粒の内部に賦形剤としてエリスリトールを用い、また顆粒の内部および被覆部中の崩壊剤の割合(重量%)を変化させた。これら全ての錠剤の硬度、圧縮成形性(摩損度)および崩壊性は許容範囲内であった。しかし、表3の結果と比較すると、範囲はマンニトールで得られたものよりも狭い傾向にある。言い換えると、エリスリトールを用いた場合、顆粒の内部および被覆部中の崩壊剤の割合が少なくとも4〜8重量%である場合、評価項目は満たされる。しかし、顆粒内部の崩壊剤の含有量が8重量%以上である場合、食感および崩壊性はわずかに損なわれ(実施例13〜14)、また含有量が20重量%を上回る場合は、特に崩壊性が低下する(実施例15)。
硬度は全ての錠剤で製造より3日後に増加した。少なくともエリスリトールを用いた場合、製造後は時間とともに何らかのメカニズムによって硬度が上昇することが示されている。
【0065】
(実施例16)
アスコルビン酸36.6g(武田薬品工業(株)、80メッシュ)、D−マンニトール201.0g(東和化成工業(株)、マンニットP)、軽質無水ケイ酸12.8g(フロイント産業株式会社、アドソリダー101)およびクロスポビドン54.8g(ISP、ポリプラスドンXL−10)を流動層造粒乾燥機(株式会社パウレック、LAB−1)に仕込んだ。膨潤したクロスポビドン(XL−10)9.9gを含む精製水を該混合物に噴霧して、顆粒を得た。顆粒にはクロスポビドン(XL−10)43.9gを加え、膨潤したクロスポビドン(XL−10)1.1gを含む精製水により粉コーティングした。崩壊剤で被覆した顆粒を乾燥機内で静置乾燥した。このように崩壊剤で被覆して得られた顆粒197.0gに、ステアリン酸カルシウム3.0g(日油株式会社)を添加し、混合した。次にロータリー打錠機((株)畑鐵工所、HT−AP6SS−U)を用いて混合物に圧縮成形を施した。成形条件は以下の通りであった。錠剤重量200mg、Φ10mm割線平フチ丸の杵で硬度約3kgfとなるよう打錠した。
【0066】
(実施例17)
アスコルビン酸36.5g(武田薬品工業(株)、80メッシュ)、D−マンニトール201.0g(東和化成工業(株)、マンニットP)、軽質無水ケイ酸12.8g(フロイント産業株式会社、アドソリダー101)およびクロスポビドン54.8g(ISP、ポリプラスドンINF−10(メーカーの情報による平均粒径11μm))を流動層造粒乾燥機(株式会社パウレック、LAB−1)に仕込んだ。膨潤したクロスポビドン(INF−10)9.9gを含む精製水を該混合物に噴霧して、顆粒を得た。顆粒にはクロスポビドン(INF−10)43.9gを加え、膨潤したクロスポビドン(INF−10)1.1gを含む精製水により粉コーティングした。崩壊剤で被覆した顆粒を乾燥機内で静置乾燥した。このように崩壊剤で被覆して得られた顆粒197.0gに、ステアリン酸カルシウム3.0g(日油株式会社)を添加し、混合した。次にロータリー打錠機((株)畑鐵工所、HT−AP6SS−U)を用いて混合物に圧縮成形を施した。成形条件は以下の通りであった。錠剤重量200mg、Φ10mm割線平フチ丸の杵で硬度約3kgfとなるよう打錠した。
【0067】
(実施例18)
アスコルビン酸36.6g(武田薬品工業(株)、80メッシュ)、D−マンニトール201.0g(東和化成工業(株)、マンニットP)、軽質無水ケイ酸12.8g(フロイント産業株式会社、アドソリダー101)およびクロスポビドン54.8g(ISP、ポリプラスドンINF−10)を流動層造粒乾燥機(株式会社パウレック、LAB−1)に仕込んだ。膨潤したクロスポビドン(INF−10)9.9gを含む精製水を該混合物に噴霧して、顆粒を得た。顆粒にはクロスポビドン(XL−10)43.9gを加え、膨潤したクロスポビドン(INF−10)1.1gを含む精製水により粉コーティングした。崩壊剤で被覆した顆粒を乾燥機内で静置乾燥した。このように崩壊剤で被覆して得られた顆粒197.0gに、ステアリン酸カルシウム3.0g(日油株式会社)を添加し、混合した。次にロータリー打錠機((株)畑鐵工所、HT−AP6SS−U)を用いて混合物に圧縮成形を施した。成形条件は以下の通りであった。錠剤重量200mg、Φ10mm割線平フチ丸の杵で硬度約3kgfとなるよう打錠した。
【0068】
(実施例19)
アスコルビン酸36.5g(武田薬品工業(株)、80メッシュ)、D−マンニトール201.1g(東和化成工業(株)、マンニットP)、軽質無水ケイ酸12.8g(フロイント産業株式会社、アドソリダー101)およびクロスポビドン54.8g(ISP、ポリプラスドンINF−10)を流動層造粒乾燥機(株式会社パウレック、LAB−1)に仕込んだ。膨潤したクロスポビドン(INF−10)9.9gを含む精製水を該混合物に噴霧して、顆粒を得た。顆粒にはクロスポビドン(XL、メーカーの情報による平均粒径100μm)43.9gを加え、膨潤したクロスポビドン(INF−10)1.1gを含む精製水により粉コーティングした。崩壊剤で被覆した顆粒を乾燥機内で静置乾燥した。このように崩壊剤で被覆して得られた顆粒197.0gに、ステアリン酸カルシウム3.0g(日油株式会社)を添加し、混合した。次にロータリー打錠機((株)畑鐵工所、HT−AP6SS−U)を用いて混合物に圧縮成形を施した。成形条件は以下の通りである。錠剤重量200mg、Φ10mm割線平フチ丸の杵で硬度約3kgfとなるよう打錠した。
実施例16〜19の錠剤の評価結果を表5に示す。表5の崩壊剤(%)の項目で括弧内に示した数値は、メーカーの提供した情報による平均粒径である。
【0069】
【表5】

【0070】
実施例16〜19においては、顆粒の内部および被覆部中の崩壊剤の割合(重量%)は一定に保ち、使用する崩壊剤の平均粒径を変えた。顆粒の内部および被覆部に平均粒径11μmの崩壊剤を用いた場合(実施例17)、崩壊時間および浸透時間は平均粒径31μmの崩壊剤を用いたもの(実施例16)と比較してわずかに遅延した。顆粒の内部に平均粒径11μm、被覆部に31μmの崩壊剤を用いた場合(実施例18)、成形性、崩壊時間および浸透時間のいずれも、顆粒の内部および被覆部内の平均粒径が11μmの崩壊剤より得られたもの(実施例17)よりも優れていた。顆粒の内部が平均粒径11μmおよび被覆部が100μmの崩壊剤の場合(実施例19)、崩壊時間も浸透時間も平均粒径31μmの崩壊剤で顆粒がコーティングされた錠剤(実施例18)で得られたものより短いことが示された。これらの結果より以下のことが示される。崩壊性および浸透時間の点からは、粒子径のより大きな崩壊剤を用いることが有利である一方、成形性の点では、粒径のより小さな崩壊剤を用いることが有利である。ただし、顆粒表面のクロスポビドンの微粒子が過剰であるとスティッキング(杵の光沢の損失)を引き起こす。
【0071】
(実施例20)
X線光電子分光分析装置(XPS、ESCA)による顆粒表面の分析
顆粒を調製した段階のもの、およびそれに崩壊剤による被覆を施したものの表面の窒素量をESCAで測定し、上述の崩壊剤被覆操作によってクロスポビドンによるコーティングがもたらされたことを確認した。この測定は日東分析センター(株)に委託して実施した。
ESCAは代表的な表面分析装置の1つであり、固体の表面から数nmの深さの領域における元素および化学結合の状態を分析するために使用される。すなわち、高度の真空下で特定のエネルギーの軟X線を固体サンプル表面に照射すると、サンプル表面から光電子効果により光電子が放出される。光電子は分析計に導入され、光電子はここで電子の運動エネルギーによって分離され、スペクトルとして検出される。深さ数nmの領域にある光電子のみが非弾性散乱を伴わずにサンプル表面より離脱し、ピークとして検出され、分析に使用される。結合エネルギーは、照射した軟X線のエネルギーより光電子の運動エネルギーを減算することにより算出される差として得られる。各原子の内殻電子は固有の結合エネルギーを有しているため、検出される電子の結合エネルギーより元素の種類を、シグナル強度より元素の割合を判定することができる。この例では、クロスポビドンに特有の窒素原子などについて測定を実施した。
【0072】
(サンプル1の調製)
D−マンニトール274.1g(東和化成工業(株))、軽質無水ケイ酸12.8g(フロイント産業株式会社)およびクロスポビドン18.3g(ISP)を流動層造粒乾燥機(株式会社パウレック、LAB−1)に仕込んだ。膨潤したクロスポビドン9.9gを含む精製水を該混合物に噴霧して、顆粒を得た。顆粒にはクロスポビドン43.8gを加え、膨潤したクロスポビドン1.1gを含む精製水により粉コーティングした。崩壊剤で被覆した顆粒を乾燥機内で静置乾燥した。
【0073】
(サンプル2の調製)
D−マンニトール274.1g(東和化成工業(株))、軽質無水ケイ酸12.8g(フロイント産業株式会社)およびクロスポビドン73.1g(ISP)を流動層造粒乾燥機(株式会社パウレック、LAB−1)に仕込んだ。混合物に精製水を噴霧して顆粒を得た。顆粒を流動層造粒乾燥機で乾燥した。
サンプル2は顆粒を調整した段階のもの、サンプル1はそれにクロスポビドン被覆を施したものである。それぞれ任意の5サンプルに対して測定を実施し、「n」はサンプル数である。測定条件は以下のとおりである。
ESCA;Quantum2000(アルバック・ファイ株式会社)
X線設定;100μmφ[25W(15kV)]のポイント分析
X線源;モノクロAIKα
光電子取出し角:45°
中和条件;中和銃とイオン銃(中和モード)の併用
測定結果を表6に示す。
【0074】
【表6】

【0075】
この結果より、サンプル1および2の両方からC、N、OおよびSiの4元素が検出された。NおよびSiの検出により、クロスポビドンおよびケイ酸成分の存在がそれぞれ示される。サンプル2における窒素元素の比率は全てのサンプルで0.5%未満であるのに対し、サンプル1における窒素元素の比率は0.7%〜2.9%の範囲内であった。したがって、表面上の窒素の量はサンプル1の方が大きかったことから、クロスポビドン被覆操作によって表面が実際にクロスポビドンで被覆されたことが示された。
【0076】
(実施例21)
飛行時間型二次イオン質量分析装置(TOF−SIMS)による表面分析
実施例20と同様な検討を、飛行時間型二次イオン質量分析装置(TOF−SIMS)によって実施した。すなわち、クロスポビドンによるコーティングが上述の崩壊剤被覆操作によってもたらされたことを確認した。この測定は日東分析センター(株)に委託して実施した。
TOF−SIMSは、固体サンプルの最外面にどのような種類の成分(原子、分子)が存在するかを判定する機器である。ppm単位で存在する極めて微量な成分を検出することができ、有機物にも無機物にも適用することができる。高速イオンビーム(一次イオン)を高度真空内の固体サンプルの表面にぶつけると、表面の構成成分がスパッタリング現象によりはじき飛ばされる。スパッタリング時に生成した正または負に荷電したイオン(二次イオン)は電場によって一方向に飛行し、一定距離離れた位置で検出される。スパッタリングの際、サンプル表面の組成に応じて様々な質量を有する二次イオンが生じる。イオンが軽いほど飛行速度は速く、重いほど飛行速度が遅い。二次イオンが生成してから検出されるまでの飛行時間を測定すると、二次イオンの質量を算出することができる。TOF−SIMSにおいては、照射する一次イオンの量は極めて小さい。したがって、有機化合物はその化学構造を維持したままでイオン化され、その質量スペクトルより有機化合物の構造を解明することができる。固体サンプルの最外面で生成する二次イオンのみが真空中に放射されることができるので、最外面(深さ約数Å)に関する情報を得ることができる。さらに、一次イオンビームのスキャンによってサンプル表面のイオン像の測定(マッピング)が可能となる。
【0077】
サンプル1および2は粘着テープ上に保持し、TOF−SIMS測定ホルダーに固定し、測定した。測定条件は以下のとおりである:
TOF−SIMS;TRIFT2(アルバック・ファイ株式会社)
一次イオン;69Ga(加速電圧15kV)
結果として、サンプル1および2の表面の二次陽/陰イオン質量スペクトルおよび陽/陰イオン像が得られた。全てのサンプルよりクロスポビドン、ケイ酸成分およびマンニトールが検出された。クロスポビドンに特徴的なイオンは、C10NO、CN、CNOなどである。サンプル1の表面上のクロスポビドン量はサンプル2と比較して大きく、上述の被覆操作によりクロスポビドンによるコーティングが実際にもたらされたことを示した。さらに、クロスポビドンが顆粒の表面全体に分散されたため、クロスポビドンによるコーティングは均一であったことが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明は、医薬品の製造に利用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
崩壊剤で被覆された顆粒を圧縮成形して得られる錠剤であって、該顆粒がその内部にも崩壊剤を含んでおり、その内部および/または外部に塩酸アンブロキソール以外の薬物を含んでいるが、被覆部に結合剤を含まない、口腔内速崩性錠剤。
【請求項2】
顆粒の内部に一種類以上の製薬学的に許容される添加剤を含む、請求項1に記載の口腔内速崩性錠剤。
【請求項3】
一種類以上の製薬学的に許容される添加剤とともに顆粒を圧縮成形して得られる、請求項1または2に記載の口腔内速崩性錠剤。
【請求項4】
顆粒の内部に空隙を有する、請求項1から3のいずれかに記載の口腔内速崩性錠剤。
【請求項5】
少なくとも崩壊剤を含む粉末から顆粒を調製し、次にこれを崩壊剤で被覆し、さらにこれを圧縮成形して得られる錠剤であって、該顆粒の調製時および/または該圧縮成形時において塩酸アンブロキソール以外の薬物が加えられる口腔内速崩性錠剤。
【請求項6】
崩壊剤に加えて、1種類以上の製薬学的に許容される添加剤を含む混合物から顆粒が調製される、請求項5に記載の口腔内速崩性錠剤。
【請求項7】
前記顆粒を1種類以上の製薬学的に許容される添加剤とともに圧縮成形して得られる、請求項5または6に記載の口腔内速崩性錠剤。
【請求項8】
前記顆粒の調製が、その調製の前に、そのために用いられる崩壊剤を水および/またはエタノールで膨潤させる工程ならびに崩壊剤による被覆の後の前記顆粒の静置乾燥の工程を含む、請求項5から7のいずれかに記載の口腔内速崩性錠剤。
【請求項9】
結合剤を含有しない、請求項1から8のいずれかに記載の口腔内速崩性錠剤。
【請求項10】
薬物が顆粒外部のみに含まれる、請求項1から9のいずれかに記載の口腔内速崩性錠剤。
【請求項11】
顆粒内部に存在する前記崩壊剤の割合が錠剤全体に対して4〜20重量%であり、顆粒被覆部中に存在する前記崩壊剤の割合が前記錠剤全体に対して4〜20重量%である、請求項1から10のいずれかに記載の口腔内速崩性錠剤。
【請求項12】
少なくとも顆粒内部にエリスリトールを含む、請求項1から11のいずれかに記載の口腔内速崩性錠剤。
【請求項13】
顆粒内部に存在する前記崩壊剤の割合が錠剤全体に対して4〜8重量%であり、顆粒被覆部中に存在する前記崩壊剤の割合が前記錠剤全体に対して4〜8重量%である、請求項12に記載の口腔内速崩性錠剤。
【請求項14】
少なくとも顆粒内部にマンニトールを含む、請求項1から11のいずれかに記載の口腔内速崩性錠剤。
【請求項15】
崩壊剤がクロスポビドンである、請求項1から14のいずれかに記載の口腔内速崩性錠剤。
【請求項16】
滑沢剤として軽質無水ケイ酸および/またはステアリン酸塩を含む、請求項1から15のいずれかに記載の口腔内速崩性錠剤。
【請求項17】
錠剤成形用の顆粒であって、その内部に崩壊剤および塩酸アンブロキソール以外の薬物を含んでおり、および崩壊剤で被覆されているが、被覆部に結合剤を含まない顆粒。
【請求項18】
内部に1種類以上の製薬学的に許容される添加剤を含む、請求項17に記載の顆粒。
【請求項19】
内部にエリスリトールを含む、請求項17に記載の顆粒。
【請求項20】
内部にマンニトールを含む、請求項17に記載の顆粒。
【請求項21】
その内部に空隙を有する請求項17から20のいずれかに記載の顆粒。
【請求項22】
結合剤を含有しない、請求項17から21のいずれかに記載の顆粒。
【請求項23】
崩壊剤がクロスポビドンである、請求項17から22のいずれかに記載の顆粒。

【公開番号】特開2011−225624(P2011−225624A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−175017(P2011−175017)
【出願日】平成23年8月10日(2011.8.10)
【分割の表示】特願2008−539669(P2008−539669)の分割
【原出願日】平成18年11月14日(2006.11.14)
【出願人】(503369495)帝人ファーマ株式会社 (159)
【Fターム(参考)】