説明

口腔内速崩性錠剤

本発明の目的は、薬剤の服用性を改善し、患者のコンプライアンスの向上等を図る固形製剤として、用いる打錠機を含め通常の錠剤の製法により、特に問題なく簡便に製造することができ、かつ実用上問題のない硬度を有し、口腔内で速やかに崩壊する口腔内速崩性錠剤を提供することにある。水溶性医薬を含有する造粒物からなる核、又は医薬と糖類とを含有する造粒物からなる核が医薬製剤用崩壊剤で被覆されている被覆造粒物を、打錠成形して製造される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、実用上問題のない硬度を有し、口腔内で速やかに崩壊する口腔内速崩性錠剤に関するものである。ここで「実用上問題のない硬度」とは、通常35N以上の硬度をいう。「速やかに崩壊する」とは、通常1分以内で崩壊することをいう。
【背景技術】
近年、薬剤の服用性を改善し、患者のコンプライアンスの向上等を図る剤形として、口腔内速崩性錠剤が注目され、様々なものが発明されている。
従来の口腔内速崩性錠剤は、口溶けの良さを考慮して、マンニトールやキシリトールなどの糖アルコールを賦形剤とするものが多い。しかし、糖アルコールは、製錠時にスティッキング(杵への付着)やバインディング(臼への付着)などの障害を発生しやすく、硬度の確保も困離である。そのため、糖アルコールを賦形剤とした口腔内速崩性錠剤を製造する場合には、例えば、糖アルコールを含む混合物を適当な水分でまず湿らせ、低圧で圧縮成形した後、乾燥して製錠するという特殊な製法、特殊な装置が採用されてきた。
一方、乾燥粉末または顆粒を打錠して製造するという通常の錠剤の製法にできる限り近い口腔内速崩性錠剤の製造も工夫されている。例えば、平均粒子径が30μm以下といった微細な糖アルコール又は糖類を主成分として、医薬と崩壊剤とを含有する混合物を圧縮成形して口腔内速崩性錠剤を得る方法(特許文献1参照)や、特段微細でない糖アルコール又は糖類を主成分として、これに崩壊剤とセルロース類とを加えた混合物を圧縮成形して口腔内速崩性錠剤を得る方法(特許文献2参照)が考え出されている。
しかしながら、上記技術等は、乾燥した糖アルコールを主成分とすることに変わりないことから、スティッキングやバインディングを防止するため、撥水製の強い潤沢剤の増量や、圧縮圧力の制限を必要とし、崩壊性および硬度に限界があった。
特許文献1:国際公開第97/47287号パンフレット
特許文献2:特開2001−58944号公報
【発明の開示】
本発明の目的は、用いる打錠機を含め通常の錠剤の製法により、特に問題なく簡便に製造することができ、かつ実用上問題のない硬度を有し、口腔内で速やかに崩壊する口腔内速崩性錠剤を提供することにある。
本発明者らは、鋭意検討した結果、医薬を含有する造粒物からなる核が医薬製剤用崩壊剤で被覆された被覆造粒物を打錠成形することにより上記目的に適う口腔内速崩性錠剤を得ることができることを見出し、本発明を完成した。
具体的に本発明として、水溶性医薬を含有する造粒物からなる核、又は医薬と糖類とを含有する造粒物からなる核が医薬製剤用崩壊剤で被覆されている被覆造粒物を、打錠成形して製造されることを特徴とする口腔内速崩性錠剤(以下「本発明錠剤」という)を挙げることができる。
本発明で用い得る「糖類」としては、医薬上許容される糖類であれば特に制限されないが、例えば、マンニトール、キシリトール、ソルビトール、エリスリトール、マルチトール、マルトース等に代表される糖アルコール、乳糖、白糖、ブドウ糖、又はオリゴ糖を挙げることができる。これらを一種又は二種以上使用することができる。特にマンニトール、乳糖が好ましく、またマンニトールと乳糖とを併用することも好ましい。
本発明で用い得る「医薬製剤用崩壊剤」は、唾液で錠剤が二次粒子又は個々の粒子にまで崩壊又は分散するのを促進することができる医薬上許容しうる添加剤であるということができる。かかる崩壊剤としては、医薬製剤で用いられる崩壊剤であれば特に制限されないが、例えば、結晶セルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース(カルメロース)、カルボキシメチルセルロースカルシウム(カルメロースカルシウム)、クロスポビドン;又はバレイショデンプン、コムギデンプン、トウモロコシデンプン、コメデンプン、ヒドロキシプロピルスターチ(HPS)、カルボキシメチルスターチナトリウム、部分アルファ化デンプン(PCS)で代表されるデンプン類を挙げることができる。これらを一種又は二種以上使用することができる。特にトウモロコシデンプンが好ましい。
本発明に係る被覆造粒物の平均粒子径は特に制限されないが、水溶性が低いか非水溶性の医薬を用いる場合には、20〜1000μmが適当であり、30〜500μmの範囲内が好ましく、50〜200μmの範囲内がより好ましい。また、粒子径は小さいほど好ましい。
医薬としては、特に制限されないが、例えば、下記の医薬を挙げることができる。ここで「水溶性医薬」とは、20℃の水に0.5mg/mL以上、好ましくは1mg/mL以上溶解することができる医薬をいう。
1.解熱・鎮痛・消炎剤
インドメタシン、アスピリン、ジクロフェナックナトリウム、ケトプロフェン、イブプロフェン、メフェナム酸、デキサメタゾン、デキサメタゾン硫酸ナトリウム、ハイドロコーチゾン、プレドニゾロン、アズレン、フェナセチン、イソプロピルアンチピリン、アセトアミノフェン、塩酸ベンジタミン、フェニルブタゾン、フルフェナム酸、サリチル酸ナトリウム、サリチル酸コリン、サザピリン、クロフェゾン、エトドラック、フェルビナク。
2.抗潰瘍剤
スルピリド、塩酸セトラキサート、ゲファルナート、マレイン酸イルソグラジン、シメチジン、塩酸ラニチジン、ファモチジン、ニザチジン、塩酸ロキサチジンアセテート、アズレンスルホン酸ナトリウム。
3.冠血管拡張剤
ニフェジピン、二硝酸イソソルビット、塩酸ジルチアゼム、トラピジル、ジピリダモール、塩酸ジラゼプ、メチル 2,6−ジメチル−4−(2−ニトロフェニル)−5−(2−オキソ−1,3,2−ジオキサホスホリナン−2−イル)−1,4−ジヒドロピリジン−3−カルボキシレート、ベラパミル、ニカルジピン、塩酸ニカルジピン、塩酸ベラパミル。
4.末梢血管拡張剤
酒石酸イフェンプロジル、マレイン酸シネパシド、シクランデレート、シンナリジン、ペントキシフィリン。
5.抗生物質
アンピシリン、アモキシリン、セファレキシン、エチルコハク酸エリスロマイシン、塩酸バカンピシン、塩酸ミノサイクリン、クロラムフェニコール、テトラサイクリン、エリスロマイシン、グリセオフルビン、セフジトレンピボキシル、アジスロマイシン、クラリスロマイシン。
6.合成抗菌剤
ナリジクス酸、ピロミド酸、ピペミド酸三水和物、エノキサシン、シノキサシン、オフロキサシン、ノルフロキサシン、塩酸シプロフロキサシン、スルファメトキサゾール・トリメトプリム、6−フルオロ−1−メチル−7−[4−(5−メチル−2−オキソ−1,3−ジオキソレン−4−イル)メチル−1−ピペラジニル]−4−オキソ−4H[1,3]チアゼト[3,2−a]キノリン−3−カルボン酸、イトラコナゾール。
7.鎮けい剤
臭化プロパンテリン、硫酸アトロピン、臭化オキソビウム、臭化チメビジウム、臭化ブチルスコポラミン、塩化トロスピウム、臭化ブトロピウム、N−メチルスコポラミンメチル硫酸、臭化メチルオクタトロピン。
8.鎮咳・抗喘息剤
テオフィリン、アミノフィリン、塩酸メチルエフェドリン、塩酸プロカテロール、塩酸トリメトキノール、リン酸コデイン、クロモグリク酸ナトリウム、トラニラスト、臭化水素酸デキストロメトルファン、リン酸ジメモルファン、塩酸クロブチノール、塩酸ホミノベン、リン酸ベンプロペリン、ヒベンズ酸チペピジン、塩酸エプラジノン、塩酸クロフェダノール、塩酸エフェドリン、ノスカピン、クエン酸カルベタペンテン、タンニン酸オキセラジン、クエン酸イソアミニル、プランルカスト、プロピオン酸フルチカゾン。
9.気管支拡張剤
ジプロフィリン、硫酸サルブタモール、塩酸クロルプレナリン、フマル酸フォルモテロール、硫酸オルシプレナリン、塩酸ピルブテロール、硫酸ヘキソプレナリン、メシル酸ビトルテロール、塩酸クレンブテロール、硫酸テルブタリン、塩酸マブテロール、臭化水素酸フェノテロール、塩酸メトキシフェナミン。
10.利尿剤
フロセミド、アセタゾラミド、トリクロルメチアジド、メチクロチアジド、ヒドロクロロチアジド、ヒドロフルメチアジド、エチアジド、シクロペンチアジド、スピロノラクトン、トリアムテレン、フロロチアジド、ピレタニド、メフルシド、エタクリン酸、アゾセミド、クロフェナミド。
11.筋弛緩剤
カルバミン酸クロルフェネシン、塩酸トルペリゾン、塩酸エペリゾン、塩酸チザニジン、メフェネシン、クロルゾキサゾン、フェンプロバメート、メトカルバモール、クロルメザノン、メシル酸プリジノール、アフロクアロン、バクロフェン、ダントロレンナトリウム。
12.脳代謝改善剤
塩酸メクロフェノキセート。
13.マイナートランキライザー
オキサゾラム、ジアゼパム、クロチアゼパム、メダゼパム、テマゼパム、フルジアゼパム、メプロバメート、ニトラゼパム、クロルジアゼポキシド、クアゼパム。
14.メジャートランキライザー
スルピリド、塩酸クロカプラミン、ソデピン、クロルプロマジノン、ハロペリドール、リスペリドン。
15.β−ブロッカー
ピンドロール、塩酸プロプラノロール、塩酸カルテオロール、酒石酸メトプロロール、塩酸ラベタロール、塩酸セリプロロール、塩酸アセブトロール、塩酸ブフェトロール、塩酸アルプレノロール、塩酸アロチノロール、塩酸オクスプレノロール、ナドロール、塩酸ブクモロール、塩酸インデノロール、マレイン酸チモロール、塩酸ベフノロール、塩酸ブプラノロール、カルベジロール。
16.抗不整脈剤
塩酸プロカインアミド、ジソピラミド、アジマリン、硫酸キニジン、塩酸アプリンジン、塩酸プロパフェノン、塩酸メキシレチン。
17.痛風治療剤
アロプリノール、プロベネシド、コルヒチン、スルフィンピラゾン、ベンズブロマロン、ブコローム。
18.血液凝固阻止剤
塩酸チクロピジン、ジクマロール、ワルファリンカリウム。
19.抗てんかん剤
フェニトイン、バルプロ酸ナトリウム、メタルビタール、カルバマゼピン。
20.抗ヒスタミン剤
マレイン酸クロルフェニラミン、フマル酸クレマスチン、メキタジン、酒石酸アリメマジン、塩酸サイクロヘプタジン。
21.鎮吐剤
塩酸ジフェニドール、メトクロプラミド、ドンペリドン、メシル酸ベタヒスチン、マレイン酸トリメブチン。
22.降圧剤
塩酸レセルピン酸ジメチルアミノエチル、レシナミン、メチルドパ、塩酸プラゾシン、塩酸ブナゾシン、塩酸クロニジン、ブドララジン、ウラピジン。
23.交感神経興奮剤
メシル酸ジヒドロエルゴタミン、塩酸イソプロテレノール、塩酸エチレフリン。
24.去たん剤
塩酸ブロムヘキシン、カルボシスティン、塩酸エチルシスティン、塩酸メチルシスティン。
25.経口糖尿病治療剤
グリベングラミド、トルブタミド、グリミジンナトリウム、トログリタゾン、ロシグリタゾン、塩酸ピオグリタゾン、エパルレスタット。
26.循環器用剤
ユビデカレノン、ATP−2Na。
27.鉄剤
硫酸第一鉄、乾燥硫酸鉄。
28.ビタミン剤
ビタミンB、ビタミンB、ビタミンB、ビタミンB12、ビタミンC、葉酸。
29.頻尿・尿失禁治療剤
塩酸フラボキサート、塩酸オキシブチニン、塩酸テロリジン、4−ジエチルアミノ−1,1−ジメチル−2−ブチニル(±)−α−シクロヘキシル−α−フェニルグリコレートハイドロクロライド モノハイドレート。
30.アンジオテンシン変換酵素阻害剤
マレイン酸エナラプリル、アラセプリル、塩酸デラプリル、カンデサルタンシレキセチン。
31.腎炎治療剤
(3β,4α)−3、23−ジヒドロキシ−N−(2−メトキシエチル)−18β−オレアン−12−エン−28−アミド(以下、化合物Aという)。
32.免疫抑制剤
タクロリムス。
33.抗悪性腫瘍剤
パクリタキセル、ドセタキセル、ビカルタミド。
「医薬と糖類とを含有する造粒物からなる核」における医薬と糖類との配合比率は、重量比として医薬1部に対して0.3〜1000部が適当であり、0.6〜500部が好ましい。
医薬製剤用崩壊剤の配合量は、核の粒子径などによって異なり、核が被覆される量であれば特に制限されないが、多すぎると成形性と服用性に影響を及ぼすので、できる限り薄く全体に被覆される量が好ましい。ここで、「核が医薬製剤用崩壊剤で被覆されている」とは、ほぼ核表面全体に医薬製剤用崩壊剤が固着している状態をいう。
本発明錠剤における医薬の配合量は、適用する医薬の用法用量によって適宜設定することができる。
本発明錠剤においては、速崩性が保たれ得る範囲内で第三の添加剤を適宜配合することができる。当該添加剤としては、例えば、流動化剤、滑沢剤、着色剤、芳香剤、吸着剤、安定化剤、抗酸化剤、pH調整剤、界面活性剤、緩衝剤、矯味剤、甘味剤、発泡剤、保存剤、酸味剤、清涼剤といった添加剤を必要に応じて適当量含有することができる。
かかる流動剤としては、例えば、ステアリン酸などの長鎖脂肪酸;長鎖(C10〜22)脂肪酸のモノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリド;カルナバロウ、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ステアリルアルコール等の高級脂肪アルコール、セタノールなどのワックス;レシチン、ラウリル硫酸ナトリウムを挙げることができ、本発明錠剤中、例えば20重量%以下で含有することができる。滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム、モノステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリルアルコール、タルク、酸化チタン、軽質無水ケイ酸、含水二酸化ケイ素、ケイ酸マグネシウム、合成ケイ酸アルミニウム、リン酸水素カルシウム、ショ糖脂肪酸エステル、硬化ヒマシ油、硬化ナタネ油、カルナウバロウ、ミツロウ、トウモロコシデンプン、ポリエチレングリコール、マイクロクリスタリンワックス、ラウリル硫酸ナトリウムを挙げることができ、本発明錠剤中、例えば3重量%以下で含有することができる。着色剤としては、例えば、三二酸化鉄、黄色三二酸化鉄、酸化チタン、タール色素を挙げることができ、本発明錠剤中、例えば1重量%以下で含有することができる。芳香剤としては、例えば、ウイキョウ油、オレンジ油、ケイヒ油、チョウジ油、テレビン油、ハッカ油、ユーカリ油、レモン油を挙げることができ、本発明錠剤中、例えば3重量%以下含有することができる。吸着剤としては、例えば、軽質無水ケイ酸、ケイ酸カルシウム、無水リン酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム、安定化剤としては、例えば、シクロデキストリン、エデト酸ナトリウム、抗酸化剤としては、例えば、トコフェロール、アスコルビン酸、塩酸システイン、pH調整剤としては、例えば、リン酸塩、酢酸塩、炭酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、フマル酸塩、アミノ酸塩、界面活性剤としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリソルベート80、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコール、緩衝剤としては、例えば、アスコルビン酸、塩化ナトリウム、塩化カリウム、炭酸ナトリウム、矯味剤としては、乳糖、白糖、ブドウ糖、マンニトール、フルクトース、ソルビトール、アスパルテーム、サッカリン、サッカリンナトリウム、グリチルリチン酸塩、クエン酸、酒石酸、カカオ脂、グルタミン酸ナトリウム、甘味剤としては、例えば、サッカリンナトリウム、アスパルテーム、グリチルリチン酸二カリウム、ステビア(蔗糖)、発泡剤としては、例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、保存剤としては、例えば、安息香酸塩、パラオキシ安息香酸塩、サリチル酸塩、エデト酸ナトリウム、酸味剤としては、例えば、クエン酸、酒石酸、りんご酸、アスコルビン酸、清涼剤としては、例えば、メントール、ハッカ油、ケイヒ油、ウイキョウ油、カンフルを挙げることができる。
本発明錠剤の剤形としては、例えば、円形の他、楕円形、ドーナツ形の異形など特に制限されない。分割錠とすることもできる。錠厚も特に制限されないが、錠厚1〜10mmが適当であり、2〜8mmが好ましい。一般に錠厚が薄い程速崩性に優れる。錠剤の大きさも特に制限されないが、例えば、短径(円形の錠剤の場合は直径)6〜20mmの範囲内のものが適当であり、8〜12mmが好ましい。
本発明錠剤は、例えば、医薬を含む造粒物からなる核を、例えば流動層造粒機を用いて常法により医薬製剤用崩壊剤で被覆し、乾燥してそれにより得られた被覆造粒物を常法により打錠成形することにより製造することができる。
水溶性医薬を含有する造粒物からなる核ないしは医薬と糖類とを含有する造粒物からなる核は、例えば、原料である医薬や糖類等を常法により造粒乾燥して製造することができる。かかる造粒乾燥機としては、例えば、流動造粒・乾燥機や転動流動造粒・乾燥機を挙げることができる。
医薬製剤用崩壊剤による被覆は、核を製造した後に行うこともできるが、核を製造しながら連続的に同様に造粒乾燥して行うことができる。
核を医薬製剤用崩壊剤で被覆するに際して、核と医薬製剤用崩壊剤との結合を容易にする目的で、医薬上許容される結合剤を適当量添加することができ、またそれを添加するのが好ましい。かかる結合剤としては、医薬製剤で用いられている結合剤であれば特に制限されない。具体例としては、デンプンのり液、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC−SSL、HPC−SL、HPC−Lなど)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム(カルメロースナトリウム)、アラビアゴム、ゼラチン、寒天、トラガント、アルギン酸ナトリウム、プルラン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコールを挙げることができる。これらを一種又は二種以上使用することができる。特にヒドロキシプロピルセルロースが好ましい。また、当該結合剤に乳糖等の糖類を配合することもできる。なお、当該結合剤は、溶液状態又はスラリー状態で添加することができる。
各成分を混合する方法としては、特に制限されないが、繁用の混合機を用いて行う方法を挙げることができる。
打錠成形方法としては、特に制限されないが、繁用のロータリー打錠機、油圧プレス機、単発打錠機で行う方法を挙げることができる。打錠成形圧は、通常の錠剤製造における成形圧と基本的に変わりがなく、3〜25kN/cmの範囲内が適当であり、8〜17kN/cmの範囲内が好ましい。3kN/cm未満又は25kN/cmより大きくても本発明錠剤を製造することができる場合もあるが、なお、打錠成形圧が低すぎると錠剤の硬度が得られないおそれがある。一方、高すぎると口腔内で速やかに崩壊し難い錠剤が得られるおそれがある。
【発明を実施するための最良の形態】
以下に、実施例、比較例、試験例を掲げて、本発明をさらに詳しく説明する。本発明は、以下の実施例に限定されるものではないことは言うまでもない。
【実施例1】
マレイン酸イルソグラジン6g、D−マンニトール(東和化成社製:マンニットP、平均粒子径約60μm、特に断りがなければ以下同じ)225gおよび乳糖(HMS、平均粒子径約60μm、以下同じ)159gを流動層造粒乾燥機(パウレック社製、MP−01型、以下同じ)に仕込み、ヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達社製、HPC−SSL、以下同じ)4.5gおよび乳糖9gを含む精製水(結合剤溶液)121.5gを噴霧して造粒を行い、核を形成し、結合剤溶液が残り1/3になった時点でコーンスターチ(日本食品加工社製、以下同じ)45gを造粒層内へ徐々に添加して核をコーンスターチで被覆し、乾燥工程を経て被覆造粒物を得た。かかる造粒物300gにステアリン酸マグネシウム(太平化学社製、以下同じ)1.5gを加えた混合末を1錠あたり300mgとなるように打錠し(菊水製作所製:コレクト12HUK、圧縮圧14.98kN/cm(149.8MPa)(以下同じ))、錠径10mmΦの本発明錠剤を得た。
【実施例2】
マレイン酸イルソグラジン6g、D−マンニトール225gおよび乳糖159gを流動層造粒乾燥機に仕込み、ヒドロキシプロピルセルロース4.5gおよび乳糖9gを含む精製水(結合剤溶液)121.5gを噴霧して造粒を行い、結合剤溶液が残り1/3になった時点でヒドロキシプロピルスターチ(フロイント産業社製、HPS101)45gを造粒層内へ徐々に添加し、乾燥工程を経て被覆造粒物を得た。かかる造粒物300gにステアリン酸マグネシウム1.5gを加えた混合末を1錠あたり300mgとなるように打錠し、錠径10mmΦの本発明錠剤を得た。
【実施例3】
マレイン酸イルソグラジン6g、D−マンニトール225gおよび乳糖159gを流動層造粒乾燥機に仕込み、ヒドロキシプロピルセルロース4.5gおよび乳糖9gを含む精製水(結合剤溶液)121.5gを噴霧して造粒を行い、結合剤溶液が残り1/3になった時点でライススターチ(島田化学社製、ミクロパール)45gを造粒層内へ徐々に添加し、乾燥工程を経て被覆造粒物を得た。かかる造粒物300gにステアリン酸マグネシウム1.5gを加えた混合末を1錠あたり300mgとなるように打錠し、錠径10mmΦの本発明錠剤を得た。
【実施例4】
マレイン酸イルソグラジン6g、D−マンニトール225gおよび乳糖159gを流動層造粒乾燥機に仕込み、ヒドロキシプロピルセルロース4.5gおよび乳糖9gを含む精製水(結合剤溶液)121.5gを噴霧して造粒を行い、結合剤溶液が残り1/3になった時点で微結晶セルロース(旭化成社製、アビセルPH−101)45gを造粒層内へ徐々に添加し、乾燥工程を経て被覆造粒物を得た。かかる造粒物300gにステアリン酸マグネシウム1.5gを加えた混合末を1錠あたり300mgとなるように打錠し、錠径10mmΦの本発明錠剤を得た。
【実施例5】
マレイン酸イルソグラジン6g、D−マンニトール225gおよび乳糖159gを流動層造粒乾燥機に仕込み、ヒドロキシプロピルセルロース4.5gおよび乳糖9gを含む精製水(結合剤溶液)121.5gを噴霧して造粒を行い、結合剤溶液が残り1/3になった時点でカルボキシメチルセルロース(五徳薬品社製、NS−300)45gを造粒層内へ徐々に添加し、乾燥工程を経て被覆造粒物を得た。かかる造粒物300gにステアリン酸マグネシウム1.5gを加えた混合末を1錠あたり800mgとなるように打錠し、錠径10mmΦの本発明錠剤を得た。
【実施例6】
マレイン酸イルソグラジン6g、D−マンニトール225gおよび乳糖159gを流動層造粒乾燥機に仕込み、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(信越化学社製、TC−5E)4.5gおよび乳糖9gを含む精製水(結合剤溶液)121.5gを噴霧して造粒を行い、結合剤溶液が残り1/3になった時点でコーンスターチ45gを造粒層内へ徐々に添加し、乾燥工程を経て被覆造粒物を得た。かかる造粒物800gにステアリン酸マグネシウム1.5gを加えた混合末を1錠あたり300mgとなるように打錠し、錠径10mmΦの本発明錠剤を得た。
【実施例7】
マレイン酸イルソグラジン6g、D−マンニトール225gおよび乳糖159gを流動層造粒乾燥機に仕込み、ヒドロキシプロピルセルロース4.5gおよび乳糖9gを含む精製水(結合剤溶液)121.5gを上方より噴霧してローター回転速度300rpmの条件で転動造粒を行った。結合剤溶液が残り1/3になった時点でコーンスターチ45gを造粒層内へ徐々に添加し、乾燥工程を経て造粒物を得た。造粒物300gにステアリン酸マグネシウム1.5gを加えた混合末を1錠あたり300mgとなるように打錠し、錠径10mmΦの本発明錠剤を得た。
【実施例8】
塩酸アンブロキソール22.5g、D−マンニトール217.5gおよび乳糖150gを流動層造粒乾燥機に仕込み、ヒドロキシプロピルセルロース4.5gおよび乳糖9gを含む精製水(結合剤溶液)121.5gを噴霧して造粒を行い、結合剤溶液が残り1/3になった時点でコーンスターチ46gを造粒層内へ徐々に添加し、乾燥工程を経て被覆造粒物を得た。かかる造粒物300gにステアリン酸マグネシウム1.5gを加えた混合末を1錠あたり300mgとなるように打錠し、錠径10mmΦの本発明錠剤を得た。
【実施例9】
D−マンニトール390gを流動層造粒乾燥機に仕込み、ヒドロキシプロピルセルロース4.5gおよび乳糖9gを含む精製水(結合剤溶液)121.5gを噴霧して造粒を行い、結合剤溶液が残り1/3になった時点でコーンスターチ45gを造粒層内へ徐々に添加し、乾燥工程を経て造粒物を得た。造粒物300gにステアリン酸マグネシウム3gを加えた混合末を1錠あたり300mgとなるように打錠し、錠径10mmΦの本発明錠剤を得た。
【実施例10】
D−マンニトール(ロケット社製:マンニトール35、平均粒子径約35μm)390gを流動層造粒乾燥機に仕込み、ヒドロキシプロピルセルロース4.5gおよび乳糖9gを含む精製水(結合剤溶液)121.5gを噴霧して造粒を行い、結合剤溶液が残り1/3になった時点でコーンスターチ45gを造粒層内へ徐々に添加し、乾燥工程を経て被覆造粒物を得た。かかる造粒物300gにステアリン酸マグネシウム3gを加えた混合末を1錠あたり300mgとなるように打錠し、錠径10mmΦの本発明錠剤を得た。
【実施例11】
アセトアミノフェン225g、D−マンニトール60gおよび乳糖105gを流動層造粒乾燥機に仕込み、ヒドロキシプロピルセルロース4.5gおよび乳糖9gを含む精製水(結合剤溶液)121.5gを噴霧して造粒を行い、結合剤溶液が残り1/3になった時点でコーンスターチ45gを造粒層内へ徐々に添加し、乾燥工程を経て被覆造粒物を得た。かかる造粒物300gにステアリン酸マグネシウム3gを加えた混合末を1錠あたり300mgとなるように打錠し、錠径10mmΦの本発明錠剤を得た。
【実施例12】
沈降炭酸カルシウム225g、D−マンニトール105gおよび乳糖60gを流動層造粒乾燥機に仕込み、ポリビニルアルコール(日本合成化学社製、EG−05)2.25gおよび乳糖9gを含む精製水(結合剤溶液)121.5gを上方より噴霧してローター回転速度300rpmの条件で転動造粒を行った。結合剤溶液が残り1/3になった時点でコーンスターチ30gおよびカルボキシメチルセルロース(五徳薬品社製、NS−300)15gを造粒層内へ徐々に添加し、乾燥工程を経て被覆造粒物を得た。かかる造粒物300gにステアリン酸マグネシウム1.5gを加えた混合末を1錠あたり300mgとなるように打錠し、錠径10mmΦの本発明錠剤を得た。
比較例1(直打法)
マレイン酸イルソグラジン6g、D−マンニトール225g、乳糖159g、コーンスターチ45gおよびステアリン酸マグネシウム2.2gを加えた混合末を1錠あたり300mgとなるように打錠し、錠径10mmΦの比較用錠剤を得た。
比較例2(崩壊剤内添加法)
マレイン酸イルソグラジン6g、D−マンニトール225g、乳糖159gおよびコーンスターチ45gを流動層造粒乾燥機に仕込み、ヒドロキシプロピルセルロース4.5gおよび乳糖9gを含む精製水(結合剤溶液)121.5gを噴霧し、造粒、乾燥工程を経て造粒物を得た。造粒物300gにステアリン酸マグネシウム1.5gを加えた混合末を1錠あたり300mgとなるように打錠し、錠径10mmΦの比較用錠剤を得た。
比較例3(崩壊剤外添加法)
マレイン酸イルソグラジン6g、D−マンニトール225gおよび乳糖159gを流動層造粒乾燥機に仕込み、ヒドロキシプロピルセルロース4.5gおよび乳糖9gを含む精製水(結合剤溶液)121.5gを噴霧し、造粒、乾燥工程を経て造粒物を得た。造粒物255gにコーンスターチ45gおよびステアリン酸マグネシウム1.5gを加えた混合末を1錠あたり300mgとなるように打錠し、錠径10mmΦの比較用錠剤を得た。
試験例
実施例および比較例で得られた錠剤の硬度、崩壊試験における崩壊時間および口腔内崩壊時間を測定した。また、錠剤製造時の打錠用顆粒の流動性(良否)、バインディング性(有無)と杵表面への付着性(有無)を観察した。
(硬度)モンサント式硬度計を用いて測定した。10錠の測定を行い、その平均値を示す。
(崩壊試験における崩壊時間)試験液を精製水とし、第十四改正日本薬局方崩壊試験法素錠の項に基づき崩壊時間を確認した。
(口腔内崩壊時間)錠剤が口腔内の唾液のみで崩壊するまでの時間を一般成人男子3名(33才、40才、53才)により測定した。
結果を表1に示す。

以上のとおり、本発明錠剤は打錠障害なく良好に製造することができ、また、実用上問題のない硬度を有し、口腔内で速やかに崩壊した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性医薬を含有する造粒物からなる核、又は医薬と糖類とを含有する造粒物からなる核が医薬製剤用崩壊剤で被覆されている被覆造粒物を、打錠成形して製造されることを特徴とする口腔内速崩性錠剤。
【請求項2】
医薬製剤用崩壊剤が、結晶セルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、クロスポビドン;又はバレイショデンプン、コムギデンプン、トウモロコシデンプン、コメデンプン、ヒドロキシプロピルスターチ、カルボキシメチルスターチナトリウム、部分アルファ化デンプンで代表されるデンプン類である請求項1記載の口腔内速崩性錠剤。
【請求項3】
糖類が、マンニトール、キシリトール、ソルビトール、エリスリトール、マルチトール、マルトースで代表される糖アルコール、乳糖、白糖、ブドウ糖、又はオリゴ糖の少なくとも一つである請求項1又は2記載の口腔内速崩性錠剤。
【請求項4】
被覆造粒物の平均粒子径が、20〜1000μmの範囲内である、請求項1〜3のいずれかに記載の口腔内速崩性錠剤。
【請求項5】
錠厚が、1〜10mmの範囲内である、請求項1〜4のいずれかに記載の口腔内速崩性錠剤。

【国際公開番号】WO2004/064810
【国際公開日】平成16年8月5日(2004.8.5)
【発行日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−508095(P2005−508095)
【国際出願番号】PCT/JP2004/000444
【国際出願日】平成16年1月20日(2004.1.20)
【出願人】(000004156)日本新薬株式会社 (46)
【Fターム(参考)】