説明

口腔機能測定器、口腔機能測定方法、口腔機能測定器用制御装置

【課題】安静時唾液量および刺激時唾液量、さらには酵素などの量をも短時間で、精度良く行える口腔機能測定器および口腔機能測定方法を提供する。
【解決手段】機器本体10と、操作機器本体10に接続ケーブル31を介して着脱自在に設けられた唾液を感知するセンサープローブ30と、操作機器10に接続ケーブル42を介して接続されて唾液腺を刺激する刺激付与部45とを具備し、操作機器10は、センサープローブ30により感知された、通常時分泌される安静時唾液量と、刺激付与部45による唾液腺の刺激で分泌される刺激時唾液量との測定データを検知できるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口腔内で分泌される睡眠中などの安静時における安静時唾液量と、食事などの咀嚼時における刺激時唾液量とを、簡単な操作によって、容易且つ精度良く測定できる口腔機能測定器および口腔機能測定方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
唾液分泌量が減少して口腔粘膜が乾燥するドライマウスと称される口腔乾燥症の患者が増大している。厚生労働省・長寿科学研究事業の研究によると、人口の17%以上を占めている65歳以上の高齢者の半数以上(56.1%)の人が、口腔乾燥症の自覚症状があるとされる。実数に換算すれば、実に高齢者だけでも1200万人以上の人が口腔乾燥症に悩まされており、摂食障害・味覚障害・嚥下障害・言語障害など日常生活に不便をきたしていることになる。
【0003】
この口腔乾燥症は、糖尿病、腎疾患などの全身疾患、口呼吸や喫煙、薬や治療の副作用、唾液腺の病気、中枢や末梢の神経障害、精神的ストレスなどにより発症されるといわれる。更に口腔乾燥症が慢性化すると、膠原病の合併症として、シェーグレン症候群、慢性関節リウマチ、全身性エリトマトーデスなど難病の原因となり、悪性リンパ腫などに至るケースもある。
【0004】
このため、口腔内の状況を判定し、この判定結果に基づいて口腔環境を改善することで、健康状態の維持・増進に役立てようとする取り組みが重要となってきている。例えば、平成18年4月に施行された介護保険では、新・予防給付の対象として、運動器の機能向上と、栄養改善とともに「口腔機能の向上」が3重要項目として採択された。
【0005】
ところで、唾液は、主として耳下腺、顎下腺、舌下腺などから分泌されるが、唾液腺からの唾液分泌量は加齢に伴い減少する。また、上記の三大唾液腺以外の口蓋腺の唾液分泌も年齢に伴い減少する。
【0006】
本出願人は、先に特許文献1および2に記載される口腔水分測定器を開発し、出願を行っている。これら特許文献1および2に記載の発明は、いずれもプローブ(probe)を「く」の字状に屈曲させ、プローブ先端に唾液を感知するセンサー部を設けたハンディタイプの形状を有する口腔水分測定器である。口腔内の水分を測定する場合には、口腔水分測定器を把持しながら、プローブのセンサー部を口腔内の粘膜に押し当て、粘膜上皮肉に含まれる水分量(唾液量)を静電容量として測定、評価を行い、測定結果を把持部に設けた表示部にデジタル表示する。これにより、測定者の主観が入ることのない客観的な唾液の分析を行えるようにしている。
【0007】
また、唾液量ではなく、唾液の分泌を促進して唾液の内容物質を分析する技術として、例えば、特許文献3〜5に記載の技術が公知である。これら特許文献3〜5に記載の技術は、被測定者の舌ないしは口腔内に酢酸などの刺激性の溶液を滴下したりすることで唾液の分泌を促し、所定量の唾液を収集して測定を行うものである。また、上記の特許文献5には、上記刺激剤の使用に加えて、マウスピース状部材を噛ませることで唾液を採取する技術についても開示されている。
【特許文献1】WO2004/28359号公報
【特許文献2】特開2006−122347号公報
【特許文献3】特開平9−5321号公報
【特許文献4】特開2000−9728号公報
【特許文献5】特開2004−219309号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記の特許文献3〜5に記載の技術にあっては、刺激剤を口腔内に付与するため、被測定者が嫌悪感を示すという問題があった。また、唾液自体を分析したい場合には、その分析を阻害しない刺激剤を選んで使用しなければならない。そのため、測定対象物質に制約を受けない刺激剤を選択する作業に手間がかかるという問題があった。また、特許文献5では、被測定者にマウスピースを噛ませる動作を行わせて唾液の分泌を促すようにしているので、被測定者に余計な負担をかけるという問題があった。
【0009】
また、本出願時では未公知であるが、本発明者の検討によると、口腔乾燥症の状況を的確に判断するには、定常時の唾液量と、唾液線に刺激を与えて強制的に唾液を分泌させた際の刺激時唾液量の双方を検査することが重要であると考えられた。しかし、上記特許文献3〜5のように、刺激剤を用いる方法では、刺激剤の反応度合によって刺激時唾液量に個人差が生まれるため、客観的な判断ができないという問題があった。また、噛み動作によって唾液線を刺激して分泌を促す手法の場合、高齢者にとって、その噛み動作が大きな負担になる場合があった。結果として、刺激時唾液量に対して噛み動作等の筋力・体調的な要因が多分に含まれてしまうため、客観的な唾液量計測が難しいという問題があった。
【0010】
また例えば、既に述べたように、新・予防給付の対象となる「口腔機能の向上」に関して、給付判断の基礎となる口腔機能状態の判定は、チェックシートを用いた問診や視診によって行なわれる。しかし、このチェックシートによる判断についても、判断者の主観が含まれることから、将来、客観的なデータを重視した判定・評価が求められる。しかし、そのような判定・評価を行う装置が存在しないのが実情である。
【0011】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、被測定者が噛む動作を要することなく、自動的に唾液分泌を促して、少なくとも安静時唾液量および刺激時唾液量を短時間で客観的に測定可能とし、さらには酵素などの量をも短時間で測定できる口腔機能測定器および口腔機能測定方法等を提供することを目的とするものである。ひいては、この測定を通じて、高齢者や障害者の口腔機能の向上や、食べる、飲み込む、話すなど、QOL(生活の質)の向上に貢献することを間接的な目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的は以下の手段によって達成されるものである。
【0013】
(1) 口腔内の唾液を検体として生体検査・診断を行う口腔機能測定器であって、機器本体と、該機器本体に接続されて唾液を感知するセンサープローブと、前記機器本体に接続されて被測定者の唾液腺を刺激する刺激付与部とを具備し、前記機器本体は、前記センサープローブにより、通常分泌される安静時唾液量と、前記刺激付与部による前記唾液腺の刺激で分泌される刺激時唾液量とを検知することを特徴とする口腔機能測定器。
【0014】
本発明では、口腔内に挿入されたセンサープローブを被測定者の口腔内に差し込んでくわえてさせることで、安静時唾液量が計測(測定)される。次いで、刺激付与部を被測定者の唾液腺を刺激すると、刺激時唾液が分泌されるので、このセンサープローブによって刺激時唾液量を測定することができる。こうして、本口腔機能測定器により、簡単な操作で、短時間で、安静時唾液量と刺激時唾液量に関する精度の高い測定データを得ることができ、小型軽量で携帯性に優れた口腔機能測定器を実現できる。
【0015】
なお、センサープローブはどのような形態のものであってもよいが、例えば、静電容量式のセンサーは誘電率の変化により唾液量を計測するので、感度、精度、安定性の面から好ましい。また、刺激付与部は、振動による刺激や低周波マッサージ等の各種刺激形態を適宜採用可能である。
【0016】
(2)前記センサープローブにより検知された前記安静時唾液量及び前記刺激時唾液量を表示する表示部を更に備えることを特徴とする上記(1)記載の口腔機能測定器。
【0017】
このようにすると、その場で視覚的に情報が表示されるので、利便性を高めることが可能になる。
【0018】
(3)前記機器本体は、前記センサープローブを用いて、前記安静時唾液量と前記刺激時唾液量を連続的に検知することを特徴とする上記(1)又は(2)記載の口腔機能測定器。
【0019】
なお、ここでいう連続的とは、センサープローブを差し替えない状態を意味している。このようにすると、より短時間で自動化された計測が可能になる。
【0020】
(4)前記センサープローブは、センサーカバーを被覆して測定するようになっており、前記センサープローブから取り外された前記センサーカバーを収容して、前記センサーカバーに付着する唾液の含有物を測定する唾液計測部を更に備えることを特徴とする上記(1)、(2)又は(3)に記載の口腔機能測定器。
【0021】
このセンサーカバーは、例えば、超極薄膜のプラスチックフィルムを用いると好都合である。これにより、被測定者が代わる毎に取り替えることができ、感染防止を図れ、衛生状態を良好に維持できる。なお、センサーカバーをセンサープローブに被覆して測定するとき、静電容量式のセンサーの場合にはセンサーカバーの存在に起因する誘電率の変化に悪影響を及ぼすことはない。
【0022】
更にこのようにすると、唾液量を計測する際に用いたセンサーカバーを有効活用して、これに付着した唾液中に含まれる種々の酵素を、唾液計測部によって検出することが可能となる。この結果、唾液量と唾液の含有物の計測を、一連の工程でまとめて行うことが可能となり、被測定者の負担が軽減され、且つ短時間の計測が可能となる。
【0023】
(5)支持手段を介して前記刺激付与部を保持すると共に、利用者の顎が載置される顎受け部を備えることを特徴とする上記(1)乃至(4)のいずれか記載の口腔機能測定器。
【0024】
このようにすると、被測定者は顎受け部に顎を載せて顔を安定させることが可能となり、より客観性の高い正確な計測が可能となる。なお、支持手段は、一対の刺激付与部を被測定者の両頬に当接させる構造であることが望ましく、特に、支持手段を利用して、この刺激付与部を頬の両側を挟むような状態が好ましい。
【0025】
(6)前記刺激付与部は、前記支持手段に対して揺動自在に取付けられていることを特徴とする上記(5)記載の口腔機能測定器。
【0026】
このようにすると、被測定者の顔型、サイズに柔軟に対応して、刺激付与部を装着することができる。
【0027】
(7)少なくとも前記安静時唾液量及び前記刺激時唾液量をプリントデータで発行するプリンタを設けたことを特徴とする上記(1)乃至(6)のいずれか記載の口腔機能測定器。
【0028】
(8)センサーカバーを被覆したセンサープローブ、及び頬の両側から唾液腺に刺激を付与する刺激付与部を機器本体に接続し、前記センサープローブを被測定者の口にくわえさせ、かつ、前記刺激付与部を頬にあてがった状態で、通常分泌される安静時唾液量と、前記刺激付与部による唾液腺の刺激で分泌される刺激時唾液量とを計測することを特徴とする口腔機能測定方法。
【0029】
(9)前記刺激時唾液量の測定は、前記安静時唾液量の測定が行われた後に行われることを特徴とする上記(8)記載の口腔機能測定方法。
【0030】
これにより、安静時唾液量の測定データを得た後に、刺激時唾液量の測定データを得ることができるので、両測定データを比較することで正確に唾液の検査および診断に資することができるようになる。特に、一旦、唾液量が増大してしまうと、口腔内の唾液量の減少に時間を要するため、先に安静時唾液量を計測してから、刺激時唾液量を計測することで、それぞれの唾液量を短時間で正確に計測できる。
【0031】
(10)前記刺激付与部は、被測定者の顎を載せる顎受け部に設けられていることを特徴とする上記(8)または(9)記載の口腔機能測定方法。
【0032】
(11)前記機器本体は、計測データを補助記憶手段に記憶するように構成されることを特徴とする上記(10)記載の口腔機能測定方法。
【0033】
データ転送が行われる補助記憶手段には、例えば、SDカード(Secured Digital memory card)、メモリースティック(Memory Stick)などの形態がある。これにより、測定データを情報通信ネットワークを通じて他の専門医療施設などへ伝送することで、より詳細な生化学的分析に資することができるようになる。
【0034】
(12)口腔内の唾液を検体として生体検査・診断を行う口腔機能測定器に用いられる制御装置であって、本体に接続される唾液感知用のセンサープローブに対して、安静時唾液量を計測するように指示する安静時計測指示部と、前記安静時計測指示部による計測終了後、前記本体に接続される刺激付与部に対して被測定者の唾液腺を刺激するように指示する刺激指示部と、前記センサープローブに対して、前記刺激付与部により増加した刺激時唾液量を計測するように指示する刺激時計測指示部と、を備えることを特徴とする口腔機能測定器用制御装置。
【0035】
(13)前記刺激時計測指示部は、前記刺激付与部が予め設定された時間に亘って頬を刺激した後に前記センサープローブに計測を指示すること特徴とする口腔機能測定器用制御装置。
【0036】
(14)前記機器本体には、唾液含有物を計測可能な唾液計測部が接続されており、前記刺激時唾液の計測終了後、前記唾液計測部に対して、前記センサープローブから取り外された前記センサーカバーに付着する唾液含有物を計測するように指示する唾液分析指示部を備えることを特徴とする上記(12)又は(13)に記載の口腔機能測定器用制御装置。
【発明の効果】
【0037】
本発明者は、安静時における安静時唾液量だけでなく、食事などの咀嚼時における刺激時唾液量、さらには、唾液に含まれる物質を計測して唾液に含まれる酵素などの分泌量を、短時間で簡単な操作で、かつ、精度よく測定できる。また、本発明を用いれば、医療施設などだけでなく、一般家庭でも用いることができ、健康管理に役立てることのできる小型軽量で携帯に便利な口腔機能測定器および口腔機能測定方法等を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、図を参照して詳述する。図1は実施形態に係る口腔機能測定器10の全体構成を示す外観斜視図、図2は操作機器20の三面図、図3はセンサープローブ30に係り、(a)はその外観斜視図、(b)は平面図、(b)は側面図、図4は顎受け台40の三面図、図5は口腔機能測定器10による測定状態を示す外観斜視図である。
【0039】
口腔機能測定器10は、操作機器(本体)20と、センサープローブ30と、顎受け台40とで構成され、人の口腔内の唾液を検体とし、唾液を生体検査し、診断するものである。
【0040】
図1,図2に示される操作機器20は、前面の傾斜面に、測定データをデジタル表示するように液晶ディスプレイ(LCD)で形成した表示部21,電源ボタン22a,安静時唾液量を測定するための安静時ボタン22b、刺激時唾液量を測定するための刺激時ボタン22c,酵素などを測定する酵素測定ボタン22d,補助記憶手段としてのフラッシュメモリの差し込み口であるUSBポート(図示省略)、プリンタ用ボタン(図示省略)が設けられる。なお、USBポートの代わりに、あるいはこれに加えて、補助記憶手段としてのSDカード(Secured Digital memory card)(登録商標)やメモリースティック(memory stick)(登録商標)が差し込めるスロットを設けてもよい。
【0041】
操作機器20は、電源として、商用電源(100Vの交流電源)と12Vの電池を併用できるようにしている。これにより、口腔機能測定器10の携行が可能となる。電源ボタン22aを入れることで、操作機器20内部の電気回路に電源電流が通電される。商用電源に接続される場合には100Vの交流電流が通電されて、測定可能な状態となる。安静時ボタン22bを押すと、睡眠中などにおける通常時に分泌される安静時唾液の量が測定させるモードとなる。刺激時ボタン22cを押すことにより、後述する顎受け台40の支持手段44に取付けた刺激付与部45が駆動して低周波で振動する。これにより、被測定者の唾液腺が一定の時間刺激され、食事などの咀嚼時における刺激時唾液を疑似的に発生させる。また、酵素測定ボタン22dを押すことにより、後述するセンサーカバー50に付着した唾液に含まれる物質(例えば酵素など)の量を測定するモードとなる。そして、上記の表示部21には、これら各測定モードで得られた測定データがデジタル表示されるようになっている。
【0042】
操作機器20の上面には、唾液中の酵素などを測定する測定チェンバー(唾液計測部)24と、測定データを打ち出すプリンタ25と、センサープローブ30を着脱自在に保持する断面凹溝状の細長い保持部26とが設けられる。なお、保持部26の端部には、センサープローブ30を位置決め保持させる係合凸部26aが形成されている。
【0043】
測定チェンバー24には、センサープローブ30から取り外された使用済み後のセンサーカバー50を入れることができ、酵素測定ボタン22dを押すことにより、センサーカバー50に付着した唾液中に含まれる酵素などが、この測定チェンバー24内に格納されたセンサーと、このセンサーに接続されるアルゴリズム(ソフトウエア)により計測されるようになっている。
【0044】
上記のプリンタ25はプリントシートが収納され、上記各測定モードで測定された測定データが印字されてプリントデータシート25aとして発行するようになっている。
【0045】
操作機器20の側面には、センサープローブ30の接続ケーブル31に対して電気的に接続可能な接続端子孔27aと、顎受け台40の接続ケーブル42に対して電気的に接続可能な接続端子孔27bなど、合計3個の接続端子孔が形成されている。
【0046】
図3に示されるセンサープローブ30は、静電容量式タイプであり、細長く扁平状に形成されるセンサー部33に水分(唾液)を感知する図示されないセンサーが内蔵され、誘電率の変化により水分を測定できるようになっている。センサー部33は把持部32で支持され、把持部32に接続ケーブル31が接続される。把持部32には、上記保持部26の係合凸部26aに係合可能な凹部32aと、発音部32bとが設けられる。発音部32bは例えば、所定の測定時間が経過したり、計測が完了したときに、電子音を発音して測定者に報知するようになっている。
【0047】
センサープローブ30には、被測定者の唾液を測定する場合に、センサー部33に袋状のセンサーカバー50(図1参照)が被覆される。被測定者は、センサーカバー50付きのセンサープローブ30を口にくわえてて測定を行う。センサーカバー50は被測定者ごとに取り替える消耗品として扱われ、これにより感染予防を図るようにしている。センサーカバー50は例えば、疎水性熱可塑性樹脂であるポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリ塩化ビニル等の薄膜化が可能な熱可塑性樹脂により製作されたものを用いるのが好ましい。
【0048】
操作機器20には、制御装置として、分泌される唾液量や酵素量などを演算するCPU、上記の各測定モードを実行するプラグラムを格納したROM、演算処理の結果(測定データ)を記憶するRAM、測定時間を計測するタイマー回路、演算処理の結果をプリンタ25や補助記憶手段などへ出力する出力部などで成る図示されない電気回路が適宜組み込まれている。こうして被測定者の口にくわえられるセンサープローブ30により、上記測定モードごとに、安静時唾液量および刺激時唾液量が測定され、またセンサーカバー50を測定チェンバー24に入れることにより、酵素などの量を測定できる。
【0049】
顎受け台40は図1,図4に示されるように、顎を受けるように形成された顎受け部43と、顎受け部43に設けた支持手段44と、支持手段44に設けた刺激付与部45とで構成される。顎受け部43に顎を載せることで、被測定者は顔を安定した状態に維持することができる。
【0050】
支持手段44は、顎受け部43の両側に第1蝶番P1を介して設けた一対の第1アーム44aと、一対の第1アーム44aに第2蝶番P2を介して設ける馬蹄形状の第2アーム44bと、第2アーム44bの両自由端部に第3蝶番P3を介して設けた一対の第3アーム44cと、第3アーム44cの端部に設けられる一対の第4蝶番P4と、を備える。この第4蝶番P4には一対の刺激付与部45が設けられる。第1アーム44aが第1蝶番P1の回りに回転することで第2アーム44b、第3アーム44c、および刺激付与部45は第1蝶番P1の回りを一体に回動することができるので、両頬と顎の間の距離を調節できる。第2アーム44bは、第2蝶番P2の回りに回転するので、両頬と顎の間の距離をや刺激付与部45の角度を調節できる。一対の第3アーム44cは、互いに近接する方向、すなわち、第2アーム44bの内方側に若干屈曲できるように設けられており、所定の圧力で両頬に当たるようになっている。第4蝶番P4は、被測定者の頬の湾曲具合に合わせて刺激付与部45の角度を調節できる。
【0051】
刺激付与部45を装着する場合には、両刺激付与部45の間隔を若干拡げて頬に挟むが、第1蝶番P1〜第4蝶番P4の蝶番機構により、被測定者の顔型やサイズに合わせて角度調節しながら、刺激付与部45を頬の唾液腺にあてがうことができる。こうして、測定時に刺激時ボタン22cを押すと、刺激付与部25が駆動し、左右の刺激付与部25から両頬の唾液腺が低周波マッサージで刺激され、これにより刺激時唾液の分泌が促されて刺激時唾液量の測定が行われる。
【0052】
次に、この口腔機能測定器10の制御装置の機能構成について、図6を参照して説明する。なお、これらの機能構成は、既に説明したCPU、ROM、RAM等が電気的に連動することで実現されるものである。
【0053】
口腔機能測定器10の制御装置は、安静時計測指示部70、刺激指示部72、刺激時計測指示部74、唾液分析指示部76を備える。安静時計測指示部70は、操作機器20に接続されるセンサープローブ30に対して、安静時唾液量を計測する指示を与える。刺激指示部72は、安静時計測指示部74による計測終了後、操作機器20に接続される刺激付与部45に対して、被測定者の唾液腺を刺激するように指示する。刺激時計測指示部74は、センサープローブ30に対して、刺激付与部により増加した刺激時唾液量を計測するように指示する。唾液分析指示部76は、刺激時唾液の計測終了後、測定チェンバー24内に格納されたセンサーに対して、センサーカバー50に付着する唾液含有物を計測するように指示する。
【0054】
なお、本実施形態では、各種ボタン操作に基づいて、これらの指示を出す場合を示すが、これを自動化することも可能である。例えば、刺激指示部72は、安静時計測指示部70が安静時唾液量の計測完了を検知した後、自動的に刺激を開始するように指示することが好ましい。更に刺激時計測指示部74は、刺激付与部45が予め設定された時間に亘って頬を刺激した後、自動的にセンサープローブ74に刺激時唾液量を計測を指示するようにすることが好ましい。また、唾液分析指示部76は、測定チェンバー24内にセンサーカバー50が存在することを検出することで、自動的に検査を開始することも好ましい。このようにすることで、最初の開始ボタンのみで、安静時唾液と刺激時唾液等の計測を略自動化することも可能になる。
【0055】
次に、本実施形態の口腔機能測定器10を使用して唾液量等の測定を行う手順を、主として図7に示す流れ図に基づいて説明する。まず、図5に示すように、センサープローブ30の接続ケーブル31を接続端子孔27aに、顎受け台40の接続ケーブル42を接続端子孔27bにそれぞれ接続し、操作機器20に、センサープローブ30と顎受け台40を接続する(S1)。なお、センサープローブ30は予め、常時操作機器20に接続していてもよい。被測定者の顎を顎受け台40に載せ、測定部位である頬を安定支持させ、支持手段44を調節しながら支持手段44を頬にあてがう(S2)。測定者(オペレータ)が操作機器20の電源ボタン22aを押してONにする(S3)。センサープローブ30を操作機器20の保持部26から取出してセンサーカバー50を被せ(S4)、口腔内にセンサープローブ30をくわえてもらう(S5)。安静時ボタン22bを押して安静時唾液量の測定を開始し、その測定データが表示部21に表示される(S6)。
【0056】
次に、刺激時ボタン22cを押すと、支持手段44が動き、刺激付与部45が駆動して頬を低周波マッサージ(刺激)する(S7)。被測定者は口にセンサープローブ30をくわえたままの状態にあり、刺激時唾液量が測定され、その測定結果が表示部21に表示される(S8)。その後、使用済み後の被測定者のセンサーカバー50をセンサープローブ30から取り外し、それを測定チェンバー24に入れる(S9)。酵素量測定ボタン22dを押すと(S10)、操作機器20内部に設けたセンサーとアルゴリズムによりセンサーカバー50に付着した唾液に含まれる物質が計測され、唾液に含まれる酵素などの量が表示部21に表示される(S11)。図示されないプリンタ用ボタンを押すことで、測定した安静時唾液量、刺激時唾液量、および酵素の測定データがプリントデータシート25aとなって発行(出力)できる(S12)。メモリースティック等の補助記憶手段をUSBポートに差し込んで上記各測定データを保存し(S13)、口腔機能の測定が終了する。測定が終了した後はセンサープローブ30を操作機器20の保持部26へ戻す。
【0057】
本実施形態の口腔機能測定器および口腔機能測定方法によれば、従来のように刺激剤を一切使用することなく測定できるので、被測定者の負担を軽減することが可能になる。また、薬剤の個人反応差や、噛む動作等の個人差を回避しながら、刺激時唾液量を計測することができるので、計測結果の客観性を担保することができる。更に、安静時唾液量や刺激時唾液量等を連続的に計測できるので、測定操作が簡単で、且つ短時間に完了させることができる。
【0058】
更に、刺激時唾液の含有物質は、健康診断として有益であるが、本実施形態では、刺激時唾液量の測定で用いたセンサーカバー50を有効活用して、その含有物を分析することができるので、被測定者にとっては、複雑な操作を行うことなく、一連の操作で全ての計測を短時間で行うことができる。
【0059】
また、小型軽量で持ち運びが可能であるので、専門医療施設だけでなく、一般家庭でも手軽に使用できる利点がある。また、各測定データをプリントアウトしたデータの形態、あるいは補助記憶手段に格納する形態などにより、測定後の測定データの取り扱いに便利となる利点がある。殊に、補助記憶手段の場合は、保存された測定データは通信ネットワークを通じて所定の医療検査機関や病院へ伝送することができ、これにより遠隔地にあっても瞬時にして詳細な生化学的分析が行える。
【0060】
以上、本発明を一実施形態により詳述してきたが、具体的な構成はこの一実施形態に限られるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も本発明の範囲に含まれるものである。
【0061】
上記の実施形態では、刺激付与部25を駆動させて頬に低周波マッサージをする態様であったが、この代わりに顎受け部43内に振動手段を設け、この振動手段からの振動を支持部材40全体に伝達させる構成にしてもよい。また、刺激付与部を口腔内に加えさせて、自動的に振動等を加えるようにしても良い。
【0062】
また、センサープローブ30は静電容量式が好ましいが、これに限定されないのは言うまでもなく、また、測定対象となる物質によってはこれ以外の態様のセンサープローブを使用することも可能である。
【0063】
尚、本発明は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0064】
人の口腔内の唾液を検体とし、唾液の生体検査・診断を行う口腔機能測定器および口腔機能測定方法に適用される。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の一実施形態に係る口腔機能測定器における全体構成を示す外観斜視図である。
【図2】図1に示す操作機器20の三面図である。
【図3】センサープローブ30に係り、(a)はその外観斜視図、(b)は平面図、(c)は側面図、(d)は(c)の側面図である。
【図4】顎受け台40の三面図である。
【図5】上記の口腔機能測定器を用いて測定する状態を示す口腔機能測定器の外観斜視である。
【図6】上記の口腔機能測定器の制御装置の機能構成を示すブロック図である。
【図7】上記の口腔機能測定器を用いて測定を行う手順を示す流れ図である。
【符号の説明】
【0066】
10 口腔機能測定器
20 操作機器
21 表示部
22a 電源ボタン
22b 安静時ボタン
22c 刺激時ボタン
22d 酵素測定ボタン
24 測定チェンバー
25 プリンタ
26 保持部
27a,27b 接続端子孔
30 センサープローブ
31 接続ケーブル
32a センサー部
32b 発音部
40 顎受け台
42 接続ケーブル
43 顎受け部
44 支持手段
44a〜44c 第1アーム〜第3アーム
45 刺激付与部
50 センサーカバー
P1〜P4 第1蝶番〜第4蝶番

【特許請求の範囲】
【請求項1】
口腔内の唾液を検体として生体検査・診断を行う口腔機能測定器であって、機器本体と、該機器本体に接続されて唾液を感知するセンサープローブと、前記機器本体に接続されて被測定者の唾液腺を刺激する刺激付与部とを具備し、前記機器本体は、前記センサープローブにより、通常分泌される安静時唾液量と、前記刺激付与部による前記唾液腺の刺激で分泌される刺激時唾液量とを検知することを特徴とする口腔機能測定器。
【請求項2】
前記センサープローブにより検知された前記安静時唾液量及び前記刺激時唾液量を表示する表示部を更に備えることを特徴とする請求項1記載の口腔機能測定器。
【請求項3】
前記機器本体は、前記センサープローブを用いて、前記安静時唾液量と前記刺激時唾液量を連続的に検知することを特徴とする請求項1又は2記載の口腔機能測定器。
【請求項4】
前記センサープローブは、センサーカバーを被覆して測定するようになっており、
前記センサープローブから取り外された前記センサーカバーを収容して、前記センサーカバーに付着する唾液の含有物を測定する唾液計測部を更に備えることを特徴とする請求項1、2又は3に記載の口腔機能測定器。
【請求項5】
支持手段を介して前記刺激付与部を保持すると共に、利用者の顎が載置される顎受け部を備えることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか記載の口腔機能測定器。
【請求項6】
前記刺激付与部は、前記支持手段に対して揺動自在に取付けられていることを特徴とする請求項5記載の口腔機能測定器。
【請求項7】
少なくとも前記安静時唾液量及び前記刺激時唾液量をプリントデータで発行するプリンタを設けたことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか記載の口腔機能測定器。
【請求項8】
センサーカバーを被覆したセンサープローブ、及び頬の両側から唾液腺に刺激を付与する刺激付与部を機器本体に接続し、前記センサープローブを被測定者の口にくわえさせ、かつ、前記刺激付与部を頬にあてがった状態で、通常分泌される安静時唾液量と、前記刺激付与部による唾液腺の刺激で分泌される刺激時唾液量とを計測することを特徴とする口腔機能測定方法。
【請求項9】
前記刺激時唾液量の測定は、前記安静時唾液量の測定が行われた後に行われることを特徴とする請求項8記載の口腔機能測定方法。
【請求項10】
前記刺激付与部は、被測定者の顎を載せる顎受け部に設けられていることを特徴とする請求項8または9記載の口腔機能測定方法。
【請求項11】
前記機器本体は、計測データを補助記憶手段に記憶するように構成されることを特徴とする請求項10記載の口腔機能測定方法。
【請求項12】
口腔内の唾液を検体として生体検査・診断を行う口腔機能測定器に用いられる制御装置であって、
本体に接続される唾液感知用のセンサープローブに対して、安静時唾液量を計測するように指示する安静時計測指示部と、
前記安静時計測指示部による計測終了後、前記本体に接続される刺激付与部に対して被測定者の唾液腺を刺激するように指示する刺激指示部と、
前記センサープローブに対して、前記刺激付与部により増加した刺激時唾液量を計測するように指示する刺激時計測指示部と、を備えることを特徴とする口腔機能測定器用制御装置。
【請求項13】
前記刺激時計測指示部は、前記刺激付与部が予め設定された時間に亘って頬を刺激した後に前記センサープローブに計測を指示すること特徴とする口腔機能測定器用制御装置。
【請求項14】
前記機器本体には、唾液含有物を計測可能な唾液計測部が接続されており、
前記刺激時唾液の計測終了後、前記唾液計測部に対して、前記センサープローブから取り外された前記センサーカバーに付着する唾液含有物を計測するように指示する唾液分析指示部を備えることを特徴とする請求項12又は13に記載の口腔機能測定器用制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−295472(P2008−295472A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−141228(P2007−141228)
【出願日】平成19年5月29日(2007.5.29)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.MEMORY STICK
【出願人】(592132730)株式会社ライフ (4)
【Fターム(参考)】