説明

口腔衛生組成物

シリコン研磨剤を含有する歯磨き剤組成物としての使用のために好適な口腔衛生組成物が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコンを含有する口腔衛生組成物に関する。本発明はまた、これら組成物を使用する処置方法およびこれらの製造のための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
練り歯磨きなどの歯磨き剤組成物としての使用に好適な口腔衛生組成物、およびうがい剤は周知である。現代の歯磨き剤は、歯の制御された機械的な清浄および磨きのための研磨物質を含有することが多く、保湿剤、結合剤、香料、色素、フッ素源などの治療もしくは活性成分、流動調整剤、保存剤、および発泡剤もしくは洗浄剤を含む、多くの他の通常の成分を場合によって含有する。
【0003】
このような歯磨き製剤における研磨物質の主な機能は、歯垢膜を含むさまざまな沈着物の歯の表面からの除去を補助することである。歯垢膜は歯にしっかりとくっつき、見苦しい外観を与える色素成分を含むことが多い。
【0004】
効果的な歯磨き製剤は、歯垢膜を含むさまざまな沈着物の除去を最大化することを求めるべきである。このような製剤において使用される研磨物質は、好ましくは、研磨、または硬質の歯組織の脱灰によって歯茎または歯の硬組織を損傷しないように選択される。練り歯磨きの研摩性は、歯から機械的に沈着物および皮膜を除去する練り歯磨きにおいて、シリカ、リン酸カルシウム、アルミナまたは他の固体粒子などの研磨剤からもたらされる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
歯垢膜除去、および/または研摩の許容されるもしくは改善されたレベルと組み合わせた歯石抑制を含む、必要な清浄要件を与える練り歯磨きなどの歯磨き製剤における使用のための代替研磨剤に対する継続するニーズが存在する。この均衡の達成は、これまで困難であることが示されてきた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、シリコン、および特に多孔性シリコンが、歯磨き剤組成物として使用するために好適なものを含む口腔衛生組成物における研磨剤として使用し得ることを見出したことに基づく。
【0007】
本発明の第1の態様において、微粒子シリコン研磨剤を含有する口腔衛生組成物、例えば歯磨き剤組成物が提供される。
【0008】
場合によって、該シリコン研磨剤は、歯および/または他の口腔表面への制御された放出のための1種もしくは複数種の活性および/または不活性剤を添加されていてもよい。
【0009】
本発明のさらなる態様によれば、該微粒子シリコン研磨剤と口腔衛生組成物の他の成分とを混合するステップを含む、本発明の第1の態様による該口腔衛生組成物のための製造方法が提供される。
【0010】
本発明のさらなる態様によれば、歯および他の口腔表面に対する本発明の第1の態様による組成物の安全で有効な量の適用を含む、汚れおよび/または歯垢および/または歯肉炎を減少させるための方法が提供される。
【0011】
本発明のさらなる態様によれば、歯垢を減少させ、および/また歯肉炎を減少させ、もしくは抑制するための歯磨き剤組成物などの薬用口腔衛生組成物の製造における、本発明の第1の態様による組成物の使用が提供される。
【0012】
本発明のさらなる態様によれば、歯および他の口腔表面に対する本発明の第1の態様による組成物の安全で有効な量の適用を含む、汚れを減少させるための美容方法が提供される。
【0013】
本発明のさらなる態様によれば、歯垢および/または歯肉炎の治療および/または予防における使用のための本発明の第1の態様による組成物が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
シリコン
本明細書において使用されている「シリコン」という用語は、他に特記されない限り、元素シリコンをいう。元素シリコンは通常、色は暗灰色であるとして表現される。疑いを避けるために、および他に特記されない限り、シリカ、ケイ酸塩類もしくはシリコーン類などのシリコン含有化合物と組み合わせて使用し得るが、「シリコン」という用語にこれら物質は含まれない。
【0015】
特に、本発明における使用のために好適なシリコン研磨剤は、アモルファスシリコン、単結晶シリコンおよび多結晶シリコン(粒度が通常1から100nmであるナノ結晶シリコンを含む)から選択することができ、これらの組み合わせを含み得る。「p−Si」と称することがある多孔性シリコンが好ましく、本発明における使用のために好適なシリコンの上述の種類のいずれも多孔化し得る。該シリコンは、例えば、ステインエッチング法を使用して表面多孔化してもよく、または例えば、陽極酸化法を使用してより実質的に多孔化してもよい。
【0016】
最も好ましくは、該シリコンは再吸収性である。該シリコンは、研磨剤として存在していてもよく、ならびに/または活性および/もしくは不活性の作用剤の調節された送達のために存在していてもよい。該シリコン研磨剤は、生物活性シリコンを含んでもよい。
【0017】
該シリコン研磨剤は、約95から99.99999%の純度であってよく、例えば、約96から99.9%の純度であってよい。典型的に約98から99.5%の純度を有する、いわゆる金属グレードシリコンが好ましい。
【0018】
生物学的用途における半導体、シリコンの使用について、例えば、PCT/GB96/01863において記載され、この内容全体が参照によって本明細書に組み込まれる。そこに記載されるように、原結晶シリコンを、US5348618に記載のように、フッ化水素酸ベースの溶液における部分的電気化学溶解によって多孔性にすることができ、この内容もまた、全体が参照によって本明細書に組み込まれる。このエッチング処理は、本来の原物質の結晶性および結晶学的配向を保持するシリコン構造を生ずる。したがって、形成される多孔性シリコンは、結晶性シリコンの形態である。広くは、本方法は、例えば、10%フッ化水素酸エタノール溶液を含有する電解液を含む電気化学的電池において大量にホウ素がドープされたCZシリコンウエハを陽極酸化することを含む。約50mAcm−2の密度を有する陽極酸化電流の通電に続けて、短時間電流密度を増加させることによってウエハから分離できる多孔性シリコン層が生成される。この効果は、多孔性領域と原結晶領域の間の界面でシリコンを溶解させることである。PCT/GB02/03493およびこの明細書中の引用にはまた、本発明における使用のためのシリコンを製造するために好適である、シリコンの粒子を製造する方法が記載されており、この内容全体は、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0019】
この形成に続いて、該多孔性シリコンを乾燥してもよい。例えば、Canham in Nature,vol.368,pp133〜135,(1994)によって記載されるように、超臨界的に乾燥してもよい。他に、該多孔性シリコンは、凍結乾燥してもよく、Bellet and Canham in Adv.Mater,10,pp487〜490,(1998)によって記載されるように、エタノールまたはペンタンなど水より表面張力の低い液体を使用して空気乾燥してもよい。
【0020】
口腔衛生組成物における使用のために好適な微粒子形態においてシリコンを生成するために、該シリコンを粉砕に供してもよい。例えば、粒度は、Kerkarら,J.Am.Ceram.Soc.,vol.73,pp2879〜2885,(1990)において記載されるように製粉によって減少させてもよい。微粒子シリコンを生成するための他の方法としては、PCT/GB01/03633において、シリコンを遠心分離に供するか、またはシリコン粉を摩砕することによってシリコン粒子を生成し得ることが記載されており、この内容全体が参照によって本明細書に組み込まれる。多孔性シリコン粉は、結晶シリコンのウエハ間で摩砕してもよい。多孔性シリコンは、原結晶シリコンよりも硬度が低く、結晶シリコンウエハは、超高純度で、非常に滑らかな表面を有するので、シリコンウエハ/多孔性シリコン粉/シリコンウエハのサンドイッチは、例えば、陽極酸化によって生成された非常に大きい多孔性シリコン粒子から、例えば、1から10μmの粒度を得る便利な手段である。
【0021】
シリコン粒子の平均粒度(d50/μm)は、Malvern Instruments製のMalvern Particle Size Analyzer,Model Masterslzerを使用して測定する。ヘリウム−ネオンガスレーザー光を、水溶液中に懸濁したシリコン粒子を含む透明セルを通過させて投影させる。粒子に当たる光線は、粒度に対して逆比例である角度によって分散される。光検出器アレイが数ヵ所の所定の角度で光量を測定する。次いで、測定された光束値に比例する電気信号が、試料および水分散剤の屈折率によって定義される理論粒子から予測される分散パターンに対して、マイクロコンピュータシステムによって処理され、該シリコンの粒度分布を決定する。
【0022】
微粒子シリコン研磨剤の平均粒度は、好ましくは、歯磨き剤組成物の研摩性および清浄性特性のバランスが、歯および/または歯茎に損傷を起こすことなく、合理的に可能な限り有効であるような粒度である。典型的には、d50は、1から100μmの範囲、好ましくは10から50μmの範囲にある。例えば、d50は約30μmである。
【0023】
シリコン研磨剤が多孔性シリコンを含有する場合、多孔性シリコンの表面は、例えば、口腔衛生組成物における多孔性シリコンの安定性を改善するために好適に修飾してもよい。特に、多孔性シリコンの表面は、シリコンをアルカリ条件においてより安定にさせるように修飾し得る。多孔性シリコンの表面は、該多孔性シリコンの孔によって形成される外部および/または内部の表面を含んでもよい。したがって、多孔性シリコンの表面は、水素化ケイ素表面、多孔性シリコンが典型的には部分的に酸化されているように表現し得る酸化ケイ素表面、またはSi−O−C結合および/またはSi−C結合を有し得る誘導体化表面を与えるように修飾されてもよい。
【0024】
水素化ケイ素表面は、例えば、ステインエッチングまたはフッ素化水素酸ベース溶液を使用する陽極酸化法によって生成し得る。酸化ケイ素表面は、シリコン粒子を、例えば、「多孔性シリコンの特性(Properties of Porous Silicon)」(L.T.Canham編,IEE1997)の5.3章において記載されるように、化学酸化、光化学酸化または熱酸化に供することによって生成し得る。PCT/GB02/03731には、多孔性シリコンの試料が非酸化状態において一部の多孔性シリコンを保持するような方法で、多孔性シリコンを部分的に酸化し得ることが記載され、その内容全体が参照によって本明細書に組み込まれる。例えば、PCT/GB02/03731には、20%エタノールHFにおける陽極酸化に続いて、陽極酸化された試料を500℃で空気中熱処理によって部分的に酸化し、部分的に酸化された多孔性シリコン試料を生成することが記載されている。
【0025】
部分酸化により、シリコン粒子は部分的に酸化されて、酸素の約1つの単層とシリコン骨格全体に及ぶ約4.5nm以下の総酸化物の厚さとの間に相当する酸化物含有量を有し得る。該多孔性シリコンは、酸素原子対シリコン原子比が約0.04から2.0の間、好ましくは0.60から1.5の間を有する。酸化は、孔の中および/またはシリコンの外表面で生じてもよい。
【0026】
誘導体化多孔性シリコンは、その表面の少なくとも一部に共有結合された単層を有する多孔性シリコンである。該単層は、典型的には、多孔性シリコンの表面の少なくとも一部にヒドロシリル化によって結合されている1個または複数の有機基を含む。誘導体化多孔性シリコンは、PCT/GB00/01450に記載され、この内容の全体が参照によって本明細書に組み込まれる。PCT/GB00/01450には、ルイス酸の存在下でのヒドロシリル化などの方法を使用するシリコンの表面の誘導体化について記載されている。この場合、誘導体化は、表面でシリコン原子の酸化を阻止し、該シリコンを安定化するためにもたらされる。誘導体化多孔性シリコンを調製する方法は、当業者に公知であり、例えば、「Chemical Modification of Crystalline Porous Silicon Surfaces」(J.H.SongおよびM.J.Sailor in Inorg.Chem.,vol.21,No.1〜3,pp69〜84,(1999))において記載されている。シリコンの誘導体化は、シリコンの疎水性を増加し、それによりその湿潤性を減少させることが必要な場合に、望ましいこともある。好ましい誘導体化表面は、1個または複数のアルキン基で修飾し得る。アルキン誘導体化シリコンは、例えば、「Studies of thermally carbonized porous silicon surfaces」(J.Salonenら,Phys Stat.Solidi(a),182,pp123〜126,(2000))および「Stabilization of porous silicon surface by low temperature photoassisted reaction with acetylene」(S.T.Lakshmikumarら,Curr.Appl.Phys.3,pp185〜189(2003))において記載されているように、アセチレンガスを用いた処理から誘導できる。
【0027】
多孔性シリコンは、この多孔度の性質により細分し得る。ミクロ多孔性シリコンは、2nm未満の直径を有する孔を含み;メソ多孔性シリコンは、2から50nmの範囲における直径を有する孔を含み;およびマクロ多孔性シリコンは、50nmを超える直径を有する孔を含む。本発明によるシリコン研磨剤は、ミクロ多孔性またはメソ多孔性である多孔性シリコンを含有し得る。
【0028】
シリコン研磨剤としての所望の硬度を得る1つの便利な方法は、シリコンの多孔度を調節することである。多孔性シリコンの多孔度を調節する方法は、知られている。ミクロ多孔性およびメソ多孔性シリコンの両方が、本発明の口腔衛生組成物において使用できる。どの多孔性シリコンを使用するかの選択は、活性剤または不活性剤の調節された放出のためのビヒクルとして多孔性シリコンを使用することが望まれているか、またはそうでないかにある程度依存し得る。典型的には、本発明による多孔性シリコン研磨剤は、100から700m/g、例えば200から500m/gの範囲におけるBET表面積を有し得る。BET表面積は、Brunauerら,J.Am.Chem.Soc.,60,309,1938において記載されるようなBET窒素吸着方法によって求められる。BET測定は、Micromeritics Instrument Corporation,Norcross,Georgia30093から市販されている「Accelerated Surface Area and Porosimetry Analyzer」(ASAP2400)を使用して行う。試料は、測定前に真空下、350℃で最低2時間ガス抜きする。一般に、気孔率は少なくとも約30vol%、例えば、少なくとも約40vol%、例えば、少なくとも約50vol%、例えば、少なくとも約70vol%、例えば、少なくとも約75vol%、例えば、約80vol%、および上限約85vol%もしくは90vol%である。主に研磨剤としての使用としては、気孔率は、典型的には約30から70vol%、好ましくは約50から70vol%である。気孔率の異なる範囲を有する多孔性シリコンの割合を混合することもまた可能である。例えば、許容される研摩特性を提供することに加えて、香料が放出される速度もまた調節する組成物を提供するために、多孔性シリコン粒子の割合は、著しく異なる気孔率を有し得る。例えば、初めに香料が大量に出ることが必要である場合、シリコン粒子の非常に多くの割合は、少なくとも約75vol%、例えば少なくとも約80vol%、および上限約85vol%もしくは90vol%の気孔率を有利に有し得る。典型的には、高い気孔率シリコンの割合は、約5から60vol%の範囲にある。
【0029】
本発明における使用のためのシリコンのモース硬度は、典型的には、約2以上であり、および約5以下であり得る。好ましくは、モース硬度は3から4である。モース硬度スケールに対応する試験は、知られているものであり、硬度は、他の物質にひっかき傷を与える物質の能力として定義される。該スケールは1から10であり、数が大きいほど増大する硬度を示す。
【0030】
硬度を測定するための別の知られている方法は、ビッカース硬度試験である。この試験は、ピラミッド形のダイヤモンド圧子による荷重下で生じる圧痕の寸法から計算される物質の硬度の測定である。ビッカース試験において使用される圧子は、対向する面が136°の角度で頂点で交わる、正方形を底面とするピラミッドである。ダイヤモンドは、上限約120kg重の範囲の荷重で物質の表面に押し込まれ、圧痕の寸法(通常0.5mm以下)を横線付き顕微ミラーなどの目盛り付き顕微ミラーの補助を用いて測定する。ビッカース数(HV)は、以下の式:
HV=1.854(F/D2)
(式中、Fは、印加荷重(kg重)であり、D2は、へこみの面積(mm)である。)を使用して計算される。本発明における使用のためのシリコンのビッカース硬度は、例えば、典型的には1GPa超、例えば1から4GPaである。好ましくは、ビッカース硬度は、4GPa未満または3GPa未満、例えば1から2GPaである。
【0031】
シリコン、特にメソ多孔性シリコンの一部の形態は、再吸収性である。再吸収性シリコンは、腸液などの擬似体液溶液に浸された場合、一定期間をかけて溶解するシリコンである。体における再吸収性シリコンの副生物は、ケイ酸である。本発明による口腔衛生製剤における使用のためのシリコン研磨剤は、再吸収性であり得、歯および他の口腔表面に送達するための、活性剤および/または不活性剤の1種もしくは複数種を添加できる。例えば、抗歯石剤、香料、防腐剤またはフッ化物のいずれか1つまたは複数を、本方法を使用する調節される仕方において放出し得る。クロルヘキシジンなどの防腐剤の送達は、特に好ましい。多孔性シリコンは、活性剤および/または不活性剤の放出の動力学を調節するために巧みに操作し得る。この調節された放出は、孔寸法、気孔率のレベルおよびシリコン粒子の寸法の1つまたは複数を調節することによって達成できる。
【0032】
送達される該剤は、さまざまな方法でシリコン上に添加できる。例えば、1つまたは複数の該剤をシリコン粒子の表面上に沈着させ、多孔性シリコンの孔の中に取り込み、または結合し、あるいは別にシリコンの表面と結び付けることができる。
【0033】
送達される該剤は、好適な溶媒に溶解または懸濁することができ、シリコン粒子は、好適な期間得られた溶液においてインキュベートすることができる。溶媒を除去すると、シリコン粒子の表面上に沈着されている該剤が生じる。しかし、粒子が多孔性シリコンを含む場合、活性剤または不活性剤の溶液は、毛細管作用によって多孔性シリコンの孔の中に浸透し、溶媒の除去に続いて、該剤は、該孔に存在する。
【0034】
送達される該剤は、粉砕(例えば、グライディング)処理の前および/または後のいずれかでシリコン上に添加できる。
【0035】
本発明による口腔衛生組成物、さらに特には、歯磨き剤組成物において存在する研磨剤の総量は、約5から50重量%、好ましくは約20から40重量%である。歯磨き剤組成物が歯磨き粉である場合には、研磨剤の量は、より多くてもよく、95重量%まで多くてよい。研磨剤は、本発明による研磨シリコン剤以外の研摩剤を含み得るか、または研摩シリコン剤は、歯磨き剤組成物の研磨剤の全てもしくは実質的に全てを構成し得る。
【0036】
本発明による口腔衛生組成物におけるシリコンの使用はまた、該口腔衛生組成物にキラキラ輝く、またはきらめく外観を含む、視覚的に魅力的な外観を与えることができる。例えば、PCT/GB01/03633は、皮膚用組成物において同様に結晶シリコン、多孔性シリコン、アモルファスシリコンおよび多結晶シリコンの1つまたは複数を含む層を含むミラーの使用を記載しており、この内容全体が参照によって本明細書に組み込まれる。光の異なる波長を反射するミラーを使用することによって、組成物の特有の着色がもたらし得る。これは、低気孔率層および高気孔率層間に多孔性シリコンを含む隣接する層の気孔率を変えることによって達成し得る。典型的には、低気孔率層は、上限約65vol%、例えば約25vol%から65vol%の気孔率を有し得、高気孔率層は、少なくとも約60vol%、例えば約60vol%から95vol%の気孔率を有し得る。各層は、10を超える、または100を超える、または200を超える、または400以上の層を含み得る。ミラーが形成される各層は、この隣接した層に対して異なる屈折率を有するか、または組み合わされた層がブラッグスタックミラー(Bragg stack mirror)を形成するような層を有し得る。特に、輝くまたはきらめく外観は、典型的には事実上半透明であるゲルに適用されてもよい。
【0037】
生物活性
生物活性物質は、生物組織と高度に相容し、特有の生物学的応答を導き出すことによって組織との結合を形成することができる。生物活性物質はまた、表面反応性バイオ物質と呼ぶこともある。生物活性シリコンは、ナノ構造を含み、このようなナノ構造としては、(i)いずれかが、単結晶シリコン、多結晶シリコンまたはアモルファスシリコンであってよいミクロ多孔性シリコン、メソ多孔性シリコン;(ii)ナノメートルの大きさの粒子を有する多結晶シリコン;(iii)アモルファスまたは結晶性であってよいシリコンのナノ粒子などがある。好ましくは、生物活性物質としての使用のために、シリコン研磨剤はミクロ多孔性である。
【0038】
特定の理論によって縛られることを望まないが、本発明による生物活性シリコンの使用は、歯の再ミネラル強化を促進するケイ酸をin−situで生成することが考えられる。生物活性シリコンは、例えば、無機成分補給プロセスにおいて補助となるためのカルシウムおよび/またはリン酸塩および/またはフッ化物の源などの追加的成分を含むことができる。これは、表面下のエナメル質の無機成分補給、および/または象牙質中の細管に無機成分を補給し、これによって虫歯および/または過敏症を打ち消すことを含む。好適なカルシウム、リン酸塩およびフッ化物化合物は、当該技術分野において周知である。カルシウムイオンの少なくとも約10ppmが存在し得、上限は約35,000ppmである。リン酸塩イオンの濃度は、典型的には約250から40,000ppmの範囲にあり得る。
【0039】
歯磨き剤組成物
本明細書において使用される「歯磨き剤組成物」としては、練り歯磨き、歯磨き粉、予防薬ペースト、トローチ、糖衣錠、キャンディー、ガムまたは口腔ゲルなどがある。口腔ゲルは、多段美白システムにおける使用に好適な種類であってよい。微粒子シリコン研磨剤を本発明により使用する歯磨き剤組成物は、当業者に知られている成分を含み、これらは広くは、活性剤および不活性剤として特徴付けることができる。活性剤としては、フッ化物などの虫歯予防剤、抗菌剤、減感剤、抗歯石剤[または抗結石剤(anticulcus agents)]および美白剤などがある。不活性成分としては、一般に、水(水相の形成を可能とするための)、洗浄剤、界面活性剤もしくは泡立ち剤、増粘剤もしくはゲル化剤、結合剤、効果向上剤、水分を保持する保湿剤、香料、甘味剤および着色剤、保存剤および、場合によって、本発明のシリコン研磨剤に加えて、清浄およびつや出し用のさらなる研磨剤を含むように選ばれる。
【0040】
水相
歯磨き剤組成物は、典型的には、保湿剤を含有する水相を含む。水は、約1から約90重量%、好ましくは約10から約60重量%の量において存在し得る。好ましくは、水は脱イオン化され、および有機不純物を含まない。
【0041】
歯磨き剤組成物における使用のための知られている保湿剤のいずれも使用し得る。好適な例としては、ソルビトール、グリセリン、キシリトール、プロピレングリコールなどがある。保湿剤は、典型的に、歯磨き剤組成物の約5から85重量%の量において存在する。
【0042】
虫歯予防剤
本発明による歯磨き剤組成物は、フッ化物イオン源などの虫歯予防剤を含有し得る。フッ化物イオン源は、フッ化物イオン約25ppmから5000ppm、例えば約625から1450ppmを供給するのに十分であるべきである。虫歯予防剤の好適な例としては、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、ケイフッ化アンモニウム、ケイフッ化ナトリウム、リン酸モノフルオロナトリウムおよびフッ化第1スズなどのフッ化スズを含む溶解性アルカリ金属塩などの1種類または複数種類の無機塩などがある。
【0043】
抗歯石剤
公知の抗歯石剤のいずれも、本発明による歯磨き剤組成物において使用し得る。抗歯石剤の好適な例としては、ピロリン酸二アルカリ金属塩もしくはピロリン酸四アルカリ金属塩などのピロリン酸塩、ヘキサメタリン酸ナトリウムなどの長鎖ポリリン酸塩、およびトリメタリン酸ナトリウムなどの環状リン酸塩などがある。これらの抗歯石剤は、歯磨き剤組成物中に約1から約5重量%の濃度で含まれる。
【0044】
抗菌剤
公知の抗菌剤のいずれも、本発明の組成物において使用し得る。例えば、これらとしては、ハロゲン化ジフェニルエーテルなどの非カチオン抗菌剤などがあり、好ましい例は、トリクロサン(2,4,4’−トリクロロ−2’−ヒドロキシジフェニルエーテル)である。抗菌剤は、歯磨き剤組成物の約0.1から1.0重量%、例えば約0.3重量%の量において存在し得る。
【0045】
他の研磨剤
微粒子シリコンは、本発明による歯磨き剤組成物を調製することにおいて唯一の研磨剤として使用できるか、または他の公知の歯磨き剤研磨剤もしくはつや出し剤と組み合わせて使用できる。市販の研磨剤は、該シリコンと組み合わせて使用され得、シリカ、ケイ酸アルミニウム、焼成アルミニウム、メタリン酸ナトリウム、メタリン酸カリウム、炭酸カルシウム、リン酸三カルシウムおよびリン酸無水二カルシウムなどのリン酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ベントナイトもしくは他のケイ質物質、またはこれらの組み合わせを含む。
【0046】
香料
本発明の歯磨き剤組成物はまた、香料を含み得る。好適な例としては、スペアミント、ペパーミント、ウインターグリーン、ササフラス、クローブ、セージ、ユーカリ、マジョラム、シナモン、レモン、ライム、グレープフルーツ、およびオレンジなどのエッセンシャルオイルがある。他の例としては、香料アルデヒド類、エステル類およびアルコール類などがある。さらなる例としては、メントール、カルボンおよびアネトールなどがある。
【0047】
増粘剤
増粘剤は、約0.1から約10重量%、好ましくは約0.5から約4重量%の量において歯磨き剤組成物中に存在し得る。
【0048】
本発明の組成物において使用される増粘剤としては、天然および合成ガムおよびコロイドなどがあり、この例としては、キサンタンガム、カラギーナン、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、デンプン、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシエチルプロピルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、およびヒドロキシエチルセルロースなどがある。好適な増粘剤としてはまた、コロイダルシリカ化合物を含むアモルファスシリカ化合物などの無機増粘剤などがある。
【0049】
界面活性剤
界面活性剤は、本発明の組成物において、増加した予防作用を達成し、歯磨き剤組成物を美容上より許容できるようにさせるために使用し得る。界面活性剤は、典型的には、本発明による歯磨き剤組成物において約0.1から約5重量%、好ましくは約0.5から約2重量%の量で存在する。本発明による歯磨き剤組成物は、アニオン、非イオン、両性イオンおよび双性イオンの界面活性剤から選択できる1種または複数の界面活性剤を含有し得る。該界面活性剤は、好ましくは、該組成物に洗浄性および泡立ち特性を与える洗浄性物質である。界面活性剤の好適な例は、当業者に知られており、水素化ココナッツ油脂肪酸のモノ硫酸化モノグリセリドのナトリウム塩などの高級脂肪酸モノグリセリドモノ硫酸の水溶性塩類、ラウリル硫酸ナトリウムなどの高級アルキル硫酸塩類、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのアルキルアリールスルホン酸塩類、高級アルキルスルホ酢酸塩、ラウリルスルホ酢酸ナトリウム、1,2−ジヒドロキシプロパンスルホン酸の高級脂肪酸エステル類、および、脂肪酸中に12から16個の炭素、アルキルもしくはアシルラジカルを有するものなどの低級脂肪族アミノカルボン酸化合物の実質的に飽和した高級脂肪族アシルアミド類などがある。さらなる例としては、N−ラウロイルサルコシン、およびN−ラウロイル、N−ミリストイル、もしくはN−パルミトイルサルコシンのナトリウム、カリウム、およびエタノールアミン塩などがある。
【0050】
効果向上剤
歯磨き剤組成物中の任意の抗菌剤、抗歯石剤もしくは他の活性剤のための1種もしくは複数種の効果向上剤もまた、歯磨き剤組成物中に含まれ得る。効果向上剤の好適な例としては、合成アニオン性ポリカルボン酸類などがある。このようなアニオン性ポリカルボン酸塩は、遊離の酸または部分的に、もしくはより好ましくは、完全に中和された水溶性アルカリ金属(例えば、カリウムおよび好ましくはナトリウム)塩もしくはアンモニウム塩の形態において使用し得る。マレイン酸無水物もしくは酸と他の重合可能なエチレン性不飽和モノマーとの1:4から4:1のコポリマーが好ましく、約30,000から約1,800,000の分子量(M.W.)を有するメチルビニルエーテル/マレイン酸無水物が好ましい。
【0051】
存在する場合、効果向上剤、例えば、アニオン性ポリカルボン酸塩は、歯磨き剤組成物内の任意の抗菌剤、抗歯石剤または他の活性剤の効能の所望の向上を達成するために有効な量において使用される。一般に、アニオン性ポリカルボン酸塩は、歯磨き剤組成物内に約0.05重量%から約4重量%、好ましくは約0.5重量%から約2.5重量%で存在する。
【0052】
他の成分
さまざまな他の物質を、本発明の歯磨き剤組成物中に含むことができ、保存剤;シリコーン類;硝酸カリウムなどの減感剤;過酸化水素、過酸化カルシウムおよび過酸化尿素などの美白剤;およびクロロフィル化合物が挙げられる。一部の練り歯磨きには、歯垢の酸性度を減少させるために重炭酸塩が含まれる。存在する場合、これらの添加剤は、所望の特性および特徴に実質的に悪影響を及ぼさない量において歯磨き剤組成物中に含まれる。
【0053】
歯磨き剤組成物の調製
本発明による歯磨き剤組成物を製造する好適な方法には、真空下での高せん断混合系の使用が含まれる。一般に、歯磨き剤の調製は当該技術分野において周知である。US3980767、US3996863、US4358437、およびUS4328205には、歯磨き剤組成物を製造するための好適な方法について記載され、これらの内容全体が参照によって本明細書中に取り込まれる。
【0054】
例えば、本発明による典型的な歯磨き剤組成物を調製するために、保湿剤が従来の混合器において、攪拌下で水中で分散し得る。有機増粘剤が、任意の効果向上剤;フッ化ナトリウムなどの虫歯予防剤を含む任意の塩類;および任意の甘味剤と一緒に、保湿剤の分散液と混合される。得られた混合物は均一ゲル相が形成されるまで攪拌される。二酸化チタンなどの1種または複数種の顔料は、pHを調整するのに必要な任意の酸または塩基と一緒に、該ゲル相と混合し得る。これらの成分は均一相が得られるまで混合される。次いで、該混合物は高速度/真空ミキサーに移し、ここでさらなる増粘剤および界面活性剤成分を、該混合物と混合し得る。シリコン研磨剤を含む任意の研磨剤は、該組成物中で使用される他の研磨剤と一緒に、該混合物と混合し得る。トリクロサンなどの任意の水溶性抗菌剤は該歯磨き組成物中に含まれる香味油中に溶解し得、得られた溶液は界面活性剤と一緒に、該混合物と混合し、次いで、約20から50mmHgの真空下、高速度で約5から30分間混合する。得られた生成物は、典型的に均一な、半固体の押出可能なペースト生成物またはゲル生成物である。
【0055】
歯磨き剤組成物のpHは、典型的に、シリコンが大幅な期間にわたって該組成物中に溶解せず、その結果許容される保管寿命を与えるようにするものである。歯磨き剤組成物のpHは、典型的には、約9以下であり、好ましくは、特に練り歯磨きなどの粉以外の組成物は約7以下である。pHの下限は、典型的には約3.5から約4であり得る。特に、pHは、歯磨き剤組成物が、多段階美白システムにおいて使用されるものなどゲルである場合、約3.5または約4であり得る。
【0056】
シリコン研磨剤を含む、本発明の歯磨き剤組成物の研摩性は、Hefferren,J.Dental Research,vol.55(4),pp563〜573(1976)、ならびにUS4340583、US4420312およびUS4421527に記載されるように、アメリカ歯科協会によって推奨される方法によって測定されるような放射性エナメル質研摩(RDA)値によって測定することができ、これらの内容全体が参照によって本明細書に組み込まれる。この手順において、抜歯したヒトの歯を中性子束で照射し、標準ブラッシング養生を施す。歯根中のエナメル質から取り除いた放射性リン32を、試験する歯磨き剤の研摩指数として使用する。ナトリウムカルボキシメチルセルロースの0.5%水溶液15ml中のピロリン酸カルシウム10gを含有する対照スラリーも測定し、この混合物のRDAを任意に100とする。試験する歯磨き剤組成物は、ピロリン酸塩と同じ濃度の懸濁液として調製し、同じブラッシング養生に供する。本発明による該歯磨き剤組成物のRDAは、約10から150、好ましくは約100未満、最も好ましくは約70未満の範囲にあってよい。
【0057】
本発明の歯磨き剤組成物の歯垢清浄比(PCR)は、歯磨き剤の清浄特性の測定値であり、一般に約20から150および好ましくは約50超の範囲であってよい。
【0058】
該PCR清浄価は、Stookeyら,J.Dental Research,vol.61(11),pp1236〜9,(1982)によって記載される試験によって求めることができる。清浄は、着色性付着物の蓄積および付着を促進するために酸エッチングされた、樹脂中に埋め込んだ10mmのウシのエナメル質試料を着色することによってin vitroで評価する。この着色は、茶、コーヒー、および、24時間Sarcina lutea turtox培養液を含む無菌トリプチケースソイブロス中に溶解された細粉化された胃ムチンから調製したブロスを用いて達成する。着色後、試料はエナメル表面に150g張力に調整した軟らかいナイロン歯ブラシを備えたV−8クロス−ブラッシング機に載せる。次いで、試料は試験する歯磨き剤組成物、およびナトリウムカルボキシメチルセルロースの0.5%水溶液50ml中のピロリン酸カルシウム10gを含有するピロリン酸カルシウム標準を用いてブラッシングする。試料を脱イオン水40g中練り歯磨き25gからなる歯磨き剤スラリーを用いて、400ストロークに対してブラッシングする。試料は着色が除去されるまでPennwalt軽石粉で清浄する。ブラッシングの前後の試料の色を測定するために、標準明るさ国際委員会(CIE)Lスケールを使用するミノルタ比色計を使用して反射率測定を行う。
【0059】
PCR/RDA比の測定値である、本発明による歯磨き剤組成物の清浄効率は、約0.5から約2.0にあり得、好ましくは約1.0を超える、およびより好ましくは約1.5を超える範囲にある。
【実施例】
【0060】
本発明の実施形態を、以下の実施例を参照して、例示のためのみに説明する。
【0061】
(実施例1)
歯磨き剤組成物における化学安定性
メソ多孔性シリコン(650nm厚さ、70vol%気孔率)の層でコーティングした原シリコンウエハを断片に四角く切り、pH6.1、6.7および9.1を有する練り歯磨き中に18℃で2日間半分浸した。結果は、メソ多孔性シリコンは、6.1のpHを有する練り歯磨きにおいて最も安定であり、pH9.1を有する練り歯磨きにおいて最も不安定であるということを示した。pH6.1では、メソ多孔性シリコンの酸化および/または腐食はほとんど起こっていないか、または全く起こっていなかった。
【0062】
(実施例2)
ヒト唾液における化学安定性
ヒト唾液を20から50才の年齢の健常な成人志願者10人から午前中に採取した。各ボランティアは、水道水で口をすすぎ洗いし、飲み込み、約30秒間待って、その後採取容器中へ唾を吐き出した。集めた液体は、26℃で7.5+/−0.1のpHであった。次いで、0.63μm+/−0.02μm厚さのメソ多孔性(約69vol%)シリコン層を含むウエハ断片を唾液の2mlアリコートにおいて37℃で20分から5時間の範囲の時間インキュベートした。断片の厚さの変化を測定するために、唾液に曝した後メソ多孔性層の断面SEM画像を撮影した。20分後、厚さは0.61μmに減少し;2時間後厚さは、0.59μmに減少し;および5時間後、厚さは、0.58μmに減少していた。
【0063】
(実施例3)
口腔表面への付着
20から24mm長の抜歯したヒト小臼歯に、10重量%メソ多孔性シリコン輝き粒子を含む、および含まない、Colgate(登録商標)Total練り歯磨き(使用前pH6.7)を用いて1分間のブラッシングを施した。これらは完全に多孔性であるシリコン膜から調製した。この膜は、メタノール/40重量%HF(容積で1:1)電解液中でシリコンウエハを5から15ミリオームで陽極酸化することによって作製した。電流密度は、コンピュータ制御下で、20mA/cm−2(9秒周期)および125mA/cm−2(4.5秒周期)の間で、その間電流が印加されない1秒周期を有して、調節された。100回の繰り返しにより、調節された気孔率を有する鮮明に着色された層構造を生成した。165mA/cm−2の最終電流パルスを30秒間印加することによって下にある非多孔性ウエハから膜を剥離した。次いで、空気乾燥された膜を乳棒および乳鉢を使用して輝く粉に機械的に粉砕し、その後に分級またはふるいかけすることなく使用した。手でブラッシングし、引き続いて歯の表面を5分水ですすぎ洗いした。図1aは、未変更の練り歯磨きを用いたブラッシング後の歯冠表面の粗い領域の300倍画像を示す。エナメル質表面に丸いケイ酸粒子が低密度で存在する。図1bにおける関連EDXスペクトル(15keVビーム、倍率300)は、ヒドロキシアパタイトの特徴である弱いSiピークおよび優勢なリン酸カルシウムのピークを示す。図1cは、図1aにおける丸い粒子の1つに焦点を合わせたEDXスペクトル(15keVビーム、倍率37000)を示す。同じ歯冠の高度に多孔性の領域は、ブラッシングに続いてエナメル質孔に部分的に埋め込まれたシリカ粒子の高い密度が示されている図2に示される。図3aは、同様の、しかし今度は変更した練り歯磨きを用いたブラッシングを施された異なる歯の粗くされた領域の300倍画像を示す。すすぎ洗いに続けて、丸い粒子および角張った粒子の両方は、水すすぎ洗いの後のエナメル質表面に依然としてはっきり認められた。図3bに示される関連EDXスペクトル(15keVビーム、倍率300)は、図1aに比較した場合、シリコンの顕著に高いレベルが存在することを示す。図3cは、図3aからの角張った粒子の4500倍画像を示す。この角張った形状は、粉砕された多孔性シリコンである形状と一致している。図3dにおける関連EDXスペクトル(5keVビーム、倍率23000)は、多孔性シリコン粒子が、重度に酸化されている、および/または水和されていることを示す。図3dにおける「角張った粒子」スペクトルは、SiおよびOの存在による優勢なピークおよびC、NaおよびClの存在による小さいピーク(「SiO標準」スペクトルにおいて明らかでない)を示す。
【0064】
(実施例4)
口腔表面への付着(表面化学)
自然の酸化物表面を有する、および有さない非多孔性原金属グレードシリコン粒子を、口腔表面への付着能について試験した。粒度分布は、Hydro G分散液装置(Hydro G dispersion unit)およびバージョン5.22ソフトウェアを有するMle分散理論の適用とともに、Malvern Instruments Masterslzer2000を使用して測定した。容積重み付け平均粒子直径は、2.6μmのd10(すなわち、2.6μm未満の直径を有する粒子の10容積%)および56μmのd90を有する24μmであった。0.2μm程度に小さい粒子および150μm程度に大きい粒子を検出した。微粉化された金属グレードシリコンの試料をHFおよびエタノールの容積で1:1混合物中で15分間エッチングした。ろ過に続いて、該粉をShel Lab排出可能なオーブン(Shel Lab evacuable oven)中、32℃で一夜乾燥した。受け入れられたままの(すなわち、未処理の)、およびHF処理された原シリコン粉の、2つの100mgバッチを、新鮮なヒト唾液の2mlアリコートに別々に添加した。次いで、ヒト小臼歯を2つの攪拌溶液中で10分間浸した。除去に続いて、該歯を5秒間すすぎ洗いした。図4aは、受け入れられたままの、未処理の粉溶液に曝されたエナメル質の孔化された部分の1000倍画像を示す。図4bにおける関連EDXスペクトル(5keVビーム、倍率17000)は、弱い酸素のシグナルから、該粒子が本来非多孔性であることを示す。図4cは、HF処理された粉に曝された歯の比較的滑らかな領域の330倍画像を示す。付着された微粒子は比較的少ないが、図4dにおけるより高い倍率画像は、サブミクロンの粒子の実質的に均一な被覆を明らかにする。関連EDXスペクトルは、弱いシリコンおよび酸素シグナルを示した。
【0065】
(実施例5)
香料の調節された放出
メソ多孔性層(10.9μm厚さ)でコーティングした原シリコンのウエハ断片にペパーミント油を添加し、揮発性油が該孔からゆっくり蒸発する際、重量法を使用して、この重量を、16℃および24℃で観察した。好適な重量法は、「陽極酸化シリコンにおける孔核生成および伝播の重量測定分析(Gravimetric analysis of pore nucleation and propagation in anodised silicon)」(Brumheadら,Electrochimica Acta,vol.38,pp191〜197,(1993))に記載されている。140厚さおよび74%気孔率のシリコン膜由来のメソ多孔性粒子と比較した。結果を図5に示す。さらなる実験において、メソ多孔性シリコン粒子の高気孔率(82vol%)を機械的にふるいにかけ、粒子の直径を75から100μmとした。これらの粒子に硬グレードナイロンブラシを有する市販の歯ブラシを使用して磨かれたシリコンウエハに対する激しいブラッシングを施した。ブラッシングの後に、粒子の大部分が、直径において15μm未満の実質的な画分を有する50μm未満の直径を有していた。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1a】未変更の市販の練り歯磨きを用いたブラッシング後のヒト小臼歯の粗い歯冠領域のSEM画像(300倍)の図である。
【図1b】図1aに示される範囲のEDXスペクトル(15keVビーム、倍率300)の図である。
【図1c】図1aにおける丸い粒子の1つに焦点を合わせたEDXスペクトル(15keVビーム、倍率37000)の図である。
【図2】図1aに示される同じ歯冠の高度に多孔性の領域のSEM画像(500倍)の図である。
【図3a】本発明による練り歯磨きを用いてブラッシング後、ヒト歯の粗い領域のSEM画像(300倍)の図である。
【図3b】図3aに示される領域のEDXスペクトル(15keVビーム、倍率300)の図である。
【図3c】図3aに示される角張った粒子のSEM画像(4500倍)の図である。
【図3d】非多孔性シリカ標準に比較された図3cに示される粒子のEDXスペクトル(5keVビーム、倍率23000)の図である。
【図4a】未処理原シリコン粉溶液に曝されたヒト歯のエナメル質の孔化部分のSEM画像(1000倍)の図である。
【図4b】図4aに示される領域のEDXスペクトル(5keVビーム、倍率17000)の図である。
【図4c】溶液において、HF処理された原シリコン粉に曝されたヒト歯の比較的滑らかな領域のSEM画像(330倍)の図である。
【図4d】図4cにおけるSEM画像であるが、倍率2000の図である。
【図5】16℃および24℃での時間(分)に対するメソ多孔性シリコン試料中において保持される油(%)のプロットの図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微粒子シリコン研磨剤を含有する口腔衛生組成物。
【請求項2】
シリコンが、アモルファスシリコン、単結晶シリコンおよび多結晶シリコンの1つ以上から選択される、請求項1に記載の口腔衛生組成物。
【請求項3】
シリコンが、多孔性シリコンである、請求項1または2に記載の口腔衛生組成物。
【請求項4】
多孔性シリコンが、100から700m/gのBET表面積を有する、請求項3に記載の口腔衛生組成物。
【請求項5】
多孔性シリコンが、200から500m/gのBET表面積を有する、請求項4に記載の口腔衛生組成物。
【請求項6】
シリコンが、ミクロ多孔性またはメソ多孔性である、請求項3から5のいずれか一項に記載の口腔衛生組成物。
【請求項7】
シリコンが、再吸収性である、請求項1から6のいずれか一項に記載の口腔衛生組成物。
【請求項8】
シリコンが、約96から99.9%の純度である、請求項1から7のいずれか一項に記載の口腔衛生組成物。
【請求項9】
多孔性シリコンが、表面修飾多孔性シリコンを含む、または実質的に表面修飾多孔性シリコンからなる、請求項3から8のいずれか一項に記載の口腔衛生組成物。
【請求項10】
表面修飾多孔性シリコンが、誘導体化多孔性シリコン、部分的に酸化された多孔性シリコン、水素化ケイ素表面で修飾された多孔性シリコンの1つ以上を含む、または実質的に誘導体化多孔性シリコン、部分的に酸化された多孔性シリコン、水素化ケイ素表面で修飾された多孔性シリコンの1つ以上からなる、請求項9に記載の口腔衛生組成物。
【請求項11】
シリコン研磨剤の平均粒度(d50)が、約1から100μmである、請求項1から10のいずれか一項に記載の口腔衛生組成物。
【請求項12】
50が、約10から50μmである、請求項11に記載の口腔衛生組成物。
【請求項13】
50が、約30μmである、請求項12に記載の口腔衛生組成物。
【請求項14】
微粒子シリコン研磨剤のビッカース硬度が、約1から4GPaである、請求項1から13のいずれか一項に記載の口腔衛生組成物。
【請求項15】
ビッカース硬度が、約1から2GPaである、請求項14に記載の口腔衛生組成物。
【請求項16】
シリコン研磨剤が、歯および/または他の口腔表面に送達するための少なくとも1種の活性および/または不活性成分と共に装填されている、請求項1から15のいずれか一項に記載の口腔衛生組成物。
【請求項17】
活性および/または不活性成分が、抗歯石剤、香料、防腐剤、虫歯予防薬のいずれか1つまたは1つ以上から選択される、請求項16に記載の口腔衛生組成物。
【請求項18】
微粒子シリコン研磨剤が、口腔衛生組成物の約5から50重量%の量で存在する、請求項1から17のいずれか一項に記載の口腔衛生組成物。
【請求項19】
シリコン研磨剤が、生物活性シリコンを含有する、請求項1から18のいずれか一項に記載の口腔衛生組成物。
【請求項20】
生物活性シリコンが、カルシウム塩および/またはリン酸塩と共に装填される、請求項19に記載の口腔衛生組成物。
【請求項21】
口腔衛生組成物が、歯磨き剤組成物である、請求項1から20のいずれか一項に記載の口腔衛生組成物。
【請求項22】
歯磨き剤組成物が、練り歯磨き、歯磨き粉、予防用ペースト、トローチ、糖衣錠、キャンディー、ガムまたは口腔ゲルから選択される、請求項21に記載の口腔衛生組成物。
【請求項23】
口腔衛生組成物が、練り歯磨きである、請求項22に記載の口腔衛生組成物。
【請求項24】
シリコン研磨剤が、ミラーの形態で少なくとも部分的に存在し、各ミラーが複数の層を含み、ならびに各層が多孔性シリコンを含む、請求項1から23のいずれか一項に記載の口腔衛生組成物。
【請求項25】
口腔衛生組成物のpHが、約7以下である、請求項1から24のいずれか一項に記載の口腔衛生組成物。
【請求項26】
口腔衛生組成物のRDAが約10から150である、請求項1から25のいずれか一項に記載の口腔衛生組成物。
【請求項27】
RDAが、約100未満である、請求項26に記載の口腔衛生組成物。
【請求項28】
PCRが、約20から150である、請求項1から27のいずれか一項に記載の口腔衛生組成物。
【請求項29】
PCRが、約50を超える、請求項28に記載の口腔衛生組成物。
【請求項30】
微粒子シリコン研磨剤および口腔衛生組成物の他の成分を混合するステップを含む、請求項1から29のいずれか一項に記載の口腔衛生組成物を製造するための製造方法。
【請求項31】
他の成分が、以下の、水、保湿剤、虫歯予防薬、抗歯石剤、抗菌剤、他の研磨剤、香料、増粘剤、界面活性剤、効果向上剤、保存剤、シリコーン、減感剤、美白剤、酸度抑制剤、顔料の1つ以上から選択される、請求項30に記載の製造方法。
【請求項32】
歯および他の口腔表面に、請求項1から29のいずれか一項に記載の口腔衛生組成物の安全で有効な量を適用することを含む、汚れおよび/または歯垢、および/または歯肉炎を減少させる方法。
【請求項33】
歯垢を減少させる、および/または歯肉炎を減少させるもしくは抑制するための、薬用口腔衛生組成物の製造における請求項1から29のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項34】
歯および他の口腔表面に、請求項1から29のいずれか一項に記載の組成物の安全で有効量を適用することを含む、汚れを減少させる美容方法。
【請求項35】
歯垢および/または歯肉炎の治療および/または予防における使用のための請求項1から29のいずれか一項に記載の口腔衛生組成物。

【図1a】
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【図1b】
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【図1c】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図3c】
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【図3d】
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【図4a】
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【図4b】
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【図4c】
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【図4d】
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【図5】
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【公表番号】特表2008−536906(P2008−536906A)
【公表日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−507166(P2008−507166)
【出願日】平成18年4月21日(2006.4.21)
【国際出願番号】PCT/GB2006/001459
【国際公開番号】WO2006/111761
【国際公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【出願人】(504235883)サイメデイカ リミテツド (16)
【Fターム(参考)】