説明

古紙再生処理装置

【課題】古紙原料から調製された再生パルプが、移送経路で残存することを抑制した古紙再生処理装置の提供。
【解決手段】古紙再生処理装置は、再生パルプをパルパーから抄紙部へ移送する移送経路の途中に、前記移送経路の上流側から流入する再生パルプを貯留するとともに、前記移送経の下流側へ供給する貯留タンク85が設けられ、前記貯留タンク85には、内部に貯留する再生パルプを攪拌する攪拌羽根81と、前記攪拌羽根81の駆動手段82と、前記貯留タンク85の底面に形成された前記再生パルプを下流側へ流出させる流出口87とを備え、前記攪拌羽根81の下部に、貯留タンク85の下部に滞留する再生パルプを、前記流出口87へ掻き寄せる掻き寄せ部90を設けてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は古紙再生処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、わが国においては、一度使用した古紙、例えば古新聞紙やオフィス等で生じる古紙を回収して紙を再生する技術ならびに社会システムが確立している。
しかし、古紙から再生紙を製紙する場合には、古新聞紙がリサイクル品として回収される住宅街等やオフィス等の紙の消費場所と、古紙から紙を再生する再製紙工場とは離れており、古紙の回収、運搬にコストとエネルギーを要する。また、オフィスでは古紙の持ち出しにより紙に記載された機密情報等が外部へ漏洩するおそれがある。
【0003】
そこで、下記特許文献1には、古紙の裁断紙片を離解して再生パルプを調製する再生パルプ部と、再生パルプを漂白して脱墨パルプを調製する脱墨パルプ部と、脱墨パルプを抄紙して再生紙を調製する抄紙部を一体的に備える古紙再生処理装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−299228号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1では、再生パルプ部で、古紙原料から調製された再生パルプが、後段の各部へ移送される際、移送経路の途中で再生パルプが残存することがあり、利用可能な古紙原料の全てを再生紙の製造に有効に活用することができなかった。
【0006】
本発明は上記した課題を解決するものであり、古紙原料から調製された再生パルプが、移送経路で残存することを抑制した古紙再生処理装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明にかかる古紙再生処理装置は、古紙原料を離解して再生パルプを製造するパルパーを有し、後段の抄紙部へ再生パルプを供給する再生パルプ部と、前記再生パルプ部から供給された再生パルプを抄紙して再生紙を調製する抄紙部とを備える古紙再生処理装置において、再生パルプをパルパーから抄紙部へ移送する移送経路の途中に、前記移送経路の上流側から流入する再生パルプを貯留するとともに、前記移送経の下流側へ供給する貯留タンクが設けられ、前記貯留タンクには、内部に貯留する再生パルプを攪拌する攪拌羽根と、前記攪拌羽根の駆動手段と、前記貯留タンクの底面に形成された前記再生パルプを下流側へ流出させる流出口とを備え、前記攪拌羽根の下部に、貯留タンクの下部に滞留する再生パルプを、前記流出口へ掻き寄せる掻き寄せ部を設けてなるものである。
【0008】
また、掻き寄せ部は、攪拌羽根の回転方向に対して後方へ窪んだ窪み部を有し、前記攪拌羽根の回転時において、前記窪み部が前記流出口の上方を通過することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の古紙再生処理装置によれば、再生パルプをパルパーから抄紙部へ移送する移送経路の途中に設けられた貯留タンクの下部に再生パルプが滞留した際、掻き寄せ部によってこの滞留する再生パルプを貯留タンクの底面に形成された流出口へ掻き寄せることがで、古紙原料から調製された再生パルプが、移送経路で残存することを抑制することが可能である。
【0010】
また、掻き寄せ部が、攪拌羽根の回転方向に対して後方へ窪んだ窪み部を有し、前記攪拌羽根の回転時において、前記窪み部が前記流出口の上方を通過する場合は、貯留タンクの底面に滞留する再生パルプを、掻き寄せ部により掻き寄せ、窪み部に集めることができ、流出口から後段の各部へ送ることができ、効率よく再生パルプを掻き寄せることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態に係る古紙再生処理装置の構成概略図である。
【図2】前記古紙再生処理装置の再生パルプ製造部の構成概略図である。
【図3】前記古紙再生処理装置の貯留部の構成概略図である。
【図4】前記貯留部の貯留タンクの平面図である。
【図5】前記貯留タンクの要部の拡大斜視図である。
【図6】前記古紙再生処理装置の抄紙部及び仕上部のカレンダー部の概略斜視図である。
【図7】他の実施形態にかかる古紙再生処理装置の貯留タンクの平面図である。
【図8】前記貯留タンクの要部の拡大斜視図である。
【図9】更に他の実施形態にかかる古紙再生処理装置の貯留タンクの平面図である。
【図10】前記貯留タンクの要部の拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1の実施形態)
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明にかかる古紙再生処理装置の構成概略図である。図1において、古紙再生処理装置100は、再生パルプ部1、貯留部8、希釈処理部9、脱墨部2、抄紙部3、仕上げ部4、排液処理部5、及び制御部10を一体的に備えるものである。再生パルプ部1は古紙原料6を離解して再生パルプを製造するものであり、貯留部8は再生パルプ部1からの再生パルプを一旦貯留するものであり、希釈処理部9は、貯留部8からの再生パルプを希釈するものであり、脱墨部2は希釈処理部9からの再生パルプを脱墨するものであり、抄紙部3は脱墨部2からの再生パルプを抄紙して再生紙7を調製するものであり、仕上げ部4は、抄紙部3からの再生紙7を裁断等することにより仕上げを行うものであり、排液処理部5は、古紙再生処理により生じた排液を処理するものである。制御部は各部の動作を制御するものである。
【0013】
(再生パルプ部)
図2は、再生パルプ部1の構成概略図である。図2に示すように、再生パルプ部1は、古紙原料供給部14、計測部17、パルパー18を備えている。
【0014】
古紙原料6としては、A4、B5等といった定型紙を、シュレッダー等の切断機器によって細断したシュレッダー紙を用いているが、これに替えて、定型紙を用いることも可能である。
【0015】
古紙原料供給部14は、シュレッダータンク12を備えている。シュレッダータンク12は、古紙原料6を貯留するものである。このシュレッダータンク12の底部には古紙原料6の排出口13が形成されている。排出口13は、図2において二点鎖線で示すように揺動することで開閉自在に構成されている。
【0016】
計測部17は、受皿16と、ロードセル等の計測器15とを備えている。受皿16は、水平姿勢からパルパー18に向けて傾倒する傾倒姿勢へ傾倒可能に構成されている。
【0017】
パルパー18は、攪拌槽23、給水部24、攪拌手段25を備えている。パルパー18は、古紙原料6を水中において攪拌し、繊維、つまり再生パルプにまで離解するものである。給水部24は、水道水等の上水の供給部(図示省略)、及び後述する排液処理部5の白水タンク52(図1参照)に接続され、これら上水、または白水タンク52内に貯留する白水のうち、いずれかの水を攪拌槽23に供給するようになっている。
【0018】
攪拌槽23の底面には、再生パルプの取出口28が開口して形成され、この取出口28に、配管78が接続されてなる。配管78の途中位置には、開閉弁79、ポンプ77が配設されている。ポンプ77は、スネークポンプ、モーノポンプ、チューブポンプ等を用いることができる。ポンプ77をチューブポンプとした場合には、チューブポンプの運転を停止することにより配管78内における再生パルプを含む液体の流通を阻止することが可能であるので、開閉弁79を設けなくても構わない。
【0019】
(貯留部)
図3は、貯留部8の構成概略図、図4は貯留部8の貯留タンク85の平面図、図5は、貯留タンクの下部の拡大斜視図を示す。貯留部8は貯留タンク85を備えている。貯留タンク85は、再生パルプをパルパー18から下流側の脱墨部2へ移送する移送経路の途中に設けられ、前記移送経路の上流側から流入する再生パルプを貯留するとともに、前記移送経路の下流側へ供給するものである。
【0020】
図3,4,5に示すように、貯留タンク85は、攪拌手段80と、流入口86と、流出口87とを備えている。攪拌手段80は、内部に貯留する再生パルプを攪拌する攪拌羽根81と、該攪拌羽根81の駆動手段82とを有する。攪拌羽根81は、アンカー型、糸巻型、門型等の槽内に輻流を生じさせ、高粘度の再生パルプを含む液体を、低速で効率よく攪拌できるタイプのものが好ましく用いられる。図3においては、攪拌羽根81の一例として、貯留タンク85の内径よりやや小さい程度の横幅を有する薄板状部材に矩形状の開口部83が形成されたものを示している。
【0021】
流入口86及び流出口87は、いずれも貯留タンク85の底面85aに開口して形成されている。流入口86は、貯留タンク85内へ上流側より再生パルプを流入させるものであり、流入口86には配管78が接続されている。一方、流出口87は、貯留タンク85内に貯留する再生パルプを下流側へ流出させるものであり、流出口87には配管89が接続されている。
【0022】
また、攪拌羽根81の下部には掻き寄せ部90を設けている。掻き寄せ部90は、貯留タンク85の下部に滞留する再生パルプを流出口87へと掻き寄せるものである。掻き寄せ部90は、矩形状薄板よりなる一対の掻き寄せ部材95を備えている。掻き寄せ部材95は、例えば、スチレンブタジエンゴム、シリコンゴム等の合成ゴム、または天然ゴム等といった柔軟で弾性のある材質のものが好ましく用いられる。
【0023】
掻き寄せ部材95は、剛性を有する一対の支持部材54,68によって挟持され、支持されている。図4,5に示す攪拌羽根81の回転方向Uに対し、掻き寄せ部材95の前方に位置する支持部材54は掻き寄せ部材95の上部のみに付設され、一方、掻き寄せ部材95の後方に位置する支持部材68は、掻き寄せ部材95の上端より掻き寄せ部材95の上下長さの4分の3程度の長さ位置まで付設されている。そして、前後の支持部材54、68によって挟持されてなる掻き寄せ部材95の上部が攪拌羽根81の下部に螺子96により螺着されている。
【0024】
掻き寄せ部材95の下端部は、攪拌羽根81の回転に伴って貯留タンク85の底面85aに摺接し、貯留タンク85の下部に滞留している再生パルプを掻き寄せ、流出口87へと導く。
【0025】
図3に示すように、配管89は、途中位置に開閉弁92及びポンプ91が設置されている。ポンプ91は貯留タンク85の流出口87から取り出した再生パルプを含む液体を、下流側の脱墨部2または抄紙部3へと送るものである。
【0026】
ポンプ91は、攪拌槽23と貯留タンク85とを接続する配管78に設けたポンプ77と同様に、スネークポンプ、モーノポンプ、チューブポンプ等を用いることができる。ポンプ91をチューブポンプとした場合には、チューブポンプの運転を停止することにより配管89内における再生パルプを含む液体の流通を阻止することが可能であるので、開閉弁92を設けなくても構わない。
【0027】
希釈処理部9は、配管89の途中位置であって、ポンプ91の設置箇所より下流側に設けられ、配管89に配管93の一端が接続されてなる構造を有する。配管93の内部は、希釈液供給部98からの希釈液が流通しており、この希釈液を、配管89を流通する再生パルプを含む液体中に流入させる。これにより、再生パルプを含む液体中における再生パルプの濃度を、希釈液により希釈する。
【0028】
希釈液供給部98は、上水または白水を希釈液として供給するものである。配管93の他端側は、上水の供給部(図示省略)、及び白水タンク52の双方に接続されている。ここで、上水は、水道水等であり、白水は後述する白水タンク52内に貯留する抄紙により得られた水である。
【0029】
(脱墨部)
図1示す脱墨部2は、インク成分、トナー成分等の印刷用着色成分を、再生パルプを含む液体から分離して、脱墨後の再生パルプを調製するためのものである。脱墨部2は、公知の脱墨装置により構成される。尚、脱墨部2による脱墨処理は省略することも可能であり、脱墨処理を省略する場合には、図1に示すように希釈処理部9から流出した再生パルプを含む液体は抄紙部3へと送られる。
【0030】
(抄紙部)
図6は、抄紙部3及び仕上部4のカレンダー部41の概略斜視図である。抄紙部3は、脱墨部2による脱墨の終了した、または脱墨処理を省略した場合には、希釈処理部9から送られた再生パルプを抄紙するものであり、抄紙装置Sにより構成される。図6に示すように、抄紙部3は、ヘッドボックス31、ワイヤー部32、脱水部33、ドライヤー部34からなる。
【0031】
ヘッドボックス31は、再生パルプを含む液体をワイヤー部32に均一に供給し、湿紙64を形成するためのものである。ワイヤー部32は、
複数の回転ローラ35に掛け渡して展張したメッシュベルト36を有し、メッシュベルト36の内方には、メッシュベルト36の網目から流下する水を受ける受水部37を設けている。受水部37は後述する排液処理部5の白水タンク52(図1参照)に接続されている。
【0032】
脱水部33は、複数のローラ38の間にそれぞれ掛け渡したフェルトからなる無端状の吸水ベルト39を上下一対有し、上側の吸水ベルト39と下側の吸水ベルト39とが一部当接した部分において、双方の吸水ベルト39を挟圧して圧搾する一対の圧搾ローラ44を複数備えている。
【0033】
ドライヤー部34は、複数の回転ローラ45及び複数の乾燥ローラ46を配置し、この複数の回転ローラ45及び複数の乾燥ローラ46の間に掛け渡した乾燥用ベルト47を上下一対備えている。複数の乾燥ローラ46は、それぞれ内部にヒータ49を備える。また、乾燥ローラ46の表面の温度を測定する温度センサ(図示省略)を有している。
【0034】
(仕上げ部)
仕上げ部4は、カレンダー部41及びカット部42(図1参照)を有しており、カレンダー部41は仕上げ前の再生紙65の平坦度を上げるための複数のプレスローラ43を備え、カット部42は紙を所定のシートサイズにカットする裁断刃(図示省略)を備えている。
【0035】
(排液処理部)
図1に示すように、排液処理部5は、脱墨排水タンク51、白水タンク52の各槽体を有し、汚染の程度が高く再利用が困難な脱墨排水タンク51内の排水は、必要により所定の廃液処理を行って無毒化した後古紙再生処理装置100の外部に排出するよう構成されている。汚染の程度が低く再利用が可能な白水タンク52内の白水は、フィルターを通してインク、トナー等を除去し、必要により薬剤を添加し中和するなどの処理を施した後、もう一度パルパー18及び希釈処理部86等へ供給し再度利用可能に構成されている。
【0036】
(作用)
本実施形態にかかる古紙再生処理装置100の作用につき以下に説明する。まず、制御部10が制御することで、図2に示すように、シュレッダータンク12内の古紙原料6が、排出口13から受皿16へ排出される。次に、計測部17で必要な古紙原料6の量が計測され、攪拌槽23に投入される。そして、攪拌槽23において、給水部24から必要量の水が供給され、攪拌手段25により古紙原料6と水とが攪拌され、古紙原料6の離解処理が行われる。
【0037】
離解処理が終了し再生パルプが製造されると、給水部24より再度給水が行われて再生パルプを含む液体が希釈される。その後、開閉弁79が開放され、ポンプ77が駆動される。これにより、希釈後の再生パルプを含む液体が、取出口28より取り出され、配管78内を流通して貯留部8へ送られる。
【0038】
図3に示す貯留部8では、配管78から流入口86へ流入した再生パルプを含む液体が、該貯留タンク85に一旦貯留される。このように、攪拌槽23から再生パルプを含む液体が取り出され、貯留部8に一旦貯留されることで、空となった攪拌槽23に、新たな古紙原料6及び水を供給して、2回目のバッチ式離解処理を開始することができる。そして、2回目の離解処理を行うため古紙原料供給部14より供給した古紙原料6を、離解処理している間に、並行して貯留部8に貯留している1回目の離解処理により得られた再生パルプを、後段の脱墨部2や抄紙部3に連続的に供給し、脱墨、抄紙の処理を行うことができる。
【0039】
その際、制御部10は、貯留タンク85内に貯留する1回目の離解処理により得られた再生パルプを含む液体がなくなる前に、再生パルプ部1において、2回目の離解処理で得られた再生パルプを、貯留タンク85へ流入させるよう制御する。この結果、貯留タンク85に、再生パルプを途切れることなく継続して貯留することができるので、後段の脱墨部2や抄紙部3に再生パルプを連続的に供給可能である。よって、再生パルプ部1はバッチ式処理である一方、後段の各処理が連続式処理である場合であっても、後段の処理を、途切れることなく継続して行うことが可能である。
【0040】
貯留タンク85において再生パルプを含む液体を貯留する際は、制御部10は、駆動手段82を駆動し、攪拌羽根81を回転するよう制御する。これにより、貯留タンク85内の再生パルプを含む液体を攪拌し、沈殿しやすい再生パルプを、再生パルプを含む液体中で十分に分散させることができる。よって、再生パルプを含む液体を、脱墨部2や抄紙部3へ移送し、連続処理を行っている間中、再生パルプを含む液体中の再生パルプの濃度が変動することなく、略同程度の濃度とすることができる。
【0041】
攪拌羽根81の回転速度は、比較的低速とすることが好ましい。貯留部8では、再生パルプを含む液体中に、再生パルプを分散させることができれば十分であり、再生パルプ部1のように、古紙原料6を離解することを目的としないからである。このように攪拌羽根81を低速回転とすることで、消費電力を低減し、コストを抑制することができる。
【0042】
また、攪拌羽根81の種類が、プロペラ等の貯留タンク85内に軸流を生じるタイプのものである場合には、貯留タンク85内に貯留する再生パルプを含む液体の液量が多いときに、再生パルプが沈殿しやすくなる。逆に、貯留タンク85内に貯留する再生パルプを含む液体が少ないときは、再生パルプ及び水が飛散しやすくなり、攪拌時に大きな騒音が生じやすくなる。
【0043】
そこで、攪拌羽根81に輻流を生じるタイプのものを用いることでこれらの問題を解決可能である。攪拌羽根81に輻流を生じるタイプのものを用いた場合には、制御部10は、攪拌羽根81を略一定、且つ比較的低速の回転速度で回転することで、再生パルプを十分に分散させることができるので、攪拌羽根81の制御を簡略化することもできる。
【0044】
また、制御部10は、攪拌羽根81の動作を、回転と停止とを繰り返す間欠運転とすることも可能である。即ち、例えば、2〜6秒の回転と、1〜3秒の停止とを繰り返す間欠運転等とすることが可能であり、このような間欠運転をすることで再生パルプのいわゆる連れ回りを防止することができる。更に、この間欠運転に加え、攪拌羽根81の回転方向を正回転と逆回転を繰り返す反転運転とすることも可能である。即ち、2〜6秒の正回転、0〜3秒の停止、2〜6秒の逆回転を繰り返す反転運転が可能である。反転運転とすることで、攪拌羽根81が同一方向に回転する間欠運転の場合より、更に確実に連れ回りを防止できる。
【0045】
再生パルプ部1での再生パルプの調製を終了し、攪拌槽23から送られ、貯留タンク85内に貯留している再生パルプを含む液体を、全て流出口87から配管89へ取り出し、後段の脱墨部2へ移送する際には、液面の低下とともに貯留タンク85の下部に再生パルプが滞留しやすくなり、最終的に液体分のみ先に流出口87から流出し、再生パルプだけが貯留タンク85の底部に残存してしまう。そこで、掻き寄せ部90により、貯留タンク85の下部に滞留する再生パルプを、流出口87へ掻き寄せる。
【0046】
これにより、貯留タンク85の下部に滞留し、貯留タンク85内に残存する再生パルプを流出口87から配管89へ取り出すことができ、この取り出した再生パルプを脱墨部2を経て抄紙部3へ送って、再生紙7の製造に利用することができる。また、掻き寄せ部90により再生パルプを掻き寄せることで、貯留タンク85から取り出した再生パルプを含む液体中の再生パルプの濃度の変動を抑え、得られる再生紙の品質を維持することができ、再生紙7の製造の最終段階で製造された再生紙7の厚さが薄くなるといったことが生じない。そして、古紙再生処理装置100の使用後、装置内部に残存する再生パルプを洗浄する際に、貯留タンク85の底面に再生パルプがほとんど残存していないので、貯留タンク85の内部の洗浄が容易となり、作業性が向上する。
【0047】
また、攪拌羽根81の回転方向Uに対し掻き寄せ部材95の後方に位置する支持部材68が、前方の支持部材54より上下方向に長く形成され、掻き寄せ部材95の上下長さの4分の3程度になっているので、高粘度の再生パルプを含む液体を掻き寄せる際に、柔軟な掻き寄せ部材95が再生パルプを含む液体の粘性により後方へ屈曲させられ、十分に掻き寄せることができないといった不具合を生じることなく、掻き寄せ部材95が鉛直方向に沿うよう支持部材68により後方から支持することができ、再生パルプを効率よく掻き寄せることができる。
【0048】
貯留部8内に貯留する再生パルプは、所定の流量で、流出口87より流出され、配管89内を流通して希釈処理部9へ送られる。希釈処理部9では、制御部10が配管89内を流通する再生パルプを含む液体に、配管93内を流通する希釈液を流入させ、希釈処理を行うよう制御する。希釈処理部9における希釈は、途切れることなく連続して行うこととしてもよく、間欠的に行ってもよい。間欠的に行う場合には、配管89内を流通する再生パルプを含む液体に、配管93から所定流量で所定時間希釈液を流入させた後、一時的に希釈液の供給を中断し、その後、中断前の流量と同じ流量、または中断前の流量とは異なる他の流量で希釈液を流入させることで、希釈処理を再開するといった方法等により行う。中断後の希釈液の流量を中断前とは異なる他の流量とする場合には、中断前の希釈により生じた再生パルプを含む液体について測定した再生パルプの濃度の結果に応じて、希釈液量を微調整することが可能である。
【0049】
このように希釈処理部9では、配管93内を流通する希釈液を、配管89内を流通する再生パルプを含む液体中に流入させることで連続的な希釈を行うので、希釈後の再生パルプを含む液体を貯留するための巨大なタンク及び攪拌手段を必要としない。また、白水タンク52内の白水を希釈液として用いる場合には、抄紙部3において抄紙により生じた白水を希釈液として循環して利用するために、希釈液として上水を用いる場合に比較して白水タンク52に貯留する白水の量を低減でき、白水タンク52を小さいものにすることができる。
【0050】
希釈処理部9において希釈された再生パルプを含む液体は、脱墨部2に送られ、脱墨処理が行われ、得られた脱墨後の再生パルプを含む液体が抄紙部3へ送られる。
【0051】
抄紙部3では、図6に示すように、ヘッドボックス31から走行するメッシュベルト36上に、再生パルプを含む液体を均一に供給し、水切りして水分を比較的多く含んだ繊維の層である湿紙64を形成する。メッシュベルト36の下方に流下した水は受水部37に受水され、該受水部37から白水タンク52に送られる。
【0052】
メッシュベルト36上の湿紙64が往路軌道の終端部に至ると、脱水部33の上側の吸水ベルト39に転移される。その後、湿紙64は、下側の吸水ベルト39との間に挟まれ、湿紙64に含まれる水分を吸水ベルト39側に吸収させることで脱水され、更に、圧搾ローラ44で圧搾され脱水される。
【0053】
そして、湿紙64は、脱水部33からドライヤー部34に送られ、走行する上下一対の乾燥用ベルト47の間に挟持される。そして、ヒータ49により加熱され所定温度に維持された複数の乾燥ローラ46に、乾燥用ベルト47が当接され、湿紙64が搬送されることで、湿紙64の乾燥が行われ、仕上げ前の再生紙65を得る。
【0054】
ドライヤー部34を出た仕上げ前の再生紙65はカレンダー部41に送られ、複数のプレスローラ43の間に通される。これにより、仕上げ前の再生紙65の平坦度を向上させ、更に、カット部42で所定のシートサイズに裁断して再生紙7が完成する。
【0055】
カット部42において裁断された結果不要となった仕上げ前の再生紙65の破材は、図1に示すように再生パルプ部1に戻され、再度古紙原料6として利用される。
【0056】
各工程において排液処理部5へ送られた排水のうち汚染の程度が高く再利用が困難な脱墨排水タンク51内の排水は、必要により所定の廃液処理が施された後古紙再生処理装置100の外部に排出される。汚染の程度が低く再利用が可能な白水タンク52内の白水は、必要によりフィルターを通してインク成分、トナー成分等を除去し、薬剤を添加し中和するなどの処理を施された後、パルパー18、希釈処理部9等へ供給され再度利用される。
【0057】
(第2の実施形態)
図7は、第2の実施形態にかかる貯留タンク85の平面図であり、図8は貯留タンク85の下部の部分拡大斜視図である。本第2の実施形態では、掻き寄せ部90aが、攪拌羽根81の回転方向Tに対して後方へ窪んだ窪み部97を有し、攪拌羽根81の回転時において、この窪み部97が流出口87の上方を通過するよう構成されている。
【0058】
即ち、図7に示すように、掻き寄せ部90aを構成する掻き寄せ部材95aが、平面視L字状に屈曲した形状を有し、この屈曲部分が窪み部97を構成している。図7において攪拌羽根81の回転方向Tを時計回りとすると、この攪拌羽根81の回転方向Tに対して、掻き寄せ部材95の拡開した先端部分99が前方に、窪み部97が後方に位置している。
【0059】
掻き寄せ部材95aは、一対の支持部材54a,68aの間に挟持され、攪拌羽根81の下部に固定されている。図8に示すように、攪拌羽根81の回転方向Tに対し、後方に位置する支持部材68aは、板状の部材を複数個所で屈曲して形成されてなり、下方に向けて延在する一対の垂設部55,53を有する。
【0060】
この垂設部55,53のうち一方の垂設部55が、攪拌羽根81の下部に螺子96aにより固定されている。他方の垂設部53は、掻き寄せ部材95aの後方に沿って配設され、攪拌羽根81の回転方向Tに対し、前方に位置する支持部材54aとの間に、掻き寄せ部材95aを挟持しており、螺子96bにより垂設部53、掻き寄せ部材95a、支持部材54aが連結されている。
【0061】
また、支持部材68aは、剛性を有し、柔軟な掻き寄せ部材95aの形状をL字状に保持するとともに、攪拌羽根81の回転方向Tに対し、掻き寄せ部材95aの後方に位置する支持部材68aの垂設部53が、掻き寄せ部材95aの上下長さの4分の3程度に形成されている。
【0062】
貯留部8内に貯留する再生パルプを含む液体を、全て流出口87から配管89へ取り出す際には、掻き寄せ部材95aで掻き寄せた再生パルプを、攪拌羽根81の回転によって、窪み部97に集める。そして、窪み部97が流出口87の上方を通過した際、窪み部97に集まった再生パルプは、自重により下方の流出口87へ落下するとともに、ポンプ91の駆動により流出口87に吸引され、流出口87から流出される。
【0063】
このようにして、貯留タンク85の底面85aの広い範囲に滞留する再生パルプを、掻き寄せ部90aにより掻き寄せ、窪み部97に集めることができ、流出口87から後段の各部へ送ることができる。よって、第1の実施形態における掻き寄せ部90と比較して、貯留タンク85内に残存する再生パルプの量をより少なくすることができる。
【0064】
(第3の実施形態)
図9は、第3の実施形態にかかる貯留タンク85の平面図であり、図10は前記貯留タンク85の下部の拡大斜視図である。図9に示すように、本第3の実施形態では、掻き寄せ部90bを構成する掻き寄せ部材95bが、矩形薄板状に形成され、この薄板状の掻き寄せ部材95bの先端近傍の2箇所で、鉛直方向に沿って鈍角に屈曲して形成されている。そして、掻き寄せ部材95bは、剛性を有する一対の支持部材54b,68bに挟持されている。攪拌羽根81の回転方向Sに対し、掻き寄せ部材95bの前方に位置する挟持部材54bは掻き寄せ部材95bの上部のみに付設され、一方、掻き寄せ部材95bの後方に位置する支持部材68bは、掻き寄せ部材95bの上端より掻き寄せ部材95bの上下長さの4分の3程度の長さ位置まで付設されている。そして、前後の支持部材54b、68bによって挟持されてなる掻き寄せ部材95bの一端側の上部が、攪拌羽根81の下部に螺子96cにより螺着され、他端側の屈曲部分が、攪拌羽根81の回転方向Sに対し、後方へ窪んだ窪み部97aを構成している。尚、図9、10では、攪拌羽根81の回転方向Sを、図7の回転方向Tとは逆方向となる反時計回りとして示している。
【0065】
支持部材68bは、連結部材69によって攪拌羽根81の下部に、平面視三角形状に連結されている。支持部材68bは、剛性を有し、柔軟な掻き寄せ部材95aを所定角度となるよう支持するとともに、攪拌羽根81の回転時掻き寄せ部材95bを後方より支持している。
【0066】
また、流出口87aは、第1,2の実施形態における流出口87と異なり、貯留タンクの半径方向Rにおける位置が、貯留タンク85の中心から遠く、側壁に近い位置に設けられている。
【0067】
第3の実施形態にかかる掻き寄せ部90bを用いて、貯留タンク85内に滞留する再生パルプを掻き寄せた場合、掻き寄せ部90bに掻き寄せられた再生パルプが、攪拌羽根81の回転に伴い、掻き寄せ部材95bの平板面に沿って回転方向Sに対し後方へ移動し、窪み部97aに集められる。そして、窪み部97aが流出口87aの上方を通過した際、窪み部97aに集まった再生パルプは、自重により下方の流出口87aへ落下するとともに、ポンプ91の駆動により流出口87aに吸引され、流出口87aから流出される。
【0068】
これにより、貯留タンク85の底面85aの広い範囲に残存する再生パルプを、掻き寄せ部90bにより掻き寄せ、窪み部97aに集めることができ、流出口87aから後段の各部へ送ることができ、貯留タンク85内に残存する再生パルプの量を低減可能である。また、第3の実施形態にかかる貯留タンク85の排出口87aは、第1,2の実施形態における流出口87と異なり、貯留タンク85の半径方向Rにおける位置が、貯留タンク85の中心から遠く、側壁に近い位置に設けられているが、このような場合であっても、窪み部97aの位置を、攪拌羽根81の回転時に流出口87aの上方を通過する位置に調製することで、貯留タンク85の下部に滞留する再生パルプを確実に流出口87aから流出させることができる。
【0069】
尚、上記実施形態では、掻き寄せ部90、90a、90bが、攪拌羽根81と別部材となる掻き寄せ部材95,95a,95bにより構成されたが、これに限定されず、掻き寄せ部が、攪拌羽根81と一体に形成されていてもよい。また、掻き寄せ部材95,95a,95bを一対設けたが、左右いずれか1個のみ備えてもよく、3個以上に分割して備えてもよい。また、掻き寄せ部材95,95a,95bが、攪拌羽根81の下部に、螺子96,96a,96b,96cにより螺着されていたが、接着剤等を用いて固定してもよい。
【0070】
また、掻き寄せ部材95,95a,95bは、一対の支持部材54,54a,54b及び68,68a,68bによって挟持されていたが、支持部材を設けることなく、攪拌羽根81の下部に直接固定してもよい。
【符号の説明】
【0071】
T,S、U 攪拌羽根の回転方向
1 再生パルプ部
3 抄紙部
6 古紙原料
7 再生紙
18 パルパー
81 攪拌羽根
85 貯留タンク
87,87a 流出口
90,90a,90b 掻き寄せ部
97,97a 窪み部
100 古紙再生処理装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
古紙原料を離解して再生パルプを製造するパルパーを有し、後段の抄紙部へ再生パルプを供給する再生パルプ部と、
前記再生パルプ部から供給された再生パルプを抄紙して再生紙を調製する抄紙部とを備える古紙再生処理装置において、
再生パルプをパルパーから抄紙部へ移送する移送経路の途中に、前記移送経路の上流側から流入する再生パルプを貯留するとともに、前記移送経路の下流側へ供給する貯留タンクが設けられ、
前記貯留タンクには、内部に貯留する再生パルプを攪拌する攪拌羽根と、前記攪拌羽根の駆動手段と、前記貯留タンクの底面に形成された前記再生パルプを下流側へ流出させる流出口とを備え、
前記攪拌羽根の下部に、貯留タンクの下部に滞留する再生パルプを、前記流出口へ掻き寄せる掻き寄せ部を設けてなる古紙再生処理装置。
【請求項2】
掻き寄せ部は、攪拌羽根の回転方向に対して後方へ窪んだ窪み部を有し、
前記攪拌羽根の回転時において、前記窪み部が前記流出口の上方を通過することを特徴とする請求項1に記載の古紙再生処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−127029(P2012−127029A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−280657(P2010−280657)
【出願日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(390002129)デュプロ精工株式会社 (351)
【Fターム(参考)】