説明

古紙再生処理装置

【課題】湿紙が破断を伴うことなく抄紙ワイヤーからフェルトベルトへスムーズに転移し、乾燥後の乾紙の先端縁が紙幅方向で揃った形状となる古紙再生処理装置を提供する。
【解決手段】古紙再生処理系を構成する複数の処理部のうちの一つの処理部をなす抄紙部13と、各処理部の運転を制御する制御部700を備える古紙再生処理装置において、抄紙部13は、パルプ懸濁液8から湿紙12を抄紙する抄紙ワイヤー部と、抄紙ワイヤー部にパルプ懸濁液を供給するヘッドボックス部を有し、制御部700は、抄紙部13を制御して、抄紙初期領域となる湿紙先端領域の紙厚を、湿紙先端領域に続く湿紙本領域に設定する抄紙本設定厚よりも厚い抄紙初期設定厚で抄紙する抄紙初期制御機能部を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、古紙の発生場所であるオフィス等に設置して紙を再生することができる古紙再生処理装置に関し、詳しくは抄紙初期時の紙厚制御に係る技術である。
【背景技術】
【0002】
従来、古紙再生処理装置では、再生パルプを含むパルプ懸濁液を抄紙部の抄紙ワイヤーに注いで湿紙を抄紙し、湿紙を抄紙ワイヤーから脱水部のフェルトベルトに転移させてフェルトベルトで脱水し、その後に乾燥部で乾燥させて後に、仕上部に移送している。
【0003】
製紙技術に係る先行技術文献としては、例えば特許文献1がある。これはティッシュ製品を生成する方法に関するものであり、ティッシュウェブを生成するための工程を有している。工程中で、ティッシュウェブは、脱水された後に吸引力のような空気力を用いて移送コンベヤから布地に移送される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2008−524457号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、帯状に連続する湿紙を乾燥部でさせて乾紙となし、その後、乾紙を乾燥部から仕上部に移送する際には、スクレーパで紙の先端を乾燥部から剥離させている。
しかしながら、湿紙が抄紙ワイヤーからフェルトベルトへ良好に転移しない場合には、湿紙の先端縁が引き千切られた状態となり、フェルトベルトに転移した湿紙の先端縁が、紙幅方向で直線的な形状を有さずに、紙搬送方向の前方に突出する突出領域と後方に後退する後退領域とが混在するギザギザの破断形状となる。
【0006】
このため、乾燥部から乾紙をスクレーパで剥離させる際に、紙の先端縁の一部がスクレーパで剥がされるとともに、他の一部がスクレーパの裏面側に進入し、紙の先端縁がスクレーパで引き裂かれて紙詰まりを起こす原因となっていた。
【0007】
本発明は上記した課題を解決するものであり、湿紙が破断を伴うことなく抄紙ワイヤーからフェルトベルトへスムーズに転移し、乾燥後の乾紙の先端縁が紙幅方向で揃った形状となる古紙再生処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の古紙再生処理装置は、古紙再生処理系を構成する複数の処理部のうちの一つの処理部をなす抄紙部と、各処理部の運転を制御する制御部を備える古紙再生処理装置において、抄紙部は、パルプ懸濁液から湿紙を抄紙する抄紙ワイヤー部と、抄紙ワイヤー部にパルプ懸濁液を供給するヘッドボックス部を有し、制御部は、抄紙部を制御して、抄紙初期領域となる湿紙先端領域の紙厚を、湿紙先端領域に続く湿紙本領域に設定する抄紙本設定厚よりも厚い抄紙初期設定厚で抄紙する抄紙初期制御機能部を有することを特徴とする。
【0009】
本発明の古紙再生処理装置において、ヘッドボックス部は、抄紙ワイヤー部の抄紙ワイヤー上にパルプ懸濁液を注ぐヘッドボックスと、ヘッドボックスにパルプ懸濁液を供給するパルプ懸濁液供給装置を有し、制御部の抄紙初期制御機能部は、抄紙開始から所定時間にわたって抄紙初期領域を抄紙する間に、抄紙初期設定厚に応じて供給するパルプ懸濁液の供給量を、抄紙本設定厚に応じて供給するパルプ懸濁液の本供給量よりも多い初期供給量に制御することを特徴とする。
【0010】
本発明の古紙再生処理装置において、抄紙ワイヤー部は、ヘッドボックス部から注ぐパルプ懸濁液を受ける抄紙ワイヤーと、抄紙ワイヤーを紙搬送方向へ駆動する抄紙ワイヤー駆動装置を有し、制御部の抄紙初期制御機能部は、抄紙開始から所定時間にわたって抄紙初期領域を抄紙する間に、抄紙初期設定厚に応じて駆動する抄紙ワイヤーの移動速度を、抄紙本設定厚に応じて駆動する抄紙ワイヤー本移動速度よりも遅い抄紙ワイヤー初期移動速度に制御することを特徴とする。
【0011】
本発明の古紙再生処理装置において、抄紙ワイヤー部は、ヘッドボックス部から注ぐパルプ懸濁液を受ける抄紙ワイヤーと、抄紙ワイヤーを紙搬送方向へ駆動する抄紙ワイヤー駆動装置を有し、制御部の抄紙初期制御機能部は、抄紙開始から所定時間にわたって抄紙ワイヤーの駆動を停止して抄紙初期領域を抄紙初期設定厚に抄紙することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
以上のように本発明によれば、抄紙初期領域となる湿紙先端領域の紙厚を、湿紙先端領域に続く湿紙本領域に設定する抄紙本設定厚よりも厚い抄紙初期設定厚で抄紙することにより、抄紙初期時における湿紙の紙厚の不均一性を緩和して紙幅方向の各所における紙の引裂強度の均一化を図ることができる。
【0013】
このため、湿紙が破断を伴うことなく抄紙ワイヤーからフェルトベルトへスムーズに転移し、転移後の湿紙の先端縁が紙幅方向で揃った直線状の形状となり、乾燥部で乾燥後の乾紙の先端縁を紙幅方向に沿ってスクレーパで一様に剥離させることができ、紙詰まりの原因となる乾紙の先端縁の破断を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態における古紙再生処理装置を示すブロック図
【図2】同実施の形態における古紙再生処理装置の制御部を示すブロック図
【図3】同実施の形態における古紙再生処理装置のパルパー部を示す模式図
【図4】同実施の形態における古紙再生処理装置の抄紙部を示す模式図
【図5】同実施の形態における古紙再生処理装置の仕上部を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1〜図5において、古紙再生処理装置は、古紙再生処理系を構成する複数の処理部を有しており、処理部には給紙部1、パルパー部9、貯蔵タンク部10、脱墨部11、抄紙部13、乾燥部14、仕上部15、白水タンク部100、排水処理タンク部101がある。また、古紙再生処理装置は各処理部の運転を制御する制御部700を備えている。
【0016】
給紙部1は、再生原料の古紙4を供給するものであり、古紙4を細断した紙片2を貯留する貯留部3と、貯留部3に古紙4を供給する給紙装置5と、貯留部3に貯留されている紙片2を計量部6に排出する排出用サイクロン7と、貯留部3の紙片2を排出用サイクロン7へ搬送する紙片搬送ダクト16と、紙片搬送ダクト16に搬送用空気を供給して貯留部3から排出用サイクロン7へ向って流れる送気流17を発生させる送風装置18からなる。
【0017】
パルパー部9は、紙片2を離解して再生パルプを調製するものであり、パルパー槽37と、パルパー槽37内に設けた攪拌装置38を有し、計量部6において計量された紙片2を離解して再生パルプを含むパルプ懸濁液8を製造する。
【0018】
貯蔵タンク部10は、パルパー部9で得られたパルプ懸濁液8を貯留するものであり、内部に攪拌装置39を有している。
脱墨部11は、貯蔵タンク部10において貯留されたパルプ懸濁液8を脱墨して脱墨パルプを調製するものであり、蛇行した流路を形成した脱墨槽40と、脱墨槽40の下部から多数の気泡を放出する散気装置(図示省略)とを有している。
【0019】
抄紙部13は、脱墨されたパルプ懸濁液8から湿紙12を抄紙するものであり、抄紙ワイヤー部とヘッドボックス部を備えている。抄紙ワイヤー部は、複数のローラ42に巻回されたメッシュ状のベルトからなる抄紙ワイヤー43と、ローラ42の少なくと一つを回転させて抄紙ワイヤー43を紙搬送方向へ駆動するモータ等の抄紙ワイヤー駆動装置431を有している。
【0020】
ヘッドボックス部は、脱墨されたパルプ懸濁液8を抄紙ワイヤー43上に注ぐヘッドボックス44と、ヘッドボックス44にパルプ懸濁液8を脱墨槽40から供給するポンプ等のパルプ懸濁液供給装置110を有している。
【0021】
脱水部20は、湿紙12を脱水するものであり、複数のローラ46に巻回されたフェルトの吸水ベルト47からなり、湿紙12が抄紙ワイヤー43から吸水ベルト47に転移し、吸水ベルト47が湿紙12を吸収脱水する。
【0022】
乾燥部14は、脱水された湿紙12を乾燥するものであり、加熱装置48を内蔵した乾燥ローラ49と複数のローラ50とに金属製の第1搬送ベルト51を巻回し、複数のローラ52に網状で樹脂製の第2搬送ベルト53を巻回しており、第1搬送ベルト51と第2搬送ベルト53とは湿紙12を挟んで乾燥ローラ49の外周面上で重なり、乾燥ローラ49で湿紙12を乾燥させる。
【0023】
プレス用の一対のローラ46a、50aは、吸水ベルト47と第1搬送ベルト51を介して湿紙12を圧搾脱水するとともに、湿紙12を吸水ベルト47から第1搬送ベルト51に転移させる。
【0024】
乾燥した乾紙61は、第1搬送ベルト51の往路終端位置でスクレーパ111により第1搬送ベルト51から剥離させて仕上部15に案内する。
仕上部15は、湿紙12を乾燥して得られる乾紙61に対して仕上工程を行い、得られた再生紙62を紙受部63に排出するものであり、乾紙61を所定のサイズに切断する金属製のカッター装置60およびスリッター装置112が設けられている。
【0025】
図5に示すように、スリッター装置112は上下一対の回転軸113、114を有し、各回転軸113、114には、主搬送ローラ115、116と、副搬送ローラ117、118と、回転刃119、120を設けている。副搬送ローラ117、118は主搬送ローラ115、116の左右両側に設けており、回転刃119、120を主搬送ローラ115、116と副搬送ローラ117、118の間に配置している。
【0026】
主搬送ローラ115、116と副搬送ローラ117、118は乾紙61を挟んで回転駆動し、乾紙61を紙搬送方向へ搬送する。回転刃119、120は刃先が回転軸113、114の軸心方向で重なって摺動し、乾紙61の紙幅方向の両側縁を裁断する。
【0027】
この構成により、乾紙61に搬送力を与えながら裁断し、裁断後の再生紙62および裁ち屑61aに搬送力が作用することで、スリッター装置112における紙詰まりを抑制できる。
【0028】
図1に示すように、排水処理タンク部101は、脱墨排水系102を通して脱墨部11から流入する脱墨廃液を処理するもので、フィルターで繊維、インク、トナーを除去し、薬剤の添加により中性化して公共下水の下水配管103へ排水可能な水質にまで処理する。
【0029】
白水タンク部100は、抄紙排水系104を通して抄紙部13から流入する再生パルプを含む排水である白水を貯留するものであり、白水を白水返送系105、106を通して古紙再生処理系の各所へ返送する。
【0030】
給水源、ここでは上水配管107から用水を供給する給水配管108がパルパー部9に接続しており、給水配管108に電磁弁からなる緊急停止用の元弁装置109を設けている。
【0031】
図2に示すように、制御部700は、CPU710に設定する機能回路として、以下の機能部を有している。つまり、パルパー部9の運転を制御するパルパー部制御機能部711と、脱墨部11の運転を制御する脱墨部制御機能部712と、抄紙部13の運転を制御する抄紙部制御機能部713と、仕上部15の運転を制御する仕上部制御機能部714と、排水処理タンク部101の運転を制御する排水処理タンク部制御機能部715と、稼動開始から稼動停止までの運転プロセスを逐次実行する自動運転制御機能部716と、抄紙初期制御機能部717を有する。
【0032】
抄紙初期制御機能部717は、抄紙部13を制御して、抄紙初期領域となる湿紙先端領域の紙厚を、湿紙先端領域に続く湿紙本領域に設定する抄紙本設定厚よりも厚い抄紙初期設定厚で抄紙する制御を行うものである。
【0033】
この制御の一例としては、パルプ懸濁液供給装置110を制御して、抄紙開始から所定時間にわたって抄紙初期領域を抄紙する間に、抄紙初期設定厚に応じて供給するパルプ懸濁液の供給量を、抄紙本設定厚に応じて供給するパルプ懸濁液の本供給量よりも多い初期供給量に制御するものがある。
【0034】
また、他の制御の例としては、抄紙ワイヤー駆動装置431を制御して、抄紙開始から所定時間にわたって抄紙初期領域を抄紙する間に、抄紙初期設定厚に応じて駆動する抄紙ワイヤー43の移動速度を、抄紙本設定厚に応じて駆動する抄紙ワイヤー本移動速度よりも遅い抄紙ワイヤー初期移動速度に制御するものがある。
【0035】
また、他の制御の例としては、抄紙ワイヤー駆動装置431を制御して、抄紙開始から所定時間にわたって抄紙ワイヤー43の駆動を停止して抄紙初期領域を抄紙初期設定厚に抄紙する制御を行うものがある。
【0036】
さらには、上記の例の複数を組み合わせて行なうものがある。
以下、上記した構成の作用を説明する。
古紙再生処理を行なう運転では、制御部700の自動運転制御機能716が再生パルプ部制御機能部711、脱墨パルプ部制御機能部712、抄紙部制御機能部713、仕上げ部制御機能部714、排水処理部制御機能部715を起動し、それぞれパルパー部9と脱墨部11と抄紙部13と仕上部15と排水処理タンク部101を制御して上述した各処理部において古紙再生処理系の運転を行う。
【0037】
ところで、抄紙部13では湿紙12が抄紙ワイヤー43から吸水ベルト47に転移する吸着力は、吸水ベルト47の吸水性に起因しており、湿紙12の紙厚が薄いほどに吸着力が作用し難くなり、逆に、湿紙12の紙厚が厚いほどに吸着力が作用しやすくなり、吸水ベルト47の吸水性が高いほどに湿紙12を強く吸着して転移の確実性が増す。
【0038】
この吸水ベルト47の吸水性は、吸水ベルトの濾水性に関係しており、濾水性が良いほどに吸水性も良くなる。濾水性の良し悪しにはフェルトを構成する繊維の太さが関係しており、繊維が太いほどに濾水性が良くなる。したがって、吸水ベルト47の吸着力はフェルトの繊維の太さを適宜に選択することにより調整可能である。
【0039】
また、抄紙初期時には抄紙ワイヤー43の上に流れ出すパルプ懸濁液8が抄紙ワイヤー43の紙搬送方向に不均一に広がることで、湿紙12の紙厚が紙幅方向において不均一化し、紙幅方向の各所における紙の引裂強度の不均一性が助長される。
【0040】
このため、湿紙12が抄紙ワイヤー43から吸水ベルト47に転移する際に、湿紙12の破断等が起きる場合があり、湿紙12が抄紙ワイヤー43から吸水ベルト47へ良好に転移しない場合には、吸水ベルト47に転移した湿紙12の先端縁が引き千切られた状態となり、紙幅方向で直線的な形状を有さずに、紙搬送方向の前方に突出する突出領域と後方に後退する後退領域とが混在するギザギザの破断形状となる。
【0041】
この結果、先に述べたように、乾燥部14で乾紙61の先端縁がスクレーパ111で引き裂かれて紙詰まりを起こす原因となる。
このため、本実施の形態では抄紙の初期時に以下の運転を行なう。すなわち、ヘッドボックス44から脱墨されたパルプ懸濁液8を抄紙ワイヤー43上に注ぎ始める運転初期において、制御部700の抄紙初期制御機能部717が抄紙部13の運転を制御し、抄紙初期領域となる湿紙先端領域の紙厚を、湿紙先端領域に続く湿紙本領域に設定する抄紙本設定厚よりも厚い抄紙初期設定厚で抄紙する。
【0042】
すなわち、抄紙初期制御機能部717がパルプ懸濁液供給装置110を制御して、抄紙開始から所定時間にわたって抄紙初期領域を抄紙する間に、抄紙初期設定厚に応じて供給するパルプ懸濁液の供給量を、抄紙本設定厚に応じて供給するパルプ懸濁液の本供給量よりも多い初期供給量に制御する。
【0043】
あるいは、抄紙初期制御機能部717が抄紙ワイヤー駆動装置431を制御して、抄紙開始から所定時間にわたって抄紙初期領域を抄紙する間に、抄紙初期設定厚に応じて駆動する抄紙ワイヤー43の移動速度を、抄紙本設定厚に応じて駆動する抄紙ワイヤー本移動速度よりも遅い抄紙ワイヤー初期移動速度に制御する。
【0044】
この抄紙ワイヤー本移動速度は、古紙再生処理装置が単位時間当たりに何メートルの再生紙を排出するか、すなわち単位時間当たりに何枚の定型の再生紙を作製するかによって定まる。本実施の形態では、例えば0.1m/分から3.5m/分程度の速度で抄紙ワイヤー43が移動している。これは製紙工場における製紙機の抄紙ワイヤーの移動速度に比べると桁違いに低速で移動するものである。
【0045】
あるいは、抄紙初期制御機能部717が抄紙ワイヤー駆動装置431を制御して、抄紙開始から所定時間にわたって抄紙ワイヤー43の駆動を停止して抄紙初期領域を抄紙初期設定厚に抄紙する制御を行う。
【0046】
さらには、上記の例の複数を組み合わせて行なう。
そして、湿紙先端領域の紙厚を、湿紙先端領域に続く湿紙本領域に設定する抄紙本設定厚よりも厚い抄紙初期設定厚で抄紙することにより、抄紙初期時における湿紙の紙厚の不均一性を緩和して紙幅方向の各所における紙の引裂強度の均一化を図る。例えば、湿紙先端領域の紙厚として坪量で70g/m(乾紙時)を確保して転移に耐えうる最低限の引烈強度、例えば600mN(乾紙時)を実現する。
【0047】
このことで、湿紙12が破断を伴うことなく抄紙ワイヤー43から吸水ベルト47へスムーズに転移し、転移後の湿紙12の先端縁が紙幅方向で揃った直線状の形状となり、乾燥部14で乾燥した後の乾紙61の先端縁を紙幅方向に沿ってスクレーパ111で一様に剥離させることができ、紙詰まりの原因となる乾紙の先端縁の破断を防止できる。
【0048】
ここで、スクレーパ111により乾燥後の乾紙61を第1搬送ベルト51から剥離させる際に、乾燥前の湿紙12の湿紙先端領域の紙厚が湿紙本領域と同じである場合には、第1搬送ベルト51と乾紙61が密着しているために剥離ミスを起こすことがある。しかしながら、湿紙先端領域の紙厚を厚くして乾紙61の先端の紙厚を厚くすることにより、スクレーパ111で乾紙61を剥離させる際の乾紙61の剥離性が向上する。例えば、抄紙ワイヤー初期移動速度を抄紙ワイヤー本移動速度の90%以下に設定し、好ましくは70%以下(速度0を含む)に設定する。この設定によれば、湿紙本領域の紙厚に対して、湿紙本領域の紙厚が0.10mmの場合には、湿紙先端領域の紙厚が0.11mm以上、好ましくは0.15mm以上となる。
【符号の説明】
【0049】
1 給紙部
2 紙片
3 貯留部
4 古紙
5 給紙装置
6 計量部
7 排出用サイクロン
8 パルプ懸濁液
9 パルパー部
10 貯蔵タンク部
11 脱墨部
12 湿紙
13 抄紙部
14 乾燥部
15 仕上部
16 紙片搬送ダクト
17 送気流
18 送風装置
37 パルパー槽
38 攪拌装置
39 攪拌装置
40 脱墨槽
42 ローラ
43 抄紙ワイヤー
44 ヘッドボックス
46 ローラ
46a、50a ローラ
47 吸水ベルト
48 加熱装置
49 乾燥ローラ
50 ローラ
51 第1搬送ベルト
52 ローラ
53 第2搬送ベルト
61 乾紙
62 再生紙
63 紙受部
60 カッター
100 白水タンク部
101 排水処理タンク部
102 脱墨排水系
103 下水配管
104 抄紙排水系
105、106 白水返送系
107 上水配管
108 給水配管
109 元弁装置
111 スクレーパ
112 スリッター装置
431 抄紙ワイヤー駆動装置
700 制御部
710 CPU
711 パルパー部制御機能部
712 脱墨部制御機能部
713 抄紙部制御機能部
714 仕上部制御機能部
715 排水処理タンク部制御機能部
716 自動運転制御機能部
717 抄紙初期制御機能部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
古紙再生処理系を構成する複数の処理部のうちの一つの処理部をなす抄紙部と、各処理部の運転を制御する制御部を備える古紙再生処理装置において、
抄紙部は、パルプ懸濁液から湿紙を抄紙する抄紙ワイヤー部と、抄紙ワイヤー部にパルプ懸濁液を供給するヘッドボックス部を有し、
制御部は、抄紙部を制御して、抄紙初期領域となる湿紙先端領域の紙厚を、湿紙先端領域に続く湿紙本領域に設定する抄紙本設定厚よりも厚い抄紙初期設定厚で抄紙する抄紙初期制御機能部を有することを特徴とする古紙再生処理装置。
【請求項2】
ヘッドボックス部は、抄紙ワイヤー部の抄紙ワイヤー上にパルプ懸濁液を注ぐヘッドボックスと、ヘッドボックスにパルプ懸濁液を供給するパルプ懸濁液供給装置を有し、制御部の抄紙初期制御機能部は、抄紙開始から所定時間にわたって抄紙初期領域を抄紙する間に、抄紙初期設定厚に応じて供給するパルプ懸濁液の供給量を、抄紙本設定厚に応じて供給するパルプ懸濁液の本供給量よりも多い初期供給量に制御することを特徴とする請求項1に記載の古紙再生処理装置。
【請求項3】
抄紙ワイヤー部は、ヘッドボックス部から注ぐパルプ懸濁液を受ける抄紙ワイヤーと、抄紙ワイヤーを紙搬送方向へ駆動する抄紙ワイヤー駆動装置を有し、制御部の抄紙初期制御機能部は、抄紙開始から所定時間にわたって抄紙初期領域を抄紙する間に、抄紙初期設定厚に応じて駆動する抄紙ワイヤーの移動速度を、抄紙本設定厚に応じて駆動する抄紙ワイヤー本移動速度よりも遅い抄紙ワイヤー初期移動速度に制御することを特徴とする請求項1または2に記載の古紙再生処理装置。
【請求項4】
抄紙ワイヤー部は、ヘッドボックス部から注ぐパルプ懸濁液を受ける抄紙ワイヤーと、抄紙ワイヤーを紙搬送方向へ駆動する抄紙ワイヤー駆動装置を有し、制御部の抄紙初期制御機能部は、抄紙開始から所定時間にわたって抄紙ワイヤーの駆動を停止して抄紙初期領域を抄紙初期設定厚に抄紙することを特徴とする請求項1または2に記載の古紙再生処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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