説明

古紙再生装置のパルプ濃度調整方法、古紙再生装置のパルプ濃度調整装置および古紙再生装置

【課題】小規模店舗や一般家庭などの室内にも設置可能で什器サイズの古紙再生装置を実現するパルプ濃度調整技術を提供する。
【解決手段】パルプ製造部と抄紙部を備える古紙再生装置において、上記パルプ製造部における古紙パルプの叩解濃度を調整する叩解濃度調整部3Aと、上記抄紙部における古紙パルプの抄紙濃度を調整する抄紙濃度調整部3Bとを備え、叩解濃度調整部3Aにより調整される叩解濃度は、上記パルプ製造部による叩解が可能な高濃度に設定されるとともに、抄紙濃度調整部3Bにより調整される抄紙濃度は、上記抄紙部による抄紙が可能な低濃度に設定される。これにより、2段階での古紙パルプの濃度調整が可能となり、什器サイズの古紙再生装置という小さな作業空間を有効に利用した濃度調整が可能となり、運転効率の良い古紙再生を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は古紙再生装置のパルプ濃度調整方法、古紙再生装置のパルプ濃度調整装置および古紙再生装置に関し、さらに詳細には、古紙が発生する場所に配置されて、発生する古紙を廃棄処分することなく、その場で再利用可能な紙に再生処理する什器サイズの小型古紙再生装置におけるパルプ濃度調整技術に関する。
【背景技術】
【0002】
官公庁や一般企業等の各種事業所の日常業務はもちろんのこと、一般家庭の日常生活においても、使用済みや不要となった各種書類いわゆる古紙が発生している。これらの古紙は、ゴミとして廃棄されたり、焼却されたりして、廃棄処分されることになる。
【0003】
一方、限りある地球資源の有効利用という機運の世界的な高まりのなかで、近時、廃棄処分されてきた古紙を、廃棄処分することなく再生利用するための技術が種々開発されている。
【0004】
これらの古紙再生技術は、ほとんどが製紙業界において採用実施されており、その古紙再生設備には、通常の製紙設備同様、再生紙の高速大量生産と高品質化を目的として、広大な敷地、莫大な投資、および紙抄きに使われる大量の水や薬品などが必要とされる。
【0005】
また、古紙再生にあっては多くの人手による古紙回収作業が必要であり、しかも、この古紙回収には、多人数による異物混入、古紙再生紙への知識不足による分別不良、忌避品の除去不足などの問題があり、せっかく古紙を回収しても、これらの古紙を100%再生紙として再生するには、専門業者による再度の選別や洗浄等の作業を余儀なくされている。さらに、極秘文書などの古紙は、機密上の問題から古紙回収には簡単に出されることはなく、焼却処分されてしまうため、リサイクル化が進んでいない。
【0006】
これらの古紙回収の問題を解決するには、古紙発生元において自前で再生利用することができるような技術の開発が有効であり、この観点から、本出願人は例えば特許文献1に記載されるような古紙再生装置を既に開発し提案している。
【0007】
この古紙再生装置は、古紙再生工場等の大規模な古紙再生技術を、小規模店舗や一般家庭などの室内にも設置可能な装置技術として実現したもので、什器サイズの装置ケース内に、古紙を離解し叩解して古紙パルプを製造するパルプ製造部と、このパルプ製造部で製造された古紙パルプの濃度を調整するパルプ濃度調整部と、上記パルプ製造部で製造された古紙パルプを抄紙して再生紙を製造する抄紙部と、これらパルプ製造部、パルプ濃度調整部および抄紙部を連動して駆動制御する制御部を備えてなる。
【0008】
そして、古紙は、上記パルプ製造部により離解・叩解されてパルプ化された後、上記パルプ濃度調整部により所望の濃度の古紙パルプとなり、その後上記抄紙部で抄紙されて再生紙となる。この場合、上記パルプ化の段階で、古紙は繊維レベルまで分解されて、そこに記載された文字や線図は完全に分解消滅してしまい、復元不可能となり、これら文字や線図から構成される機密情報や個人情報の漏洩・流出を確実に防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−308837号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明はかかる従来の問題点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、特に、上記古紙再生装置におけるパルプ濃度調整部の構成技術をさらに改良することにより、大きな事業所等だけでなく、小規模店舗や一般家庭などの室内にも設置可能であるとともに、環境に優しくかつランニングコストも低く抑えることができ、しかも、機密情報や個人情報など各種情報の漏洩・流出を確実に防止できて、高い機密性を保持することができる什器サイズの古紙再生装置を実現するパルプ濃度調整技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的を達成するため、本発明の古紙再生装置のパルプ濃度調整方法は、什器サイズの装置ケース内に、古紙を離解し叩解して古紙パルプを製造するパルプ製造部と、このパルプ製造部で製造された古紙パルプを抄紙して再生紙を製造する抄紙部を備えてなる古紙再生装置において、当該装置に投入される古紙と水との混合割合を調整して、上記抄紙部に供給される古紙パルプの濃度を調整するものであって、上記パルプ製造部における古紙パルプの叩解濃度を調整する叩解濃度調整工程と、上記抄紙部における古紙パルプの抄紙濃度を調整する抄紙濃度調整工程とからなり、上記叩解濃度調整工程において調整される上記叩解濃度は、上記パルプ製造部による叩解が可能な高濃度に設定されるとともに、上記抄紙濃度調整工程において調整される上記抄紙濃度は、上記抄紙部による抄紙が可能な低濃度に設定されることを特徴とする。
【0012】
ここに、「高濃度」および「低濃度」とは、異なる2つの濃度における相対的な濃度の高低を示す意味で使用されており、これら比較する2つの濃度について、相対的に高い濃度を高濃度といい、相対的に低い濃度を低濃度という(以下、明細書および特許請求の範囲において同様とする。)。
【0013】
好適な実施態様として、以下の構成が採用される。
(1)上記叩解濃度調整工程において調整される上記叩解濃度は、上記パルプ製造部の叩解能力に許容される最大濃度になるように設定される。
【0014】
(2)上記抄紙濃度調整工程において調整される上記抄紙濃度は、再生すべき再生紙の仕上紙質に対応した適正濃度に設定される。
【0015】
(3)上記抄紙濃度調整工程は、上記パルプ製造部で製造された古紙パルプの全量から所定の少分量だけ区分し、この区分した所定の少分量の古紙パルプに対して濃度調整用の水を所定量加水することにより、所定濃度のパルプ懸濁液を区分形式で混合調製する。
【0016】
(4)上記抄紙濃度調整工程において、古紙パルプの濃度を区分形式で調整する濃度調整インターバルは、少なくとも、後工程の抄紙部への濃度調整済みのパルプ懸濁液の供給能力がこの抄紙部における抄紙処理能力を上回るように設定される。
【0017】
(5)上記叩解濃度調整工程および抄紙濃度調整工程における濃度調整は、装置に投入される古紙と水との混合割合を重量測定により行う重量式調整である。
【0018】
また、本発明の古紙再生装置のパルプ濃度調整装置は、什器サイズの装置ケース内に、古紙を離解し叩解して古紙パルプを製造するパルプ製造部と、このパルプ製造部で製造された古紙パルプを抄紙して再生紙を製造する抄紙部を備えてなる古紙再生装置において、当該装置に投入される古紙と水との混合割合を調整して、上記抄紙部に供給される古紙パルプの濃度を調整するものであって、上記パルプ製造部における古紙パルプの叩解濃度を調整する叩解濃度調整手段と、上記抄紙部における古紙パルプの抄紙濃度調整する抄紙濃度調整手段と、これら叩解濃度調整手段および抄紙濃度調整手段を連動して駆動制御するパルプ濃度制御手段とを備えてなり、上記叩解濃度調整手段により調整される上記叩解濃度は、叩解手段による叩解が可能な高濃度に設定されるとともに、上記抄紙濃度調整手段により調整される上記抄紙濃度は、上記抄紙部による抄紙が可能な低濃度に設定されることを特徴とする。
【0019】
好適な実施態様として、以下の構成が採用される。
(1)上記叩解濃度調整手段により調整される上記叩解濃度は、上記叩解手段の叩解能力に許容される最大濃度になるように設定される。
【0020】
(2)上記抄紙濃度調整手段により調整される上記抄紙濃度は、再生すべき再生紙の仕上紙質に対応した適正濃度に設定される。
【0021】
(3)上記抄紙濃度調整手段は、上記パルプ製造部で製造された古紙パルプの全量から所定の少分量だけ区分抽出する区分抽出手段と、この区分抽出手段により区分抽出された所定の少分量の古紙パルプに対して濃度調整用の水を所定量だけ加水することにより、所定濃度のパルプ懸濁液を調製する懸濁液調製手段と、これら区分抽出手段および懸濁液調製手段を連動して駆動制御する抄紙濃度制御手段とを備える。
【0022】
(4)上記抄紙濃度制御手段は、少なくとも、後工程の抄紙部への濃度調整済みのパルプ懸濁液の供給能力がこの抄紙部における抄紙処理能力を上回るように、上記区分抽出手段および懸濁液調製手段を駆動制御する構成とされる。
【0023】
(5)上記抄紙濃度調整手段は、所定濃度に調製されたパルプ懸濁液を貯留するパルプ供給槽を備え、このパルプ供給槽は、パルプ供給槽内に待機貯留されるパルプ懸濁液を攪拌する攪拌手段を備える。
【0024】
(6)上記叩解濃度調整手段および抄紙濃度調整手段は、装置に投入される古紙と水との混合割合を重量測定により調整して、上記抄紙部に供給される古紙パルプの濃度を調整する重量式とされる。
【0025】
また、本発明の古紙再生装置は、什器サイズの装置ケース内に、古紙を離解し叩解して古紙パルプを製造するパルプ製造部と、このパルプ製造部で製造された古紙パルプを抄紙して再生紙を製造する抄紙部と、この抄紙部に供給される古紙パルプの濃度を調整するパルプ濃度調整部と、これらパルプ製造部、抄紙部およびパルプ濃度調整部を連動して駆動制御する装置制御部を備えてなり、上記パルプ濃度調整部は、上述したパルプ製造装置から構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、古紙再生装置に投入される古紙と水との混合割合を調整して、抄紙部に供給される古紙パルプの濃度を調整する古紙パルプ濃度調整工程が、上記パルプ製造部における古紙パルプの叩解濃度を調整する叩解濃度調整工程と、上記抄紙部における古紙パルプの抄紙濃度を調整する抄紙濃度調整工程とからなるから、大きな事業所等だけでなく、小規模店舗や一般家庭などの室内にも設置可能であるとともに、環境に優しくかつランニングコストも低く抑えることができ、しかも、機密情報や個人情報など各種情報の漏洩・流出を確実に防止できて、高い機密性を保持することができる什器サイズの古紙再生装置を実現することができる。
【0027】
すなわち、上記叩解濃度調整工程において調整される上記叩解濃度が、上記パルプ製造部による叩解が可能な高濃度、例えば、上記パルプ製造部の叩解能力に許容される最大濃度になるように設定されるとともに、上記抄紙濃度調整工程において調整される上記抄紙濃度が、上記抄紙部による抄紙が可能な低濃度、例えば、再生すべき再生紙の仕上紙質に対応した適正濃度に設定されることにより、2段階での古紙パルプの濃度調整が可能となって、什器サイズの古紙再生装置という小さな作業空間を有効に利用した濃度調整が可能となり、運転効率の良い古紙再生を行うことができる。
【0028】
換言すれば、比較的濃度が高くて可能な上記パルプ製造部における叩解工程を、上記叩解濃度調整手段により高い濃度(叩解濃度)に調整した古紙パルプで効率良く行った後、この古紙パルプを、上記抄紙濃度調整手段により再生紙の仕上紙質に対応した低い濃度(抄紙濃度)に調整して、続く抄紙部へ送ることにより、一連の古紙再生工程を狭い作業空間で効率良く行うことができる。
【0029】
また、このような小型で運転効率の良い古紙再生装置の運転には大きな動力を必要としないため、ランニングコストも低く抑えることができ、特に、小規模店舗や一般家庭などの室内でも実施可能な什器サイズの古紙再生装置として最適である。
【0030】
これにより、大きな事業所等だけでなく、小規模店舗や一般家庭などの室内にも設置可能であるとともに、機密情報や個人情報など各種情報の漏洩・流出を確実に防止できて、高い機密性を保持することができる什器サイズの古紙再生装置を提供することができる。
【0031】
また、パルプ濃度調整が古紙と水との混合割合を重量測定により古紙パルプの濃度を調整する重量式で行われることにより、不規則に投入される古紙量に対して、柔軟な濃度調整が可能となる。
【0032】
さらに、上記抄紙濃度調整工程は、上記パルプ製造部で製造された古紙パルプの全量から所定の少分量だけ区分し、この区分した所定の少分量の古紙パルプに対して濃度調整用の水を所定量加水することにより、古紙パルプの濃度調整を全量一括式ではなく、区分形式つまり小出し形式で行うようにしたから、処理能力の可及的向上を実現しつつ、使用水量の大幅な減少化と装置構成の小型化を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明に係る一実施形態である古紙再生装置の全体概略構成を示す正面断面図である。
【図2】同じく同古紙再生装置の全体概略構成を示す側面断面図である。
【図3】同古紙再生装置の叩解部の主要構成を一部断面で示す拡大正面図である。
【図4】同叩解部の主要構成部である摩砕機の内部構成を示す拡大正面図である。
【図5】同叩解部の古紙パルプ循環経路構成を示す回路図である。
【図6】同古紙再生装置のパルプ濃度調整部の構成を示すブロック図である。
【図7】同古紙再生装置の制御構成を示すブロック線図である。
【図8】同古紙再生装置の外観構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、図面全体にわたって同一の符号は同一の構成部材または要素を示している。
【0035】
本発明に係る古紙再生装置が図1〜図8に示されており、この古紙再生装置1は、具体的には古紙が発生する場所に配置されて、発生する古紙UPを廃棄処分することなく、その場で再利用可能な紙に再生処理する装置であって、古紙UPとしては、官公庁・一般企業の機密文書や一般家庭の私的文書等で、使用済みや不要となった書類が該当する。
【0036】
古紙再生装置1は、図8に示すような什器サイズ、つまり、事務所内に配置使用される書棚、ロッカー、事務机、複写機、パーソナルコンピュータなどの什器類と同等な小型形状寸法を備えるもので、図1に示すように、パルプ製造部2、パルプ濃度調整部(パルプ濃度調整装置)3、抄紙部4および装置制御部5を主要部として構成され、これら装置構成部2〜5が装置ケース6内に装置収容されてなるコンパクト設計とされている。
【0037】
この装置ケース6は、上述したように什器サイズのもので、具体的な形状寸法は目的や用途に応じて適宜設計される。図示の実施形態の装置ケース6は、事務所等に配置使用される複写機程度の形状寸法を有するほぼ直方体形状の箱体とされ、その外周部が化粧用ケースカバー6aで被覆されている。また、装置ケース6の底部には移動手段としてキャスター96、96、…が設けられて、設置床面上を方向自在に移動可能とされている。ケース6の天板部には、古紙UPを投入するための投入口7が開閉可能に設けられるとともに、側部には、再生紙RP、RP、…を受け取るための再生紙受取トレー135が取外し可能に設けられている。この再生紙受取トレー135には、装置ケース6の排出口136が臨んで設けられており、この排出口136から排出される再生紙RP、RP、…が順次積層状に受け取られる。
【0038】
パルプ製造部2は、古紙UPを離解し叩解して古紙パルプを製造する工程部位で、古紙UPを攪拌破砕して離解する離解部10と、この離解部10で離解された古紙UPを叩解する叩解部11とからなる。
【0039】
離解部10は、古紙UPを攪拌破砕して離解する工程部位で、離解槽15、攪拌装置16および給水装置17を主要部として構成されている。
【0040】
離解槽15は、図2に示すように、その天井壁に、古紙UPを投入供給する上記投入口7が設けられるとともに、その底部壁に、離解された古紙パルプUPPを下流側へ排出する排出口9が設けられている。離解槽15の内容積は、一度に攪拌処理すべき古紙UPの枚数に応じて設定される。図示の実施形態においては、約98リットルの水を加えて、A4判のPPC(plain paper copier)古紙UPを500枚程度(約2000g)一度に攪拌処理(バッチ処理)できる容積を有する離解槽15とされている。この場合の離解される古紙パルプUPPの濃度は2%程度となる。なお、この濃度調整は、給水装置17からの給水により行われ、この給水装置17は、後述するパルプ濃度調整部(パルプ濃度調整装置)3の一部をなす。
【0041】
上記投入口7は、装置ケース6のケースカバー6aの外部に対して開閉可能な構造を有する。また、上記排出口9は、開閉弁19により開閉可能とされて、後述する古紙パルプ循環経路39に連通可能とされている。なお、上記排出口9の部位には、古紙UP、UP、…を綴じていたクリップ、ステープラー針等の綴じ具のなど、次工程の叩解工程にとって障害となる各種禁忌品を除去するための禁忌品フィルタ20が設けられている。
【0042】
上記開閉弁19は、具体的には駆動モータ25によりクランク機構26がクランク動作することで開閉動作される。上記駆動モータ25としては、具体的には電動モータが使用され、この駆動モータ25が装置制御部5に電気的に接続されている。
【0043】
攪拌装置16は上記離解槽15の内部に設けられており、攪拌インペラ30および駆動モータ31を備えてなる。
【0044】
上記攪拌インペラ30は、その回転軸30aが離解槽15の底面中央位置に起立状に回転支持されて、水平回転可能に設けられるとともに、上記回転軸30aの下端が、伝動プーリ32a、伝動ベルト32bおよび伝動プーリ32cからなる伝動手段32を介して、駆動モータ31の回転軸31aに駆動連結されている。
【0045】
このように攪拌インペラ30が正逆回転されることにより、古紙UPがA4判の大きさのままで攪拌される場合でも、攪拌インペラ30の正回転後の逆回転による水の噴流作用により、古紙UPが有効に分散させられる結果、攪拌インペラ30に絡みつくのが有効に防止される。
【0046】
攪拌インペラ30の羽根形状は、正回転と逆回転とにおいて、その攪拌力(拡散効果)が異なるように設計されており、これにより、古紙UP、UP、…の均一な離解・叩解が実現する。
【0047】
なお、攪拌インペラ30の正回転と逆回転の切り替えタイミング、および攪拌時間などの運転条件は、予め行なった実験データに基づいて、所望の古紙UP、UP、…の離解・叩解効果が得られるように設定される。
【0048】
給水装置17は上記離解槽15に水を供給するもので、後述するように、パルプ濃度調整部(パルプ濃度調整装置)3の叩解濃度調整部(叩解濃度調整手段)3Aを構成する。
【0049】
図示の実施形態の給水装置17は、図1に示すように、白水回収槽35、叩解濃度調整用の給水ポンプ36および抄紙濃度調整用の給水ポンプ37を備えてなる。白水回収槽35は、後述するように、抄紙部4において濾過脱水される白水W(抄紙する際に抄き網により濾過された極低濃度のパルプ水)を回収するもので、この白水回収槽35に回収された白水Wが、上記給水ポンプ36により上記離解槽15に、また上記給水ポンプ37により後述する濃度調整槽80にそれぞれ供給される。
【0050】
また、これに関連して、離解槽15の底部には、重量センサ38が設けられて、離解槽15内で一度にバッチ処理される古紙UP、UP、…と水の量を計測制御する構成とされ、上記重量センサ38は装置制御部5に電気的に接続されている。
【0051】
図示の実施形態の重量センサ38はロードセルからなり、離解槽15の重量と、この離解槽15内に投入供給された古紙UP、UP、…および水の重量との合計重量を感知計測する構成とされている。
【0052】
離解部10における具体的な制御構成は、まず、作業者により投入口7が開放されて、離解槽15に古紙UP、UP、…が投入されると、その重量が上記重量センサ38により感知計測されて、所定重量(枚数)になった時点で作業者に音および/または表示により告知される。この表示に応じて作業者が投入口7を閉止すると、上記給水装置17が駆動して、給水ポンプ36により、白水回収槽35の水Wが上記投入された古紙UP、UP、…の重量(枚数)に対応した量だけ離解槽15に供給される。
【0053】
また、作業者が、上記投入口7から離解槽15に任意の量(上記所定重量(枚数)より少ない量)の古紙UP、UP、…を投入した後に投入口7を閉止した場合も、その重量が上記重量センサ38により感知計測されるとともに、上記給水装置17が駆動して、給水ポンプ36により、上記計測結果に応じた量の水Wが白水回収槽35から離解槽15に供給される。
【0054】
図示の実施形態においては、上述したように、最大500枚程度(約2000g)のA4判のPPC古紙UPが離解槽15内に投入されると、その時点で作業者に音および/または表示により告知され、上記投入口7の閉止動作により、約98リットルの水が給水装置17により加えられて、あるいは任意の量(上記所定重量(枚数)より少ない量)の古紙UP、UP、…を投入した場合にも、この古紙投入量に対応した量の水が給水装置17により加えられて、離解される古紙パルプUPPの濃度が2%程度となるように制御調整される。
【0055】
しかして、攪拌装置16において、装置ケース6の投入開口つまり投入口7から離解槽15内に投入された古紙UP、UP、…は、駆動モータ31による攪拌インペラ30の正転・逆転動作により、給水装置17から供給された水の中で所定時間(図示の実施形態においては10分〜20分間)だけ攪拌混合されて、これにより、古紙UP、UP、…は離解・叩解されて古紙パルプUPPとなる。
【0056】
なお、上記離解槽15の排出口9は、離解部10の運転時には上記開閉弁19により閉止されて、離解槽15からの古紙UPや古紙パルプUPPの古紙パルプ循環経路39への流入が阻止される一方、後述する叩解部11の運転時には、開閉弁19により投入口7が開口されて、離解槽15からの古紙パルプUPPの古紙パルプ循環経路39への流入および循環回流が許容される。
【0057】
叩解部11は、上記離解部10で離解された古紙UPを叩解する工程部位で、具体的には、上記離解部10で離解された古紙UPを加圧叩解するとともに、古紙UP上の文字、図形等を形成するインキ類(各種印刷技術により古紙UP上に文字、図形等を形成した印刷インキ、あるいは、鉛筆、ボールペンまたは万年筆等の筆記具により古紙UP上に文字、図形等を形成したインキ等が含まれる)を磨砕微細化(マイクロファイバ化)するものである。
【0058】
この叩解部11は、少なくとも一台(図示の実施形態においては一台)の叩解手段40を備えてなる。
【0059】
叩解手段40は、図3および図4に示すように、相対的に回転駆動される一対の叩解円盤41、42を主要部として備えてなる摩砕機の形態とされ、上記一対の叩解円盤41、42は、叩解作用面41a、42aを微小な叩解隙間Gをもって同心状に対向配置されている。
【0060】
また、上記摩砕機40の叩解作用面41a、42aの叩解隙間Gは、後述するように、叩解工程の初期用の摩砕機40から終期用の摩砕機40に向けて徐々に狭くなるように設定されている。
【0061】
本実施形態の叩解部11においては、図5に示すように、一台の摩砕機40が配されてなる古紙パルプ循環経路39が形成され、これにより、古紙パルプUPが上記摩砕機40を介して所定時間循環されながら叩解処理される循環式とされている。
【0062】
この古紙パルプ循環経路39による叩解工程の実施により、什器サイズの装置ケース6内という小さく狭い工程スペースにもかかわらず、基本的に長さに制限のない無限長の古紙パルプ叩解工程経路が形成されることになり、大規模装置における叩解工程に匹敵する叩解工程空間を確保することが可能となり、目的に応じて最適な叩解効果が得られる。
【0063】
また、一台の摩砕機40が叩解工程の全工程を通じて叩解処理を行うことに関連して、この一台の摩砕機40が叩解工程の初期用の摩砕機から終期用の摩砕機までの複数台の摩砕機としての機能を兼備する。具体的には、この摩砕機40の叩解作用面41a、42aの叩解隙間Gが、叩解工程の初期から終期に向けて徐々に狭くなるように制御調整される構成とされている。
【0064】
図示の実施形態の摩砕機40は、装置ケース6を構成する装置機体95に、上記離解部10の離解槽15に隣接して設けられており、図3に示すように、離解部10の離解槽15に連通可能な叩解槽45と、この叩解槽45内に相対的に回転可能に設けられた上記一対の叩解円盤41、42と、これら一対の叩解円盤41、42を相対的に回転動作させる回転駆動源46と、一対の叩解円盤41、42の叩解隙間Gを調整する隙間調整手段47を備える。
【0065】
叩解槽45は、上記一対の叩解円盤41、42を収納可能な密閉型円筒形状とされ、上流側からの古紙パルプUPPを供給する供給口45aおよび叩解された古紙パルプUPPを下流側へ排出する排出口45bを有する。
【0066】
具体的には、上記供給口45aは叩解槽45の底部中央部に上下方向へ向けて開設されるとともに、上記排出口45bは叩解槽45の円筒側部に水平方向へ向けて開設されている。これら供給口45aおよび排出口45bは、図2および図5に示すように、それぞれ循環用配管39a、39bを介して、上記離解部10の離解槽15に連通可能に接続されるとともに、上記排出口45bは、さらに排出用配管49を介して古紙パルプ回収槽50に連通可能とされている。
【0067】
51は方向切替弁を示しており、この方向切替弁51の切替動作により、排出口45bから排出される古紙パルプUPPは、選択的に、上記離解槽15へ還流され、または古紙パルプ回収槽50へ回収される。方向切替弁51は、具体的には電磁開閉弁からなり、上記装置制御部5に電気的に接続されている。
【0068】
一対の叩解円盤41、42は、その一方が回転方向へ固定的に設けられた固定側叩解円盤とされるとともに、他方が回転可能な回転側叩解円盤とされ、図示の実施形態においては、上側の叩解円盤41が回転側とされるとともに、下側の叩解円盤42が固定側とされてなる。
【0069】
この下側の固定側叩解円盤42は、上記叩解槽45の底部内側面にネジ式の中空固定部材52により固定的に設けられており、この固定側叩解円盤42に対して、上側の回転側叩解円盤41が微小な叩解隙間Gをもって同心状にかつ回転可能に対向配置されている。
【0070】
この回転側叩解円盤41は、装置機体95に取付け固定された装置基台53に回転可能にかつ軸線方向へ移動可能に軸支された回転主軸54を介して、駆動モータ46に駆動連結されている。
【0071】
上記回転主軸54は、後述する隙間調整手段47の昇降部材55に、軸受56、56により回転可能に軸支されており、その先端部54aに、上記回転側叩解円盤41が取付けナット部材57により同心状にかつ一体的に取り付けられるとともに、その基端部54bが、軸継手58により上記駆動源である駆動モータ46の回転軸46aに回転方向へ一体的にかつ軸線方向へ相対的に移動可能に駆動連結されている。
【0072】
回転駆動源である上記駆動源である駆動モータ46は、上記一対の叩解円盤41、42を相対的に回転動作させるもので、具体的には電動モータが使用され、この駆動源である駆動モータ46が装置制御部5に電気的に接続されている。
【0073】
なお、上記回転主軸54の先端部54aは、上記叩解槽45の天部中央の開口59を介して叩解槽45の内部に臨んでいるところ、これら開口59と回転主軸54との間隙は、シールされることなく叩解槽45の内外が連通されて、シール構造の簡素化がなされている。この部位のシール性は、叩解槽45において、古紙パルプUPPの供給口45aからの供給量よりも、排出口45bからの排出量を多くなるように制御調整することで保持される。
【0074】
上記微小な叩解隙間Gを形成する両叩解円盤41、42の対向面41a、42a同士は協働して叩解作用面を形成する。これら対向する叩解作用面41a、42aは、多数の砥粒が結合材により結合されてなる砥石面の形態とされ、また、両叩解作用面41a、42aは、図4に示すように、その径寸法が互いの対向方向へ連続的に大きくなるテーパ面形状とされて、最外周縁部が互いに平行する環状平坦面41b、42bとされ、これら環状平坦面41b、42bが上記叩解隙間Gを形成している。
【0075】
換言すれば、上記一対の叩解円盤41、42において、固定側叩解円盤42の叩解作用面42aの中心部位に、上記叩解槽の供給口45aに同軸状に連通する入口60が形成されるとともに、上記一対の叩解円盤41、42の叩解作用面41a、42aの外周縁部に形成される二つの環状平坦面41b、42bが、上記叩解槽45の排出口45bに連通しかつ上記叩解隙間Gを有する出口61を形成している。
【0076】
また、回転側叩解円盤41の外周には複数のブレード62、62、…が周方向へ所定間隔をもって設けられており、これらブレード62、62、…は、回転側叩解円盤41の回転により、上記出口61から排出される古紙パルプUPPを、遠心力で上記叩解槽45の排出口45bへ向けて押出すポンプ作用をなす。
【0077】
しかして、駆動源である駆動モータ46により、回転側叩解円盤41が固定側叩解円盤42に対して回転駆動された状態において、上記離解部10の離解槽15から叩解槽45の供給口45a、入口60を介して叩解空間Bに供給される古紙パルプUPPは、上記入口60から叩解空間Bに流入して、この叩解空間Bを通過しながら、相対的に回転する叩解作用面41a、42aによる加圧叩解作用を受けるとともに、古紙UP上の文字、図形等を形成するインキ類が磨砕微細化され、この後、上記出口61から叩解槽45の排出口45bを介して排出される。
【0078】
この出口61から排出される際、古紙パルプUPPは、上記叩解隙間Gを有する出口61の部位でさらに加圧叩解作用を受けて、この叩解隙間Gにより規定される所定のミクロンサイズまで微細化(マイクロファイバ化)されることとなる。
【0079】
この点に関して、本実施形態においては、前述したように、古紙パルプ循環経路39に一台の摩砕機40が配されてなる循環式叩解工程(図5参照)が採用されることに関連して、つまり、上記一台の摩砕機40が叩解工程の初期用の摩砕機から終期用の摩砕機までの複数台の摩砕機としての機能を兼備することに関連して、この摩砕機40の叩解隙間Gが、隙間調整手段47により、叩解工程の初期から終期に向けて徐々に狭くなるように制御調整される構成とされている。
【0080】
隙間調整手段47は、具体的には図3に示すように、上記一対の叩解円盤41、42を回転軸線方向へ相対的に移動させて、これら叩解円盤41、42の叩解隙間Gを制御調整する構成とされ、回転側叩解円盤41を回転軸線方向つまり回転主軸54の軸線方向へ移動させる移動手段65と、この移動手段65を駆動させる駆動源66とを主要部として構成されている。
【0081】
移動手段65は、上述した昇降部材55と、この昇降部材55を回転動作させる回転機構67を備えてなる。昇降部材55はほぼ円筒状のもので、図3に示すように、装置基台53に上記一対の叩解円盤41、42と同軸状にかつ上下方向へ螺進退可能に軸支されるとともに、その内径部に、上記軸受56、56を介して上記回転主軸54が回転可能に軸支されている。また、昇降部材55の上端部には、回転機構67の大歯車67aが一体的に取り付けられるとともに、この大歯車56aに歯合する小歯車67bが駆動源である駆動モータ66の回転軸66aに取付け固定されている。
【0082】
上記駆動モータ66は具体的には電動モータからなり、この駆動モータ66が上記装置制御部5に電気的に接続されている。
【0083】
そして、この駆動モータ66の回転により、回転機構67を介して、昇降部材55が上記回転主軸54と共に装置基台53に対して昇降動作し、これにより、回転主軸54と一体の回転側叩解円盤41が固定側叩解円盤42に対して上下方向つまり回転軸線方向へ移動して、両叩解円盤41、42の叩解隙間Gが制御調整される。
【0084】
この目的のため、上記回転側叩解円盤41の昇降位置を検出する位置検出センサ(図示省略)が設けられ、この位置検出センサの検出結果により上記駆動モータ66が駆動制御される。上記位置検出センサとしては、駆動モータ66の回転数を検出するエンコーダ、回転機構67の大歯車67aまたは小歯車67bの回転位置を検出する近接センサ、回転側叩解円盤41の昇降位置を直接検出する近接センサ等が使用され、図示の実施形態においては、回転機構67の大歯車67aの回転位置を検出する近接センサが採用されている。この位置検出センサは装置制御部5に電気的に接続されている。
【0085】
隙間調整手段47による叩解円盤41、42の叩解隙間Gの制御調整は、図5に示される古紙パルプ循環経路39における循環式叩解工程において、循環手段である循環ポンプ69と相互に連動して行われる。
【0086】
すなわち、図5に示すように、上記古紙パルプ循環経路39は、循環用配管39aおよび39bにより、離解部10の離解槽15、循環ポンプ69、一台の摩砕機40を介して環状に形成されてなり、また、循環用配管39bの途中箇所には、上記方向切替弁51を介して、古紙パルプ回収槽50に連通する排出用配管49が分岐接続されている。
【0087】
そして、離解部10により離解処理された古紙パルプUPPは、上記循環ポンプ69により古紙パルプ循環経路39で循環されながら、上記摩砕機40による叩解工程が実行され、この際、摩砕機40の叩解作用面41a、42aの叩解隙間Gは、隙間調整手段47により、叩解工程の初期から終期に向けて徐々に狭くなるように構成されている。
【0088】
隙間調整手段47による摩砕機40の叩解隙間Gの制御調整方法としては、(i)摩砕機40の叩解隙間Gが、叩解工程の初期から終期に向けて徐々に段階的に狭くなるよう制御される構成、(ii)摩砕機40の叩解隙間Gが、叩解工程の初期から終期に向けて徐々に連続的に狭くなるよう制御される構成などが採用可能であり、図示の実施形態においては、前者が採用されている。
【0089】
また、摩砕機40の叩解隙間Gの段階的に狭くなるタイミングおよび大きさは、古紙パルプUPPの濃度、循環ポンプ69による古紙パルプUPPの循環流量および時間等との関係を考慮して、試験的に得られた条件に従って、叩解される古紙パルプUPPが叩解隙間Gに詰まらないように最適値に設定される。
【0090】
図示の実施形態においては以下のように設定されている。
(a)叩解される古紙パルプUPPの濃度:2%程度
(b)摩砕機40の叩解隙間Gの大きさ:以下のタイミングで4段階
第1段階:叩解隙間Gが1mmで、5分間循環される。
第2段階:叩解隙間Gが0.4mmで、25分間循環される。
第3段階:叩解隙間Gが0.12mmで、45分間循環される。
第4段階:叩解隙間Gが0.05mmで叩解された後に古紙パルプ回収槽50へ排出回収される。
【0091】
また、上記古紙パルプ循環経路39に、上記離解部10の離解槽15が含まれていることに関連して、上記叩解工程において、上記離解部10の攪拌装置16が駆動制御されて、離解部10が叩解部11と同時に駆動する構成とされている。
【0092】
すなわち、循環式叩解工程においては、離解槽15から古紙パルプ循環経路39に古紙パルプUPPが流出する一方、叩解機40による叩解を経た古紙パルプUPPが離解槽15に流入することになり、離解槽15内では叩解度の異なる古紙パルプUPPが混在するため、攪拌装置16による攪拌作用によって、離解槽15内の古紙パルプUPPの叩解度が均一化されて、叩解処理の促進化が図られる。
【0093】
上記古紙パルプ回収槽50は、叩解部11により所定のサイズまで叩解微細化された古紙パルプUPPを回収する部位で、ここに回収された古紙パルプUPPは、次工程の抄紙工程を行う抄紙部4に送られる前に、パルプ濃度調整部(パルプ濃度調整手段)3によって、再生すべき再生紙RPの仕上紙質に対応した抄紙濃度に混合調整されたパルプ懸濁液PSとされる。
【0094】
上記パルプ濃度調整部3は、装置に投入される古紙UPと水Wとの混合割合を重量測定により調整して、上記抄紙部4に供給される古紙パルプUPPの濃度を調整する重量式のもので、具体的には、図6に示すように、叩解濃度調整部(叩解濃度調整手段)3A、抄紙濃度調整部(抄紙濃度調整手段)3Bおよびパルプ濃度制御部(パルプ濃度制御手段)3Cとを備えてなり、後述するように、上記叩解濃度調整部3Aにより調整される叩解濃度は、パルプ製造部2による叩解が可能な高濃度に設定されるとともに、上記抄紙濃度調整部3Bにより調整される抄紙濃度は、抄紙部4による抄紙が可能な低濃度に設定される。
【0095】
叩解濃度調整部3Aは、パルプ製造部2における古紙パルプUPPの叩解濃度をパルプ製造部2による叩解が可能な高濃度、つまり叩解部11による叩解効率に対応した高濃度に調整する(叩解濃度調整工程)もので、前述したように、給水装置17の叩解濃度調整用の給水ポンプ36と叩解濃度制御部70を主要部として構成されている。
【0096】
この叩解濃度調整部3Aの給水ポンプ36による白水Wの供給量は、例えば、上記攪拌装置16により離解・叩解された古紙パルプUPPの叩解濃度が、パルプ製造部2の叩解能力に許容される最大濃度、つまり、次工程である叩解工程を実行する叩解部11の摩砕機40の叩解能力に許容される最大濃度になるように設定されるのが望ましく、図示の実施形態においては、上記のごとく2%程度の高い叩解濃度になるように設定される。
【0097】
そして、叩解濃度制御部70は、前述したように、重量センサ38からの計測結果に応じて、離解槽15に必要量の水を供給するように上記給水ポンプ36を駆動制御する。この叩解濃度制御部70は、後述するように、装置制御部5の一部を構成している。
【0098】
抄紙濃度調整部3Bは、抄紙部4における古紙パルプUPPの抄紙濃度を抄紙部4による抄紙が可能な低濃度、つまり再生すべき再生紙RPの仕上紙質に対応した適正濃度に調整する(抄紙濃度調整工程)もので、具体的には、上記パルプ製造部2で製造された古紙パルプUPPの濃度を区分形式で調整する構成とされ、区分抽出部(区分抽出手段)75、懸濁液調製部(懸濁液調製手段)76および抄紙濃度制御部(抄紙濃度制御手段)77を主要部として備える。
【0099】
区分抽出部75は、前工程のパルプ製造部2で製造された古紙パルプUPPの全量から所定の少分量だけ区分抽出するもので、古紙パルプ回収槽50の古紙パルプUPPを抽出して濃度調整槽80に送る区分抽出用の古紙パルプ供給ポンプ81を備えてなる。
【0100】
懸濁液調製部76は、上記区分抽出部75により区分抽出された所定の少分量の古紙パルプUPPに対して濃度調整用の水Wを所定量だけ加水することにより、所定濃度つまり再生すべき再生紙RPの仕上紙質に対応した適正濃度のパルプ懸濁液PSを調製するもので、前述の給水装置17の給水ポンプ37を主要部として備える。
【0101】
また、具体的には図示しないが、濃度調整槽80の底部には、前述した離解槽15の場合と同様に、ロードセルからなる重量センサ79が設けられており、濃度調整槽80内に供給される古紙パルプUPPと濃度調整用の水Wの量を計測制御する構成とされ、上記重量センサ87は装置制御部5に電気的に接続されている。
【0102】
抄紙濃度制御部77は、上記区分抽出部75および懸濁液調整部76を連動して制御するもので、装置制御部5の一部を構成しており、以下の抄紙濃度調整工程を実行するように、上記区分抽出部75および懸濁液調整部76のポンプ81、37を連動して制御する。
【0103】
すなわち、まず、上記叩解部11から古紙パルプ回収槽50に回収される古紙パルプUPPの全量(図示の実施形態においては、約2000gの古紙UP+100l(リットル)の水W)から、古紙パルプ供給ポンプ81により、所定分量(図示の実施形態においては1l)の古紙パルプUPPが区分されて、濃度調整槽80へ移送収容される。すると、その重量が上記重量センサ79により感知計測されて、その結果が装置制御部5へ送られる。
【0104】
続いて、この区分された古紙パルプUPPの所定分量に対応して、給水ポンプ37により、白水回収槽35から濃度調整槽80に、希釈用の水Wが所定量(図示の実施形態においては9l(実際は上記重量センサ87の重量計測による))だけ給水される。
【0105】
これにより、上記濃度調整槽80内において、叩解濃度(図示の実施形態においては2%)の古紙パルプUPPが水Wと混合希釈されて、再生すべき再生紙RPの仕上紙質に対応した適正濃度(図示の実施形態においては約0.2%濃度(目標濃度))のパルプ懸濁液PSが混合調製される。
【0106】
なお、この調製されるべきパルプ懸濁液PSの目標濃度は、予め行なった実験データに基づいて、後述する抄紙部4における抄紙能力を考慮して設定され、図示の実施形態の場合は上記のごとく約0.2%濃度に設定されている。
【0107】
また、抄紙濃度調整部3Bによる区分形式の抄紙濃度調整速度は、後述するパルプ懸濁液PSの抄紙部4への供給能力に関係するため、抄紙部4における抄紙処理能力との関係を考慮して設定される(図示の実施形態においては、この区分形式による抄紙濃度調整工程の1工程が約1分間で完了するように設定されている。)。
【0108】
しかして、このように濃度調整槽80で目標濃度の抄紙濃度(0.2%)に調製されたパルプ懸濁液PSは、第1懸濁液供給ポンプ83により濃度調整槽80からパルプ供給槽84へ移送供給されて、次工程の抄紙部4のために待機貯留される。以後、この抄紙濃度調整工程は、古紙パルプ回収槽50の古紙パルプUPPの全量について同様に繰り返し実行される。上記パルプ供給槽84には、パルプ懸濁液PSを抄紙部4の抄紙工程部90へ送るための第2懸濁液供給ポンプ85が設けられている。
【0109】
なお、上記抄紙濃度制御部77は、少なくとも、後工程の抄紙部4への濃度調整済みのパルプ懸濁液PSの供給能力が抄紙部4における抄紙処理能力を上回るように、上記区分抽出部75および懸濁液調製部76を駆動制御する構成とされている。これにより、抄紙部4による連続かつ安定した抄紙工程の実行が保証される。
【0110】
具体的には、抄紙濃度調整部3Bにおける古紙パルプUPPの濃度を区分形式で調整する濃度調整インターバルが、上記パルプ供給槽84内のパルプ懸濁液PSが一定値以下にならない程度のタイミングをもって設定される。
【0111】
図示の実施形態を例にとれば、抄紙部4が、10リットルのパルプ懸濁液PSを約2分間で抄紙処理するように制御されるとすると、上述したように、上記抄紙濃度調整部3Bにおける1回のパルプ懸濁液PSの混合調製(区分形式による抄紙濃度調整工程の1工程)には約1分間を要するから、上記抄紙濃度調整部3Bによる濃度調整インターバル(各区分形式による抄紙濃度調整工程の実行間隔)が1分以内に設定される。この場合、濃度調整インターバルは、上記パルプ供給槽84内に移送供給されたパルプ懸濁液PSがパルプ供給槽84からオーバフローしないように、パルプ供給槽84の貯留容量も考慮して設定される。
【0112】
また、パルプ供給槽84内には攪拌装置82が設けられており、この攪拌装置82の攪拌作用により、待機貯留されるパルプ懸濁液PS全体の抄紙濃度が一定値に均一化されて保持される。
【0113】
上記のように、抄紙濃度調整部3Bによる濃度調整が全量一括式ではなく、区分形式つまり小出し形式で行われることにより、使用水量が大幅に減少されるばかりか、濃度調整槽80の形状寸法の大幅な縮小化も可能となり、さらには古紙再生装置1全体のコンパクト化が図られ得る。
【0114】
パルプ濃度制御部3Cは、上記叩解濃度調整部3Aおよび抄紙濃度調整部3Bを連動して駆動制御するもので、具体的には、叩解濃度調整部3Aの叩解濃度制御部70からのパルプ濃度制御情報(古紙UPの投入量、離解槽15への給水量、古紙パルプUPPの叩解濃度等)を受け取って、この制御情報に応じて、パルプ製造部2で製造された古紙パルプUPPの濃度を目標値(抄紙濃度)にするための抄紙濃度制御情報(古紙パルプUPPの目標抄紙濃度、古紙パルプ回収槽50からの古紙パルプUPPの区分抽出量、濃度調整槽80への給水量等)を抄紙濃度調整部3Bの抄紙濃度制御部77に送り、これにより、上述した抄紙濃度調整工程を実行させる構成とされている。
【0115】
抄紙部4は、上記パルプ製造部2で製造された古紙パルプUPPを抄紙して再生紙RPを製造する工程部位で、抄紙工程部90、脱水ロール部91および乾燥工程部92を主要部として構成されている。
【0116】
抄紙工程部90は、上記パルプ製造部2のパルプ供給槽84から送られてくる水Wと古紙パルプUPPが共存するスラリー状のパルプ懸濁液PSを抄いて湿紙とする部位で、抄紙コンベア100とパルプ供給部101を主要部として構成されている。
【0117】
抄紙コンベア100は、パルプ懸濁液を抄きながら搬送するもので、上記パルプ懸濁液PSを濾過脱水する無数の網目よりなる抄き網構造の網状ベルト105がその走行方向へ向けて直線状に走行する配置構成とされている。
【0118】
具体的には、抄紙コンベア100は、パルプ懸濁液PSを抄きながら搬送する無端ベルトの形態とされた上記網状ベルト105と、この網状ベルト105を走行駆動する駆動モータ106とを備えてなる。
【0119】
上記網状ベルト105を構成する抄き網構造の板材は、パルプ懸濁液PSが上記抄き網構造の無数の網目により適正に濾過脱水できる材質とされ、好適には、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミド(PA)(一般に「ナイロン」(登録商標)と呼ばれる)あるいはステンレス鋼(SUS)などの耐腐食性に優れる材料で形成されており、図示の実施形態においては、耐熱性に優れるPET製網状ベルト105とされている。
【0120】
網状ベルト105は、図1に示すように、駆動ローラ107、駆動ローラ108、支持ローラ109、脱水ロール115および予備脱水ロール117を介して、回転走行可能に懸架支持されるとともに、上記駆動ローラ107を介して、上記駆動モータ106に駆動連結されている。
【0121】
そして、上記網状ベルト105における抄紙工程長さLは、上記什器サイズの装置ケース6内における網状ベルト105の直線状走行方向長さ(図示の場合は図1における左右方向長さ)の範囲内に設定されている。
【0122】
また、上記網状ベルト105の走行速度は、抄紙工程における諸条件を考慮して設定されるもので、好適には0.1m/分〜1m/分に設定され、図示の実施形態においては0.2m/分に設定されている。ちなみに、従来の古紙再生工場等の大規模工場でのこの種の抄紙ベルトの走行速度は、少なくとも100m/分以上に設定され、早いものでは1000m/分をはるかに上回る速度に設定される。
【0123】
網状ベルト105は、図1に示すように、その走行方向へ向けて上向き傾斜状にかつ直線状に走行する配置構成とされて、限られた設置空間における抄紙工程長さLの可及的延長が図られるとともに、網状ベルト105の抄き網構造との関係での濾過脱水率の向上が図られている。
【0124】
上記網状ベルト105を走行駆動する駆動モータ106は、具体的には電動モータで、装置制御部5に電気的に接続されている。また、この駆動モータ106は、後述する脱水ロール部91および乾燥工程部92の走行駆動源としても共用される。
【0125】
パルプ供給部101は、上記網状ベルト105上に上記パルプ製造部2からのパルプ懸濁液PSを供給する部位で、このパルプ供給部101により、パルプ懸濁液PSが上記網状ベルト105上面に均一に広がり供給される構成とされている。上記抄紙工程部90は、上記抄紙コンベア100の抄紙工程開始端位置に設けられている。
【0126】
パルプ供給部101の具体的構造については図示しないが、例えば、特許文献1(特開2007−308837号公報)に記載されるような基本構造を備える。
【0127】
そして、第2懸濁液供給ポンプ85により、上記パルプ供給槽84からパルプ供給部101に供給されるパルプ懸濁液PSは、このパルプ供給部101で所定量だけ貯留されて、その滞留作用により、網状ベルト105上面に均一に拡散される。この網状ベルト105上面に均一に拡散されたパルプ懸濁液PSは、網状ベルト105の矢符方向への走行作用により、網状ベルト105と共に搬送されながら、網状ベルト105の網目による自重濾過作用を受けて脱水されて、湿紙RP0となる。
【0128】
この網状ベルト105により濾過脱水された白水W(抄紙する際に抄き網により濾過された極低濃度のパルプ水)は、前述したように、上記給水装置17の白水回収槽35に回収される。
【0129】
脱水ロール部91は、上述の抄紙工程部90と後述の乾燥工程部92の連係部において、上記網状ベルト105上の湿紙RP0を圧搾脱水する部位である。
【0130】
具体的には、下流側の上記乾燥工程部92の後述する平滑面ベルト125と上流側の上記抄紙工程部90の網状ベルト105とが、図1に示すように、上下に積層状に配設されるとともに、これら平滑面ベルト125と網状ベルト105の上下隣接部分が上記連係部とされて、上記脱水ロール部91が、これら網状ベルト105および平滑面ベルト125を上下両側から挟圧状に転動圧搾する構造とされている。
【0131】
上記脱水ロール部91の具体的構造については図示しないが、例えば、特許文献1(特開2007−308837号公報)に記載されるような基本構造を備える。つまり、脱水ロール部91は、脱水ロール115、プレスロール116および駆動モータ106を主要部として備えるととともに、その補助部として、予備脱水ロール117およびスラリー化防止ロール118が設けられている。
【0132】
脱水ロール115は、網状ベルト105に下側から転接するもので、具体的には図示しないが、高剛性材料からなる円筒ロールの外周に、微細連続気孔の多孔質材料からなる脱水層が巻装されてなる。
【0133】
プレスロール116は、後述する乾燥工程部92の平滑面ベルト125を上側から転動加圧するもので、具体的には、高剛性材料からなる円筒ロールの形態とされている。図示の実施形態のプレスロール116は、ステンレス鋼製円筒ロールからなる。
【0134】
これら脱水ロール115とプレスロール116は、具体的には単一の駆動モータ106に駆動連結されて、両ロール115、116が連動して回転駆動される。この場合、これら両ロール115、116は、その外周面間において挟圧状に転動圧搾される網状ベルト105、平滑面ベルト125の接触面(網状ベルト105の下面および平滑面ベルト125の上面)に対して、両ロール115、116の外周面が、互いに僅かの回転速度差をもってそれぞれ転動接触するように回転制御される。
【0135】
具体的には、プレスロール116の回転速度が脱水ロール115の回転速度よりも僅かに大きく設定されており、これにより、平滑面ベルト125の走行速度が、上記網状ベルト105の走行速度よりも大きく設定されることになる。このような構成とされることにより、後述するように、脱水ロール部91により圧搾脱水された湿紙RP0が、下側の網状ベルト105の上面から上側の平滑面ベルト125の下面に転写移転される際に、湿紙RP0にテンションがかかって、湿紙RP0に皺が発生するのを有効に防止する。
【0136】
また、上記駆動モータ106は、図示の実施形態においては、後述するように、抄紙工程部90の駆動モータと共用とされている。
【0137】
そして、この駆動モータ106の駆動により、上記両ロール115、116が、上記両ベルト105、125を上下両側から挟圧状に転動圧搾して、網状ベルト105上の湿紙RP0に含まれている水分が上記網状ベルト105を介して上記脱水ロール115に吸水されて脱水される。この圧搾脱水された白水Wは、給水装置17の白水回収槽35に回収される。
【0138】
また、上記予備脱水ロール117およびスラリー化防止ロール118は、上記脱水ロール部91におけるプレスロール116と脱水ロール115による圧搾脱水作用を補助するために設けられている。
【0139】
予備脱水ロール117は、図1に示すように、脱水ロール部91の上流側において、上記網状ベルト105に下側から転接してテンションを与えるように配設されている。
【0140】
この予備脱水ロール117の具体的構造は具体的には図示しないが、上記脱水ロール115と同様であり、高剛性材料からなる円筒ロールの外周に、微細連続気孔の多孔質材料からなる脱水層が巻装されてなる。
【0141】
そして、網状ベルト105上面に均一に拡散されて、この網状ベルト105と共に搬送される湿紙RP0は、網状ベルト105により濾過脱水されながら、上記予備脱水ロール117によっても複合的に吸水脱水されて、プレスロール116と脱水ロール115による圧搾脱水作用を予備的に補助する。
【0142】
スラリー化防止ロール118は、図1に示すように、脱水ロール部91の上流側近傍位置において、上記平滑面ベルト125を上側から転動加圧して、平滑面ベルト125を下側の網状ベルト105上の湿紙RP0に押さえ付けるように配設されている。
【0143】
上記脱水ロール部91により圧搾脱水された湿紙RP0は、脱水ロール部91の下流側部位において、下側の網状ベルト105の上面から上側の平滑面ベルト125の下面に転写移転されて、平滑面ベルト125と共に搬送されて、乾燥工程部92による乾燥工程が実施される。
【0144】
なお、上記移転作用は平滑面ベルト125の平滑面構造により起こるものと考えられる。つまり、下側の網状ベルト105の表面が、微細な連続気孔が多数開口されてなる微細凹凸面であるのに対して、上側の平滑面ベルト125の表面が孔のない平滑面であり、この結果、僅かに水分を含んでいる湿紙RP0が上記平滑面ベルト125の表面との間の表面張力で吸着されるものと考えられる。
【0145】
乾燥工程部92は、上記抄紙工程部90で抄紙形成された後、脱水ロール部91で圧搾脱水された湿紙RP0を乾燥させて再生紙RPとする部位で、乾燥コンベア121と加熱乾燥部122を主要部として構成されている。
【0146】
乾燥コンベア121は、脱水ロール部91で圧搾脱水された湿紙RP0を平滑にしながら搬送するもので、上記平滑面ベルト125と、この平滑面ベルト125を走行駆動する上記駆動モータ106とを備えてなる。
【0147】
平滑面ベルト125は、湿紙RP0を加熱乾燥させながら搬送するもので、具体的には、所定幅を有する平滑面構造の板材が所定長さの環状に接続形成されてなる無端ベルトである。平滑面構造の板材は、湿紙RP0の片側表面を適正な平滑面に仕上げることができ、かつ後述する加熱乾燥部122による加熱作用に耐え得る材質とされ、好適には、フッ素樹脂、ステンレス鋼等の可撓性耐熱材料で形成されており、図示の実施形態においては、フッ素樹脂製ベルトが採用されている。
【0148】
この平滑面ベルト125は、図1に示すように、駆動ローラ126、従動ローラ127、128、プレスロール116、スラリー化防止ロール118、平滑面仕上げロール129、129および予備脱水ロール117を介して、回転走行可能に懸架支持されるとともに、上記駆動ローラ126を介して、上記駆動モータ106に駆動連結されている。
【0149】
平滑面ベルト125を走行駆動する駆動モータ106は、前述したように、上記抄紙コンベア100および脱水ロール部91の走行駆動源としても共用される。
【0150】
加熱乾燥部122は、上記平滑面ベルト125上の湿紙RP0を加熱乾燥する部位で、上記平滑面ベルト125の走行経路途中箇所に配されたヒータプレート130を加熱部として備える。
【0151】
図示の実施形態のヒータプレート130は、上記平滑面ベルト125の走行経路における水平走行部分に設けられており、具体的には、上記平滑面ベルト125上の湿紙RP0を平滑面ベルト125を介して間接的に加熱乾燥する配置構成とされている。
【0152】
また、平滑面ベルト125の走行途中に、上記2つの平滑面仕上げロール129、129が配設されて、平滑面ベルト125上の湿紙RP0を順次転動加圧して、平滑面ベルト125の表面に接触する湿紙RP0の片側表面と反対側表面を適正な平滑面に仕上げる配置構成とされている。
【0153】
上記平滑面ベルト125における上記加熱乾燥部122の下流側には、剥離部材131が設けられている。この剥離部材131は、具体的には耐熱性を有する弾性ヘラの形態とされており、平滑面ベルト125上で乾燥処理されて搬送される乾紙つまり再生紙RPを、平滑面ベルト125の保持面から順次剥離する。
【0154】
これに関連して、この剥離部材131の下流側の平滑面ベルト125の走行経路終端位置には、定寸カッタ部132が設けられている。平滑面ベルト125から剥離された再生紙RPは、この定寸カッタ部132により所定形状(図示の実施形態においては、A4版の形状寸法)に切断されて、再使用可能な形状寸法の再生紙RPとされ、装置ケース6の排出口136から排出される。
【0155】
装置制御部5は、上述したパルプ製造部2、パルプ濃度調整部3および抄紙部4の各駆動部の動作を相互に連動して自動制御するもので、具体的には、CPU,ROM,RAMおよびI/Oポートなどからなるマイクロコンピュータで構成されている。
【0156】
この装置制御部5には、パルプ製造部2のパルプ製造工程、濃度調整部3の濃度調整工程および抄紙部4の抄紙工程を相互に連動して実行させるためのプログラム等が組み込まれており、図7に示すように、主制御部140、パルプ製造部2における、離解部10(16)の駆動源31を制御する離解制御部141、および叩解部11(40、47)の駆動源46、66、69を制御する叩解制御部142、パルプ濃度調整部3(3A、3B)の駆動源36、37、81、82を制御するパルプ濃度制御部3C、ならびに、抄紙部4における抄紙工程部90、脱水ロール部91および乾燥工程部92の駆動源85、106、130、132を制御する抄紙制御部143などから構成される。
【0157】
主制御部140には、上記各駆動部2(10、11)、3(3A、3B)、4(90、91、92)の駆動に必要な種々の情報、例えば、離解部10における攪拌装置16の駆動時間、回転速度、給水装置17の給水タイミング、給水量、叩解部11における循環ポンプ69の駆動時間、循環量および摩砕機40の駆動時間、回転速度、および隙間調整手段47の調整タイミング、叩解隙間G調整量、ならびに、抄紙部4におけるコンベア100、121の走行速度、加熱乾燥部122の駆動時間、および定寸カッタ部132の動作タイミングなどが、予めデータとしてまたはキーボード等により適宜選択的に入力設定されており、これらの制御データに従って、また上述した重量センサ38、位置検出センサ等の検知結果を受け取って、上記各制御部141、142、3C、143を制御する。
【0158】
しかして、以上のように構成された古紙再生装置1は、電源投入により起動して、装置制御部5により各駆動部2(10、11)、3(3A、3B)、4(90、91、92)が相互に関連して自動制御され、これにより、装置ケース6の投入口7に投入された古紙UP、UP、…は、パルプ製造部2の離解部10および叩解部11により離解・叩解処理されて、古紙パルプUPPが製造され、さらにパルプ濃度調整部3で抄紙濃度のパルプ懸濁液PSが調製された後、このパルプ懸濁液PSが抄紙部4の抄紙工程部90、脱水ロール部91および乾燥工程部92により抄紙されて、再生紙RPとして再生され、装置ケース6の排出口136bから再生紙受取トレー135に排出される。
【0159】
また、上記パルプ製造部2においては、離解制御部141および叩解制御部142により各駆動部が相互に関連して自動制御され、以下の工程を実行する。
【0160】
i)作業者が、前述したように、所定枚数(図示の実施形態においては500枚程度(約2000g))のA4判のPPC古紙UPを離解槽15内に投入して、音および/または表示による告知がされた後、投入口7を閉止すると、約98リットルの水が給水装置17により加えられる。
【0161】
ii)攪拌装置16が駆動して、離解槽15内に投入された古紙UP、UP、…は、駆動モータ31による攪拌インペラ30の正転・逆転動作により、給水装置17から供給された水の中で所定時間(図示の実施形態においては10分〜20分間)だけ攪拌混合されて、これにより、古紙UP、UP、…離解・叩解されて古紙パルプUPPとなる。
【0162】
iii)所定時間の攪拌装置16の駆動により、古紙UP、UP、…が古紙パルプUPPとなったところで、上記離解槽15の投入口7が開閉弁19により開口されて、離解槽15が古紙パルプ循環経路39に連通され、叩解部11の循環ポンプ69、摩砕機40および隙間調整手段47が駆動開始する。
【0163】
また、上記離解部10の攪拌装置16が駆動されて、離解槽15内に残っている古紙パルプUPPと離解槽15に還流する古紙パルプUPPを攪拌して、離解槽15内の古紙パルプUPPの叩解度を均一化することにより、叩解処理の促進化が図られる。
【0164】
iv)図5において、離解部10により離解処理された古紙パルプUPPが、循環ポンプ69により古紙パルプ循環経路39で循環されながら、摩砕機40による叩解処理(叩解工程)が行われる。この際、摩砕機40の叩解作用面41a、42aの叩解隙間Gは、隙間調整手段47により、叩解工程の初期から終期に向けて徐々に狭くなるように制御調整されながら、叩解工程が行われる。
【0165】
v)図示の実施形態においては、上述したように、第1段階において、叩解隙間Gが1mmに調整された状態で、古紙パルプUPPが5分間循環されながら摩砕機40により加圧叩解される。
【0166】
vi)第2段階において、叩解隙間Gが0.4mmに調整された状態で、古紙パルプUPPが25分間循環されながら摩砕機40により加圧叩解される。
【0167】
vii)第3段階において、叩解隙間Gが0.12mmに調整された状態で、古紙パルプUPPが45分間循環されながら摩砕機40により加圧叩解される。
【0168】
viii)最後の第4段階において、叩解隙間Gが0.05mmに調整された状態で、古紙パルプUPPが摩砕機40により加圧叩解されて、所定のミクロンサイズまで微細化(マイクロファイバ化)される。
【0169】
ix)古紙パルプ循環経路39の方向切替弁51が切り替わり、摩砕機40から排出された古紙パルプUPPは、排出用配管49を介して古紙パルプ回収槽50へ排出回収される。
【0170】
x)古紙パルプ回収槽50に回収された古紙パルプUPPは、その濃度がパルプ濃度調整部3の叩解濃度調整部3Bにより前述したように区分形式で目標の適正抄紙濃度に調整された後、次工程の抄紙部4へ送られて抄紙される。
【0171】
しかして、以上のような構成とされた古紙再生装置1においては、以下に列挙するような特有の効果が発揮され得る。
【0172】
(1)叩解濃度調整工程において調整される古紙パルプUPPの叩解濃度が、パルプ製造部2による叩解が可能な高濃度、例えば、パルプ製造部2の叩解能力に許容される最大濃度になるように設定されるとともに、抄紙濃度調整工程において調整される古紙パルプUPPの抄紙濃度が、抄紙部4による抄紙が可能な低濃度、例えば、再生すべき再生紙RPの仕上紙質に対応した適正濃度に設定されることにより、2段階での古紙パルプUPPの濃度調整が可能となって、什器サイズの古紙再生装置1という小さな作業空間を有効に利用した濃度調整が可能となり、運転効率の良い古紙再生を行うことができる。
【0173】
換言すれば、比較的濃度が高くて可能なパルプ製造部2における叩解工程を、叩解濃度調整部3Aにより高い濃度(叩解濃度)に調整した古紙パルプUPPで効率良く行った後、この古紙パルプUPPを、上記抄紙濃度調整部3Bにより再生紙RPの仕上紙質に対応した低い濃度(抄紙濃度)に調整して、続く抄紙部4へ送ることにより、一連の古紙再生工程を狭い作業空間で効率良く行うことができる。
【0174】
(2)また、このような小型で運転効率の良い古紙再生装置1の運転には大きな動力を必要としないため、ランニングコストも低く抑えることができ、特に、小規模店舗や一般家庭などの室内でも実施可能な什器サイズの古紙再生装置1として最適である。
【0175】
これにより、大きな事業所等だけでなく、小規模店舗や一般家庭などの室内にも設置可能であるとともに、機密情報や個人情報など各種情報の漏洩・流出を確実に防止できて、高い機密性を保持することができる什器サイズの古紙再生装置1を提供することができる。
【0176】
(3)また、パルプ濃度調整が古紙UPと水Wとの混合割合を重量測定により古紙パルプUPPの濃度を調整する重量式で行われることにより、不規則に投入される古紙量に対して、柔軟な濃度調整が可能となる。
【0177】
(4)さらに、上記抄紙濃度調整工程は、パルプ製造部2で製造された古紙パルプUPPの全量から所定の少分量だけ区分し、この区分した所定の少分量の古紙パルプUPPに対して濃度調整用の水Wを所定量加水することにより、古紙パルプUPPの濃度調整を全量一括式ではなく、区分形式つまり小出し形式で行うようにしたから、処理能力の可及的向上を実現しつつ、使用水量の大幅な減少化と装置構成の小型化を実現できる。
【0178】
なお、上述した実施形態はあくまでも本発明の好適な実施態様を示すものであって、本発明はこれらに限定されることなく、その範囲内で種々の設計変更が可能である。
【0179】
例えば、図示の実施形態においては、抄紙濃度調整部3Bは重量式とされて、区分抽出部75が前工程のパルプ製造部2で製造された古紙パルプUPPの全量から所定の少分量だけ重量測定により区分抽出するとともに、懸濁液調製部76が上記区分抽出部75により区分抽出された所定の少分量の古紙パルプUPPに対して濃度調整用の水を所定量だけ重量測定により加水することにより、所定濃度のパルプ懸濁液PSを調製する構成とされているが、容量測定により調整する容量式とされてもよい。
【0180】
すなわち、上記区分抽出部75が、パルプ製造部2で製造された古紙パルプUPPの全量から所定の少分量だけ区分収容するパルプ区分槽(図示省略)を備えるとともに、上記懸濁液調製部76が、上記パルプ区分槽に区分収容された所定分量の古紙パルプUPPと濃度調整用の水を収容する濃度調整槽(図示省略)を備えてなり、上記パルプ区分槽から上記濃度調整槽に供給された所定分量の古紙パルプUPPを含めて所定の体積となるように、上記濃度調整槽に水を供給する構成されてもよい。
【符号の説明】
【0181】
UP 古紙
UPP 古紙パルプ
PS パルプ懸濁液
RP 再生紙
1 古紙再生装置
2 パルプ製造部
3 パルプ濃度調整部(パルプ濃度調整装置)
3A 叩解濃度調整部(叩解濃度調整手段)
3B 抄紙濃度調整部(抄紙濃度調整手段)
3C パルプ濃度制御部(パルプ濃度制御手段)
4 抄紙部
5 装置制御部
17 給水装置
35 白水回収槽
36 給水ポンプ
37 給水ポンプ
38 重量センサ
50 古紙パルプ回収槽
70 叩解濃度制御部
75 区分抽出部(区分抽出手段)
76 懸濁液調製部(懸濁液調製手段)
77 抄紙濃度制御部(抄紙濃度制御手段)
79 重量センサ
80 濃度調整槽
81 古紙パルプ供給ポンプ
83 第1懸濁液供給ポンプ
84 パルプ供給槽
85 第2懸濁液供給ポンプ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
什器サイズの装置ケース内に、古紙を離解し叩解して古紙パルプを製造するパルプ製造部と、このパルプ製造部で製造された古紙パルプを抄紙して再生紙を製造する抄紙部を備えてなる古紙再生装置において、当該装置に投入される古紙と水との混合割合を調整して、前記抄紙部に供給される古紙パルプの濃度を調整するパルプ濃度調整方法であって、
前記パルプ製造部における古紙パルプの叩解濃度を調整する叩解濃度調整工程と、
前記抄紙部における古紙パルプの抄紙濃度を調整する抄紙濃度調整工程とからなり、
前記叩解濃度調整工程において調整される前記叩解濃度は、前記パルプ製造部による叩解が可能な高濃度に設定されるとともに、前記抄紙濃度調整工程において調整される前記抄紙濃度は、前記抄紙部による抄紙が可能な低濃度に設定される
ことを特徴とする古紙再生装置のパルプ濃度調整方法。
【請求項2】
前記叩解濃度調整工程において調整される前記叩解濃度は、前記パルプ製造部の叩解能力に許容される最大濃度になるように設定される
ことを特徴とする請求項1に記載の古紙再生装置のパルプ濃度調整方法。
【請求項3】
前記抄紙濃度調整工程において調整される前記抄紙濃度は、再生すべき再生紙の仕上紙質に対応した適正濃度に設定される
ことを特徴とする請求項1に記載の古紙再生装置のパルプ濃度調整方法。
【請求項4】
前記抄紙濃度調整工程は、前記パルプ製造部で製造された古紙パルプの全量から所定の少分量だけ区分し、この区分した所定の少分量の古紙パルプに対して濃度調整用の水を所定量加水することにより、所定濃度のパルプ懸濁液を区分形式で混合調製する
ことを特徴とする請求項1に記載の古紙再生装置のパルプ濃度調整方法。
【請求項5】
前記抄紙濃度調整工程において、古紙パルプの濃度を区分形式で調整する濃度調整インターバルは、少なくとも、後工程の抄紙部への濃度調整済みのパルプ懸濁液の供給能力がこの抄紙部における抄紙処理能力を上回るように設定されている
ことを特徴とする請求項4に記載の古紙再生装置のパルプ濃度調整方法。
【請求項6】
前記叩解濃度調整工程および抄紙濃度調整工程における濃度調整は、装置に投入される古紙と水との混合割合を重量測定により行う重量式調整である
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか一つに記載の古紙再生装置のパルプ濃度調整方法。
【請求項7】
什器サイズの装置ケース内に、古紙を離解し叩解して古紙パルプを製造するパルプ製造部と、このパルプ製造部で製造された古紙パルプを抄紙して再生紙を製造する抄紙部を備えてなる古紙再生装置において、当該装置に投入される古紙と水との混合割合を調整して、前記抄紙部に供給される古紙パルプの濃度を調整するパルプ濃度調整装置であって、
前記パルプ製造部における古紙パルプの叩解濃度を調整する叩解濃度調整手段と、
前記抄紙部における古紙パルプの抄紙濃度調整する抄紙濃度調整手段と、
これら叩解濃度調整手段および抄紙濃度調整手段を連動して駆動制御するパルプ濃度制御手段とを備えてなり、
前記叩解濃度調整手段により調整される前記叩解濃度は、前記パルプ製造部による叩解が可能な高濃度に設定されるとともに、前記抄紙濃度調整手段により調整される前記抄紙濃度は、前記抄紙部による抄紙が可能な低濃度に設定される
ことを特徴とする古紙再生装置のパルプ濃度調整装置。
【請求項8】
前記叩解濃度調整手段により調整される前記叩解濃度は、前記パルプ製造部の叩解能力に許容される最大濃度になるように設定される
ことを特徴とする請求項7に記載の古紙再生装置のパルプ濃度調整装置。
【請求項9】
前記抄紙濃度調整手段により調整される前記抄紙濃度は、再生すべき再生紙の仕上紙質に対応した適正濃度に設定される
ことを特徴とする請求項7に記載の古紙再生装置のパルプ濃度調整装置。
【請求項10】
前記抄紙濃度調整手段は、前記パルプ製造部で製造された古紙パルプの全量から所定の少分量だけ区分抽出する区分抽出手段と、この区分抽出手段により区分抽出された所定の少分量の古紙パルプに対して濃度調整用の水を所定量だけ加水することにより、所定濃度のパルプ懸濁液を調製する懸濁液調製手段と、これら区分抽出手段および懸濁液調製手段を連動して駆動制御する抄紙濃度制御手段とを備えてなる
ことを特徴とする請求項7に記載の古紙再生装置のパルプ濃度調整装置。
【請求項11】
前記抄紙濃度制御手段は、少なくとも、後工程の抄紙部への濃度調整済みのパルプ懸濁液の供給能力がこの抄紙部における抄紙処理能力を上回るように、前記区分抽出手段および懸濁液調製手段を駆動制御する構成とされている
ことを特徴とする請求項10に記載の古紙再生装置のパルプ濃度調整装置。
【請求項12】
前記抄紙濃度調整手段は、所定濃度に調製されたパルプ懸濁液を貯留するパルプ供給槽を備え、このパルプ供給槽は、パルプ供給槽内に待機貯留されるパルプ懸濁液を攪拌する攪拌手段を備える
ことを特徴とする請求項7に記載の古紙再生装置のパルプ濃度調整装置。
【請求項13】
前記叩解濃度調整手段および抄紙濃度調整手段は、装置に投入される古紙と水との混合割合を重量測定により調整して、前記抄紙部に供給される古紙パルプの濃度を調整する重量式とされている
ことを特徴とする請求項7から12のいずれか一つに記載の古紙再生装置のパルプ濃度調整装置。
【請求項14】
什器サイズの装置ケース内に、古紙を離解し叩解して古紙パルプを製造するパルプ製造部と、このパルプ製造部で製造された古紙パルプを抄紙して再生紙を製造する抄紙部と、この抄紙部に供給される古紙パルプの濃度を調整するパルプ濃度調整部と、これらパルプ製造部、抄紙部およびパルプ濃度調整部を連動して駆動制御する装置制御部を備えてなり、
前記パルプ濃度調整部は、請求項7から13のいずれか一つに記載のパルプ製造装置から構成されている
ことを特徴とする古紙再生装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−99180(P2011−99180A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−254986(P2009−254986)
【出願日】平成21年11月6日(2009.11.6)
【出願人】(000106782)株式会社シード (52)
【Fターム(参考)】