説明

古紙再生装置の抄紙装置および古紙再生装置

【課題】大きな事業所等だけでなく、小規模店舗や一般家庭などの室内にも設置可能な什器サイズの古紙再生装置において、繰り返し再生使用されても強度が低下することの少ない再生紙を抄紙再生する抄紙装置を提供する。
【解決手段】パルプ懸濁液PSを濾過脱水しながら走行する網状ベルト105の走行条件が、網状ベルト105上に供給されるパルプ懸濁液PS中のパルプ繊維が方向性のない無秩序な配列状態を保持する範囲内に設定されていることにより、再生された再生紙RPにはいわゆる「紙の目」が現れず、紙質が縦横差のない等方性で均一となり、強度的に使用に十分である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は古紙再生装置の抄紙装置および古紙再生装置に関し、さらに詳細には、古紙が発生する場所に配置されて、発生する古紙を廃棄処分することなく、その場で再利用可能な紙に再生処理する什器サイズの小型古紙再生装置における抄紙技術に関する。
【背景技術】
【0002】
官公庁や一般企業等の各種事業所の日常業務はもちろんのこと、一般家庭の日常生活においても、使用済みや不要となった各種書類いわゆる古紙が発生している。これらの古紙は、ゴミとして廃棄されたり、焼却されたりして、廃棄処分されることになる。
【0003】
一方、限りある地球資源の有効利用という機運の世界的な高まりのなかで、近時、廃棄処分されてきた古紙を、廃棄処分することなく再生利用するための技術が種々開発されている。
【0004】
これらの古紙再生技術は、ほとんどが製紙業界において採用実施されており、その古紙再生設備には、通常の製紙設備同様、再生紙の高速大量生産と高品質化を目的として、広大な敷地、莫大な投資、および紙抄きに使われる大量の水や薬品などが必要とされる。
【0005】
また、古紙再生にあっては多くの人手による古紙回収作業が必要であり、しかも、この古紙回収には、多人数による異物混入、古紙再生紙への知識不足による分別不良、忌避品の除去不足などの問題があり、せっかく古紙を回収しても、これらの古紙を100%再生紙として再生するには、専門業者による再度の選別や洗浄等の作業を余儀なくされている。さらに、極秘文書などの古紙は、機密上の問題から古紙回収には簡単に出されることはなく、焼却処分されてしまうため、リサイクル化が進んでいない。
【0006】
これらの古紙回収の問題を解決するには、古紙発生元において自前で再生利用することができるような技術の開発が有効であり、この観点から、本出願人は例えば特許文献1に記載されるような古紙再生装置を既に開発し提案している。
【0007】
この古紙再生装置は、古紙再生工場等の大規模な古紙再生技術を、小規模店舗や一般家庭などの室内にも設置可能な装置技術として実現したもので、什器サイズの装置ケース内に、古紙を離解し叩解して古紙パルプを製造するパルプ製造部と、このパルプ製造部で製造された古紙パルプを抄紙して再生紙を製造する抄紙部と、これらパルプ製造部および抄紙部を連動して駆動制御する制御部を備えてなり、上記パルプ製造部は、古紙を攪拌破砕して離解する離解部と、この離解部で離解された古紙を叩解する叩解部とからなる。
【0008】
そして、古紙は、上記パルプ製造部の離解部による攪拌により離解・叩解されてパルプ化された後、上記叩解部によりさらに叩解されて微細化され、所望の古紙パルプとなり、その後、この古紙パルプは、上記抄紙部における抄紙工程、つまり濾過脱水、圧搾脱水および加熱乾燥の各工程を経て再生紙となる。この場合、上記パルプ化の段階で、古紙は繊維レベルまで分解されて、そこに記載された文字や線図は完全に分解消滅してしまい、復元不可能となり、これら文字や線図から構成される機密情報や個人情報の漏洩・流出を確実に防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−174877号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明はかかる従来の問題点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、特に、上記古紙再生装置における抄紙部の抄紙技術をさらに改良することにより、大きな事業所等だけでなく、小規模店舗や一般家庭などの室内にも設置可能な什器サイズの古紙再生装置において、繰り返し再生使用されても強度が低下することの少ない再生紙を抄紙再生する抄紙装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的を達成するため、本発明の古紙再生装置の抄紙装置は、古紙が発生する場所に配置可能な什器サイズの古紙再生装置を構成し、前工程のパルプ製造装置で製造された古紙パルプを抄紙して再生紙を製造する抄紙装置であって、上記パルプ製造装置から送られてくる水と古紙パルプが共存するスラリー状のパルプ懸濁液を抄いて湿紙とする抄紙工程部を備え、この抄紙工程部は、パルプ懸濁液を抄きながら搬送する抄紙コンベアを備え、この抄紙コンベアは、無数の網目よりなる抄き網構造の網状ベルトが上記パルプ懸濁液を濾過脱水しながら走行する配置構成とされ、上記網状ベルトの紙質制御条件は、網状ベルト上に供給される上記パルプ懸濁液中のパルプ繊維が方向性のない無秩序な配列状態を保持する範囲内に設定されることを特徴とする。
【0012】
好適な実施態様として、以下の構成が採用される。
(1)上記網状ベルトの紙質制御条件として、少なくとも、網状ベルトの走行速度および網状ベルトの走行傾斜角度が含まれる。
【0013】
(2)上記網状ベルトの走行速度は0.1m/分〜1.8m/分に設定される。
【0014】
(3)上記網状ベルトは、その走行方向へ向けて上向き傾斜状にかつ直線状に走行する配置構成とされる。
【0015】
(4)上記網状ベルトの上向き傾斜角度は3度〜12度に設定される。
【0016】
(5)上記抄紙工程部は、上記抄紙コンベアの抄紙工程開始端位置に設けられて、上記パルプ製造装置から送られてくる上記パルプ懸濁液を上記抄紙コンベアに供給するパルプ供給部を備え、このパルプ供給部により、上記パルプ懸濁液が上記抄紙コンベアの網状ベルト上面に均一に広がり供給される構成とされる。
【0017】
(6)上記網状ベルトの抄き網構造は、網状ベルト上に供給された上記パルプ懸濁液が網状ベルトの所定の走行距離だけ走行する間に濾過脱水されて適正な坪量に抄かれた湿紙となるように構成される。
【0018】
(7)上記網状ベルトの網目は25メッシュ〜80メッシュに設定される。
【0019】
(8)上記網状ベルトにおける抄紙工程長さは、上記什器サイズの装置ケース内における上記網状ベルトの直線状走行方向長さの範囲内に設定される。
【0020】
(9)上記網状ベルトの抄紙工程長さは、上記網状ベルトの走行速度および抄き網構造との関係で、上記パルプ懸濁液が適正な坪量に抄かれとともに、上記網状ベルトを備える上記抄紙コンベアが什器サイズの装置ケース内に収容し得るように設定される。
【0021】
(10)上記パルプ製造装置から送られてくる水と古紙パルプが共存するスラリー状のパルプ懸濁液を抄いて湿紙とする上記抄紙工程部と、この抄紙工程部で抄紙形成された湿紙を乾燥させて再生紙とする乾燥工程部と、これら抄紙工程部および乾燥工程部の連係部において上記湿紙を圧搾脱水する脱水ロール部とを備えてなり、上記パルプ製造装置から供給される上記パルプ懸濁液を抄紙するとともに、脱水・乾燥する構成とされる。
【0022】
(11)上記抄紙コンベアは、パルプ懸濁液を抄きながら搬送する無端ベルトの形態とされた上記網状ベルトと、この網状ベルトを走行駆動する駆動モータとを備えてなる。
【0023】
また、本発明の古紙再生装置は、什器サイズの装置ケース内に、古紙を離解し叩解して古紙パルプを製造するパルプ製造部と、このパルプ製造部で製造された古紙パルプを抄紙して再生紙を製造する抄紙工程部と、これらパルプ製造部および抄紙工程部を連動して駆動制御する制御部を備えてなり、上記抄紙工程部は、上述した抄紙装置から構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明の抄紙装置は、従来の古紙再生工場等の大規模工場で行われていた古紙再生技術を、本発明のような什器サイズでの古紙再生技術として実現し得た本発明者のさらなる種々の試験研究の成果として生まれた。
【0025】
すなわち、本発明者は、大規模工場設備である古紙再生技術を什器サイズという極めてコンパクトな工程作業空間での古紙再生技術として実現した後、さらに改良を加えるべく種々の研究・実験を繰り返していくうちに、その最終生産品である古紙再生紙は、その特殊性つまり古紙再生装置が設置される特定の箇所で処理される古紙がその機密情報や個人情報など各種情報の漏洩・流出を防止する目的と相まって、繰り返し再生処理されて使用される傾向にあることに気づいた。
【0026】
一方、本発明者は、本発明に係る什器サイズの古紙再生装置で再生された再生紙が、この繰り返し再生に比較的耐え得る傾向の紙質を有していることにも気づき、さらにこの原因を突き止めるべく種々の研究・実験を繰り返した結果、この再生紙には通常の紙にある「紙の目」と言われるものが明確に現れていないことを発見した。
【0027】
そして、さらなる本発明者による試行錯誤の後、本発明が完成されるに至った のである。
【0028】
しかして、本発明の抄紙装置によれば、前工程を実行するパルプ製造装置から送られてくる水と古紙パルプが共存するスラリー状のパルプ懸濁液を抄いて湿紙とする抄紙工程部が、パルプ懸濁液を抄きながら搬送する抄紙コンベアを備え、この抄紙コンベアは、無数の網目よりなる抄き網構造の網状ベルトが上記パルプ懸濁液を濾過脱水しながら走行する配置構成とされ、上記網状ベルトの紙質制御条件は、網状ベルト上に供給される上記パルプ懸濁液中のパルプ繊維が方向性のない無秩序な配列状態を保持する範囲内に設定されるから、再生された再生紙にはいわゆる「紙の目」が現れず、紙質が縦横差のない等方性で均一となり、強度的に使用に十分である。
【0029】
したがって、機密情報や個人情報など各種情報の漏洩・流出を防止する目的と相まって、繰り返し再生処理されて使用される古紙にあっても、強度が低下することが少なく、長期の使用に耐え得る再生紙を提供することができる。
【0030】
これにより、大きな事業所等だけでなく、小規模店舗や一般家庭などの室内にも設置可能であるとともに、環境に優しくかつランニングコストも低く抑えることができ、しかも、機密情報や個人情報など各種情報の漏洩・流出を確実に防止できて、高い機密性を保持することができる什器サイズの古紙再生装置を実現し提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施形態に係る古紙再生装置の全体概略構成を示す正面断面図である。
【図2】同じく同古紙再生装置の全体概略構成を示す側面断面図である。
【図3】同古紙再生装置の叩解部の古紙パルプ循環経路構成を示す回路図である。
【図4】同古紙再生装置のパルプ濃度調整部の構成を示すブロック図である。
【図5】同古紙再生装置の抄紙部の概略構成を示す斜視図である。
【図6】同抄紙部における抄紙工程部のパルプ懸濁液供給部位の構成を拡大して示す斜視図である。
【図7】同古紙再生装置の外観構成を示す斜視図である。
【図8】同古紙再生装置で再生される再生紙についての紙質を説明するための正面図である。
【図9】市販の一般的な紙についての紙質を説明するための正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、図面全体にわたって同一の符号は同一の構成部材または要素を示している。
【0033】
実施形態1
本発明に係る古紙再生装置が図1〜図7に示されており、この古紙再生装置1は、具体的には古紙が発生する場所に配置されて、発生する古紙UPを廃棄処分することなく、その場で再利用可能な紙に再生処理する装置であって、古紙UPとしては、官公庁・一般企業の機密文書や一般家庭の私的文書等で、使用済みや不要となった書類が該当する。
【0034】
古紙再生装置1は、図7に示すような什器サイズ、つまり、事務所内に配置使用される書棚、ロッカー、事務机、複写機、パーソナルコンピュータなどの什器類と同等な小型形状寸法を備えるもので、図1に示すように、パルプ製造部(パルプ製造装置)2、パルプ濃度調整部3、抄紙部(抄紙装置)4および装置制御部(制御部)5を主要部として構成されている。
【0035】
これら装置構成部2〜5は装置ケース6内に装置収容されてなるコンパクト設計とされる。この装置ケース6は、上述したように什器サイズのもので、具体的な形状寸法は目的や用途に応じて適宜設計される。図示の実施形態の装置ケース6は、事務所等に配置使用される複写機程度の形状寸法を有するほぼ直方体形状の箱体とされ、装置ケース6の天板部には、古紙UPを投入するための投入口7が開閉可能に設けられるとともに、側部には、再生紙RP、RP、…を排出する排出口8が設けられている。また、この排出口8の下縁部位には、排出口8から排出される再生紙RP、RP、…を受け取るための再生紙受取トレー9が取外し可能に設けられている。
【0036】
パルプ製造部2は、古紙UPを離解し叩解して古紙パルプを製造する工程部位で、古紙UPを攪拌破砕して離解する離解部20と、この離解部20で離解された古紙UPを叩解する叩解部21とからなる。
【0037】
離解部20は、古紙UPを攪拌破砕して離解する工程部位で、離解槽25、攪拌装置26および給水装置27を主要部として構成されている。
【0038】
離解槽25は、図2に示すように、その天井壁に、古紙UPを投入供給する上記投入口7が設けられるとともに、その底部壁に、離解された古紙パルプUPPを下流側へ排出する排出口28が設けられている。離解槽25の内容積は、一度に攪拌処理すべき古紙UPの枚数に応じて設定される。図示の実施形態においては、約98リットルの水を加えて、A4判のPPC(plain paper copier)古紙UPを500枚程度(約2000g)一度に攪拌処理(バッチ処理)できる容積を有する離解槽25とされている。この場合の離解される古紙パルプUPPの濃度は2%程度となる。なお、この濃度調整は、給水装置27からの給水により行われ、この給水装置27は、後述するパルプ濃度調整部3の一部をなす。
【0039】
上記投入口7は、装置ケース6のケースカバー6aの外部に対して開閉可能な構造を有する。また、上記排出口28は、開閉弁29により開閉可能とされて、後述する古紙パルプ循環経路49に連通可能とされている。なお、上記排出口28の部位には、古紙UP、UP、…を綴じていたクリップ、ステープラー針等の綴じ具など、次工程の叩解工程にとって障害となる各種禁忌品を除去するための禁忌品フィルタ30が設けられている。
【0040】
上記開閉弁29は、具体的には駆動モータ35によりクランク機構36がクランク動作することで開閉動作される。上記駆動モータ35としては、具体的には電動モータが使用され、この駆動モータ35が装置制御部5に電気的に接続されている。
【0041】
攪拌装置26は上記離解槽25の内部に設けられており、攪拌インペラ40および駆動モータ41を備えてなる。
【0042】
上記攪拌インペラ40は、その回転軸40aが離解槽25の底面中央位置に起立状に回転支持されて、水平回転可能に設けられるとともに、上記回転軸40aの下端が、伝動プーリ42a、伝動ベルト42bおよび伝動プーリ42cからなる伝動手段42を介して、駆動モータ41の回転軸41aに駆動連結されている。
【0043】
給水装置27は上記離解槽25に水を供給するもので、後述するように、パルプ濃度調整部3の叩解濃度調整部3Aを構成する。
【0044】
図示の実施形態の給水装置27は、図1に示すように、白水回収槽45、叩解濃度調整用の給水ポンプ46および抄紙濃度調整用の給水ポンプ47を備えてなる。白水回収槽45は、後述するように、抄紙部4において濾過脱水される白水W(抄紙する際に抄き網により濾過された極低濃度のパルプ水)を回収するもので、この白水回収槽45に回収された白水Wが、上記給水ポンプ46により上記離解槽25に、また上記給水ポンプ47により後述する濃度調整槽85にそれぞれ供給される。
【0045】
また、これに関連して、離解槽25の底部には、重量センサ48が設けられて、離解槽25内で一度にバッチ処理される古紙UP、UP、…と水の量を計測制御する構成とされ、上記重量センサ48は装置制御部5に電気的に接続されている。
【0046】
図示の実施形態の重量センサ48はロードセルからなり、離解槽25の重量と、この離解槽25内に投入供給された古紙UP、UP、…および水の重量との合計重量を感知計測する構成とされている。
【0047】
離解部20における具体的な制御構成は、まず、作業者により投入口7が開放されて、離解槽25に古紙UP、UP、…が投入されると、その重量が上記重量センサ48により感知計測されて、所定重量(枚数)になった時点で作業者に音および/または表示により告知される。この表示に応じて作業者が投入口7を閉止すると、上記給水装置27が駆動して、給水ポンプ46により、白水回収槽45の水Wが上記投入された古紙UP、UP、…の重量(枚数)に対応した量だけ離解槽25に供給される。
【0048】
また、作業者が、上記投入口7から離解槽25に任意の量(上記所定重量(枚数)より少ない量)の古紙UP、UP、…を投入した後に投入口7を閉止した場合も、その重量が上記重量センサ48により感知計測されるとともに、上記給水装置27が駆動して、給水ポンプ46により、上記計測結果に応じた量の水Wが白水回収槽45から離解槽25に供給される。
【0049】
図示の実施形態においては、上述したように、最大500枚程度(約2000g)のA4判のPPC古紙UPが離解槽25内に投入されると、その時点で作業者に音および/または表示により告知され、上記投入口7の閉止動作により、約98リットルの水が給水装置27により加えられて、あるいは任意の量(上記所定重量(枚数)より少ない量)の古紙UP、UP、…を投入した場合にも、この古紙投入量に対応した量の水が給水装置27により加えられて、離解される古紙パルプUPPの濃度が2%程度となるように制御調整される。
【0050】
しかして、攪拌装置26において、装置ケース6の投入開口つまり投入口7から離解槽25内に投入された古紙UP、UP、…は、駆動モータ41による攪拌インペラ40の正転・逆転動作により、給水装置27から供給された水の中で所定時間(図示の実施形態においては10分〜20分間)だけ攪拌混合されて、これにより、古紙UP、UP、…は離解・叩解されて古紙パルプUPPとなる。
【0051】
なお、上記離解槽25の排出口28は、離解部20の運転時には上記開閉弁29により閉止されて、離解槽25からの古紙UPや古紙パルプUPPの古紙パルプ循環経路49への流入が阻止される一方、後述する叩解部21の運転時には、開閉弁29により投入口7が開口されて、離解槽25からの古紙パルプUPPの古紙パルプ循環経路49への流入および循環回流が許容される。
【0052】
叩解部21は、上記離解部20で離解された古紙UPを叩解する工程部位で、具体的には、上記離解部20で離解された古紙UPを加圧叩解するとともに、古紙UP上の文字、図形等を形成するインキ類(各種印刷技術により古紙UP上に文字、図形等を形成した印刷インキ、あるいは、鉛筆、ボールペンまたは万年筆等の筆記具により古紙UP上に文字、図形等を形成したインキ等が含まれる)を磨砕微細化(マイクロファイバ化)するものである。
【0053】
この叩解部21は、摩砕機50を主要部として備えてなる。この摩砕機50は、図3に示すように、相対的に回転駆動される一対の叩解円盤51、52を主要部として備えてなり、これら一対の叩解円盤51、52は、叩解作用面51a、52aを微小な叩解隙間Gをもって同心状に対向配置されている。
【0054】
また、上記摩砕機50の叩解作用面51a、52aの叩解隙間Gは、後述するように、叩解工程の初期用の摩砕機50から終期用の摩砕機50に向けて徐々に狭くなるように設定されている。
【0055】
本実施形態の叩解部21においては、図3に示すように、上記摩砕機50が配されてなる古紙パルプ循環経路49が形成され、これにより、古紙パルプUPが摩砕機50を介して所定時間循環されながら叩解処理される循環式とされている。
【0056】
この古紙パルプ循環経路49による叩解工程の実施により、什器サイズの装置ケース6内という小さく狭い工程スペースにもかかわらず、基本的に長さに制限のない無限長の古紙パルプ叩解工程経路が形成されることになり、大規模装置における叩解工程に匹敵する叩解工程空間を確保することが可能となり、目的に応じて最適な叩解効果が得られる。
【0057】
また、一台の摩砕機50が叩解工程の全工程を通じて叩解処理を行うことに関連して、この一台の摩砕機50が叩解工程の初期用の摩砕機から終期用の摩砕機までの複数台の摩砕機としての機能を兼備する。具体的には、この摩砕機50の叩解作用面51a、52aの叩解隙間Gが、叩解工程の初期から終期に向けて徐々に狭くなるように制御調整される構成とされている。
【0058】
図示の実施形態の摩砕機50は、図2に示すように、装置ケース6を構成する装置機体54に、上記離解部20の離解槽25に隣接して設けられており、また図3に示すように、離解部20の離解槽25に連通可能な叩解槽55と、この叩解槽55内に相対的に回転可能に設けられた上記一対の叩解円盤51、52と、これら一対の叩解円盤51、52を相対的に回転動作させる回転駆動源56と、一対の叩解円盤51、52の叩解隙間Gを調整する隙間調整手段57を備える。
【0059】
叩解槽55は、上記一対の叩解円盤51、52を収納可能な密閉型円筒形状とされ、上流側からの古紙パルプUPPを供給する供給口55aおよび叩解された古紙パルプUPPを下流側へ排出する排出口55bを有する。
【0060】
具体的には、上記供給口55aは叩解槽55の底部中央部に上下方向へ向けて開設されるとともに、上記排出口55bは叩解槽55の円筒側部に水平方向へ向けて開設されている。これら供給口55aおよび排出口55bは、図3に示すように、それぞれ循環用配管49a、49bを介して、上記離解部20の離解槽25に連通可能に接続されるとともに、上記排出口55bは、さらに排出用配管59を介して古紙パルプ回収槽60に連通可能とされている。
【0061】
61は方向切替弁を示しており、この方向切替弁61の切替動作により、排出口55bから排出される古紙パルプUPPは、選択的に、上記離解槽25へ還流され、または古紙パルプ回収槽60へ回収される。方向切替弁61は、具体的には電磁開閉弁からなり、上記装置制御部5に電気的に接続されている。
【0062】
一対の叩解円盤51、52は、その一方が回転方向へ固定的に設けられた固定側叩解円盤とされるとともに、他方が回転可能な回転側叩解円盤とされる。図示の実施形態においては、上側の叩解円盤51が回転側とされるとともに、下側の叩解円盤52が固定側とされてなり、この下側の固定側叩解円盤52に対して、上側の回転側叩解円盤51が微小な叩解隙間Gをもって同心状にかつ回転可能に対向配置されている。この回転側叩解円盤51は、装置機体54の固定側に回転可能にかつ軸線方向へ移動可能に軸支された回転主軸64を介して、駆動モータ56に駆動連結されている。
【0063】
上記回転主軸64は、具体的には図示しないが、上記隙間調整手段57の昇降部材に回転可能に軸支されており、その先端部に、上記回転側叩解円盤51が同心状にかつ一体的に取り付けられるとともに、その基端部が、上記駆動モータ56の回転軸に回転方向へ一体的にかつ軸線方向へ相対的に移動可能に駆動連結されている。
【0064】
回転駆動源である上記駆動モータ56は、上記一対の叩解円盤51、52を相対的に回転動作させるもので、具体的には電動モータが使用され、この駆動源である駆動モータ56が装置制御部5に電気的に接続されている。
【0065】
上記微小な叩解隙間Gを形成する両叩解円盤51、52の対向面51a、52a同士は協働して叩解作用面を形成する。これら対向する叩解作用面51a、52aは、多数の砥粒が結合材により結合されてなる砥石面の形態とされている。また、上記両叩解作用面51a、52aは、図3に示すように、その径寸法が互いの対向方向へ連続的に大きくなるテーパ面形状とされて、最外周縁部が互いに平行する環状平坦面とされ、これら環状平坦面が上記叩解隙間Gを形成している。
【0066】
換言すれば、上記一対の叩解円盤51、52において、固定側叩解円盤52の叩解作用面42aの中心部位に、上記叩解槽の供給口55aに同軸状に連通する入口70が形成されるとともに、上記一対の叩解円盤51、52の叩解作用面51a、52aの外周縁部に形成される二つの環状平坦面が、上記叩解槽55の排出口55bに連通しかつ上記叩解隙間Gを有する出口71を形成している。
【0067】
また、回転側叩解円盤51の外周には複数のブレード72、72、…が周方向へ所定間隔をもって設けられており、これらブレード72、72、…は、回転側叩解円盤51の回転により、上記出口71から排出される古紙パルプUPPを、遠心力で上記叩解槽55の排出口55bへ向けて押出すポンプ作用をなす。
【0068】
しかして、駆動源である駆動モータ56により、回転側叩解円盤51が固定側叩解円盤52に対して回転駆動された状態において、上記離解部20の離解槽25から叩解槽55の供給口55a、入口70を介して叩解空間Bに供給される古紙パルプUPPは、上記入口70から叩解空間Bに流入して、この叩解空間Bを通過しながら、相対的に回転する叩解作用面51a、52aによる加圧叩解作用を受けるとともに、古紙UP上の文字、図形等を形成するインキ類が磨砕微細化され、この後、上記出口71から叩解槽55の排出口55bを介して排出される。
【0069】
この出口71から排出される際、古紙パルプUPPは、上記叩解隙間Gを有する出口71の部位でさらに加圧叩解作用を受けて、この叩解隙間Gにより規定される所定のミクロンサイズまで微細化(マイクロファイバ化)されることとなる。
【0070】
この点に関して、本実施形態においては、前述したように、古紙パルプ循環経路49に一台の摩砕機50が配されてなる循環式叩解工程(図3参照)が採用されることに関連して、つまり、上記一台の摩砕機50が叩解工程の初期用の摩砕機から終期用の摩砕機までの複数台の摩砕機としての機能を兼備することに関連して、この摩砕機50の叩解隙間Gが、隙間調整手段57により、叩解工程の初期から終期に向けて徐々に狭くなるように制御調整される構成とされている。
【0071】
隙間調整手段57は、具体的には図示しないが、上記一対の叩解円盤51、52を回転軸線方向へ相対的に移動させて、これら叩解円盤51、52の叩解隙間Gを制御調整する構成とされ、回転側叩解円盤51を回転軸線方向つまり回転主軸64の軸線方向へ移動させる移動手段(図示省略)と、この移動手段を駆動させる駆動源66とを主要部として構成されている。この駆動源としては具体的には電動モータが用いられ、この駆動モータ66が上記装置制御部5に電気的に接続されている。
【0072】
そして、この電動モータ66の回転により、上記移動手段を介して上記回転主軸64が昇降動作し、これにより、回転主軸64と一体の回転側叩解円盤51が固定側叩解円盤52に対して上下方向つまり回転軸線方向へ移動して、両叩解円盤51、52の叩解隙間Gが制御調整される。
【0073】
この目的のため、上記回転側叩解円盤51の昇降位置を検出する位置検出センサ(図示省略)が設けられ、この位置検出センサの検出結果により上記駆動モータ66が駆動制御される。上記位置検出センサは装置制御部5に電気的に接続されている。
【0074】
隙間調整手段57による叩解円盤51、52の叩解隙間Gの制御調整は、図3に示される古紙パルプ循環経路49における循環式叩解工程において、循環手段である循環ポンプ69と相互に連動して行われる。
【0075】
すなわち、図3において、離解部20により離解処理された古紙パルプUPPは、上記循環ポンプ69により古紙パルプ循環経路49で循環されながら、上記摩砕機50による叩解工程が実行され、この際、摩砕機50の叩解作用面51a、52aの叩解隙間Gは、隙間調整手段57により、叩解工程の初期から終期に向けて徐々に狭くなるように構成されている。
【0076】
また、上記古紙パルプ循環経路49に、上記離解部20の離解槽25が含まれていることに関連して、上記叩解工程において、上記離解部20の攪拌装置26が駆動制御されて、離解部20が叩解部21と同時に駆動する構成とされている。すなわち、循環式叩解工程においては、離解槽25から古紙パルプ循環経路49に古紙パルプUPPが流出する一方、摩砕機50による叩解を経た古紙パルプUPPが離解槽25に流入することになり、離解槽25内では叩解度の異なる古紙パルプUPPが混在するため、攪拌装置26による攪拌作用によって、離解槽25内の古紙パルプUPPの叩解度が均一化されて、叩解処理の促進化が図られる。
【0077】
上記古紙パルプ回収槽60は、叩解部21により所定のサイズまで叩解微細化された古紙パルプUPPを回収する部位で、ここに回収された古紙パルプUPPは、次工程の抄紙工程を行う抄紙部4に送られる前に、パルプ濃度調整部3によって、再生すべき再生紙RPの仕上紙質に対応した抄紙濃度に混合調整されたパルプ懸濁液PSとされる。
【0078】
上記パルプ濃度調整部3は、装置に投入される古紙UPと水Wとの混合割合を重量測定により調整して、上記抄紙部4に供給される古紙パルプUPPの濃度を調整する重量式のもので、具体的には、図4に示すように、叩解濃度調整部3A、抄紙濃度調整部3Bおよびパルプ濃度制御部3Cとを備えてなる。
【0079】
叩解濃度調整部3Aは、パルプ製造部2における古紙パルプUPPの叩解濃度を叩解部21による叩解効率に対応して調整するもので、前述したように、給水装置27の叩解濃度調整用の給水ポンプ46と叩解濃度制御部75を主要部として構成されている。
【0080】
この叩解濃度調整部3Aの給水ポンプ46による白水Wの供給量は、例えば、上記攪拌装置26により離解・叩解された古紙パルプUPPの叩解濃度が、次工程である叩解工程を実行する叩解部21の摩砕機50の叩解能力に許容される最大濃度になるように設定されるのが望ましく、図示の実施形態においては、上記のごとく2%程度の叩解濃度になるように設定される。
【0081】
そして、叩解濃度制御部75は、前述したように、重量センサ48からの計測結果に応じて、離解槽25に必要量の水を供給するように上記給水ポンプ46を駆動制御する。この叩解濃度制御部75は、後述するように、装置制御部5の一部を構成している。
【0082】
抄紙濃度調整部3Bは、抄紙部4における古紙パルプUPPの抄紙濃度を再生すべき再生紙RPの仕上紙質に対応した適正濃度に調整するもので、具体的には、上記パルプ製造部2で製造された古紙パルプUPPの濃度を区分形式で調整する構成とされ、区分抽出部80、懸濁液調製部81および抄紙濃度制御部82を主要部として備える。
【0083】
区分抽出部80は、前工程のパルプ製造部2で製造された古紙パルプUPPの全量から所定の少分量だけ区分抽出するもので、古紙パルプ回収槽60の古紙パルプUPPを抽出して濃度調整槽85に送る区分抽出用の古紙パルプ供給ポンプ86を備えてなる。
【0084】
懸濁液調製部81は、上記区分抽出部80により区分抽出された所定の少分量の古紙パルプUPPに対して濃度調整用の水Wを所定量だけ加水することにより、所定濃度のパルプ懸濁液PSを調製するもので、前述の給水装置27の給水ポンプ47を主要部として備える。
【0085】
また、具体的には図示しないが、濃度調整槽85の底部には、前述した離解槽25の場合と同様に、ロードセルからなる重量センサ87が設けられており、濃度調整槽85内に供給される古紙パルプUPPと濃度調整用の水Wの量を計測制御する構成とされ、上記重量センサ87は装置制御部5に電気的に接続されている。
【0086】
抄紙濃度制御部82は、上記区分抽出部80および懸濁液調製部81を連動して制御するもので、装置制御部5の一部を構成しており、以下の抄紙濃度調整工程を実行するように、上記区分抽出部80および懸濁液調製部81のポンプ86、47を連動して制御する。
【0087】
すなわち、まず、上記叩解部21から古紙パルプ回収槽60に回収される古紙パルプUPPの全量(図示の実施形態においては、約2000gの古紙UP+100lの水W)から、古紙パルプ供給ポンプ86により、所定分量(図示の実施形態においては1l)の古紙パルプUPPが区分されて、濃度調整槽85へ移送収容される。すると、その重量が上記重量センサ87により感知計測されて、その結果が装置制御部5へ送られる。
【0088】
続いて、この区分された古紙パルプUPPの所定分量に対応して、給水ポンプ47により、白水回収槽45から濃度調整槽85に、希釈用の水Wが所定量(図示の実施形態においては9l(実際は上記重量センサ87の重量計測による))だけ給水される。
【0089】
これにより、上記濃度調整槽85内において、叩解濃度(図示の実施形態においては2%)の古紙パルプUPPが水Wと混合希釈されて、所定濃度(図示の実施形態においては約0.2%濃度(目標濃度))のパルプ懸濁液PSが混合調製される。
【0090】
なお、この調製されるべきパルプ懸濁液PSの目標濃度は、予め行なった実験データに基づいて、後述する抄紙部4における抄紙能力を考慮して設定され、図示の実施形態の場合は上記のごとく約0.2%濃度に設定されている。
【0091】
しかして、このように濃度調整槽85で目標濃度の抄紙濃度(0.2%)に調製されたパルプ懸濁液PSは、第1懸濁液供給ポンプ88により濃度調整槽85からパルプ供給槽89へ移送供給されて、次工程の抄紙部4のために待機貯留される。以後、この抄紙濃度調整工程は、古紙パルプ回収槽60の古紙パルプUPPの全量について同様に繰り返し実行される。上記パルプ供給槽89には、パルプ懸濁液PSを抄紙部4の抄紙工程部95へ送るための第2懸濁液供給ポンプ90が設けられている。
【0092】
また、パルプ供給槽89内には攪拌装置91が設けられており、この攪拌装置91の攪拌作用により、待機貯留されるパルプ懸濁液PS全体の抄紙濃度が一定値に均一化されて保持される。
【0093】
上記のように、抄紙濃度調整部3による濃度調整が全量一括式ではなく、区分形式つまり小出し形式で行われることにより、使用水量が大幅に減少されるばかりか、濃度調整槽85の形状寸法の大幅な縮小化も可能となり、さらには古紙再生装置1全体のコンパクト化が図られ得る。
【0094】
パルプ濃度制御部3Cは、上記叩解濃度調整部3Aおよび抄紙濃度調整部3Bを連動して駆動制御するもので、具体的には、叩解濃度調整部3Aの叩解濃度制御部75からのパルプ濃度制御情報(古紙UPの投入量、離解槽25への給水量、古紙パルプUPPの叩解濃度等)を受け取って、この制御情報に応じて、パルプ製造部2で製造された古紙パルプUPPの濃度を目標値(抄紙濃度)にするための抄紙濃度制御情報(古紙パルプUPPの目標抄紙濃度、古紙パルプ回収槽60からの古紙パルプUPPの区分抽出量、濃度調整槽85への給水量等)を抄紙濃度調整部3Bの抄紙濃度制御部82に送り、これにより、上述した抄紙濃度調整工程を実行させる構成とされている。
【0095】
抄紙部(抄紙装置)4は、上記パルプ製造部2で製造された古紙パルプUPPを抄紙して再生紙RPを製造する工程部位で、抄紙工程部95、脱水ロール部96および乾燥工程部97を主要部として構成されている。
【0096】
抄紙工程部95は、上記パルプ製造部2のパルプ供給槽89から送られてくる水Wと古紙パルプUPPが共存するスラリー状のパルプ懸濁液PSを抄いて湿紙RP0とする部位で、抄紙コンベア100とパルプ供給部101を主要部として構成されている。
【0097】
抄紙コンベア100は、パルプ懸濁液を抄きながら搬送するもので、無数の網目よりなる抄き網構造の網状ベルト105が上記パルプ懸濁液PSを濾過脱水しながら走行する配置構成とされている。
【0098】
具体的には、抄紙コンベア100は、パルプ懸濁液PSを抄きながら搬送する無端ベルトの形態とされた上記網状ベルト105と、この網状ベルト105を走行駆動する駆動モータ106とを備えてなる。
【0099】
網状ベルト105は、具体的には、上記パルプ懸濁液PSを濾過脱水する無数の網目よりなる抄き網構造を有する所定幅の板材が所定長さの環状に接続形成されてなる無端ベルトの形態とされている。
【0100】
この網状ベルト105を構成する抄き網構造の板材は、パルプ懸濁液PSが上記抄き網構造の無数の網目により適正に濾過脱水できる材質とされ、好適には、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミド(PA)(一般に「ナイロン」(登録商標)と呼ばれる)あるいはステンレス鋼(SUS)などの耐腐食性に優れる材料で形成されており、図示の実施形態においては、耐熱性に優れるPET製網状ベルト105とされている。
【0101】
上記網状ベルトの抄き網構造は、網状ベルト105上に供給された上記パルプ懸濁液PSが、網状ベルト105が所定の走行距離だけ走行する間に濾過脱水されて適正な坪量に抄かれた湿紙RP0となるように構成され、好適には、網目の細かいものや織り目の細かく平滑なものが採用される。網状ベルトの具体的な抄き網構造は、対象となる紙の特性に対応して選択されるが、特に以下の点が考慮される。
【0102】
(1)網状ベルト105の網目の大きさ:
網状ベルト105の網目の大きさは、好適には25メッシュ〜80メッシュに設定され、図示の実施形態においては、50メッシュの網状ベルト105が採用されている。
【0103】
(2)網状ベルト105の網目の線径:
網状ベルト105の網目は、メッシュ数(大きさ)だけでなく網の線径も大きく影響する。同じメッシュ数でも、線径が太いと網目の大きさが小さくなり、細いと大きくなり、これは網目の空間率、あるいは空気を通す度合いの通気度(cm3/cm2/sec)で表される。
【0104】
(3)織り構造:
網状ベルト105の網目の編み方としては、一重織り、二重織り、縦糸径と横糸径を変える等の方法があるが、多重織りでは後述する網状ベルト105を回転支持するロール径を大きくさせて、装置の大型化を招くことから、図示の実施形態においては、一重織りの網状ベルト105が使用されている。
【0105】
以上の諸条件を考慮して、網状ベルト105としては、抄紙時に古紙パルプUPPが網状ベルト105の網目から抜け落ちるのを防ぐため、網の線径が細くて、メッシュ数が多く、かつ通気度を落とさない網目構造のものが好ましく、図示の実施形態の網状ベルト105としては、平織りで、50メッシュのPET製網状ベルト105が使用されている。この網状ベルト105によれば、筆記に問題ない良好な紙質が得られることが試験的に判明している。
【0106】
さらに、網状ベルト105の幅寸法は、パルプ懸濁液PSを抄いて製造すべき再生紙RPの幅寸法よりも若干大きな所定幅寸法に設定される。
【0107】
網状ベルト105は、図1および図5に示すように、駆動ローラ107、駆動ローラ108、支持ローラ109および脱水ロール部96を介して、回転走行可能に懸架支持されるとともに、上記駆動ローラ107を介して、上記駆動モータ106に駆動連結されている。
【0108】
上記網状ベルト105における抄紙工程長さは、上記什器サイズの装置ケース6内における網状ベルト105の直線状走行方向長さの範囲内に設定され、具体的には、網状ベルト105の上側走行方向長さ(図示の場合は図1におけるパルプ供給部101から脱水ロール部96までの左右方向長さ)の範囲内に設定されている。
【0109】
具体的には、上記網状ベルト105の抄紙工程長さは、その抄き網構造の濾過脱水率および後述する網状ベルト105の走行速度との関係で、パルプ懸濁液PSが適正な坪量に抄かれるのに十分であるとともに、網状ベルト105を備える上記抄紙コンベア100が什器サイズの装置ケース6内に収容し得るように設定されている。
【0110】
以上の網状ベルト105の抄き網構造を含む網状ベルト105の紙質制御条件、つまり、抄紙部4により最終的に再生される再生紙RPの紙質を決定する条件は、網状ベルト105上に供給されるパルプ懸濁液PS中のパルプ繊維が方向性のない無秩序な配列状態を保持する範囲内に設定される。
【0111】
このような特徴構成は、従来の古紙再生工場等の大規模工場設備で行われていた古紙再生技術を、本発明のような什器サイズでの古紙再生技術として実現し得た本発明者のさらなる種々の試験研究の成果として生まれた。
【0112】
本発明者は、本発明に係る什器サイズの古紙再生装置で再生された再生紙RPが、この繰り返し再生に比較的耐え得る傾向の紙質を有していることにも気づき、さらにこの原因を突き止めるべく種々の研究・実験を繰り返した結果、この再生紙には通常の紙にある「紙の目」と言われるものが明確に現れていないことを発見した。
【0113】
すなわち、一般市販の紙には、その抄紙される進行方向(縦方向)が現れる「紙の目」というものがあり、これは紙の繊維の方向を示していて、裁断された矩形状の紙の長辺が「紙の目」に平行である紙は「縦目の紙」と呼ばれ、「紙の目」に直角である紙は「横目の紙」と呼ばれ、その紙質に異方性を持っている。
【0114】
例えば「縦目の紙」の場合は、図9に示すように、紙Pについて繊維の方向(=抄紙時の紙の進行方向、矢符参照)である縦方向にはきれいに裂けやすく(図9(a)の裂け目aを参照)、繊維の方向に直角な横方向には裂けにくく曲ってしまう(図9(b)の裂け目bを参照)。
【0115】
このように紙質に異方性を持つ紙を製造する製造技術により、古紙UPを再生しようとした場合、1回の再生よりも2回の再生、2回の再生よりも3回の再生というように、特定の古紙UPについて再生回数を増せば増すほど紙の強度が弱くなって、最終的には使用に耐えられないほどまで強度が弱くなってしまうことが試験的に判明している。そして、このような強度低下の原因は、古紙UPの度重なる離解・叩解によるパルプ化により、紙の繊維(パルプ繊維)の長さが次第に短くなっていき、このような短いパルプ繊維から再生された再生紙では、上述したような紙質の異方性があると、繊維同士の絡み合い等による結合力が非常に弱いからであると考えられる。ちなみに、古紙再生工場等の大規模工場設備で再生される再生紙は、実際上2、3回の再生使用にしか耐えられないと思われる。
【0116】
これに対して、本発明に係る什器サイズの古紙再生装置(例えば、特許文献1である特開2008−174877号公報参照)で再生された再生紙RPの場合、上記の大規模工場設備で再生される再生紙に比較して、より多くの繰り返し再生に比較的耐え得る傾向の紙質を有していることが試験的に判明し、その原因を突き止めるべく種々の研究・実験を繰り返した結果、この再生紙には上述した通常の紙にある「紙の目」と言われるものが明確に現れていないことを発見した。
【0117】
このような知見に基づき、網状ベルト105の紙質制御条件を、網状ベルト105上に供給されるパルプ懸濁液PS中のパルプ繊維が方向性のない無秩序な配列状態を保持する範囲内に設定することにより、このパルプ懸濁液PSから抄紙されてなる再生紙RPには「紙の目」がまったく現れず、図8に示すように、抄紙時の再生紙RPの進行方向(矢符参照)に平行に裂いても(図8の裂け目aを参照)、また直角に裂いても(図8の裂け目bを参照)、その裂け方に変わりなく、紙質に縦横差のない異方性で均一であり、強度的にも十分使用に耐え得るものであることが試験的に判明した。
【0118】
そして、上記網状ベルト105の紙質制御条件の最重要なものとしては、網状ベルト105の走行速度および網状ベルト105の走行傾斜角度αがある。換言すれば、上記網状ベルト105の紙質制御条件としては、少なくとも、網状ベルト105の走行速度および網状ベルト105の走行傾斜角度αが含まれ、これらに上述した網状ベルト105の抄き網構造の条件が加味される。
【0119】
上記網状ベルト105の走行速度は、上述した諸条件を考慮して設定されるが、好適には0.1m/分〜1.8m/分に設定され、より好ましくは0.3m/分〜1.0m/分に設定され、図示の実施形態においては0.5m/分に設定されている。ちなみに、従来の古紙再生工場等の大規模工場でのこの種の抄紙ベルトの走行速度は、少なくとも100m/分以上に設定され、早いものでは1000m/分をはるかに上回る速度に設定される。
【0120】
この網状ベルト105の走行速度は、パルプ懸濁液PS中のパルプ繊維の配列状態に影響するほか、抄紙工程における湿紙RP0の坪量にも影響し、網状ベルト105の走行速度が減小すると坪量は増加し、走行速度が増すと坪量が低下する。この場合、古紙パルプUPPの叩解度は網状ベルト105の濾水に影響し、叩解度およびパルプ濃度が一定条件で有れば、一定の坪量を得ることができる。
【0121】
また、網状ベルト105の走行傾斜角度αに関して、図示の実施形態の網状ベルト105は、図1、図5および図6に示すように、その走行方向へ向けて上向き傾斜状にかつ直線状に走行する配置構成とされて、限られた設置空間における抄紙工程長さの可及的延長が図られるとともに、網状ベルト105の抄き網構造との関係での濾過脱水率の向上が図られている。この網状ベルト105の走行傾斜角度αは、好適には3度〜12度に設定され、図示の実施形態においては10度に設定されている。
【0122】
上記網状ベルト105を走行駆動する駆動モータ106は、具体的には電動モータで、装置制御部5に電気的に接続されている。また、この駆動モータ106は、後述する脱水ロール部96および乾燥工程部97の走行駆動源としても共用される。
【0123】
パルプ供給部101は、上記網状ベルト105上に上記パルプ製造部2からのパルプ懸濁液PSを供給する部位で、図6に示すように、上記抄紙コンベア100の抄紙工程開始端位置に設けられて、このパルプ供給部101により、パルプ懸濁液PSが上記網状ベルト105上面に均一に広がり供給される構成とされている。
【0124】
そして、第2懸濁液供給ポンプ90により、上記パルプ供給槽89からパルプ供給部101に供給されるパルプ懸濁液PSは、このパルプ供給部101で所定量だけ貯留されて、その滞留作用により、網状ベルト105上面に均一に拡散される。この網状ベルト105上面に均一に拡散されたパルプ懸濁液PSは、網状ベルト105の矢符方向への走行作用により、網状ベルト105と共に搬送されながら、網状ベルト105の網目による自重濾過作用を受けて脱水されて、湿紙RP0となる。また、この場合、網状ベルト105上のパルプ懸濁液PS中のパルプ繊維は、上述したように方向性のない無秩序な配列状態を保持したまま濾過脱水されることとなり、後述する再生紙RPには「紙の目」がまったく現れない。
【0125】
この網状ベルト105により濾過脱水された白水W(抄紙する際に抄き網により濾過された極低濃度のパルプ水)は、前述したように、上記給水装置27の白水回収槽45に回収される。
【0126】
脱水ロール部96は、上述の抄紙工程部95と後述の乾燥工程部97の連係部において、上記網状ベルト105上の湿紙RP0を圧搾脱水する部位を構成している。
【0127】
具体的には、下流側の上記乾燥工程部97の後述する平滑面ベルト145と上流側の上記抄紙工程部95の網状ベルト105とが、図1に示すように、上下に積層状に配設されるとともに、これら平滑面ベルト145と網状ベルト105の上下隣接部分が上記連係部とされて、この連係部において、上記脱水ロール部96が、これら網状ベルト105および平滑面ベルト145を上下両側から挟圧状に転動圧搾して脱水する構造とされている。
【0128】
脱水ロール部96は、少なくとも、予備脱水ロール部96Aおよび本脱水ロール部96Bを主要部として備えてなる。
【0129】
図示の脱水ロール部96は、図1に具体的に示すように、予備脱水ロール部96A、本脱水ロール部96B、および補助手段としての角度規定ロール部96Cを主要部として構成されている。
【0130】
予備脱水ロール部96Aは、上記網状ベルト105上の湿紙RP0を予備的に圧搾脱水するもので、具体的には、上記網状ベルト105に下側から転接する予備脱水ロール120と、この予備脱水ロール120に対して上記平滑面ベルト145を上側から転動加圧する予備プレスロール121とからなる予備圧搾ロール対122を備えてなる。
【0131】
そして、これら予備脱水ロール120および予備プレスロール121からなる予備圧搾ロール対122により、上記網状ベルト105および平滑面ベルト145は上下両側から所定の予備圧力をもって挟圧状に転動圧搾されて、上記網状ベルト105上の湿紙RP0に含まれている水分が予備的に脱水除去される。
【0132】
この場合の予備圧力、つまり網状ベルト105上の湿紙RP0を予備的に圧搾脱水する上記予備脱水ロール部96Aの予備圧搾力は、多量の水分を含む湿紙RP0が潰れてしまわない程度の大きさに設定され、図示の実施形態においては、予備脱水後の上記網状ベルト105上の湿紙の含水率が80〜75%の範囲になるように、上記予備圧搾力が設定されている。
【0133】
本脱水ロール部96Bは、上記予備脱水ロール部96Aで予備脱水された網状ベルト105上の湿紙RP0を本圧搾脱水して所定の含水率の乾紙(再生紙)RPとするもので、具体的には、上記網状ベルト105に下側から転接する本脱水ロール125と、この本脱水ロール125に対して上記平滑面ベルト145を上側から転動加圧する本プレスロール126とからなる本圧搾ロール対127の組を少なくとも1組を備えてなる。
【0134】
そして、これら本脱水ロール125および本プレスロール126からなる本圧搾ロール対127により、上記網状ベルト105および平滑面ベルト145が上下両側から所定の本圧力をもって挟圧状に転動圧搾されて、上記網状ベルト105上の湿紙RP0に含まれている水分が最終的に脱水除去されて、所定の含水率の乾紙つまり再生紙RPとされる。
【0135】
この場合の本圧力つまり網状ベルト105上の湿紙RP0を本圧搾脱水する上記本脱水ロール部96Bの本圧搾力は、予備脱水された湿紙RP0について確実に所定の脱水効果が得られる程度の大きさに設定され、図示の実施形態においては、本脱水後の網状ベルト105上の乾紙(再生紙)RPの含水率が70〜65%の範囲になるように設定される。
【0136】
これら脱水ロール部96におけるロール120、121、125、126は、具体的には図示しないが、歯車機構からなる駆動連結手段により単一の駆動モータ106に駆動連結されて、すべてのロール120、121、125、126が互いに連動して回転駆動される。
【0137】
この場合、これらロール120、121、125、126は、その外周面間において挟圧状に転動圧搾される網状ベルト105、平滑面ベルト145の接触面(網状ベルト105の下面および平滑面ベルト145の上面)に対して、上下のロール120、125の外周面と121、126の外周面が、互いに僅かの回転速度差をもってそれぞれ転動接触するように回転制御される。
【0138】
具体的には、上側の予備および本プレスロール121、126の回転速度が下側の予備および本脱水ロール120、125の回転速度よりも僅かに大きく設定されており、これにより、平滑面ベルト145の走行速度が、上記網状ベルト105の走行速度よりも僅かに大きく設定されることになる。このような構成とされることにより、後述するように、脱水ロール部96により圧搾脱水された湿紙RP0が、下側の網状ベルト105の上面から上側の平滑面ベルト145の下面に転写移転される際に、湿紙RP0にテンションがかかって、湿紙RP0に皺が発生するのを有効に防止する。
【0139】
角度規定ロール部(角度規定手段)96Cは、上記予備脱水ロール部96Aおよび本脱水ロール部96Bによる圧搾脱水作用を補助して有効にするためのもので、上記予備脱水ロール部96Aの上流側に設けられて、予備脱水ロール部96Aへ挿通される上記網状ベルト105および平滑面ベルト145間の傾斜角度を規定する。
【0140】
角度規定ロール部96Cは、具体的には、上記予備脱水ロール部96Aへ挿通される上記網状ベルト105および平滑面ベルト145間の傾斜角度を規定するもので、具体的には、上記網状ベルト105に下側から転接して、上記予備脱水ロール部96Aに対する網状ベルト105の挿入角度を規定する網状ベルト案内ロール130と、上記平滑面ベルト145に上側から転接して、上記予備脱水ロール部96Aに対する平滑面ベルト145の挿入角度を規定する平滑面ベルト案内ロール131とを備えてなる
【0141】
そして、上記網状ベルト案内ロール130によって予備脱水ロール部96Aに対する網状ベルト105の挿入角度が規定されるとともに、上記平滑面ベルト案内ロール131によって予備脱水ロール部96Aに対する平滑面ベルト145の挿入角度が規定されることにより、上記網状ベルト105と平滑面ベルト145とのなす傾斜角度が間接的に所定の範囲内に設定されることになる。
【0142】
網状ベルト105と平滑面ベルト145とのなす傾斜角度は、予備脱水ロール部96Aによる予備脱水作用により、湿紙RP0に含まれる水分が予備脱水ロール部96Aの上流側に多量に搾り出されるところ、この搾り出された多量の水分が湿紙RP0に再吸収されて、湿紙RP0が再びスラリー化してしまうのを有効に防止するように設定される。
【0143】
すなわち、予備脱水ロール部96Aの予備脱水ロール120と予備プレスロール121により、上面に湿紙RP0を載置した網状ベルト105と平滑面ベルト145が上下両側から挟圧状に転動圧搾されると、湿紙RP0に含まれている水分は、両ロール120、121の上流側へ搾り出される。
【0144】
この場合、上記網状ベルト105と平滑面ベルト145とのなす傾斜角度αが大きいとすると、両ロール120、121の上流側近傍位置においては、上側の平滑面ベルト145が下側の網状ベルト105上の湿紙RP0に対して離隔した状態にあり、このため、搾り出された上記湿紙RP0に含まれている多量の水分の一部が湿紙RP0に再び吸収されて、湿紙RP0が再びスラリー化してしまうおそれがある。
【0145】
これに対して、上記網状ベルト105と平滑面ベルト145とのなす傾斜角度αが小さいとすると、両ロール120、121の上流側近傍位置において、上側の平滑面ベルト145が下側の網状ベルト105上の湿紙RP0に押さえ付けられた状態となり、このため、上記湿紙RP0から搾り出された水分のすべてが、上記網状ベルト105を介して下側へ落下して、湿紙RP0に再吸収されることがなく、湿紙RP0の再スラリー化を確実に防止することができる。
【0146】
上記網状ベルト105と平滑面ベルト145とのなす傾斜角度αは、各種試験の結果、好ましくは1〜20°に設定され、より好ましくは3〜7°に設定され、図示の実施形態においては、5°に設定されている。
【0147】
しかして、駆動モータ106の駆動により、脱水ロール部96における予備脱水ロール部96Aおよび本脱水ロール部96Bの各ロール120、121、125、126が回転して、まず、予備脱水ロール部96Aにおける予備圧搾ロール対122により、上記網状ベルト105および平滑面ベルト145が上下両側から所定の予備圧力をもって挟圧状に転動圧搾されて、上記網状ベルト105上の湿紙RP0に含まれている水分が予備的に脱水除去される(図示の実施形態においては、湿紙RP0の含水率は90〜85%から80〜75%に減少する)。
【0148】
続いて、本脱水ロール部96Bにおける本圧搾ロール対127により、上記網状ベルト105および平滑面ベルト145が上下両側から所定の本圧力をもって挟圧状に転動圧搾されて、上記網状ベルト105上の湿紙RP0に含まれている水分が最終的に脱水除去されて、所定の含水率の乾紙つまり再生紙RPとされる(図示の実施形態においては、含水率80〜75%の湿紙RP0が含水率70〜65%の乾紙RPとなる)。この一連の工程により湿紙RP0から圧搾脱水された白水Wは、給水装置27の白水回収槽45に回収される。
【0149】
上記脱水ロール部96により圧搾脱水された湿紙RP0は、脱水ロール部96の下流側部位において、下側の網状ベルト105の上面から上側の平滑面ベルト145の下面に転写移転されて、平滑面ベルト145と共に搬送されて、乾燥工程部97による乾燥工程が実施される。
【0150】
なお、上記移転作用は平滑面ベルト145の平滑面構造により起こるものと考えられる。つまり、下側の網状ベルト105の表面が、微細な連続気孔が多数開口されてなる微細凹凸面であるのに対して、上側の平滑面ベルト145の表面が孔のない平滑面であり、この結果、僅かに水分を含んでいる湿紙RP0が上記平滑面ベルト145の表面との間の表面張力で吸着されるものと考えられる。
【0151】
乾燥工程部97は、上記抄紙工程部95で抄紙形成された後、脱水ロール部96で圧搾脱水された湿紙RP0を乾燥させて再生紙RPとする部位で、乾燥コンベア140と加熱乾燥部141を主要部として構成されている。
【0152】
乾燥コンベア140は、脱水ロール部96で圧搾脱水された湿紙RP0を平滑にしながら搬送するもので、上記平滑面ベルト145と、この平滑面ベルト145を走行駆動する上記駆動モータ106とを備えてなる。
【0153】
平滑面ベルト145は、湿紙RP0を加熱乾燥させながら搬送するもので、具体的には、所定幅を有する平滑面構造の板材が所定長さの環状に接続形成されてなる無端ベルトである。平滑面構造の板材は、湿紙RP0の片側表面を適正な平滑面に仕上げることができ、かつ後述する加熱乾燥部141による加熱作用に耐え得る材質とされ、好適には、フッ素樹脂、ステンレス鋼等の可撓性耐熱材料で形成されており、図示の実施形態においては、フッ素樹脂製ベルトが採用されている。
【0154】
この平滑面ベルト145は、図1に示すように、駆動ローラ146、従動ローラ147、148および脱水ロール部96を介して、回転走行可能に懸架支持されるとともに、上記駆動ローラ146を介して、上記駆動モータ106に駆動連結されている。
【0155】
平滑面ベルト145を走行駆動する駆動モータ106は、前述したように、上記抄紙コンベア100および脱水ロール部96の走行駆動源としても共用される。
【0156】
加熱乾燥部141は、上記平滑面ベルト145上の湿紙RP0を加熱乾燥する部位で、上記平滑面ベルト145の走行経路途中箇所に配されたヒータプレート150を加熱部として備える。
【0157】
このヒータプレート150は、具体的には、上記平滑面ベルト145上の湿紙RP0が平滑面ベルト145を介して間接的に加熱乾燥される配置構成とされている。
【0158】
また、平滑面ベルト145の走行途中に、上記2つの平滑面仕上げロール149、149が配設されて、平滑面ベルト145上の湿紙RP0を順次転動加圧して、平滑面ベルト145の表面に接触する湿紙RP0の片側表面と反対側表面を適正な平滑面に仕上げる配置構成とされている。
【0159】
上記平滑面ベルト145における上記加熱乾燥部141の下流側には、剥離部材151が設けられており、平滑面ベルト145上で乾燥処理されて搬送される乾紙つまり再生紙RPを、平滑面ベルト145の保持面から順次剥離する。
【0160】
これに関連して、この剥離部材151の下流側の平滑面ベルト145の走行経路終端位置には、定寸カッタ部152が設けられており、平滑面ベルト145から剥離された再生紙RPは、ここで所定形状(図示の実施形態においては、A4版の形状寸法)に切断されて、装置ケース6の排出口8から排出される。
【0161】
装置制御部5は、上述したパルプ製造部2、パルプ濃度調整部3および抄紙部4の各駆動部の動作を相互に連動して自動制御するもので、具体的には、CPU,ROM,RAMおよびI/Oポートなどからなるマイクロコンピュータで構成されている。
【0162】
この装置制御部5には、パルプ製造部2のパルプ製造工程、濃度調整部3の濃度調整工程および抄紙部4の抄紙工程を相互に連動して実行させるためのプログラム等が組み込まれるとともに、上記各構成部2(20、21)、3(3A、3B)、4(95、10、96)の駆動に必要な種々の情報、例えば、離解部20における攪拌装置26の駆動時間、回転速度、給水装置27の給水タイミング、給水量、叩解部21における循環ポンプ69の駆動時間、循環量および摩砕機50の駆動時間、回転速度、および隙間調整手段57の調整タイミング、叩解隙間G調整量、ならびに、抄紙部4におけるコンベア100、140の走行速度、加熱乾燥部141の駆動時間、および定寸カッタ部152の動作タイミングなどが、予めデータとしてまたはキーボード等により適宜選択的に入力設定されている。
【0163】
また、上記装置制御部5には、前述したように、重量センサ48、87および位置検出センサ等、ならびに各駆動部35、56、61、66、106が電気的に接続されており、装置制御部5は、これらの各種実測値および制御データに従って、上記各駆動部35、56、61、66、106を制御する。
【0164】
しかして、以上のように構成された古紙再生装置1は、電源投入により起動して、装置制御部5により各構成部2(20、21)、3(3A、3B)、4(95、10、96)が相互に関連して自動制御され、これにより、装置ケース6の投入口7に投入された古紙UP、UP、…は、パルプ製造部2の離解部20および叩解部21により離解・叩解処理されて、古紙パルプUPPが製造され、さらにパルプ濃度調整部3で抄紙濃度のパルプ懸濁液PSが調製された後、このパルプ懸濁液PSが抄紙部4の抄紙工程部95、脱水ロール部96および乾燥工程部97により抄紙されて、再生紙RPとして再生され、装置ケース6の排出口8bから再生紙受取トレー9に排出される。
【0165】
この場合に、網状ベルト105の紙質制御条件が、網状ベルト105上に供給されるパルプ懸濁液PS中のパルプ繊維が方向性のない無秩序な配列状態を保持する範囲内に設定されていることにより、再生された再生紙RPにはいわゆる「紙の目」が現れず、紙質が縦横差のない等方性で均一となり、強度的に使用に十分であり、したがって、機密情報や個人情報など各種情報の漏洩・流出を防止する目的と相まって、繰り返し再生処理されて使用される古紙UPにあっても、強度が低下することが少なく、長期の使用に耐え得る再生紙RPを提供することができる。
【0166】
これにより、大きな事業所等だけでなく、小規模店舗や一般家庭などの室内にも設置可能であるとともに、環境に優しくかつランニングコストも低く抑えることができ、しかも、機密情報や個人情報など各種情報の漏洩・流出を確実に防止できて、高い機密性を保持することができる什器サイズの古紙再生装置を実現し提供することができる。
【0167】
なお、上述した実施形態はあくまでも本発明の好適な実施態様を示すものであって、本発明はこれらに限定されることなく、その範囲内で種々の設計変更が可能である。
【0168】
例えば、上述の実施形態における網状ベルト105の紙質制御条件の具体的数値は、あくまでも、図示の装置構成における網状ベルト105走行速度、網状ベルト105の走行傾斜角度αおよび網状ベルトの抄き網構造の総合的な組合せ条件から得られたものであって、網状ベルト105上に供給されるパルプ懸濁液PS中のパルプ繊維が方向性のない無秩序な配列状態を保持する範囲内に設定される限り、これに限定されるべきものではない。
【符号の説明】
【0169】
UP 古紙
UPP 古紙パルプ
PS パルプ懸濁液
RP 再生紙(乾紙)
1 古紙再生装置
2 パルプ製造部
4 抄紙部(抄紙装置)
5 装置制御部(制御部)
95 抄紙工程部
96 脱水ロール部
97 乾燥工程部
100 抄紙コンベア
101 パルプ供給部
105 網状ベルト
106 駆動モータ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
古紙が発生する場所に配置可能な什器サイズの古紙再生装置を構成し、前工程のパルプ製造装置で製造された古紙パルプを抄紙して再生紙を製造する抄紙装置であって、
前記パルプ製造装置から送られてくる水と古紙パルプが共存するスラリー状のパルプ懸濁液を抄いて湿紙とする抄紙工程部を備え、
この抄紙工程部は、パルプ懸濁液を抄きながら搬送する抄紙コンベアを備え、
この抄紙コンベアは、無数の網目よりなる抄き網構造の網状ベルトが前記パルプ懸濁液を濾過脱水しながら走行する配置構成とされ、
前記網状ベルトの紙質制御条件は、網状ベルト上に供給される前記パルプ懸濁液中のパルプ繊維が方向性のない無秩序な配列状態を保持する範囲内に設定される
ことを特徴とする古紙再生装置の抄紙装置。
【請求項2】
前記網状ベルトの紙質制御条件として、少なくとも、網状ベルトの走行速度および網状ベルトの走行傾斜角度が含まれる
ことを特徴とする請求項1に記載の古紙再生装置の抄紙装置。
【請求項3】
前記網状ベルトの走行速度は0.1m/分〜1.8m/分に設定されている
ことを特徴とする請求項1に記載の古紙再生装置の抄紙装置。
【請求項4】
前記網状ベルトは、その走行方向へ向けて上向き傾斜状にかつ直線状に走行する配置構成とされている
ことを特徴とする請求項1に記載の古紙再生装置の抄紙装置。
【請求項5】
前記網状ベルトの走行傾斜角度は3度〜12度に設定されている
ことを特徴とする請求項4に記載の古紙再生装置の抄紙装置。
【請求項6】
前記抄紙工程部は、前記抄紙コンベアの抄紙工程開始端位置に設けられて、前記パルプ製造装置から送られてくる前記パルプ懸濁液を前記抄紙コンベアに供給するパルプ供給部を備え、
このパルプ供給部により、前記パルプ懸濁液が前記抄紙コンベアの網状ベルト上面に均一に広がり供給される構成とされている
ことを特徴とする請求項1に記載の古紙再生装置の抄紙装置。
【請求項7】
前記網状ベルトの抄き網構造は、網状ベルト上に供給された前記パルプ懸濁液が網状ベルトの所定の走行距離だけ走行する間に濾過脱水されて適正な坪量に抄かれた湿紙となるように構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の古紙再生装置の抄紙装置。
【請求項8】
前記網状ベルトの網目は25メッシュ〜80メッシュに設定されている
ことを特徴とする請求項1に記載の古紙再生装置の抄紙装置。
【請求項9】
前記網状ベルトにおける抄紙工程長さは、前記什器サイズの装置ケース内における前記網状ベルトの直線状走行方向長さの範囲内に設定されている
ことを特徴とする請求項1に記載の古紙再生装置の抄紙装置。
【請求項10】
前記網状ベルトの抄紙工程長さは、前記網状ベルトの走行速度および抄き網構造との関係で、前記パルプ懸濁液が適正な坪量に抄かれとともに、前記網状ベルトを備える前記抄紙コンベアが什器サイズの装置ケース内に収容し得るように設定されている
ことを特徴とする請求項1に記載の古紙再生装置の抄紙装置。
【請求項11】
前記パルプ製造装置から送られてくる水と古紙パルプが共存するスラリー状のパルプ懸濁液を抄いて湿紙とする前記抄紙工程部と、
この抄紙工程部で抄紙形成された湿紙を乾燥させて再生紙とする乾燥工程部と、
これら抄紙工程部および乾燥工程部の連係部において前記湿紙を圧搾脱水する脱水ロール部とを備えてなり、
前記パルプ製造装置から供給される前記パルプ懸濁液を抄紙するとともに、脱水・乾燥する構成とされている
ことを特徴とする請求項1から10のいずれか一つに記載の古紙再生装置の抄紙装置。
【請求項12】
前記抄紙コンベアは、パルプ懸濁液を抄きながら搬送する無端ベルトの形態とされた前記網状ベルトと、この網状ベルトを走行駆動する駆動モータとを備えてなる
ことを特徴とする請求項1に記載の古紙再生装置の抄紙装置。
【請求項13】
什器サイズの装置ケース内に、古紙を離解し叩解して古紙パルプを製造するパルプ製造部と、このパルプ製造部で製造された古紙パルプを抄紙して再生紙を製造する抄紙工程部と、これらパルプ製造部および抄紙工程部を連動して駆動制御する制御部を備えてなり、
前記抄紙工程部は、請求項1から12のいずれか一つに記載の抄紙装置から構成されている
ことを特徴とする古紙再生装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−261120(P2010−261120A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−112371(P2009−112371)
【出願日】平成21年5月2日(2009.5.2)
【出願人】(000106782)株式会社シード (52)
【Fターム(参考)】